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Birt-Hogg-Dube´症候群
(Birt-Hogg-Dube´ Syndrome)

Gene Review著者: Jorge R Toro, MD
日本語訳者: 入部康弘・古屋充子(横浜市立大学医学部分子病理学講座)    
Gene Review 最終更新日: 2008.9.9. 日本語訳最終更新日: 2012.10.17.

原文 Birt-Hogg-Dube´ Syndrome


要約

疾患の特徴 

Birt-Hogg-Dube´症候群(BHDS)の臨床的な特徴には皮膚症状(線維毛包腫、毛盤腫/血管線維腫、毛包周囲線維腫、尖端線維性軟)、肺嚢胞/気胸歴、そして様々なタイプの腎腫瘍が含まれる。病気の重症度は同じ家族内ですら著しく異なり得る。皮膚病変は典型的には20代〜30代に現れ、年齢とともにサイズも数も増加していくのが一般的である。肺嚢胞はほとんどの場合、両側性また多発性に生じる。BHDSの人は大抵は無症候性だが、自然気胸のリスクが高い。BHDSの人は腎腫瘍のリスクが通常より高く、これは典型的には両側性かつ多発性で通常進行が遅い。腫瘍と診断される年齢の中央値は48歳である。最も一般的なBHDSの腎腫瘍は、組織学的にオンコサイトーマと嫌色素性腎細胞癌タイプとのハイブリッドタイプである。腎腫瘍と常染色体優性遺伝性の自然気胸の両方あるいはいずれかを発症するが、皮膚症状を伴わない家系も存在する。

診断・検査 

BHDSは臨床所見と分子遺伝学的検査によって診断される。FLCNはBHDSに関与する唯一の遺伝子である。シーケンス解析は臨床知見に基づいて実施すべきだが、これで解析すると、発症者の88%でFLCN変異を同定することができる。したがって臨床診断基準を満たしていても、同定可能な変異をもたない発症者もいる(訳注 複数エクソンにまたがる大規模変異・欠失を示す家系が近年報告された)。

臨床的マネジメント 

病変の治療:毛包腫/毛盤腫に対するレーザー焼灼は一時的に著明な効果をもたらすが、通常再発する。気胸に対しては、一般の気胸に準じた治療法をとる。腎腫瘍に対しては、可能ならばnephron-sparing surgeryが好ましい治療法であるが、腫瘍サイズと部位にもよる。腎全摘出術が必要な場合もある。

定期検査:定期的な腹部/骨盤コントラストCT、もしくはMRI。

回避すべき薬剤や環境:喫煙と高い大気圧。

リスクのある親族の検査:リスクのある家族を早期発見するため、家系特異的なFLCN変異を分子遺伝学的検査で探すことは、診断の確実性を高め、またリスクのある親族のなかで、家系特異的なFLCN変異を受け継いでいない人へのハイコストなスクリーニング検査の実施を減らすことができる。

 

遺伝カウンセリング 

BHDSは常染色体優性遺伝である。BHDSの子どもは50%の確率で変異を受け継ぐ。発症している家族の病因アレルが同定されていれば、変異を受け継ぐリスクの高い妊娠に関して、胎児が変異を受け継いだかどうか出生前診断することもありうる。


診断

臨床診断

Birt-Hogg-Dube´症候群(BHDS)の三主徴は以下のものが存在することである。

  • 皮膚症状.  BHDSの人は通常、多数の小さい皮膚色をしたドーム状の丘疹を顔、頚部、体幹上部に呈する。本来の皮膚科学的三主徴は線維毛包腫、毛盤腫、尖端線維性軟であった[Toro et al 1999]。しかし、BHDSに特異的なのは線維毛包腫だけである。毛包周囲線維腫と血管線維腫もまたBHDSに関連があるとされてきた。毛盤腫は本質的には、組織学的にも臨床的にも血管線維腫と区別し難い。毛盤腫という用語はBHDSにおいて発症するときの血管線維腫を説明するときに用いられてきた。

BHDSの皮膚科学的診断は、5つ以上の顔面または体幹の丘疹と、少なくとも1つの組織学的に確認できる線維毛包腫がみられる人に対してなされる[Toro et al 1999]。

  • 線維毛包腫は中心の毛包から伸びる2~4個の上皮細胞の多数の網状束と定義される。境界明瞭、ムチンの豊富な、あるいは肥厚した結合織が上皮成分を被包することもある。診断には生検が必要である。

注:薄片生検では通常は十分ではない。線維毛包腫の診断には1回以上のパンチ生検が必要なことがある。

  • 毛盤腫は過誤腫性の病変で、真皮網状層において肥厚した線維性結合織と血管間質が増生し、境界明瞭な円形〜楕円形を呈して毛包に接する。顔面では毛包密度が高いため、大抵はこれらの病変の周囲に毛包がみられる。血管線維腫は臨床的にも組織学的にも本質的には毛盤腫と同じである。

注:毛盤腫/血管線維腫があればBHDSを疑うが、診断を決定付けるものではない。血管線維腫は結節性硬化症(tuberous sclerosis complex [TSC])や1型多発性内分泌腫瘍(multiple endocrine neoplasia type 1 [MEN1])にもよくみられる。

  • 尖端線維性軟、あるいは懸垂性線維腫は有茎性の軟らかい丘疹で、組織学的には肥厚した軽度乳頭状の表皮に疎な結合織と血管が伴うことに特徴付けられる。
  • 毛包周囲線維腫は真皮網状層において線維性結合織および血管間質が毛包を取り囲むように境界明瞭に増殖したものである。
  • 肺嚢胞および自然気胸. BHDSのほとんどの人(89%)は多発性、両側性の肺嚢胞を持っており、胸部CTで同定できる。1人あたりの肺嚢胞の総数は0から166である(平均16)。24%(48/198)のBHDS患者は1回以上の気胸の既往があった[Toro et al 2007]。気胸の既往がある患者は全員多発性の肺嚢胞が胸部CTで同定された。
  • 腎腫瘍. 腎腫瘍は通常両側性、多発性である。腫瘍のタイプとしてはオンコサイトーマ、色素嫌性腎細胞癌、ハイブリッド腫瘍、(頻度は低いが)淡明細胞型腎細胞癌が含まれる。

注:BHDSの本来の像と診断は皮膚病理学に基づいている。しかし最近の調査で、BHDS患者のなかには皮膚病変を伴わずに肺の合併症や腎腫瘍を呈する人もいることが示されている。

 

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 FLCNはBHDSに関連のある唯一の遺伝子である。

臨床検査

  •  選択したエクソンのシークエンス解析BHDSの家系のうち53%(27/51)がエクソン11のポリシトシン領域にCヌクレオチドの欠失(c.1285delC)あるいは重複(c.1285dupC)がある。この領域は変異のホットスポットである(表2参照)。
  • 全コーディング領域のシークエンス解析 エクソン4から14まで行う。発端者における変異同定頻度を88%まで引き上げる。

表1. Birt-Hogg-Dube´症候群に用いられる分子遺伝学的検査の要約

遺伝子記号

検査法

検出される変異

変異検出率1

検査の適応

FLCN

エクソン11のシークエンス解析

ポリシトシン領域の欠失(c.1285delC)/重複(c,1285dupC)

〜53%

 

臨床 説明: Image testing.jpg

 

コード領域全体の解析

シークエンスの変化

〜88%

検査可能機関はGeneTests Laboratory Directoryを参照している.GeneReviewsでは,米国のCLIA認可施設または米国外の臨床検査施設のいずれかによりGeneTests Laboratory Directoryに記載されている検査のみ,分子遺伝学的検査を臨床的に可能な検査としている.GeneTestsは検査施設が提供した情報を確認することも,検査施設のライセンスや業績について保証することもない.医師は検査施設と直接連絡をとり,情報の確認を行う必要がある.

  1. Schmidt et al [2005], Toro et al [2008]

検査結果の解釈

シークエンス解析結果の解釈において考慮する課題は,ここをクリック。

検査方法

発端者の診断を確定する

分子遺伝学的検査はBHDSであることがわかっている、あるいはその疑いがある全ての人が受けることが望ましく、以下のどれか一つを持っている人も含まれる。

  • 5個以上の丘疹と、少なくとも1つは組織学的に確認された線維毛包腫[Toro et al 1999]。BHDSの家族歴は問わない。
  • 多発性で両側性の嫌色素性、オンコサイトーマ、ハイブリッドのどれか、あるいはすべての腎腫瘍
  • 孤発性のオンコサイトーマ、嫌色素性、あるいはハイブリッド腎腫瘍と、上記のタイプのどれかの腎腫瘍の家族歴
  • 喫煙歴やCOPDの既往の無い常染色体優性原発性自然気胸

出生前診断および着床前遺伝子診断(PGD)リスクのある妊娠に対する出生前診断および着床前遺伝子診断では,家系内で疾患の原因となる変異をあらかじめ同定することが必要となる.

遺伝子レベルでの関連疾患

常染色体優性原発性自然気胸

優性遺伝の自然気胸を示す家系にFLCNの胚細胞性変異がみられた。肺病変が唯一の症状のようである。浸透率は100%である[Graham et al 2005, Painter et al 2005]。

体細胞変異

後天性のFLCN変異は散発性淡明細胞型腎細胞癌[da Silva et al 2003, Khoo et al 2003]や結腸癌[Kahnoski et al 2003, Shin et al 2003],に同定されてきたが、この遺伝性疾患に特徴的な関連腫瘍は伴わなかった。


臨床像

自然経過

Birt-Hogg-Dube´症候群(BHDS)の臨床的特徴には線維毛包腫(特定の皮膚病巣)、肺嚢胞/気胸の既往、様々なタイプの腎腫瘍が含まれる。疾患重症度は家族内でも家系間でも著しく異なる。

皮膚病変

BHDSは血管線維腫から毛包周囲線維腫から線維毛包腫にまでわたる皮膚過誤腫のスペクトルと関連がある[Toro et al 2008]。FLCNに胚細胞変異のある家系は、彼らの唯一のBHDSの皮膚における臨床型として血管線維腫(すなわち毛盤腫)、毛包周囲線維腫、あるいはその両方になることがありうる[Toro et al 2008]。加えて、BHDSの人のなかには口腔の丘疹と皮膚膠原腫を発症する者もいる[Nadershahi et al 1997, Toro et al 1999]。

皮膚病変の発症は典型的には20代から30代である。皮膚病変は年齢とともにサイズも数も増してくる傾向がある。皮膚病変の遅い発症はより軽症の皮膚の臨床型と関連があることが多い。さらに、女性は男性よりも病変が小さく数も少ない傾向がある。

最近では、FLCNの胚細胞変異があり、悪性黒色腫の既往もある人が3名報告されている[Khoo et al 2002, Toro et al 2008]。BHDS家系内に、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)を発症した者と皮膚平滑筋肉腫になった者とがいたケースも最近報告されている[Toro et al 2008]。

肺嚢胞と自然気胸

肺嚢胞はほとんどの場合、両側性で多発性である。BHDSと肺嚢胞がある人の多くは無症候性であるが、自然気胸になるリスクが高く、しばしばそれは再発性である。気胸の臨床症状は、無症候性のものから呼吸困難および胸痛まで幅がある。臨床所見には頻呼吸、あるいは呼吸音の減弱または欠如が含まれる。気胸の確定診断のためには放射線検査としては胸の高解像度CTが必要となるかもしれない。胸部X線では小房化気胸を同定するには感度が足りないかもしれないからだ。

Toroらの最近の研究によれば[Toro et al 2008]、FLCNの胚細胞変異がある人の89%は胸部CTで肺嚢胞が見つかった。先行する報告例を全部合わせても77%なので、これはそれを上回る。Toroらの同研究[Toro et al 2008]ではFLCNの胚細胞変異がある人の38%は自然気胸の既往があった。先行する報告例を全部合わせると33%なので、これは同等の率である。

BHDSの人で気胸の家族歴がある人は、BHDSの人で気胸の家族歴が無い人に比べて気胸のリスクが統計的に有意に高い。BHDSの人は同一家系内でBHDSでない人よりも自然気胸のリスクが50倍高い[Zbar et al 2002]。

腎腫瘍

FLCNの胚細胞変異があり、腎腫瘍がある人は約70人報告されている[Toro et al 2008]。最も一般的な腫瘍はオンコサイトーマと嫌色素性細胞のハイブリッドタイプ、いわゆるハイブリッド腫瘍(67%)と、嫌色素性腎細胞癌(23%)、腎オンコサイトーマ(3%)である。腎オンコサイトーマだけが良性腫瘍であると考えられている[Pavlovich et al 2005]。他のタイプの腎腫瘍としては、頻度が低いものの淡明細胞型腎細胞癌や腎乳頭状癌もみられる。

BHDSと関連がある腎腫瘍のほとんどが両側性、多発性で、進行が遅い。診断を受ける年齢の中央値は48歳で、31歳から71歳までの幅がある[Schmidt et al 2005]。

BHDSの人は、BHDSに罹っていない同胞に比べて腎腫瘍のリスクが7倍も高い[Zbar et al 2002]。アメリカ国立衛生研究所(NIH)にあるアメリカ国立がん研究所(NCI)の皮膚科癌クリニックと泌尿器科癌クリニックが把握したところを総合するに、胚細胞FLCN変異のある人の腎腫瘍の総有病率は29%-34%であった[Toro et al 2008]。他の調査者たちの調べたBHDS患者の腎腫瘍の事例から算出された頻度は6.5%であり、それに比べてこれほど頻度が高いというのは把握におけるバイアスを反映しているのかもしれない。

BHDSに関連する腎腫瘍はBHDSの人の死亡率よりも罹病率に影響を与えるかもしれない。Nephron-sparing surgeryは腎機能を温存することによって腎腫瘍に関連する罹病率を引き下げるかもしれない。なぜならBHDSのある人は通常、多発性、両側性の腎腫瘍を発症するからである。

術中診断または剖検で観察される腎オンコサイトーシスはBHDSの人が腎腫瘍を発症する可能性の証拠となる[Toro et al 2008]。

他の症状

口腔の丘疹:[Nadershahi et al 1997, Toro et al 1999]と耳下腺オンコサイトーマ[Liu et al 2000, Schmidt et al 2005, Toro et al 2008]はBHD症候群において高い頻度でみられる。

非腎腫瘍:BHDSで最近報告されたには次のものが含まれる[Toro et al 2008]。

  • 甲状腺癌 2例
  • 結腸癌 2例

結腸癌とBHDSを結び付ける証拠については議論がある[Khoo et al 2002, Zbar et al 2002]。

  • 以下は1例
    • 頭頚部の扁平上皮癌
    • ホジキン病
    • 子宮癌
    • 前立腺癌
    • 乳癌
    • 子宮頚部扁平上皮癌
    • 横紋筋腫
    • 副腎腫瘤

 以下のものも1例報告されている。

遺伝子型と臨床型の関連

遺伝子型と臨床型の関連が報告されている。しかしこれらの症状が本当にBHDSと関連しているのかについては分かっておらず、さらなる研究が待たれるところである。

FLCN変異のタイプと肺および皮膚症状との間に関連はみられない。

先行研究では、c.1285delC変異のある人は他のFLCN変異のある人に比べて腎腫瘍のリスクが低いかもしれないのだが、これは大規模な研究によって評価される必要がある。

浸透率 

三大臨床症状に基づくと、BHDSの浸透率はかなり高いと考えられる。

促進現象 

促進現象がBHDSで起こることは知られていない。

病名

Hornstein-Knickenberg症候群(HK)とは家族性多発性毛包周囲線維腫のことであるが、BHDSのスペクトルに属する[Schulz & Hartschuh 1999].。

頻度

様々な母集団から60以上の罹患家系が報告されている。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

皮膚病変

線維毛包腫は稀な疾患で、Birt-Hogg-Dube´症候群(BHDS)に特異的である。線維毛包腫は様々な皮膚病変に臨床的に似ているので、組織診が必要である。

尖端線維性軟、あるいは懸垂線維腫は非特異的で、一般にみられる。

BHDS関連過誤腫は内臓悪性腫瘍のリスクの高い他の遺伝性皮膚疾患、例えば結節性硬化症(TSC)、毛包上皮腫、MEN1、Cowden症候群(PTEN過誤腫症候群;PTEN hamartoma tumor syndrome)といったものから区別されるべきである。

肺症状

いくつかの遺伝性あるいは非遺伝性疾患は、肺嚢胞と気胸の両方あるいはいずれかをきたす。詳細な病歴と理学的検査がこれらの疾患とBHDSとの区別の助けとなる。これらの疾患には以下のものが含まれる。

  • 結節性硬化症 (TSC)
  • 肺リンパ脈管筋腫症(LAM), 孤発例としてもTSCの1所見としても現れうる。

腎腫瘍

BHDSと違い、家族性腎癌症候群のほとんどは様々なタイプの腎病理と関連がある[Linehan et al 2005]。家族性腎癌症候群とそれらの腎病理は以下のものを含む。

  • von Hippel-Lindau症候群(von Hippel-Lindau syndrome;VHL症候群)。両側性で多発性の淡明細胞性腎細胞癌。VHL症候群の人は中枢神経の血管芽腫、網膜血管腫、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍のリスクも高い。
  • 遺伝性平滑筋腫症および腎細胞癌(HLRCC)。通常は孤立性腎腫瘍で、管状乳頭腎細胞癌から2型腎乳頭状細胞癌から集合管癌までの組織学的スペクトルがある。HLRCCの人は皮膚平滑筋腫と、早発性かつ進行性子宮筋腫の両方あるいはいずれかを呈しうる。

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

Birt-Hogg-Dube´症候群(BHDS)と診断された人の病気の範囲を確証するために、以下の評価が推奨されている。

  • 皮膚科精査と、疑がわしい皮膚病変のパンチ生検
  • 胸部の高解像度CT(HRCT)またはCTは肺嚢胞を視覚化するうえで強く推奨される。気胸の症状/徴候のある人は直ちに胸部のX線とCTを撮り、適切な治療を受けるべきである。
  • ベースライン評価において腹部/骨盤へのコントラストCTスキャンまたはMRIで腎腫瘍の有無を検査する。腎臓の超音波検査では嚢胞性病変と充実性病変を区別できるかもしれない。

病変に対する治療

線維毛包腫と毛盤腫の治療は難しい。レーザー焼灼では相当な改善がみられるが、再発が起こり得る[Gambichler et al 2000]。

気胸の治療は一般的な場合と一緒である。

Nephron-sparing surgeryは可能である限り好ましい治療であるが、腫瘍のサイズと位置による[Pavlovich et al 2005]。3.0cm以上か、急速に進行するか、あるいはその両方の腎腫瘍では通常、腎の部分摘出が必要となる。全摘出が必要となるケースもあるかもしれない。主な目的は腎機能を長期的に維持するために腎臓のできるだけ多くの部分を温存することである。なぜなら罹患者は通常、多発性・両側性の腎腫瘍を発症するからである。

一次病変の予防

BHDSに関する予防的あるいは治癒的な治療は無い。しかしながら、腎細胞癌の発症は喫煙と最も強い正の連関がある[Moore et al 2005]。

経過観察

臨床経過観察に関して一致した見解は無い。コンセンサス会議が行われるまでは、推奨されている事項は暫定的なものである。

BHDSであるとわかっている人、臨床症候は無いがFLCN変異があることがわかっている人、リスクはあるが遺伝子検査を受けていない家族は、BHDSのスペクトルに精通した医師による定期的なモニタリングを受けるべきである。特に、腎腫瘍に対する定期検査とモニタリングには以下を含む。

  • ベースライン評価における腹部/骨盤へのコントラストCTまたはMRI(CTが不可能な場合)で正常であった場合、腎病変評価を完全なものとするためには2~3年に一度検討するのが最適である。しかし、腎腫瘍は進行が遅く、腎腫瘍治療にあたる外科医も3.0cmルールを適用しているので[Pavlovich et al 2005]、BHDSかFLCN胚細胞変異、あるいはその両方のある人をスクリーニングするためには、一部の患者には腎超音波検査で十分かもしれない。長期的な放射線被ばくの累積を避けることにもなる。

注:腎超音波検査の適用は、CT検査またはMRI検査で2回正常の結果が出た人や腎腫瘍の家族歴が無い人に対して特に適切である。

  • 疑わしい病変(直径1.0cm未満、不確定な病変、あるいは複合嚢胞)が先の検査でみられた場合は、生涯の放射線被ばくを減らすために腹部/骨盤へのコントラストCTを、腎のMRIまたは腹部の超音波検査とともに2年に1回行うのが推奨される。
  • 泌尿器外科医が腎腫瘍を評価するのが適切である。
  • 3.0cm以下の腫瘍は定期的な画像診断でモニターする。この程度小さければ外科的介入は必要ないかもしれない。
  • 進行の速い病変や、痛み、血尿、非典型的な症状などがみられた場合には、さらなる個別のアプローチが必要である。

回避すべき薬物や環境

以下のものは回避すべきである。

  • 喫煙
  • 高い大気圧;自然気胸を誘発する。

リスクのある親族への検査

家系特異的な変異がわかっているときは、リスクのある家系の人に早期の同定をするために分子遺伝学的検査を実施することは診断の確実性を上げるとともに、リスクのある家系で変異を受け継いでいない人に対して高価なスクリーニング検査を実施する無駄を減らす。

早期に臨床症状を認識することで、適切な時期での介入が可能になり、予後が改善するかもしれない。したがって、リスクはあるが無症状の親族を早期に同定するのが適切である。

リスクのある親族への遺伝カウンセリング目的の検査に関連する問題点についてはGenetic Counselingを参照のこと。

研究中の治療法

幅広い疾患と症状に関する臨床研究の情報へアクセスするにはClinicalTrials.govを検索するとよい。

注:この疾患に関する治験はないかもしれない

その他

遺伝クリニックは、遺伝学の専門家をスタッフに揃えており、自然史、治療、遺伝形式、家系内の他の人への遺伝リスクに関する個人や家族向けの情報も、利用可能な商業リソースに関する情報も提供している。GeneTests Clinic Directoryを参照のこと。

Consumer Resourcesを見れば、この疾患に関して疾患特異的あるいは包括的あるいはその両方のサポートをしている組織を見つけることができる。これらの組織は個人や家族に情報や支援、他の罹患者とのコンタクトを提供するために設立されたものである。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Birt-Hogg-Dube´症候群(BHDS)は常染色体優性遺伝をする。

患者家族のリスク

発端者の両親

BHDSの人には親が罹患者の人もいれば、de novo変異の結果としてBHDSになった人もいる。

  • de novo変異で引き起こされた症例の割合は不明である。微細な症状に関して評価されていない親が相当数いるうえ、分子遺伝学的検査を受けており臨床的には罹患していない親に関する十分なデータもないからだ。
  • 発端者のFLCN病因変異が同定されている場合、de novo変異があると疑われる発端者の両親には、分子遺伝学的検査を含む評価が推奨される。

注:BHDSの診断を受けた人のなかには罹患者の親をもつ人もいるが、家族の症状が認識できていなかったり、親が発症する前に早逝したり、親の病気の発症が遅かったりして家族歴が無しになる場合もあるかもしれない。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは発端者の両親の遺伝的状態に依存する。
  • 発端者の親が臨床的に罹患していたり病因変異を有していたりしたら、発端者の同胞が変異を受け継いでいる可能性は50%である。
  • 発端者で同定された変異をその両親とも有していなかったら、同胞のリスクは低いが一般の人より高い。胚細胞系でモザイク遺伝が起こっている可能性があるからだ。

発端者の子

BHDSの人の子が変異を受け継いでいる可能性はそれぞれ50%である。臨床的重症度は予測不能である

発端者の他の家族

  • 親族のリスクは発端者の両親の状態に依存する。
  • 親が罹患していることが明らかになったら、その人の家族はリスクを有していることになる。

遺伝カウンセリングに関連した問題

リスクのある親族への、早期診断や治療を目的とした検査に関する情報については、前出の「臨床的マネジメント」中の『リスクのある親族の検査』を参照のこと。

明らかに新生突然変異による家族

常染色体優性疾患の発端者の両親のいずれもが病因変異も疾患の臨床エビデンスも有していないときは、発端者はde novo変異の可能性がある。しかし、代替的な父性あるいは母性(例えば補助生殖)といった医療以外のことに関する説明や、本人も知らなかった養子縁組についても綿密に調べることがありうる。

リスクのある無症状の家族に対する検査

リスクのある家族への分子遺伝学的検査は、臨床定期検査を生涯にわたって実施する必要があるかを見極めるには適切である。結果の解釈は病因変異が罹患した家族で同定されている場合に最も正確となる。病因変異のある人は生涯にわたる定期的な検査が必要となる。一方、変異を受け継いでいない家族やその子どもは一般の人と同等のリスクがある。

リスクのある人を早期に同定することは医療的マネジメントにも影響する。しかし米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、小児癌を発症するリスクが増大しない場合には、リスクのある人への遺伝子検査は18歳になって遺伝子検査に関するインフォームド・ディシジョンができるようになるまで待つことを推奨している[American Society of Clinical Oncology 2003]。

家族計画 

  • 遺伝リスクを決定し、出生前診断を利用できるかを話し合うのに最適な時期は、妊娠の前である。

  • 罹患している、あるいはリスクのある若年成人には遺伝カウンセリング(子どもへの潜在リスクや生殖に関する選択肢についての議論を含む)を提供するのが適切である。

DNAバンキング

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。DNAバンクは分子遺伝学的検査の感度が100%でないような状況においてはことに重要である。DNAバンキングを提供している研究施設のリストは説明: Image testing.jpgを参照のこと。

出生前診断

50%のリスクを抱えた妊娠の場合の出生前診断は、通常胎生15−18週に採取した羊水中細胞や10~12週*に採取した絨毛から調製されたDNAを分析することで可能である。出生前診断を行う以前に、罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある。(訳注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない)

*胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。

着床前診断 着床前診断は病因遺伝子変異が同定されている家族には利用可能かもしれない。着床前診断を提供している研究施設については説明: Image testing.jpgを参照のこと。

(訳注:日本では本症に対する着床前診断は行われていない)


原文 Birt-Hogg-Dube´ Syndrome

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