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先天性ミオトニー
(Myotonia congenita)

Gene Reviews著者: Morten Dunø, PhD, Eskild Colding-Jørgensen, MD
日本語訳者: 仲座 真希、(監訳)高橋 正紀(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 機能診断科学講座)

Gene Reviews 最終更新日: 2015.8.6 日本語訳最終更新日: 2019. 1.18.

原文: Myotonia congenita


要約

疾患の特徴 

先天性ミオトニー(Myotonia congenital)は、小児期より出現する筋のこわばり(ミオトニー)を特徴とする。この筋のこわばりは外眼筋、顔面筋や舌筋を含む全ての横紋筋群で見られる。筋緊張は筋を繰り返し収縮させることにより軽減する(warm-up現象)。筋はたいていの場合、肥大している。常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニー症例の方が常染色体優性遺伝形式をとる症例よりもしばしばミオトニーがより重度となる。常染色体劣性遺伝形式をとる患者においては、進行性の軽い遠位筋優位の筋力低下、休息後の運動により誘発される一過性の脱力発作を呈することもある。発症年齢は様々である。常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいては、たいてい乳児から幼児期初期であるのに対し、常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーでは、平均発症年齢が僅かに高い。双方において発症年齢が30〜40歳代と遅い症例もある。

診断・検査 

先天性ミオトニーの臨床診断は、幼児期初期から始まった筋強直のエピソードの存在、短い運動によるミオトニーの軽減、筋に叩打を加えることによるミオトニーの誘発、針筋電図でのミオトニー放電所見、血清クレアチンキナーゼ濃度の上昇、常染色体優性または劣性遺伝形式と一致する家族歴をもとにして行う。塩化物イオンチャネルをコードしているCLCN1が、先天性ミオトニーに関連していることが解明されている唯一の遺伝子である。シークエンス解析により、双方の遺伝形式の先天性ミオトニーを起こす症例の95%以上で、CLCN1遺伝子の変異が同定される。

臨床的マネジメント 

症状に対する治療:
ミオトニーは、メキシレチン(最も効果のある薬剤)、カルバマゼピン、フェニトインらの薬剤に感応しうる。それ以外にキニーネ、ダントロレン、アセタゾラミドによる有用な効果についても、報告されている。

避けるべき医薬品/環境:
脱分極性の筋弛緩剤(スキサメトニウムなど)、アドレナリン、β‐アドレナリン作動薬、プロプラノロール、コルヒチンはミオトニーを悪化させうる。

リスクのある血縁者の検査
 先天性ミオトニーの患者においては麻酔に関連した有害事象が発生する危険性が高まっている可能性があることから、リスクのある血縁者については、小児期のうちにその遺伝状況について評価しておくことは適切である。

遺伝カウンセリング 

先天性ミオトニーは、常染色体劣性遺伝形式(Becker 病) あるいは常染色体優性遺伝形式(Thomsen 病)の遺伝形式を取る。同じ病原変異が、いずれの遺伝形式を有する家系内でも生じることがある。常染色体優性遺伝形式において、新生突然変異が原因で発症する症例の全体に対する割合は不明である。常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーの子では、各々、50%の確率でその変異が遺伝する。常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいて、原則的には、ヘテロ接合の場合はたいてい無症状である、同胞では、発症する確率が25%、無症候性のキャリアとなる確率が50%、発症せず、キャリアでも無い確率が25%である。遺伝学的検査にてCLCN1原因遺伝子に2つの変異を同定することが出来なければ、孤発例(ある家系の中で発症者が1人のみ)の遺伝形式を同定することは困難であり、このような症例は、常染色体劣性遺伝形式をとるものと推定される。リスクを有する血縁者に対する検査やリスクの高い妊娠の出生前診断は家系での疾患原因遺伝子変異が判明している場合には可能である。


診断

疑わしい所見

下記のような臨床所見や検査所見を有する患者は先天性ミオトニーを疑うべきである。

臨床所見

  • 早期小児期より始まる筋のこわばり(ミオトニー)やこむら返りのエピソード。(ミオトニーは骨格筋の随意収縮後の弛緩性が低下するものと定義される)
  • 筋のこわばりは短時間の運動により軽減する(warm-up現象として知られている)。
  • 筋を叩打することによりミオトニー様の収縮が誘発される。
  • 常染色体優性遺伝形式もしくは常染色体劣性遺伝形式と矛盾しない家族歴を有している。

検査所見

  • 血清クレアチンキナーゼ値 僅かに上昇している。(正常上限値の3〜4倍以下)。
  • 筋電図(EMG) 針筋電図を施行すると、持続性の自発的な電気的興奮(ミオトニー放電)を認める。
    注意:筋強直性疾患において電気生理検査をもとに分子遺伝学検査のガイドラインが策定された。しかしながら、ほとんどの場合、臨床的特徴が十分な指針となる。
  • 筋生検所見 筋タイプ2B線維の欠損が認められることはあるが、たいていの場合は正常である。常染色体劣性遺伝形式をとる重度の先天性ミオトニーの場合、筋原性変化を認めることがある。
     注意:筋生検は先天性ミオトニーの診断を検討、確定する上で必須ではない。

確定診断

CLCN1遺伝子のヘテロ接合性変異または二対立遺伝性変異が同定された発端者は先天性ミオトニーと確定診断される(表1)。
注意:常染色体優性、常染色体劣性先天性ミオトニーの両方が、同じ遺伝子変異により発症しうる為、常染色体優性と常染色体劣性の鑑別はおもに家族歴(すなわち、発症している親の存在など)を基にしておこなう。
分子検査方法は単一遺伝子検査、マルチ遺伝子パネルの使用、網羅的ゲノム検査などを含む。

  • 単一遺伝子検査 病原性変異が見つかっていなければ、まずCLCN1遺伝子のシーケンス解析を行い、次にターゲット遺伝子欠失/重複解析を行う。
  • マルチ遺伝子パネル CLCN1遺伝子やほかの関連があると考えられる遺伝子(「鑑別診断」参照)を含むマルチ遺伝子パネルの使用も考慮される。 注意:(1)含まれる遺伝子やマルチ遺伝子パネルの感受性は検査機関や時間経過によって変わりうる。(2)このGeneReviewsで議論された病状と関連のない遺伝子を含むマルチ遺伝子パネルもあるかもしれない。したがって臨床医は、重要性が不確かな変異(Variant of uncertain significance, VUS)の同定や表現型を説明できない遺伝子における病原変異の同定を避けながら、最も妥当な費用で病状の遺伝的原因を同定する可能性の高いマルチ遺伝子パネルはどれか決める必要がある。(3)いくつかの検査室では、パネルオプションに、臨床医が指定した遺伝子を含む検査用に設計されたカスタムパネルや表現型に焦点をおいたカスタムエクソーム解析を含む。(4)パネルに使用する方法はシークエンス解析、欠失/重複解析やその他シークエンスを基にしない検査を含む。
  • 更なる網羅的ゲノム検査(可能な場合) 先天性ミオトニーの特徴を持つ患者で単一遺伝子検査(やマルチ遺伝子パネルの使用による検査)によって診断が確定できなければ、エクソームシークエンス、ゲノムシークエンス、ミトコンドリアシークエンスを含むより網羅的なゲノム検査を検討する。網羅的ゲノム検査の概論については、こちらを参照のこと。臨床医がゲノム検査をオーダーするためのより詳細な情報は、こちらを参照のこと。

表1. 先天性ミオトニー症例に使用される分子遺伝学的解析のまとめ

遺伝子1 解析方法 同解析方法で検出可能な
病原性変異をもつ発端者の割合
CLCN1 シークエンス解析2 95%
ターゲット遺伝子欠失/重複解析3 1%-5% 4
  1. 染色体遺伝子座やタンパクについてはA. 遺伝子とデータベースを参照のこと。この遺伝子で発見されたアレル変異については分子遺伝学の項を参照のこと。
  2. シークエンス解析では、病原性なし、おそらく病原性なし、定かではない、おそらく病原性あり、病原性あり、であるすべての変異を検出する。病原性変異には、小さな遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライシング部位異常といったものが含まれる。一般的には、エクソンや全遺伝子の欠失/重複は検出できない。シークエンス解析結果の解釈において考慮するべき問題点については、こちらを参照のこと。
  3. ターゲット遺伝子欠失/重複解析はCLCN1遺伝子内の欠失や重複を検出する。使用される方法の一部を以下に示す。定量PCR、long-range PCR、multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA)、単一exonの欠失や重複を検出するようにデザインされたgene-targeted microarrayなど。
  4. 事前に選択された60人の患者を対象とした研究では4人に大きな欠失/重複があることが明らかになった。

臨床的特徴

臨床所見

発症年齢 発症年齢は様々である。常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーにおいては、発症がたいてい乳児期から幼児期初期であるのに対し、常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーでは、平均発症年齢が前者と比べて僅かに高い。発症年齢が30〜40歳代と遅い症例も双方においてみられる。

筋のこわばり 先天性ミオトニー(Myotonia congenita)は、小児期より出現する筋のこわばりを特徴とする。このミオトニーは外眼筋、顔面筋や舌筋を含む全ての横紋筋群に出現する。

  • 先天性ミオトニー患者が、握手したあとで指を広げることが不可能であることや、筋肉(舌筋、指の伸筋群、手掌筋群など)を叩打することでミオトニー収縮が誘発されることで、臨床医はミオトニーに気づきうる。
  • ミオトニーは筋を繰り返し収縮させることにより軽減しうる(warm-up現象)。筋はたいていの場合、肥大している。
  • 常染色体劣性遺伝形式をとる症例の方が常染色体優性遺伝形式をとる症例よりもしばしばミオトニーがより重度となる。

筋力低下 常染色体劣性遺伝形式をとる患者においては、進行性の軽い遠位筋優位の筋力低下、休息後の運動により誘発される一過性の脱力発作を呈しうる。近位筋の筋力低下と遠位筋のミオパチーを呈した症例も報告もある。

筋外症状 若年性白内障、心伝導異常、内分泌機能障害などの筋症状以外の症状の合併はみられない。

遺伝型と表現型の関係

CLCN1遺伝子変異の表現型の症状は、同一家系内においてでさえも様々である。ホモ接合型がヘテロ接合型よりも症状の重い、半優性遺伝症例の報告もある。

例えば p.Gly230Glu、p.Thr310Metの遺伝子変異を有する患者は、妊娠により変動する表現型を呈したと報告されている。また、p.Phe428Ser (NM 000083.2:c.1283T>C)の遺伝子変異を有する患者は先天性パラミオトニーを思わせるような表現型を呈したと報告されている。

近位筋の筋力低下(p.Thr550Met遺伝子変異に起因した症例)、もしくは遠位筋のミオパチー(p.Pro932Leu遺伝子変異に起因した症例)も報告されている。しかしながら、これらの臨床的な特徴とCLCN1遺伝子変異と相関について疑問も呈されている。

浸透率

常染色体優性遺伝形式の遺伝子変異の大多数は、低い浸透性を呈しうる。同一遺伝子異常をヘテロ接合体として有する家族内でも、ミオトニーを認めないものから重度のミオトニーまで様々な表現型を呈することがある。

命名

常染色体優性遺伝形式をとる先天性ミオトニーは、トムゼン病として知られている。

常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーはベッカー病として知られている。

Myotonia leviorは基本的には先天性ミオトニーと同義である。

有病率

Beckerらが1977年頃に検討したところ先天性ミオトニーは常染色体優性遺伝形式では1:23,000、常染色体劣性遺伝形式では1:50,000の頻度にて生じていると推測されていた。後の調査の結果、常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーのほうが常染色体優性遺伝形式よりもよりありふれていることが示唆された。イギリスにおける症状を有する300症例以上のコホート研究では、常染色体優性遺伝形式をとる先天性ミオトニーは遺伝子変異陽性症例の僅か37%に認められたにすぎなかった。

スカンジナビア半島の北部においては、先天性ミオトニーの有病率は、おおよそ1:10,000と推測されてきたが、世界的には有病率は1:100,000と考えられている。


遺伝学的に関連する(対立形質)疾患

CLCN1遺伝子のp.Phe428Ser変異をもつ一例で、パラミオトニー様の表現型と関連があるとされている。この発見はほかに類がなく、慎重に解釈する必要がある。先天性パラミオトニーは通常、SCN4A遺伝子の変異によって引き起こされるものである。

ほかに、p.Arg976Ter変異をもつある症例では、てんかんと関連があるとされている。この変異は、薬剤抵抗性全般てんかんのほかに、特定の評価において軽度のミオトニー症状も示す患者から、新生の変異として見出された。CLCN1遺伝子変異とてんかんの関連を示すためにはさらなる根拠が必要である。

CLCN1遺伝子変異は、筋強直性ジストロフィー2型(DM2)やナトリウムチャネルミオトニーと診断された患者にも同定されている。DM2においては、このCLCN1遺伝子変異の合併によって表現型が変化し、症状が悪化している可能性がある。


鑑別診断

先天性ミオトニーの鑑別疾患にはミオトニーを主要徴候とする他の疾患が含まれる。先天性ミオトニーはこれらの疾患群から以下を参考にして鑑別できる。

  • ミオトニーを誘発、軽減する因子
  • 筋外症状合併の有無
  • 電気生理学的検査所見

鑑別疾患として考慮すべき疾患群

  • 先天性パラミオトニー(paramyotonia congenita) (SCN4A遺伝子変異によって起こる)時折、先天性ミオトニーと鑑別することが困難である。
    • いずれも、幼児期初期から出現する全般性のミオトニーを呈する。先天性ミオトニーにみられない特徴として、先天性パラミオトニー患者は、極度の寒冷過敏性を有しており、寒冷により重度のミオトニーを起し、その後に脱力を来たす。しかしながら、先天性ミオトニー患者症例でも寒冷にていくらかのミオトニーの悪化を来たすことは報告されうる。
    • 先天性ミオトニー患者では繰り返す筋収縮によってミオトニーが軽減するというwarm-up現象が著明に認められる。逆に、先天性パラミオトニー患者においては、繰り返す筋収縮によりミオトニーが増悪する(paradoxical myotonia 奇異性ミオトニアと呼ばれる)。
  • カリウム惹起性ミオトニー (SCN4A遺伝子変異によって起こる)稀なナトリウムチャネル(SCN4A)病の中の多様なグループの一つである。先天性ミオトニーを疑われた症例のうち20%までが、SCN4A遺伝子変異を有しているという事実がある。高カリウム性周期性四肢麻痺1型でもミオトニーが見られることがある。しかしながら、周期性四肢麻痺の発作がないような場合、臨床症状のみからではナトリウムチャネル(カリウム惹起性) ミオトニーを塩化物イオンチャネルミオトニー(先天性ミオトニー)と鑑別することは困難であることがある。
     下記の手がかりが役に立つ。
    • 特徴として、ナトリウムチャネル疾患による症状は、カリウムの摂取により増悪する。この種の増悪は塩化物イオンチャネルの先天性ミオトニーにおいては認められない。
    • ナトリウムチャネルミオトニー症例の一部では、運動誘発性・遅発性ミオトニーを認める。これは少し遅れて、筋収縮によりミオトニーが誘発される現象である。この現象は、塩化物イオンチャネルの先天性ミオトニー症例に認められるwarm-up現象(繰り返す筋収縮によりミオトニーが軽減する)と対照的である。
    • 眼瞼ミオトニーはナトリウムチャネルミオトニーで頻繁にみられるが、転倒は塩化物イオンチャネルミオトニーで頻繁にみられる。
    • ナトリウムチャネルミオトニーの多数の症例においては痛みを伴うミオトニーを認める。一方、痛みは塩化物イオンチャネルの先天性ミオトニーではまれである。
  • 筋強直性ジストロフィー1(DM1)2(DM2)  筋強直性ジストロフィーは、その筋症状以外の症状が予後や管理に重要な影響を与える為、常に先天性ミオトニーの鑑別疾患として常に考慮すべき疾患である。筋強直性ジストロフィーと同様に、常染色体劣性遺伝形式をとる先天性ミオトニーにおいても、ある程度の筋力低下や筋の萎縮が認められることがあるが、その筋力低下のパターンが著明に異なっている。また、DM1やDM2に認められる若年性白内障、心伝導異常、内分泌機能障害などの筋外症状も先天性ミオトニー症例においては認められない。しかしながら筋外症状を認めない場合でも、DM1の軽症例などについては除外出来ない

    DM1はDMPK1遺伝子におけるCTGリピートの伸長が原因である。DM2はcellular nucleic acid binding protein(zinc finger protein 9)をコードしているCNBP遺伝子イントロン1におけるCCTGリピートの伸長が原因である。DM1、DM2は共に常染色体優性遺伝形式をとる。

臨床的マネジメント

初期診断後の評価

先天性ミオトニーと診断された患者の疾患の程度と治療の必要性を確認するために、以下の評価が推奨される。

  • 臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーへ相談すること。
  • 薬物治療の必要性を評価するために脳神経内科医やその他関連のある専門医に相談すること。

臨床症状に対する治療

軽度な症状を訴える症例に対しては、症状を軽減するために活動や生活スタイルを適応させることのみ必要である。ミオトニー症状はナトリウムチャネルブロッカーやほかの薬物治療に感応しうる。

  • メキシレチン リドカイン誘導体であり、ミオトニーに対して最も効果が確立された治療である。二重盲検無作為試験では、ミオトニーのある59名(そのうち34名が先天性ミオトニーであった)において、メキシレチン(200mg, 3回/日)によって症状が著しく減少した。臨床では、一般的に150rを1日2回服用から投与を開始し、徐々に必要に応じて200〜300r1日3回服用まで増量する。最も出現する可能性のある副作用として、胃腸症状、吐き気、立ち眩み、めまい、振戦、失調が挙げられるが、これらは投与量の減量により改善する。
  • フェニトインカルバマゼピンなど、ほかのナトリウムチャネルブロッカーも有効性が報告されている。
  • キニーネ、ダントロレン、アセタゾラミドなど、ほかの推定に作用機序を持つ化合物は一部の症例に有用である。
    これらの治療の選択について詳しい説明はConravey & Santana-Gould [2010]のレビューを参照のこと。

一次症状の予防

運動により一時的にミオトニーが軽減する(warm-up効果)。体操による長期間の効果も時々、患者から聞くが、その効果については体系的に研究、評価はされていない。

回避すべき薬物/環境

一般に、麻酔は注意して行う必要がある。麻酔時の脱分極性筋弛緩剤の使用は、麻酔に関連した有害事象の原因となるため、特に注意する必要がある。スキサメトニウムの手術前注射により、生命を脅かす程の筋攣縮や二次性の換気困難が出現したという報告もあるため、先天性ミオトニーの患者に対してスキサメトニウム使用を避けることが勧められる。

注意:非脱分極性の筋弛緩剤に関しては、先天性ミオトニーの患者対して問題なく作用するようである。しかし、スキサメトニウムが原因で出現したミオトニー現象を軽減する訳ではない。

稀な例ではあるが、アドレナリン高容量の選択性βアドレナリン作動性アゴニストの静脈内投与によりミオトニーが増悪した例もある。 

βアンタゴニストであるプロプラノロールにおいても同様にミオトニーを増悪させたとの報告がある。それゆえβ‐アゴニストやβ-アンタゴニスト慎重に使用するべきである。また、フェノテロールリトドリンの静脈内投与を行う際にも特別な注意を払うべきである。

腎機能低下症例において、コルヒチン使用により、ミオトニーを伴ったミオパチーを起こす可能性がある。理論的には、先天性ミオトニー症例においても同様にミオトニーを増悪させるものと考えられる。

罹患危険性のある血縁者の検査

先天性ミオトニーの患者においては麻酔に関連した有害事象が発生する危険性が高まっていることなどから、罹患危険性のある血縁者については、小児期のうちにその遺伝状況について評価しておくことが適切である。

  • 家族に遺伝子変異をもつ人間がいることがわかっているならば、リスクのある血縁者の遺伝状況を評価するために分子遺伝検査が用いられうる。
  • 家族に遺伝子変異があるかわからなければ、リスクのある血縁者の病状を評価するために筋電図検査が用いられうる。
    リスクを有する親類への遺伝カウンセリングの為の検査に関連する項目については遺伝カウンセリングを参照のこと。

妊娠中の管理

罹患した母親には、薬物療法や筋肉注射、寒冷などの要因による筋肉のけいれんのリスクを最小限にするために、包括的な出産計画を推奨している。

研究中の治療法

ラモトリギンを用いた治験が(欧米で)現在進行している(NCT01939561)。
疾患や広範な領域の臨床的な研究に関する情報を見る為にはClinical trials.govサイトを参照するように。注意:この疾患に関しての臨床試験はない可能性がある。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

先天性ミオトニーは常染色体劣性遺伝形式(Becker病)と常染色体優性遺伝形式(Thomsen病)をとる。
同一の遺伝子変異が、常染色体劣性遺伝形式をとる家系と常染色体優性遺伝形式をとる家系に認められることがありうることから、遺伝形式の明白な区別は困難である。

患者家族のリスクー常染色体優性遺伝形式

発端者の両親

  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の大多数には罹患した親が存在する。
  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーの発端者は、もしかすると新生遺伝子変異の結果として疾患を有している可能性がある。新生突然変異による症例の割合は不明であるが、おそらくとても低いものと考えられる。
  • 発端者で見つかったCLCN1遺伝子変異が親の白血球DNAで検出されなかったならば、2つの可能性がある。生殖細胞系列モザイク現象あるいは発端者の新生遺伝子変異である。生殖細胞系列モザイク現象の症例は報告されていないが、可能性はある。
  • 明らかに新規遺伝子変異を持つ発端者の両親の評価として推奨されているものには筋電図検査を含む。あるいは、次世代シークエンサー(NGS)を用いたディープシークエンスのような低レベルのモザイクを発見するために開発された方法は、片親の低モザイクを発見できる可能性がある
  • 家族の症状を発見できていない、浸透度が減少している、親が症状を発症する前に死亡していることにより、常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の家族歴がないとされている場合もある。したがって、発端者の親に対する適切な評価(分子遺伝検査や筋電図検査など)が行われていない限り、明らかに家族歴がないとは確証できない。

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝状況に依存する。
  • もし発端者の両親のうち一人が発症している場合、同胞が発症するリスクは50%である。
  • 両親が臨床的に非発症である場合には、同胞が発症するリスクは低いと思われる。しかしながら、片親の浸透度が減少している可能性があるため、非発症の両親をもつ発端者の同胞は常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーのリスクは依然として高い。
  • もし、CLCN1遺伝子変異が両親のDNA配列上に同定されない場合、同胞のリスクは低いが、生殖細胞系列モザイク現象の可能性があるため一般人よりはリスクが高い。

発端者の子

  • 常染色体優性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の子がCLCN1遺伝子変異を継ぐ確率は各々、50%である。

他の血縁者

  • それ以外の血縁者のリスクは、発端者の両親の遺伝状況に依存する。もし、両親のうち、片親が発症している場合、CLCN1遺伝子変異を持つ場合、あるいはその両方の場合には、発端者の娘もしくは息子はそのリスクを有することになる。

患者家族のリスクー常染色体劣性遺伝形式

発端者の両親 

  • 常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の両親は絶対的ヘテロ接合体である。(つまり、一つのCLCN1病原遺伝子のキャリアである。)
  • ヘテロ接合体(キャリア)は無症状である。時折、発端者(2つのCLCN1遺伝子変異を持つ)の両親にて針筋電図検査上でミオトニー現象を僅かに認める程度である。しかしながら、両親は症状が進行するリスクはない。

発端者の同胞 

  • 理論上、患者の同胞が先天性ミオトニーを発症する確率は25%、無症状であるキャリアとなる確率は50%、発症せずキャリアにもならない確率は25%である。
  • ヘテロ接合体(キャリア)は大部分が無症状である。時折、徹底的な臨床的検査により、ヘテロ接合体にて針筋電図検査上でミオトニー現象を僅かに認めることがある。しかしながら、彼らは症状が進行するリスクはない。

発端者の子 

  • 常染色体劣性遺伝形式の先天性ミオトニーと診断された患者の子は CLCN1遺伝子の原因遺伝子変異の絶対的ヘテロ接合体(キャリア)である。

他の血縁者

  • 発端者の両親の同胞がキャリアである確率は各々、50%である。

キャリア(ヘテロ接合性病原変異保持者)の検出

リスクのある血縁者へのキャリアの遺伝的解析には、家系内で遺伝子変異が同定されていることが必要である。

遺伝カウンセリングに関連した問題

リスクのある血縁者の検査に関する情報は臨床的マネジメント リスクのある血縁者の検査を参照のこと。

孤発症例の遺伝形質の同定

分子遺伝学的解析によりCLCN1病原遺伝子変異2つがそれぞれ別の染色体にあるような状況を同定することが出来なければ、孤発症例(例えばある家系の中で発症者が1人のみ)の遺伝形式を同定することは困難である。このような症例の場合は、常染色体劣性遺伝形式をとるものと推定される。単一アレルに2つの病的遺伝子変異存した報告があるので、分離解析による相の確認は重要である。ヘテロ接合体よりホモ接合体の方がより症状が重いような半優性の症例が報告されているということに注意する必要がある。

発症前診断(リスクを有するが無症状である親類)に対する検査

先天性ミオトニー患者のリスクを持つ無症候親族に対する解析は、分子遺伝検査で家族に特定の病的遺伝子変異が同定された後に可能となる。そのような検査は正式な遺伝子カウンセリングを受けたもとで行われるべきである。このような検査は、無症候患者の発症年齢、重症度、症状の種類、進行速度ついて予測することには有用ではない。非特異性または疑わしい症状がある無症候患者の検査は予測検査であり、診断検査ではない。先天性ミオトニー症例においては麻酔に関連した有害事象のリスクが高いため、リスクを有すると考えられる者は幼年時代に検査を行うことは適切である。

家族計画 

  • 遺伝学的リスク評価やキャリアであるかの解明、出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うのが望ましい。
  • 発症している、キャリアである、またはキャリアとなるリスクのある青少年に対する遺伝カウンセリング(子に対する潜在的な遺伝的リスクや生殖に関わる選択肢についての議論を含む)も妊娠前に勧められることが適当である。
DNAバンキング 
  • DNAバンクは(主に白血球から抽出した)DNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、発症した患者のDNA保存が考慮される。

出生前検査と着床前診断 

CLCN1遺伝子病原変異が既に発症している家族で同定されているならば、先天性ミオトニーのリスクに関する出生前検査や着床前診断を受けることは可能性を有する選択肢である。

医療従事者の中や家族の間に出生前診断の利用については意見の相違が存在する可能性がある。特に診断が早期診断でなく妊娠中絶を目的として考慮されている場合には、そうである。大多数の施設では出生前診断についての両親の意思決定を尊重するようにはしているが、これらの事項については十分に議論されることが適切である。

訳注:日本では本症に対する着床前診断は行われていない。


更新履歴

  1. Gene Review著者: Morten Dunø, PhD and Eskild Colding-Jørgensen, MD.
    日本語訳者: 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 筋チャネル病および関連疾患の診断・治療指針作成および新規治療法開発に向けた基盤整備のための研究班 
     
    Gene Review 最終更新日: 2008.7.8. 日本語訳最終更新日: 2011.02.03.
  2. Gene Reviews著者: Morten Dunø, PhD, Eskild Colding-Jørgensen, MD
    日本語訳者:仲座 真希、(監訳)高橋 正紀(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 機能診断科学講座)
    Gene Reviews 最終更新日: 2015.8.6 日本語訳最終更新日: 2019. 1.18.in present)

原文: Myotonia congenita

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