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神経線維腫症1型
(Neurofibromatosis 1)

[NF1, Von Recklinghausen Disease, Von Recklinghausen
’s Neurofibromatosis]

Gene Review著者: J M Friedman, MD, PhD
日本語訳者: 大畑 尚子(沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター)  
Gene Review 最終更新日: 2009.6.2. 日本語訳最終更新日: : 2011.10.17

原文 Neurofibromatosis 1


要約

疾患の特徴 

神経線維腫症1型 (NF1) は多発性のカフェ・オレ斑,腋下や鼠径部の雀卵斑様色素斑,多発性・散在性の皮膚神経線維腫および虹彩Lisch結節により特徴づけられる.学習障害は罹患者の少なくとも50%に認められる.頻度は低いがより重大な問題となる可能性のある病変としては蔓状神経線維腫,視神経をはじめとした脳神経の神経膠腫,悪性末梢神経鞘腫瘍,側彎症,脛骨異形成症や血管病変などがある.

診断・検査 

NF1の診断は通常臨床所見に基づく.大多数の罹患者ではNF1遺伝子のヘテロ変異が発症の原因となっている.NF1遺伝子の分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能であるが,診断のために必要となることは少ない.

臨床的マネジメント 

病変に対する治療眼や中枢神経系,末梢神経系,心血管系,脊椎,長管骨の症状を有する患者は治療のために適切な専門家に紹介する.美容上問題となったり不便を生じたりする散在性の皮膚あるいは皮下の神経線維腫は外科的に切除する.蔓状神経線維腫の外科治療はうまくいかないことが多い.悪性末梢神経鞘腫瘍は可能であれば外科的に完全に切除する.NF1に伴う視神経膠腫は無症状で臨床的に安定していたり,成長が非常にゆっくりだったりするので,治療に関しては問題が多い.変形の著しい側彎は時に外科的治療を要するが,変形が軽度の場合は通常保存的治療で足りる.

定期検査:本症の経験が豊富な医師による毎年の身体診察,小児では毎年の眼科診察(成人になったら頻度は少なくてよい),小児の発達の評価,定期的な血圧測定,臨床的に頭蓋内腫瘍やその他の体内の腫瘍が疑われる場合MRIによるフォローアップ.

遺伝カウンセリング 

NF1は常染色体優性遺伝の形式をとる.患者の半数はNF1遺伝子の新生突然変異の結果としてNF1に罹患している.患者の子は50%の確率で変異NF1遺伝子を受け継ぐが,臨床像は家系内においてさえもきわめて多彩である.出生前診断は家系内の遺伝子変異が同定されていれば可能である.


診断

臨床診断

NIHによるNF1の診断基準が日常臨床において広く受け入れられている.NF1の臨床診断はごく年少の場合以外は通常明確である.NIHの診断基準では以下の所見の2つ以上を有する場合にNF1と診断される.

成人 NIHの診断基準は成人NF1罹患者において特異度も感度も高い.

小児

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

NF1遺伝子のヘテロ変異が大部分の本症患者の原因となっている.

検査法

表1 NF1で用いられる分子遺伝学的検査

検査戦略

発端者における診断の確認

リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断を実施するにあたっては,事前にその家系で原因となる遺伝子変異を同定しておく必要がある.

遺伝子レベルでの関連疾患

NIHの診断基準ではNF1とは診断されない以下のような個人や家系において,明らかに病原性と考えられるNF1遺伝子変異が同定されている.

NF1遺伝子変異とこうした非典型的的な表現型との関連は不明である.

 


臨床像

自然経過

NF1の臨床像はきわめて多彩である.多発性のカフェ・オレ斑はほぼ全例に出現し,間擦部の雀卵斑様色素斑は約90%に出現する.成人NF1罹患者では通常,多数性で良性の皮膚の神経線維腫が認められる.

NF1罹患者の約半数が蔓状神経線維腫を有するが,多くは体内に生じ無症状である.ほとんどはゆっくりと成長するが,特に幼児期に急激に増大することがある.症状が出てきた場合には,身体の変形や機能障害をきたし,時には生命を脅かす.

NF1の眼症状としては視神経膠腫やLisch結節(無害な虹彩過誤腫)があり,前者は失明の原因ともなりうる.NF1患者の症状を有する視神経膠腫は,その多くが6歳以前に視力低下や眼球突出で発症するが,小児期後半もしくは成人期まで症状を呈さないこともある.NF1の症状を呈するような視神経膠腫は,多くが何年もあまり変化しないか非常にゆっくりと進行するが,なかには自然に縮小するものもある.

側彎症,脊椎異形成,偽関節症や過剰発育はNF1の最も重大な骨病変である.

その他医療上問題となる事項としては,血管病変,高血圧,頭蓋内腫瘍,悪性末梢神経鞘腫瘍などがある.NF1罹患者の少なくとも半数には学習障害がある.

頭痛が高頻度にみられ,時には痙攣や水頭症もきたす.

NF1罹患者の多くは皮膚病変とLisch結節を生じるだけであるが,他のより重大な病変は加齢とともに増えてくる.NF1の種々の病変は以下のようにその発症時期に特徴を有している.

神経線維腫は身体のどの部位も侵しうる.散在性の皮膚もしくは皮下の神経線維腫は小児期後半以前には少ない.成人NF1罹患者に見られる神経線維腫の数はごく少数の場合から数百,さらには数千個にいたるまでばらつきがある.新たな皮膚もしくは皮下の神経線維腫は生涯にわたって出現しつづけるが,出現の速度は年によって大きなばらつきがある.多くの女性患者では妊娠中,神経線維腫の数や大きさの急速な増大を経験する.

一部のNF1罹患者は多発性神経根腫瘍によるびまん性多発神経障害を発症し,悪性末梢神経鞘腫瘍のリスクが高い.

多くのNF1罹患者の知能は正常であるが,50-75%に学習障害が認められる.種々の問題が報告されているが,視覚空間動作障害や注意障害の高頻度が高い.NF1に伴う学習障害は成人になっても続く.

NF1の小児はしばしば社会適応に障害を有し,他の子どもに比べて性格や行動,生活の質の違いが見られる.

NF1罹患者は平均的に頭囲が大きいが,灰白質の容量とIQとは関連がない.

高血圧は頻度が高く,いずれの年齢にも生じる.多くの例では高血圧は「本態性」であるが,NF1に特徴的な血管病変が腎動脈狭窄や大動脈縮窄,あるいはその他の高血圧に関連する血管病変を引き起こしていることもある.腎動脈性のものは小児患者の高血圧でしばしば発見される.

心血管や脳血管に生じた血管病変は重篤な,時には生命にかかわる結果をもたらしうる.

肺動脈弁狭窄は一般人口に比べNF1罹患者で頻度が高い.

NF1の小児において,(良性神経線維腫以外で)最も多い腫瘍は視神経膠腫と脳腫瘍である.

悪性末梢神経鞘腫瘍はNF1に伴う最も頻度の高い悪性腫瘍で,罹患者の約10%に発生する.悪性末梢神経鞘腫瘍はNF1罹患者においてより若年で発症し生命予後不良という傾向がある.NF1罹患者の中でも良性の皮下神経線維腫や体内の蔓状神経線維腫を有する場合は,これらの腫瘍がない場合に比べて悪性末梢神経鞘腫瘍を発症するリスクが高い.

NF1では消化管間質腫瘍などさまざまな腫瘍がみられる.

NF1に罹患した女性は,50歳以前で5倍,生涯で3.5倍乳がんのリスクが高い.

全身の骨量減少あるいは骨粗鬆症は一般集団より高頻度にみられる.この骨変化の原因は明らかでないが,NF1罹患者では予想値よりも血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が低く,副甲状腺ホルモンレベルが高いことや,骨吸収が亢進しているといることが報告されている.

NF1罹患者の傾向として身長は平均以下で,頭囲は平均以上である.しかしながら身長が-3SD以下であったり頭囲が+4SD以上であったりすることはほとんどない.一方,NF1遺伝子の完全欠失が原因となっている罹患者では臨床像が異なり,特に2-6歳にかけて過剰発育を呈する.一部の罹患小児の臨床像はWeaver症候群に似ている.

二次性徴は通常正常であるが,思春期早発をきたすことがあり,特に視神経交叉に腫瘍を生じた場合に多い.二次性徴の遅れもよく見られる.

NF1の所見が身体の一部分に限局して認められ両親が罹患していない場合に,時に分節型あるいは部分型 NF1という診断がなされる.非典型的な病変分布はNF1罹患者に偶然生じたものである場合もあれば,分節的な症状はNF1遺伝子の体細胞変異モザイクが原因となっている場合もある.しかしながら,NF1遺伝子変異モザイクとこれまでに報告された症例のほとんどは分節性ではない軽症型神経線維腫症である.分節型 NF1の患者でその子が典型的なNF1であった例が報告されている.

NF1罹患者の約12%でNoonan症候群の表現型を合併する.所見としては眼間開離,瞼裂斜下,耳介低位,翼状頚,肺動脈弁狭窄がある.このような所見を呈するNF1罹患者の親族にNoonan症候群の所見が伴うことも伴わないこともある.NF1-Noonan表現型の理由はさまざまで,異なる2つの比較的高頻度な常染色体優性遺伝性疾患が合併した家系もあれば,NF1亜型として遺伝している家系もある.大多数のNF1-Noonan症例はNF1遺伝子に生殖細胞系列変異を有している.Noonan症候群患者の約半数が有するPTPN11遺伝子変異を認めることはまれであるが,NF1-Noonan表現型でPTPN11遺伝子変異を有した症例の報告がある.

LEOPARD症候群は,大部分がPTPN11変異を有し,その症状がNoonan症候群と似ているが,多発性色素斑,感音性難聴,肥大型心筋症や心電図変化を合併することで区別される. LEOPARD症候群とNF1のいくつかの症状を有し,NF1遺伝子変異を有した症例の報告がある.

罹患者の妊娠は多くの場合正常に経過するが,重大な合併症も生じうる.

NF1罹患者では寿命は約15年短縮する.悪性腫瘍,特に悪性末梢神経鞘腫瘍や血管病変が最も重要な早期の死因となっている.

神経画像診断 脳MRI検査でNF1患児の約60%に認められる高信号病変,いわゆるunidentified bright objects (UBOs)の臨床的意義ははっきりしない.このT2強調画像で高信号として認められる所見は視神経経路,基底核,脳幹,小脳,大脳皮質にみられ,通常占拠性の症状は引き起こさない.典型的なUBOsはT1強調画像やCTでは捉えられない.UBOsは拡散強調画像では異常なミエリン構造を示す像を呈し,  これは病理学的には海綿状髄鞘障害の領域に相当している.これらは年齢とともに消失し,成人のNF1罹患者では低頻度である.UBOsの存在,数,量や局在が小児NF1罹患者の学習障害と関連しているという研究もあるが,研究者間で意見の一致をみていない.

遺伝子型と臨床型の関連

NF1は臨床像がきわめて多彩であることが特徴で,血縁のない患者同士はもとより同じ家系の患者同士,さらには1人の患者でも人生の時期によって病像が大きく異なる.遺伝子変異と臨床像の相関については次に2つが知られているだけである.

Watson症候群(多発性のカフェ・オレ斑,肺動脈弁狭窄,軽度知能低下)や家族性脊髄神経線維腫症のように明瞭に家系内伝播が認められるNF1亜型があることは,アレルの多型性がNF1の臨床像の多様さに影響していることを示している.さらにNF1家系の臨床像に関する統計学的検討により,NF1の臨床像の一部は他の遺伝子座に存在する遺伝子の影響を受けていることが示唆されている.

一方で,NF1の臨床像の多彩さは,罹患者の表現型を決定するランダムなイベントの重要性を示している.この推測を支持する証拠として,NF1罹患者に生じた以下のような種々の腫瘍でNF1遺伝子座にセカンドヒット(正常アレルの体細胞変異)やヘテロ接合性の欠失が認められることが挙げられる.

NF1の臨床像の多彩さについては遺伝子,非遺伝子,確率論的な要素が関与していると考えられる.この複雑さとNF1遺伝子変異の多様性ゆえに遺伝子型と臨床型の関連を明らかにすることは非常に困難である.

浸透率 

NF1の小児期以降の浸透率は事実上100%である.

促進現象

変異モザイクの親を持つ一部の小児例をのぞけば促進現象を示す証拠はない.

病名

NF1でも中枢神経病変を生じるが,NF2と区別するために「末梢神経線維腫症」と呼ばれていた.

特に何の限定もなく「神経線維腫」という名称がNF1をさすことがあるが,他の著者がNF2やNF1関連のまれな亜型を含む用語として「神経線維腫症」を用いることがあるので,これは混乱をまねく.

頻度 

NF1は常染色体優性遺伝性疾患の中で最も高頻度にみられるもののひとつであり,その罹病率はおおよそ出生3,000人に1人である.

約半数は新生変異による.NF1遺伝子の変異発生率(約1/10,000)はヒトの知られている遺伝子の中では最も高い.変異発生率が高い理由は明らかでない.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

カフェ・オレ斑や他のNF1でみられる徴候を示す先天異常疾患は100種以上知られているが,NF1との鑑別が困難なものはほとんどない.

NF1との鑑別にしばしば苦慮するものとしては以下の病態がある.


臨床的マネジメント

最初の診断時の評価

NF1と診断された人に対して最初に病像を把握するために行う検査として推奨されるものは以下のとおりである.

NF1の診断時にルーチンにMRI検査を行う有用性については議論がある.

さらに,遺伝したものか突然変異で生じたものかを判断するためには,NF1随伴症状に特に注意した家族歴聴取,身体診察,眼科的検索(スリットランプ検査を含む)を両親に対しても実施すべきである.これには遺伝カウンセリングが必要である.

病変の治療

眼や中枢神経,末梢神経系,脊髄,長管骨,心血管系の症状を有する患者は治療のために適切な専門家に紹介されるべきである.

美容上問題となったり不便を生じたりする散在性の皮膚あるいは皮下の神経線維腫(ベルトの位置や襟首など)は外科的に切除したり,もし小さければレーザーや電気メスにて切除することもある.こうした治療は重要である.多くのNF1罹患者にとって美容上の問題は最も悩ましいことがらである.

蔓状神経線維腫は巨大になることがあり,重篤な変形,過成長,正常構造の障害をきたす.体表に認められる蔓状神経線維腫の病変の広がりは身体診察だけでは判断できず,多くの体内の神経線維腫は大きいものであっても身体診察で見逃される.MRIは,蔓状神経線維腫の病変の大きさや広がりを評価したり,その経時的変化をモニターしたりするための選択肢となる.

疼痛や神経症状の発生,もともとあった蔓状神経線維腫の増大は悪性末梢神経鞘腫瘍を疑わせる所見であり,早急な評価が必要である. MRIやPETによる検査が良性と悪性の腫瘍を鑑別するのに役立つが,最終的な区別は病理学的診断によらなければならない.完全な外科的切除が可能であれば,それが治癒につながる唯一の治療法である.化学療法や放射線療法が併用されることもあるが,その有用性は確立していない.

NF1の小児で発生した進行性の視神経膠腫は化学療法が治療の選択肢である.視神経膠腫の外科的治療は美容上の問題から第一選択とはせず,放射線療法は照射領域の悪性腫瘍やモヤモヤ血管の発生リスクがあることから通常避ける.

NF1患者でMRIにて発見される視神経膠腫の多くは無症状である.したがって,視神経膠腫を発症したNF1罹患者の多くは治療を必要としない.

NF1罹患者に生じる脳幹や小脳の星細胞腫の自然経過は,治療方針の決定に際して考慮されるべきである.

NF1に伴う変形の強い小児の側彎症はしばしば外科的治療を要するが,これは複雑で難しい.異形成性のない側彎症は特発性側彎症と同様の治療が行われる.

経過観察

以下が推奨される.

NF1罹患者の健康管理のために同様の推奨が最近発表された.

回避すべき薬物や環境

大多数のNF1罹患者に対しては特別の制限は必要ない.脛骨異形成や異形成性側彎症がある場合には制限が必要になるかもしれないが,それはNF1そのものによるわけではなく,骨病変の状況によって決まってくるものである.

NF1罹患者に対する放射線療法は明らかに照射域における悪性末梢神経鞘腫瘍のリスクを高める.

リスクのある親族への検査

リスクのある親族の検査についての問題は,遺伝カウンセリングの項を参照のこと.

研究中の治療法

蔓状神経線維腫や脊髄神経線維腫に対する種々の薬物治療の臨床試験が進行中である.

顔面びまん性蔓状神経線維腫やカフェ・オレ斑に対する高周波治療が少数の臨床試験である程度の効果を示している.

悪性末梢神経鞘腫瘍に対するいくつかの治療法の臨床試験は,NF1の患者が参加可能である.

小児の学習障害に対するスタチン製剤の使用についての臨床試験で評価されている. さまざまな疾患の臨床研究については http://clinicaltrials.gov/ を参照のこと.

その他

ホルモン剤による避妊はNF1女性の神経線維腫の増殖を促進しないことが示されている.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

NF1は常染色体優性遺伝の形式をとる

患者家族のリスク

発端者の両親

注:家族がNF1を認識していなかったり,親が臨床症状を呈する前に死亡していたりするために家族歴が陰性となる場合がある.

発端者の同胞 

発端者の子

患者の子はそれぞれ50%の確率で変異遺伝子を受け継ぐ.浸透率は100%であり,変異NF1遺伝子を受け継いだ子はほぼ確実にNF1の症状を呈する.しかし,子の症状は罹患した親に比べ明らかに重症(軽症)でありうる.

他の家族 

他の家族のリスクは患者の親の遺伝的背景に左右される.もし親が罹患しているのであれば,その親や他の子供もリスクを有していることになる

遺伝カウンセリングに関連した問題

一家系で複数の新生突然変異が存在する可能性 Upadhyayaらはひとつの家系で3種類の異なる変異が確認された例を報告しており,家系内の罹患者は同じ変異を有していると推測することに対して注意を喚起している.別の家系でも2つの変異が単一家系内で報告されている.

明らかな新生突然変異を認める家系について 患者の両親が非罹患者である場合には,発端者の発症は新生突然変異によると考えられる.しかしながら,父親が異なる場合や母親が異なる場合(例 生殖補助医療による)や,明らかにされていない養子縁組など,非医学的な要因が関係する可能性もある.

家族計画 

DNAバンキング

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,ことに現在利用できる分子遺伝学的検査の感度が100%ではない疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照のこと.

出生前診断

リスクのある妊娠に対する出生前診断は胎生10−12週*に採取した絨毛や15−18週に採取した羊水中の細胞から調製したDNAを用いて行うことができる.検査を行うには家系内患者の遺伝子変異がすでに明らかとなっているか,家系内で連鎖が明らかとなっている必要がある.

*胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

超音波検査 非常に重症のNF1を出生前に超音波で診断した報告があるが,大多数のNF1について超音波検査は有用性がない.

NF1のように臨床的重症度や発症年齢が多様である疾患に対して出生前診断を求められることは通常ない.特に遺伝子検査が早期診断よりも中絶を目的として考慮される場合は,医療関係者と家族の間では出生前診断に対する見解の相違が生じるかもしれない.多くの医療機関では最終的には両親の意思を尊重するとしているが,この問題については注意深い検討が求められる.

着床前診断 NF1に対する着床前診断の報告があり,家系内の遺伝子変異が判明している場合には技術的には可能である.

訳注:一般にNF1に対して出生前診断の適応があるとは考えられていないし,着床前診断も行われていない.


関連情報

希少難病者の会「あせび会」内にNF1の部会がある.

http://www.asebikai.com/


更新履歴

  1. Gene Review著者: J M Friedman, MD, PhD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    Gene Review 最終更新日: 2007.1.31. 日本語訳最終更新日: 2007.5.14.
  2. Gene Review著者: J M Friedman, MD, PhD
    日本語訳者: 大畑 尚子(沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター)  
    Gene Review 最終更新日: 2009.6.2. 日本語訳最終更新日: : 2011.10.17 (present)

原文 Neurofibromatosis 1

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