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家族性トランスサイレチンアミロイドーシス
(Familial Transthyretin Amyloidosis)

[[Synonym: Familial TTR amyloidosis Includes: Familial Amyloid Cardiomyopathy, Familial Amyloid Polyneuropathy Type I (Portuguese-Swedish-Japanese Type), Familial Amyloid Polyneuropathy Type II (Indiana/Swiss or Maryland/German Type), Leptomeningeal Amyloidosis, Familial Oculoleptomeningeal Amyloidosis (FOLMA),]

Gene Review著者:Yoshiki Sekijima, MD, PhD, Kunihiro Yoshida, MD, PhD, Takahiko Tokuda, MD, PhD, Shu-Ichi Ikeda, MD, PhD
日本語訳者: 関島良樹(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)    

Gene Review 最終更新日: 2009.9.15. 日本語訳最終更新日: 2011.4.4.

原文 Familial Trasthyretin Amyloidosis


要約

疾患の特徴

家族性トランスサイレチン (TTR) アミロイドーシスの特徴的な臨床症状は,緩徐進行性の感覚運動性ニューロパチーと自律神経障害であるが,心筋障害,腎障害,硝子体混濁などの末梢神経以外の症状や中枢神経障害も認められる.発症年齢はポルトガルや日本の集積地の患者では20歳代〜40歳代が一般的であるが,その他の地域ではより高齢で発症する.典型的には,下肢遠位部の異常感覚や感覚低下で発症し,2〜3年の間に運動障害が続発する.起立性低血圧,交代性の便秘・下痢,悪心・嘔吐発作,胃蠕動の低下,陰萎,無汗症,尿閉,失禁などの自律神経障害も初発症状となりうる.心アミロイドーシスは進行性の心筋症の臨床像を呈する.髄膜アミロイドーシスでは,認知機能障害,精神症状,視力障害,頭痛,けいれん,運動麻痺,失調,脊髄障害,水頭症,頭蓋内出血などの中枢神経症状を呈する.

診断・検査 

家族性TTRアミロイドーシスの診断には,臨床症状に加えて生検組織におけるアミロイド沈着の証明とTTR遺伝子変異の同定が必要である.組織へのアミロイド沈着はコンゴレッド染色により検出可能であるが,更に免疫組織染色の追加が望ましい.質量分析で血清中の変異TTR蛋白を検出することが可能であるが,TTR遺伝子の病原性変異の種類が非常に多いため,変異部位やアミノ酸置換の種類を特定することはできない.このため,TTR遺伝子のシークエンスが通常必要となる.TTR遺伝子は家族性TTRアミロイドーシスに関連する唯一の遺伝子であり,TTR遺伝子のシークエンスにより99%以上の病原性の変異を検出できる.

臨床的マネジメント 

発症者に対する治療 肝移植によりアミロイド沈着の進行を止めることが可能である.肝移植療法が推奨される患者は60歳以下であり(1)発症から5年以内,(2)末梢神経障害が下肢に限局しているか自律神経障害のみ,(3)明らかな心障害・腎障害を認めない,である.手根管症候群や硝子体混濁は,それぞれ手根管解放術や硝子体切除術の適応となる.

経過観察: 末梢神経障害のモニターの目的で神経伝導速度が,心機能のモニターの目的で心電図や心エコーが行われる.

発症リスクのある家族の遺伝学的検査 家系内の発症者のTTR遺伝子の変異が同定されている場合,発症リスクのある家族の遺伝学的検査は早期診断および治療を可能にする.家系における遺伝子変異が不明な場合,臨床的な評価により早期診断および治療が可能となる.

遺伝カウンセリング 

家族性TTRアミロイドーシスは常染色体優性の遺伝性疾患である.患者が変異TTR遺伝子のヘテロ接合体の場合,子供は50%の確率でTTR遺伝子の変異を受け継ぐ.患者がホモ接合体の場合,(1)同胞は50%の確率で1つの変異TTR遺伝子を受け継ぎ,25%の確率で2つの変異TTR遺伝子を受け継ぐ.(2)全ての子供は1つの変異TTR遺伝子の変異を受け継ぐ.家系内の発症者の遺伝子変異が同定されている場合,リスクを有する胎児の出生前診断が可能である.しかし,家族性TTRアミロイドーシスのように成人発症で知的障害を伴わず治療も存在する疾患に対して,出生前診断を求められることは通常ない.


診断

臨床診断

以下の症状を有する成人において家族性TTRアミロイドーシスが疑われる.

  • 緩徐進行性の感覚運動性ニューロパチーおよび自律神経障害を有し以下の症状を合併する
  • 心伝導ブロック
  • 心筋症
  • 腎障害
  • 硝子体混濁
  • 常染色体優性の家族歴は本症の診断を示唆するが,家系内に発症者を認めないことは本症を否定する根拠にならない.特に50歳以上の高齢発症の患者の場合は,家族歴がないことが多い.

検査

組織生検 家族性TTRアミロイドーシスを含むアミロイドーシスの診断には,生検組織におけるアミロイド沈着の証明が必須である.生検組織のアミロイド沈着はコンゴレッド染色で検出可能であり,偏光顕微鏡で観察すると,特徴的な緑黄色の複屈折を示す.生検に適する組織は,腹壁皮下脂肪,皮膚,胃粘膜,直腸粘膜,腓腹神経,および手根管解放術の際に得られた腱周囲の脂肪組織である.胃腸粘膜の内視鏡的生検の感度は約85%である.腓腹神経へのアミロイド沈着は斑状のことが多いので,腓腹神経生検の感度は胃腸粘膜の内視鏡的生検よりも劣る[Hund et al 2001, Koike et al 2004, Vital et al 2004].

沈着しているアミロイドが抗TTR抗体で特異的に染色されることを確認することが望ましい.

血清中変異TTR蛋白 TTR蛋白は四量体構造とった可溶性の蛋白として血清中を循環している[Kelly 1998, Rochet & Lansbury 2000].TTRの血清中濃度は20-40 mg/dL (0.20-0.40 mg/mL)である.病原性を有するTTR遺伝子変異はTTR蛋白の高次構造の変化をきたし,TTR四量体構造の安定性を低下させ,アミロイドを形成し易い単量体への解離へと導く[Sekijima et al 2005].家族性TTRアミロイドーシス患者および健常者の血清中には少量(0.28-0.56 μg/mL)のTTR単量体が検出される[Sekijima et al 2001].血清中のTTRを抗TTR抗体で免疫沈降した後,質量分析で解析することにより,血清中の変異TTR蛋白を野生型TTRから分離して検出することが可能である[Tachibana et al 1999].これまでに報告された変異TTRの約90%が質量分析で検出可能である.それぞれの変異TTRと野生型TTRとの分子量の差はConnorsらの総説に記載されている[Connors et al 2003].

遺伝学的検査

  • 遺伝子 TTR遺伝子が家族性TTRアミロイドーシスに関連する唯一の遺伝子である.

  • 遺伝学的検査の臨床的利用

    • 標的変異解析 最も頻度の高い遺伝子変異であるV30M変異は,様々な人種の多くの家系で同定されている.
    • 特定のエクソンまたは全エクソンのシークエンス解析 TTR遺伝子は4つのエクソンのみから構成されており,更にこれまでに報告されている全ての変異はエクソン2, 3, 4に存在しているので,全TTR遺伝子のシークエンス解析を効率的に施行することが可能である.ダイレクトシークエンスにより99%以上の病原性(アミロイド原性)変異を検出することができる.
    • 欠失/重複の解析 del122Ile変異を除いて,TTR遺伝子の欠失や重複がTTRアミロイドーシスの原因となったという報告はない.しかし,最近可能になった欠失や重複の新しい検査法を用いることによって,全エクソンのシークエンス解析で変異が検出されなかった患者で欠失や重複が検出される可能性は,理論的にはありうる.

表1 TTRアミロイドーシスで用いられる遺伝学的検査

検査方法

検出される変異

変異検出率

検査の有用性

標的変異解析

Val30Met変異

不明

臨床的に有用

シークエンス解析

全てのTTR遺伝子変異

> 99%

臨床的に有用

検査結果の解釈 シークエンス解析結果の解釈に関しては,ここをクリック.

検査のストラテジー

発端者に対する検査のストラテジー 以下の所見により家族性TTRアミロイドーシスを診断する.

  • コンゴレッド染色および抗TTR抗体による免疫組織染色による生検組織のアミロイド沈着の証明
  • TTR遺伝子の遺伝学的検査

注:質量分析による血清中の変異TTR蛋白の検出はスクリーニングに有用である

リスクのある無症状の成人に対する発症前診断では事前にその家系におけるTTR遺伝子の病原性変異を同定する必要がある.

胎児に遺伝のリスクのある妊娠における出生前診断および着床前診断では事前にその家系におけるTTR遺伝子の病原性変異を同定する必要がある.

遺伝子レベルでの関連疾患

Familial euthyroid hyperthyroxinemiaTTR遺伝子の正常多型である変異(Gly6Ser, Ala109Thr, Ala109Val, Thr119Met)によって引き起こされる(表5)[Nakazato 1998, Benson 2001, Saraiva 2001].TTR蛋白は血清中サイロキシン(T4)の約15%と結合しているが,これらの変異TTRはT4との結合力が高く,その結果として血中T4濃度が上昇する.しかし,これらの変異TTRは血中のfree T4やfree T3の濃度は上昇させないため,臨床的な症状を引き起こすことはない(これらの変異を有する患者の甲状腺機能は正常である).

老人性全身性アミロイドーシス(SSA; 以前は老人性心アミロイドーシスと呼ばれていた) は心臓を中心とした全身臓器に野生型TTRが沈着する疾患である.病的なアミロイド沈着は,肺,血管,腎髄質などにも認められる [Westermark et al 2003].SSAは高齢者における発症が多いが,生前診断されることは少なく,正確な有病率は不明である.80歳以上の高齢剖検例におけるSSAの頻度は22%-25%である.SSA患者は,無症状であるか心症状を呈することが多いが,手根管症候群を呈するSSA患者も存在する.SSAは変異TTRによる家族性TTRアミロイドーシスや原発性(AL)アミロイドーシスなど他のタイプのアミロイドーシスとの鑑別が必要である.ALアミロイドーシスでは心不全が急速に増悪するのと対照的に,SSAの心不全の進行は比較的緩徐である [Ng et al 2005]. Westermarkら[Westermark et al 2003]は,SSAにおけるアミロイドの検出においては,心臓よりも肺の方が信用性が高いと指摘している.


臨床像

自然経過

トランスサイレチンアミロイドーシスは,感覚運動性ニューロパチー,自律神経障害,非末梢神経症状(心筋障害,腎障害,硝子体混濁,中枢神経障害)などの臨床像を呈しうる(表2)

表2.トランスサイレチンアミロイドーシスに関連した表現型

表現型

代表的なTTR
遺伝子変異

病型

臨床像

TTRアミロイドニューロパチー

[以前のI型家族性アミロイドポリニューロパチー(ポルトガル−スウェーデン−日本型)]

初期

  1. 両下肢の感覚運動性ニューロパチー
  2. 手根管症候群
  3. 自律神経障害
  4. 便秘/下痢
  5. 陰萎

進行期

  1. 心筋障害
  2. 硝子体混濁
  3. 腎障害

Val30Met

TTRアミロイドニューロパチー

[以前のII型家族性アミロイドポリニューロパチー(インディアナ/スイス型,メリーランド/ドイツ型)]

初期

  1. 手根管症候群

進行期

  1. 両下肢の感覚運動性ニューロパチー
  2. 自律神経障害
  3. 便秘/下痢
  4. 陰萎
  5. 心筋障害
  6. 硝子体混濁
  7. 腎障害

Ile84Ser

心アミロイドーシス
(家族性アミロイド心筋症)

  1. 心肥大
  2. 心伝導障害
  3. 不整脈
  4. 狭心痛
  5. うっ血性心不全
  6. 突然死

Val122Ile

髄膜/中枢神経
アミロイドーシス

  1. 認知機能障害
  2. 失調
  3. 痙性
  4. けれれん
  5. 脳内出血/くも膜下出血
  6. 精神症状
  7. 水頭症

Asp18Gly

ニューロパチー I型家族性アミロイドポリニューロパチーの中核症状は緩徐進行性の感覚運動性ニューロパチーと自律神経障害である[Benson 2001, Hund et al 2001, Ando et al 2005].典型的には両下肢の感覚性ニューロパチーで発症し,2〜3年遅れて運動性ニューロパチーが出現する.感覚性ニューロパチーの初発症状は足先の異常感覚(灼熱感,電撃痛)と感覚低下である.温痛覚が振動覚や位置覚よりも早期に障害される.感覚性ニューロパチーが膝のレベルまで進行する時期には,両手の感覚障害も出現することが多い.進行期には,四肢の感覚障害,筋萎縮,筋力低下は手袋靴下型の分布を呈する.下垂足,下垂手,手指の機能障害は運動性ニューロパチーでよく見られる症状である.

自律神経障害は初発症状となることがある(表3).自律神経障害による症状としては,起立性低血圧[Vita et al 2005],交代性の便秘と下痢,悪心・嘔吐発作,消化管運動障害,陰萎,無汗症,尿閉・失禁が見られる.感覚低下と自律神経障害により,下肢の潰瘍が形成されやすい.家族性アミロイドポリニュロパチー患者において,自律神経障害はしばしば最も深刻な病態となる.

表3.家族性アミロイドポリニューロパチーの症状

症 状

症状を有する患者の割合(%)

Coelhoらの1994の報告

Ikedaらの1987の報告

感覚性ニューロパチー (下肢)

異常感覚が最も一般的

80%

49%

自律神経障害

嘔吐

3%

 

便秘

21%

 

交代性の便秘・下痢

12%

 

下痢

17%

4%

陰萎

24%

9%

起立性低血圧

 

7%

運動性ニューロパチー

 

7%

7%

家族性アミロイドポリニューロパチーの発症年齢はポルトガルや日本の集積地の患者では20歳代〜40歳代が一般的であるが,その他の地域ではより高齢で発症する.また,TTR遺伝子変異や人種が同一であっても,発症年齢にかなりの多様性が存在することが明らかになっている.これに関連して以下の報告がある.

  • Val30Met変異を有する二つの集積地(小川村と荒尾市)出身の日本人患者における平均発症年齢は40.1±12.8歳(22歳〜74歳)である [Nakazato 1998].
  • 二つの集積地出身でないVal30Met変異を有する日本人患者における平均発症年齢は非常に高齢で,62.7±6.6歳(52歳〜80歳)である [Misu et al 1999, Ikeda et al 2002].
  • Val30Met変異を有するポルトガル人患者の平均発症年齢は33.5±9.4歳(17歳〜78歳)である.
  • スウェーデン,フランス,英国人の患者は,日本人やポルトガル人に比べてはるかに高齢発症である[Plante´-Bordeneuve et al 1998].
感覚運動性ニューロパチーや自律神経障害は10〜20年かけて進行する.様々な心伝導障害も高頻度に合併する.進行期には患者は悪液質を呈し,心不全,腎不全,感染症などが主な死因となる.

II型家族性TTRアミロイドポリニューロパチー(インディアナ/スイス型,メリーランド/ドイツ型)は,特定のTTR遺伝子変異(L58H, L58R, K70N, I84S, Y114Hなど)に関連し,手根管症候群で発症する[Nakazato 1998, Connors et al 2000, Benson 2001, Hund et al 2001, Connors et al 2003](表5).本症では感覚運動性ニューロパチー・自律神経障害に加えて臓器障害も合併し,進行期には心筋障害や腎障害が高頻度に出現する.

末梢神経系以外のアミロイドーシス 家族性TTRアミロイドーシスの患者は,末梢神経障害を呈さない場合もある.心アミロイドーシスと髄膜アミロイドーシスは特定のTTR遺伝子変異に関連した代表的な非末梢神経系TTRアミロイドーシスである.このようなタイプの家族性TTRアミロイドーシスでは,末梢神経障害は,認めないか認めても非常に軽微である.

約1/3の変異TTRで硝子体混濁を合併する.

心アミロイドーシス 進行性の心筋症を主徴とする心アミロイドーシスは,2/3以上のTTR遺伝子変異で報告されている(表5)[Nakazato 1998, Benson 2001, Saraiva 2001, Connors et al 2003, Hattori et al 2003].Asp18Asn, Val20Ile, Pro24Ser, Ala45Thr, Ala45Ser, His56Arg, Gly57Arg, Ile68Leu, Ala81Thr, Ala81Val,  His88Arg, Glu92Lys, Arg103Ser, Leu111Met, Val122Ileなどの特定のTTR遺伝子変異を有する家系では,末梢神経障害を伴わない心筋症の臨床像を呈することが多い(表5).

心アミロイドーシスは通常晩発性であり,多くの患者は50歳以降に拘束型心筋症による心症状が出現する.典型的な心電図所見としては,II, III, aVF, V1 − V3誘導での深いQ波を伴った梗塞様パターンが知られている.この心電図所見は左心室の前壁基部または前壁中隔への高度のアミロイド沈着によると考えられる.心臓超音波では,収縮機能は保たれているが左心室肥大を認める.肥厚した心室壁は特徴的なgranular sparkling像(ギラギラしたエコー輝度の上昇)を呈する.

心アミロイドーシスをきたす遺伝子変異の中でもV122I変異はアフリカ系アメリカ人において非常に頻度の高い変異である.疫学的な調査では,3.0-3.9%のフリカ系アメリカ人がV122I変異のヘテロ接合体であることが報告されている [Yamashita et al 2005].60歳以上のアメリカ人において,黒人における心アミロイドーシスの頻度が白人に比べて4倍高いことが知られているが,この原因としてアフリカ系アメリカ人におけるV122I変異が関与している可能性がある [Jacobson et al 1997].

髄膜(眼髄膜)アミロイドーシス Leu12Pro, Asp18Gly, Ala25Thr, Val30Gly, Ala36Pro, Gly53Glu, Gly53Ala, Phe64Ser, Tyr69His, Tyr114CysなどのTTR遺伝子変異を有する患者では軟膜・くも膜(髄膜)やくも膜下腔の血管壁へのアミロイド沈着が認められる(表5)[Petersen et al 1997, Nakazato 1998, Brett et al 1999, Mascalchi et al 1999, Uemichi et al 1999, Connors et al 2000, Benson 2001, Ellie et al 2001, Saraiva 2001, Ikeda et al 2002, Blevins et al 2003, Connors et al 2003, Hammarstro¨m et al 2003, Sekijima et al 2003].脳実質内の血管に移行するにつれてアミロイド沈着は軽度となる.

髄膜アミロイドーシスの患者は,認知機能障害,精神症状,視力障害,頭痛,けいれん,運動麻痺,失調,脊髄症状,水頭症,頭蓋内出血などの中枢神経症状をきたす.

髄膜アミロイドーシスの患者が硝子体へのアミロイド沈着を合併している場合は,家族性眼髄膜アミロイドーシス(FOLMA)と呼ばれる [Petersen et al 1997, Jin et al 2004].

髄膜アミロイドーシスの患者の髄液中の総蛋白濃度は上昇していることが多く,ガドリニウム造影MRIでは,脳表,脳室表面,脊髄表面の髄膜の高度の増強効果を認める [Brett et al 1999].

髄膜へのアミロイド沈着の確定診断には髄膜生検が必要であるが,特徴的なMRI所見とTTR遺伝子変異の組み合わせにより臨床的な診断が可能である [Mitsuhashi et al 2004].

その他 硝子体混濁はVal30Met変異を含むTTR遺伝子変異を有する家系の約20%に認められると報告されている  [Benson 2001, Connors et al 2003, Kawaji et al 2004, Benson & Kincaid,2007].43名のVal30Met変異を有する家族性TTRアミロイドーシス患者において硝子体混濁が初発症状であったと報告されている[Kawaji et al 2004].硝子体へのアミロイド沈着が唯一の症状であったTrp41Leu変異を有する患者も報告されている [Yazaki et al 2002].

腎臓も多くの場合障害を受ける臓器であり,剖検では腎臓への大量のアミロイド沈着が認められる.通常,中等度から高度の腎機能障害が進行期に認めれる [Haagsma et al 2004, Lobato et al 2004].

アミロイドの消化管壁への沈着,特にアミロイド沈着による消化管自律神経の障害が高頻度に認められる [Ikeda et al 1982, Ikeda et al 1983].

皮膚への結節状のアミロイド沈着がThr114His変異を有する患者で報告されている [Mochizuki et al 2001].

肺へのびまん性のアミロイド沈着による息切れを呈したAsp38Ala変異を有する2名の患者が報告されている[Yazaki et al 2000].

エリスロポエチンの低下を伴う貧血が25%の症例に認められる[Beirao et al 2004].

遺伝子型と臨床型の関連

ヘテロ接合体患者 数多くのTTR遺伝子の変異が報告され(表6),遺伝型と臨床型の関連についても多くの研究がなされているが,現在でも未解明の点が多い.

Val30Met変異でも,家系によって臨床像や発症年齢にかなりの多様性が存在しており,遺伝的な修飾因子や非遺伝的な因子が家族性TTRアミロイドーシスの臨床像に影響を与えていると考えられている[Holmgren et al 1997, Misu et al 1999, Munar-Que´s et al 1999, Sobue et al 2003, Soares et al 2005].

Val30Met変異とThr119Met変異を有する複合ヘテロ接合体では,Thr119Met変異がアミロイドーシスに対して抑制的に働くことが臨床的および実験的に証明されている [Alves et al 1997, Hammarstro¨m et al 2001, Sebastiao et al 2001].

90種類以上のTTR遺伝子変異が古典的な末梢神経障害や自律神経障害を呈する家族性アミロイドポリニューロパチーの臨床像を呈する.しかし,いくつかの変異では,臨床的に末梢神経障害や自律神経障害が非常に軽微であるか全く認めない特徴的な家族性TTRアミロイドーシスの臨床像を呈することが知られている.

  • Asp18Asn, Val20Ile, Pro24Ser, Ala45Thr, Ala45Ser, His56Arg, Gly57Arg, Ile68Leu, Ala81Thr, Ala81Val,  His88Arg, Glu92Lys, Arg103Ser, Leu111MetVal122Il変異は心アミロイドーシスを来す(表5)[Nakazato 1998, Benson 2001, Saraiva  2001, Connors et al 2003, Benson & Kincaid 2007].これらの変異を有する患者では末梢神経障害や自律神経障害は認められないか、非常に軽微である.
  • Leu12Pro, Asp18Gly, Ala25Thr, Val30Gly, Ala36Pro, Gly53Glu, Gly53Ala, Phe64Ser, Tyr69His, Tyr114Cys変異は髄膜アミロイドーシスに関連している(表5) [Petersen et al 1997, Nakazato 1998, Brett et al 1999, Mascalchi et al 1999, Uemichi et al 1999, Connors et al 2000, Benson 2001, Ellie et al 2001, Saraiva 2001, Ikeda et al 2002, Blevins et al 2003, Connors et al 2003, Hammarstro¨m et al 2003, Sekijima et al 2003]. TTR蛋白の四量体構造が非常に不安定な変異が髄膜アミロイドーシスを引き起こすことが示されている[Hammarstro¨m et al 2001, Sekijima et al 2003, Sekijima et al 2005]

ホモ接合体患者 ほとんどのTTRアミロイドーシスの患者は変異TTRのヘテロ接合体であるが,ホモ接合体患者において以下の知見が得られている.

  • これまでに少なくとも14家系から19名のVal30Met変異のホモ接合体患者が報告されている[Munar-Que´s et al 2001, Tojo et al 2008].
  • 7名のVal30Met以外の変異を有するホモ接合体患者(Val122Ile変異5名, Leu58His変異1名, Phe64Leu変異1名)が報告されている(表5) [Jacobson et al 1990, Nichols et al 1991, Ferlini et al 1996, Askanas et al 2000, Jacob et al 2007 ].

ホモ接合体患者は同じ家系内のヘテロ接合体患者よりもやや重症の経過(高い発症率,若年発症)をとり[Tojo et al 2008],アミロイド沈着はより広範に認められる[Yoshinaga et al 2004].ほとんどのホモ接合体患者は不完全浸透の家系に属している.

浸透率 

家族性TTRアミロイドーシスの浸透率は100%ではないので,TTR遺伝子変異を有する個人が高齢になるまで症状を呈さない可能性がある.浸透率は変異の種類,地理的な要因,人種的な要因によって異なると考えられる.

患者の集積地では他の地域に比べて,疾患の浸透率が非常に高いことが知られている[Misu et al 1999].ポルトガルでは,Val30Met変異を有する患者の87%が40歳以前に発症する.しかし,スウェーデンにおける浸透率は僅か2%であり,無症状のVal30Met変異を有するホモ接合体の存在も報告されている.

促進現象

患者の集積地において,TTRアミロイドポリニューロパチー家系内での表現促進現象が観察されている[Yamamoto et al 1998, Soares et al 1999, Misu et al 2000].日本には2つの集積地が存在するが,その内の1つの地域に由来するVal30Met家系では,母親からの遺伝の場合の方が父親からの遺伝の場合に比べてより強い表現促進現象を認める.子供が男性の場合は表現促進現象がより顕著となる[Yamamoto et al 1998].

疾患名

TTR遺伝子変異に関連した末梢神経障害は現在では家族性TTRアミロイドーシスと呼ばれているが,以前は以下のように呼ばれていた.

  • I型家族性アミロイドポリニューロパチー(ポルトガル−スウェーデン−日本型)
  • II型家族性アミロイドポリニューロパチー(インディアナ/スイス型,メリーランド/ドイツ型)

頻度 

Val30Met変異は,世界中から患者の報告があり,ポルトガル,スウェーデン,日本で家族性TTRアミロイドニューロパチーの集積地を形成している.様々なVal30Met変異以外のTTR遺伝子変異を有する家系も世界中で同定されている(表6).

世界で最も大きな家族性TTRアミロイドーシス患者の集積地はポルトガル北部地方であるが,この地域におけるVal30MetTTR変異を有する患者の頻度は538人に1人と推測されている.

アメリカの白人におけるVal30MetTTR変異を有する家族性TTRアミロイドーシス患者の頻度は100,000人に1人と推測されている [Benson 2001]. 

アフリカ系アメリカ人におけるVal122Ile変異の頻度は3.0-3.9%であり,この変異を有するヘテロ接合体のほとんどは晩発性の心アミロイドーシスを発症する.西アフリカの一部の地域では5.0%以上がVal122Ile変異のヘテロ接合体である.アメリカ人におけるVal122Ile変異の頻度は,白人で0.44%,ヒスパニック系で0.00%である[Jacobson et al 1997, Yamashita et al 2005].


鑑別診断

これまでにTTRを含めて20種類のアミロイド原性を有する蛋白質が人間のアミロイドーシスで同定されている[Buxbaum & Tagoe 2000].遺伝性のアミロイドーシスの中では,家族性TTRアミロイドーシスの頻度が最も高い.その他の遺伝性アミロイドーシスを表4にまとめた[Benson 2001, Hund et al 2001, Benson 2005].

表4.トランスサイレチンアミロイドーシス以外の遺伝性アミロイドーシス

タイプ

疾患名

臨床型

蛋白名

末梢神経型

アポAIアミロイドーシス
[従来のIII型家族性アミロイドポリニューロパチー(アイオワ型)]

  1. 腎障害
  2. 胃潰瘍
  3. 末梢神経障害

アポリポ蛋白AI

ゲルソリンアミロイドーシス
[従来のIV型家族性アミロイドポリニュー(フィンランド−デンマーク型)]

  1. 脳神経障害
  2. 角膜の格子状変性
  3. 末梢神経障害
  4. 手根管症候群

ゲルソリン

非末梢神経型

フィブリノーゲンAα関連
アミロイドーシス

  1. 腎障害
  2. 点状出血

フィブリノーゲンAα

リゾチーム関連
アミロイドーシス

  1. 腎障害

リゾチーム

家族性地中海熱

  1. 腎障害
  2. 腹膜炎
  3. 周期性の発熱

ピリン
(marenostrin)

脳型

3型アルツハイマー病

  1. 認知機能障害

プレセニリン1

4型アルツハイマー病

プレセニリン2

1型アルツハイマー病
(スウェーデン,ロンドン,フロリダ,フランダース,北極,アイオワ型)

アミロイド前駆蛋白(APP)

アミロイド沈着に伴う
遺伝性脳出血

  1. 脳出血

アミロイド前駆蛋白(APP)

シスタチンCアミロイドーシス
(アイスランド型)

  1. 脳出血

シスタチンC

Familial British dementia

  1. 認知機能障害
  2. 失調
  3. 痙性麻痺
  4. 白内障
  5. 難聴

BRI

Familial Danish dementia

非遺伝性の全身性アミロイドーシスには,免疫グロブリン(AL)アミロイドーシス,反応性(続発性,AA)アミロイドーシス,β2-ミクログロブリン(透析関連)アミロイドーシスがある.

その他の後天性および家族性のニューロパチーも鑑別として考慮に入れる必要がある(シャルコー・マリー・トゥース遺伝性ニューロパチー概説を参照).特に,患者が明らかな家族歴を有さず,疾患の初期段階である場合は,慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP),Crow-Fukase症候群[POEMS (plasma cell neoplasia with polyneuropathy, organomegaly, endocrinopathy, M protein, skin change)],糖尿病性ニューロパチー,Shy-Drager症候群などの非遺伝性・非アミロイド性のニューロパチーの可能性を考慮に入れるべきである.

感覚運動性ニューロパチーや自律神経障害ではなく,心筋症や中枢神経障害が主症状の場合はより広範な疾患を鑑別の対象として考慮に入れなければならない.心アミロイドーシスの鑑別としては,HFE関連遺伝性ヘモクロマトーシス,糖原病(Pompe病),ファブリー病,心サルコイドーシス,ミトコンドリア病 (MELAS) などの拘束型心筋症を呈する疾患が挙げられる.


臨床的マネジメント

診断後の評価

家族性TTRアミロイドーシスと診断された患者の重症度を評価するために以下の検査が行われる.

  • 神経伝導速度を含む系統的な神経学的な評価
  • 以下の心機能の評価
    • 心臓超音波は最も有用で非侵襲的な心アミロイドーシスの評価方法で,心室壁や心室中隔の肥厚,granular sparkling像と呼ばれる心筋エコーの高屈折を検出することが可能である.
    • 心電図により,標準肢誘導における低電位,右側胸部誘導でのQSパターンが検出される.心伝導障害が検出される場合もある.
    • テクネシウム-99m-ピロリン酸心筋シンチにより,心臓へのアミロイド沈着を検出することが可能である [Ikeda 2004].
  • 脳脊髄のガドリニウム造影MRIによる中枢神経アミロイドーシスの評価 [Mitsuhashi 2004].
  • 眼科的な評価.
  • 腎機能の評価.

 

症状に対する治療

以下の治療が推奨される.

  • 手根管症候群に対する手根管解放術.
  • 硝子体混濁に対する硝子体切除術

主病変に対する治療(進行の予防)

肝移植 (OLTX) 家族性TTRアミロイドーシスによるニューロパチーに対する唯一の有効な治療は肝移植 (OLTX) である.肝移植によりアミロイド蛋白の主な産生臓器である肝臓を除去することができる.肝移植後には血中の変異TTRは速やかに消失し,末梢神経障害および自律神経障害の進行が停止する.肝移植により有髄神経線維が再生することが,手術前後の腓腹神経生検で明らかにされている [Ikeda et al 1997].

肝移植 (OLTX) の適応に関する臨床的基準 家族性TTRアミロイドポリニューロパチーに対する推奨される肝移植の臨床的な基準 [Takei et al 1999, Adams et al 2000] を以下に示す.

  • 60歳未満
  • 発症から5年未満
  • 末梢神経障害が下肢に限局しているか自律神経障害のみ
  • 明らかな心・腎機能障害を認めない

2008年6月までに1336名の家族性TTRアミロイドポリニューロパチー患者が肝移植治療を受け,この内約90%がVal30Met変異のヘテロ接合体であった(http://www.fapwtr.org/ram_fahtm)[Ericzon et al 2000, Ikeda et al 2003, Herlenius et al 2004, Stangou & Hawkins 2004].これらの患者の解析では,Val30Met変異を有する患者の5年生存率はその他の変異を有する患者に比べて有意に高い(80% vs 57%, p=0.001)[Ericzon et al 2000, Ikeda et al 2003].術後の死亡の主な原因は心血管イベント(29%)と敗血症(26%)である[Ikeda et al 2003].

移植後予後不良群 10年間の経験に基づく報告では,移植後の予後が不良である患者群は以下の通りである[Ikeda et al 2003].

  • 栄養不良状態(BMI < 600)
  • 重症な末梢神経障害(Norris score < 55/81)
  • 持続的な尿失禁
  • 著しい起立性低血圧
  • 変動の少ない脈拍

肝移植が無効な病型 末梢神経障害を主徴としない病型(心アミロイドーシス,髄膜アミロイドーシス,遺伝性眼髄膜アミロイドーシス[FOLMA]など)では肝移植は有効ではない.

Val30Met以外の特殊な変異(Ala36Pro, Glu42Gly, Ser77Tyr)を有する患者(表5を参照)において,肝移植後にも心筋障害が進行したことが報告されている[Dubrey et al 1997, Stangou et al 1998, Yazaki et al 2000, Hornsten et al 2004].肝移植後には,既に沈着している変異TTRを鋳型として野生型TTRが沈着することにより,アミロイド心筋症が進行すると推測されている[Yazaki et al 2000, Hornsten et al 2004].よって,肝移植の適応を検討する際に心アミロイドーシスの重症度を評価することが非常に重要である[Coutinho et al 2004, Juneblad et al 2004].

中枢神経にアミロイドとして沈着する変異TTRは脈絡叢由来であると考えられている.このため,髄膜にアミロイド沈着を有する患者は肝移植の適応とならない可能性がある.

硝子体混濁も肝移植後に進行する可能性がある.これは,網膜上皮における変異TTRの新規産生の結果であると考えられる.

注:家族性TTRアミロイドーシスによる肝臓の障害はほとんどない.このため,TTRアミロイドーシス患者の肝臓が肝臓癌や末期の肝疾患の患者に移植される場合がある(いわゆる“ドミノ肝移植”).1995年以降,330件以上のドミノ肝移植が施行された.最近Stangouら[Stangou et al 2005]は,Val30Met変異のヘテロ接合体である家族性TTRアミロイドーシス患者から肝臓をドミノ移植され,8年後に全身性アミロイドーシスを発症した患者を報告した.更に,ドミノ移植後に無症候性の皮膚へのTTRアミロイド沈着をきたした5名の患者も報告されている[Sousa et al 2004].

二次的な合併症の予防 

心伝導ブロックを有する家族性TTRアミロイドーシスの患者に対する心臓ペースメーカーの植え込みは,突然死の予防に有効である.

経過観察

客観的に末梢神経障害の経過をモニターするために,経時的な神経伝導速度の測定が行われる.
心筋症や心伝導障害の程度をモニターするために,経時的な心電図と心エコー検査が行われる.

リスクのある親族の検査

家系内の患者で原因となる遺伝子変異が同定されている場合,リスクのある親族に対して遺伝学的検査を行うことは適切である.遺伝学的検査により,早期診断・治療が可能となり,罹患率・死亡率を低下させることが可能である.

家系内の患者で原因となる遺伝子変異が不明な場合,早期治療によって恩恵を受ける親族が発見される可能性があるので,臨床診断的な評価を施行することが適切である.

遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族の遺伝学的検査に関しては遺伝カウンセリングの項を参照.

研究中の治療法

以下のようなTTRアミロイドーシスに対する分子標的治療戦略が研究中である[Saraiva 2002, Ando 2003, Sekijima et al 2008].

  • 変異TTRの産生の抑制
  • 変異TTRの構造の安定化
  • アミロイドを形成しうる中間体の凝集抑制
  • 不溶性のアミロイド線維の破壊

TTRの四量体構造を安定化し単量体への解離を防ぐ薬剤や,TTRアミロイド線維を無構造の形態に破壊する薬剤が既に作成されている[Saraiva 2002, Miller et al 2004, Almeida et al 2005].

ジフルニサルの第I相・II相臨床試験で,ジフルニサルを内服することにより家族性TTRアミロイドーシス患者血清中のTTR四量体構造を正常レベル以上まで安定化できることが示された.またこれらの試験で副作用は認められなかった.現在ジフルニサルが家族性TTRアミロイドーシスの進行を抑制できるかを評価する多国籍多施設ランダム化比較試験が行われている[Sekijima et al 2006, Tojo et al 2006]

最近,TTR四量体に選択的かつ強力に結合し四量体構造を安定化する低分子化合物であるFx-1006A(訳注:現在はタファミディスと命名されている)が,家族性TTRアミロイドーシスの治療薬として新たに開発された.様々なFx-1006Aの投与量で検討された第I相の臨床試験では,Fx-1006Aの安全性と忍容性が確認され,臨床試験参加者(健常者)の血清TTR四量体構造の強力な安定化作用が示された.Fx-1006Aの第II・III相臨床試験の登録は終了し,2009年の夏に結果が開示される予定である(訳注:2009年夏にFx-1006Aの家族性TTRアミロイドーシスに対する有効性が証明された).Fx-1006Aは米国および欧州でオーファンドラックの指定を受けており,米国では迅速審査の指定を受けている

RNA干渉(siRNA)を用いた変異TTR mRNAの発現抑制も研究されている(訳注:siRNAを用いた家族性TTRアミロイドーシスに対する臨床試験が2010年に開始された).

多くの疾患や病態に対する臨床試験の情報はClinicalTrials.govで得ることができる.

その他 の治療法

血漿交換療法やTTR吸着カラムを用いた血液浄化療法により,産生されたTTRを蛋白質レベルで除去する試みも検討された.これらの治療により血中のTTR濃度は著明に低下したが,TTRの半減期が短いため短時間で治療前のレベルまで上昇した.これらの結果から,家族性TTRアミロイドーシスに対する臨床的な応用は不可能と結論されている.4’-Iodo-4’-deoxydoxorubicin (IDOX)は幾つかのタイプのアミロイドに結合し,沈着したアミロイドを分解しうることが報告されている.多施設臨床研究でIDOXがALアミロイドーシス患者に投与されたが,明らかな効果は認められなかった.

遺伝クリニック 専門家による遺伝クリニックは、患者や家族に自然経過、治療、遺伝形式、患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに、患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照のこと.

本症に特化した支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報、支援、他の患者との交流の場を提供するために設立されている.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

家族性TTRアミロイドーシスは常染色体性優性の遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 家族性TTRアミロイドーシスと診断された両親の一人が罹患している場合がある.
  • 家族性TTRアミロイドーシスの発端者が新生突然変異を有している可能性もある.新生突然変異の発生頻度は不明である.
  • 発端者で原因となるTTR遺伝子変異が同定されている場合,新生突然変異によると考えられても,両親の遺伝額的検査を含めた評価を行うことが推奨される.

注:両親が疾患発症前に若くして死亡したり,高齢発症であった場合,両親が発端者と同じ疾患であったことを認識できないことがある.この場合,見かけ上家族歴は陰性となる.

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは,両親の遺伝学的な状態に依存する
  • もし,両親のうちの一人がTTR遺伝子変異のヘテロ接合体であれば,発端者の同胞は50%の確率で一つの変異TTR遺伝子を受け継ぐ.
  • これまでに少なくとも26名のホモ接合体の家族性TTRアミロイドーシス患者が報告されている.この場合,発端者の同胞は50%の確率で一つの変異TTR遺伝子を受け継ぎ,25%の確率で二つの変異TTR遺伝子を受け継ぐ.
  • 発端者における原因遺伝子変異が両親のいずれにも認められなかった場合,同胞のリスクは低いが,一般人口におけるリスクに比較すると高い.これは,これまでに報告はないものの,生殖細胞系列の変異の可能性が残されているからである.

発端者の子

  • 患者(ヘテロ接合体患者)の全ての子供は50%の確率で変異TTR遺伝子を受け継ぐ.
  • もし発端者が変異TTR遺伝子のホモ接合体患者である場合,すべての子供が遺伝子変異を受け継ぐ.

発端者の他の家族

他の家族のリスクは,発端者の両親の遺伝的な状態に依存する.もし両親が遺伝子変異を有していれば,その家族もリスクを有する..

遺伝カウンセリングに関連した問題

新生突然変異によると考えられる家族 

常染色体優性遺伝の疾患を有する発端者の両親のいずれもが疾患の原因となる遺伝子変異を有していなかったり,臨床的な症状を認めない場合,発端者は新生突然変異であると考えられる.しかし,父親や母親(生殖補助医療などの理由により)が異なる場合や,明らかにされていない養子縁組など,医学的要因以外の原因も考えられる.

リスクのある無症状の成人に対する検査

家族性TTRアミロイドーシスの遺伝のリスクのある無症状の成人に対する検査は“遺伝学的検査”の項で記載したのと同様の技術で施行可能である.この検査は,発症年齢,疾患の重症度,症状のタイプ,進行の速さを予測する意味での有用性はない.リスクのある個人の検査を施行する際には,その家系の疾患が本当に家族性TTRアミロイドーシスであるのかを確認する目的で,家系内の発症者の検査がまず施行されるべきである.

TTRアミロイドーシスの明らかな症状を認めない場合,疾患に関連した変異の検査は予測的な検査となる.リスクのある無症状の成人の家族は出産・財政的な問題・生涯設計に関連した個人的な決断をするために検査を希望することがある.また,単に“知る必要がある”と考えて検査を希望するなど他の動機も考えられる.リスクのある無症状の家族に対する検査の際には,検査を希望する動機・家族性TTRアミロイドーシスに関する個人的な理解度・結果が陽性であった場合および陰性であった場合の予見しうる影響・神経学的な状態などに関する検査前面談が通常行われる.これら検査においては,健康・人生・障害者保険・雇用や教育における差別・社会や家族内での人間関係の変化などの被験者が検査後に遭遇するであろう問題についてカウンセリングが行われるべきである.その他に考慮しなければいけない問題としては,他の家族のリスクの状態である.インフォームドコンセントが行われ,記録は機密下に保管されなければならない.検査結果が陽性であった場合は,長期間の経過観察と評価が必要である.

生体肝移植のドナー

日本では家族性TTRアミロイドーシスに対して生体肝移植を施行することが一般的に行われている.このため,ドナーになることを希望している無症状の家族に対する遺伝学的検査が必然的に施行されている.

リスクのある無症状の18歳未満の子供に対する遺伝学的検査

成人発症の疾患のリスクのある無症状の18歳未満の子供に対する検査は適切でないと考えられている.無症状の子供に対する検査を行わない方が良いとする理由には,子供の“情報を知る権利”と“知らない権利”の選択の余地を奪う点,子供に対する家庭内や社会における差別を生む可能性,教育や職業などの経歴に深刻な影響を及ぼしかねない点が挙げられる.

症状を有する子供の場合は,診断が確定することにより得られる恩恵が大きい.子どもに対する遺伝学的検査に関する米国遺伝カウンセラー学会の決議文も参照のこと.米国人類遺伝学会と米国臨床遺伝学会は考慮すべき点として,小児期および青年期における遺伝学的検査の倫理的,法的,心理的影響を挙げているので参照のこと.

家族計画 

  • 遺伝リスクの決定や出生前診断の利用について話し合う最適な時期は妊娠前である.同様に,リスクのある無症状の血縁者の遺伝学的な状況を明らかにする検査に関する決定も,妊娠前に行うのがもっとも望ましい.
  • 罹患している若年成人やリスクのある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖手段)を提供することは妥当である.

DNAバンキング

検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,患者のDNAの保存は考慮に値する(通常は白血球から調整したDNAを保存).遺伝学的検査が研究目的でのみ可能な場合は特に重要である. DNAバンキングを提供している検査機関のリストはTestingを参照のこと.

出生前診断

リスクのある妊娠に対する出生前診断は,通常胎生週数15〜18週頃に実施される羊水検査や胎生週数10〜12週頃に実施される絨毛生検(CVS)により採取された胎児細胞のDNA分析により技術的には可能である.出生前診断の実施以前に,家系内患者の病原性アレルが同定されていることが条件である.

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

家族性TTRアミロイドーシスのように成人発症で,知的障害を伴わず,治療法も存在する疾患に対して出生前診断を求められることは通常ない.特に遺伝子検査が早期診断よりも中絶を目的として考慮される場合は,医療関係者と家族の間では出生前診断に対する見解の相違が生じるかもしれない.多くの医療機関では最終的には両親の意思を尊重するとしているが,この問題については注意深い検討が求められる.

家族性TTRアミロイドーシスに対する着床前診断(PGD)の報告があり[Almeida et al 2005],病原性の変異を有することが確認されている女性がPGDを受けることができる可能性がある.PGDを提供している機関についてはTestingを参照.

訳注:日本では,家族性TTRアミロイドーシスに対して出生前診断や着床前診断の適応があるとは考えられておらず,実施されていない.


分子遺伝学

表A. 家族性TTRアミロイドーシス:遺伝子およびデータベース

遺伝子記号

染色体部位

蛋白質名

TTRに関するデータベース

HGMD

TTR

18q11.2-q12.1

トランスサイレチン

TTR遺伝子変異のデータベース
に記載

TTR

表B. 家族性TTRアミロイドーシスのOMIMへの登録(OMIM参照)

176300

TRANSTHYRETIN; TTR

分子遺伝学的発症機序

アミロイドの主成分は不溶化した線維状の蛋白質である.家族性TTRアミロイドーシスでは,アミロイド線維は主に凝集したTTR蛋白により構成されている.TTR蛋白は多くのβシート構造を有しており,潜在的にアミロイド原性を有している.本症のアミロイド形成において鍵となる要因は,TTR蛋白の安定性である [Kelly 1998, Rochet & Lansbury 2000, Sekijima et al, 2005].TTR蛋白は通常,四量体を形成し可溶性の蛋白として主に血清中に存在している.TTRがアミロイドを形成するには,1) 四量体からアミロイド前駆体である単量体への解離,2) 臓器における単量体の凝集および線維形成,の2つのステップが必要である[Kelly 1998, Rochet & Lansbury 2000].TTR遺伝子の病原性変異はTTR蛋白の構造変化を来し四量体構造が不安定化する.言い換えると,変異TTRを含む四量体は野生型TTRのみから構成される四量体に比べ単量体に解離しやすい[Sekijima et al, 2005].

病原性の変異TTR蛋白は,野生型TTR蛋白に比べ,エネルギー学的(熱力学的および動力学的)に不安定であることが証明されている.一方,アミロイドを抑制する変異TTR(Thr119Met, Arg104His)は野生型TTRに比べてエネルギー学的に安定である.In vitroの実験ではアミロイド原性は変異TTRの安定性と非常によく相関する.しかし,高度に不安定化した(In vitroの実験では非常にアミロイド原性の高い)変異TTRは重症な全身性のアミロイドーシスをきたさない.これは,このような高度に不安定化した変異TTRは,肝細胞における小胞体の蛋白質品質管理システムにより,血清に分泌される前に細胞内で分解されるため,血中濃度が非常に低いためである.臨床的に最も重症な症状を惹起するLeu55Pro変異は,蛋白質の品質管理システムをすり抜けて,野生型とほぼ同様のレベルで分泌される変異の中では最も不安定な変異である.中枢神経へのアミロイド沈着(髄膜アミロイドーシス)が主症状となる変異は蛋白質の構造が非常に不安定である.これは,髄液中のTTRを産生している脈絡叢が非常に不安定な変異TTRを肝細胞よりも効率よく分泌しているためではないかと考えられている[Hammarstro¨m et al 2003, Sekijima et al 2003, Mitsuhashi et al 2005, Sekijima et al 2005].

正常多型

ヒトのTTR遺伝子は7kbの長さで,4つのエクソンから構成されている.エクソン1はシグナルペプチドと1番目〜3番目のアミノ酸をコードしている.多くの人種でTTR遺伝子の正常多型が報告されている(表5)[Nakazato 1998, Benson 2001, Saraiva 2001, Connors et al 2003].

表5 TTR遺伝子変異と臨床型

変異の
部位

アミノ酸の変化
カッコ内はHGVS
規則に従った表記1,2

cDNAにおける塩基の変化1 臨床型 3 報告された地域
エクソン 2 Gly6Ser (p.Gly26Ser) c.76G>A (正常多型) 非アミロイド原生, Familial euthyroid hyperthyroxinemia コーカシアン
Cys10Arg (p.Cys30Arg) c.88T>C 心臓, , 末梢神経 米国
Leu12Pro (p.Leu32Pro) c.95T>C 髄膜, 肝臓 英国
Met13Ile(p.Met33Ile) c.99G>C (正常多型) 非アミロイド原生 ドイツ
Asp18Glu (p.Asp38Glu) c.114T>A 末梢神経 南米, 米国
Asp18Gly (p.Asp38Gly) c.113A>G 髄膜 ハンガリー
Asp18Asn (p.Asp38Asn) c.112G>A 心臓 米国
Val20lle (p.Val40Ile) c.118G>A 心臓, 手根管 ドイツ, 米国
Ser23Asn (p.Ser43Asn) c.128G>A 心臓, 末梢神経, 米国
Pro24Ser (p.Pro44Ser) c.130C>T 心臓, 手根管, 末梢神経 米国
Ala25Ser (p.Ala45Ser) c.133G>T 心臓, 手根管, 末梢神経 米国
Ala25Thr (p.Ala45Thr) c.133G>A 髄膜, 末梢神経 日本
Val28Met (p.Val48Met) c.142G>A 末梢神経, 自律神経 ポルトガル
Val30Met (p.Val50Met) c.148G>A 末梢神経, 自律神経,
, 髄膜
ポルトガル, 日本,スウェーデン, 米国
Val30Ala (p.Val50Ala) c.149T>C 心臓, 自律神経 米国
Val30Leu (p.Val50Leu) c.148G>C 末梢神経, 心臓 日本
Val30Gly (p.Val50Gly) c.149T>G 髄膜, 米国
Val32Ala (p.Val52Ala) c.155T>C 末梢神経 イスラエル
Phe33Ile (p.Phe53Ile) c.157T>A 末梢神経, イスラエル
Phe33Leu (p.Phe53Leu) c.157T>C 末梢神経, 心臓 米国
Phe33Val (p.Phe53Val) c.157T>G 末梢神経 英国, 日本,中国
Phe33Cys (p.Phe53Cys) c.158T>G 手根管, 心臓, , 腎臓 米国
Arg34Thr (p.Arg54Thr) c.161G>C 末梢神経, 心臓 イタリア
Arg34Gly (p.Arg54Gly) c.160A>G 英国
Lys35Asn (p.Lys55Asn) c.165G>C 末梢神経, 自律神経,
心臓
フランス
Lys35Thr (p.Lys55Thr) c.164A>C 米国
Ala36Pro (p.Ala56Pro) c.166G>C , 手根管 米国
Asp38Ala (p.Asp58Ala) c.173A>C 末梢神経, 心臓 , 日本
Trp41Leu (p.Trp61Leu) c.182G>T , 末梢神経 米国
Glu42Gly (p.Glu62Gly) c.185A>G 末梢神経, 自律神経,
心臓
日本, 米国,ロシア
Glu42Asp (p.Glu62Asp) c.186G>T 心臓 フランス
Phe44Ser (p.Phe64Ser) c.191T>C 末梢神経, 自律神経,
心臓
米国
Ala45Thr (p.Ala65Thr) c.193G>A 心臓 米国
Ala45Asp (p.Ala65Asp) c.194C>A 心臓, 末梢神経 米国
Ala45Ser (p.Ala65Ser) c.193G>T 心臓 スウェーデン
Gly47Arg (p.Gly67Arg) c.199G>A 末梢神経, 自律神経 日本
Gly47Ala (p.Gly67Ala) c.200G>C 心臓, 自律神経 イタリア, フランス
Gly47Val (p.Gly67Val) c.200G>T 手根管, 末梢神経,
自律神経
, 心臓
スリランカ
Gly47Glu (p.Gly67Glu) c.200G>A 心臓, 末梢神経, 自律神経 トルコ, 米国, ドイツ
エク
ソン
3
Thr49Ala (p.Thr69Ala) c.205A>G 心臓, 手根管 フランス, イタリア
Thr49Ile (p.Thr69Ile) c.206C>T 末梢神経, 心臓 日本, スペイン
Thr49Pro (p.Thr69Pro) c.205A>C 心臓, 末梢神経 米国
Ser50Arg (p.Ser70Arg) c.210T>C 自律神経, 末梢神経 日本, フランス,イタリア, 米国
Ser50Ile (p.Ser70Ile) c.209G>T 心臓, 末梢神経,
自律神経
日本
Glu51Gly (p.Glu71Gly) c.212A>G 心臓 米国
Ser52Pro (p.Ser72Pro) c.214T>C 末梢神経, 自律神経,
心臓, 腎臓
英国
Gly53Glu (p.Gly73Glu) c.218G>A 髄膜, 心臓 バスク, スウェーデン
Gly53Ala(p.Gly73Ala) c.218G>C 髄膜, 心臓 英国
Glu54Gly (p.Glu74Gly) c.221A>G 末梢神経, 自律神経,
英国
Glu54Lys(p.Glu74Lys) c.220G>A 末梢神経, 自律神経,
心臓
,
日本
Glu54Leu(p.Glu74Leu) c.220_221delGAinsCT 記載無し 英国
Leu55Pro (p.Leu75Pro) c.224T>C 心臓, 自律神経, 米国, 台湾
Leu55Arg (p.Leu75Arg) c.224T>G 髄膜 ドイツ
Leu55Gln (p.Leu75Gln) c.224T>A , 末梢神経 米国
His56Arg (p.His76Arg) c.227A>G 心臓 米国
Gly57Arg (p.Gly77Arg) c.229G>A 心臓 スウェーデン
Leu58His (p.Leu78His) c.233T>G 手根管, 心臓 米国 (メリーランド)
Leu58Arg (p.Leu78Arg) c.233T>G 手根管, 自律神経, 日本
Thr59Lys (p.Thr79Lys) c.236C>A 心臓, 末梢神経,
自律神経
イタリア, 米国 (中国系)
Thr60Ala (p.Thr80Ala) c.238A>G 心臓, 手根管 米国 (アパラチア)
Glu61Lys (p.Glu81Lys) c.241G>A 末梢神経 日本
Glu61Gly (p.Glu81Gly) c.242A>G 心臓, 末梢神経 米国
Phe64Leu (p.Phe84Leu) c.250T>C 末梢神経, 手根管, 心臓 米国, イタリア
Phe64Ser (p.Phe84Ser) c.251T>C 髄膜, 末梢神経, カナダ, 英国
Ile68Leu (p.Ile88Leu) c.262A>T 心臓, 末梢神経 ドイツ
Tyr69His (p.Tyr89His) c.265T>C , 髄膜 カナダ, 米国
Tyr69Ile (p.Tyr89Ile) c.265_266delTAinsAT 心臓, 手根管, 自律神経 日本
Lys70Asn (p.Lys90Asn) c.270A>C , 手根管, 末梢神経 米国
Val71Ala (p.Val91Ala) c.272T>C 末梢神経, , 手根管 フランス, スペイン
Ile73Val (p.Ile93Val) c.277A>G 末梢神経, 自律神経 バングラディシュ
Asp74His(p.Asp94His) c.280G>C (正常多型) 非アミロイド原生, ドイツ
Ser77Tyr (p.Ser97Tyr) c.290C>A 心臓, 腎臓, 末梢神経 米国 (イリノイ,テキサス), フランス
Ser77Phe (p.Ser97Phe) c.290C>T 末梢神経, 自律神経,
心臓
フランス
Tyr78Phe (p.Tyr98Phe) c.293A>T 末梢神経, 手根管,
皮膚
フランス
Ala81Thr (p.Ala101Thr) c.301G>A 心臓 米国
Ala81Val (p.Ala101Val) c.302C>T 心臓 英国
Ile84Ser (p.Ile104Ser) c.311T>G 心臓, 手根管, 米国 (インディアナ), ハンガリー
Ile84Asn (p.Ile104Asn) c.311T>A 心臓, 米国
Ile84Thr(p.Ile104Thr) c.311T>C 心臓, 末梢神経 ドイツ, 英国
His88Arg (p.His108Arg) c.323A>G 心臓 スウェーデン
Glu89Gln (p.Glu109Gln) c.325G>C 末梢神経, 心臓 イタリア
Glu89Lys (p.Glu109Lys) c.325G>A 末梢神経, 心臓 米国
His90Asn(p.His110Asn) c.328C>A (正常多型) 非アミロイド原生 ドイツ, ポルトガル
His90Asp (p.His110Asp) c.328C>G 心臓 英国
Ala91Ser (p.Ala111Ser) c.331G>T 末梢神経, 手根管, 心臓 フランス
Glu92Lys (p.Gln112Lys) c.334G>A 心臓 日本
Val94Ala (p.Val114Ala) c.341T>C 心臓, 末梢神経,自律神経, 腎臓 ドイツ, 米国

エクソン4

 

Ala97Gly (p.Ala117Gly) c.350C>G 心臓, 末梢神経 日本
Ala97Ser (p.Ala117Ser) c.349G>T 末梢神経, 心臓 台湾, 米国
Gly101Ser(p.Gly121Ser) c.361G>A (正常多型) 非アミロイド原生 日本
Pro102Arg(p.Pro122Arg) c.365C>G (正常多型) 非アミロイド原生 ドイツ
Arg103Ser(p.Arg123Ser) c.367C>A 心臓 米国
Arg104Cys(p.Arg124Cys) c.370C>T (正常多型) 非アミロイド原生, Familial euthyroid hyperthyroxinemia 米国
Arg104His(p.Arg124His) c.371G>A (正常多型) 非アミロイド原生, 日本, 米国(中国系)
Ile107Val (p.Ile127Val) c.379A>G 心臓, 手根管, 末梢神経 米国
Ile107Met (p.Ile127Met) c.381T>C 末梢神経, 心臓 ドイツ
Ile107Phe (p.Ile127Phe) c.379A>T 末梢神経, 自律神経 英国
Ala109Thr(p.Ala129Thr) c.385G>A (正常多型) 非アミロイド原生, Familial euthyroid hyperthyroxinemia ポルトガル
Ala109Val(p.Ala129Val) c.385G>A (正常多型) 非アミロイド原生, Familial euthyroid hyperthyroxinemia 米国
Ala109Ser (p.Ala129Ser) c.386C>T 末梢神経, 自律神経 日本
Leu111Met (p.Leu131Met) c.391C>A 心臓 デンマーク
Ser112Ile (p.Ser132Ile) c.395G>T 末梢神経, 心臓 イタリア
Tyr114Cys (p.Tyr134Cys) c.401A>G 末梢神経, 自律神経, , 髄膜 日本, 米国
Tyr114His (p.Tyr134His) c.400T>C 手根管, 皮膚 日本
Tyr116Ser (p.Tyr136Ser) c.407A>C 末梢神経, 手根管,
自律神経
フランス
Thr119Met(p.Thr139Met) c.416C>T (正常多型) 非アミロイド原生, Familial euthyroid hyperthyroxinemia ポルトガル, 米国
Ala120Ser (p.Ala140Ser) c.418G>T 自律神経, 心臓,
末梢神経
アフロカリビアン
Val122Ile (p.Val142Ile) c.424G>A 心臓 米国
delVal122(p.Val142del) c.424_426delGTC 心臓, 末梢神経 米国 (エクアドル系), スペイン
Val122Ala (p.Val142Ala) c.425T>C 心臓, , 末梢神経 米国
Pro125Ser(p.Pro145Ser) c.433C>T (正常多型) 非アミロイド原生 イタリア

 

この表はConnors et al, 2003 と Benson et al, 2007 を改変し作成した

  1. 表記法の説明についてはQuick Referenceを参照.DNAの塩基変化に関しては,メチオニンをコードするの開始コドンの先頭を1としている.GeneReviewsはHuman Genome Variation Society (HGVS)(www.hgvs.org)の標準表記法に従っている.
  2. アミノ酸の変化については,これまで一般的に用いられている表記とHGVSの標準表記(カッコ内に記載)を併記した.これまで一般的に用いられている表記は成熟TTR蛋白の1番目のアミノ酸を1としている.一方,HGVSの標準表記では,開始コドンでコードされるメチオニンを1とし,20個のシグナルペプチドをカウントしている.標準表記におけるTTR遺伝子のcDNA(相補DNA)と蛋白質の配列データベースはNM_000371.1とNP_000362.1を参照.

病原性変異

家族性TTRアミロイドーシスの患者で,現在までに90以上の一塩基置換と一つのインフレームの微少欠失(3塩基の欠失)が同定されており,これらは全てTTR遺伝子のエクソン2〜4に分布している [Connors et al 2000, Benson 2001, Saraiva 2001, Connors et al 2003, Benson & Kincaid, 2007].エクソン1は3つのアミノ酸をコードしているのみであり,これまでにエクソン1の変異は報告されていない.

Val30Met変異は世界中から報告があり,もっとも良く研究されている.ポルトガル,スウェーデン,日本の家族性TTRアミロイドポリニューロパチーの集積地で認められる変異もVal30Met変異である.様々な人種においていくつかのハプロタイプがVal30Met変異と関連していることから,複数の創始者が自然発生しているものと考えられる.

Val122Ile変異はアフリカ系アメリカ人のV3.0-3.9%,西アフリカの一部の地域では5.0%以上に認められる変異であり,アミロイド原性の変異TTRとしては世界で最も頻度が高い [Jacobson et al 1997, Yamashita et al 2005].

正常遺伝子産物

ヒトのTTR cDNAは,20個のアミノ酸からなるシグナルペプチドと127個のアミノ酸からなる成熟TTR蛋白(分子量約14kd)をコードしている.TTRの大部分は血清中に存在し,そのほとんどが肝臓で産生されたものである.TTRは相同な単量体4つから構成される四量体(分子量約55kd)として肝臓から分泌され,その半減期は1〜2日である.TTRの血中濃度は20〜40 mg/dLである.

TTRはサイロキシンとレチノール−レチノール結合蛋白(RBP)複合体の輸送を行っている.TTRは血清中の全てのRBPおよび約15%のサイロキシンと結合している.髄液中のTTRは,血清中のサイロキシンを脳脊髄関門を通過させて髄液中に移行させるために不可欠な存在である.

脈絡叢が髄液中TTRのほとんどを産生しており,TTRの髄液中濃度は10〜40 mg/dLである.

網膜もTTRを産生している.

正常遺伝子産物

アミロイド原性を有する変異TTR蛋白は,四量体構造が不安定であり,このため野生型TTRに比べてアミロイド前駆体である単量体に解離しやすいと推測されている(分子遺伝学的発症機序を参照)[Kelly 1998, Rochet & Lansbury 2000, Saraiva 2002, Sekijima et al 2005].

関連情報

本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立されている.
GeneReviews は読者に役立つ全国組織や情報センターに関する情報を提供する.GeneReviewsは他の組織によって提供される情報には責任を持たない.---編集者注.


原文 Familial Trasthyretin Amyloidosis

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