Gene Reviews著者: Ana Sequerra Amram Cohen, PhD and William Thomas Gibson, MD, PhD, FRCPC, FCCMG.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日:2019.4.11. 日本語訳最終更新日: 2023.1.15.
疾患の特徴
EED関連過成長は、胎児期あるいは幼児期の過成長(高身長,大頭症,大きな手足,骨年齢の亢進)と、軽度から重度までばらつきのある知的障害を特徴とする疾患である。現在までに8例のEED関連過成長が報告されている。
診断・検査
発端者におけるEED関連過成長の診断は、これを示唆する所見があることに加え、分子遺伝学的検査でEEDの生殖細胞系列病的バリアントのヘテロ接合が確認されることをもって確定する。
臨床的マネジメント
症状に対する治療:
発達遅滞/知的障害については、子どものニーズに合わせた発達支援や教育的介入を行うべく、早期に紹介を行う必要がある。癲癇発作、頸椎不安定性、口蓋の異常、脊柱後側彎、先天性心疾患、停留精巣、眼科的問題に対しては、標準治療を行う。
サーベイランス :
以下の諸点に関し、通例に従った評価を行う。発達,側彎もしくは変形のみられる脊椎;関節拘縮がみられる場合の関節可動域;眼の屈折異常・近視・斜視
避けるべき薬剤/環境:
頸椎不安定性に関し高リスクであることが考えられるため、急速な頸の動き、ないし頭頸部の外傷が考えられる活動(例えば、コンタクトスポーツや遊園地の絶叫マシン)を避ける。
遺伝カウンセリング
EED関連過成長は、常染色体顕性の遺伝形式をとる。今日までに両親の分子遺伝学的検査を終えた発端者では、その全例がEEDにde novoの形で病的バリアントが現れたものである。発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の遺伝的状態によって変わってくる。
発端者で同定されたEEDの病的バリアントが、両親いずれの白血球DNAからも検出されない場合であれば、同胞への再発リスクは1%と推定される。それは、理論上、親の生殖細胞系列モザイクの可能性が残っているからである。家系内にEED関連過成長と診断された罹患者がいる場合は、高リスクの妊娠に備えた出生前検査、ならびに着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
本疾患を示唆する所見
以下の大所見を有する例については、EED関連過成長を疑う必要がある。
臨床所見
以下のような形で現れる過成長
知的障害,発達遅滞
骨格のX線写真
特徴的頭蓋顔面症候をはじめ本疾患を裏打ちする所見
特徴的頭蓋顔面所見は乳児期から小児期にかけてより顕著にみられるものの、年齢とともに目立ちにくくなる傾向にある。具体的には、丸い顔、目立つ前額(突出し、幅も広い)、両眼開離、低位で幅広で低い鼻梁、低位に見えることがある大きな耳(後部耳輪の瘻孔や耳垂の皺がみられる場合あり)、目立つあるいは長い人中、オトガイ部の横皺、下顎後退などがある。顔面の筋緊張低下により、口が開いたような見え方をする場合がある(図1参照)。
EED関連過成長に特徴的な頭蓋顔面症候がわかる写真が公表されており、アクセス可能である(登録者あるいは機関からのアクセス限定)(Cohenら[2015]の図1,全文はこちらをクリック;Cohen & Gobson [2016] の図2,全文はこちらをクリック;Cooneyら[2017] の図1,全文はこちらをクリック;Imagawaら[2017] の図2,全文はこちらをクリック;Smigielら[2018] の図1,全文はこちらをクリック;Griffithsら[2019] の図1,全文はこちらをクリック)。

図1
罹患男性の生後1日(A)、3.5週(B)、3ヵ月(C)、6ヵ月(D)、1歳(E)、2歳(F)、7歳(G)、11歳(H)、12歳(I)、33歳(J,K,L,M,N,O,P)の写真。
診断の確定
発端者におけるEED関連過成長の診断は、これを示唆する所見がみられることに加え、分子遺伝学的検査で生殖細胞系列におけるEEDの病的バリアント(pathogenicとlikely pathogenicの両方を含む)のヘテロ接合が同定されることをもって確定する(表1参照)。
注:アメリカ臨床遺伝ゲノム学会(ACMG)のバリアントの解釈に関するガイドラインによると、「pathogenic」のバリアントと「likely pathogenic」のバリアントとは臨床の場では同義であり、ともに診断に供しうるものであると同時に、臨床的な意思決定に使用しうるものとされている。本セクションで「病的バリアント」と言うとき、それは、あらゆるlikely pathogenicのバリアントまでを包含するものと理解されたい。
分子遺伝学的検査の進め方については、遺伝子標的型検査(単一遺伝子検査,マルチ遺伝子パネル)と網羅的ゲノム検査(エクソームシーケンシング,エクソームアレイ,ゲノムシーケンシング)を、下記のシナリオに従って組み合わせて用いるやり方が考えられる。
遺伝子標的型検査の場合は、臨床医の側で関与している遺伝子の目星をつけておくことが必要になるが、ゲノム検査の場合、その必要はない。知的障害を伴う過成長(OGID)疾患間の表現型は鑑別の難しい部分がある。そのため、まだ遺伝学的検査を行ってはいないものの、「本疾患を示唆する所見」に記した特徴的所見を示す子どもについては、マルチ遺伝子パネルもしくはゲノム検査で診断がつく可能性が高い(シナリオ1)。一方、OGIDを有している子どもで、すでに遺伝学的検査を実施済ではあるものの、その中にEEDの配列解析が含まれていなかったような例については、単一遺伝子検査で診断がつく可能性がある(シナリオ2)。
シナリオ1
子どもが知的障害を伴う過成長(OGID)疾患の表現型を示すものの、特定の1つの疾患名を考慮するところにまでは至らないといった場合であれば、使用する分子遺伝学的検査は、OGID疾患用マルチ遺伝子パネル、もしくは網羅的ゲノム検査ということになろう。
現況の表現型と直接関係のない遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、疾患の遺伝的原因を特定することに最もつながりやすいと思われるのは、EEDならびにその他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含むマルチ遺伝子パネルである。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
EED関連過成長は稀少疾患であるため、過成長・知的障害用のパネルによっては、このEEDを含まないものになっていることも考えられる。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。遺伝学的検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。
網羅的ゲノム検査が最良の選択肢となる場合もありうる。この場合は、臨床医の側で原因遺伝子の目星をつける必要はない。エクソームシーケンシングが最も広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを選択することも可能である
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。
シナリオ2
多くみられるその他の過成長と知的障害の疾患(「鑑別診断」の項を参照)に対応した分子遺伝学的検査をすでに受けている例で、表現型の特徴からEED関連過成長が疑われるといった場合は、単一遺伝子検査が1つの選択肢となる。
表1:EED関連過成長で用いられる分子遺伝学的検査
| 遺伝子1 | 方法 | その手法で病的バリアント2が検出される発端者の割合 |
|---|---|---|
EED |
配列解析3 |
7人中7人4 |
遺伝子標的型欠失/重複解析5 |
不明6 |
臨床像
EED関連過成長は、胎児期あるいは幼児期の過成長(高身長,大頭症,大きな手足,骨年齢の亢進)と、軽度から重度までばらつきのある知的障害を特徴とする疾患である。図1に示した1罹患者の生後1日から33歳までの写真を参照されたい。
EED関連過成長は、現在までに8例が報告されている[Cohenら2015,Cohen & Gibson 2016,Cooneyら2017,Imagawaら2017,Tatton-Brownら2017,Smigielら2018,Griffithsら2019]。
出生前の成長
分娩時の在胎週数は36週から42週の間である。
出生時体重は、適正から在胎不当過大まで幅がみられ、具体的には、3,550g(在胎週数38週,男性[Smigielら2018])から4,800g(在胎週数36週,女性[Cooneyら2017])、Z値で+0から+4.2の間にあった。現在までに、在胎週数別の平均値を下回る出生時体重を示した例は報告されていない。
出生時身長は、通常、52cm(Z値+0.5)から57cm(Z値+3.0)の間にある。
頭囲は、通常、34cm(Z値-0.78)から37.2cm(Z値+2.0)の間にある。
出生後の成長
身長、体重、頭囲は、小児期から思春期にかけて増加し、それぞれZ値で+2.8から+5.1、+1.4から+3.8、+2.0から+2.6の値を示すようになる。ボディマス指数はおおむね+1.4から+1.8の間にあり、したがって、今日までに得られているデータを見る限り、肥満はEED関連過成長の主要症候ではないように思われる。
世界保健機関のデータを基にした成人期の成長パラメーターのZ値は、身長が+1.85から+3.1、頭囲が+1.46から+3.9の間にあった。Griffithsら[2019]の報告した2成人例は、20歳代中盤でボディマス指数が32.6kg/m2、38.2kg/m2と、肥満領域にあった。レジストリベースの縦断的成長曲線は、まだでき上っていない。
精神運動発達
粗大運動技能、微細運動技能、ならびに音声言語に関する発達指標の遅れが多くの例でみられる。
知的障害は、現在までに報告された全例でみられ、その程度は、軽度[Cohenら2015]、中等度[Cooneyら2017]、重度[Tatton-Brownら2017]とばらついている。協調運動や平衡覚の問題は、成人期まで存続することがある。
罹患者のうち2人は比較的社交的で友好的な性格であったが、別の1人はいくぶん多動で、抑制に欠け、級友に対して時に攻撃的であった。より詳細な検査を受けた別の1例は、問題解決力や記憶力に特異的な弱みがみられたものの、視覚的記憶に相対的強みを示した。
頭蓋顔面
声は、開鼻声、低調、嗄声といった特性を示すことがある。
1例で両側性の口蓋裂、別の1例で口蓋垂裂が報告されている。
骨格
小児期から成人期にかけて、大きな手足がみられる。指は細く長いことがある。幅広の拇指、小さな爪が2例で報告されている。
彎指、関節拘縮、扁平足、内反足がみられることもある。
手の小関節の過可動性、反復性の膝蓋骨亜脱臼や脱臼、皮膚の脆弱性(創傷治癒不良や脆弱な爪)といったものも報告されており、より全身的な結合組織の弛緩をうかがわせるものとなっている。
胸椎の側彎ないし後側彎がしばしば報告されている。
頸椎の狭窄が2例で報告されており、そのうち1例は椎弓切除術と関節固定術を要した。
残りの1例は、第3頸椎レベルの脊髄症を伴っていた。
骨減少症が2例で報告されているが、これは、骨年齢評価や全身の骨格評価を行った際に副次的に発見されたものであった。
それぞれ1例で報告されている骨格所見としては、以下のものがある。
神経
粗大運動技能の発達指標の遅延を伴う筋緊張低下が多くみられる。
歩行はぎこちなく、協調運動の不良がしばしばみられる。
癲癇が1例で報告されており、これとは別に、高インスリン性低血糖に起因する発作が1例報告されている(本セクション中の「内分泌」の項を参照)。
脳の画像診断では、非特異的脳室拡大が1例で、中等度から重度の脳梁の菲薄化と白質の欠損(前頭葉にとりわけ多くみられた)が1例で確認されており、2例とも中等度の知的障害を有していた。
数例では、脳の画像診断で異常はみられなかった。
皮膚
皮膚所見としては以下のようなものがみられた。
ヘルニア
鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアがみられることがある。外科的対応が必要な大きさに達する臍ヘルニアが現れることもある。
心血管
構造的心奇形(動脈管開存,中隔欠損,軽度あるいは中等度の僧帽弁逸脱)の報告がみられる。
腎尿路生殖器
複数の男性で両側性の停留精巣が報告されており、これに対し外科的改善を要する場合がある。
腎肥大と集合管重複を伴う1女性が確認されている。
眼
眼所見としては、両眼開離、内眼角開離、遠視、近視、外斜視、乱視、斜視などがある。上眼瞼外側部にかけての斜下を伴う眼瞼裂の垂直的、水平的狭小化の報告もみられる。また、論文に掲載された写真の専門家パネルによるレビューにて、下眼瞼外側部の反転が指摘された例もみられる。
以下は、それぞれ1例のみで報告されたものである。
難聴
呼吸器
新生児呼吸窮迫がみられることがある。また、外科的介入を要する顕著な気管軟化症と、呼吸器感染症の頻発を示した1例がある。
摂食/消化器
摂食/消化器の所見としては、以下のようなものがある。
内分泌
癌の易罹患性
生殖細胞系列にEEDの病的バリアントを有する罹患者で、良性腫瘍あるいは悪性腫瘍が発生した例は、これまでのところ報告されていない。ただ、理論上は、血液癌や悪性末梢神経鞘腫瘍といったある種の癌について、リスクが高まる可能性が考えられる(「分子遺伝学」の項を参照)。
遺伝型-表現型相関
今のところ、報告例が8例に過ぎないため、遺伝型-表現型相関を論じるに十分なデータは揃っていない。
浸透率
過成長を引き起こす生殖細胞系列のEEDコーディングバリアントは、その大多数がde novoであるため、浸透率は高いものと推定される。継承されたEEDコーディングバリアントの浸透率の推定値は、まだ得られていない。
発生頻度
EED関連過成長は、現在までに8例が報告されている。
その起源は、トルコ人[Cohenら2015]、ヨーロッパ系アメリカ人[Cohen & Gibson 2016]、ヒスパニック系アメリカ人[Cooneyら2017]、日本人[Imagawaら2017]、ポーランド人[Smigielら2018]である。また、イギリスの国際コンソーシアムで3例が確認されている[Tatton-Brownら2017,Griffithsら2019]
EEDの生殖細胞系列病的バリアントに関連するものとしては、今のところ、本GeneReviewで論じたもの以外の表現型は知られていない。
表2:EED関連過成長との鑑別診断に際して検討対象となる大頭症と知的障害を伴う常染色体顕性疾患
最初の診断に続いて行う評価
EED関連過成長と診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、診断に至る過程ですでに実施済でなければ、表3にまとめた評価を行うことが推奨される。
表3:EED関連過成長の最初の診断後に行うことが推奨される評価
| 系/懸念事項 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 成長 | 出生前の超音波検査で得られたパラメーターの数値や出生時のパラメーターの数値を、評価時あるいは分娩時に、胎齢に従った形でグラフ上にプロットする。 | Z値が胎齢相応の標準値を大きく上回る場合がある(例;在胎36週の平均値に比べ、出生時の頭囲が+2.4SDを示す)。 |
| 神経 | 神経発達評価 | 言語療法士、作業療法士、理学療法士による評価を検討する。 |
| 神経心理学的評価 | 行動の問題に関して行う。 | |
| 癲癇発作が疑われる場合は、脳波 | 発作性疾患の管理に関し神経内科医に紹介。 高インスリン血症の可能性を排除しておくこと。 |
|
| 脊髄圧迫と脊柱管狭窄に関する評価のための頸椎のCT | 徴候や症候から妥当と判断される場合にのみ行う。必要に応じ脳神経外科医へ紹介。 | |
| MRI | 脳の構造的異常を調べるため、選択的に行われることあり。 乳幼児はMRIに際して鎮静あるいは麻酔が必要になることがあるので、撮影時期は、その他の状況(例えば癲癇発作)次第といった要素あり。 |
|
| 口腔咽頭 | 口蓋奇形の診査 | 必要に応じ、頭蓋顔面チームあるいは耳鼻科医へ紹介。 |
| 骨格 | 骨格奇形(例えば、脊柱側彎・後彎,関節可動性の制限,反復性脱臼)の評価 | 必要に応じ、整形外科医へ紹介。 |
| 骨減少症に関する評価 | すでに骨折を経験している場合は、将来の骨折リスクを定量化するための骨密度測定を検討する。 | |
| 皮膚 | 色素性母斑に関する診査 | 悪性化の可能性を考え、臨床的モニタリング。 |
| 心臓 | 心エコー | 構造的心疾患に関する評価のため。 |
| 腎尿路生殖器 | 男性:停留精巣に関する診査 全例:臍ヘルニアに関する診査 |
|
| 腎超音波検査 | 構造的腎奇形に関する評価 | |
| 眼 | 眼科的評価 | 斜視、近視、屈折異常に関する評価 |
| 聴覚 | 聴覚評価 | 新生児期の聴覚スクリーニングは不十分な場合あり。 言語発達遅延があるときや、入学時のような節目に聴覚スクリーニングを追加することを検討。 |
| 内分泌 | 新生児期に血糖値の評価 | 不活発ないし摂食哺乳不良の場合に行う。 癲癇発作の場合は、血糖とインスリンを同時に測定する。 |
| 雑/その他 | 臨床遺伝医ないし遺伝カウンセラーとの面談 |
症候に対する治療
治療は対症療法となる。本疾患に特異的な治療は特にない。適切な介入を表4にまとめた。表4:EED関連過成長罹患者の症候に対する治療
| 症候/懸念事項 | 治療 | 考慮事項/その他 |
|---|---|---|
| 発達遅延/知的障害 | 発達支援/特別支援教育に向けた早期の紹介 | この表に続く本文を参照。 |
| 発作性障害 | 神経内科医による標準治療 | 脚注1参照 |
| 頸椎不安定性 | 不安定性が重度で、神経障害がみられる、もしくは生じそうなときは、外科的介入を行う。 | 経験豊富な脳神経外科医のほうから、予防法を中心としたアドバイスを行うことが推奨される。 |
| 口蓋裂 | 口蓋裂/頭蓋顔面チームによる管理 必要に応じ、下顎後退を改善するための矯正歯科治療 |
|
| 脊柱側彎/後彎 | 整形外科医による標準治療 | |
| 先天性心疾患 | 心臓病専門医による標準治療 | |
| 停留精巣,鼠径ヘルニア | 泌尿器科医による標準治療 | |
| 斜視,屈折異常,白内障 | 眼科医による標準治療 | |
| 高インスリン性低血糖 | 血糖に関する治療;オクトレオチドを検討 | 低血糖ないし高インスリン血症が残存する場合は、内分泌内科的評価が推奨される。 |
| 関節拘縮ないし筋緊張亢進 | 必要に応じ、理学療法/外科手術 |
発達遅滞/知的障害の管理に関する事項
以下に述べる内容は、アメリカにおける発達遅滞者、知的障害者の管理に関する一般的推奨事項を挙げたものである。ただ、こうした標準的推奨事項は、国ごとに異なったものになることもあろう。
0-3歳
作業療法、理学療法、言語治療、摂食治療、乳児のメンタルヘルスサービス、特別支援教育、感覚障害支援が受けられるよう、早期介入プログラムへの紹介が推奨される。早期介入プログラムは、アメリカでは連邦政府が費用を負担して、罹患者個人の治療上のニーズに対する在宅サービスが受けられる制度で、すべての州で利用可能である。
3-5歳
アメリカでは、地域の公立学区(訳注:ここで言う「学区」というのは、地理的な範囲を指す言葉ではなく、教育行政単位を指す言葉である)を通じて発達保育園に入ることが推奨される。入園前には、必要なサービスや治療の内容を決定するために必要な評価が行われ、その上で、運動、言語、社会性、認知等の機能の遅れをもとに認定された子どもに対し、個別の教育計画(IEP)が策定される。通常は、早期介入プログラムがこうした移行を支援することになる。発達保育園は通園が基本であるが、医学的に不安定で通園ができない子どもに対しては、在宅サービスの提供が行われる。
全年齢
各地域、州、教育関係部局が適切な形で関与できるよう、そして、良好な生活の質を最大限確保する支援を親に対してできるよう、発達小児科医とよく話をすることが推奨される。
押さえておくべき事項がいくつかある。
それを超える部分については、罹患児のニーズに基づいて、自費での支援治療が検討されるようなこともある。行う治療の種類については、発達小児科医が個別に推奨を行う。
IEPサービスを受ける人たちのため、公立学区はその人が21歳になるまでサービスを提供しなければならないことになっている。
DDAは、アメリカの公的機関で、認定を受けた人に対してサービスや支援を提供している。認定基準は州によって異なるものの、ふつうは、診断名やそれに伴う認知/適応障害の度合に従って決定がなされる。
運動機能障害
粗大運動機能障害
微細運動機能障害
摂食、身だしなみ、着替え、筆記などの適応機能に問題が生じる微細運動技能の障害に関しては、作業療法が推奨される。
コミュニケーションの問題
表出言語に障害をもつ罹患者に対しては、それに代わるコミュニケーション手段(例えば、拡大代替コミュニケーション[AAC])に向けての評価を検討する。AACに向けた評価は、その分野を専門とする言語治療士の手で行うことが可能である。この評価は、認知能力や感覚障害の状況を考慮に入れながら、最も適切なコミュニケーションの形を決めていこうというものである。AACの手段としては、絵カード交換式コミュニケーションシステムのようなローテクのものから、音声発生装置のようなハイテクのものまで、さまざまなものがある。一般に信じられていることとは反対に、AACはスピーチの発達を妨げるようなものではなく、むしろ理想的な言語発達に向けた支援を与えてくれるものである。
社会/行動上の懸念事項
小児に対しては、応用行動分析(ABA)をはじめとする自閉症スペクトラム障害の治療で用いられる治療的介入の導入に向けた評価を行うとともに、実際にそれを施行することがある。ABA療法は、個々の子どもの行動上の強みと弱み、社会性に関する強みと弱み、適応性に関する強みと弱みに焦点を当てたもので、ふつう、行動分析に関する学会認定士との1対1の場で行われる。
発達小児科医を受診することで、両親に対し、適切な行動管理の指針を指導したり、必要に応じ、薬剤の処方を行ったりといったことが可能になる利点がある。
これまでのところ、EED関連過成長については、自閉症その他の重大な行動上の問題は報告されていない。EED関連過成長過成長罹患者において、自閉症、重大な行動障害、ないしその他の大きな精神医学的問題がみられる場合には、これらについて別の原因が隠れていないか調べてみる必要があろう。
定期的追跡評価
表5:EED関連過成長罹患者で推奨される定期的追跡評価
| 系/懸念事項 | 評価 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| 神経 | 発達評価 |
各種治療間の調整を図り、教育的ニーズに対応することを目的として、通常の間隔で行う。 |
神経内科医による評価 |
癲癇を有する罹患者について、通常の間隔で行う。 |
|
頸椎不安定性1/脊柱管狭窄に関するスクリーニング |
徴候・症候の状態に従って行う。 |
|
| 筋骨格 | 脊柱側彎や脊椎奇形に関する評価 |
来院ごと |
関節拘縮 |
必要に応じ、理学療法、外科手術 |
|
| 眼 | 屈折異常、近視、斜視のスクリーニングのための眼科医による評価 |
通常の間隔で行う。 |
| 内分泌 | 血糖/インスリン値 |
高インスリン性低血糖が2例確認されている(1人は新生児)。 |
これまでのところ、生殖細胞系列におけるEEDの病的バリアントに起因するEED関連過成長罹患者に悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)がみられたとの報告は存在しないものの、悪性のMPNSTにEEDの体細胞病的バリアントが確認されている[Leeら2014](「分子遺伝学」,「癌ならびに良性腫瘍」の項を参照)ことから、MPNSTを疑わせる病変がみられた場合には、神経線維腫症1型罹患者でみられる同様の病変に適用されるガイドラインに従って、臨床診査や画像診断によるフォローを行うべきことが示唆される。
避けるべき薬剤/環境
運動中に頸部が動かされたことにより生じた神経障害に対して外科的介入が必要になった1例が存在する。頸部が急激に動かされる活動、ないし、頭頸部に外傷が及ぶ可能性のある活動(例えば、コンタクトスポーツや遊園地の絶叫マシン)への注意喚起が必要である。
PRC2複合体(これにはEEDタンパク質が含まれている)の活性を阻害する薬理作用を有する薬剤については、その副作用が増強される可能性が考えられる。また、EED関連過成長罹患者については、これらの薬剤の有効性が一般の人と異なってくる可能性が考えられる。
リスクを有する血縁者に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。
さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」 -編集者注
遺伝形式
EED関連過成長は、常染色体顕性の遺伝形式をとる。
家族構成員のリスク
発端者の両親
発端者の同胞
発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の遺伝的状態によって変わってくる。
発端者で同定されたEEDの病的バリアントが、両親いずれの白血球DNAからも検出されない場合は、同胞への再発リスクは1%と推定される。それは、理論上、親の生殖細胞系列モザイクの可能性が残っているからである[Rahbariら2016]。
発端者の子
現在のところ、EED関連過成長罹患者が生殖能力を有するとは考えられていない。
他の家族構成員
EED関連過成長罹患者については、すでに両親の検査を済ませているすべての例が、EEDに生じたde novoの病的バリアントに起因する例であったことから、他の血縁者が有するリスクは低いものと推定される。
関連する遺伝カウンセリング上の諸事項
家族計画
出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査
家系内の1人でEED関連過成長の分子診断が確定している場合は、高リスクの妊娠に備えた出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。
GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。
分子遺伝学
分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。
表A:EED関連過成長:遺伝子とデータベース
| 遺伝子 | 染色体上の座位 | タンパク質 | HGMD | ClinVar |
|---|---|---|---|---|
| EED | 11q14.2 | ポリコーム群タンパク質EED | EED | EED |
データは、以下の標準資料から作成したものである。遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。
表B:EED関連過成長関連のOMIMエントリー(閲覧はすべてOMIMへ)
| 605984 | EMBRYONIC ECTODERM DEVELOPMENT; EED |
| 617561 | COHEN-GIBSON SYNDROME; COGIS |
遺伝子構造
EED(NM_003797.4)は、2,476bpのサイズで、12のコーディングエクソンから成る。開始コドンはエクソン1内にあり、441のコーディング残基がある(NP_003788.2)。RefSeqの転写産物として、NCBIのリストにはこれとは別に2つのものが載せられている。NM_001308007.1(エクソン9と10の間にもう1つエクソンがあり、全体で2,551bp)とNM_001330334.1(エクソン8と9がスキップされたもので、全体で2,236bp)がそれである。ただ、一次転写産物としては、通常、NM_003797.4のほうが使用される。選択的転写産物のほうのもつ意味は、今のところよくわかっていない。
遺伝子ならびにタンパク質に関する情報の詳細は、表Aの「遺伝子」の欄を参照のこと。
病的バリアント
現在までに報告されている8種の病的バリアントのうちの7つまでが、エクソン6-9に生じたミスセンスバリアントであり、残りの1つは2つのアミノ酸に影響を及ぼすインデルである。完全な家系解析が可能だった例では、すべての病的バリアントがde novoだったことが明らかになっている。
集団ベースでみたときのEEDの病的バリアントの出現頻度については、よくわかっていないものの、ミスセンスもしくは機能喪失型の効果をもつと予測されるEEDの複数のバリアントが、ExACとgnomADの集団サンプル中で報告されている(それぞれ、217/60,706と538/138,632)。こうしたデータから、大雑把に見積もって、意義不明のレアバリアントの集団中での出現頻度は、0.4%程度と考えられる。
表6:EEDの注目すべき病的バリアント
| DNAヌクレオチドの変化 | 予測されるタンパク質の変化 | 参照配列 |
|---|---|---|
| c.581A>G | p.Asn194Ser | NM_003797.4 NP_003788.2 |
| c.706A>G | p.Arg236Gly | |
| c.707G>C | p.Arg236Thr | |
| c.710A>G | p.Asp237Gly | |
| c.772C>T | p.His258Tyr | |
| c.904A>G | p.Arg302Gly | |
| c.906A>C(もともとは1372A>Cと報告されていた) | p.Arg302Ser | |
| c.917_919delinsCGG | p.Arg306_Asn307delinsThrAsp |
上記のバリアントは報告者の記載をそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独自に変異の分類を検証したものではない。GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準拠している。
命名規則の説明については、Quick Referenceを参照のこと。
正常遺伝子産物
ヒト胚外胚葉発生(embryonic ectoderm development;EED)遺伝子は441のアミノ酸残基から成るタンパク質(NP_003788.2)をコードしている。EEDは、非近縁種間で高度に保存されており、ユビキタスな発現を示す。EEDは、ポリコーム抑制複合体2型(PRC2)のコアメンバーである。PRC2の他のメンバーには、EZH2、SUZ12、RBBP7、RBBP4などがあり、これらとEEDとの複合体は、PRC2のリシンメチル基転移酵素の活性を保つ上で必要なものと考えられている。
EEDにはWD40ドメインが7つ存在するが、これらの機能が重複しているのか、それとも独自の機能を有しているのかという点については、今もってよくわかっていない。EEDのC末端ドメインは、トリメチル化されたH3K27(すなわち、H3K27me3)ヒストンテイルに特異的に結合するが、この機能は、有糸分裂後のもともと十分なH3K27のマーキングをもたない娘細胞にH3K27me3のマーキングを付与する上で必要なものと考えられている。
一般に、PRC2は、転写のサイレンシング維持に関与する1つの中心的なクロマチン修飾因子である。PRC2媒介性のH3K27トリメチル化は、局所的なDNA転写抑制と相関すると考えられている。H3K27me3のマーキングが次々と正しく付与されていくことは、新たに合成されたクロマチンに抑制ドメインが存続していく上で必要であると考えられている[Margueronら2009]。
異常遺伝子産物
Ex vivoのアッセイで、p.(Arg236Thr)の病的バリアントを有する1日本人罹患者由来のリンパ芽球細胞株において、ウェスタンブロッティング法でみたときのH3K27トリメチル化レベルの低下が確認された。これは、変異したPRC2複合体の、この基質に対するメチル基転移酵素活性の低下と整合するものであった[Imagawaら2017]。これらのデータは、EED関連過成長がEEDタンパク質の部分的機能喪失に起因して引き起こされるものであることを示唆している。
今のところ、EEDの生殖細胞系列病的バリアントに起因するEED関連過成長罹患者に悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)が生じたとの報告はみられないものの、MPNST患者にEEDの体細胞バリアントがみられる[Leeら2014]ことから考えて、EED関連過成長罹患者もまた、こうした腫瘍に関して高リスクであることが示唆される。
Wassef & Margueron [2017]は、PRC2の変化がEEDの体細胞バリアントを示すMPNSTその他の癌において果たしている役割に関するレビューを行っている。
Gene Reviews著者: Ana Sequerra Amram Cohen, PhD and William Thomas Gibson, MD, PhD, FRCPC, FCCMG.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日:2019.4.11. 日本語訳最終更新日: 2023.1.15.[in present]
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