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シムケ免疫性骨形成不全
(Schimke Immunoosseous Dysplasia)

[Synonym: Spondyloepiphyseal Dysplasia, Autosomal Recessive]

Gene Review著者: Alireza Baradaran-Heravi, MD, Marie Morimoto, BSc, Thomas Lu¨cke, MD, PhD, Cornelius F Boerkoel, MD, PhD
日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)  
Gene Review 最終更新日: 2011.3.22. 日本語訳最終更新日: 2011.5.5.

原文 Schimke Immunoosseous Dysplasia


要約

疾患の特徴 

シムケ免疫性骨形成不全(SIOD)は常染色体劣性遺伝性の多臓器障害であり,その特徴は身体各部位の比率が崩れた低身長,腎障害,T細胞欠損を呈する脊椎骨端線異形成症(SED)である.脊椎骨端線異形成症のX線画像所見は,軽度に平坦化した卵形の椎体,変形した小さな大腿骨骨端,浅く変形した寛骨臼窩である.男性の平均身長は136〜157cm,女性は98.5〜143cmである.通常は発育障害の診断を受けてから5年以内に,患者のほぼ全員が進行性ステロイド抵抗性腎障害を発症し,末期腎不全に至る.検査した患者の大多数がT細胞欠損を呈しており,日和見感染リスクがあるため,これが最大の死因となっている.シムケ免疫性骨形成不全は,早期に死亡に至る乳児発症型や重症の若年発症型から,腎疾患が適切に対処されれば成人期までの生存が可能な青年発症型や軽症晩発型まで幅広い臨床病態を含んでいる..

診断・検査 

シムケ免疫性骨形成不全は臨床所見に基づいて診断される.シムケ免疫性骨形成不全との関連が認められている遺伝子はSMARCAL1遺伝子だけである.SMARCAL1遺伝子に対する分子遺伝学的検査は,限られた条件下で,臨床的に実施されている.

臨床的マネジメント 

症状の治療高齢患者では必要に応じて股関節全置換術;適応がある場合には腎移植;適応がある場合には骨髄移植;再発性ヘルペス感染にはアシクロビル投与;重症の播種性皮膚パピローマウイルス感染にはイミキモドやシドフォビル投与;好中球減少には顆粒球コロニー形成刺激因子や顆粒球-マクロファージ・コロニー刺激因子の投与;一過性虚血性発作や脳卒中には血流改善薬や抗凝固薬の投与.

続発性合併症の予防カリニ肺炎予防薬の投与.

経過観察股関節の定期的検査;1年に1回の腎臓,免疫,血液状態のチェック.

遺伝カウンセリング 

シムケ免疫性骨形成不全は常染色体劣性遺伝性疾患である.受精時,罹患者の同胞が罹患する確率は25%,症状のない保因者となる確率は50%,発症もせず保因者ともならない確率は25%である.発症リスクのある同胞が罹患していないことと分かった場合,その同胞が保因者である確率は2/3となる.個別の出生前診断を行っている施設では,分子遺伝学的検査を用いた出生前診断が可能な場合がある.


診断

臨床診断

シムケ免疫性骨形成不全は臨床所見に基づいて診断される.以下の所見が認められる患者ではシムケ免疫性骨形成不全が疑われる:

身体各部位の比率が崩れた低身長患者の96%)を呈している.首と躯幹は短く,腰椎前弯を呈し,腹部は突き出している.

  • 先天奇形 幅広で低い鼻橋(65%)や球形の鼻尖(80%)など
  • 色素斑 躯幹部の色素斑(76%)は両腕,首,両足に広がることもある.
  • 脊椎骨端線異形成症(80%) もっとも多く認められるX線画像異常には,軽度に平坦化した卵形の椎体,変形した小さな大腿骨骨端,寛骨臼窩が浅くなった形成不全がある.その他の骨の異常はあまり見られない.
  • 進行性ステロイド抵抗性腎障害  シムケ免疫性骨形成不全患者のほぼ全員(98%)にタンパク尿が認められ,74%の患者が末期腎不全に至る.病理学的には,患者の92%に特異的な所見を示さない巣状分節性糸球体硬化症が報告されている.
  • T細胞欠損(検査を受けた患者の83%) 一般に,CD4細胞およびCD8細胞双方が減少し,CD4/CD8比率は正常である.

分子遺伝学的検査

遺伝子 SMARCAL1遺伝子がシムケ免疫性骨形成不全と関連性が知られている変異を有する唯一の遺伝子である[Boerkoel et al 2002].

その他の座位 SMARCAL1遺伝子変異が同定されるのは,シムケ免疫性骨形成不全の臨床徴候を呈する患者の50〜60%にすぎないため[Clewing et al 2007b],まだ同定されていない他の遺伝子における変異もシムケ免疫性骨形成不全を発症させると考えられる.

臨床検査

  • シークエンス解析 SMARCAL1遺伝子に対する分子遺伝学的検査は,限られた条件下で,臨床的に実施されている.

表1.シムケ免疫性骨形成不全の分子遺伝学的検査

遺伝子記号

検査方法

検出変異

検査方法ごとの検出変異 1

検査の実施

SMARCAL1

シークエンス解析

シークエンス・バリアント 2

~ 90%

臨床
Image testing.jpg

検査の実施に関してはGeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 当該遺伝子に存在する変異の検出方法の精度
  2. シークエンス変異で検出される変異の例には,小規模な遺伝子内欠失・挿入やミスセンス変異,ナンセンス変異,スプライス部位変異が含まれる.

検査手順

発端者の確定診断 シムケ免疫性骨形成不全は臨床徴候に基づいて診断される.分子遺伝学的検査により診断が確立し,患者の50〜60%における疾患原因変異が検出される.

発症リスクのある血縁者の保因者診断には,事前の家系内の疾患原因遺伝子の同定が必要である.

注:保因者とは常染色体劣性遺伝性疾患のヘテロ接合体のことであり,疾患を発症するリスクはない.

出生前診断や着床前診断(PGD) 発症リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)には,家系内の病原性変異の事前同定が必要である.

注:GeneTests Laboratory Directoryの掲載施設で実施可能な臨床検査を載せることがGeneReviewsの方針である.ここで掲載されている検査は必ずしも著者や編集者や審査者の推奨を反映するものではない.

遺伝的に関連のある疾患

これまでのところ,SMARCAL1遺伝子変異はその他の疾患で同定されていない.


臨床像

自然経過

シムケ免疫性骨形成不全(SIOD)はSchimkeら[1971]によって初めて報告された 進行性多臓器障害であり,後にEhrichら[1990],Sprangerら[1991],Ehrichら[1995]により定義づけられた.これまでの報告をもとに,本疾患の臨床所見とその出現頻度を表2に記す.

表2.SMARCAL1遺伝子の両アレル変異を有する シムケ免疫性骨形成不全患者の臨床徴候の頻度

臨床徴候

当該臨床徴候を有する患者数(%)

シムケ免疫性骨形成不全患者総数

身体的特徴

幅広で低い鼻稜

37 (65)

57

球形の鼻尖

43 (80)

54

小歯症

11 (39)

28

色素性斑

44 (76)

58

毛髪異常

30 (63)

48

短い首

45 (83)

54

短い躯幹

47 (82)

57

腰椎前弯

41 (75)

55

突き出した腹部

44 (80)

55

角膜混濁

9 (16)

57

発達

学業遅滞

6 (23)

26

発達遅滞

14 (26)

54

成長

子宮内胎児発育遅延

31 (72)

43

生後発育の遅滞や低身長

59 (98)

60

内分泌

甲状腺機能異常

21 (44)

48

骨格

平坦化した卵形の椎体

42 (79)

53

骨盤形成不全

34 (68)

50

大腿骨頭の異常

43 (84)

51

血液学

T細胞欠損

38 (83)

46

リンパ球減少

46 (81)

57

好中球減少

21 (41)

51

血小板減少

17 (31)

55

貧血

30 (59)

51

腎臓

タンパク尿や腎障害

57 (98)

58

巣状分節性糸球体硬化症

34 (79)

43

脈管系

頭痛

22 (49)

45

一過性脳虚血発作

24 (45)

53

脳卒中

22 (45)

49

その他

   

非ホジキンリンパ腫(EBV陽性/陰性非ホジキンリンパ腫)

3 (5)

60

身体的徴候 患者のほとんどに躯幹部の色素斑(76%)が生じるが,両腕,首,両足に広がることもある.細くまばらな毛髪,小歯症,無歯症,角膜混濁といった外胚葉異形成は,それほど多くない.

発育 大多数のシムケ免疫性骨形成不全患者の知能発達や神経発達は,脳虚血発作が生じるまでは正常である.発達遅滞が生じる患者も少数いるが,このような場合のほとんどが慢性疾患の有害な帰結として遅滞が生じている.

成長および内分泌所見 大多数の患児には,出生前および生後に身体各部位の比率が崩れた発育障害がみられる.子宮内発達が正常で生後に発育障害が起こる患児は少数である.観察される身体各部位の比率が崩れた発育障害は,腎不全によるものではない.人体測定学的数値をシムケ免疫性骨形成不全患者とシムケ免疫性骨形成不全以外の慢性腎疾患患者で比較すると,シムケ免疫性骨形成不全患者では,ほぼすべての項目がシムケ免疫性骨形成不全以外の慢性腎疾患患者と著しく異なる.もっとも顕著な相違は,シムケ免疫性骨形成不全を伴わない慢性腎疾患患者では股下長中央値が躯幹長と比べて著しく短縮しているが,シムケ免疫性骨形成不全患者では股下長と比べて躯幹長がずっと短縮している.従って,慢性腎疾患を伴うシムケ免疫性骨形成不全患者では座高/股下長の比率は0.83未満と考えられる[Lu¨cke et al 2006a].

発育障害診断の平均年齢は2歳(0〜13歳)であった[Clewing et al 2007b].一般に,患者の成長ホルモン分泌は正常であり,成長ホルモン補充療法には反応しない.成人期まで生存した患者の身長は,男性が136〜157cm女性が98.5〜143cmである.

患者のほぼ半数に,腎移植後も持続する潜在性甲状腺機能低下症が認められる.甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度は上昇し,遊離および総T3・T4濃度は低下する.

骨格所見 椎骨および大腿骨の目立った形成異常に加えて,より頻度は低いが胸椎後弯,側弯,骨減少症といった骨格異常もある.通常,変形性股関節症を発症するまで患者に関節痛は生じない.

血液学的所見および感染 T細胞欠損により患者の約80%にリンパ球減少が起こる.B細胞数は通常正常値であるか,わずかに上昇する.シムケ免疫性骨形成不全患者のなかには,T細胞欠損に加え他の系列の血液細胞の減少が起こる場合がある.種類と頻度に関しては表2を参照のこと.

免疫不全のため罹患者はカリニ肺炎などの日和見感染のリスクが高く,半数以上にさまざまな細菌,ウイルス(単純ヘルペス,帯状疱疹,サイトメガロウイルス),真菌(口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症)による再発性感染が起こる[Boerkoel et al 2000, Boerkoel et al 2002].感染による死亡が多い.

腎所見 腎障害は通常,12歳以前に発症し,その後の1〜11年以内に末期腎不全に至る.通常,腎障害の診断は発育障害の診断時,もしくはその5年以内に下される.シムケ免疫性骨形成不全患者では巣状分節性糸球体硬化症が最も多くみられる腎障害である.

消化管所見 腸疾患が認められるシムケ免疫性骨形成不全患者は少数である.このような患者の多くは,例えば,ヘリコバクター・ピロリ菌などによる感染から腸疾患を発症する.しかし,感染が認められない1人の患者で消化管絨毛萎縮が認められたが,これは副腎皮質ステロイド治療により改善した[Kaitila et al 1998].

動脈硬化症および高血圧  シムケ免疫性骨形成不全患者の半数に動脈硬化症が示唆される症状が認められる.
3人の患者の剖検組織では,限局性内膜脂肪沈着,限局性筋内膜増殖,マクロファージ浸潤,泡沫細胞,線維変性,カルシウム沈着などの血管病変が認められた[Spranger et al 1991, Lu¨cke et al 2004, Clewing et al 2007a].腎移植後にも持続する肺高血圧や体高血圧がLu¨ckeら[2004]によって報告されたが,これは筋内膜過形成により説明できるかもしれない [Clewing et al 2007a].

また,遺伝子発現試験でシムケ免疫性骨形成不全患者におけるELN遺伝子の発現低下が認められている[Morimoto et al 2011b].ELN遺伝子は動脈壁の構造を保つのに不可欠なエラスチン・タンパクをコードしている.シムケ免疫性骨形成不全患者3人から得られた動脈の剖検組織に対する組織病理学的解析では,エラスチン線維の分裂と断片化が認められた[Clewing et al 2007a, Morimoto et al 2011b].エラスチン・タンパクの減少が動脈壁での平滑筋細胞の増殖をもたらし,血管内膜の過形成を引き起こす[Urban et al 2002].

中枢神経症状 患者の約半数に重度の片頭痛様の頭痛,一過性脳虚血発作,脳卒中が起こる[Kilic et al 2005].患者のなかには熱不耐性を示す患者もおり,暑い季節には中枢神経系症状が生じる [Baradaran-Heravi et al 2011a].一般に,一過性虚血性発作や脳卒中を起こす患者にはびまん性の進行性脳動脈硬化症が認められるが,片頭痛様の頭痛のみが起こる患者にはびまん性の進行性脳動脈硬化症は認められない.高血圧により虚血性脳発作が急に起こる場合が多い.重度の片頭痛様頭痛の原因は不明である.

臨床経過および転帰 シムケ免疫性骨形成不全の重症度はさまざまであり,生後数年で死に至る胎児発症の発育遅滞から,成人期まで生存する緩徐進行型まで幅広い.典型的には,シムケ免疫性骨形成不全は乳児発症の重症早期発症型と若年発症の軽度後期発症型に分かれる.シムケ免疫性骨形成不全には重篤な症状から生後すぐに死に至る早期発症型もあれば,症状が軽度で,末期腎不全が腎臓透析や腎移植により治療されれば成人期まで生存するタイプもあり,連続した症候群となっている.しかし,重症度や症状の発症年齢によって生存を確実に予測することはできない.比較的重度の早期発症型でも,20歳以降も生存する患者が少数いる[Lou et al 2002, Lu¨cke et al 2004].

症状が多岐に渡る5つの家系では,同胞の臨床型はさまざまであった:

  • ある少年は末期腎不全後の3.7歳で脳卒中により死亡した;彼の姉妹に脳虚血性発作は認められなかったが,腎不全を発症する前の2.75歳で骨髄不全により死亡した[Lou et al 2002].
  • 2人の兄弟のうち,1人は重度でもう1人は比較的軽度であった[Lu¨cke et al 2005a].
  • SMARCAL1遺伝子変異をホモ接合で有する2人の兄弟のうち,1人は6歳時に発育障害を呈したが,もう1人には7歳になっても症状は現れなかった[Bo¨kenkamp et al 2005].
  • Lamaら[1995]が報告した3人の同胞のうち1人は小児期に死亡したが,2人は30歳代と40歳代まで生存した.
  • Dekelら[2008]が報告した3人の同胞のうち,兄は3.5歳から重度となったが,二卵性双生児である弟2人は比較的軽度であった.

ほどんどの患者では,発育障害の診断を受けた1〜5年以内にその他の症状が始まっている.症状が重度の患者は,通常4〜8年以内に死亡する.平均死亡年齢は9.2歳(3〜15歳)である[Clewing et al 2007b].死亡原因は脳卒中(17%),腎不全(15%),感染(23%),肺高血圧およびうっ血性心不全(15%),骨髄不全(3%),臓器移植の合併症(9%),消化管出血(6%),リンパ増殖性疾患の合併症(9%),その他の急性拘束性肺疾患(3%)である.

思春期以降まで生存した患者における挙児の報告はまだない.女性では月経がみられるが,通常月経周期は不定期である.男性は第二次性徴を迎えるが,精巣の組織病理学的検査により無精子症が認められた[Clewing et al 2007a].

遺伝子型と臨床型の関連

これまでに判明している遺伝子型と臨床型の相関では,家系のなかでも,また家系間においても,遺伝子型から疾患の重症度や転移を予測できない[Bo¨kenkamp et al 2005, Lu¨cke et al 2005a, Clewing et al 2007b, Dekel et al 2008, Baradaran-Heravi et al 2011a].臨床型がさまざまであり,また発現が多岐に渡ることから,シムケ免疫性骨形成不全は環境因子,エピジェネティック因子,多因子遺伝といった要因が作用して発症すると考えられる.SMARCAL1遺伝子変異を有していないがシムケ免疫性骨形成不全に特有の徴候を示す患者では,全体として,色素過剰斑,リンパ球減少,巣状分節性糸球体硬化症,虚血性脳症状の頻度が低く,認知障害の頻度が高い[Clewing et al 2007b, Baradaran-Heravi et al 2008].

病名

1971年,Schimkeが腎炎症候群および細胞免疫障害,それからおそらくコンドロイチン-6-硫酸尿(chondroitin-6-sulphaturia)を主徴候とする新疾患の報告を行った[Schimke et al 1971].その20年後に,Sprangerら[1991]が発育遅滞,免疫不全,腎炎症候群を併発する状態を「シムケ-免疫-骨性-形成異常」と名付けた.ほぼ同時期にEhrichら[1990]が本疾患の臨床像所見を報告した.このためドイツの一部では「Ehrich病」という用語も用いられている.

頻度 

頻度は不明である.しかし,紹介数や公開された出生率に基づき,北米での発症率は出生児100万〜300万人あたり1人であると推定される[著者の個人的観察].

シムケ免疫性骨形成不全の発症に人種差は認められない.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

シムケ免疫性骨形成不全の鑑別診断は,患者が呈している症状に基づいて行われる.

ネフローゼ症候群や免疫不全を併発する遺伝性骨軟骨異形成症を表3に掲げた.

表3.ネフローゼ症候群や免疫不全を伴う遺伝性骨軟骨異形成症

症候群

免疫細胞欠損

OMIM番号

腎炎症候群や免疫不全を伴う遺伝性骨軟骨異形成症

腎錐体症候群(conorenal syndrome)

 

266920

爪膝蓋骨症候群

 

161200

シムケ免疫性骨形成不全

T細胞

242900

Braegger症候群

 

243340

免疫不全の併発

免疫不全を伴う骨格異形成

T細胞およびB細胞

200900

軟骨毛髪低形成

T細胞およびB細胞

250250

体液性免疫不全を伴う四肢が短い骨格異常

B細胞

 

シムケ免疫性骨形成不全

T細胞

242900

Roifman症候群

B細胞

300258

Kenny-Caffey症候群

T細胞および食細胞

127000, 244460

Sanjad-Sakati症候群

T細胞および食細胞

241410

免疫不全-セントロメア不安定性-顔面奇形症候群(Braegger症候群)

B細胞

242860

MacDermot症候群

T細胞,B細胞,食細胞

 

脊椎肢中部末端異形成(spondylo-mesomelic-acrodysplasia)

T細胞およびB細胞

 

Ramaan症候群

T細胞およびB細胞

 

T細胞欠損,脊椎骨端線異形成症を伴う身体各部位の比率が崩れた低身長,進行性腎疾患が併発する状態は,シムケ免疫性骨形成不全に限って認められる.

腎不全から生じる低身長は,シムケ免疫性骨形成不全では身体部位の測定値の比率がばらばらであることから鑑別可能である[Lu¨cke et al 2006a].慢性腎不全患者の股下長中央値は座高よりも顕著に短縮されているが,シムケ免疫性骨形成不全患者では股下長にくらべて座高の短縮が著しい.この比率が0.83未満である場合にはシムケ免疫性骨形成不全である可能性が高い.しかし,この比率が1.01以上の場合でも,慢性腎疾患のその他のタイプが考慮されなければならない.

臨床医への注: 本疾患患者に対する個別の「simultaneous consult」については,SimulConsult(R)を参照.SimulConsult(R)は患者の所見を基に鑑別診断を提供する双方向型診断決定補助ソフトである(登録または施設からのアクセスが必要).


臨床的マネジメント

初回の診断時における評価

シムケ免疫性骨形成不全と診断された患者の疾患の程度を確立するためには,以下の手順が推奨される:

  • 頭痛や神経学的異常の詳細な病歴聴取
  • デンバー発達判定法を用いた発育状態の評価.顕著な発達遅滞や学業遅滞が認められた場合には,詳しい評価のため専門医へ紹介すること.
  • 年齢に応じた成長曲線を用いた発達測定や身体部位の比率の評価[Lu¨cke et al 2006a]
  • クレアチニンや尿素の血清濃度,尿タンパク排泄量,クレアチニン・クリアランス値の測定による腎機能評価
  • 評価のため腎専門医へ紹介を行うこと
  • リンパ球減少,貧血,好中球減少,血小板減少の評価のための血液学的検査
  • 関節痛の症状や側弯や後弯の有無を確認するための整形外科的評価
  • 骨減少症の評価
  • 甲状腺機能検査
  • 眼科的検査
  • 歯がある場合には歯科的評価

症状に対する治療

腎移植は腎疾患の治療に有効であり,腎疾患や動脈硬化症はどちらも移植後に再発しない[Clewing et al 2007a, Elizondo et al 2006, Lu¨cke et al 2004].免疫抑制単剤治療により腎移植後の転帰が改善されたようである[Lu¨cke et al 2009].

小児期を過ぎて生存しつづけた患者のなかには,股関節全置換術が必要となる患者もいる.

側弯や後弯に対しては標準的な治療を行う.

再発性ヘルペス感染を呈する患者にはアシクロビル治療が有効である.

好中球減少は顆粒球コロニー刺激因子や顆粒球-マクロファージ・コロニー刺激因子治療への反応が良好である.1人の患者で骨髄移植治療が成功したが[Petty et al 2000, Thomas et al 2004] ,骨髄移植の105日後に死亡した患者も1人いる.

貧血や血小板減少症のため,輸血に依存せざるを得ない患者が少数いる.

一過性虚血性脳発作や脳卒中を伴う患者は,血流改善薬や抗凝固薬(ペントキシフィリン,アセチルサリチル酸,ジピリダモール,ワーファリン,ヘパリン)の投与により一時的な改善がみられることが多い.現在,治癒もたらしたり有効性が認められた長期的な治療法はない.

頭痛薬への反応にむらがあるため,片頭痛の治療は難しいことが多い.幾人かの患者に有効な薬剤にはエルゴタミン,スマトリプタン,ベラパミル,プロプラノロールがある.

甲状腺刺激ホルモン濃度はレボチロキシン補充療法により是正されるが,腎疾患やT細胞欠損には改善効果がない.

重度の播種性皮膚パピローマウイルス感染を発症する患者が少数いるが,イミキモドやシドフォビルにより治療可能である.

再発性感染や日和見感染を起こす患者やリンパ球やT細胞数が減少している患者に対しては,免疫専門医による頻繁な診察が必要となる.

腎疾患はタンパク尿から末期腎不全まで進行するが,その進行速度はさまざまであり,既存の薬物治療では予防できない.しかし,シクロスポリンA,タクロリムス,副腎皮質ステロイド治療を受けた少数の患者では,腎疾患の進行速度に一過性の減退が認められた.

一次病変の予防

シムケ免疫性骨形成不全の浸透度や重症度には環境要因やその他の遺伝的要因が関与していると考えられているが,いまのところ疾患特異的な要因は明らかにされていない.

続発的合併症の予防

日和見感染のリスクが高いため,通常,カリニ肺炎予防が推奨される.

再発性口腔ヘルペス感染や帯状疱疹が生じた場合には,アシクロビルの予防的投与により罹病率が低下できる場合がある.

経過観察

  • 腰部の定期検査
  • 1年に1回の腎,免疫,血液学的状態の検査

回避すべき薬物や環境

高血圧 血圧コントロールがうまくいかないと,脳虚血の増悪や発症につながる恐れがある.とりわけ,ネフローゼ症候群に対するステロイド剤大量投与の結果生じた高血圧により,脳虚血が起こりうる.

ワクチン接種 重症の早期発症型患者には,他のT細胞免疫不全患者に対して定められた通りのワクチン接種を行うことが望ましい.

抗がん治療 シムケ免疫性骨形成不全細胞やモデル動物はDNA損傷薬に対して高感受性を示す[Bansbach et al 2009, Ciccia et al 2009, Postow et al 2009, Yuan et al 2009, Yusufzai et al 2009, Bansbach et al 2010, Baradaran-Heravi et al 2011b].

心臓 暑い気候などの熱負荷を避けることが望まれる[Baradaran-Heravi et al 2011a].

発症リスクのある血縁者の検査

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

研究中の治療法

腎機能や免疫機能が低下している患者へのアプローチとして,末期腎不全に陥る前に腎移植と骨髄移植を組み合わせて行うことについて,議論が行われている.

種々の疾患に対する臨床試験についてはClinicalTrials.govを参照のこと.

その他

シムケ免疫性骨形成不全患者では,成長ホルモン分泌機能は正常である.成長ホルモン補充療法によって発育状況が改善される患者は皆無である.

貧血はエリスロポエチン補充療法や腎移植で効果がみられないことが多い.しかし,エリスロポエチンは内皮の保護効果を有すると考えられる.

骨髄移植に際して必要な免疫抑制療法は,シムケ免疫性骨形成不全患者はT細胞欠損があるため,他の疾患で移植に先立って実施される免疫抑制療法よりも軽度である.

ミトコンドリア機能と窒素酸化物の産生に関する研究ではいかなる障害も見つからなかった.したがって,このような病因に対処しようとする経験学的治療法の効果はほとんどないと思われる[Lu¨cke et al 2005b, Lu¨cke et al 2006b].

遺伝クリニックは,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報 本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立された.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

シムケ免疫性骨形成不全は常染色体劣性遺伝性疾患である.

血縁者のリスク

発端者の両親

  • 患児の両親は絶対的ヘテロ接合体であり,変異アレルを1つ有する.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である.

発端者の同胞 

  • 受精時,罹患者の同胞が罹患する確率は25%,症状のない保因者となる確率は50%,発症もせず保因者ともならない確率は25%である.
  • 発症リスクのある同胞が罹患していないことと分かった場合,その同胞が保因者である確率は2/3となる.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である.

発端者の子 子どもを得た患者の報告はない.

発端者のその他の血縁者 発端者の両親の同胞が保因者である確率は50%である.

保因者診断

発症リスクを有する血縁者の保因者診断は,家系内の疾患原因変異が同定されていれば,可能である.

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

  • 遺伝リスクの決定や出生前診断の利用について話し合う最適な時期は妊娠前である.
  • 罹患している若年成人やリスクのある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖手段)を提供することは妥当である.

DNAバンクは,将来の使用のために,通常は白血球から調整したDNAを貯蔵しておくことである.検査手法や,遺伝子,変異,疾患への理解は将来改善する可能性があり,患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.ことに現在行っている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.DNAバンクを行っている機関についてはImage testing.jpgを参照のこと.

出生前診断

分子遺伝学的検査  GeneTests Laboratory Directoryにシムケ免疫性骨形成不全に対する出生前診断を提供している施設は掲載されていない.しかし,疾患原因変異が同定されている家系に対しては,分子遺伝学的検査を用いた出生前診断が可能な場合がある.個別の出生前診断を行っている施設については,Image testing.jpgを参照ください.

超音波検査 子宮内胎児発育遅延が認められる胎児や患者の同胞にはシムケ免疫性骨形成不全の診断が疑われる場合がある.

着床前診断 疾患原因遺伝子変異が同定されている家系に対しては,着床前診断が可能な場合がある.着床前診断を行っている施設に関してはImage testing.jpg参照.

注:GeneTests Laboratory Directoryの掲載施設で実施可能な臨床検査を載せることがGeneReviewsの方針である.ここで掲載されている検査は必ずしも著者や編集者や審査者の推奨を反映するものではない.


原文 Schimke Immunoosseous Dysplasia

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