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ペンドレッド症候群
(Pendred Syndrome/DFNB4)

[Autosomal Recessive Sensorineural Hearing Impairment and Goiter, DFNB 4 Nonsyndromic Hearing Loss and Deafness]

Gene Review著者: Richard JH Smith, MD, Guy Van Camp, PhD
日本語訳者: 佐藤亜位,山崎雅則(信州大学医学部附属病院加齢総合診療科),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) )   
Gene Review 最終更新日: 2009.4.2. 日本語訳最終更新日: 2009.10.20.

原文 Pendred Sydrome/DFNB4


要約

疾患の特徴 

ペンドレッド症候群とDFNB4は聴覚障害を主徴候とする幅広い臨床像を呈し,他の所見を有する場合も有しない場合もある.ペンドレッド症候群は,通常先天性で非進行性の高度両側性感音性難聴と,前庭機能障害,側頭骨異常,小児後期から成人初期に出現する甲状腺機能正常の甲状腺腫を特徴とする.同一家系内でも臨床像は多彩である.DFNB4は非症候性の感音性難聴,前庭機能障害,側頭骨異常を特徴とする.DFNB4では甲状腺の異常を認めない.

診断・検査 

ペンドレッド症候群とDFNB4は,(1) 軽度から中等度の進行性難聴の例もあるが,通常は先天性でしばしば高度の聴力障害,(2) 蝸牛低形成を合併する場合もしない場合もある両側性の前庭水管拡張(dilatation of the vestibular aqueduct, DVA, または前庭水管肥大,enlarged vestibular aqueduct, EVAとも言う)(DVAと蝸牛低形成を合併した場合はMondini奇形または異形成として知られている)を呈する場合に臨床的に診断される.さらに,ペンドレッド症候群の罹患者は,パークロレート放出の異常を認めるか,または甲状腺腫(他に甲状腺腫の原因が明らかでなく,パークロレート放出試験が施行できない場合)を有する.

ペンドレッド症候群およびDFNB4に関連する遺伝子としては,SLC26A4(患者の50%以下)とFOXI1(患者の1%以下,さらなる遺伝的異質性の存在が示唆される)の2つのみが知られている.シークエンス分析により,患者が複数いる家系の約50%,散発例の約20%に原因遺伝子変異が同定される.このような検査は臨床的に利用可能である.FOXI1解析は研究室レベルで行われている.

臨床的マネジメント 

症状の治療:聴覚訓練,補聴器の使用,聴覚障害のために計画された教育プログラム,高度の聾者に対しては人工内耳の検討.甲状腺機能異常に対する標準的治療.

経過観察6ヵ月毎または1年毎の聴覚,内分泌機能評価.聴覚障害が進行性であれば,初めは3ヶ月〜6ヵ月毎に聴力検査を繰り返す.避けるべき行為/環境:ウェイトリフティング,接触するスポーツ

遺伝カウンセリング 

ペンドレッド症候群およびDFNB4は常染色体劣性遺伝形式で遺伝する.通常は,患者の同胞は25%の確率で患者となり,50%の確率で無症候性保因者,残り25%はいずれでもない.家系に特異的な遺伝子変異が知られている場合には,リスクのある家族に対する保因者調査や,リスクのある妊娠の出生前検査は可能である.


診断

臨床診断

ペンドレッド症候群およびDFNB4は,SLC26A4 [Cambell et al 2001],FOXI1 [Yang et al 2007]の変異による特徴的な臨床所見を呈する.

ペンドレッド症候群は次のような患者において,臨床的に診断される.

感音性難聴は,通常先天性,非進行性で,聴覚脳幹反応検査(auditory brain stem response testing, ABR)や純音聴力検査では重度の所見を得る.聴力障害の評価については,難聴と先天性聴力障害の項を参照のこと.
両側性前庭水管拡張(dilation of the vestibular aqueduct,DVAまたは前庭官肥大,enlarged vestibular aqueduct,EVA)は,蝸牛低形成を合併する場合としない場合があり,膜迷路は正常の蝸牛で2と3/4回転であるが,低形成では1と1/2回転である.DVAと蝸牛低形成の合併はMondini奇形として知られている.
パークロレート放出試験の異常,または甲状腺腫(他に甲状腺腫の原因が明らかでなく,パークロレート放出試験が施行できない場合).パークロレート放出試験の偽陰性率は約5%である.

DFNB4は次のような患者に対して,臨床的に診断される.

  • 先天性のこともある感音性難聴は,しばしば進行性で,聴覚脳幹反応(ABR)もしくは純音聴力検査で重度の所見を示す.
  • 前庭水管拡張を認めるが,その他は正常な骨迷路を有する
  • 正常な甲状腺機能

検査

パークロレート放出試験 ペンドレッド症候群の罹患者では,血清サイログロブリン濃度が上昇することがあり,パークロレート投与で甲状腺からヨードの過量放出を示す.この検査では,経静脈的に投与された標識ヨードを置換するためにパークロレートを使用し,そのヨードはSLC26A4によってコードされる蛋白であるペンドリンの機能異常により甲状腺細胞内に二次的に集積する.正常では,ヨードはコロイドに輸送され速やかにサイログロブリンに結合する.パークロレート投与2時間後での非結合性のイオン放出率は10%以下である.ペンドレッド症候群の罹患者では,放出率は15%以上であり,80%に達することもある.

分子遺伝学的検査

遺伝子 ペンドレッド症候群/DFNB4に関連する遺伝子として,SLC26A4FOXI1が知られている [Yang et al 2007].

臨床検査 

  • 特定変異の検出 SLC26A4 に頻度の高い3つの変異, p.Leu236Pro (26%), p.Thr416Pro (15%), c.1001+1G>A (またはIVS8+1G>Aとしても知られる) (14%) は,ペンドレッド症候群と確定診断された北ヨーロッパ系白人家系における Pendred 症候群/DFNB4 アリルの50%を占める[Coyleら 1998, Campbellら 2001].日本人において,頻度の高い変異p.His723Argはアレルの53% を占める[Tsukamotoら 2003].
  • 変異スキャンニング. 疾患の原因となる変異に対する変異スキャニングの感度は,その技術に依存する.変性高性能液体クロマトグラフィ (DHPLC) はSLC26A4における41の異なる変異のアリル変異体を100%検出することが示されている.単一鎖構造多型解析 (SSCP) は,同様のアリル変異体の63%しか検出しておらず,最も頻度の高い変異の2つ(p.Leu236Pro, c.1001+1G>A [IVS8+1G>A]) の検出は不確実である[Prasadら 2004].
  • シークエンス解析.21すべてのエクソン(20のコードされたエクソン)とスプライシング部位のシークエンスで,SLC26A4における疾患の原因となる変異は100%同定される.SLC26A4における疾患原因となる変異が分離された家系の3分の1において,ユニークな変異が発見される(ペンドレッド症候群の表現型を有する個人の1/6)[Campbellら 2001, Parkら 2003].
  • 欠失・重複解析. 単一エクソンの欠失,およびエクソンの重複が報告されている[Peraら 2003].

研究的検査 Yangらはforkhead 転写制御因子であるFOXI1の変異がペンドレッド症候群/DFNB4 の表現型に関与していることを最近報告した[Yangら 2007].

  • 2つの家系において,DVA患者はSLC26A4FOXI1 双方に単一変異をもつ二重ヘテロ接合性を示した.この遺伝子型が病因となる根拠として,彼らはFOXI1は5’側に保存されたシス作用性エレメントに結合することによって,SLC26A4転写を活性化させることを示した.FOXI1 の変異に加えて,彼らは転写活性化力の減弱を示した.
  • Yang らは,ペンドレッド症候群/DFNB4の他の家系において,FOXI1を介する遺伝子転写の活性化を停止するSLC26A4 のプロモーター結合部変異を発見した.

表1に ペンドレッド症候群/DFNB4の分子遺伝学的検査についての要約を示す.

Table 1. ペンドレッド症候群/DFNB4で使用される分子遺伝学的検査

遺伝子記号

検査方法

検出された変異

変異検出率

利用可能性

SLC26A4

標的変異解析

p.Leu236Pro,
p.Thr416Pro,
c.1001+1G>A1

25%

臨床

変異スキャニング

シークエンス変異体

〜50% 2

シークエンス解析

〜50% 3

欠失・重複解析

エクソン,または多エクソン,または遺伝子全体の欠失

不明

FOXI1

シークエンス解析4

シークエンス変異体

1%

研究のみ

  1. この特殊な変異は北ヨーロッパの家系のみで一般的である.検出パネルを含む変異は研究室により様々である.
  2. DHPLCによる変異スキャニングの結果; 他のスキャニング技術ではより感度が低い.
  3. SLC26A4の変異は ペンドレッド症候群の表現型を分離した多重家系の50%で同定される.
  4. ゲノムDNAのシークエンス分析では同定できない欠失・重複を同定する検査.定量的PCR法や,リアルタイムPCR法,多重連鎖依存プローブ増幅(MLPA),アレイCGHなどの様々な方法が用いられる.

検査結果の解釈. シークエンス分析の結果の解釈する場合はここをクリック

検査手順

発端者における確定診断

・臨床経過や所見が常染色体劣性遺伝の非症候性難聴に合致する,重度の先天性難聴の小児において,オーダーすべき最初の検査はGJB2の遺伝子検査である(非症候群性聴覚障害および難聴, DFNB1参照).GJB2遺伝子検査で疾患原因となる2つの変異が同定されなかった場合は,DVAやMondini 奇形を評価するために側頭骨のCTもしくはMRI検査を考慮すべきである.これら側頭骨奇形が何れかで存在すれば,SLC26A4分子遺伝学的検査をすることは必然である.ペンドレッド症候群の小児の多くでは,甲状腺腫大は明らかではないであろう.パークロレート試験はあまり一般的に行われておらず,分子遺伝学的検査があれば,ペンドレッド症候群の診断に必須ではない.
・進行性の感音性難聴を認めるすべての小児に対しては,前庭水管拡張を評価する目的で側頭骨の高解像度CTまたはMRIを遂行するべきである.前庭水管の拡張が認められれば,SLC26A4 の分子遺伝学的検査の施行は妥当である.
リスクをもつ近親者に対する保因者調査には,その家系において疾患の原因となる変異が事前に同定されていることが必要である.
注: 保因者はこの常染色体劣性疾患のヘテロ接合体であり,疾患を発症するリスクはない.
リスクのある妊婦の出生前診断と着床前診断(PGD)には,その家系において疾患の原因となる変異が事前に同定されていることが必要である.

遺伝子レベルでの関連疾患
SLC26A4 変異に関連して知られる表現型はペンドレッド症候群と DFNB4のみである.


臨床像

自然経過

ペンドレッド症候群

ペンドレッド症候群は,感音性難聴,側頭骨奇形,小児期後期から成人期初期の甲状腺機能正常な甲状腺腫を特徴とする.聴力障害や甲状腺異常の程度は,同じ家系内でも多彩である. 聴力障害.聴力障害の程度と,その発現は様々であり得る.古典的に,聴力障害は両側性で,重症であり,先天性 (もしくは言葉獲得以前からのもの)である. しかしながら,ある場合には聴力障害が後天的に発症し進行することもある.多くの報告例で,同じ家系においても進行性で言語獲得後の聴力障が頭部外傷後に発症している[Luxonら 2003].頭部外傷との関連から,これら個人が前庭水管拡張のような内耳奇形を有していたかもしれないことが示唆される.眩暈が聴力障害に先行するか,または随伴する場合もある.

前庭機能障害.ペンドレッド症候群の66%に前庭機能障害の客観的所見が認められ,軽度の片側性半規管麻痺から重度の両側性機能喪失にまで及ぶ.歩行困難のエピソード経験を持つ幼児においては前庭機能障害を疑うべきである

側頭骨奇形.すべてではないが,ほとんどのペンドレッド症候群患者において,側頭骨は放射線学的に異常である[Goldfeldら 2005].しかしながら,異常のタイプに関しては普遍的なコンセンサスは得られていない.この多義性は骨の解剖学的な異常を定義することの不正確さを反映する.SLC26A4の同一変異をホモ接合で有する患者の研究で,側頭骨の解剖学的評価に高解像度CTが用いられた.Goldfeldら[2005]により,蝸牛の高位回転の欠損 (高位から中位の回転に回転間隔壁が認められないときに診断される)や蝸牛軸欠損(蝸牛軸の真中の断面で,蝸牛中心にある骨の多面的構造が明らかでない場合に診断される)がそれぞれ耳の75%と100%に認めると報告された. 前庭管拡張は,前庭水管下降脚の中間部1.5mm以上であることで定義されるが,当時の80%に認められた[Goldfeldら 2005]. 以上の所見からペンドレッド症候群において,蝸牛軸欠損が最も頻度の高い奇形であることが示唆される.罹患同胞であっても,側頭骨奇形に関しては一致しないかもしれない.

甲状腺腫.ペンドレッド症候群の約75%では,臨床検査上甲状腺腫を認める.約40%の患者は小児期後期〜思春期にかけて甲状腺腫が出現し,残りの患者においては成人期の初期に認められる.顕著な家系内での多様性が存在する.多くのペンドレッド症候群患者においてはサイロキシン投与が開始されるが,血清TSHが5 mU/L以上の甲状腺機能異常は約10%程度にしか認められない.甲状腺腫のない患者の甲状腺機能異常は報告されていない. DFNB4

DFNB4では明らかな異常を認めない感音性難聴(すなわち非症候群性聴力障害)が特徴的であるが,側頭骨CT または MRI では前庭管拡張を認める.甲状腺欠損は見られない.

聴力障害.聴力障害の程度やその提示は様々であり得る.前庭管拡張の患者の多くは,正常な聴力で出生するが,小児期において進行性に聴力低下を認める.前庭管拡張の大きさと聴力低下の程度の相関を記述した報告がいくつかあるが,厳密な相関は認めていない[Berrettiniら 2005].

前庭機能異常.前庭管拡張の患者は,カロリック試験で前庭機能障害が示されても,それを否定するかもしれない.前庭管拡張が一側性の場合,前庭機能異常側と前庭管拡張側に厳密な相関はない. [Berrettiniら 2005].

側頭骨変形.幼児期または小児期に始まる感音性難聴において,両側性前庭管拡張は最も一般的な画像所見である.DFNB4表現型の家系における研究で,Tsukamoto らは発端者の75%にSLC26A4 変異があると報告している[Tsukamoto et al 2003].しかしながら,単一症例(すなわち一家系でひとりだけが罹患)では,SLC26A4変異の頻度はより低い[Berrettini et al 2005].DVA は両側性または片側性であり得る.

遺伝子型と臨床型の関連

機能的研究において,残存したヨード輸送機能を保持する SLC26A4 ミスセンス変異は,ペンドレッド 症候群 よりもDFNB4 との関連が強いことが示唆されている[Scottら 2000].しかしながら,個々のミスセンス変異がどの程度機能を有するかを予測するのは困難である.従来用いられた2つのパラメーター- コントロール集団での低頻度と進化的に保存されたアミノ酸置換 −は信頼に足りない.Peraらは,SLC26A4のシークエンスにプロリンを付加または脱落,あるいは荷電アミノ酸を付加または脱落させることで,直接的な機能的試験を施行しなくとも変化したSLC26A4の機能をよりよく予想できることを示している.

回転性眩暈の頻度と聴力障害進行の割合は変異に依存するかもしれない.

病名

ペンドレッド症候群の様々な発現度と,特に甲状腺の症状を報告する多くの研究より,ペンドレッド症候群とDFNB4は同一に考えるべきであるということが支持されている.

頻度

ペンドレッド症候群の頻度は明らかではないが,Fraser [1965]は先天性難聴者の7.5%を占めるとしている.もしこのデータが典型的なものであるとすれば, ペンドレッド症候群は先天性聴力障害の主たる原因であるといえる. ペンドレッド症候群とDFNB4 が同一疾患スペクトルの部分的なものであると考えられる場合には,その罹患数は非常に高くなる.274 人の東アジア人と318 人の南アジア人の難聴者における研究で,SLC26A4 における変異が双方の群の約5.5% であることが示された.しかしながら, 非症候性難聴の患者における聴力障害の原因としてSLC26A4変異の重要性を証明するためには,より大規模な難聴患者集団のスクリーニングが必要であろう.

鑑別診断

この章の疾患における遺伝学検査の可否に関する現在の情報については,GeneTests Laboratory Directoryを参照.-編者注

先天的遺伝性聴力障害.新生児の約1/2000人が先天性(もしくは言語習得以前の)遺伝性聴力障害に罹患する.これらの児の30%がさらなる奇形を有しており,症候性聴力障害の診断を可能にしている(難聴および遺伝性聴力障害概観を参照).蝸牛低形成を有する,あるいは有さない前庭水管(DVA)の拡張は,ペンドレッド症候群の85%にみられるが,DVAや蝸牛低形成のいずれもペンドレッド症候群に特有ではない.よって,それぞれの診断的価値には限界がある.散発例の小児の約20%は,DVAと疾患の原因となるSLC26A4遺伝子変異を有する [Campbellら 2001].

パークロレート試験の異常.パークロレート試験は,慢性甲状腺炎や総ヨード有機化障害,131I治療後甲状腺中毒症を含む,甲状腺の多くの状態において異常である.

感音性難聴を伴う先天性甲状腺機能低下症.感音性難聴に関連した散発性,地域性の先天性甲状腺機能低下症は,臨床的にペンドレッド症候群に類似しているが,遺伝学的には全く異なっている.

甲状腺ホルモン不応.甲状腺ホルモン不応症 (RTH)では常染色体優性遺伝が典型だが,常染色体劣性遺伝性RTHを呈する例外的な家系が報告されている.6人中2人の小児は重症の感音性難聴や甲状腺腫,甲状腺受容体β(TRMβ)遺伝子を含む第3染色体の(核型の決定で検出された)大欠失を有している.

自己免疫性甲状腺疾患.グレーブス病(GD)や橋本病(HT),原発性特発性粘液水腫を含む自己免疫性甲状腺疾患(AITD)は,多くの遺伝的,環境的因子により生ずる.この群の疾患に関係した候補遺伝子は,免疫応答や甲状腺生理機能を調節する遺伝子を含んでいる.AITDの表現型とD7S496とD7S2459のアレルを比較した関連研究によって,SLC26A4遺伝子をGDの疾患感受性遺伝子リストに追加するべきことが示唆されている.

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

ペンドレッド症候群/DFNB4と診断された個人における影響の程度を確認するために,以下の評価が推奨される.

  • 聴力鋭敏性の評価(ABR励起検査,純音オージオメトリー)
  • 構造異常を同定するための,側頭骨薄スライスCT
  • 前庭機能検査
  • パークロレート放出試験と甲状腺機能検査(T3,T4,TSH)

臨床症状に対する治療

以下のことが適切である.

・聴力訓練(可能な限り早期の聴力補助)
・重症から完全な難聴者の蝸牛移植の考慮
・難聴者のためにデザインされた教育プログラム
・もしあれば,標準的な甲状腺機能異常の治療

経過観察 

経過観察には,以下が含まれる.

  • 遺伝性難聴に精通した医師による半年もしくは1年毎の診察
  • ペンドレッド症候群に精通した内分泌専門医による半年もしくは1年毎の診察
  • 難聴が進行性であれば,初期は3から6か月毎に聴力測定を繰り返して行う

回避すべき薬剤・環境

蝸牛水管(DVA)拡張の患者における頭蓋内圧上昇が聴力低下を誘発したという症例報告に基づき,重量挙げや接触するスポーツのような活動は避けることを勧める医師もいる.

リスクのある親族の検査

リスクのある親族は,初期診断における罹患者と同様に,難聴や蝸牛構造,甲状腺異常の評価を受けるべきである.

もし,家族内で疾患の原因遺伝子変異がわかっていれば,子や家族に適切な早期サポートや経過観察を提供できるように,生後すぐに血縁者の分子遺伝的調査が必要である.

遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある親族の調査に関連する問題については遺伝カウンセリングの項を参照.

研究中の治療

広範な疾患や状態の臨床研究に関する情報へのアクセスのため,ClinicalTrials.govを調べよ.

注:この疾患の臨床試験はないかもしれない.

その他

遺伝クリニックは,患者家族が利用可能な情報源についての情報と同様に,自然歴や治療,遺伝形式,他の家族構成員への遺伝リスクに関する,個人や家族のための情報源である.

情報やサポート,他の罹患した個人との接触を提供するため,個人や家族のためにサポートグループが設立されている.情報源の項では,疾患特異的あるいは包括的サポート組織について記載されているかもしれない.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ペンドレッド症候群/DFNB4は,常染色体劣性で遺伝する.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 両親は,必然的にヘテロ接合体であり,疾患原因遺伝子の変異をヘテロで有している.

  • ヘテロ接合体は無症状である.

発端者の同胞

  • 受精の時点で,血縁者はそれぞれ25%が罹患し,50%が無症候性保因者となり,25%が罹患もせず保因者にもならない見込みである.
  • リスクのある血縁者が罹患していないとわかれば,この人が保因者である確率は2/3である.
  • ヘテロ接合体は無症状である.

発端者の子

ペンドレッド症候群罹患者の子は,必然的に疾患原因遺伝子変異をヘテロで有する

他の家族 

発端者の両親の血縁者は,50%のリスクで保因者である

保因者診断

家族内の疾患原因遺伝子変異がわかっていれば,リスクのある家族の保因者調査は可能である.

遺伝子変異の保因者であると確認されている個人のパートナーの保因者診断は,臨床的に可能である

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断や治療目的のため,リスクのある親族に関する情報についてはリスクのある親族の調査の項を参照.

以下のポイントに注目すべきである.

  • 難聴者とのコミュニケーションには,熟練した通訳のサービスが必要である.
  • 難聴者は,難聴をハンディキャップや障害,「治療」や「療養」の必要がある,または「予防できる」医学的状態としてではなく,特徴的な体質とみなすかもしれない.事実,正常な聴力の子を持つ以上に難聴の子を持つことを希望する場合もある.
  • 多くの難聴者は,予防や生殖,家族計画についての情報よりも,自分の難聴の原因についての情報(医療や教育,社会サービスに関する情報を含む)を得ることに関心がある.すべての遺伝カウンセリングにおけるのと同様に,カウンセラーにおいては個人/家族の質問や関心,不安をつきとめ,認知し尊重すること,家族/個人の質問や関心を確かめ処理にあたることが重要である.
  • 特定の用語の使用は好まれる.「危険 (risk)」よりは「可能性 (probability)」あるいは「見込み (chance)」,「聴覚障害(hearing-impaired)」よりは「聾 (deaf)」もしくは「難聴(hard-of-hearing)」.「罹患した (affected)」,「異常な (abnormal)」,「疾患の原因となる (disease-causing)」のような用語は避けるべきである.

家族計画

  • 遺伝リスクの決定や保因者の状況の明確化,出生前調査の有用性の議論のための最適な時期は妊娠前である.

  • 罹患した,もしくは保因者であるか,保因者になるリスクがある若年成人への遺伝カウンセリング(子孫への潜在的リスクや生殖の選択の議論を含む)を提供することは適切である.

DNA バンキング

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,ことに現在行っている分子遺伝学的検査ではすべての変異を検出できないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照のこと.

出生前診断

25%のリスクがある妊娠における出生前診断は,おおよそ妊娠15-18週に通常行われる羊水穿刺,またはおおよそ妊娠10-12週における絨毛膜絨毛サンプリング(CVS)から得られた細胞の抽出DNA分析により可能である.罹患した家族における疾患の原因となるアレルは,出生前診断ができる以前に同定されているに違いない.

注:妊娠年齢は最終正常月経周期の第1日か,超音波計測よるかのどちらかより算出された月経週数として表現される.

聴力状態の出生前診断への要望はまれであり,遺伝カウンセリングを必要とする.

着床前遺伝子診断 (PGD) は,疾患の原因となる遺伝子変異が同定された家族に有用かもしれない.PGDを提供する研究室の項を参照.

原文 Pendred Sydrome/DFNB4

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