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先天性ミオトニー
(Myotonia congenita)

Gene Review著者: Morten Dunø, PhD and Eskild Colding-Jørgensen, MD.
日本語訳者: 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 筋チャネル病および関連疾患の診断・治療指針作成および新規治療法開発に向けた基盤整備のための研究班   

Gene Review 最終更新日: 2008.7.8. 日本語訳最終更新日: 2011.02.03.

原文 Myotonia congenita


要約

疾患の特徴 

先天性ミオトニー(Myotonia congenital)は、小児期より出現する筋のこわばり(ミオトニー)を特徴とする。この筋のこわばりは外眼筋、顔面筋や舌筋を含む全ての横紋筋群で見られる。男性例のほうが女性例よりも症状が強くなる。筋緊張は筋を繰り返し収縮させることにより軽減する(warm-up現象)筋はたいていの場合、肥大している。常染色体劣性遺伝形式をとる筋強直症症例の方が常染色体優性遺伝形式をとる症例よりもしばしばミオトニーがより重度となる。常染色体劣性遺伝形式をとる患者においては、進行性の遠位筋優位の筋力低下、休息後の運動により誘発される一過性の脱力発作を呈することもある。発症年齢は様々である。常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいては、たいてい乳児から幼児期初期であるのに対し、常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーでは、平均発症年齢が僅かに高い。双方において発症年齢が30〜40歳代と遅い症例もある。

診断・検査 

先天性ミオトニーの臨床診断は、幼児期初期から始まった筋強直のエピソードの存在、短い運動によるミオトニーの軽減、筋に叩打を加えることによるミオトニーの誘発、針筋電図でのミオトニー放電所見、血清クレアチンキナーゼ濃度の上昇、常染色体優性または劣性遺伝形式と一致する家族歴をもとにして行う。塩化物イオンチャネルをコードしているCLCN1が、先天性ミオトニーに関連していることが解明されている唯一の遺伝子である。シークエンス解析により、双方の遺伝形式の先天性ミオトニーを起こす症例の95%以上で、CLCN1遺伝子の変異が同定される。

臨床的マネジメント 

症状に対する治療ミオトニーは、メキシレチン(最も効果のある薬剤)、トカイニド(骨髄抑制の副作用)、プロカインアミド、キニジン、フェニトインらの薬剤に反応しうる。それ以外にカルバマゼピン、ダントロレン(肝毒性の副作用)、アセタゾラミド(吐気、拒食症、異常感覚、腎結石形成の副作用)使用による有用な効果についても、報告されている。ミオトニーは運動により一時的には軽減する。

避けるべき医薬品/環境脱分極性の筋弛緩剤(スキサメトニウムなど)、アドレナリン、β‐アゴニスト、プロプラノロール、コルヒチンはミオトニーを悪化させうる。

リスクのある血縁者の検査 先天性ミオトニーの患者においては麻酔に関連した事故が発生する危険性が高いことから、リスクのある血縁者については、小児期のうちにその遺伝状況について評価しておくことが適切である。

遺伝カウンセリング 

先天性ミオトニーには常染色体劣性遺伝形式(Becker 病) 、常染色体優性遺伝形式(Thomsen 病)、両方の遺伝形式を取りうる。同じ変異が、いずれの遺伝形式を有する家系内でも起こることがある。常染色体優性遺伝形式において、新生突然変異が原因で発症する症例の全体に対する割合は不明である。常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーの子では、各々、50%の確率でその変異が遺伝する。常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいて原則的には、ヘテロ接合の場合はたいてい無症状である。同胞では、発症する確率が25%、無症候性のキャリアとなる確率が50%、発症せず、キャリアでも無い確率が25%である。つまり、遺伝リスクのある同胞が無症状である場合、その同胞がキャリア―である確率は2/3である。遺伝学的検査にて疾患のCLCN1原因遺伝子2つを同定することが出来なければ、孤発例(ある家系の中で発症者が1人のみ)の遺伝形式を同定することは困難である。このような症例は、常染色体劣性遺伝形式をとるものと推定される。リスクを有する血縁者に対するキャリアの検査は家系での二つの疾患原因遺伝子が判明している場合には可能である。高いリスクを有した妊娠における出生前診断はそれぞれの患者に対応した出生前検査(custom prenatal testing)を行っている検査機関では可能であるかもしれない。


診断

臨床診断

下記のような特徴を有する患者は先天性ミオトニーの診断を考慮すべきである

  • 早期小児期より始まるミオトニーやこむら返りのエピソード(ミオトニーは骨格筋の随意収縮後の弛緩性が低下するものと定義される)
  • 筋のこわばりは短時間の運動により軽減する。(warm-up現象として知られている)¥筋を叩打することによりミオトニー様の収縮が誘発される。
  • 針筋電図を施行すると、ミオトニーの出現時のみに特徴的な持続性の自発的な電気的興奮(ミオトニー放電)を認める。

    注意:常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニー症例と、常染色体優性遺伝形式を呈する一部の変異(p. Pro 480Leu, p. Arg894X)症例では、10Hz反復神経刺激により、誘発された複合筋活動電位の振幅の減少を認める。同様の効果は、10秒間の随意収縮後にも誘発される。(ショートエクササイズテスト)

  • 常染色体優性遺伝形式もしくは常染色体劣性遺伝形式と矛盾しない家族歴を有している。

検査

一般的な血液検査 先天性ミオトニー診断確定の助けにはならない。

血清クレアチンキナーゼ値 僅かに上昇している。(正常上限値の3〜4倍以下).

筋生検所見 筋タイプ2B線維の欠損が認められることはあるが、たいていの場合は正常である。常染色体劣性遺伝形式をとる重度の先天性ミオトニーの場合、筋原性変化を認めることがある。

分子遺伝学的検査

遺伝子 塩化物イオンチャネルをコードしているCLCN1は先天性ミオトニーに関連していることが知られている唯一の遺伝子である。

臨床的検査

シークエンス解析:常染色体優性遺伝形式、常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーを発症する原因変異の大部分を検出できる。

注意:常染色体優性、常染色体劣性先天性ミオトニーの両方が、同じ遺伝子変異により発症しうる為、遺伝形式(常染色体優性、常染色体劣性)の鑑別はおもに家族歴(すなわち、発症している親の存在など)を基にしておこなう。

表1. 先天性ミオトニー症例に使用される分子遺伝試験のまとめ

遺伝子記号

検査方法

同定される変異

変異検出率

検査の実施可能性

CLCN1

シークエンス解析

多型

>95%

臨床レベル

検査の実施可能性とはGene Tests Laboratory directoryにおける実施可能性を意味している。Gene ReviewではUS CLIA-licensed laboratoryもしくはnon-US clinical laboratoryによってGene Tests Laboratory Directoryに記載されている場合のみ、分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能と位置付けている。GeneTestは検査機関の提供情報の正確性を保証したり、検査機関のライセンスや実績を保証するものではない。臨床家は直接検査機関に問い合わせて、情報の正確性について確認しなければならない。

検査結果の解釈 シークエンス解析の結果の解釈に関してはこちら参照のこと。

検査手順

常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいて、疾患のリスクを有する血縁者に対するキャリアの検査には、同家系内で疾患原因遺伝子変異が前もって同定されている必要がある。

また、臨床症状を呈していないが、疾患遺伝のリスクのある血縁者の発症前診断においても、同家系内で疾患原因遺伝子が前もって同定されている必要がある。

遺伝学的に関連する疾患

CLCN1のひとつの変異p.Phe428Ser (NM 000083.2:c.1283T>C) は、パラミオトニー型の臨床型と関連するという一例報告がある。この発見は珍しく、慎重に解釈するべきである。先天性パラミオトニーの大部分はSCN4A遺伝子変異に起因している。


臨床所見

自然経過

先天性ミオトニー(Myotonia congenita)は、小児期より出現するミオトニーを特徴とする。このミオトニーは外眼筋、顔面筋や舌筋を含む全ての横紋筋群に出現する。臨床医は、先天性ミオトニー患者が、握手したあとで指を広げることが不可能であることや、筋肉(舌筋、指の伸筋群、手掌筋群など)を叩打することでミオトニー収縮が誘発されることに気がつくかもしれない。

発症年齢は様々である。常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいては、発症がたいてい乳児期から幼児期初期であるのに対し、常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーでは、平均発症年齢が前者と比べて僅かに高い。発症年齢が30〜40歳代と遅い症例も双方においてみられる。

ミオトニーは筋を繰り返し収縮させることにより軽減する(warm-up現象)。筋はたいていの場合、肥大している。

常染色体劣性遺伝形式をとる症例の方が常染色体優性遺伝形式をとる症例よりもしばしばミオトニーがより重度となる。男性例のほうが女性例よりも症状が強くなる。

常染色体劣性遺伝形式をとる患者においては、進行性の遠位筋優位の筋力低下、休息後の運動により誘発される一過性の脱力発作を呈しうる。近位筋の筋力低下と遠位筋の筋障害を呈した症例も報告もある。

若年性白内障、心伝導異常、内分泌機能障害などの筋症状以外の症状の合併はない。

遺伝子型と臨床型の関連

CLCN1遺伝子は電位依存性塩化物イオンチャネルの一つであるClC-1(塩化物イオンチャネルタンパク、骨格筋)をコードする。各々の塩化物イオンチャネルは、二つの同一蛋白分子から構成される。その蛋白分子は各々、プロトポアと呼ばれる別々のイオン透過経路を形成している。常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーにおいては、両方のサブユニットに疾患原因遺伝子変異を認める。常染色体優性遺伝形式をとる先天性ミオトニーでは、一つの顕性不活性変異が両方のプロトポアのゲーティングもしくはいずれかのプロトポアのイオン選択性に影響を与えることにより発症すると考えられている。

  • 100以上の異なったCLCN1遺伝子変異のほとんどが、常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーの原因となる。
  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーの原因となる15以上の遺伝子変異が、報告されている。
  • おおよそ10の遺伝子変異は常染色体劣性及び常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニー双方に関連しており、双方の遺伝形式を明確に区別することは困難である。明白な常染色体劣性及び常染色体優性遺伝形式を取る先天性ミオトニーの家系は、p.Gly230Glu、 p.Ala531Val、 p.Arg894Xのみと記載されている。この不思議な現象は、下記により説明しうる。
    • 顕性不活性変異の浸透率の減少
    • 不完全な優性
    • 創始者効果
    • 遺伝子変異の同定の不完全さ
    • 対立遺伝子発現の差異

    これらの優性と準優性変異の表現型の症状は、同一家系内においてでさえも様々である。
    例えば p.Gly230Glu、p.Thr310Metの遺伝子変異を有する患者は、妊娠により誘発された動揺する表現型を呈したと報告されている。また、p.Phe428Ser (NM 000083.2:c.1283T>C)の遺伝子変異を有する患者は先天性パラミオトニーを思わせるような表現型を呈したと報告されている。
    近位筋の筋力低下(p.Thr550Met [NM 000083.2:c.1649C>T]遺伝子変異に起因した症例)、もしくは遠位筋のミオパチー(p.Pro932Leu遺伝子変異に起因した症例)も報告されている。 しかしながら、これらの臨床的な特徴とCLCN1遺伝子変異と相関については、現時点では解明されていない。

浸透率

常染色体優性遺伝形式の遺伝子変異の大多数は、低い浸透性を呈しうる。同一遺伝子異常をヘテロ接合体として有する家族内でも、ミオトニーを認めないものから重度のミオトニーまで様々な表現型を呈することがある。

促進現象

先天性ミオトニーに関しては現在のところ報告されていない。

命名

常染色体優性遺伝形式をとる先天性ミオトニーは、トムセン病として知られている。
常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーはベッカー病として知られている。
Myotonia leviorは基本的には先天性ミオトニーと同義である。

有病率

Beckerらが1977年頃に検討したところ先天性ミオトニーは常染色体優性遺伝形式では1:23,000、常染色体劣性遺伝形式では1:50,000の頻度にて生じていると推測されていた。後の調査の結果、常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーのほうが常染色体優性遺伝形式よりもよりありふれていることが示唆された。イギリスにおける症状を有する300症例以上のコホート研究では、常染色体優性遺伝形式をとる先天性ミオトニーは遺伝子変異陽性症例の僅か37%に認められたにすぎなかった。

スカンジナビア半島の北部においては先天性ミオトニーの有病率は、おおよそ1:10,000と推測されてきたが、世界的には有病率は1:100,000と考えられている。

鑑別診断

先天性ミオトニーの鑑別疾患にはミオトニーを主要徴候とする他の疾患が含まれる。先天性ミオトニーはこれらの疾患群から以下を参考にして鑑別できる。

  • ミオトニーを誘発、軽減する因子
  • 筋症状以外の症状合併の有無
  • 電気生理学的検査所見

鑑別疾患として考慮すべき疾患群

この項の内容を含んだ遺伝検査の利用可能性についての現在の情報は、GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと

  • 先天性パラミオトニー(paramyotonia congenita)またはparadoxycal myotonia(筋のこわばりが、寒冷や運動にて増強する)は時折、先天性ミオトニーと鑑別することが困難である。
    • いずれも、幼児期初期から出現する全般性のミオトニーを呈する。先天性パラミオトニー患者は先天性ミオトニーにない特徴として極度の寒冷過敏性を有しており、寒冷により重度のミオトニーを起し、その後に脱力を来たす。しかしながら、寒冷にてミオトニーの悪化を来たす先天性ミオトニー患者症例も報告されている。
    • 先天性ミオトニー患者では繰り返す筋収縮によってミオトニーが軽減するというwarm-up現象が著明に認められる。逆に先天性パラミオトニー患者においては繰り返す筋収縮によりミオトニーが増悪する(paradoxical myotonia 奇異性ミオトニアと呼ばれる)
  • カリウム惹起性ミオトニー 稀なナトリウムチャネル(SCN4A)病の中の多様なグループの一つである。先天性ミオトニーを疑われた症例のうち20%までが、SCN4A遺伝子変異を有しているという事実がある。
  • SCN4A遺伝子変異は 高カリウム性周期性四肢麻痺1型もしくは低カリウム性周期性四肢麻痺に関連したミオトニーの原因である。しかしながら、周期性四肢麻痺の発作がないような場合、臨床症状のみからではナトリウムチャネル(カリウム惹起性) ミオトニーを塩化物イオンチャネルミオトニー(先天性ミオトニー)と鑑別することは困難であることがある。
     下記のヒントが有用である
    • 特徴として、ナトリウムチャネル疾患による症状は、カリウムの摂取により増悪する。この種の増悪は塩化物イオンチャネルの先天性ミオトニーにおいては認められない。
    • ナトリウムチャネル・ミオトニー症例の一部では、運動誘発性・遅発性ミオトニーを認める。これは少し遅れて、筋収縮によりミオトニーが誘発される現象である。この現象は塩化物イオンチャネルの先天性ミオトニー症例に認められるwarm-up現象(繰り返す筋収縮によりミオトニーが軽減する)と対照的である。
    • ナトリウムチャネル・ミオトニーの多数の症例においては痛みを伴うミオトニーを認める。一方、痛みは塩化物イオンチャネルの先天性ミオトニーの特徴ではない
  • 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)、2型(DM2) 筋症状以外の症状の症状が予後や管理に重要な影響を与える為、筋強直性ジストロフィーは常に先天性ミオトニーの鑑別疾患として考慮する必要がある疾患である。筋強直性ジストロフィーと同様に、常染色体優性遺伝形式をとる先天性ミオトニーにおいても、ある程度の筋力低下や筋の萎縮が認められるが、筋力低下のパターンが著明に異なっている。また、DM1、DM2に認められる早期白内障、心伝導異常、内分泌機能障害などの筋外症状も先天性ミオトニー症例においては認められない。しかしながら筋外症状を欠いたDM1軽症例の症例などについては除外出来ない。

DM1はDMPK1遺伝子におけるCTGリピートの伸長が原因である。DM2は細胞の核酸結合タンパク(zinc finger protein 9)をコードしているZNF9遺伝子イントロン1におけるCCTGリピートの伸長が原因である。分子遺伝学的検査は双方の疾患にて可能である。DM1、DM2は共に常染色体優性遺伝形式をとる。


臨床的マネジメント

臨床賞状に対する治療

軽度な症状を訴える症例に対しては、症状を軽減するために活動や生活スタイルを適応させることのみを学習させる必要がある。

Cochrane Reviewのミオトニーの治療薬に関する項目では、現在まで無作為研究がなされていない為、質の良い結果もなく、推奨する薬剤は記載されていない。

ミオトニー症状に対する薬剤治療を下記に示す:

  • メキシレチン リドカインの誘導体であり、おそらくミオトニーに対して最も効果的な治療である。しかし、遺伝学的に確認された先天性ミオトニーに対する効果については体系的に研究されてこなかった。投与量は一般的に150r1日2回から開始し、徐々に必要に応じて300r1日3回分服まで増量する。最も出現する可能性のある副作用として、胃腸症状、振戦、失調が挙げられるが、これらは投与量の減量により改善する。
  • トカイニド 別のリドカインの誘導体であり、一部の症例には有用である。副作用として骨髄抑制を有しているため、使用には細心の注意が必要である。
  • プロカインアミド(125-1000 mg/日), キニジン(200-1200 mg/日),  フェニトイン(300-400 mg/日)は副作用が殆どないため、有用である。
  • カルバマゼピン 有用性についての報告が認められる。
  • ダントロレン 重度の症例に有用。しかしながら肝毒性の報告もあるため、開始時や投薬期間中に適度な間隔で肝機能を評価しておく必要がある。
  • アセタゾラミドは一部の症例では有用である。投与量は125r1日2回、徐々に増量し、効果と耐性を見ながら250r1日3回まで増量する。出現する可能性のある副作用として、吐気、食欲不振、異常感覚が挙げられる。また、腎結石にも注意を払う必要がある。発疹の報告もあり、肝機能、電解質、血算、血小板数を定期的に観察する必要がある。

一次症状の予防

運動により一時的にミオトニーが軽減する(warm-up効果)。体操による長期間の効果も時々、患者から聞くが、その効果については体系的に研究、評価はされていない。

回避すべき薬物/環境

麻酔時の脱分極性の筋弛緩剤の使用は、麻酔に関連した不測の事態の原因となるため、注意する必要がある。スキサメトニウムの手術前注射により、生命を脅かす程の筋攣縮や二次性の換気困難が出現したという報告もあるため、先天性ミオトニーの患者に対してスキサメトニウム使用を避けることが勧められる。

注意:非脱分極性の筋弛緩剤に関しては、先天性ミオトニーの患者対して問題なく作用するようである。しかし、スキサメトニウムが原因で出現したミオトニー現象を軽減する訳ではない。

稀な例ではあるが、アドレナリン高容量の選択性βアドレナリン作動性アゴニストの静脈内投与によりミオトニーが増悪した例もある。 
βアンタゴニストであるプロプラノロールにおいても同様にミオトニーを増悪させたとの報告がある。それゆえβ‐アゴニストやβ-アンタゴニスト慎重に使用するべきである。また、フェノテロールリトドリンの静脈内投与を行う際にも特別な注意を払うべきである。
コルヒチンは腎不全の使用症例においてミオトニーを伴ったミオパチーを来たしたと報告されている。理論的には、先天性ミオトニー症例においても同様にミオトニーを増悪させるものと考えられる。

リスクのある血縁者の検査

先天性ミオトニーの患者においては麻酔に関連した事故が発生する危険性が高いことなどから、リスクのある血縁者については、小児期のうちにその遺伝状況について評価しておくことが適切である。
リスクを有する親類への遺伝カウンセリングの為の検査に関連する項目については遺伝カウンセリングを参照のこと

研究中の治療法

疾患や広範な領域の臨床的な研究に関する情報を見る為にはClinical trials.govサイトを参照するように。注意:この疾患に関しての臨床試験はない可能性がある。

その他

Genetics Clinicsは遺伝専門家から構成されており,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供するとともに,患者サイドに立った情報も提供する.GeneTests Clinic Directoryを参照のこと.

本疾患に対する疾患特異的あるいは包括支援組織についてはConsumer Resourcesを参照のこと.これらの組織は患者とその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立されている.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

先天性ミオトニーは常染色体劣性遺伝形式(Becker病)と常染色体優性遺伝形式(Thomsen病)をとる。同一の遺伝子変異が、常染色体劣性遺伝形式をとる家系と常染色体優性遺伝形式をとる家系に認められることから遺伝形式の明白な区別は困難である。

患者家族のリスクー常染色体優性遺伝形式

発端者の両親

  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の大多数には罹患した親が存在する。

  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーの発端者は、もしかすると新しい遺伝子変異の結果として疾患を有している可能性がある。新生突然変異による症例の割合は不明であるが、おそらくとても低いものと考えられる。

    注意:常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の大多数は罹患した親を有するが、家族構成員の疾患に対する認識が低いことや浸透率の低下、発症前の早い段階での死により、家族歴は陰性と表現されることがある。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝状況に依存する。
  • もし発端者の両親のうち一人が発症している場合、同胞が発症するリスクは50%である。
  • 両親が臨床的に非発症である場合には、同胞が発症するリスクは低いと思われる。
  • もし、疾患の原因となりうる遺伝子変異が両親のDNA配列上に同定されない場合、親における胚細胞系列のモザイク型であるか、発端者にて新たに遺伝子変異が出現した可能性がその原因として考えられる。親における胚細胞系列のモザイク型の例は報告されていないが、可能性は残されている。

発端者の子 

  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の子が遺伝子変異を継ぐ確率は各々、50%である。

他の血縁者

  • それ以外の血縁者のリスクは、発端者の両親の遺伝状況に依存する。もし、両親のうち、片親が発症している場合、発端者の娘もしくは息子はそのリスクを有することになる。

患者家族のリスクー常染色体劣性遺伝形式

発端者の両親 

  • 常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の両親は絶対的ヘテロ接合体である。そのため、一つの変異した対立遺伝子をもつ。
  • ヘテロ接合体(キャリア)は無症状である。時折、発端者の両親にて針筋電図検査上でミオトニー現象を僅かに認める程度である。

発端者の同胞 

  • 患者の同胞が先天性ミオトニーを発症する確率は25%、無症状であるキャリアとなる確率は50%、発症せずキャリアにもならない確率は25%である。
  • リスクを有している兄弟同胞が非発症者である場合、キャリアである確率は2/3である。
  • ヘテロ接合体(キャリア)は大部分が無症状である。時折、徹底的な臨床的検査により、ヘテロ接合体にて針筋電図検査上でミオトニー現象を僅かに認めることがある。

発端者の子 

  • 常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の子は CLCN1遺伝子の原因遺伝子変異の絶対的ヘテロ接合体(キャリア)である。

他の血縁者

  • 発端者の両親の同胞がキャリアである確率は各々、50%である。

キャリアの探索

リスクのある血縁者へのキャリア評価は、家系内で遺伝子変異が同定されている場合は可能である。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断と治療を目的としたリスクのある血縁者の検査に関する情報は臨床的マネジメント リスクのある血縁者の検査を参照のこと。

遺伝学的検査にて疾患のCLCN1原因遺伝子2つを同定することが出来なければ、孤発症例(例えばある家系の中で発症者が1人のみ)の遺伝形式を同定することは困難である。このような症例は、常染色体劣性遺伝形式をとるものと推定される。

発症前診断(リスクを有するが無症状である親類)に対する検査

分子遺伝学的検査の項目に記載されているのと同様の手技を用いることで可能である。このような検査は、今後どのような症状が起こりうるか、もし起こった場合、発症年齢、重症度はどの程度か、どのような種類の症状か、進行速度はどの程度かについて予測することには有用ではない。先天性ミオトニーのリスクを有する個人を検査する際には、あらかじめ家系内の発症者を現在可能な検査手法で検査し、家系内の疾患原因遺伝子変異を同定しておくべきである。先天性ミオトニー症例においては麻酔に関連した予期しない出来事のリスクが高いため、リスクを有すると考えられる者は幼年時代に検査を行うことが適切である。

家族計画

遺伝学的リスク評価や出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うのが望ましい。同様に、リスクのある無症状の家族に対する遺伝カウンセリング(子に対する潜在的な遺伝的リスクや生殖に関わる選択肢についての議論を含む)も妊娠前に行うべきである。

DNAバンク

DNAバンクは主に白血球から調整したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。DNAバンクは特に分子遺伝学的検査の感度が100%に達しないような状況においてはことに重要である。 DNAバンクを提供する検査機関の一覧についてはTestingを参照のこと。

出生前診断

先天性ミオトニーの出生前診断目的での分子遺伝学検査を提供している検査機関はない。しかしながら疾患遺伝子変異が既に同定されている家系に対しては出生前検査を受けることは可能である。それぞれの患者に対応した出生前検査を提供している検査機関は、Testingを参照のこと。

先天性ミオトニーなどの疾患への出生前検査依頼はあまりない。特に診断が早期診断でなく妊娠中絶を目的として考慮されている場合には、医療従事者の中や家族の間に出生前診断の利用については意見の相違が存在する可能性がある。

大多数の施設では出生前診断についての両親の意思決定を尊重するようにはしているが、これらの事項については十分に話し合うことが適切である。

訳注:日本では本症に対する着床前診断は行われていない。

着床前診断は罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある。PGDが可能な検査機関についてはTesting.を参照。

訳注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない。


原文 Myotonia congenita

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