COL1A1COL1A2関連骨形成不全症
(COL1A1- and COL1A2-Related Osteogenesis Imperfecta)

[Synonyms:Brittle Bone Disease, OI.]

Gene Reviews著者: Mercedes Rodriguez Celin, MD, Robert D Steiner, MD, and Donald Basel, MD.
日本語訳者:瀬戸 俊之 (大阪公立大学大学院医学研究科臨床遺伝学)

GeneReviews最終更新日: 2025.5.29.  日本語訳最終更新日:  2025.7.11.

原文: COL1A1- and COL1A2-Related Osteogenesis Imperfecta


要約


含まれる病型

疾患の特徴

COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症(COL1A1/COL1A2-OI)は、骨折(多くの場合、ささいな外傷または外傷のエピソードなし)、多様性のある象牙質形成不全症(dentinogenesis imperfecta: DI)、および難聴(通常は成人期)が特徴である。COL1A1 / COL1A2-OIの重症度は、周産期致死型から重度の骨格変形、運動障害、および重度の低身長を伴う患者、そして骨折素因がわずかで歯列、身長、寿命が正常な個人までと範囲は広い。骨折はどの骨にも発生する可能性があるが、四肢が最も一般的である。DIは、半透明に見え、摩耗したり破折しやすい灰色または茶色の歯が特徴である。COL1A1/COL1A2-OIは、臨床症状とX線所見に基づいて4型に分類される。この分類システムは完璧ではないが、患者の予後と管理に関する情報提供に役立つ。一般的な4つのOI病型は、現在次のように呼ばれている:青色強膜を伴う古典的非変形型OI(以前はOIタイプI)、周産期致死型OI(以前はOIタイプII)、変形進行型OI(以前はOIタイプIII)、正常強膜を伴う一般可変型OI(以前はOIタイプIV)。

診断・検査

COL1A1/COL1A2-OIの診断は、分子遺伝学的検査によるCOL1A1またはCOL1A2ヘテロ接合体の同定により、OIの臨床症状およびX線写真症状を伴う発端者で確立される。

臨床的マネジメント

症状に対する治療:
理想的には、OI(骨形成不全症)の医療管理に特化した専門医を含む多職種チームによって管理されるべきである。保護者や介護者には、安全な抱き方・接し方の技術を教育する。変形を最小限に抑えるために体位を変えることが推奨される。乳児が十分に頭部および体幹を支えられるようになってから、座位をとるようにする。
理学療法および作業療法は、骨の安定性を高め、移動能力を改善し、拘縮および頭部・脊椎の変形を防ぎ、筋力を向上させることが目的である。運動は理学療法士の指導の下で行う。
関節弛緩を安定させるために装具などの移動補助具を使用する。疼痛管理は薬物療法と非薬物療法の組み合わせで行われる。骨折に対しては、できる限り短期間の固定で対応し、小型・軽量のギプスを使用し、ギプス除去後は速やかに理学療法を開始する。必要に応じて、骨の解剖学的な位置を保つために髄内釘固定術を行うことがある。OIの重症度に応じて四肢の装具使用が検討される。

麻酔管理では、適切な体位保持、術中管理、術後鎮痛など、特別な配慮が必要である。重症のOIによる進行性脊柱側弯症は、保存療法や手術療法に対する反応が乏しい場合がある。
ビスホスホネート製剤は、椎体骨折、頻回の長管骨骨折、または重症のOI患者において、最も広く継続使用されている。
症状のある頭蓋底陥入症(basilar impression)に対する外科的治療は、経験豊富な医療施設で行うべきである。歯科治療は、乳歯および永久歯の維持、機能的な咬合、最適な歯肉の健康、外見の改善を目指す。
伝音性難聴は中耳手術により改善されることがある。後発性の感音性難聴には標準治療が行われる。眼の損傷を防ぐために保護眼鏡を使用し、眼科手術は慎重に行う必要がある。
栄養指導は、身長に対して適正な体重を維持するために重要である。他の消化器疾患や心臓・肺の疾患については、標準治療が行われる。呼吸器疾患予防のために、小児および成人の標準的な予防接種を受けることが推奨される。
精神科・心理学・ソーシャルワークによるメンタルヘルス支援は、生活の質の向上に役立つ。

サーベイランス:
整形外科の評価は、生後1歳までは3ヵ月ごと、1〜3歳までは6ヵ月ごと、その後は毎年、または新たな骨折や筋骨格系の問題が生じた場合に実施する。成長は、幼児期から思春期を通じてすべての受診時に評価する。運動発達遅滞がある乳児には、リハビリテーション科および理学・作業療法の評価を行い、年長児や成人でも必要に応じて実施する。痛みの評価はすべての受診時に行う。

骨疾患の専門医による評価(ビタミンDレベルの測定を含む)を行い、その頻度は年齢とOIの重症度に応じて決定する。骨密度測定(DXAスキャン)は5歳から開始し、その後のスキャンの間隔は、OIの重症度、初回結果、および薬物治療状況に応じて調整する。扁平頭蓋(platybasia)、中等度〜重度のOI、または懸念される症状・所見がある患者には、頭蓋底を含むCTやMRIによる評価を行う。軽症者であるポーツ活動への参加を予定している場合や(検査に)協力可能な子どもには、頸椎の屈曲・伸展時のX線撮影を行う。DIがある、またはそのリスクがある場合には、乳幼児期から6ヵ月毎の歯科検診を行う。DIがない場合でも年1回の歯科検診が推奨される。聴力検査は5歳から3年ごとに実施し、聴力低下が認められたら、それ以降は症状と治療内容に応じて検査頻度を調整する。成人には2〜3年毎、または必要に応じて眼科検診を行う。栄養と摂食に関する評価は年1回、または必要に応じて行う。消化器の問題は診察毎に評価する。必要に応じて心血管疾患の症状を確認する。受診毎に呼吸器の問題を評価し、肺疾患がある場合には呼吸器の専門的評価を検討する。成人には1〜2年ごとに肺機能検査を行い、睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合には睡眠検査を実施する。メンタルヘルスの評価および必要に応じた遺伝カウンセリングを行う。すべての受診時に家族や社会的支援のニーズを評価する。

避けるべき環境・薬剤:
小児では、急激な加速・減速の動作を避け、子どもを空中に投げるなどの行為は避ける。おむつ替えの際に足首を持って持ち上げると局所的な圧力がかかるため避ける。コンタクトスポーツや転倒・衝突のリスクが高い運動は避ける。肺疾患のリスクを減らすために、喫煙および受動喫煙を避ける。過度のアルコールやカフェインの摂取も避ける。ステロイドなど、骨の健康に影響を与える可能性のある物質・薬剤の使用は、制限または回避を検討する。

At risk血縁者の評価:
症状のない年長または年少の親族であっても、遺伝的状態を確認することが適切である。これにより、脊椎、眼科、歯科、聴覚に関する評価が早期に行え、適切な管理が可能になる。

妊娠管理:
重度の骨格変形および低身長を伴うOI女性は、ハイリスク妊婦として、専門の産科施設で妊娠期間中に綿密な管理を受ける必要がある。

遺伝カウンセリング

COL1A1-OIとCOL1A2-OIは常染色体顕性遺伝である。軽症COL1A1/COL1A2-OIと診断された多くの多くは、罹患した親から病的バリアント受け継いだ結果としてこの障害を有する。家系内で孤発例が生じる割合は、疾患の重症度によって異なる: 軽症の骨形成不全症(OI)では、約60%の発端者が孤発例である。一方で、進行性の変形を伴うタイプや出生前後に致死的となるOIの発端者は、ほぼ100%が孤発である。発端者が家族内で唯一の患者のように見える場合でも、その原因は、発端者に新たに生じた(de novo)病的バリアントによるCOL1A1/COL1A2-OIである可能性がある。または、性腺モザイク(あるいは体細胞および生殖細胞モザイク)を有する親の体内で受精後に新たに生じた(postzygotic de novo)病的バリアントによる場合もある。COL1A1/COL1A2-OIの子どもを持つ親におけるモザイクの全体的な割合は最大16%と報告されている。COL1A1/COL1A2-OIを有する個人の子どもは、原因となる遺伝子変異を50%の確率で受け継ぐ可能性がある。一度、家族内の罹患者でOIの原因となる遺伝子変異が特定されれば、出生前診断や着床前診断訳注2(PGT)が可能となる。OIの診断に経験を持つ医療施設で行う超音波検査は、妊娠20週以前における致死型または最重症型のOIの出生前診断に有用である。軽症型については、骨折や骨変形が認められる場合、妊娠後期になってから診断されることがある。

訳注1:本稿ではcommon variable typeを(免疫疾患のCVIDを参考に)一般可変型と訳した。意味としては、「臨床では比較的よく見られるが症状や重症度に個人差がある型」と考えられる。
訳注2:出生前遺伝子検査、着床前遺伝子検査は、日本で広く用いられている出生前診断、着床前診断という用語で統一した。


診断

OIを示唆する所見

COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症は、以下の臨床症状、X線写真、および検査所見および家族歴のある個人で疑う必要がある。

臨床所見(表1参照)

ずかな、または全く外傷がない状態で生じる骨折

表1.COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症:タイプ別の臨床所見

病型 重症度 骨折 骨変形 身長 DI 強膜 難聴
青色強膜を伴う古典的非変形型OI  
(OIタイプI)
軽症 少数から100 あまり見られない 正常か家族に比べてやや低い まれ 青または灰色 小児期にはまれで、成人期に増加(30歳代以降)
周産期致死型OI
(OIタイプII)
周産期致死型 多発性肋骨骨折、最小限の頭蓋静脈石灰化、板状脊椎、長骨の顕著な圧迫 重症 重度の低身長 + 濃い青 NA
変形進行型OI
(OIタイプIII)
重症 頻回の骨折を伴う薄い肋骨、扁平椎、細くて華奢な骨。ポップコーン様の骨端がよくみられる 中等症~重症 非常に低身長 + 青い 頻度は高くないが早期発症
正常強膜を伴う一般可変型OI  (OIタイプIV) 中等症~軽症 多発骨折 軽度~中程度 様々な程度の低身長 ± 正常~灰色 頻度は高くないが早期発症

DI = 象牙質形成不全症; NA = 該当なし。OI = 骨形成不全症

X線所見は年齢とともに変化する。主な所見は下記の通り(表2を参照)。

表2.COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症:タイプ別のX線所見

病型 重症度 頭蓋骨 脊柱 四肢
青色強膜を伴う古典的非変形型OI  
(OIタイプI)
軽症 出現に個人差のあるワーミアン骨 (35%) タラ椎骨(成人) 薄い皮質骨
  • 低骨量、細い骨
  • 子宮内での長管骨骨折折や弓状変形は非常にまれ。
周産期致死型OI
(OIタイプII)
周産期致死型 低石灰化、石灰化のプラーク 扁平椎
  • 重度の変形
  • 幅広で、しわしわで、曲がった大腿骨
  • 数珠状肋骨を伴う狭い胸郭(特異的所見)
  • 出生前からみられる長管骨の短縮、湾曲、骨折、および著明な形成不全(太くてしわしわした外観)
変形進行型OI
(OIタイプIII)
重症
  • ワーミアンの骨は96%に存在
  • 70%に扁平頭蓋が存在
タラ椎骨、亀背 末広がりの骨幹端(小児期ではポップコーンのような外観)、弯曲した薄い骨皮質
  • 細い肋骨、重度の骨粗鬆症、頭蓋骨骨化の欠落および長管骨の弯曲
  • 子宮内および周産期の骨折が頻回
正常強膜を伴う一般可変型OI  (OIタイプIV) 中等症~軽症
  • ワーミアン骨は78%に存在し
  • 扁平頭蓋が20%に存在
タラ椎骨 薄い骨皮質 骨折は妊娠第3期に、時には周産期に生じることがある

OI = 骨形成不全症
Semler et al [2010]Cheung et al [2011]Van Dijk & Sillence [2014]Nishimura et al [2023]に基づく

検査所見通常はビタミンD、カルシウム、リン、およびアルカリホスファターゼの血清濃度は正常。ただし、あるカリホスファターゼは、骨折に応答して急激に上昇する可能性がある。

家族歴は常染色体顕性遺伝形式をとる(例えば、複数世代にわたる罹患男性と女性)。軽症OIを有する発端者の約60%、および変形進行型または周産期致死型OIを有する発端者のほぼ100%が孤発性でである。彼らはde novoの病的バリアントまたは体細胞および/または性腺モザイクの親訳注3から受け継いだ病的バリアントを有するため、明かな家族歴がないからといって診断が妨げられるわけではない。
(訳注3:この方々は無症状)

診断の確立

COL1A1/COL1A2-OIの診断は、分子遺伝学的検査によるCOL1A1またはCOL1A2ヘテロ接合性の病的(病的バリアントの可能性)バリアントの同定により、OIを示唆する臨床所見およびX線所見を伴う発端者で診断される(表3を参照のこと)。
注:(1)ACMG/AMPバリアント解釈ガイドラインによると、「病的(pathogenic)バリアント」と「病的バリアントの可能性(likely pathogenic)」という用語は臨床現場で同義語であり、どちらも診断的と見なされ、臨床上の意思決定に使用できることを意味する[Richards et al 2015]。このGeneReviewにおける「病的バリアント」への言及は、おそらく病的バリアントを含むと理解されている。(2)意義が不明なヘテロ接合型COL1A1またはCOL1A2バリアントの同定は、診断を確定または除外するものではない。

分子遺伝学的検査のアプローチには、遺伝子標的検査(同時遺伝子検査、マルチ遺伝子パネル)と網羅的(包括的)ゲノム検査(エクソームシーケンシングゲノムシーケンシング)の組み合わせが含まれる。遺伝子標的検査では、臨床医がどの遺伝子が関与している可能性が高いかを判断する必要があるが(オプション1を参照)、包括的なゲノム検査ではそうではない(オプション2を参照)。

オプション 1

表現型および検査所見がCOL1A1/COL1A2-OIの診断を示唆している場合、分子遺伝学的検査アプローチには、同時遺伝子検査またはマルチ遺伝子パネルの使用が含まれる。

オプション 2

表現型が骨の脆弱性および/または骨格異形成を特徴とする他の様々な遺伝性疾患と区別できない場合で網羅的(包括的)ゲノム検査を考える場合は、臨床医は最初にどの遺伝子が関与している可能性が高いかを想定して検査する必要はない。エクソームシーケンシングが最も一般的に使用される。ゲノムシークエンスも可能である。
網羅的ゲノム検査の紹介については、ここをクリック。ゲノム検査を注文する臨床医向けの詳細情報は、こちら。

表3. COL1A1およびCOL1A2関連骨形成不全症における分子遺伝学的検査

遺伝子1, 2 OI診断受けた患者において病的バリアントが生じる遺伝子の割合 検査方法の違いによる病的バリアントの検出割合3
シーケンス解析4 遺伝子標的欠失・重複解析 5

COL1A1

~5%-70%6

>95%7

1%-2%8

COL1A2

~5%-306

>95%7

1%-2%8

  1. 遺伝子はあるファベット順にリストされている。
  2. 染色体遺伝子座とタンパク質については、表A.遺伝子とデータベースを参照のこと。
  3. これらの遺伝子で検出されるバリアント情報については、分子遺伝学参照。
  4. 配列解析では良性(benign)、良性である可能性(likely benign)、病的意義不明(VUS)、病的である可能性(likely pathogenic)、または病的(pathogenic)のいずれかの評価でバリアントが検出される。バリアントには、ミスセンスナンセンス、およびスプライス部位のバリアント、および小さな遺伝子内欠失/挿入が含まれる場合がある。通常、エクソンまたは全遺伝子の欠失/重複は検出されない。配列解析結果の解釈で考慮すべき事項については、ここをクリック。
  5. 遺伝子標的欠失/重複解析は、遺伝子内の欠失または重複を検出する。使用される方法には、定量的PCR、long PCR、マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)、単一エクソンの欠失または重複を検出するように設計された遺伝子標的マイクロアレイなど、さまざまな手法が含まれる。エクソームおよびゲノムシーケンシングは、切断点検出または読み取り深度を使用して欠失/重複を検出できる場合がある。ただし、感度は遺伝子標的削除/重複解析よりも低くなる可能性がある。
  6. PHバイヤーズ、パーソナルコミュニケーション
  7. 病的バリアントを検出するためのCOL1A1およびCOL1A2相補的DNAの配列解析 mRNAの配列または安定性を変化させる病的バリアントを検出するためのCOL1A1およびCOL1A2ゲノムDNAのコード配列および配列解析により、これら2つの遺伝子の病的バリアントがほぼ100%特定される。
  8. Van Dijk et al [2010] およびヒト遺伝子突然変異データベースのサブスクリプションベースの専門家の視点から得られたデータ [Stenson et al 2020]

遺伝子レベルでの関連疾患

分子遺伝学的検査訳注4 
(訳注4:原文ではこの項目は最後に位置しているがGRJ様式に従ってここに挿入した)

Molecular GeneticsおよびOMIMの表の情報は、GeneReviewの他の場所の情報とは異なる場合がある。

表 A.
COL1A1およびCOL1A2関連骨形成不全症:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体遺伝子座 タンパク質 座位特有のデータベース HGMD ClinVある
COL1A1 17q21.33 コラーゲンα-1(I)鎖 COL1A1 @ LOVD COL1A1 COL1A1
COL1A2 7Q21.3 コラーゲンα-2(I)鎖 骨形成不全症突然変異データベース COL1A2 COL1A2 COL1A2

データは、HGNC由来の遺伝子;OMIMからの染色体遺伝子座UniProtのタンパク質。 リンクが提供されているデータベース(Locus Specific、HGMD、ClinVある)の説明については、ここをクリック。

表B.
COL1A1 および COL1A2 関連の骨形成不全症の OMIM エントリ (OMIM掲載の全表示)

120150 コラーゲン、I型、ALPHA-1;COL1A1
120160 コラーゲン、I型、ALPHA -2;COL1A2
166200 骨形成不全症、I型;OI1
166210 骨形成不全症、II型;OI2
166220 骨形成不全症、IV型;OI4
259420 骨形成不全症、III型;OI3

分子病因
COL1A1およびCOL1A2は、ほとんどの結合組織に見られ、骨、角膜、真皮、および腱に豊富に存在する線維形成コラーゲンであるI型コラーゲンのα-1およびα-2鎖をコードしている。I型コラーゲンは、2つのα-1鎖と1つのα-2鎖からなるヘテロ三量体である。最初に各末端にプロペプチド(NプロペプチドおよびCプロペプチド)を持つプロα鎖として合成される。プロペプチドは、プロα鎖の会合と、C末端プロペプチドから始まりN末端プロペプチドまで伸びる三重らせん形成に必要である。
I型コラーゲンは、1,014個のアミノ酸からなる三重らせん状セグメントを含み、グリシンは(繰り返しの)3番目毎に存在する。グリシン残基に先行するプロリンは一般にヒドロキシル化されており、Gly-X-YトリプレットのY位の一部にはリジン残基が位置する。最小のアミノ酸であるグリシンは、適切な鎖の折り畳みを可能にするために3番目の位置になければならない。
ほとんどの家系における病的バリアントは特異的である;再発性のバリアント(主にCpGジヌクレオチド)は、複数のファミリーでみられる。

病因メカニズム. 一般的に、疾患の主要なメカニズムは、I型コラーゲンに定量的または定性的な影響が生じているということである。機能の喪失につながる量的変化は、dominant negative 効果によってもらたらされる質的変化と比較すると、表現が軽度になる傾向がある。

古典的非変形型OI (タンパクの定量的変化、機能喪失型):

周産期致死型OI、変形進行型OI、一般可変型OI(質的変化、機能獲得型):


臨床的特徴

自然経過

COL1A1およびCOL1A2関連骨形成不全症(COL1A1 / COL1A2-OI)の重症度は、周産期致死型、重度の骨格変形や運動障害、極度の低身長を呈する患者から、骨折の素因が軽度で、身長が正常で、寿命が正常なほぼ無症候性な個人にまで多岐にわたる。

COL1A1/COL1A2-OI は、臨床症状、X 線写真の特徴、家族歴、および自然歴に基づいて、歴史的にさらに 4 つの一般的なタイプに分類されてきた [Sillence et al 1979]。シレンス分類の改定が提案され、ある程度支持を得ている[Van Dijk & Sillence 2014Sillence 2024]。このようにCOL1A1/COL1A2-OIを病型分類することは、特定の個人の予後および管理に関する情報を提供するのに役立つが、異なるタイプのCOL1A1/COL1A2-OIでもその特徴は一部重複しており、臨床的重症度を分類することは必ずしも容易ではない。臨床的およびX線写真の特徴からみる重症度は(タイプ別にはっきり区切れるものではなく)連続しており、「「病型(タイプ)」というものは臨床的な「まとまり」のようにみえる特徴を利用して定義されたものであると理解しておくと役立つ。同じOI病型の家系内の個人でも多様性はみられ、同じOIバリアントを有する個人間でも家系内で多様性がみられる。それにもかかわらず、COL1A1/COL1A2-OIにおいて病型分けをして考えることは、疾患の自然歴に関しての予後予測を提供するために合理的である。

青色強膜を伴う古典的非変形型OI(以前のOIタイプI)は、青色強膜と正常身長が特徴である。青色強膜を伴う古典的非変形型OIの乳児のごく一部は、出生時に大腿骨が弓状になる。最初の骨折は出生時またはおむつ交換時などで発生する可能性があるが、多くの場合、最初の骨折は乳児が歩き始め、さらに重要なことは、転倒したときに発生する。一般的に、OIでは最も高い骨折率は乳児期と小児期である。骨折は通常、年間に数回から十数回程度の頻度で起こるが、思春期以降はその頻度が減少する。骨折の頻度は、特に閉経後の女性においては再び増加することがよくみられる[Folkestad et al 2017]。罹患者は、数~100箇所(回)以上の骨折が生じている可能性があるが、通常、変形を伴わずに正常治癒する。
ほとんどの罹患者の身長は正常またはほぼ正常であるが、多くの場合、家族の他のメンバーよりも背が低く、親の身長に基づく予測最終身長よりも低い。COL1A1/COL1A2-OIの個人を対象とした大規模縦断研究では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIの女性の成人身長の中央値は155.14cm、男性の身長は163.34cmであった [Robinson et al 2023]。
関節の可動性亢進は、多くの軽度の併存疾患を引き起こしやすくなる。主な臨床的懸念は、関節面のアライメント不良による早期発症の変性関節疾患である。
進行性難聴は、従来の非変形性OIの成人の50%以上で発生し、伝音難聴として始まるが、多くの場合、感音難聴は時間の経過とともに発症する。難聴は、このOIタイプの子供にはほとんど見られなかった。
脊柱側弯症は、このグループの 3 分の 1 未満に影響を及ぼし、存在する場合でも通常は軽度である。Cobb角訳注5はすべての個人で 30 度未満であった) [Ben Amor et al 2013]。
OIの分類において、Sillenceら[1979]は、象牙質形成不全症(DI)(OIタイプIB)を伴う古典的非変形型OIの亜病型を設定した。DIは象牙質の形成異常によるもので、歯の変色、歯髄の石灰化、破折訳注6、および摩耗を引き起こす可能性がある。DIは、う歯を発症するための独立した危険因子でもある。遺伝型表現型相関研究では、COL1A1 ハプロ不全バリアントによって引き起こされる青色強膜を伴う古典的非変形型OI を持つ少数の個人が DI を伴っていることが示された [Ma et al 2019Mあるulanda et al 2024b]。

 (訳注5:Cobb角脊柱の曲がりを測定する角度。側弯がなければCobb角は0度)
(訳注6:歯が折れること)

周産期致死型OI(以前はOIタイプII)周産期致死型OIに特徴的な異常は、出生時に明らかである。妊娠期間に対して体重と体長は小さい。強膜は濃い青色で、結合組織は非常に脆弱である。頭蓋骨は体の大きさの割に大きく、触診では柔らかい。肋骨のカルス形成は触知できる場合がある。四肢は短く、曲がっている。股関節は通常、屈曲して外転し、「カエル脚位(frog-leg position)」をとっている。周産期致死型OIの一部の胎児は子宮内で死亡するか、自然流産に至るが、通常、乳児は出生早期に死亡する。以前に発表されたデータによると、罹患した乳児の60%以上が初日に死亡し、80%が最初の1週間以内に死亡することが示されている。1 年を超える生存は非常にまれであり、通常は継続的補助換気などの集中的なサポートが必要である [Byers et al 1988]。死因は通常、小さな胸部に関連する肺機能不全、肋骨骨折、または不安定な肋骨によるフレイルチェストに起因する。生後数日間生存できても、呼吸困難のために十分なカロリーを摂取できない可能性がある。しかし、出生前にOIと診断され予後不良が予測された乳児18人のコホートでは、専門センターで追跡された結果、大多数が新生児期を生き延び、退院した。これらの乳児のうち12人は、遺伝子検査および/または超音波所見の結果を受けて、出生前に周産期致死型OIを有すると予測されていた。多くは呼吸および/または摂食サポートを必要としていた。この研究では、出生前の評価と出生後の生存率との間に相関関係がないことが示された(呼吸および摂食サポートの必要性を含む)。著者らは、COL1A1/COL1A2-OIは出生前に重症度を予測するのが難しいため、出生前のカウンセリングでは注意が必要であることを強調した[Carroll et al 2025]。罹患新生児の予後の改善は、周産期および新生児集中治療の進歩と関連している可能性が高く、これはかつて致死的であるとみなされた多くの骨系統疾患にも同様に影響を与えている。
出生前後に致死性となるOI乳児から得られた骨の組織学的評価では、二次性骨梁(trabeculae)および皮質骨におけるコラーゲンの著しい減少が認められる[Hortonら 1980]。皮質骨は細胞が過剰に存在し、大型の骨細胞(osteocyte)を含んでいる。骨梁には粗造骨(woven bone)がみられ、未熟で大型の骨芽細胞(osteoblast)が存在する [Cole et al 1992Cole & Dalgleish 1995]。

変形進行型OI(以前はOIタイプIII)変形進行型OIの診断は、出生直後に明らかになる。骨折は新生児期や、普通に乳児を取り扱うだけでも生じてしまう。一部の罹患乳児では、肋骨骨折の重症度や数によっては、生後数週間または数か月で肺不全により死亡に至る。
この期間を生き残った乳児はうまく経過することも多いが、ほとんどの乳児は介助なしでは歩けず、重度の骨脆弱性と顕著な骨変形のために通常は車椅子またはその他の介助を使用して移動することになる。このタイプのOIでは、明らかな骨折がない場合でも進行性の変形が見られ、患者によっては骨折回数が200回に達することもある。変形進行型OIは、たとえ髄内釘(ロッド:骨の中に挿入する金属棒)を用いた治療を行っても、整形外科的に管理するのが非常に困難である。
成長速度は著しく低下し、進行性の変形を伴うOIの成人は、知られている中でも最も身長が低い人々に含まれる。中には成人になっても身長が1m未満の人もいる。COL1A1/COL1A2 変異によるOIの患者を対象とした大規模な縦断研究によると、進行性の変形を伴うOIの女性の成人時の身長の中央値は97.94cm、男性では118.06cmであった[Robinson ら, 2023]。
知的には正常であり、脳内出血(ICH)は非常にまれである。ICHのリスク増加は、コラーゲンα-2(I)鎖の三重らせんドメインの最もカルボキシ末端部分をコードするエクソン49に影響を与えるCOL1A2病的バリアントを有する少数者で報告された[Faqeih et al 2009]。
このタイプのOIでは、臨床症状に大きな個人差がある。一部の人は歯や顔立ちが正常に見えることもあるが、多くの場合、I型コラーゲンα鎖の三重らせん領域におけるグリシン置換によって生じるこのタイプのOIでは、以下のような特徴的な頭蓋顔面形態が見られる:前頭隆起(frontal bossing)、三角形の顔貌、低形成かつ後退した中顔面、頭蓋底に対して前方に突出した下顎、その結果として生じる凹面型の顔貌。また、進行性のOIでは、歯の形成不全(DI)や咬合異常(malocclusion)が軽症型よりも高頻度にみられ、臨床的な影響や重度の整容上の問題を引き起こすことがある。
相対的な巨頭症(頭に比して体が小さい)、柔らかい頭蓋骨による脳室拡大、樽状胸郭の変形も観察される。通常、乳児期には強い青色強膜がみられるが、加齢とともに薄くなる。難聴は一般的に10代で始まる。
頭蓋底陥入症(basilar impression)は、頭蓋骨が頸椎に沈み込むことによって生じる頭蓋頸接合部の異常で、OIではよく見られる。この状態は、大後頭孔の縁が頭蓋内に陥入し、歯突起(odontoid process)が大後頭孔内に突出することで特徴づけられる。

頭蓋底陥入症は、脳幹圧迫、閉塞性水頭症、あるいは脊髄空洞症(syringomyelia)へと進行する可能性がある。これは、脳脊髄液の正常な流れが機械的に妨げられるためである[Cheungら 2011、Reznikovら 2019]。この異常の症状は、首を前に曲げる動作(頸部屈曲)で明らかになることが多く、以下のような症状が報告されている:後頭部または首の痛み、第2頸髄(C2)領域の感覚障害、第4・第5指のしびれ、内側前腕のしびれ、水泳時に、おへそを境に上下で水温の感じ方が異なる、Lhermitte徴候(頸部を曲げるとしびれを感じる)がどの段階でも認められる。
また、頭蓋底陥入症によって以下のような神経症状が生じることもある:咳をしたときの頭痛、三叉神経痛、手足の運動障害や感覚異常、重症の場合には、睡眠時無呼吸や死に至ることもある。
OIにおける頭蓋底陥入症の報告頻度は25〜37%とされており、以下の因子との関連が指摘されている:OIの表現型の重症度(変形進行型で多く見られる)、DIの併存、顕著な低身長。
扁平頭蓋(platybasia)も、頭蓋底陥入症や頭蓋内陥入症と有意な関連を示している[Marulanda et al 2024a]。

正常強膜を伴う一般可変型OI(以前はOIタイプIV)は、軽度から中等度の低身長、DI、青年期または成人発症の難聴、および正常な白または灰色の強膜を呈することが特徴である。この型は最も多様性のある骨形成不全症(OI)の形態であり、中等度の重症度から非常に軽度で診断が見過ごされるほどのケースまで幅広く見られる。
身長は個人差が大きく、同一家系内でも著しく異なることがある。COL1A1/COL1A2に関連するOIの大規模な縦断研究では、正常強膜を示すこの型の女性の成人時の身長の中央値は136.95 cm、男性では148.04 cmであったことが報告された[Robinsonら、2023年]。DI(象牙質形成不全症)は一般的だが、軽度でもありうる。強膜は出生時には淡い青色または灰色であることが多いが、すぐに正常に近い色に変化する。難聴は、より軽症の型よりも早期に発症する可能性があり、頭蓋底陥入症(basilar impression)はまれに発生する。

その他の考慮事項

低骨量、または骨粗鬆症. 骨密度(BMD)は通常、COL1A1 / COL1A2-OIの個人では低いが、特に青色強膜を伴う古典的非変形型OIの個人では正常である可能性がある。OI患者を対象とした大規模な多施設共同研究では、青色強膜を伴う古典的非変形型OI患者では、腰椎(LS)面積BMD(aBMD)がCOL1A1 / COL1A2-OIのより重篤な症状の患者で低くなる傾向があることが示された。平均LS aBMD zスコアは約-2〜-3であったが、LS aBMDは0歳から3歳および4歳から8歳を含む年齢層で比較的類似しており、これは、正常強膜を伴う一般可変型OIにおいて、ビスホスホネートの早期かつ広範な使用がBMDを増加または保持するため、これらが関連している可能性がある。8歳を超えると、LS aBMD zスコアは、変形進行型OIの個人では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIおよび正常強膜を伴う一般可変型OIを持つ個人と比較して有意に低かった。9歳から11歳の年齢層では、従来の非変形型、変形進行型、および一般可変型OIの平均LS aBMD zスコア(1標準偏差[SD])は、それぞれ-1.52(0.99)、-2.79(1.67)、および-1.84(1.09)でした。12歳から18歳の間に、思春期に古典的な非変形OIの患者ではLSaBMDが増加しましたが、進行的に変形するOIの患者では減少が見られました。青色強膜を伴う古典的非変形型OI、変形進行型OI、および正常強膜を伴う一般可変型OIの10代グループの平均LS aBMD zスコア(SD)は、それぞれ-1.4(1.35)、-4.33(3.38)、および-2.29(1.37)でした[Patel et al 2015]。COL1A1/COL1A2-OIの192人の小児および青年を対象とした別の研究では、らせんドメインにアミノ酸の病的置換を有する患者と比較して、COL1A1ハプロ不全の個体は平均してLS aBMDが高く、罹患した個体の全集団において、平均LS aBMD zスコアは、男の子よりも女の子の方が0.6(95%信頼区間:0.2-1.0)高かった[Rauch et al 2010]。

成長. 重度のOI乳児は、直線的な成長遅延に加えて、骨折や痛みによる食欲不振、呼吸困難、(胃食道)逆流、または弱い吸啜反射のために、摂食不良になる可能性がある[Robinson et al 2023]。一方、重度のOIの乳児は、同年齢の対照と比較して、活動性が低下し、カロリー要求が低く、骨格の成長が制限されている可能性がある。このようなことから、直線的な成長には体重増加が適している可能性がある [Carroll et al 2021]。ただし、成長不足の原因となる不適切なカロリー摂取と、OIに関連する成長障害を区別するのは難しい場合がある。徹底的な臨床評価、栄養評価、および縦方向の成長の観察により、OIに関連するゆっくりとした縦方向の成長と不十分な体重増加を区別できる。標準化された OI タイプおよび性別別の成長チャートが作成されており [Robinson et al 2023]、乳児期から成人期までの OI を有する患者の成長を評価するために使用する必要がある (身長と体重のチャートを参照)。

慢性疼痛. 大規模な多施設研究では、OI患者の40%以上が慢性疼痛を経験したと報告しており、OIタイプ間でも同様の頻度で報告されている。慢性疼痛は複雑で多因子性であり、骨折と非特異的筋膜性疼痛の両方に関連している可能性がある。背中の痛みが最も多く報告され、次いで複数の骨や関節の痛みが報告されている。OI関連の慢性疼痛は、歩行能力やスポーツや社会活動への参加を制限し、慢性疼痛のない人に比べて、年間に学校や仕事を欠席することが多くなる。痛みの干渉と強度は年齢とともに増加する。慢性疼痛は、OIの高齢者の70%以上で報告されている[Rodriguez、Celin et al、2023]。

顔貌. OIの乳幼児や子供は、三角形の顔をしているといわれる。頭蓋骨は体に比べて相対的に大きい。

その他の骨格の問題. 再発性骨折や長管骨変形の他に、OIの患者さんは、進行性の脊柱側弯症、関節の可動性亢進、扁平足、早期発症性関節炎、非炎症性関節痛、筋膜性疼痛などを呈することがある。脊柱側弯症の発生率は、軽度の表現型よりも重度のOIの患者で高くなる。OI関連の脊柱側弯症の発症は、特発性脊柱側弯症よりも早発で、進行が速い。

皮膚。あざができやすさは、OI患者によく見られる。これは、微小血管の脆弱性と結合組織の微細構造のサポートが不十分であることによって引き起こされると考えられている。

難聴はCOL1A1/COL1A2-OI患者の28%で報告されている。難聴の全体的な有病率は、OIサブタイプ間で有意差はなかった(従来の青色強膜を伴う古典的非変形型OIで32%、変形進行型OIで27%、正常強膜を伴う一般可変型OIで21%)。伝音難聴(CHL)、感音難聴(SNHL)、および混合性難聴(MHL)が報告されている。CHLは、楕円形の窓を含む側頭骨の耳硬化症様病変に起因しており、アブミ骨の足板の固定につながっている。一部の個人の聴覚障害は、CHLからMHLに進行する[Santos et al 2012Swinnen et al 2012]。CHLは罹患者の43%に、純粋なSNHLは32%に、MHLは24%にみられた。全体として、CHLは20歳未満の個人で最もよくみられる症状であり、この年齢層の難聴の85%を占めていた。SNHLおよびMHLは20歳後に観察された。難聴の有病率は、青色強膜を伴う古典的非変形型OIの個人では年齢とともに増加するが、進行的に変形するOIおよび正常強膜を伴う一般可変型OIでは増加しない。これらのタイプでは、聴覚障害のある割合は生後10年間で有意に高かった。難聴者では、45%が片側性、55%が両側性難聴でした。ほとんどの人が軽度の難聴(66.6%)で、次いで中等度(22.7%)、重度または重度(10.6%)であった[Machol et al 2020]。

眼症状. I型コラーゲンの変化は、眼の複数の構造成分に影響を及ぼす。角膜と強膜の厚さが減少すると、青色強膜などの眼症状が現れる。OI患者で報告される眼の問題のほとんどは、破裂、裂傷、軽度の外傷後のその他の眼の問題、および標準的な外科的処置による合併症である。他の眼疾患 (緑内障、白内障、屈折異常、網膜疾患など) のリスク増加も、OI 患者で報告されている [Lyster et al 2022]。現在まで、OIにおける眼疾患のリスクは不明であり、この集団における眼疾患のスクリーニング方法についてのコンセンサスが得られていない[Treurniet et al 2022Moussa et al 2024]。

胃腸(GI)OIの成人は、消化器系の問題(便秘、下痢、不特定の腹痛、逆流など)を頻繁に報告し、対処されないことが多く、生活の質に大きな影響を与える可能性がある[Tosi et al 2015Swezey et al 2019]。GIの問題は、一般集団と比較して、OIの成人でより頻繁に発生する[Lo Turco et al 2022, Anderesen et al 2025]。OIの子供では、腸と膀胱の問題、特に便秘と尿失禁が一般的な問題である[Martins et al 2020]。

心血管系. 新たなデータは、OI患者における心血管疾患(CVD)のリスク増加を裏付けている。系統的な文献レビューでは、動脈解離や大動脈解離を含む一連のCVD表現型の有病率が高いことが実証されている[Ashournia et al 2015]。COL1A1/COL1A2-OI および大動脈瘤を有する 3 人の追加の個人が報告されている [Balasubramanian et al 2019]。しかし、より最近のシステマティック レビューでは、大動脈基部の拡張、心臓のサイズと機能の変化、および心不全のリスクに関して、研究間で統一された見解がえられていないことが強調されている [Verdonk et al 2024]。一部の研究では、OI患者と健常者の間で心臓測定値に有意差はなかったと報告されている。OIの個人は、対照と比較して弁膜異常の可能性が高い可能性がある。僧帽弁および大動脈弁逆流は、最も一般的に報告されている。しかし、多くの個人が軽度または軽度の逆流を示し、臨床的に有意であったのはごく一部であった。OIにおける高血圧、心房細動、動脈硬化のリスクは十分に研究されていない。

肺疾患. OI患者では、肺疾患は、肺の外因性の要因だけでなく、内因性の肺の異常が原因である可能性がある。外因性要因には、低身長、不動、脊柱側弯症、再発性肋骨骨折、筋力低下、胸壁の異常などがある。生理検査による肺機能の程度 (例: 拘束性障害) は、ごく最近報告されたばかりである [Khan et al 2020]。さまざまなOIタイプを含む多施設研究では、217人の子供と大人の肺機能検査で、進行的に変形するOIを持つ個人は、1秒間に強制肺活量(FVC)と強制呼気量が大幅に減少したことが示された(FEV1)。この研究では、スパイロメトリー分析で使用される正規化プロセスが、重症型のOIにおける肺の関与を過小評価する可能性があることも示された。著者らは、臨床医が OI の肺機能を評価する際に肺活量測定の限界に注意する必要があると提案した [Tam et al 2018]。肺合併症は、新生児死亡を伴う肺形成不全から拘束性肺疾患および/または肺高血圧症までさまざまである。肺機能障害は、息切れ、倦怠感、下気道感染症に対する感受性の増加、および睡眠時無呼吸を引き起こす可能性がある [Turkalj et al 2017]。慢性肺不全は心臓の問題に進行する可能性がある。心肺合併症は、OIの成人の罹患率と死亡率の主な原因である。

発達. 認知は正常であると予想されるが、関節の可動性亢進、骨折による固定(治療)の繰り返し、および重度のOIでの進行性の骨変形により、粗大運動の発達が妨げられる可能性がある。OIの乳児の中には、定型発達の経過をたどる人もいれば、移動に関して自分なりのやり方を発展させていく人もいる[Mueller et al 2018]。

機能制限. OIの人は、機能的な制限を経験する可能性がある。筋力の低下、疲労、および/または痛みは、持久力とスポーツへの関与を制限する可能性がある [Mueller et al 2018]。大規模な多施設研究では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIの個人は軽度の制限を経験したが、より重度のタイプの人々は、分析されたすべての可動性指標(機能的可動性スケール、6分間歩行テストなど)でより有意な制限を示した。青色強膜を伴う古典的非変形型OI小児の運動発達で独歩年(月)齢は、定型発達児と比較して約3か月遅れていた。対象的に、変形進行型OIの小児は、最終的には独歩に至るが、平均で33か月の遅れを経験し、約3.8歳まで歩かなかった[Kruger et al 2019]。患者報告アウトカム指標を異なるOIタイプの小児の大規模なコホートで使用した場合、変形進行型OIの個人では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIおよび正常強膜を伴う一般可変型OIを持つ個人と比較して、身体機能スコアが有意に低かった。しかし、OIタイプが異なる子供の間で心理社会的幸福に有意差はみられなかった[Murali et al 2020]。

平均寿命. 「周産期致死型OI」の新生児は、新生児ケアの進歩により予後が改善されている。適切な集学的アプローチと生命維持により、一部の乳児では退院までの生存期間が延長される可能性がある。変形進行型OIの予後は非常に多様であり、拘束性肺疾患を伴う重度の脊柱側弯症による心不全を引き起こすことにより、平均余命が短縮される可能性がある。青色強膜を伴う古典型非変形型 OI と正常強膜を伴う一般可変型 OI の平均余命は正常である。デンマーク全土で実施された人口ベースの登録ベースのコホート研究では、OIを有するすべての男性の生存期間の中央値は72.4年であったのに対し、参照集団では81.9年であった。OIの女性の生存期間の中央値は77.4年であったのに対し、参照集団では84.5年であった。OIの人は、心肺疾患、胃腸疾患、および外傷による死亡リスクが高かった[Folkestad et al 2016]。

遺伝型と臨床型の関連

一般的に、I型コラーゲンの量的な変化による影響は、ドミナントネガティブがもたらす質的な変化と比較すると、表現が軽度になる傾向がある[Ben Amor et al 2011Zhytnik et al 2019Sałacińska et al 2023]。例外は、例えばCOL1A1のグリシンからセリンへの置換は、COL1A2の同様の変化よりも深刻な表現型につながる可能性がある。大規模な多施設共同研究により、スプライス部位と切断型の病的バリアント、およびCOL1A1遺伝子欠失が、青色強膜を伴う古典的非変形型OIの軽度の表現型を強く予測したことが報告された。非グリシンミスセンスバリアントおよびインフレームCOL1A2の欠失または重複は、OIの変形進行型を予測した。同様に、らせんドメインにおけるCOL1A2の病的バリアントによるグリシン置換は、正常強膜を伴う一般可変型OIが有意に予測される結果であり、このOI亜型における全病的バリアントの48.1%を占めた。他のすべてのバリアントは、特定の表現型と相関していなかった [Patel et al 2015]。小規模な研究では、コラーゲンI欠損のタイプと表現型の重症度との相関関係が支持されている[Zhytnik et al 2019Sałacińska et al 2023]、明確な遺伝型表現型の相関関係は存在しない。

青色強膜を伴う古典的非変形型OIは、ほとんどの場合、ナンセンス、フレームシフト、またはスプライス部位COL1A1またはCOL1A2病的バリアントに起因し、早期の終了、mRNA安定性の低下、およびプロα-1(I)またはプロあるファ-2(I)鎖の量的減少、およびコラーゲン線維の集合の減少をもたらす。

周産期致死型OI、変形進行型OI、および正常強膜を伴う一般可変型OIは、ほとんどの場合、α-1(I)鎖またはα-2(I)鎖のいずれかの構造を変化させる病的バリアントに起因する。これにより、異常なタンパク質が三重らせんとコラーゲン線維に統合され、継続的なリモデリングが行われるというドミナントネガティブな影響が引き起こされ、骨基質の構造的完全性が大幅に損なわれる。ただし、例外があり、表現はOIタイプと予測結果の分類に常に考慮する必要がある。

最も一般的な病的バリアントは、いずれかの鎖の三重らせんドメインにおいて、グリシンを別のアミノ酸で置換する結果となる。セリン、アルギニン、システイン、およびトリプトファンは、グリシンコドンの第1位での置換から生じ、アラニン、バリン、グルタミン酸、およびアスパラギン酸は、グリシンコドンの第2位での置換から生じる。グリシンは最も小さなアミノ酸であり、他の置換アミノ酸はコラーゲンの三重らせん構造を形成するためにはうまく適合しない。

他の一般的な疾患の原因となるバリアントは、スプライス部位に影響を及ぼす。エクソン14を超えるプロα-1(I)鎖およびエクソン25を超えるプロα-2(I)鎖におけるエクソンスキッピングにつながるバリアントは、一般に致死的である。上流領域の病的バリアントに起因する表現型はより変動しやすく、重大な関節の可動性亢進につながる可能性がある。

両鎖のカルボキシル末端領域のアミノ酸配列を変化させる比較的少数の病的バリアントが同定されている。これらのドメインは鎖の会合に使用され、病的バリアントはこの特性を破壊したり、鎖の会合に異常を生じさせたりする能力を持っている。このドメインに影響を及ぼす病的バリアントの表現型への影響は、鎖の会合ではなく排除をもたらす場合には軽症になると考えられる。

顕性性質をもつ病的バリアントを有する体細胞モザイク現象は、周産期致死型OI、変形進行型OI、および正常強膜を伴う一般可変型OIで認識されている。体細胞モザイク現象を持つ個人の表現型は、OIの診断に至らない例から軽症例までさまざまである。体細胞/性腺モザイク現象の発生率の現在の推定値は、最大16%である。

浸透率 

COL1A1またはCOL1A2の病的バリアントに対するヘテロ接合体患者における浸透度は100%であるが、発現は同じ家系内でもかなり異なる可能性がある。

促進現象

病名

現在のOI命名法および分類を表4に示する。

表4. COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症:命名法

このGeneReviewで使用されている命名法 *
[Van Dijk & Sillence 2014]
対応する名称
OI臨床病型
[Sillence et al 1979]
2023 Nosology of Genetic Skeletal Disorders
[Unger et al 2023]
青色強膜を伴う典型的非変形型OI OIタイプI
  • OI、非変形(Sillence type 1)、COL1A1関連
  • OI、非変形(Sillence type 1)、COL1A2関連
周産期致死型OI OIタイプII
  • OI、重症周産期型(Sillence type 2)、COL1A1関連
  • OI、重症周産期型(Sillence type 2)、COL1A2関連
変形進行型OI OIタイプIII
  • OI、変形進行型(Sillenceタイプ3)、COL1A1関連
  • OI、変形進行型(シレンス3型)、COL1A2関連
正常強膜を伴う一般可変型OI OIタイプIV
  • OI、中等度型(Sillence type 4)、COL1A1関連
  • OI、中等度型(Sillence型4)、COL1A2関連

OI = 骨形成不全症
*注:このGeneReview全体の一貫性を保つために、著者はVan Dijk & Sillence [2014]が推奨するOI分類を使用している。この GeneReview の以前のバージョンおよび参照された出版物からの「OI タイプ I」への言及は、「青色強膜を伴う古典的非変形型OI」に変更した。同様に、「OIタイプII」は「周産期致死型OI」に、「OIタイプIII」は「変形進行型OI」に、「OIタイプIV」は「正常強膜を伴う一般可変型OI」に置き換えた。

「先天性OI」と「遅発性OI」という歴史的な分類体系は使用されなくなった。なぜならば、軽症OIでも出生時の骨折が認められたり、重症OI乳児でも出生時に骨折していない可能性があるためである。

遺伝的疾患の分類では、OIは骨格異形成、結合組織障害、コラーゲンまたは細胞外マトリックスの障害、または骨の脆弱性の障害と見なされる場合がある。Nosology of Genetic Skeletal Disorders の最新の改訂版では、OI は骨形成不全症および骨の脆弱性グループに含まれている [Unger et al 2023]。

頻度 

すべてのタイプを考慮すると、OIの有病率は約6〜7:100,000である。COL1A1/COL1A2-OIはOIの最大の割合を占めており、西欧諸国の罹患者の約80%-85%、血族結婚率が高い国々では約60%を占めている[Jovanovic & Marini 2024]。

同一遺伝子の変異により発症する、互いに関連する疾患群

COL1A1およびCOL1A2における生殖細胞系列における病的バリアントに関連する他の表現型を表5に要約する。

表5. COL1A1もしくはCOL1A2に生じた異なる変異によって生じる、OIとは異なる疾患。

遺伝子 病名 MOI コメント
COL1A1 カフェイ病(乳児皮質骨粗鬆症) AD 骨膜下における大規模な新しい骨形成を特徴とし、通常は長骨、下顎骨、鎖骨の骨幹を伴いる。痛みを伴う腫れと全身的な発熱がしばしばエピソードを伴い、通常は5ヵ月以前で始まり、2歳までに解消する。
古典型EDS(cEDS) AD cEDSの3%はCOL1A1の病的バリアントに起因している。COL1A1のほとんどの病的バリアントはOIを引き起こすが、ミスセンス変異c.934C>Tは特異的にcEDS(古典型EDS)を引き起こす。
関節弛緩型EDS
(aEDS)(OMIM 130060))
AD 罹患者は、先天性の両側性股関節脱臼、低身長、関節の可動性亢進、骨減少症、脊柱側弯症、ビロードのような伸縮性の高い皮膚、および軽度の骨の脆弱性を持っている。関節軟骨症EDSは、COL1A1またはCOL1A2のいずれかのエクソン6の喪失から生じる。
EDS/OIオーバーラップ表現型
(OMIM 619115)
AD OI(骨の脆弱性、長骨骨折、青色強膜)およびEDS(関節過伸展性、軟質および過伸展性皮膚、異常な創傷治癒、簡単な打撲傷、血管の脆弱性)の特徴を伴う全身性結合組織障害
COL1A2 関節弛緩型EDS
EDS(aEDS)(OMIM 617821)
AD 先天性両側性股関節脱臼、低身長、関節可動性亢進症、骨減少症、脊柱側弯症、ビロードのような伸縮性の高い皮膚、および軽度の骨の脆弱性。関節軟骨症EDSは、COL1A1またはCOL1A2のいずれかのエクソン6の喪失から生じる。
心臓弁障害型EDS
EDS(cvEDS)(OMIM 225320))
AR 重度の心臓弁膜症、可変皮膚過伸展性、萎縮性瘢痕、関節可動亢進

AD =常染色体顕性遺伝形式;AR = 常染色体潜性遺伝形式;cEDS = classic EDS;EDS = エーラス・ダンロス症候群;MOI = 遺伝形式。OI = 骨形成不全症


鑑別診断

他タイプの骨形成不全症

COL1A1 および COL1A2 関連骨形成不全症 (COL1A1/COL1A2-OI) の特徴を持つ個人の主要な鑑別診断は、非コラーゲン関連型の OI である。顕性遺伝形式と潜性遺伝形式の両方があり、これらはCOL1A1 / COL1A2-OIと表現型的に区別できない場合がある。患者のごく一部では、特定の原因となるバリアントはまだ特定されていない。表6は、OIのこれらのサブタイプの分子基盤、遺伝の様式、対応する臨床OIタイプ、および典型的な臨床的およびX線写真の特徴をまとめたものである。

表6.COL1A1/COL1A2関連骨形成不全症の鑑別診断:他タイプの骨形成不全症

遺伝子 MOI OMIMによる遺伝学的OI分類 臨床OI分類1 臨床的特徴
BMP1 AR OIタイプXIII(OMIM 614856) OI-III 臍ヘルニア;眼間開離;DIまたはHLはなし
CCDC134 AR OIタイプXXII(OMIM 619795) OI-III 重度のOI;IUGRの;早期および重度の骨の脆弱性、複数の骨折;さまざまな強膜の色;環軸椎関節の不安定性も報告されている
CREB3L1 AR OIタイプ
XVI(OMIM 616229)
OI-III 胎児;重度の表現型。歯の無形成を伴う可能性がある
CRTAP AR OIタイプVII(OMIM 610682) OI-II、III、またはIV 通常の出生期間;眼球突出;DIはない。肺血管系奇形; 近位肢短縮症
FKBP10 AR OIタイプXI(OMIM 610968) OI-IIIまたはIV 短頭症;骨の脆弱性の程度がさまざま±(先天性)拘縮
IFITM5 AD 骨間膜の石灰化を伴うOI、OIタイプV(OMIM 610967) OI-IIIまたはIV 強膜は一般的に白である。DIはまれである。肥大型カルス形成;尺骨と橈骨の間の骨間膜の石灰化により、前腕が完全に罷腸および回内できなくなる。HLはない。病的バリアントによっては、骨内膜または肥大性カルスの石灰化が見られない場合があり、OI タイプ III を模倣するより重篤な臨床症状を伴う場合がある。
KDELR2 AR OIタイプXXI(OMIM 619131) OI-IIまたはIII 重度のOIと周産期骨折;神経発達遅延の頻度は不明
MBTPS2 XL OIタイプXIX(OMIM 301014) OI-IIIまたはIV HLはない。強膜は一般的に白い。根粒菌;骨端「ポップコーン」石灰化
MESD AR OIタイプXX(OMIM 618644) OI-IIIまたはIV 顔面の先天異常は、アーチ型眉毛とテント状口が含まれる。第5指屈曲を伴う長い指;乏歯症
P3H1 AR OIタイプVIII(OMIM 610915) OI-IIまたはIII DIはない。白い強膜;眼球突出;長い指骨
P4HB AR コール・カーペンター症候群1(OMIM 112240) OI-III. 頭蓋骨癒合症;眼球突出;水頭症;特徴的な顔の特徴
PPIB AR OIタイプIX(OMIM 259440) OI-II、III、またはIV DIまたはHLはない。白い強膜
SEC24D AR コール・カーペンター症候群2(OMIM 616294) OI-III. 塔状頭蓋; 眼球突出; 眼間開離; 耳介形成異常;HLはない。白い強膜;水頭症;甲高い声
注:ほとんどの罹患者は、大きな泉門を有する(頭蓋骨癒合症ではない)
SERPINF1 AR OIタイプVI(OMIM 613982) OI-IIIまたはIV DIまたはHLなし
SERPINH1 AR OIタイプX(OMIM 613848) OI-III. 大頭症; 眼球突出;腎結石
SP7 AR OIタイプXII(OMIM 613849) OI-IIIまたはIV DIはない。白い強膜
SPARC AR OIタイプXVII
(OMIM 616507)
OI-IV DIまたはHLはない。白い強膜;頭蓋内出血のリスク
TENT5A AR OIタイプXVIII(OMIM 617952) OI-IIIまたはIV DIまたはHLはない。臍ヘルニア
TMEM38B AR OIタイプXIV(OMIM 615066) OI-III. DIまたはHLはない。白い強膜
WNT1 AR OIタイプXV(OMIM 615220) OI-IIIまたはIV 構造的脳奇形; 近位肢短縮症

AD =常染色体顕性遺伝形式;AR = 常染色体潜性遺伝形式;DI = 象牙質形成不全症;HL = 難聴;IUGR = 子宮内発育遅延;MOI = 遺伝形式。OI = 骨形成不全症;XL = X連鎖性遺伝形式
1.ロビンソン&ラウフ [2019]

その他の障害および非偶発的な外傷
OIの鑑別診断は、個人が評価される年齢に大きく依存する[Plotkin 2004]。COL1A1/COL1A2-OIを他の疾患と区別するのに役立つ臨床的特徴には、特徴的な三角形の顔、青色強膜、関節の可動性亢進、歯の異常、難聴(成人)などがある。

子宮内評価
出生前の早期超音波検査またはX線所見は、低ホスファターゼ症タナトフォリック異形成カンポメリック異形成、軟骨無形成症、および周産期致死型OIの検討につながる可能性がある。場合によっては、生化学的または分子的な検査が有用な補助薬となることがある。注:胎児の画像診断は、診断を確定する上で重要である。分子遺伝学的所見は、画像所見と相関している必要がある [Nishimura et al 2023]。

表 7.COL1A1およびCOL1A2関連骨形成不全症の鑑別診断:子宮内評価

遺伝子 疾患 MOI 障害における出生前超音波およびX線所見
ALPL 周産期の低ホスファターゼ症 AR(通常) 頭蓋骨化の欠陥;椎体および/または神経弓の骨化の欠陥;骨幹端の石灰化欠損を伴う長骨の屈曲
FGFR3 タナトフォリック異形成 AD 前頭隆起と中顔面形成不全;頭蓋骨癒合症;扁平椎;椎弓間距離の異常;短い肋骨と長くて狭い胸部。三叉状腸骨;近位大腿骨すくい状変形; 三叉状手;重度の短指症
SLC26A2 軟骨無形成症1B型 AR 重度の脊椎異形成(椎体の発達不全を伴う)、椎弓間距離の異常、短肋骨と短く広い胸郭、恥骨および座骨の骨化遅延、非常に短く、配列不整な長管骨(腕や脚の骨)と重度の短指症
SOX9 屈曲肢異形成 AD 小顎症および/または口蓋裂;頸部後弯症;肩甲骨翼の形成不全;長骨の屈曲(鋭く屈曲する)
~46,XY核型を有する罹患者の75%は、曖昧性外性器か、女性型の正常外性器である。
COL2A1 軟骨無形成症、COL2A1関連(II型コラーゲン疾患の概要を参照) AD 小顎症および口蓋裂、椎弓骨化障害、扁平椎、短肋骨と短く広い胸郭、短肢症、恥骨および座骨の骨化遅延
COL2A1 扁平椎異形成、トーランス型、COL2A1関連(II型コラーゲン疾患の概要を参照) AD 扁平椎、前方のカップ状変形を伴う短肋骨、下部腸骨の低形成と、幅広い坐骨および恥骨、骨幹端の広がりとカップ状変形を伴う長管骨の短縮

AD =常染色体顕性遺伝形式;ある = 常染色体潜性遺伝形式;MOI = 遺伝形式。OI = 骨形成不全症
Nishimura et al [2023]に基づく

乳児期および小児期の評価

非偶発的な外傷(NAT;小児虐待)  COL1A1/COL1A2-OIはNAT (小児虐待)と区別する必要がある。NATの有病率はCOL1A1/COL1A2-OIの有病率よりもはるかに高く、まれにCOL1A1/COL1A2-OIの小児にNATが発生する可能性がある。病歴、家族歴、身体検査、X線画像、および臨床経過はすべて、COL1A1/COL1A2-OIをNATと区別するのに役立つ。臨床的特徴の重複には、複数または再発性の骨折、外傷の病歴と一致しない骨折、およびさまざまな年齢および異なる治癒段階の骨折の所見が含まれる [Steiner et al 1996Mあるlowe et al 2002Pepin & Byers 2015]。
虐待の可能性がある状況からすでに保護された子どもに骨折が引き続き見られる場合は、COL1A1/COL1A2-OIの可能性を支持する根拠となる。骨幹端部や肋骨の骨折は、通常はNATにほぼ特異的と考えられているが、まれにCOL1A1/COL1A2-OIでも生じることもある。青色強膜は生後約18か月まで影響を受けていない正常乳児にもよく見られ、OIの小児でも青色強膜を有しない可能性があるため、青色強膜の有無はCOL1A1 / COL1A2-OIをNATと区別する上で信頼性がない。
家族歴が有用でないことも多い。虐待の可能性が疑われる家族では、頻繁な骨折の家族歴があると未確認の情報を提供することがよくある。一方で、COL1A1 / COL1A2-OIの患者では、病的バリアントが発端者で新たに発生したものであったり、親族に軽度の表現型しか見られなかったりするため、他の罹患者が家族歴に現れないことも少なくない。

虐待(NAT)が疑われ、かつ原因不明の骨折がある患者に対する分子遺伝学的検査の使用は、現在もなお議論のある問題である。しかし、分子検査の費用が低下し、利用可能性が高まっていること、またNAT専門医や臨床遺伝専門医の人員が限られていることから、分子検査の実施は一般的になってきている。分子検査が医学的に必要かどうかの判断は難しい。

NATと軽度OIとの臨床的な類似性を考慮し、NATであるかどうかの判断が困難な場合には分子検査を検討すべきであると提案されている[Pepin & Byers 2015]。PepinとByers(2015)は、COL1A1COL1A2IFITM5の塩基配列解析および重複検査(重複/欠失解析)を推奨している。原因となるバリアントが特定できない場合、OIを強く示唆する臨床的特徴がなければ、それ以上の分子検査は推奨されない。

VUSバリアントが同定された場合には、両親の分離解析(バリアントの遺伝経路の解析)が推奨される。各子どもの検査結果とその臨床的意味を解釈し、NATとOIのいずれの診断が妥当かを検討するには、最終的に複数の専門家が関与する必要がある。評価は学際的に行われ、医療提供者、児童保護機関、場合によっては法執行機関も関与することがある[Pepin & Byers 2015]。

別の研究では、虐待が疑われる状況にある43人の子どもを対象に、COL1A1およびCOL1A2の塩基配列解析の結果が報告された。臨床的にOIを示唆する他の所見が見られない場合、これらの遺伝子検査の検出率は低かった。詳細な病歴聴取および綿密な臨床評価によりCOL1A1/COL1A2-OIのリスクがある子どもを特定することができた。著者らは、青色強膜、骨量の減少、あるいは陽性の家族歴がある場合に限り、NATが疑われる状況での遺伝学的評価およびOIの分子検査を検討すべきだと提案している[Zあるateら 2016]。

その他の骨の脆弱性障害
骨粗鬆症に関連する骨の脆弱性(OIのような固有の骨の脆弱性ではなく)に関連する遺伝性疾患を表8にリストアップしている。これらの疾患は、2023 Nosology of Genetic Skeletal Disorders の OI および骨の脆弱性グループに含まれている [Unger et al 2023Sillence 2024]。

表 8.骨の脆弱性に関連するその他の遺伝性疾患(ただし、骨形成不全症とは見なされない)

遺伝子 疾患 MOI 各疾の臨床的特徴
ANO5

Gnathodiaphyseal dysplasia、ANO5関連(OMIM 166260)

AD 顎の肥大;骨髄炎
ATP6V0A2

ATP6V0A2関連皮膚弛緩症

AR 皮膚弛緩の様々な重症度;異常な成長;DDである。骨格の異常
COPB2

DDおよび小頭症を伴う骨粗鬆症、COPB2関連(OMIM 619884)

AD 低骨量または骨粗鬆症の存在、一部に軽い外傷による再発性骨折;様々な程度の DD;軽度の知的障害または学習障害;広範囲にわたる歩行および/または全般性運動発達遅滞;一部に小頭症
FKBP10

Bruck症候群1型(BS1)、FKBP10関連(OMIM 259450)

AR 先天性関節拘縮と翼状皮膚;乳児期または幼児期の骨折の発症;出生後の低身長;重度の四肢変形;進行性脊柱側弯症
GORAB

骨異形成性毛皮症、GORAB関連(OMIM 231070)

AR 小頭症;弓なりの長管骨と骨折。指の屈曲拘縮;皮膚のしわは手と足の背に限定されている。早すぎる老化した顔の外観。知的障害
IFIH1

Singleton-Merten異形成、IFIH1関連(OMIM 182250)

AD 小児期または思春期における大動脈弁、大動脈弁、僧帽弁の石灰化;乳歯脱落の遅延と永久歯の萌出遅延;歯根形成不全(短縮)と歯の喪失;骨粗鬆症;四肢(骨遠位部)と融解現象;延髄腔開大。骨腱接着部の易開離性(断裂しやすい)
LRP5

骨粗鬆症偽膠腫症候群、LRP5関連(OMIM 259770)

AR 若年性骨粗鬆症と長管骨骨折;脊椎圧迫骨折;脊柱側弯症;四肢変形;低身長;網膜剥離や小眼球症などの眼科的問題から生じる先天性または若年性視覚障害
PLOD2

Bruck症候群 2 型 (BS2)、PLOD2 関連 (OMIM 609220)

AR 骨粗鬆症;出生時の関節拘縮;骨脆弱性;低身長
PLS3

骨粗鬆症X連鎖型、PLS3関連(OMIM 300910)

XL 男性では、小児期に軸骨格および付属骨格に骨粗鬆症や骨折が生じる。
ヘテロ接合体の女性では、骨密度が正常なこともあるが、若年性骨粗鬆症やX線画像で椎体圧迫骨折が認められることもある。
POLR3A

Wiedemann-Rautenstrauch 症候群、POLR3A 関連 (OMIM 264090)

AR 新生児早老症;IUGR、低成長、低身長、早老症の出現、筋緊張低下、多様なID
PYCR1

Cutis laxa、PYCR1関連(OMIM 612940)

AR 皮膚弛緩の様々な重症度;異常な成長;DD、骨格異常
RIGI
(DDX58)

Singleton-Merten 異形成、DDX58関連(OMIM 616298)

AD さまざまな程度の緑内障;大動脈の石灰化;骨格異常;歯の異常とは関連しない
SGMS2

Bone fragility with calvarial "doughnut" lesions(頭蓋骨の「ドーナツ」病変を伴う骨の脆弱性)」、SGSM2関連(OMIM 126550)

AD 骨密度が低い。小児期に始まる複数の脊椎および末梢骨折;頭蓋骨の硬化性ドーナツ型病変
XYLT2

脊椎眼異形成、XYLT2関連(OMIM 605822)

AR 扁平椎;骨の脆弱性;白内障;網膜剥離;聴覚障害;先天性心疾患;顔面の先天異常

AD =常染色体顕性遺伝形式;ある = 常染色体潜性遺伝形式;DD = 発達遅延;ID = 知的障害;IUGR = 子宮内発育制限;MOI = 遺伝形式。XL = X連鎖性遺伝形式


臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行う評価

COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症(COL1A1 / COL1A2-OI)の臨床診療ガイドラインは公開されていない。公開されたガイドラインがない場合、以下の推奨事項は、この障害を持つ個人を管理した著者の個人的な経験に基づいている。

初期診断後の評価

COL1A1/COL1A2-OI と診断された個人の疾患の程度とニーズを確立するために、表9に要約された評価(診断につながった評価の一部として実施されない場合)が推奨される。

表9. COL1A1/COL1A2-OI:最初に診断された後からの推奨されるべき評価項目

系/懸念事項 評価 コメント
筋骨 格 系
  • 身体検査
  • 成長評価(身長/身長、体重、頭囲)
  • 疼痛評価
  • 変形、脊柱側弯症、関節弛緩の有無を評価するため
  • 成長パラメータは、OI成長チャートにプロットする必要がある(身長と体重のチャートを参照)。1
  • 運動発達と運動性の問題を評価するためのPTおよびOTへの紹介
  • 必要に応じて、経験豊富な整形外科医への外科的介入の紹介
臨床症状に基づく

  • 骨疾患専門医への紹介
  • 骨バイオマーカー(カルシウム、リン、アルカリホスファターゼ、副甲状腺ホルモン)
  • 欠乏症を評価するためのビタミンDレベル
DXAスキャン

年齢~5歳から

神経 頭蓋底陥入症を評価するための頭蓋骨基部全体の画像評価のためのCTおよび/またはMRI検査

気になる徴候や症状がある場合2

頸椎屈曲および伸展X線写真

より軽度の影響を受ける人々のスポーツ活動に参加する前に、試験で協力できる子供

聴覚 正式なヒアリング評価

診断時のすべての人に

眼科 目の検査

大人になってから

歯科用 歯科検診

  • DIのある人やDIのリスクがある人に歯が生えたとき
  • すべてのOIの子どもにおいて、2〜3歳までに
胃腸 便秘、下痢、不特定の腹痛、逆流の評価

  • 肺合併症の評価
  • 必要に応じて呼吸器科医への紹介
遺伝カウンセリング 遺伝学の専門家による3

COL1A1/COL1A2-OIの医学的および個人的な意思決定を支援するために、家系図を作成し、影響を受けた本人およびその家族に対して、疾患の本質、遺伝形式(MOI)、およびその意味について情報提供を行う。

家族のサポート
とリソース
臨床医、包括的ケアチーム、家族支援組織による

家族および社会的構造の評価を通じて、以下のような支援の必要性を判断する:

  • Parent to Parent などの地域またはオンライン支援リソースの活用
  • 親への支援を目的としたソーシャルワーカーの関与
  • 訪問看護の紹介

DI = 象牙質形成不全症;DXA = デュアルエネルギーX線吸収測定法;MOI = 遺伝形式。OI = 骨形成不全症;OT = 作業療法士;PT = 理学療法士

病変に対する治療

マネジメントは、骨折や障害を最小限に抑え、機能を最大化し、自立と参加を促進し、全体的な健康を維持するための支持療法に焦点を当てている。管理に対しては集学的アプローチが最も有益であり、生活の質の最大化に重点を置く注意を払っている[Marini & Dang Do 2000]。集学的チームには、COL1A1 / COL1A2-OIの医学的管理、臨床遺伝学、遺伝カウンセラー、整形外科、リハビリテーション医学、理学療法、作業療法、歯科、耳鼻咽喉科、疼痛管理、呼吸器科、消化器病学、および必要に応じてメンタルヘルスの専門家が含まれる。OIの現在の治療法は対症療法的であり、主に骨折の予防および/または治療、および骨量の増加に焦点を当てている。中等度から重度のOIの人は、骨の変形や骨折を矯正するために手術が必要になる場合がある。さらに、ビスフォスフォネート製剤はOIの治療に一般的に使用されている[Chaugule et al 2025]。

支持療法は、罹患した個人の重症度、障害の程度、および年齢に応じて個別化される。一般的に、周産期致死型COL1A1/COL1A2-OIの乳児を介護する親は、医療従事者からのかなりの支援を必要とする。

理学療法. 理学療法は、OI患者にとって最も重要な治療法の1つである。専門家会議では、理学療法士、作業療法士、およびその他の医療専門家が OI を持つ個人の治療目標を設定し、治療計画作成支援のために、OI を持つ子供と青年の身体的リハビリテーションに関するコンセンサス ステートメントを作成した [Mueller et al 2018]。他の有用な推奨事項の中で、より関連性の高いステートメントのいくつかを以下に示する。

疼痛管理. 慢性疼痛には集学的アプローチが必要であり、OI患者が疼痛緩和のための薬理学的戦略と非薬理学的戦略を組み合わせたと報告している。非ステロイド性抗炎症薬とそれに続くビスフォスフォネート製剤が最も一般的な治療法であり、OI 患者では、これらの治療を他の非薬理学的選択肢の中でも特に理学療法と組み合わせたと報告している [Rodriguez Celin et al 2023]。

整形外科治療

麻酔. 手術室のベッドでの適切な位置決め、術中管理、術後鎮痛など、OI患者それぞれに特別な注意が必要である[Liang et al 2022]。OIの小児を治療するための先進医療機関で205件の麻酔処置を評価した研究では、麻酔に関する問題(例:気道確保困難、末梢神経ブロックや脊髄くも膜下麻酔の失敗など)は全体としては稀であったは全体的にまれであると報告された。しかし、重症型のOIの小児では、著しい出血や静脈ライン確保の困難などの問題がより多く見られた。体位変換や血圧測定用カフによる骨折のリスクが高いとする報告もあったが、この関連性は明確に証明されなかった [Rothschild et al 2018]。別の小規模研究でも同様の結果が示され、圧迫カフや止血帯の使用に関連した骨折はなく、体位変換時に1例の骨折が発生したとされている。骨の脆弱性があるため、周術期(手術前後を含む期間)には体位調整などの際に骨折を防ぐための細心の注意が必要である。 [Sullivan et al 2019]。

側弯症.装具療法(ブレース)は進行を遅らせることができるが、重症の COL1A1/COL1A2 関連骨形成不全症(OI)では、保存的治療に対する反応が乏しく、外科的介入に対する効果も限定的である可能性がある。OI 患者における重度脊柱側弯症の外科的治療は、発症の早さ、側弯の大きさ、低身長、骨の脆弱性といった要因により困難を伴う。また、呼吸器や心臓の障害など複雑な併存疾患を有することもある。ビスホスホネートを含む現在のOI治療の進歩により、より多くの小児が側弯症の治療を受けられるようになった。変形矯正手術が適応となる場合、術前および術中牽引、硬直したカーブを緩和するための骨切り術(オステオトミー)、およびセグメンタルペディクルスクリュー固定法により、他の方法と比べて良好な結果が得られている。骨癒合率を高めるために骨形成タンパク質2(BMP-2)の使用が報告されており、さまざまな型のOI患者30例における多角的アプローチの中期成績では、手術介入により主弯角度が76度から36度へと著明に改善し、矯正喪失も最小限にとどまったことが示された[Horiら 2024]。

薬理学的治療.ビスホスホネートはOIの治療薬として用いられるが、根本的な治療法ではない。それでも、特に椎体骨折、長管骨の頻回骨折、または重度のOIを有する患者において、骨密度を改善するための最も一般的な治療法である。Cochrane CollaborationによるOI治療に関するレビューでは、ビスホスホネート療法が骨折発生率を低下させる明確な効果は見られなかったものの、骨密度や成人時の身長に影響を与えることが示された[Dwanら 2016;RD Steiner、M Rodriguez Celin、D Basel、未発表データ]。
骨形成不全症財団(Osteogenesis Imperfecta Foundation)により連携された臨床研究センター(LCRC)からのデータを用いた多施設共同研究では、さまざまな型のOI患者466例を対象に、ビスホスホネート治療を受けた患者は、非治療群と比較して腰椎椎体の骨密度が上昇し、骨折および脊柱側弯症の発生リスクが低下していることが示された[Bainsら 2019]。
OIのすべての臨床型における成人の骨リモデリングの異常は十分には解明されていないが、ビスホスホネートの骨吸収抑制作用は骨格に有益な影響を及ぼす可能性があり、成人患者においても骨密度の改善が報告されている。こうした効果は有益であると考えられるものの、骨折発生率への影響については、現在のデータから明確な結論を導くことは困難である。これは主に、臨床試験が骨折リスクへの効果を検出するには統計的に十分な規模を持たないことや、研究デザインに適切な対照群が欠けていることに起因する[Liuら 2023]。
ビスホスホネートの中でも、窒素含有型ビスホスホネート(アレンドロン酸、パミドロン酸、ゾレドロン酸、ネリドロン酸など)が最も頻繁に使用されている。これらは経口または静脈内投与が可能で、一般的に忍容性は良好である。
主な副作用は、経口投与では消化器症状、初回の静脈内投与時にはインフルエンザ様症状が見られることがあり、一過性の低カルシウム血症が生じることもある。顎骨壊死は成人でまれに報告されているが、小児では報告されている。
ビスホスホネートの長期的な安全性は現在も調査中だが、骨折や骨切り術後の骨癒合遅延といった影響が懸念されている。
ランダム化比較試験では、小児のOI患者に対して経口アレンドロン酸を2年間投与した結果、骨代謝回転が有意に低下し、脊椎の面積骨密度(DXAで測定された骨塩量を骨面積で割った値)が増加したものの、骨折率の改善は認められなかった[Wardら 2011]。
別の研究では、経口リセドロン酸が面積骨密度の増加と初回・再発骨折の減少に寄与することが小児OI患者で示された[Bishopら 2010]。
ゾレドロン酸は、半減期が長く、効果が強力で、投与スケジュールが簡便であることから、小児のOI治療にも検討されている。年1回のゾレドロン酸静注と週1回の経口アレンドロン酸を比較した研究では、どちらも椎体骨密度の増加において同等の効果を示し、忍容性も良好であった[Lvら 2018]。

頭蓋底陥入症. 外科的治療は、症状がある場合にのみ考慮される。手術は通常、持続的/永続的な神経学的特徴が存在する前に行われる。手術を行う場合は、手術の経験が豊富なセンターで行う必要がある。

歯科治療. OI患者では歯の問題(歯の骨折、消耗、虫歯、不正咬合など)のリスクが高いため、目標は、一次歯列と永久歯列の維持、機能的な噛み合わせまたは咬合、最適な歯肉の健康状態、および全体的な外観である。ただし、OIの影響を受けた個人は、対処が難しいことが判明する可能性のある特定の歯槽の問題を呈するため、慎重なアプローチが推奨される。小児歯科医は、子供の象牙質形成不全症(DI)について最も知識がある。不安は子供にとって問題となる可能性があるため、抗不安作用のある前投薬(笑気鎮痛法やミダゾラムの使用など)を診療所で行うことを検討する。成人の歯科治療は、OIに精通した歯科医または補綴歯科の専門家によって行われるのが最善である。
明確なガイドラインはないが、OI歯科衛生の専門家は、ステンレス鋼やジルコニアクラウンなどのフルカバレッジ修復など、一次歯列の損傷または虫歯の治療を推奨している。永久歯列には、フルカバーの修復が推奨される。構造的な歯の喪失を促進するため、歯冠内修復(intracoronal restorations)は避けるべきである。単純抜歯は可能だが、静脈内ビスホスホネート投与の直前または直後には行うべきではない。ビスホスホネートを服用している骨形成不全症(OI)患者は、歯科医による継続的な経過観察を受ける必要がある。可能であれば、必要な歯科外科処置はビスホスホネート治療開始前、または治療終了後に計画されるべきである。手術部位が治癒するまでは、ビスホスホネート治療を再開すべきではない。
重症型のOIにおいては、明らかな骨格異形成が存在する場合でも、顎矯正手術(orthognathic surgery)は推奨されない。適応があれば、矯正治療を開始することは可能だが、歯がもろいため、矯正装置の使用には十分な注意が必要である。透明アライナー(クリアアライナー)は、矯正治療の有望な選択肢である [Rousseau et al 2018]。

難聴. システマティックレビューでは、OIの難聴を改善するための治療法を評価した。補聴器、人工内耳、アブミ骨インプラントは広く使用されている。それにもかかわらず、それらの成功率は、骨の脆弱性および血管が豊富であるかどうか(高血管性)によって影響を受ける。中耳手術は現在、補聴器がもはや有益でなくなった場合のOIにおける伝音難聴に最適な治療法である。しかし、アブミ骨手術の成功率はばらつきのある結果を示している。OIにおける人工内耳に関する論文の数は限られている。しかし、人工内耳は、OI患者の難聴を改善するのにほぼ実現可能であり、成功していることが証明されている。ビスフォスフォネートはOIの骨密度を増加させるために使用されるが、難聴を軽減するかどうかは明らかではない[Ugarteburu et al 2022]。

眼の症状. 必要に応じて目の怪我を防ぐために、保護メガネを使用することをお勧めする。眼科手術には注意して取り組む必要がある [Treurniet et al 2022]。

胃腸と栄養. 身長に見合った健康的な体重の維持と骨の健康増進を支援するための栄養教育を行いる。他の胃腸の問題に対する標準治療。機能性胃腸症状の発生率が高く、管理が困難な場合がある。

心血管系.一般的に、専門医サービスごとの標準治療が推奨され、追加または特定の心血管疾患のスクリーニングはない。リスクが高い個人のサブセットがあり、弁膜症、胸痛、呼吸困難、または心不全を示す症状を示唆する臨床徴候には、迅速な心血管評価が必要である [Folkestad et al 2025]。

.心肺合併症は、OIの成人における罹患率と死亡率の主な原因である。したがって、OIの種類や重症度に関係なく、肺の健康を維持することを優先する必要がある。肺疾患は人生の早い段階で発症する可能性があるため、肺の問題を抱える子供や大人は、呼吸困難、慢性咳嗽、頻繁な呼吸器感染症、睡眠時無呼吸症候群に必要な場合に肺治療の恩恵を受けることができる。呼吸器疾患(インフルエンザ、COVID-19、ジフテリア、肺炎球菌など)を予防するために、標準的な小児および成人のワクチン接種が推奨される。

メンタルヘルスのサポートは精神医学、心理学、ソーシャルワークを通じて、将来の骨折の不確実性に特有の潜在的な悪影響や疾患関連の苦痛、恐怖、懸念に対処するために推奨される。医療提供者は、骨折と気分の関係を認識し、骨折後および損傷の経過を通じて気分を評価して、必要に応じてサポートを提供する必要がある [Rork et al 2023]。

健康的なライフスタイル. OIの人々は、安全な運動と栄養価の高い食事を含む健康的なライフスタイルの恩恵を受けている。骨の健康を維持するためには、ビタミンDやカルシウムなどの栄養素を十分に摂取する必要がある。ただし、これらの栄養素の超大量摂取は推奨されない。余分な体重は骨格、心臓、肺にストレスを与え、簡単に動く能力を低下させるため、健康的な体重を維持することが重要である。さらに、OIの人は、喫煙、受動喫煙、過度のアルコール、カフェインの摂取、および可能であればステロイド薬を避ける必要がある。これらはすべて骨密度を低下させる[Osteogenesis Imperfecta Foundation 2013]。

致死型OIの管理.臨床症状の重症度および家族の希望に応じて、人工呼吸などの延命措置を行わず、乳児を自然に看取るという選択肢を両親に提案することが適切な場合もある。
しかし、かつて周産期致死性と診断された骨形成不全症(OI)の乳児が、実際には周産期を生き延びて退院に至った例も報告されていることから、すべての家族には、希望すれば医療的介入を選択できる機会が与えられるべきである。
新生児ケアには個別化されたアプローチが有効であり、最適な転帰を得るためには、出生前の多職種による評価から始めることが望ましい。

分娩方法や新生児期のケア計画は、個々の治療目標に基づき、家族との共同意思決定により策定される。
新生児管理の中心は、呼吸のサポートと疼痛管理である。
看護ケアでは、評価や処置をまとめて行うことで扱う回数を減らし、不必要な介入を控えるように努めるべきである。
投与可能になり次第、早期にビスホスホネート治療を開始することが推奨されることが多い。
家族が早期から育児や医療に関わり、継続的な心理社会的支援を受けられるよう支援する必要がある。
カウンセリングでは、予後には不確実性があることを正直に伝えつつ、非指示的な姿勢を保つことが求められる。 [Carroll et al 2025]。

サーベイランス

既存の症状、支持療法に対する個人の反応、および新たな症状の出現に対するサーベイランスには、集学的アプローチが推奨される(表10を参照のこと)。医療ニーズは年齢や個々の状況によって変化するため、各個人は生涯にわたって異なるニーズを持っている可能性がある。併存疾患は子供よりも成人に多く見られるため、大人はより広範かつ頻繁なフォローアップが必要になる可能性がある [Osteogenesis Imperfecta Foundation 2023]。

表10. COL1A1/COL1A2-OI:推奨されるサーベイランス

系/懸念事項 評価 頻度
筋骨 格 系 骨折、脊柱側弯症、およびその他の筋骨格症状を評価するための整形外科評価
  • 1歳まで3ヵ月ごと
  • 1-3歳から6ヵ月おき
  • その後、毎年、または新たな骨折やその他の筋骨格系の問題(長骨変形、扁平足、脚長の不一致、変形性関節症など)がある場合
成長の評価 幼少期と青年期の訪問のたびに
身体およびリハビリテーション医学、可動性およびその他の運動能力を評価するためのPT/OT評価 乳児期、運動遅延のある人、および高齢者の必要に応じて
痛みの評価 訪問のたびに
  • 骨疾患専門医による評価
  • 欠乏症を評価するためのビタミンDレベル
骨疾患専門医の推奨に従うか、年齢とOIの重症度に基づいて必要に応じて
DXAスキャン 5歳から。頻度は、OIの重症度、初期DXAスキャンの結果、および薬理学的治療の状態によって異なる1
  • 小児期の最初のDXAスキャンが正常である場合は、5年後に繰り返する
  • 最初のDXAスキャンでは異常であり、毎年繰り返さない。2〜3年ごとに考慮する
  • ビスフォスフォネートを使用している人は、より頻繁なDXAスキャンが必要である
神経 頭蓋底陥入症を評価するための頭蓋骨の基部全体のビューを伴うCTおよび/またはMRI検査 扁平頭蓋症、中等度から重度のOI、または徴候や症状が懸念される患者
頸椎屈曲および伸展X線写真 検査に協力的な子供(6歳以上)またはスポーツ活動に参加する前の軽症児
歯科 歯の健康状態を評価するための歯科検診
  • DIのある人、または乳児期からDIのリスクがある人のために6か月ごとに
  • 毎年、DIのないもの。
聴覚 聴力評価
  • 5歳から3年ごとに、正常な聴力を持つ人
  • HLの性質と程度に基づいて示される頻度、およびHLを伴う患者への関連介入
眼科 目の検査
  • 成人では少なくとも2〜3年ごとに
  • 眼科医による眼球所見とリスク評価に基づいて、必要に応じてより頻繁に
栄養 栄養と摂食の評価 必要に応じて
胃腸 GERD、便秘、またはその他の消化器系の問題に関連する症状の評価 訪問のたびに
GI評価 必要に応じて
循環器学
  • 心血管疾患の症状に対する臨床評価
  • 原因不明の症状(胸痛、腰痛、呼吸困難など)を伴うそれらのさらなる評価のための心臓専門医への紹介
必要に応じて
呼吸器内科 肺の問題(呼吸困難、慢性咳嗽、頻繁な呼吸器感染症、睡眠時無呼吸)および肺疾患のリスク(ワクチン接種状況、喫煙)の評価 訪問のたびに
呼吸器科の評価を検討する 肺疾患のある子供と大人
肺機能検査 成人または症状のある子供では1〜2年ごと
睡眠検査 睡眠時無呼吸症候群の症状がある方
メンタルヘルスの専門家
  • セラピスト、ソーシャルワーカー、心理学者による評価(ストレスを管理するスキルの開発に役立つかもしれない)
  • 気分障害の存在を評価する。
必要に応じて
遺伝カウンセリング 遺伝学の専門家によるフォローアップ1MOI、OIの種類、重症度、予後に関する教育を提供し、家族計画の決定を支援するため 必要に応じて

家族/コミュニティ

ソーシャルワーク支援(緩和ケア/レスパイトケア、在宅看護、その他の地域リソースなど)、ケアコーディネート、または新たな疑問が生じた場合のフォローアップ遺伝カウンセリング(家族計画など)に対する家族のニーズを評価する。

訪問のたびに

DI = 象牙質形成不全症;DXA = デュアルエネルギーX線吸収測定法;GERD = 胃食道逆流症;GI =胃腸;HL = 難聴;MOI = 遺伝形式。OI = 骨形成不全症

  1. 可能であれば、DXAスキャンは、異なる機器によって引き起こされるテスト結果のばらつきを避けるために、毎年同じマシンを使用して行う必要がある[Osteogenesis Imperfecta Foundation 2023]。
  2. 5歳より前のDXAスキャンは、しばしば鎮静剤が必要であり、正常値に関するデータは限られている。
  3. 子供のDXAスキャンの頻度については、コンセンサスが限られている。DXAスキャンの最小間隔は6〜12か月である必要がある。ビスフォスフォネートを投与されている人の毎年のDXAスキャンを検討する。それ以外の場合は、OIの重症度、初期DXAスキャンの結果、および薬理学的治療状況に応じて、2〜3年ごとまたは5年ごとにDXAスキャンを検討する。

回避すべき薬物や環境

幼児の場合は、急な加速/減速の動きを避ける。子供を空中に投げることは避ける。点的(局所的)な圧を最小限に抑えるために、おむつをするときは乳児の足首を持ち上げない。
転倒や衝突のリスクが高い接触スポーツや活動は避ける。
肺疾患のリスクを減らすために、喫煙や受動喫煙を避ける。過度のアルコールやカフェインの摂取は避ける。
骨の健康に影響を与える可能性のある物質や薬(ステロイドなど)を回避または制限することを検討する。

リスクのある親族の検査

患者の親族、見た目には無症状であってもリスクのある高齢または若年の親族について、遺伝的状態を明らかにすることは適切なことである。これは、脊椎検査や眼科・歯科・聴覚の評価によって早期に適切な対応が可能となる者をできるだけ早く特定するためである。
遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある近親者の検査に関連する問題については、遺伝カウンセリングを参照。

妊娠管理

OI患者の生殖能力は正常である。妊産婦の入院率と帝王切開率は、軽症OI女性と比較して、中等度または重症OIの個人で高かった。OIの女性から生まれた新生児は、低出生体重になるリスクが高く、新生児集中治療室への入院率が高かった。さらに、新生児のOI状態に関係なく、生後28日での新生児死亡率が高いことが報告されている[Rao et al 2021]。対照的に、デンマークの登録研究では、帝王切開の可能性の増加を除けば、一般集団と比較して合併症の増加は確認されていない [Lykking et al 2024]。

経腟分娩と比較した帝王切開は、OI患者の骨折率の低下と関連していなかった。帝王切開を選択するための強力な予測因子は、子宮内骨折、OIの母体歴、および骨盤位であった[Bellur et al 2016]。一般に、最適な荷渡方法に関する決定は、個別に行う必要がある。骨盤サイズが正常で、他の重大な合併症がないOIの女性において、帝王切開分娩が経腟分娩よりも安全であることを示す決定的な研究データはない。
後ろ向き多施設研究では、妊娠状態と授乳状態の両方が、BMD の減少に加えて、OI 患者の骨折リスクを増加させたと結論付けた [Koumakis et al 2022]。

OIおよび著しい骨格変形があり、かつ低身長の女性は、高リスク妊娠として出生前ケアセンターで妊娠中に綿密にフォローされるべきである。ほとんどのデータは、OI女性の妊娠は合併症のリスクが高いが、成功した妊娠をしているが、を裏付けている。これらの合併症を認識することで、適切な妊娠前カウンセリングと潜在的な害を減らすための積極的な対策が可能になり、妊娠と産後の期間に関連する修正可能な危険因子を認識することができる [Rao et al 2021]。

研究中の治療法

OIでの使用については、いくつかの薬剤が検討されている(図1を参照)。調査中の薬剤の一部は、すでにOIの適応外治療として使用されている。

り、妊娠と産後の期間に関連する修正可能な危険因子を認識することができる [Rao et al 2021]。

図 1.
骨リモデリング機構の概念と治療介入の標的を示した図。
ビスホスホネートは、破骨細胞の働きを抑えることで骨密度を高める代表的な治療薬である。
現在では、異なる生理学的経路を標的とした新しい治療薬もいくつか開発されている。

テリパラチドは、骨同化作用を持つヒト1-34副甲状腺ホルモン(PTH)である。OIにおけるテリパラチドの使用を検討した3つの研究(別の大規模な臨床試験はまだ進行中)[Liu et al 2024]がある。青色強膜を伴う古典的非変形型OI、変形進行型OI、および正常強膜を伴う一般可変型OIの79人を対象とした二重盲検プラセボ対照試験では、18か月のテリパラチド治療が、プラセボと比較して、腰椎の面積BMD(aBMD)の増加(1.0%±1.0%±2.8%)および股関節の総BMD(2.6%±1.0%対-2.4%±1.0%の変化)と関連していることが示された[Orwoll et al 2014].テリパラチド療法は、脊椎の体積BMD(vBMD)の増加と、有限要素解析によって評価された推定脊椎強度の増加と関連していた。OIサブグループの事後評価では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIを持つ人々には正の骨格効果があったが、より重症型のOI患者にはなかったことが示唆された[Orwoll et al 2014]。別の研究では、ネリドロネート治療中に脊椎骨折をした、青色強膜を伴う古典的非変形型OIの閉経後女性13人が含まれていた[Gatti et al 2013]。この研究では、テリパラチド療法中に平均脊椎 aBMD が 3.5% 増加したことが報告されたが、股関節の総 aBMD に変化はなかった [Gatti et al 2013]。さらに、より大規模な多施設無作為化二重盲検研究では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIの98人の個人におけるテリパラチドとネリドロネート治療の効果が調査された。2年後の腰椎aBMDの平均変化は、テリパラチド群で5.1%、ネリドロネート群で-1.6%であった。テリパラチド群とネリドロネート群における新たな脆弱性骨折の数は有意差(それぞれ16%と27%)はなかった[Leali et al 2017]。
最後に、前向き無作為化比較試験(TOPAZ、副甲状腺ホルモンとゾレドロン酸によるOI治療;NCT03735537)は、OIの臨床診断を受けた成人の骨折率を調べており、テリパラチドとそれに続くゾレドロン酸の単回注入で2年間治療されている。参加者は、テリパラチドとゾレドロン酸または標準治療を受けるために 1:1 の比率で無作為に割り付けられている。この研究は、350人の参加者という目標への登録を完了し、2025年に結果を報告する予定である[Hald et al 2023]。

抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブなど)。スクレロスチンは、主に骨細胞と一部の軟骨細胞から分泌される単量体糖タンパク質である。スクレロスチンはLRP5/6受容体に結合し、Wntシグナル伝達経路を阻害し、骨芽細胞による骨形成の減少につなげる[Muñoz-Garcia et al 2023]。ロモソズマブは、骨粗鬆症の治療薬としてFDAに承認されたヒト化免疫グロブリンG2モノクローナル抗体であるクレロスチンに結合し、Wntシグナル伝達経路の阻害を防止する。その結果、ロモソズマブは骨形成を促進し、程度は低いものの骨吸収を減少させ、皮質骨と海綿骨の骨量を増加させる可能性がある [Miller et al 2021]。オムシマブの成人骨粗鬆症患者を対象としたロモソズマブ治療の最初の報告では、BMDと骨代謝回転マーカーの改善が報告された[Uehara et al 2022]。ロモソズマブはOI患者に有効な治療法となる可能性があるが、その有効性と安全性を確認するためには、さらなる試験が必要である。

セトルスマブは、スクレロスチン活性を阻害する別のモノクローナル抗体である。セトルスマブは、成人OIを対象とした12カ月間の無作為化二重盲検第IIb相試験で評価された。90人の参加者が、利用可能な3種類のセトルスマブ(2、8、または20mg/kg)のいずれかで治療された。この研究では、高解像度末梢CTで測定した橈骨小柱vBMDの増加という主要評価項目は達成しなかったが、総橈骨vBMDは用量依存的に増加した。最高用量では、青色強膜を伴う古典的非変形型OIと正常強膜を伴う一般可変型OIの脊椎aBMD増加は、それぞれ8.81%と10.38%であった。最高用量では、すべてのOIタイプで股関節と大腿骨頸部の総aBMDが増加した(それぞれ2.48%と3.37%)。さらに、この研究では、すべての用量群で脊椎と股関節全体のaBMDの有意な増加が示された。セトルスマブ注は、全体的に忍容性が良好であった。セトルスマブ20mg/kg投与群の参加者2名はアナフィラキシー1名、頭痛および水頭症1名の治療関連の有害事象を呈した。および非盲検投与群の2名は1名が頭痛と悪寒、1名が肺高血圧症として治療に関連すると考えられる重篤な有害事象が報告された。これらの、成人のOI患者におけるセトルスマブの有望な結果から、第III相試験の開始につながっている[Glorieux et al 2024]。成人および小児OIを対象としたセトルスマブを用いた他の臨床試験も開発中または進行中である訳注7(NCT05125809参照)。
(訳注7:本邦でも小児を対象とした治験が開始されている)

トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)阻害剤(フレソリムマブ)。前臨床試験では、過剰なTGF-βは、より重篤な形態のOIで観察されるリモデリング異常の主要なプレーヤーとして関与している。ブロッキング抗体の使用によるTGF-βシグナル伝達の阻害は、骨量の改善、特定の骨生体力学的特性、および肺の異常な肺胞パターンの修正と関連していた。TGF-β中和抗体であるフレソリムマブの小規模な第II相試験では、オステオカルシンの血漿中濃度によって評価される骨リモデリングの減少と関連していた。この研究では、正常な強膜を持つ一般的な変数OIの参加者に腰椎aBMDへのプラスの効果が見られたが、他のより重篤な形態では見られなかった[Song et al 2022]。このアプローチの有用性をさらに評価するために、より大規模な研究が進行中である [Liu et al 2023]。

RANKリガンド抗体は破骨細胞の成熟を阻害し、治療中の椎体BMDの増加、椎体形状の正常化、椎体圧迫骨折の減少が研究で示されている。しかし、リバウンド性高カルシウム血症が懸念されており、抗RANKL抗体であるデノスマブは、現在、小児OI患者の治療には推奨されていない[Stasek et al 2024]。OIの成人におけるデノスマブの治療的役割は依然として不明である。

他.臨床試験を超えて進んでいない治験薬には、カテプシンK阻害剤とヒト成長ホルモンが含まれる。

骨髄幹細胞移植. 正常な骨芽細胞へ分化する能力を持つ正常な間葉系幹細胞を導入するための骨髄幹細胞移植や、体内の骨成長を刺激する因子を産生する移植用間葉系間質細胞の利用は、骨形成不全症(OI)患者を対象に、多くの小規模な試験で評価されてきた。この治療アプローチは研究中であり、OI の有望な治療法である [Dinulescu et al 2024]。2.5年間にわたって実施されたTERCELOI臨床試験には、中等症および重症のOIの2人の子供が含まれ、同胞の骨髄幹細胞が繰り返し注入された。どちらの子供もBMDの増加と骨折率と慢性疼痛の減少を示した。また、治療を中止してから 2 年間の追跡調査で有益性が観察された [Infante et al 2021]。ヒト胎児間葉系幹細胞(hfMSC)も、骨形成のアップレギュレーションレベルが高く、カルシウムをより多く産生する可能性があるため、使用されている。2016年1月1日から2022年12月31日まであるスェーデンのカロリンスカ研究所で実施された試験「Boost Brittle Bones Before Birth」(BOOSTB4)は、変形進行型OIおよび正常強膜を伴う一般可変型OIの小児に出生前および出生後にhfMSCを投与したが、結果は発表されていない。しかし、17人の参加者が1〜4回のhfMSC投与を受けた予備的な結果では、合併症は報告されていない。また有効性はまだ評価されていない [Lindgren et al 2022] (NCT03706482参照)。

米国およびEUのSearch ClinicalTrials.gov Test in Europeでは、さまざまな疾患や症状の臨床試験に関する情報が参照できる。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

COL1A1およびCOL1A2関連の骨形成不全症(COL1A1/COL1A2-OI)は、常染色体顕性遺伝形式で遺伝する。

家族構成員のリスク

発端者の両親

注:親の白血球DNAの検査では、すべての体細胞モザイクが検出されるわけではなく、生殖細胞(性腺)細胞のみに存在する病原性バリアントは検出さない。
*COL1A1またはCOL1A2病的バリアントに対する体細胞モザイクおよび性腺モザイクの親は、OIの表現型の特徴を持たないか、軽症または最小限の症状のみ呈している可能性がある(遺伝型-表現型相関関係を参照)。

発端者の同胞 

発端者の同胞へのリスクは、発端者の両親の臨床的/遺伝的状態によって異なる。

発端者の子

COL1A1/COL1A2-OIを有する患者の子は、COL1A1またはCOL1A2病的バリアントを継承する可能性が50%ある。

他の家族構成員

他の家族に対するリスクは、発端者の両親の状態によって異なる。
もし親のいずれかが発症していれば、その親の家族もリスクを有する。

関連する遺伝カウンセリング上の諸事項

発端者の他の家族 

早期診断と治療を目的としたリスクのある親族の評価については、管理、リスクのある親族の評価を参照。

家族計画

ハイリスク妊娠

注:在胎週数は、最後の正常な月経期間の初日から計算された月経日数または超音波測定によって表される。

低リスクの妊娠

定期的な出生前超音波検査では、COL1A1/COL1A2-OIのリスクがあることが知られていない胎児が特定され、胎児の骨のエコー源性の低下、屈曲した、しわくちゃの大腿骨、ビーズ状の肋骨、骨折の証拠、および頭蓋骨の石灰化の著しい減少を含むOI(周産期致死型OIまたは進行的に変形するOI)を示唆する所見を有する胎児が特定される場合がある。このような知見の評価の一部として、COL1A1およびCOL1A2分子遺伝学的検査が考慮される可能性がある;しかし、病的バリアントを同定できないからといって、胎児のOIの診断が除外されるわけではない。
出生前および着床前診断に関して、医療専門家間および家族内で見解の違いが存在する可能性がある。ほとんどの医療専門家は、出生前および着床前診断は個人的な決定であると考えているが、これらの問題についての議論が役立つ場合がある。
(訳注8、前述したように本稿では出生前診断、着床前診断という用語を使用した)

出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査

分子遺伝学的検査

家系内に存在するOFD1の病的バリアントが同定されている場合は、出生前検査や着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。

超音波検査

50%のリスクを有するOFD1罹患女性の妊娠において、出生前の超音波検査で、構造的脳奇形(例えば、孔脳症)[Carssら2014,Alamilloら2015]や骨格異常が同定される場合がある。

OFD1に関して高リスクであることがわかっていない妊娠において、構造的脳奇形に加えて片側性の拇趾の多趾症(重複拇趾)がみられたときは、OFD1の可能性を考慮すべきである。そうした例については、OFD1の症候がないか、母親のほうを評価することが望ましい。


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Mercedes Rodriguez Celin, MD, Robert D Steiner, MD, and Donald Basel, MD.
    日本語訳者:瀬戸 俊之 (大阪公立大学大学院医学研究科臨床遺伝学) GeneReviews最終更新日: 2025.5.29. 
    日本語訳最終更新日:  2025.7.111.[in present]

原文: COL1A1- and COL1A2-Related Osteogenesis Imperfecta

印刷用

 

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