GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト
grjbar

シトリン欠損症
(Citrin Deficiency)

Gene Review著者:Keiko Kobayashi, PhD, Takeyori Saheki, MD, PhD, and Yuan-Zong Song, MD, PhD

日本語訳者: 和田宏来 (県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)

Gene Review 最終更新日: 2014.7.31 日本語訳最終更新日: 2016.12.8(minor revision 2017.2.7)

原文 Citrin Deficiency


要約

疾患の特徴 

シトリン欠損症は、新生児期には肝内胆汁うっ滞症(NICCD)、年長児では成長障害および脂質異常(FTTDCD)、成人期には精神神経症状を伴う反復性の高アンモニア血症(成人発症U型シトルリン血症、CTLN2)を呈する。しばしばシトリン欠損症の特徴として、高蛋白質や高脂質の食事を好み炭水化物を避ける食嗜好があげられる。

  • NICCD
     1歳未満の小児では、成長遅滞、一過性の肝内胆汁うっ滞、肝腫大、びまん性脂肪肝、線維化を伴う肝実質への細胞浸潤、低蛋白血症、凝固因子減少、溶血性貧血、低血糖などがみられる。NICCDは一般的には重症ではなく適切な治療で1歳までにはしばしば軽快するが、なかには感染症や肝硬変を発症し、肝移植が必要となる者もいる。
  • FTTDCD
     シトリン欠損症患児の多くは1~2歳ぐらいで前述の食嗜好がみられるようになる。なかには成長遅滞、低血糖、倦怠感、高脂血症、膵炎、脂肪肝、肝細胞癌などを呈する者もいる。NICCDもしくはFTTDCD患児のなかには十〜数十年後にCTLN2を発症する者がいる。
  • CTLN2
     発症は突発的で通常は11〜79歳の間におこる。夜間せん妄、攻撃性、易刺激性、過活動、妄想、見当識障害、不穏、眠気、記憶喪失、羽ばたき振戦、けいれん発作、昏睡などの精神神経症状を伴う反復性高アンモニア血症を呈する。脳浮腫により死亡することもありうる。症状はしばしばアルコールや糖類の摂取、薬物、手術などで誘発される。罹患者はNICCDまたはFTTDCDの既往があることもないこともある。

診断・検査 

シトリン欠損症の診断は臨床所見や生化学検査(一般的には、全血もしくは血漿アンモニアの上昇、血漿もしくは血清シトルリン・アルギニンの上昇、血漿もしくは血清スレオニン/セリン比の上昇、膵分泌性トリプシンインヒビター[PSTI]の上昇)から疑われる。SLC25A13両アレル変異の同定により確定診断する。

臨床的マネジメント 

症候の治療:
NICCD:脂溶性ビタミンの補給や乳糖除去ミルク(ガラクトース血症を認める新生児)、中鎖脂肪酸を含むミルク。
FTTDCD:食事療法に加え、ピルビン酸ナトリウムの投与で成長が改善する可能性がある。
CTLN2:肝移植は高アンモニア血症による脳症を防ぎ、代謝異常を軽快させ、高蛋白食の嗜好性をなくす。アルギニンは血中アンモニア濃度を減少させ、まだ明らかでない機序によって高脂血症を軽減する。アルギニンとピルビン酸ナトリウムは高アンモニア血症や脂肪肝に効果を発揮し、それにより肝移植の必要性を遅らせる可能性がある。

発症の予防:
高脂質・高蛋白・低炭水化物の食事。

定期検査:
シトリン欠損症患者全員に定期的な血漿アンモニア・シトルリン濃度、血清PSTI。NICCDの患児は、FTTDCDの血液・身体所見をフォローアップする。

避けるべきもの/環境:
低蛋白・高炭水化物の食事、脳浮腫を認める場合にはグリセロールやフルクトースの静注、アルコール、アセトアミノフェン、ラベプラゾール。

リスクのある血縁者の評価:
症状が起きる前に適切な食事管理を開始できるように、発端者の同胞で罹患者を見つけ出すことは適切である。

遺伝カウンセリング 

シトリン欠損症は常染色体劣性遺伝形式をとる。両親ともSLC25A13変異のキャリアである場合、罹患者の同胞は、受胎時には25%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性キャリアであり、25%の確率で罹患者でもキャリアでもない。片親がキャリアで片親が2つのSLC25A13変異をもっている場合には、罹患者の同胞は受胎時には50%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性キャリアである。家族内のSLC25A13変異が分かっているのならば、リスクのある血縁者がキャリアかどうかの検査や出生前検査を行うことは可能である。


GeneReviews Scope

シトリン欠損症:含まれる臨床型

  • 成人発症U型シトルリン血症
  • シトリン欠損による成長障害と脂質異常症(FTTDCD)
  • シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)

同義語および、もはや使用されない名称については「命名法」を参照。


診断

シトリン欠損症には2つのよく知られる臨床型、すなわちシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)と成人発症U型シトルリン血症(CTLN2)がある(表1を参照)。そして、中間型の第3の病型として、シトリン欠損による成長障害と脂質異常症(FTTDCD)がある。

fig1

図1 シトリン欠乏症

NICCD=シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症
CTLN2=成人発症U型シトルリン血症
FTTDCD=シトリン欠損による成長障害と脂質異常症
AFP=αフェトプロテイン
MRI=核磁気共鳴画像

  • シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)は一過性の新生児胆汁うっ滞や様々な程度の肝機能障害を特徴とする。なかには肝硬変で予後不良の者もいる。
  • シトリン欠損による成長障害と脂質異常症(FTTDCD)はNICCDの後でCTLN2発症前に成長障害や血清脂質異常(中性脂肪、コレステロール、HDLコレステロールなど)を呈する。この段階でのシトリン欠損症の臨床的診断は、独特の食嗜好や分子学的検査なしには難しい。
  • 成人発症U型シトルリン血症(CTLN2)は小児期〜成人期に発症する、反復性の高アンモニア血症、精神神経症状の合併を特徴とする。

示唆的な所見

シトリン欠損症は以下の所見を認める発端者で疑われる(図2および図3を参照)。

fig2

図2 シトリン欠損症の診断アルゴリズム

NICCDの典型的な診断アルゴリズ

新生児マススクリーニング検査で1つ以上陽性 遷延性黄疸
高スレオニン、チロシン、メチオニン血症を伴う/伴わない高シトルリン血症、もしくは高アルギニン血症
DNA診断

典型的なCTLN2だけではなく、小児・成人双方の成長遅滞、低血糖、膵炎、高脂血症などにおいても、シトリン欠損症の診断には食嗜好(糖類が嫌いなど)は重要であることに留意されたい。

fig3

図3 シトリン欠損症の診断フローチャート


TB=総ビリルビン
DB=直接ビリルビン
TBA=総胆汁酸
ALP=アルカリホスファターゼ
AFP=αフェトプロテイン
PSTI=膵分泌性トリプシンインヒビター

  • 新生児スクリーニング検査で陽性だった乳児では、
  • 高シトルリン血症、もしくは遷延性黄疸。もしくは、
  • 高ガラクトース血症、高メチオニン血症、高フェニルアラニン血症、フォローアップの診断学的検査でこれらを1つも認めなかった者。

    注:NICCD患児の約40%において、新生児スクリーニングろ紙血で血漿ガラクトース、メチオニン、フェニルアラニン濃度は上昇している。

  • 1歳を超える小児では、成長障害および脂質異常。
  • 高アンモニア血症による肝性脳症を認める年長児や成人、とくに炭水化物を嫌い、高蛋白・高脂質のものを好む場合。
  • 説明のつかない反復性膵炎、高脂血症、脂肪肝、肝細胞癌を認める小児や成人。

初期検査

シトリン欠損症の診断は、以下の検査によってさらに支持される。

  1. 定量的血漿アミノ酸分析(生後1-4ヶ月の小児)を行う(表1と表2を参照)。アミノ酸は表1や表2のように年齢とともに通常変化するが、NICCD患者のなかには明らかでない者もいることに留意すべきである。
  2. 血中アンモニア、血漿アミノ酸、PSTI、肝酵素(CTLN2が疑われた場合)を測定する(表1を参照)。
  3. 食嗜好(FFTDCDもしくはCTLN2が疑われる場合に、高蛋白・高脂質の食事を好み、炭水化物を嫌うかがとくに重要である)を含む食事の評価を行う。

表1 臨床型によるシトリン欠損症の生化学的所見

臨床型 血中もしくは血漿アンモニア濃度(μmol/L 血漿もしくは血清シトルリン濃度(C1 血漿もしくは血清アルギニン濃度(A)(μmol/L 血漿もしくは血清スレオニン/セリン比 血清膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)濃度2(ng/mL
対照群 18-473 17-433 54-1303 1.10 4.6-203
NICCD
(0-6ヶ月)
60 300 205 2.29 30
FTTDCD
(1-11歳)
正常もしくは
僅かに上昇
正常もしくは
僅かに上昇
通常は正常 不明 不明
CTLN2
(11-79歳)
152 418 198 2.32 71
  1. 新生児スクリーニングで見つけることができる高シトルリン血症は、NICCDの最も早く確認できる生化学的異常である。
  2. NICCD患者やCTLN2発症前の患者では血清PSTI高値のことがあるため、血清PSTI濃度測定はCTLN2の発症前診断に有用である可能性がある。
  3. 範囲

表2 NICCDの生後0-6ヶ月における血漿スレオニン、メチオニン、チロシン濃度

アミノ酸 中間値(25%-75%範囲)(μmol/L 対照群の範囲(μmol/L
スレオニン 496 (291-741) 67-190
メチオニン 124 (53-337) 19-40
チロシン 178 (99-275) 40-90

診断の確定

シトリン欠損症の診断は分子遺伝学的検査(表3)もしくはウェスタンブロット解析によって確定することができる。

  1. SLC25A13のシークエンス解析を施行し、変異が見つからないか1つのみの場合はつづいて欠失・重複解析を行う。SLC25A13の両アレル変異の同定により、シトリン欠損症の診断が確定する。
  2. 分子遺伝学的検査でSLC25A13の変異が見つからないか1つのみの場合はシトリン蛋白のウェスタンブロット解析を考慮する。N末端に特異的な抗ヒトシトリン抗体を用いたウェスタンブロット解析では、SLC25A13両アレル変異をもつ患者の肝臓、培養線維芽細胞、リンパ球において、交叉反応する免疫物質をほとんど検出しないか全く検出しない。

表3 シトリン欠損症で用いられる分子遺伝学的検査の要約

遺伝子1 検査方法 この方法で同定される変異をもつ発端者の割合

SLC25A13

シークエンス解析2 >95%3
欠失・重複解析4 不明5
  1. 表A(遺伝子ならびに染色体遺伝子座とタンパク名のデータベース)を参照。アレル変異に関する情報は「分子遺伝学」の項を参照のこと。
  2. シークエンス解析はさまざまな変異(良性、おそらく良性、意義不明、おそらく病原性をもつ、病原性をもつ)を同定する.病原性変異には小さな遺伝子内欠失/挿入,ミスセンス,ノンセンス,スプライス部位変異などがある。典型的には,エクソンもしくは全遺伝子の欠失や重複は同定されない。シークエンス解析結果の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。
  3. Kobayashiら(1999)、Yasudaら(2000)、Ben-Shalomら(2002)、Yamaguchiら(2002)、Sahekiら(2004)、Luら(2005)、Takayaら(2005)、Koら(2007a)、Songら(2008)、Tabataら(2008)、Songら(2009b)、Xingら(2010)、Fuら(2011)、Songら(2011)、Wenら(2011)
  4. ゲノムDNAのコーディング領域や隣接するイントロン領域のシークエンス解析では同定されない、エクソンもしくは全遺伝子の欠失や重複を同定する。
  5. Takayaら(2005)、Wongら(2008)

臨床像

自然経過

シトリン欠損症は、新生児期にシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞(NICCD)を、年長児ではシトリン欠損による成長障害と脂質異常症(FTTDCD)を、成人期では成人発症U型シトルリン血症(CTLN2)として精神神経症状を伴う反復性高アンモニア血症を呈する。しばしばFTTDCDとCTLN2では、高蛋白や高脂質の食事を好み、炭水化物を嫌う食嗜好が特徴とされる。CTLN2患者では、NICCDもしくはFTTDCDの既往があることもないこともある。CTLN2に移行するNICCDまたはFTTDCD患者の比率は不明である。

シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)

1歳未満のNICCD患児は一過性の肝内胆汁うっ滞を呈する(表4を参照)。その他の所見には、肝腫大を伴うびまん性脂肪肝、肝線維化を合併する肝実質への細胞浸潤、低出生体重、成長遅滞、低蛋白血症、凝固因子の低下、溶血性貧血、重症度の様々な肝機能障害(主には軽症)、低血糖などがある。

表4 生後0-6ヶ月のNICCD患児における肝機能検査

検査項目 中間値(25%-75%範囲)(mg/dL 対照群の範囲(mg/dL
NICCDにおけるTB 4.9 (2.8-8.0) 0.2-1.0
CTLN2におけるTB 0.8 (0.52-1.1)
NICCDにおけるDB 2.5 (1.5-3.7) 0-0.4
CTLN2におけるDB 0.3 (0.2-0.4)
NICCDにおけるTB/DB比 0.55 (0.41-0.66) -
TBA 239 (172-293) 5-25
AFP 91,900 (33,200-174,700) 260-6,4001,2
2-552, 3

TB=総ビリルビン
DB=直接ビリルビン
TBA=総胆汁酸
AFP=αフェトプロテイン

  1. 生後0-1ヶ月
  2. Tamamoriら(2002)
  3. 生後1ヶ月以降

NICCDは一般的に重症ではないが、まれに肝移植が必要となる。脂溶性ビタミンの補給や乳糖除去ミルクの使用(特に高ガラクトース血症の患者)、中鎖脂肪酸強化ミルクなどの治療によって、症状は典型的には1歳までに軽快する。
1-2歳頃から、患児は高蛋白・高脂質食を好み、糖分や炭水化物の多い食事を嫌うようになる。
10代以降でシトリン欠損症患者の中には精神神経症状を伴った重症CTLN2に進展する者もいる。典型的には、NICCDに続く適応期(代償期)からCTLN2発症への移行は緩徐である。

シトリン欠損による成長障害と脂質異常症(FTTDCD)

FTTDCDはNICCD後およびCTLN2発症前の新しい臨床型として最近提唱された。FTTDCDの臨床および検査上の特徴はまだ明らかではない。この時期(旧来はCTLN2発症前の「見かけ上健康」な時期とされてきた)の間に、検査や臨床所見で異常を認める患児もいる。

検査異常には、トリグリセリドやコレステロール値(総コレステロール、HDL、LDL)の異常などの脂質異常や、そのほか乳酸/ピルビン酸比の上昇、コレステロール値上昇、尿中酸化ストレスマーカーの高値などがある。
臨床所見の異常には成長遅滞、低血糖、膵炎などがある。適応期・代償期(旧来「沈黙」の時期と見なされていた)のシトリン欠損症患児において、とても稀には重度の倦怠感やQOLの障害を認める。

成人発症U型シトルリン血症(CTLN2

CTLN2は、反復性の高アンモニア血症や、夜間せん妄、異常行動(攻撃性、易刺激性、過活動)、妄想、見当識障害、不穏、眠気、記憶喪失、羽ばたき振戦、けいれん発作、昏睡など、肝性脳症や遺伝性尿素サイクル異常と極めて類似した精神神経症状を呈する。脳CTは正常で、脳波ではびまん性の徐波を認める。
発症は突発的で、通常は20-50歳時に起こる(範囲:11-79歳、平均年齢34.4±12.8歳、n=103)。
CTLN2患者の多くは、高蛋白・高脂質食(豆、ピーナッツ、卵、ミルク、チーズ、魚、肉など)を好み、米、ジュースや甘い物など高炭水化物食を嫌うという強い食嗜好がある。症状はしばしばアルコール、糖類、薬物の摂取や外科手術によって誘発される。

ほとんどの患者はやせている。90%以上の患者ではBMIは20未満で、約40%は17未満である(範囲:15.6-19.1, n=110)(健康な日本人では男性20-24、女性19-23である)。
CTLN2患者では10%以上に以下の合併症を認める。

  • 膵炎 CTLN2発症前に若年発症慢性膵炎と肝硬変を伴わない肝細胞癌を認めることがある。
  • 高脂血症 高炭水化物を摂取したシトリン欠損症患者で高トリグリセリド血症はしばしば認められる。
  • 脂肪肝 NICCDおよびCTLN2患者のほとんどで、組織学的にNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)に合致する脂肪肝を認める。軽度の線維化もまた認めうる。
  • 肝細胞癌 CTLN2と診断される前であっても肝細胞癌を認めることがある。
    肝内胆汁うっ滞はまれである。しかし、なかには後から振り返ってみると乳児期にNICCDの徴候を認めていた者もいる。例えば、肝移植を施行した16歳のCTLN2患者において、乳児期早期に一過性の低蛋白血症および黄疸を認めていた。

検査異常所見

  • 肝臓の膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)濃度は上昇している(表1を参照)。

    注:CTLN2患者の肝臓では、PSTI mRNAは30-140倍増加している。

  • 分岐アミノ酸の減少により、血漿もしくは血清フィッシャー比(分岐鎖アミノ酸[BCAAs]バリン+ロイシン+イソロイシン/芳香族アミノ酸[AAAs]トリプトファン+フェニルアラニン)は〜3.4から〜2まで低下している。
  • 肝特異的アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)活性は対照群の約10%にまで低下している(SLC25A13変異の二次的な効果)。
  • 血漿αフェトプロテイン濃度は、肝細胞癌を合併している場合を除き、ほとんどすべてのCTLN2患者において正常である。
  • 病理所見では、肝機能障害をほとんど認めないか全く認めないにもかかわらず、脂肪浸潤や軽度の肝線維化を認める。

遺伝子型と臨床型の関連

SLC25A13変異と肝ASS酵素活性/蛋白の低さもしくはCTLN2患者における発症年齢の間に著しい相関は認められていない。

浸透率 

NICCDの男女比はおおよそ1:1である(73:80)。
CTLN2の男女比は2.4:1である(120:50)。
CTLN2の男女比が1:1でないことは、SLC25A13両アレル変異をもつ女性患者は男性よりも理由は不明だがCTLN2の臨床型を呈しにくいことが示唆される。

病名

NICCD NICCDは、分子遺伝学的検査でSLC25A13両アレル変異の存在が確認される前は「原因不明の脂肪肝を伴う特発性新生児肝炎」[Ohuraら1997]として知られていた。

CTLN2 Miyakoshiら[1968]は、高アンモニア血症と独特の慢性反復性肝脳変性症を認める患者において血中シトルリン濃度が上昇していることを報告した。この肝脳変性症は、脳の病理学的変化に基づいて「類瘢痕型肝脳疾患」、高度にバランスを欠いた食事に由来する代謝障害もしくは内分泌異常による発達障害に基づいて「栄養障害型肝脳疾患」として知られるようになった。

Sahekiら[1981]は、アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)活性/蛋白の質的および肝特異的な疾患を伴う高シトルリン血症の病型を報告し、のちに「成人発症U型シトルリン血症」と命名した。

頻度 

日本におけるSLC25A13のホモ変異または複合ヘテロ変異の頻度は、キャリアもしくはヘテロ変異が65人に1人であることから、17000人に1人と計算される。これはNICCDの頻度と同等であるが、CTLN2の頻度(100,000-230,000人に1人)とは異なる。このことから、SLC25A13両アレル変異を受け継いだほとんどの日本人はNICCDを発症すると著者らは信じている。

最近まで、シトリン欠損症は日本に限定的であると思われていた。現在ではシトリン欠損症は汎民族的であると認知されている。新規のSLCA25A13変異をもつ患者が、イスラエル、パキスタン、米国、英国、中国、チェコ共和国で見つかっている。

中国(65人に1人)、特に台湾を含む南部(48人に1人)、韓国(112人に1人)でもキャリアの頻度は高い。


遺伝的レベルでの関連疾患

CTLN2, NICCD, FTTDCDは、SLC25A13と関連することが知られる現在のところ唯一の臨床型である。


鑑別診断

シトリン欠損症でみられる血漿シトルリン濃度の上昇は以下でも認められる。
シトルリン血症T型(CTLN1、ASS欠損症) CTLN1は幅広い重複する臨床型を呈する。急性新生児型(「古典」型)、軽症遅発型、症状や高アンモニア血症のない病型、妊娠中もしくは分娩後の女性に発症する重症型がある。出生後すぐに、急性新生児型の患児は高アンモニア血症およびその合併症を呈し、迅速な治療が行われなければ死亡する。迅速に治療が行われれば期間は不明確だが生存することがある。しかし、通常は著しい神経学的後遺症を残す。遅発型では、高アンモニア血症のエピソードは急性新生児型でみられるのと同様であるが、初期の神経所見はより僅かである可能性がある。
CTLN1は、尿素サイクルの第3段階でシトルリンとアスパラギン酸からアルギニノコハク酸を合成するASSが欠損する。未治療のCTLN1重症型患者は、高アンモニア血症、血漿シトルリン濃度上昇、血漿アルギニン濃度低下を呈する。遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。
CTLN2では、機序は不明だが二次的に肝特異的ASS蛋白が欠損する。肝ASS mRNAまたはASS1には異常は存在しない。

  • アルギニノコハク酸尿症(アルギニノコハク酸リアーゼ[ASL]欠損症)(尿素サイクル異常総論を参照)
  • リジン尿性蛋白不耐症
  • ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)欠損症
  • 腎不全
  • 古典的ガラクトース血症 シトリン欠損症で発症した古典的ガラクトース欠損症の新生児が報告されている。

シトリン欠損症でも尿素サイクル異常と同様に、蛋白質やその他の窒素含有分子の崩壊によって生成された窒素の代謝異常から高アンモニア血症を呈する(尿素サイクル異常総論を参照)。尿素サイクルの初め4つの酵素(CPSI, OTC, ASS, ASL)のいずれか、オルニチントランスポーター、もしくは補因子生成酵素(NAGS)の重度な欠損もしくは完全な欠損により、ほとんどの患者において生後数日中にアンモニアや代謝前駆体の蓄積が生じる。

シトリン欠損症で見られる新生児/乳児胆汁うっ滞は以下の疾患でも認められる。

  • 特発性新生児肝炎(INH)および(肝外)胆道閉鎖症(EBA) INHやEBAと比較してNICCDでは血清直接ビリルビンやALTは低く、血清総胆汁酸やALPは高い。NICCDはまた、INHより血清γ-GTPは高く血清ASTは低い。
  • 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC, Byler病) NICCDで血清γ-GTPは高値で、PFICや良性反復性肝内胆汁うっ滞症(BRIC)を含むγ-GTP低値〜正常の他の肝内胆汁うっ滞症と鑑別される。PFICはATP8B1(FIC1もしくはABCB11(BSEPの両アレル変異によって起こる。BRICはATP8B1両アレル変異で起こる場合がある。

体質性黄疸および高ビリルビン血症 はビリルビンの代謝異常で起こる。非抱合型(間接型)高ビリルビン血症(UDP-グルクロン酸転移酵素1欠損)と抱合型(直接型)高ビリルビン血症(毛細胆管膜のATP依存性トランスポーター:ABCC2[MRP2], ABCB11, ATP8B1)がある。

その他

  • 血管造影により門脈体循環短絡は除外することができる。
  • 30%を超えるCTLN2患者で初めはてんかんや精神疾患(うつ病、統合失調症など)と誤診されてきた。その他、肝細胞癌、膵炎、高脂血症と診断されている可能性がある。

臨床的マネジメント

最初の診断語時における評価

シトリン欠損症と診断された患者において、疾患の広がりやニーズを把握するため、以下のような評価が推奨される。

NICCD

  • 肝臓、脾臓のサイズを評価する。
  • 腹部エコー、CT、MRIによって脂肪肝を評価する。
  • 食事内容を評価する。

FTTDCD

  • 詳細な身体計測と年齢・性別の成長曲線を用いた評価。
  • 食事内容を評価する。

CTLN2 食事の炭水化物、蛋白質、脂質の比率を評価する。

全員 臨床遺伝科への診療依頼。

病変に対する治療

NICCD ほとんどのNICCD患児において、脂溶性ビタミンの補充や(ガラクトース血症の患児において)乳糖除去ミルク、中鎖脂肪酸(MCT)ミルクなどの治療により症状は生後12か月までに軽快する。
母乳からプロリンを豊富に含むミルクへの変更で軽快した同胞2人の症例が報告されている。
NICCD患児のなかには無治療で軽快する者もいる。これは、母乳や一般ミルクを減らし、同時に卵や肉のような高蛋

高脂質の固形物の摂取を開始したことによる可能性がある。

治療用ミルクは生涯にわたるわけではない。ほとんどのNICCD患児は、蛋白・脂質の豊富な加工もしくは固形食が開始されている1歳までには臨床的かつ生化学的に軽快する。1歳をすぎても治療を行うことでFTTDCDやCTLN2発症の可能性を減らせるかどうかは現在のところ分かっていない。

さらに、NICCDでは亜鉛欠乏もよく認められるため、血液検査で亜鉛欠乏が示唆される場合、とくに著明な成長障害を認める場合には亜鉛の補給が励行される。

NICCDおよび重度肝機能障害を認める乳児4人において、原因不明の高チロシン血症と診断され生後10-12ヶ月に肝移植を施行されたことが報告されている。

FTTDCD この新しいシトリン欠損症の臨床型に対する治療法の記述はほとんどない。

  • FTTDCDの幼児は固有の食嗜好がある(米を嫌い魚を好むなど)。成長障害は次第に改善し、3歳時には3パーセンタイルを超える。脂質異常もまた徐々に軽快する。
  • 食事療法に加えて、ピルビン酸ナトリウムの投与は成長遅滞の改善に効果的である可能性がある。

CTLN2 現在までにもっとも成功した治療法は肝移植である。肝移植により高アンモニア血症クリーゼは予防され、代謝異常は改善し高蛋白食を好む食嗜好はなくなる。過去にはおよそ全てのCTLN2患者において肝移植を必要とした。しかし、アルギニンやピルビン酸ナトリウムの導入で状況は変わった。

  • アルギニンの投与は血中アンモニア濃度を下げるのに有効であると報告されている。カロリー/炭水化物摂取を減らし蛋白摂取を増やすと高トリグリセリド血症は改善する。
  • ピルビン酸ナトリウムの投与は有効であることがいくつかの症例で報告されている。

一次性障害の予防

高アンモニア血症を予防し成長障害を改善させるためには高蛋白・高脂質食および低炭水化物食が推奨される。
高炭水化物食およびアルコールを避ける

高アンモニア血症クリーゼを予防するのにアルギニンの投与が効果的である可能性がある。

二次合併症の予防

ビタミンD欠乏および亜鉛欠乏はNICCDのよくみられる合併症である。重症感染および肝硬変もまたNICCDの致死的合併症として報告がある。それゆえ、ビタミンDおよび亜鉛の補給、急性感染症の制御がNICCDでは推奨される。

経過観察

1歳以上のシトリン欠損症患者において、FTTDCDの病像を認めないかモニターする。定期的な身体計測(身長、体重、頭囲、トリグリセリド・総コレステロール・HDLコレステロール・LDLコレステロールを含む血清脂質濃度)を緊密に行うことは適切である。
数ヶ月ごとに以下を測定することが推奨される。

  • 血漿アンモニア濃度(とくに夕方もしくは食後2時間)
  • 血漿シトルリン濃度
  • 血清PSTI濃度
    血漿シトルリン濃度や血清PSTIの上昇はCTLN2発症を示唆し、迅速に治療を開始するべきである。

回避すべき薬物や環境

低蛋白/高カロリー(高炭水化物)食 低蛋白/高カロリー(高炭水化物)食は、尿素サイクル酵素欠損による高アンモニア血症の予防の一助となるが、全てのシトリン欠損症患者(NICCD, FTTDCD, CTLN2など)において有害である。高炭水化物食はNASH産生を増加させ、尿素合成を阻害し、リンゴ酸-クエン酸シャトルを促進し、高アンモニア血症、脂肪肝、高トリグリセリド血症をきたす可能性がある。

グリセロール、フルクトース、グルコースのような糖類の静注 グリセロールを含んだ高浸透圧剤を脳浮腫に使用すると悪化してしまうため、CTLN2患者では禁忌である。大量のグリセロールやフルクトースが分解されると肝の細胞質でNADHが産生され、これにより肝機能は抑制され、毒性物質が産生される可能性がある。
高濃度グルコースの静注もまた高アンモニア血症を悪化させる。
注:マンニトール静注はより安全なようである。

アルコール アルコール脱水素酵素(ADH)は肝の細胞質でNADHを産生するため、飲酒はCTLN2発症の誘因となりうる。

薬物 アセトアミノフェンやラベプロゾールはCTLN2の誘因となるかもしれない。

リスクのある親族の検査

シトリン欠損症患者の症候がないリスクのある同胞において、症状が起きる前に乳児期からの適切な食事管理(母乳栄養の中止および乳糖除去ミルク・中鎖脂肪酸強化ミルクの開始)を行えるように遺伝学的状況を明らかにすることは適切である。

シトリン欠損症の無症候および発症前の患者ではたいてい生化学的異常を認めることはないので、同胞のようなリスクある親族の確定診断を行うには、発端者のSLC25A13の分子遺伝学的所見に重きが置かれるだろう。

  • もし発端者のSLC25A13変異が同定されているのならば、分子遺伝学的検査は信頼性をもって行うことができる。
  • もし発端者でSLC25A13変異が1つしか確認されていないのならば、リスクある親族で1つの変異を認めた場合に診断を除外することは適切ではない可能性がある。そのようなケースでは、確定診断もしくは診断の除外のために、臨床的および生化学的な評価を経時的に行っていくことが必要であろう。
  • もし発端者でSLC25A13変異が確認されていない場合には、リスクのある親族に対する分子遺伝学的検査は有用ではないだろう。そのようなケースでは、確定診断もしくは診断の除外のために、臨床的および生化学的な評価を経時的に行っていくことが必要であろう。

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

研究中の治療法

さまざまな疾患に対する臨床試験に関する情報は、ClinicalTrials.govを参照のこと。

注:この疾患に対する臨床試験は行われていない可能性がある。

その他
グリセロールもしくはグリセロールやフルクトースを含む類薬は、脳浮腫に対して効果がないばかりかシトリン欠損症患者においては危険である(「回避すべき薬物や環境」を参照)。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

シトリン欠損症は常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患者の両親は必然的にヘテロ接合者である(1つのSLC25A13変異をもつキャリアなど)。
  • まれに親はCTLN2の重篤な症状がなく2つのSLC25A13変異をもっていることがある。NICCDの日本人家族163人において、父親48人のうち2人、母親54人のうち1人で見つかっている。
  • ヘテロ接合者(キャリア)は無症状である。

発端者の同胞 

  • もし両親ともSLC25A13変異のキャリアであった場合、発端者の同胞の25%は罹患者、50%はヘテロ接合保因者、25%は非罹患者もしくは非保因者である。
  • 片親がキャリアで片親が2つのSLC25A13変異を持っている場合、発端者の同胞が2つのSLC25A13変異を有して発症する可能性は50%、1つの変異を有して無症候性キャリアである可能性は50%である。
  • ヘテロ接合者(キャリア)は無症状である。

発端者の子

  • もしシトリン欠損症患者で罹患者もしくはキャリアである子どもがまだいないのならば、生まれてくる子どもは必然的にSLC25A13変異のヘテロ接合者(キャリア)であるだろう。

発端者の他の家族

  • 発端者の両親の同胞がSLC25A13変異のキャリアであるリスクは50%である。

保因者診断

ひとたび家族内でSLC25A13変異が同定されれば、リスクのある家族が保因者かどうか調べることは可能である。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断・治療目的のリスクのある親族に対する検査についての情報については「臨床的マネジメント」「リスクのある親族の検査」の項を参照のこと。

家族計画

  • 遺伝学的リスク評価、キャリアかどうかの検査、および出生前診断の可否などについての議論の最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患者、キャリア、キャリアのリスクがある若年成人に対して遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いなど)を行うことは適切である。

DNAバンキング

DNAバンクは主に白血球から調整したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断

ひとたび家族内でSLC25A13変異が同定された場合、リスク妊娠の出生前検査や着床診断は可能なオプションである。
(シトリン欠損症のように)治療法のある病態に対する出生前診断の要望は多くない。特に早期診断ではなく妊娠中絶を考慮した検査である場合に、医療従事者や家族の間でも出生前検査に関して視点の違いが存在する可能性がある。ほとんどの施設において、出生前診断に関する決定は両親の選択によると考えるが、これらの問題に関して話し合うことがのぞましい。


更新履歴

  1. Gene Review著者:Keiko Kobayashi, PhD, Takeyori Saheki, MD, PhD, and Yuan-Zong Song, MD, PhD
    日本語訳者: 和田宏来 (県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)
    Gene Review 最終更新日: 2014.7.31 日本語訳最終更新日: 2016.12.8(minor revision 2017.2.7) (in present)

原文 Citrin Deficiency

印刷用

grjbar
GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト