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家族性非ポリポーシス大腸がん
(
Hereditary Non- Polyposis Colon Cance)
[HNPCC, Lynch Syndrome. Includes: Muir- Torre Syndrome, Turcot Syndrome]

Gene Review著者: Wendy Kohlmann, MS, Stephen B Gruber, MD, PhD
日本語訳者 :櫻井晃洋(信州大学医学部遺伝子師診療部)
Gene Review 最終更新日: 2006.11.29. 日本語訳最終更新日: 2007.1.7

原文  Hereditary Non- Polyposis Colon Cancer※Lynch症候群に統合された。(リンク先はLynch Syndrome)


要約

疾患の特徴 

家族性非ポリポーシス大腸がん(hereditary non-polyposis colon cancer, HNPCC)はマイクロサテライト不安定性 (microsatellite instability: MSI)に特徴づけられるミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異に起因する疾患で,大腸がんや,子宮内膜,卵巣,胃,小腸,肝胆道,上部尿路,脳,皮膚などのがんの発症リスクが高まる疾患である.HNPCC患者では約80%で生涯の間に大腸がんを発症する.大腸がんと診断される平均年齢は61歳である.HNPCC女性の20-60%は生涯の間に子宮内膜がん(子宮体がん)を発症する.子宮内膜がんと診断される平均年齢は46-62歳である.大腸がんと子宮内膜がんの両方を発症するHNPCC女性の約50%では子宮がんを先に発症する.HNPCC患者では胃がんと診断される平均年齢は56歳で,病理学的には小腸型腺がんがもっとも多い.HNPCC関連卵巣がんは平均42.5歳で診断されるが,約30%は40歳以前に診断される.

診断・検査 

HNPCCの診断はアムステルダム基準,もしくはいくつかのミスマッチ修復遺伝子に関する分子遺伝学的検査よってなされる.アムステルダム基準は最初1990年に研究目的で制定され,のちに臨床診断目的で他のHNPCC関連がんも含めるよう修正された.HNPCCはミスマッチ修復経路に関与する4つの遺伝子,すなわちMLH1,MSH2,MSH6,PMS2の変異と関連している.MLH1MSH2の変異はHNPCC家系に同定される変異の約90%を占める.MSH6変異は約7-10%のHNPCC家系に認められる.PMS2変異がみられるHNPCC家系は5%未満である.遺伝子変異を有するHNPCC家系の最大39%はアムステルダム基準を満たさない.したがって,HNPCC遺伝子変異が同定された家系では家族歴の程度にかかわらずHNPCCとみなされるべきである.

臨床的マネジメント 

大腸癌が発見された場合は小腸直腸吻合を伴う大腸全摘術が勧められる.通常の大腸内視鏡検査が予防的手段として有効であるため,HNPCCを有することが判明している人に対する予防的大腸切除術は通常行われない.出産年齢を過ぎた場合には,予防的な子宮卵巣摘出術が考慮されうる.

定期検査では1-2年ごとの大腸内視鏡検査と前がんポリープの切除を20-25歳の間,もしくは家系内でもっとも若くして発症した人の発症時年齢に達する10年前のどちらか早いほうの年齢から開始する.子宮内膜,卵巣,胃,十二指腸,尿路のがんに対する定期検査の有効性についてはまだ不明である.

リスクのある人に対するHNPCCの遺伝学的検査 は,通常18歳以前には勧められない.しかしながら,家系内で最も早く発症した人の発症時年齢より10年前から定期検査を行うとすると,18歳以前に遺伝学的検査とスクリーニングの大腸内視鏡検査が必要になる場合もある.

遺伝カウンセリング 

HNPCCは常染色体優性遺伝の形式をとる.本症と診断された患者の大多数は体質を親から受け継いでいる.しかしながら不完全浸透やがん発症年齢のばらつき,スクリーニングや予防的手術によるがんリスクの低減,早期死亡などのため,すべてのHNPCC患者でがんを発症した親がいるわけではない.HNPCCの親から生まれた子はそれぞれ50%の確率で変異を受け継ぐ.リスクのある妊娠に対する出生前診断は可能であるが,診断の前に家系内での遺伝子変異を同定しておく必要がある.HNPCCのような成人発症で治療法の存在する疾患に対する出生前診断の希望はあまりない.


診断

臨床診断

HNPCCの診断はアムステルダム臨床基準もしくはいくつかのミスマッチ修復遺伝子に対する分子遺伝学的検査によってなされる.

国際HNPCC研究グループが研究目的で家系を同定するため,1990年にアムステルダム基準を制定した.この基準は臨床応用にはあまりにも制限が多すぎるため,のちに他のHNPCC関連がんも含めるよう修正(アムステルダム基準II)された.

表1 HNPCCの臨床診断のためのアムステルダム基準およびアムステルダム基準II

アムステルダム基準

アムステルダム基準II

大腸・直腸がんの診断が確定した家族が3名以上あり,そのうちの1名は他の2名の一度近親者である

HNPCC関連腫瘍を有する家族が3名以上あり,そのうちの1名は他の2名の一度近親者である

連続する2世代で罹患している

連続する2世代で罹患している

50歳以前に大腸がんと診断された者が1名以上いる

50歳以前にHNPCC関連腫瘍と診断された者が1名以上いる

家族性大腸ポリポーシスが否定されている

家族性大腸ポリポーシスが否定されている

HNPCC関連腫瘍;大腸・直腸がん,子宮内膜がん,胃がん,小腸がん,肝胆道がん,腎盂がん,尿管がん

アムステルダム基準の正確さ 臨床診断基準に基づく診断の正確さは家族歴の正確さに依存しており,したがって家族の診断が確実でない場合はHNPCCの診断基準は信頼できない.診断を病理報告で確認したり,家族のスクリーニングの状況や予防的手術(子宮摘出術)の既往,ポリープの既往を調査したりすることは診断の精度を高めるのに有用である.

アムステルダム基準に基づいてミスマッチ修復遺伝子,MSH2MLH1の変異を検出する感度と特異度はそれぞれ61%と67%と報告されている.アムステルダム基準IIを用いることによって感度は78%まで上昇する.しかしながら基準を広くとることは特異度の低下につながる.

注:多変量解析モデルでは大腸がんの若年発症,アムステルダム基準を満たすこと,家系内に子宮内膜患者があることはMSH2もしくはMLH1遺伝子変異が認められることに対する独立した予測因子である.

Syngalら(2000)によれば,HNPCC関連遺伝子変異を有する家系の最大39%はアムステルダム基準を満たさない.しかしながら彼らの研究では大きな欠失や遺伝子再構成を検出できる遺伝学的検査を行っていないので,基準の感度を過小評価しているかもしれない.

HNPCC関連遺伝子変異が同定された家系は,家族歴にかかわらずHNPCCとみなされるべきである.

アムステルダム基準を満たし,マイクロサテライト不安定性を示す家系とアムステルダム基準は満たすがマイクロサテライト不安定性を示さない家系のがん発症リスクを比較した最近の研究では,HNPCCに限らずさまざまな遺伝学的背景の家系でアムステルダム基準を満たすことが明らかにされた.したがって,家族歴だけに基づく基準ではミスマッチ修復遺伝子変異に起因する例と他の未知の遺伝子変異に起因する例を区別することができないかもしれない.正確なHNPCCの診断にはマイクロサテライト不安定性の情報や分子遺伝学的検査の情報が必要である.

検査

腫瘍組織のマイクロサテライト不安定性( MSI)ミスマッチ修復経路は細胞の成長や分裂に伴って生じる単塩基のミスマッチ,挿入,欠失を検出・修復する機構である.ミスマッチ修復に関与する遺伝子の機能喪失は細胞内で体細胞変異の蓄積をきたし,細胞が悪性化する原因となる.マイクロサテライトは反復配列を含むDNA部分であり(AAAAAやCGCGCGCGなど),ミスマッチ修復遺伝子機能が障害された時にエラーが生じやすい.ミスマッチ修復遺伝子の機能障害によって生じたがん細胞では正常細胞に比べてマイクロサテライト塩基配列の数が不定になっており,これをマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability)とよんでいる.

腫瘍組織と正常組織でマイクロサテライト不安定性を評価する5種類のマーカーのセット(パネル)が用いられている.腫瘍は以下のように分類される.

  • 30%以上のマーカーで不安定性を認める時は高不安定性(MSI-high)
  • 30%未満の時は低不安定性(MSI-low)
  • 不安定性を全く認めない(0%)時は安定性(MSI-stable)

注:(1)多くの臨床検査施設ではMSIを評価する際にさらにマーカーを追加して検査を行っているが,5種のマーカー以外のマーカーについてはコンセンサスは得られていない.(2)たとえば非常に粘液性の強いがんのようにDNAを得ることが技術的に困難を伴うがんではMSIを検出できない.(3) MSI-low腫瘍の臨床的意義は確立していない.

アムステルダム基準を満たす家系の大腸がんの約90%はMSI-highである.

注:分子遺伝学的検査は腫瘍がMSIを示した患者に対してのみ行われることが多いので,ミスマッチ修復遺伝子変異を有する患者を同定する目的でのMSI検査の感度の算出には限界がある.

HNPCCが疑われるかもしくはわかっていない患者に生じた大腸がんの10-20%はメチル化によるMLH1遺伝子の不活化,もしくはミスマッチ修復遺伝子の体細胞変異によってMSIを示す.

MSI-stableの腫瘍を発症した患者で生殖細胞系列変異が検出される可能性はきわめて低い.2つの研究結果を合わせると,無作為に抽出された約1000人のフィンランド人大腸がん患者のうち,MSI-stableで遺伝子変異があった者はいなかった.Wahlbergら(2002)はMHL1もしくはMSH2遺伝子変異の検出にあたってMSI検査の感度は100%であったと報告している.しかしながら,ごくわずかながらMSI-stableの患者で遺伝子変異が同定されたという報告もある.

大腸がん組織でのMSIの検討が明らかに望ましいが,時には腺腫様ポリープからの組織で検査が行われることもある.しかしながら,ポリープの生検によって得られた小さな組織ではMSIを検討するには組織量が不十分かもしれない.十分量の組織が得られた時は,HNPCC関連腺腫の検討では約80%の腺腫がMSI-highを示し,MSI比率は若干低い.高度の異型性を示す腺腫ではより不安定性を示すことが多く,一方早期のポリープではMSIが示される頻度は低い.散発性ポリープでMSIを認めることは少ない.したがって腺腫でMSIを認めることはミスマッチ修復遺伝子変異の存在を予測するよい指標となる.ただし,HNPCC関連腺腫の多くは早期にはMSIを示さないので,検体にMSIを認めないことでHNPCCを否定できるわけではない.

腫瘍組織の免疫組織化学検査( IHC)IHCはミスマッチ修復遺伝子によって発現している蛋白の存在や欠失を検出できる.臨床的にIHCはMLH1,MSH2,MSH6にコードされる蛋白を検出する目的でよく使われる.IHCはMSIを示す腫瘍で変異や不活化が起きているミスマッチ修復遺伝子を同定するために役立つが,すべてのミスマッチ修復遺伝子変異が蛋白の欠失を伴うわけではない.

ひとつもしくは複数のミスマッチ修復蛋白の発現喪失はMSIの状況とよく相関する.Hampelら(2005)はMSIとIHCの両者を用いることでミスマッチ修復遺伝子変異を有する人を全員(23/23)同定できたが,どちらか一方の検査のみでは23人中2人を見落としたと報告した.同様の結果は他の研究者によっても報告されている.IHCとMSIの併用は理想的ではあるが,IHCのほうがMSIよりも普及しているので,大規模スクリーニングにはIHCのほうがより使いやすいかもしれない.

腫瘍組織のメチル化の検討 大多数のMSIはMHL1の体細胞変異によるもので,これは臨床的な検査で検出できる.メチル化の評価は,最近大腸のがん化への関与が報告されているBRAF遺伝子変異などとともに,MLH1遺伝子変異を有している可能性が高い患者を同定するのに使えるかもしれない.

分子遺伝学的検査

遺伝子 HNPCCはミスマッチ修復経路に関与する4つの遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)の変異によることが知られている.

  • MLH1遺伝子とMSH2遺伝子の変異でHNPCC家系に同定される遺伝子変異の約90%を占める.
  • MSH6遺伝子変異はHNPCC家系の約7-10%を占める.
  • PMS2遺伝子変異はHNPCC家系の5%未満を占める.

他の遺伝子座

  • PMS1遺伝子変異は当初1家系で報告された.しかしこの変異は家系内でがん発症と連関していないことが判明した.その後の検索でMSH2遺伝子変異が同定された.したがってPMS1遺伝子変異のHNPCC発症に対する影響は現時点では疑問がある.
  • MSH3,EXO1,TGFβR2遺伝子変異がHNPCCのいくつかの家系で報告されているが,これら変異の意義はまだ確定しておらず,検査も利用できない.

分子遺伝学的検査:臨床応用

  • 診断検査
  • 確定診断
  • 発症前診断
  • 出生前診断
  • 着床前診断

分子遺伝学的検査:検査法

  • 変異スキャンとシークエンス解析 MLH1,MSH2,MSH6遺伝子の変異スキャンとシークエンス解析は臨床ベースで利用可能である.

    注:シークエンス解析は大きな欠失や再構成は検出できない.

  • 欠失/再構成解析 アムステルダム基準を満たす家系でのMSH2遺伝子変異の少なくとも20%,MLH1遺伝子変異の5%は大欠失や遺伝子再構成である.サザンブロット解析とライゲーション依存性プローブ増幅法(ligation-dependent probe amplification: MLPA)を用いるとMLH1MSH2遺伝子の大欠失を検出できる.MLPAは大欠失を検出するのにより簡単な方法であるが,変異によってはプローブの結合に影響を与えるため,偽陽性や偽陰性の率が高いという報告もある.

分子遺伝学的検査:研究目的

コンバージョン法 Caseyら(2005)によれば,コンバージョン法は変異検出率をシークエンス解析のみの場合の33%から向上させた.シークエンス解析で検出できず,コンバージョン法で検出できる変異の多くはサザンブロット解析やMLPAで検出できる大欠失と再構成である.コンバージョン法はまた,以前にはその意義が不明であったスプライス部位の変異の機能的意味を明らかにするのにも貢献した.

表2 個々の指標によってミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を検出する確率

臨床的クライテリア

MSH2/MLH1生殖細胞系列変異

アムステルダム基準

40〜80%

アムステルダム基準II

0−50%

ベセスダガイドライン,MSI-H腫瘍

〜50%

ベセスダガイドライン

〜20%

非選択大腸がん,MSI-high

8-14%

非選択大腸がん,MSH2蛋白欠失

〜100%(MSH2

非選択大腸がん,MLH1蛋白欠失

〜8%(MLH1

表3 遺伝子,検査法ごとの変異検出率

遺伝子

検査法

IVSP,SSCP,DGGE,DHPLC 全シークエンス 欠失解析 (サザンブロット/IMPLA)

MLH1

60-69%

90-95%

5-10%

MSH2

50-69%

50-80%

20-50%

MSH6

 

 

まれ

IVSP(in vitro synthesized protein assay),SSCP(single-strand conformational polymorphism assay),DGGE(denaturing gradient gel electrophoresis),DHPLC(denaturing high performance liquid chromatography)

発端者の検査手順

腫瘍組織のMSI検査とIHC検査は生殖細胞系列変異を調べる候補者を絞り込み,結果として全体のコストを低減するのに役立っている.

ベセスダ基準(1997) 腫瘍のMSI検査を行うべき患者を同定するためのベセスダ基準が設けられた.この基準の感度は約94%,特異度は約25%と報告されている.50歳以前に大腸がんと診断された患者を含めるように修正されたベセスダ基準では実際にHNPCCによる大腸がん患者を効率的に同定するのに有用であるとされている.

修正ベセスダ基準(2004) ベセスダ基準は感度を向上させるために改定された.

  • 50歳以前に診断された大腸がん
  • 年齢に関係なく,同時性もしくは異時性の大腸がんもしくはHNPCC関連腫瘍1の発症
  • 60歳以前に診断されMSI-high組織所見2を示す大腸がん
  • 一度近親者のひとり以上に大腸がんとHNPCC関連腫瘍を発症した者があり,がんの最低ひとつは50歳以前に発症している
  • 年齢に関係なく大腸がんと診断された者が一度近親者および二度近親者のうちに2名以上いる
  1. HNPCC関連腫瘍:大腸直腸がん,子宮内膜がん,胃がん,卵巣がん,膵がん,腎盂尿管がん,胆管がん,脳腫瘍(通常は膠芽腫)
  2. 腫瘍浸潤リンパ球の存在,クローン(Crohn)様リンパ球反応,粘液性/印環がん分化,髄様増殖像

2004 年の修正ベセスダ基準は1997年の基準に比べてより包括的であるが,Hampelら(2005)によればミスマッチ修復遺伝子変異陽性患者23名中5名が修正基準に合致しなかった.

ベセスダ基準を満たし,MSI-highもしくはIHCで異常を示す患者に対する遺伝子解析

いくつかのガイドラインではアムステルダム基準を満たす家系に対してはMSI検査と遺伝子解析をすぐに行うように勧めている.

  • もし変異が同定できれば検査は完了する.
  • 変異が同定されない場合, MSIやIHCが行われる.

遺伝学的な関連疾患

MHL1,MSH2,MSH6,PMS2の変異は他の疾患や表現型との関連は知られていない.

臨床像

自然経過

ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異によるHNPCC患者や他のMSIを示す腫瘍を発症した患者では大腸がんおよび子宮内膜がん,卵巣がん,胃がん,小腸がん,肝胆道がん,上部尿路がん,脳腫瘍,皮膚がんを含むその他のがんのリスクが高まる(表4).

表4 HNPCC患者が70歳までにがんを発症するリスクと一般集団との比較

がん

一般集団のリスク

HNPCC

リスク

平均発症年齢

大腸

5.5%

80%

44歳

子宮内膜

2.7%

20-60%

46歳

<1%

11-19%

56歳

卵巣

1.6%

9-12%

42.5歳

肝胆道

<1%

2-7%

報告なし

尿路

<1%

4-5%

〜55歳

小腸

<1%

1-4%

49歳

脳脊髄

<1%

1-3%

〜50歳

大腸がん HNPCC患者では約80%の大腸がん生涯発症リスクを有する.これら大腸がんの2/3は右側大腸に発生する.

高リスク者を対象とした以前の研究では大腸がんの平均診断時年齢は44歳であった.より最近の症例対象研究ではより年齢は高く,Hampelら(2005)は61歳と報告している.

Hampelら(2005)は大腸がんの生涯発症リスクを男性で69%,女性で52%と報告している.

病期ごとにマッチさせて比較するとHNPCCによる大腸がんは散発性の大腸がんに比べて予後は良好である.これはHNPCC大腸がんが組織学的に未分化であることを考えると予想外である.HNPCC関連大腸がんは,病理学的に未分化,リンパ球浸潤,ムチン産生,印環細胞がん,篩状(cribriform)細胞がん,などを含む.

子宮内膜がん HNPCC女性は20-60%の生涯発症リスクを有し,大腸がんに次いで頻度の高いがんである.診断時平均年齢は46-62歳と報告されている.大腸がんと同様,HNPCC子宮内膜がんでも予後のよさが報告されている.大腸がんと子宮内膜がんの両方を発症したHNPCC女性の約50%では子宮内膜がんを先に発症している.

胃がん HNPCCでは胃がん診断時年齢は平均56歳である.病理学的には腸上皮型腺がんがもっともよくみられ,これはCDH1遺伝子変異による家族性びまん性胃がんとは異なっている.

卵巣がん HNPCC関連卵巣がんの平均診断時年齢は42.5歳であるが,非常に若い年齢での診断例も報告されている.約30%は40歳以前に診断される.

病理所見は散発性の卵巣がんと同様である.境界型卵巣腫瘍はHNPCCと関連しているとは考えられない.

その他のがん その他にも特徴的所見を有するHNPCC関連がんが報告されている.
  • HNPCCに関連した尿路がんは尿管や腎盂の移行上皮がんである.
  • 小腸がんは多くが十二指腸と空腸に生じ,大部分は腺がんである.
  • 中枢神経系のがんでもっとも多いのは膠芽腫である.

乳がん,血液腫瘍,喉頭がんもHNPCCで報告されているが,確実な関連性は示されていない.

HNPCCバリアント
  • Muir-Torre症候群 Muir-Torre症候群は皮膚の皮脂腺腫瘍とHNPCCでよくみられる悪性腫瘍を合併するものである.皮脂腺腫瘍には皮脂腺腺腫,上皮腫,がん,ケラトアカントーマなどが含まれる.Muir-Torre症候群に伴う皮脂腺腫瘍ではHNPCC関連がんと同様MSIを示す.
  • Turcot症候群 Turcot症候群は大腸がんまたは大腸腺腫に中枢神経腫瘍を合併する.臨床像は無数の大腸ポリープを認める例から単一の大腸ポリープまたは大腸がんの例までさまざまである.Turcot症候群の多くの例では家族性大腸ポリポーシスの原因であるAPC遺伝子の変異かHNPCCに関連したミスマッチ修復遺伝子の変異が認められる.APC遺伝子変異を有する典型例ではより多くの大腸ポリープを認める.しかしポリープの数についてはAPC遺伝子変異を有するTurcot症候群患者とミスマッチ修復遺伝子変異を有するTurcot症候群患者の間にかなりのオーバーラップがある.中枢神経腫瘍の病理像が遺伝学的背景を区別するのに役立つ.APC遺伝子変異を有する例では髄芽腫が多く,ミスマッチ修復遺伝子変異を有する例では膠芽腫が多い.ミスマッチ修復遺伝子変異による脳腫瘍はMSIを示す.
  • ミスマッチ修復遺伝子変異ホモ接合 MLH1,MSH2,PMS2変異をホモで有するまれな症例が報告されている.罹患者は大腸がんを10歳以前に発症している.血液腫瘍,脳腫瘍,カフェ・オレ斑も報告されている.

遺伝子型と臨床型の関連

すべてのHNPCC関連がんがMLH1もしくはMSH2遺伝子変異を有する患者で報告されているが,MSH2変異はより大腸以外のがんのリスクが高い.より特異的な遺伝子型・臨床型関連が示されないうちは,HNPCCの臨床基準を満たす家系やMSH2もしくはMLH1遺伝子変異を有する家系はすべてのHNPCC関連がんについてリスクが増大しているとみなすべきである.

HNPCCのMuir-Torreバリアント例ではMLH1変異よりもMSH2変異が高頻度に認められる.

MSH6変異はMSI-low腫瘍と関連している.MSH6変異を有する家系でのがんは発症が遅く,大腸がんは左側(肛側)に多い.MLH1またはMSH2遺伝子変異を有する患者と比較して,MSH6変異を有する患者では大腸がんのリスクがやや低く子宮内膜がんはより高い.

Turcot症候群家系でPMS2変異が報告されている.

HNPCCのがん発症リスクに影響する遺伝学的因子が報告されている.Zecevicら(2006)はミスマッチ修復遺伝子変異を有する患者でIGF1遺伝子のCA反復配列が短いと大腸がんの発症リスクが高くなり(オッズ比2.36),発症年齢が早くなる(44歳vs56.5歳)と報告した.Krugerら(2005)はRNASEL遺伝子のp.R426G多型も発症年齢を早め,R/R型の平均発症年齢が40歳であるのに対し,G/G型では34歳であると報告している.

浸透率

ミスマッチ修復遺伝子変異に関連した大腸がんの浸透率は100%には達しない.したがってミスマッチ修復遺伝子に変異を有していても一部の人は大腸がんを発症しない.

病 名

HNPCCはDr. Henry Lynchが本症の概念を確立したのにちなんでLynch症候群ともよばれる.過去にはLynch症候群は大腸がんのみを発症する家系と他のがんを合併する家系を分けて,それぞれLynch症候群1,Lynch症候群2とよばれていた.しかしながらこうした分類はもはや行われないし,すべてのHNPCC家系では大腸がん以外のがんのリスクがあると認識されるべきである.

頻 度

HNPCCは大腸がん全体の1-3%,子宮内膜がん全体の0.8-1.4%を占める.

鑑別診断

家族性大腸がん HNPCCと家族性大腸がんの鑑別にはMSIの検討が重要である.大腸がんの濃厚な家族歴はあるもののMSIを示さない家系ではミスマッチ修復遺伝子変異で生じてくるその他のがんのリスクは上昇しない.MSI-stableの家系では大腸がん発症リスクも明らかに低い.家族性大腸がんの原因としては多くの候補遺伝子,低浸透率,環境要因などが検討されている.

軽症型家族性大腸ポリポーシス(attenuated familial adenomatous polyposis, AFAP) このFAPの軽症型は古典的FAPに比べてポリープの数が少なく発症も遅いのが特徴である.AFAPではポリープは100個未満である.胃底部や十二指腸のポリープも生じるが,FAPで通常みられる大腸以外の病変(表皮嚢腫,歯牙異常,網膜色素上皮の先天性肥大,デスモイド腫瘍など)はAFAPでは見られないことがある.AFAPに伴う大腸ポリープや大腸がんは通常MSIを示さない.AFAPはAPC遺伝子変異が原因であり,AFAP患者の60-70%に変異が検出される.AFAPは常染色体優性遺伝性である.

APC遺伝子のp.I1307K変異 このAPC遺伝子のミスセンス変異は古典的なFAP臨床像とは関連しないが,この変異を有すると大腸がんの発症リスクは約2倍となる.この変異はアシュケナジユダヤ人の祖先に由来する.アシュケナジユダヤ人の約6%がこの変異を有している.

MYH MYH遺伝子変異が多発性腺腫性ポリープを有する人で報告されている.遺伝形式は常染色体劣性である.MYH遺伝子の変異は(1)ポリープを15-100個有する人の約30%,(2) 古典的なFAPの臨床像を示し,かつAPC遺伝子検査で陰性であった人の一部,(3)多発性ポリープを認めない大腸がん家族歴がある人,に認められる.

過誤腫性ポリープ症候群 いくつかの病態が過誤腫性ポリープと大腸がんのリスク増大に関連していることが知られている.これらは大腸以外の病変や腺腫ではなく過誤腫であるという病理学的特徴によって鑑別される.

  • 若年性ポリポーシス症候群(JPS) SMADA4またはBMPR1A遺伝子変異によっておきる.
  • Peutz-Jeghers症候群 STK11遺伝子変異による.
  • PTEN過誤腫症候群 PTEN遺伝子変異による.Cowden症候群やBannayana-Riley-Ruvalcaba症候群を含む.

遺伝性びまん性胃がん CDH1遺伝子変異によるもので典型例の胃がんは腺がんである.

BRCA1/BRCA2遺伝性乳がん/卵巣がん症候群 卵巣がんの家族歴がある場合には本症も考慮に入れる必要がある.


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

「定期検査」の項参照.

病変に対する治療

HNPCC患者の大腸がんマネジメント もし大腸がんが発見された場合は大腸の部分切除ではなく大腸全摘術と空腸直腸吻合術が勧められる.

HNPCCの診断は最初のがんの治療を行うまでなされないことがあるので,あとになって診断された患者はしばしば限局的な大腸切除術を受けている.

タイミングの難しさはあるが,腫瘍切除標本についてMSIおよびIHCの検討を行ったり,もし可能性がある場合にはMLH1遺伝子のメチル化状態を評価したりすることは最適な手術選択に有用である.最近の研究によれば大腸がん患者は診断を受けた時点で遺伝子検査に対しては積極的であるという.

一次病変の予防

出産年齢を過ぎた女性に対しては,がん発症前の予防的な子宮卵巣摘出術が考慮されうる.

定期検査

がん検索

  • 大腸がん HNPCC患者では定期的な大腸ファイバースコープと前がんポリープの除去ががんの発症を減少させる.HNPCCでは右側結腸にがんが多いので直腸ファイバーより大腸ファイバーが勧められる.専門家はHNPCC関連大腸がんのリスクがある人に対しては1年または2年ごとの大腸ファイバーを,20-25歳もしくは家族でもっとも若く発症した人の発症時年齢の10年間前から開始することを勧めている.
  • 婦人科がん 子宮内膜がんと卵巣がんの検索法は大腸がんほど確立していない.多くの子宮内膜がんは臨床症状をもとに早期に診断されるので,HNPCC女性は子宮内膜がんの臨床症状についてよく説明を受けておくべきである.毎年のパップスメアと骨盤腔に加えて,25-30歳から開始する毎年の経膣エコー,内膜生検,血中CA-125定量が考慮される.閉経前女性ではこうしたスクリーニングは月経周期の第1日目から10日目の間に行うことが勧められる.しかしながらこうしたスクリーニングの効果については明らかではない.内膜がんをスクリーニングするための経膣エコーを用いた検討ではがんを検出することはできなかったが,検討期間中に臨床症状に基づいて2例のがんが見つかった.経膣エコーと内膜生検が早期に子宮内膜がんを発見できるかどうかについてはさらなる検討が必要である.HNPCC女性の卵巣がんスクリーニングに関する検討は行われていない.
  • 胃および十二指腸 上部消化管内視鏡が胃がんと十二指腸がんのスクリーニングに用いられる.しかしながら,同定できるような前病変所見がないため,こうしたスクリーニングの有用性に否定的な報告もある.HNPCCのコホート研究において約50%の小腸がんは十二指腸に発生することが明らかになり,上部消化管内視鏡の有用性が示唆された.ただし有用性を評価するための臨床試験は行われていない.
  • 肝胆道系 現時点で肝胆道系腫瘍に対して推奨される特別なスクリーニング法はない.
  • 尿路系 毎年の尿細胞診がスクリーニング法として用いられる.この方法が早期発見と予後の改善につながることを示すデータはないが,この方法は患者に対する負担がなく安価な方法である.スクリーニングを開始するべき年齢も確立していないが,30歳前に尿路系のがんを発症するリスクは低い.

  • 脳・中枢神経系 現時点で脳腫瘍に対して勧められる特別なスクリーニング法はない.

回避すべき薬物や環境

喫煙はHNPCCにおける大腸直腸がんのリスクを高める.

リスクのある親族の検査

臨床所見や家族歴からはどちらの親からミスマッチ修復遺伝子変異が由来しているのかわからない場合には,分子遺伝学的検査を両親に対しても提供すべきである.

同定されたミスマッチ修復遺伝子変異のスクリーニングはすべての同胞に対しても提供されるべきである.HNPCCのほとんどは親からの遺伝によるので,たとえ両親ががんを発症していなくても同胞にはリスクがあると認識すべきである.

HNPCC患者の子は50%の確率で変異遺伝子を受け継ぐ.一般にHNPCCの遺伝学的検査は18歳前には勧められない.しかし,HNPCCでは若年でがんを発症する場合もあり,スクリーニングは家系内で最も早く発症した人の発症時年齢の10年前から始めるべきとされているので,家系によっては18歳以前にスクリーニングを開始する必要がでてくる.

研究中の治療法

大腸の扁平な腺腫の検出率を向上させるための色素内視鏡の有用性に関する検討が進行中である.

化学予防研究

  • 散発性大腸がんやFAPではCOX-2阻害薬がポリープ発生を減少させることが示されている.HNPCCに対するCOX-2の効果は現在検討中である.
  • 経口避妊薬は一般女性において子宮内膜がんと卵巣がんのリスクを低下させる.HNPCCの子宮内膜がんと卵巣がんに対する効果は現在検討中である.

さまざまな疾患や病態の臨床試験に関する情報については,ClinicalTrials.gov を参照のこと.

その他

定期的な大腸内視鏡検査は大腸がん予防のための有用な手段であるので,HNPCCでは通常予防的大腸切除術は勧められない.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質、遺伝、健康上の影響などの情報を提供し、彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである。以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価、遺伝子検査について論じる。この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし、遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない。」

遺伝形式

HNPCCは常染色体優性遺伝の形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • HNPCC患者の大部分は両親の一方から体質を受け継いでいる.しかし,不完全浸透,がん発症年齢のばらつき,スクリーニング検査や予防的手術によるリスク軽減,早期死亡などのため,遺伝子変異を伴うHNPCC患者のすべてにがんを発症した親がいるわけではない.
  • もし病歴や家族歴でどちらの親から病気を受け継いだか明らかにならない場合は,患者の両親に対しても分子遺伝学的検査が提供される.
  • 正確な新生突然変異の頻度は明らかではないが,きわめて低いと予測されている.

発端者の同胞

  • 発端者の同胞は50%の確率で変異を受け継いでいる.
  • 明らかにされた変異についての検査がすべての同胞に提供されるべきである.
  • 大部分のHNPCCは遺伝性なので,たとえ両親にがんがなくても同胞にはリスクがあるものとみなすべきである.

発端者の子 HNPCC患者の子はそれぞれ50%の確率で変異遺伝子を受け継ぐ.

他の家族 他の家族のリスクは発端者との遺伝的関係による.家族歴や分子遺伝学的検査の結果が,父方と母方のいずれにリスクがあるかを明らかにするのに役立つ.変異が同定されたりHNPCC関連がんが発見された家族の子は50%のリスクがある.リスクのある家族ががん発症の前に死亡した家族については子のリスク評価はベイズの定理に基づいて算出される.

リスクに関する特別な問題 家族歴に基づいたHNPCCの診断はいくつかの要因によって妨げられる.スクリーニング検査と前がんポリープの切除,予防的手術はリスクのある家族の大腸がん発症を予防する.ある者はがん発症の前に若くして死亡しているかもしれない.

関連した遺伝カウンセリング上の問題

明らかに新生突然変異と思われる家系 HNPCCを発症した発端者の両親のいずれにも遺伝子変異やHNPCCを示唆する臨床所見を認めない場合,発端者は新生突然変異を生じたと考えられる.しかし,父親が異なっているとか養子縁組が公表されていないなど,医学以外の原因による場合も考慮に入れておく必要がある.

家族計画 遺伝的リスクの評価や出生前診断の可否についての検討は妊娠前に行うのが望ましい.同様に無症状の家族メンバーに対して遺伝学的評価を行うのも妊娠前が望ましい.

成人の発症前診断 リスクのある無症状の成人に対しては,「分子遺伝学的検査」の項に記載した検査が提供できる.この検査では発症するかどうかは予測できないし,もし発症するとしてもその年齢や重症度,病変の種類,病気の進展度などは予測できない.リスクのある家族の検査を行う前に,家系内の発症者の検査をまず行って遺伝子変異を明らかにしておく必要がある.

遺伝学的検査を行う前には遺伝カウンセリングが勧められる.Brainら(2005)は,治療可能な疾患のリスクを有する成人に対する遺伝カウンセリングとしては,1回の教育的セッションが適切であると述べている.しかし事前に情報を提供しておくことは,それまでは予期していなかった問題について考慮する機会を与えるのに有用である.遺伝カウンセリングでは個人や家族に対して遺伝学的検査が臨床的,心理的に与えうる影響についての話し合いがなされる.遺伝学的検査後の心理的適応について評価した研究では,HNPCC関連遺伝子変異を有することを知ったあとに心理的な悪影響や明らかな身体的苦痛が増えることはなかった.しかし検査前の苦痛が強い人, QOLが不良な人,不十分な社会的サポートが十分に得られていない人など,一部の被検者では,検査が心理的な不健康状態を招く誘因となっていた.

小児期の発症前診断 一般的にリスクのある個人に対するHNPCCの遺伝子検査は18歳以前には勧められない.American College of Medical GeneticsとAmerican Society of Human Geneticsが共同で制定したガイドラインは18歳未満の発症前遺伝子検査について,それが医療マネジメントに影響を与える場合にのみ行われるべきであると述べている.HNPCCではがんに対するマネジメントを20歳以前に行うことはないので,遺伝子検査についても本人が成人に達して自分で判断ができるようになるまで延期すべきである.HNPCCでも非常に若年のうちにがんを発症した報告もあるので,スクリーニングは家族の中で最も早く発症した人の発症年齢より10年前から始めることが勧められる.家系によってはスクリーニング検査を18歳以前に始める必要があるかもしれない.

DNAバンク DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,ことに現在行っている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照のこと.

注)現在日本ではこのようなサービスは行われていない.

出生前診断

HNPCCのリスクのある妊娠に対する出生前診断は,胎生15−18週*に採取した羊水中細胞や10−12週に採取した絨毛やから調製したDNAを用いて行うことが可能である.検査を行う前に家系における遺伝子変異が発症者で明らかにされている必要がある.

HNPCC家系に対しては特別な着床前診断も選択肢の一つかもしれない.

訳注)日本では行われていない.

HNPCCのように治療法が存在する典型的な成人発症遺伝性疾患に対する出生前診断の希望はあまりない.専門家の間や家族内においても,特にそれが早期診断ではなく妊娠中絶を目的とした場合には,出生前診断に対する考え方の違いが存在しうる.多くの専門機関は出生前診断については夫婦の自己決定の問題だと考えているが,この問題については注意深く議論することが適切である.

着床前診断は家系内の変異が同定されている場合に提供可能となる.

訳注)日本では行われていない.


  1. 日本語訳者 :櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    Gene Review 最終更新日: 2004.2.5. 日本語訳最終更新日: 2004.3.30.
  2. 日本語訳者 :櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    Gene Review 最終更新日: 2006.11.29. 日本語訳最終更新日: 2007.1.7 (in present)

原文Hereditary Non- Polyposis Colon Cancer

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