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先天性副腎過形成 21水酸化酵素欠損症
(21-Hydroxylase-Deficient Congenital Adrenal Hyperplasia)

[21-OHD CAH; CAH, 21-OHD CAH; Virilizing Adrenal Hyperplasia]

Gene Review著者:Saroj Nimkarn, MD  Maria I New, MD
日本語訳者: 大畑 尚子 (沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センター)
Gene Review 最終更新日: 2013.8.29 日本語訳最終更新日: 2015.4.9

原文 21-Hydroxylase-Deficient Congenital Adrenal Hyperplasia


要約

疾患の特徴 

21-水酸化酵素欠損症(21-OHD CAH)は,先天性副腎過形成(CAH)の最も頻度の高い原因であり,副腎皮質におけるコレステロールからコルチゾールへの合成障害を認める常染色体劣性遺伝疾患である.21-OHD CAH では,副腎アンドロゲンの過剰な生合成によりすべての患者に男性化を認め,また一部の患者に塩類喪失を認める.重症の酵素欠損を認め出生前に発症する古典型と,軽度の酵素欠損を認め出生後に発症する非古典型とに区別される.古典型はさらに単純男性化型(〜25%)とアルドステロン産生が不十分な塩類喪失型(75%以上)に分けられる.塩類喪失型21-OHD CAHの新生児は生命を脅かす塩類喪失クリーゼのリスクがある.非古典型21-OHD CAHの患者は出生後にアンドロゲン過剰症状を呈する;非古典型の女性は出生時には男性化を認めない.

診断・検査 

21-OHD CAHの診断は生化学検査で行われる.CYP21A2遺伝子の頻度の高い9種の変異と遺伝子欠失を調べるパネルを用いた分子遺伝学検査によって,罹患者や保因者における原因アレルの80-98%を特定できる.遺伝子のコード領域及び隣接するプロモーター領域の全シークエンスを行うことで,標的遺伝子の変異,欠失/重複解析では変異を特定できなかった罹患者において,まれなアレルを特定できるかもしれない.

臨床的マネジメント 

症状への対応:古典型21-OHD
 CAHの治療はグルココルチコイドの補充療法でありストレス時にはその増量が必要である.塩類喪失型21-OHD CAHの患者ではミネラルコルチコイドである9α-フルドロハイドロコルチゾンとしばしば塩化ナトリウムの補充が必要である.出生時に男性化を認める女児は女性型性器形成や腟拡張が必要である.非古典型21-OHD CAHで症状を有する場合には治療が必要かもしれない.

予防的対応:新生児スクリーニングは,古典型21-OHD CAHの児を発見し生命を脅かす塩類喪失クリーゼを発症する前にグルココルチコイド及びミネラルコルチコイドの治療を開始することを目的としている.

評価グルココルチコイド/ミネラルコルチコイドの補充療法についての評価は成長期には3-4ヶ月毎に行いそれ以降はより長期間にして差し支えない.
男性における精巣異所性副腎腫瘍について,思春期発来後は3-5年ごとにモニタリングする.
成人期には体重,骨密度,妊孕能,心血管及び代謝に関する問題がある.

血縁者の評価:新生児スクリーニングで17-OHPの測定を行うことで同胞の早期診断早期治療が可能である.

遺伝カウンセリング 

21-OHD CAHは常染色体劣性遺伝疾患である.ほとんどの親は一方が正常,もう一方が変異アレルというヘテロ接合体である.約1%の変異は新生突然変異で起こる.したがって発端者の1%は片方の親のみがヘテロ接合体である.また検索の過程でそれまで罹患しているとは思われていなかった親が非古典型21-OHD CAHであると判明するケースもある.もし発端者の両親がいずれもヘテロ接合体で変異がある場合,変異アレルを両方受け継いで罹患する確率は25%,変異アレルをひとつだけ受け継いで無症候性保因者となる確率は50%,正常アレルだけを受け継いで罹患しない確率が25%である.変異アレルが判明している場合保因者診断,出生前検査が可能である.

GeneReview Scope

21-水酸化酵素欠損症先天性副腎過形成は以下の疾患を含む

  • 古典型単純男性型 21-OHD CAH
  • 古典型塩類喪失型 21-OHD CAH
  • 非古典型 21-OHD CAH

診断

臨床診断

以下の場合 21-水酸化酵素欠損症 先天性副腎過形成(21-OHD CAH)を疑う.

  • 女性で,出生時に男性化を認める,出生後に男性化を呈する,思春期早発や副腎皮質性思春期徴候を認める場合.男性化は,成熟,成長(高身長),性ホルモン感受性の部位(外陰部,皮膚,毛髪)(二次性徴を引き起こす)に見られる.
  • 小児期に男性化を認める男児(偽性思春期早発症)
  • 生後4週以内に塩類喪失クリーゼを伴う乳児

検査

未治療罹患者

17-ハイドロキシプロゲステロン(17-OHP)
21-OHD CAHの診断は主として血清17-OHP測定−基礎値もしくはACTH負荷後の値いずれかによってなされる.(図1及び表1)

図1 21-OHD の17-OHP検査結果(コートロシン負荷60分後).New York Hospital-Cornell Medical Center小児科における1982年から1991年のデータによる.

表1
17-OHPレベルによる乳児21-OHD CAH の診断

 

古典型

非古典型

非罹患

17-OHP基礎値

>10,000ng/dl        または300nmol/L

200-10,000ng/dl      または
6-300nmon/L

<200ng/dl  
または6nmol/L

ACTH負荷後17-OHP値

>10,000ng/dl        または300nmol/L

1,000-10,000ng/dl   または
31-300nmon/L  

<1,000ng/dl   
または50nmol/L

注:性別や思春期の発育段階ごとの17-OHPの正常範囲は,その計測法により異なる.成人女性では月経周期に影響を受ける.

血漿レニン 

  • 血漿レニン活性(PRA)は塩類喪失型21-OHD CAHにおいて著明な上昇を認める.
  • 単純男性化型の患者の一部で上昇することがある.

他の副腎ステロイド

  • 21-OHD CAHの男性,女性ともに,血清Δ4-アンドロステンジオン,21デオキシコルチゾール,プロゲステロンの濃度が上昇する.
  • 罹患女性と罹患思春期前男性で,テストステロン,副腎アンドロゲン前駆体が上昇する.

注:塩類喪失型の21-OHD CAH患者においては,血清中のアルドステロン濃度は血清レニン活性と比較して不釣り合いに低い.アルドステロン血清レニン活性比の低下はアルドステロン合成の障害を示しており,新生児期に塩類喪失型と単純男性型を鑑別する事に役立つ.

ACTH負荷試験

17-OHPの基礎値及び合成ACTH(コートロシン)250μg静注後60分値を測定し図1の表にプロットする.

注:21-OHD CAH診断にあたって,ACTH負荷試験は基礎値だけを測定するよりもより信頼性が高いが,新生児にとっては比較的多くの採血が必要であることや,適切な集中治療環境での実施が困難であること,新生児が臨床的に不安定な状態にあるなどの理由で実施できないこともあるかもしれない.このような場合や,判断に迷う症例では分子遺伝学的検査にて確認するようがより適切である.

電解質

未治療あるいはコントロール不良の塩類喪失型の患者は血清ナトリウム,クロール濃度, CO2濃度の減少を認め,カリウム濃度の増加および尿中ナトリウム濃度の不適切な増加を認める.

核型

21-OHD CAH女性の核型は正常46,XX,男性の核型は正常46,XYである.

保因者

正常アレルと変異アレルをひとつずつ有するものは保因者(heterozygotes)であり,無症候性である.しかし2つとも正常アレルの人に比べてACTH負荷により血清17-OHPの濃度がわずかに高値を示す(図1).ACTH刺激後の17-OHP濃度はheterozygotesと非保因者の間でオーバーラップすることがあるためこのような検査は保因者診断のためにはもはや使用されず,分子遺伝学的検査が推奨される.

新生児スクリーニング

21-OHD CAHの新生児スクリーニングには2つの目的がある.

  • 生命を脅かす塩類喪失クリーゼのリスクのある古典型21-OHD CAHの乳児を見つけるため
  • 外性器形態があいまいな女児の診断を迅速に進めるため

注:新生児スクリーニングでは全てではないが非古典型21-OHD CAHの患者も検出されうる.

21-OHD CAHの新生児スクリーニングが義務づけられている州はNational Newborn Screening Status Report(pdf)で確認できる.17-OHP濃度はほかの新生児スクリーニングと同様に足底採血により得られたろ紙の血液スポットにて測定される[Pang&Shook 1997].

  • 多くのスクリーニングプログラムは単回の測定を行っており17-OHP濃度に疑問のもたれる結果に対する再検査は行っていない [Speiser ら2010].
  • スクリーニングの有効性を改善するために,最初のスクリーニングで境界域だった場合に再検査を行うプログラムがある[Sarafoglou ら2012, Chan ら 2013] .例えば,免疫学的検査の偽陽性率は高いため,2回目の検査としては液体クロマトグラフィータンデム質量分析法が推奨された[Speiserら 2010].初回検査で陽性であった検体では,2回目の検査で他のホルモン(17-OHP,21デオキシコルチゾール,コルチゾール)の測定を行っているプログラムもある[Janzenら 2007].いくつかの州では特異度を改善するため乾燥した血液スポットの免疫学的検査の前に有機溶媒抽出法を義務付けている.

    注:

    (1)生後24時間以内に採取された検体では全ての新生児で値が上昇しており,偽陽性結果を示すことがある[Allenら 1997,Therrellら 1998].

    (2)偽陽性結果は低出生体重児[Allenら 1997]や未熟児[al Saediら 1996]でも認められる.したがって検査陽性となった場合には,体重,週数で補正したデータを用いて判定を行う.

    (3)本疾患と関係のない別の問題のためデキサメサゾンを投与された新生児において偽陰性となる可能性がある.

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 CYP21A2は21-OHD CAHに関与している唯一の遺伝子である.

臨床検査

表2  21-OHD CAHで用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1

検査法

同定される変異2

変異検出率3

CYP21A2

標的変異解析

頻度の高い点変異と30-kb欠失 4,5,7

〜80-98%

欠失/重複解析6

(多)エクソン及び遺伝子全体の完全欠失/重複7

〜20-30%

シークエンス解析8

その他のアレル 5

〜70-80%

  1. 遺伝子座やタンパク名についてはTable A 遺伝子とデータベースを 参照
  2. アレル多型についての情報は分子遺伝学の項を参照
  3. 標的遺伝子に存在する変異を検出するために用いられる検査の能力
  4. 変異パネルは研究室によってさまざまである.通常含まれる変異はc.293-13A>G, c.293-13C>G, p.Pro31Leu, p.Ile173Asn, exon 6 mutation cluster p.[Ile237Asn;Val238Glu;Met240Lys], p.Val282Leu, p.Leu308PhefsTer6, p.Gln319Ter, p.Arg357Trp, p.Pro454Ser, p.Gly111ValfsTer21, 及び 30-kb欠失である.これら頻度の高い変異の多くは,遺伝子変換の結果生じたものである(分子遺伝学の項を参照).
  5. 21-OHD CAHの罹患者の多くが複合ヘテロ接合体である.
  6. ゲノムDNAのコード領域と隣接イントロン領域のシークエンス解析では容易には検出できないような欠失/重複を同定する検査;定量PCR,ロングレンジPCR,MLPA, 染色体マイクロアレイなど
  7. 変異アレルの約20%はCYP21A1P偽遺伝子の3'側 と隣接する補体C4B遺伝子の全体,そしてCYP21A2遺伝子の5'側を含んだ30-Kbの欠失である.
  8. シークエンス分析によって検出される変異の例としては,小さな遺伝子内欠失/挿入,ミスセンス変異,ナンセンス変異,スプライスサイト変異などである.一つまたは多数のエクソンの欠失や重複はシークエンス分析によって検出されず,欠失/重複解析を要する事がしばしばある.

検査結果の解釈

標的遺伝子変異解析の解釈について考慮すべき問題

  • 大規模な遺伝子変換では,機能を有するCYP21A1P遺伝子が,1つ以上の機能障害を引き起こす変異のため非機能性となったCYP21A1P偽遺伝子と入れ替わる[Mao ら 2002].そのため標的変異解析で複数の変異が明らかになった場合,これらの変異は同一アレル上に乗っているか(cis; 多くは遺伝子変換の結果発生する),対立アレルに乗っているか(trans; それぞれの両親から遺伝している)を区別することが可能である.診断エラーを回避するために,発端者と同時に両親の変異解析を行い,cisかtransかを決定することが推奨される.
  • CYP21A2遺伝子の重複も診断を誤らせる原因となる[Koppens ら 2002].ある集団に対してCYP21A2アレルを解析したところ7%で重複があったとの報告もある[Parajes et al 2008]. よく見られるハプロタイプがp.Gln319Ter 変異アレル と正常なCYP21A2アレルが同じ染色体上に存在するというものである[Kleinle et al 2009].これは明らかに保因者と判明していない人に対する保因者スクリーニングの際に偽陽性となる原因となりうる.機能を有する遺伝子と変異を有する複製されたコピーとが同じ染色体上にある人が誤って保因者とされると,出生前診断の際に誤った結果が導かれる可能性がある[Lekarev et al 2013].こういった場合は,欠失/重複解析やハプロタイプ解析が必要である.

検査ストラテジー

新生児(生後数日)の診断

17-OHP濃度上昇のため新生児スクリーニング陽性となった場合,21-OHD CAHのリスクがある,または外性器形態があいまいな場合には以下を必要とする.

  • 血清17-OHPと副腎アンドロゲンの濃度測定

    注:
    (1)17-0HP濃度が非常に上昇している場合新生児期に古典型21-OHD CAHを診断することは適切である.スクリーニング陽性であり明らかな電解質異常や循環状態の不安定さを呈する乳児の治療はACTH負荷試験の実施を待って遅れてはならない.
    (2) ACTH負荷試験は診断確定のために実施されることがあるが,比較的多くの採血が必要であることにより制限がある.ACTH負荷試験は生後72時間以内には実施しない[Nimkarn et al 2011].

  • 副腎クリーゼの症状に注意しながら血清レニン活性(PRA)と電解質の測定
  • 21-OHD CAHの診断確定のため CYP21A2遺伝子の分子遺伝子学的検査
    • まず標的変異解析を実施し,もし変異が同定されない場合や変異が一つしか同定されない場合に欠失/重複解析を実施する.
    • もし標的変異解析と欠失/重複解析で2つの病的変異が同定されない場合には,全遺伝子シークエンス解析を考慮する.

    注:21-OHD CAHの新生児スクリーニング陽性となった乳児は,それぞれの地域で決められたプロトコールに沿って評価する必要がある.これらのアルゴリズムについてのガイドラインはwww.acmg.net.を参照.

非古典型21-OHD CAH発端者の診断

  • ACTH負荷試験の60分値

または

  • 早朝(8:00am前)血清17-OHP濃度測定(罹患児の基礎値は常に上昇しているわけではない)

及び

  • CYP21A2遺伝子の分子遺伝子学的検査

保因者診断

疾患の原因となっている遺伝子変異が同定されていることが必要.

注:保因者は常染色体劣性遺伝性疾患の変異のヘテロ接合体であり,疾患を発症する可能性はない.

遺伝子型と表現型の関連による罹患者の予測

もし塩類喪失型と関連する遺伝子型が同定された場合,ミネラルコルチコイド(9α-フルドロハイドロコルチゾン)投与と塩補充によって塩類喪失クリーゼを回避することができる.

出生前診断,着床前診断

診断に先立って家系内で疾患の原因となっている遺伝子変異が同定されていることが必要.

遺伝学的に関連する疾患

21-OHD CAH以外のCYP21A2遺伝子変異と関連している表現型はわかっていない.


臨床的特徴

臨床像

先天性副腎過形成(21-OHD CAH)は古典型と非古典型がある(表3).

古典型21-OHD CAHでは,出生前の性分化における重要な時期にテストステロンやΔ4 -アンドロステンジオンなどのアンドロゲンに曝露された結果,遺伝学的女性の外性器に男性化をきたし,時にあいまいな外性器形態で出生する.古典型はさらに単純男性化型(〜25%)とアルドステロン合成が不十分な塩類喪失型(〜75%)に細分される.21-OHD CAHによって塩類喪失型CAHを生じている新生児では生命にかかわる塩類喪失クリーゼをおこす危険がある.

非古典型21-OHD CAHの患者では酵素欠損は中等度で,出生後にアンドロゲン過剰症状を示す.非古典型の女性患者では出生時の男性化はみられない.

Table 3 古典型,非古典型21-OHD CAH患者の臨床像

徴候

21-OHD CAH

古典型

非古典型

出生前男性化

女性に見られる

なし

出生後男性化

男女ともに見られる

さまざま

塩類喪失

〜75%

なし

コルチゾール欠損

〜100%

まれ

古典型単純男性化型 21-OHD CAH

副腎アンドロゲン合成過剰 子宮内での副腎アンドロゲン合成過剰は 46,XXの正常核型をもつ女児の出生時の男性化を招く.罹患女性ではアンドロゲン過剰によりさまざまな程度の陰核肥大,陰唇融合,尿道腟ろうの形成を招く.抗ミュラー管ホルモン(AMH)が分泌されないため,罹患女性におけるミュラー管から子宮と卵管が形成される過程は正常である.罹患女性の出生時の男性化の程度からのみでは単純型21-OHD CAHと塩類喪失型21-OHD CAHを鑑別することはできない.

出生後,グルココルチコイド補充を受けない単純男性化型 21-OHD CAH患者では男女とも陰毛や腋毛の早期出現,ざ瘡,急速な身長の伸び,骨年齢の促進といったアンドロゲン過剰による徴候が現れる.無治療の男性では陰茎の肥大と小さな精巣を認める.無治療の女性では陰核肥大,多毛,男性型禿頭,月経異常,妊孕能の低下を認める.

無治療の21-OHD CAH罹患児では当初の身長の伸びは急速であるが,骨端の早期閉鎖のために成人期の最終身長は低くなる.コルチゾール補充による治療を早期に開始し副腎アンドロゲン分泌をコントロールできたとしても,通常期待する最終身長には到達しない.骨年齢は実年齢より促進している.

思春期の発来 適切にグルココルチコイドの治療を行われ副腎アンドロゲンの産生を抑制された児は男女ともにたいていは適切な年齢で思春期が発来する.しかし,疾患がよくコントロールされている患者であっても例外はある.

早期に治療を行われずにいた子供たちは,グルココルチコイド補充療法を開始することで真の思春期早発を引き起こすことに留意が必要である.過剰な副腎アンドロゲン由来のエストロゲンによる視床下部下垂体系の抑制がグルココルチコイド治療によって解除されることで,中枢性の思春期早発が起こると考えられる.

妊孕性 適切に治療された女性の大部分では,初潮後の月経は正常で妊娠も可能である[Loら 1999].しかし,妊娠率は低いと報告されている.その理由として,腟口が狭く十分性交ができない,腟を貫通する痛みがある[Gastaud ら2007],アンドロゲンの上昇により卵巣機能が低下している,性自認やセクシャルパートナーの選択に関する性心理の問題などが挙げられる.慢性的な無排卵,プロゲスチンレベルの上昇,異常な子宮内膜なども妊孕性の低下の原因とされている.

男性 男性の生殖能低下の主な原因は異常な副腎組織に由来すると考えられる精巣異所性副腎腫瘍(TART) が存在である.また低ゴナドトロピン性性腺機能低下症は過剰な副腎アンドロゲンやその代謝産物によって下垂体のLH分泌が抑制されることによる[Ogilvieら 2006].

副腎髄質 古典型 21-OHD CAH患者ではコルチゾールの欠乏が成長や副腎髄質機能にも影響を与え,非罹患者に比べエピネフリンやメタネフリン濃度は低くなる[Merkeら 2000].

古典型塩類喪失型 21-OHD CAH  21-OH機能喪失が重度である場合,腎遠位尿細管からのナトリウム再吸収に必要な副腎アルドステロン分泌が不十分となり,患者はコルチゾール欠乏やアンドロゲン過剰とともに塩類喪失も呈する.腎性塩類喪失を伴う新生児は哺乳不良,体重減少,成長不全,嘔吐,脱水,低血圧,低ナトリウム血症,高カリウム性代謝性アシドーシスを示し,副腎クリーゼ(高窒素血症,循環不全,ショック,死亡)に進展する.副腎クリーゼは早ければ出生後1から4週に発症する.
男性の場合外性器形態からは認識されないため,新生児スクリーニングで発見されなかった罹患男性は塩類喪失型副腎クリーゼの高いリスクを有する.こうした患者はしばしば診断されないまま退院し,家で塩類喪失クリーゼを発症する. 逆に外性器形態があいまいな塩類喪失型の女性の場合早期に診断,治療を受けることができる.

明らかな塩類喪失クリーゼを発症した場合,その児は塩類喪失型と分類されるが,すべてのタイプの21-OHD CAHにおいてさまざまな程度のアルドステロン欠乏は存在し,それはレニン刺激に対する副腎のアルドステロン産生能によって規定される[Nimkarn ら 2007].

非古典型 21-OHD CAH

非古典型 21-OHD CAHは出生後のいろいろな時期に,座瘡,陰毛の早期出現,急速な成長,骨年齢の促進,さらに古典型21-OHD CAHと同様の早期骨端閉鎖による最終的な低身長といったアンドロゲン過剰による症状を伴って発症する[New 2006].非古典型21-OHD CAHで見られるコルチゾール産生の軽度低下は臨床的には明らかではない.

女性の非古典型 21-OHD CAH 非罹患女性が男性化徴候を呈するかどうかを予測することは困難である[Kashimada ら 2008].古典型21-OHD CAHに罹患した女性の出生時の外性器は正常であるが,出生後に多毛,前頭部禿頭,初経の遅れ,月経不順,不妊といった症状を呈してくる.21-OHD CAHの成人女性の約60%は多毛を示すのみで,約10%が多毛と月経異常,そして約10%は月経異常のみを示す.

非古典型21-OHD CAH女性の多くは多嚢胞性卵巣を生じる.

無治療女性の妊孕性は50%と報告されている[Pang 1997].

高アンドロゲン血症の女性の2.2〜10%で,非古典型21-OHD CAHと診断されたとの報告がある[New 2006, Escobar-Morreale ら 2008, Fanta ら 2008].

男性の非古典型 21-OHD CAH男性の非古典型21-OHD CAHに関する報告はほとんどない.早期にあごひげが生えたり,比較的小さい精巣に大きな陰茎を伴ったりする.典型的には性腺の障害はなく精子数は正常である[New 2006].非古典型21-OHD CAH成人男性で唯一の所見が両側副腎皮質偶発腫瘍であった例が報告されている[Nigawara ら2008].

性役割行動 古典型21-OHD CAHの女性における出生前のアンドロゲン暴露は,外性器形態と小児期の行動に男性化の影響を及ぼす.

小児期の遊技行動と女性としての充足感の減弱や成人期の異性愛への興味が少ないこととは関連性がある.罹患成人女性は性的違和を感じやすく,異性への興味が少ない,女性という性別を割り当てられることに対する満足感が少ないといった傾向がある.出生前のアンドロゲン暴露は成人女性による自己申告での女らしさを減弱させるが,男らしさを増加させるわけではない[Longら 2004]..

両性もしくは同性への性志向を持つ割合は,すべてのタイプの21-OHD CAH女性において高く,出生前のアンドロゲン曝露の程度と関連していると報告された.両性愛/同性愛は非性的行動の男性化と関連し,出生前のアンドロゲン曝露,小児期の行動の男性化の程度とは独立して予測されるとの報告がある[Meyer-Bahlburg ら 2008].

逆に21-OHD CAHの男性は小児期の行動や性自認,性志向に大きな変化は見られない[Hinesら 2004]

病因 cytochrome 450の21水酸化能が障害されていると,コルチゾール産生経路がブロックされ,17-OHPが蓄積する.過剰な17-OHPはアンドロゲンの経路へと流れ,17,20-lyaseによりΔ4-アンドロステンジオンに変化し,アンドロゲンに変換される.ミネラルコルチコイドの経路が必要とする21水酸化能はわずかであり,ミネラルコルチコイド欠損(塩類喪失)はこの疾患の最も重症型である.

ステロイド合成の欠如により下垂体ACTH分泌に対するネガティブフィードバック機能が損なわれ,慢性的なACTHによる副腎皮質刺激を引き起こし副腎過形成となる.

遺伝子型と表現型の関連

21-OHD CAH罹患者の追跡調査を含む最近の研究により,表現型の予測はかつて考えられていたほど明らかではないことが判明した[Newら 2013].遺伝子型と表現型の相関があるのは罹患者のうちの50%以下である(同じ変異であっても異なる表現型を呈しうる).特に単純男性型では予測困難であり,同じ遺伝子型であってもさまざまな表現型を呈する.一方,塩類喪失型や非古典型のみで見られる遺伝子型もある.この場合表現型は変異アレルの残存酵素活性と関係している(患者の表現型はより軽症型のアレルによる酵素活性を反映する).

アレルはその残存酵素活性により重度と軽度に分類される(表4).

  • 塩類喪失型21-OHD CAHはもっとも重度な変異で発症する(例 両アレル欠失)
  • 中等度の重症度を呈する表現型では,重度,軽度両方の変異がみられる[Kroneら 2000].
  • 非古典型21-OHD CAHでは,いずれか一方もしくは両方のアレルが軽度の変異アレルである[Wilson ら1995].

出生前診断においては,出生前治療の要否を決めるために古典型と非古典型の遺伝子型を区別することが重要である.

  • 発端者が男性化した女性である家系では,その同胞の罹患女性が男性化する可能性があると推測される.
  • 発端者が男性である家系では,その同胞の罹患女性の男性化について遺伝子型を元に推測することは不可能である.

古典型 21-OHD CAH 遺伝子型は両アレル共に重症型,つまりin vitro発現解析にて完全に酵素活性が喪なわれていると確認された変異が予想される.

注:c.293-13A>Gc.293-13C>G 変異は古典型21-OHD CAHで最もよく認められる変異のひとつである.イントロンの不完全なスプライシング,リーディングフレームのずれを引き起こす.これらの変異をホモ接合でもつ患者のほとんど(>90%)が塩類喪失型21-OHD CAHであるが,その重症度はさまざまである.遺伝子型と表現型が一致しないのはスプライスサイト異常により正常なスプライシングが起こらず,いろいろな異常スプライシングが起こり,さまざまな活性を持つタンパクが産生されることによる [Higashiら 1988].
p.Ile173Asn:この変異と重度の変異との複合ヘテロ接合体の罹患者のうち76% は単純男性型であり23%が塩類喪失型である[New ら 2013].転写,翻訳の多様性によって残存21-OH酵素活性が決まることが想定される.

非古典型 21-OHD CAH 非古典型 21-OHD CAH罹患者は両アレルが軽度の変異であるか,一方が重度,もう一方が軽度の変異アレルである(複合ヘテロ接合)ことが想定される.約2/3の非古典型21-OHD CAH罹患者は複合ヘテロ接合である.エクソン1のp.Pro31Leuとエクソン7 のp.Val282Leuミスセンス変異は酵素活性を減少させ,この疾患の臨床像と関連するが表現型には多様性がある.

  • p.Val282Leuもしくはp.Pro31Leuと重度の変異とを持つ罹患者の一部(<3%)では,非古典型が想定されるところ,古典型の表現型が見られた.
  • p.Ile173Asnと重度の変異とを持つ罹患者のごく一部は,(古典型ではなく)非古典型であった [Stikkelbroeck et al 2003].

Table4 残存酵素活性による CYP21A2 遺伝子変異の分類

酵素活性

表現型

変異

0%

重度(古典型)

全遺伝子欠失,大きな遺伝子転換,
p.Gly111ValfsTer21
p.[Ile237Asn;Val238Glu;Met240Lys]
p.Leu308PhefsTer6
p.Gln319Ter
p.Arg357Trp

<1%

c.293-13A>G or c.293C>G

2-11%

p.Ile173Asn

〜20-50%

軽度(非古典型)

p.Pro31Leu
p.Val282Leu
p.Pro454Ser

隣接遺伝子欠失

CYP21A2 遺伝子とTNX 遺伝子を含む隣接遺伝子欠失では,関節過動型エーラスダンロス症候群と21-OHD CAHが発症する [Burch ら 1997, Schalkwijk ら 2001].

用語の定義

先天性副腎過形成(一般的にCAHと省略される)では欠損する酵素(例えば,21-水酸化酵素欠損)を前に記載することが望ましい.

21-OHD CAHには,以前は副腎性器症候群(AG症候群),C-21-水酸化酵素欠損症,先天性副腎皮質過形成が含まれていた.
非古典型21-OHD CAH は以前「軽度」あるいは「遅発性」の病型とされていた.

塩類喪失型21-OHD CAHはsalt-losing CAHとも呼ばれる.

頻度 

古典型21-OHD CAH  約650万人の世界中の異なる人種における新生児スクリーニングのデータ解析によれば古典型21-OHD CAHの頻度は出生15,000人あたり1人である[Pang & Shook 1997, van der Kamp & Wit 2004].

人種ごとの頻度

  • アラスカのYupikエスキモーでは1/300
  • サウジアラビアでは1/5,000
  • ヨーロッパと北米では1/10,000-16,000
  • 日本人では1/21,000
  • ニュージーランドでは1/23,000
非古典型21-OHD CAH CAH 多彩な人種で構成されるニューヨーク市における非古典型21-OHD CAHの頻度は1/100と推定されている.非古典型21-OHD CAHの頻度が最も高い人種はアシュケナジーユダヤ人で1/27である.その他頻度の高い人種集団はヒスパニック(1/40),スラブ人(1/50),イタリア人(1/300)である[Speiser ら 1985].

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

副腎皮質束状帯におけるコルチゾール生合成には 5つの酵素が作用する段階がある.先天性副腎過形成(CAH)はこのいずれの酵素の欠損によっても生じる.コルチゾールの合成障害はACTHの慢性的な上昇を招き,副腎を過剰刺激し過形成をきたす.CAHの5つの型をTable 5に示す.副腎皮質の生合成のそれぞれのステップにおける酵素機能障害により前駆体が蓄積し,欠損物質が生じる.21-OHD CAHはCAHの90%以上を占め,最も多い.

Table 5 CAHをきたす酵素欠損

CAH中の 割合

欠損酵素

基質

産物

アンドロゲン

ミネラル
コルチコイド

不明1

STAR

 

ミトコンドリア膜での  コレステロール輸送に関与

欠乏 2

欠乏3

不明1

3β-HSD

Pregnenolone
17-OH
prognenolone,
DHEA

Progesterone,
17-OHP,
Δ4-androstenedione

欠乏2

欠乏3

不明1

17α-
hydroxylase

Pregnenolone

17-OH pregnenolone

欠乏2

過剰4

Progesterone

17-OH(17-OHP)

>90%

21-
hydroxylase

Progesterone

Deoxycorticosterone (DOC)

過剰5

欠乏3

17-OH progesterone

11-deoxycortisol

5%

11β-
hydroxylase

Deoxycorticosterone

Ccorticosterone

過剰5

過剰4

  1. まれであるため不明
  2. 男性では出生時男性化はない.
  3. 塩類喪失を伴う.
  4. 高血圧を伴う.
  5. 女性では出生時もしくはその後男性化を示す.

非古典型 21-OHD CAH

アンドロゲン過剰による症状を示す女性では非古典型 21-OHD CAHを考慮する必要がある.アンドロゲン過剰症状を呈する女性の頻度は一般的には1-3%と報告されているが,人口集団によってはもっと高い.

チトクロームP450酸化還元酵素欠損症 CAHのまれな病型でTable 5には含まれていない.POR遺伝子の変異による.尿中ステロイド排泄からP450C17(17-ハイドロキシラーゼ)およびP450C21(21-ハイドロキシラーゼ)の2つのステロイド合成酵素の部分欠損が同時に存在することが示唆される.注目すべきは,CYP450酸化還元酵素はNADPHからの両酵素への電子伝達に重要な役割を持っているということである.

CYP450酸化還元酵素欠損症の表現型は単一のステロイド異常症から古典型Antley-Bixler症候群(ABS)まで幅広い.POR欠損を有する者はコルチゾールが欠乏しており,臨床的に明らかでない程度から生命の危機があるものまで,その程度はさまざまである.新生児男児は外性器形態があいまいで,陰茎は小さく停留精巣を認める.新生児女児は腟閉鎖,小陰唇融合,大陰唇低形成,陰核肥大を呈する.ABSの頭蓋顔面は,PORスペクトラムの最も重症例であるタイプでは頭蓋骨癒合症,後鼻孔狭窄または閉鎖症,外耳道狭窄,水頭症を起こすことがある.橈骨上腕骨癒合,新生児期骨折,先天性長幹骨湾曲,屈指症,関節性拘縮,クモ指症,内反足などの骨奇形を起こすことがある.

遺伝形式は常染色体劣性遺伝である.

治療

最初の診断時における評価

疾患の進展の評価のために以下のような項目の評価が推奨される.

塩類喪失型を評価するために

  • 血清レニン活性(PRA)
  • 血清電解質

21-OHD CAHの古典型と非古典型を区別するために

  • 17-OHP,Δ4-アンドロステンジオン,コルチゾール,アルドステロンの基礎値
  • ACTH負荷試験を実施し,基礎値と負荷後の17-OHP濃度の比較

女児において出生前の男性化の程度を評価するために:

  • 外性器形態とその開口についての注意深い診察
  • 尿道と腟の解剖学的評価のための腟造影

男児,女児ともに出生後の男性化の程度評価のために:

  • 骨年齢評価
  • 血清の副腎アンドロゲン濃度(DHEA,Δ4-アンドロステンジオン,テストステロン)

臨床遺伝専門医へのコンサルトも推奨される.

病気の徴候に対する治療

21-OHD CAHに対する診療ガイドラインが公表されている.
早期に治療を開始し,コルチゾール欠乏やミネラルコルチコイド欠乏による影響を抑えるため,21-OHD CAHの診断をできる限り早期につけることがもっとも重要である.
あいまいな外性器の児の診断や治療には,小児内分泌,小児泌尿器,臨床遺伝学,精神科などのさまざまな専門分野のチームが必須である [Hughesら 2006].CAHの包括的ケアを提供する先駆的な取り組みも行われている.

古典型21-OHD CAH

グルココルチコイド補充療法 グルココルチコイド補充療法の目標は,欠乏しているステロイドを補充し,副腎性ホルモンとグルココルチコイド過剰分泌をできる限り減らし,男性化を予防し,理想的な成長を促し,妊孕性を維持することである[Claytonら 2002].

  • ハイドロコルチゾンの錠剤は成長期の小児における治療の選択肢である.経口懸濁液は好まれない.通常ハイドロコルチゾンを(24 時間あたり 10-20 mg/m 2)を 1日2-3回に分けて経口投与する.小児におけるグルココルチコイド療法では,正常な成長および骨成熟がおこるように,医原性クッシング症候群を起こさず副腎アンドロゲン分泌を抑制するというバランスが求められる.
  • 過剰な治療はクッシング様徴候を招くので避けなければならない.しばしば血清17-OHP濃度が生理学的範囲に低下した場合に発症する.したがって,治療中の患者における17-OHPの正常範囲は,アンドロゲンが性別や思春期発達段階に応じた適切なレベルに維持されているという条件で,通常よりも高めに設定(100-1,000 ng/dL)すべきである.
  • ストレス状態下(手術,発熱性疾患,ショック, 外傷)では古典型21-OHP CAH患者はより多くのグルココルチコイドを必要とする.典型的には通常の2-3倍量が経口的に,もし経口摂取ができない場合には筋肉内に投与される.

罹患患者は緊急時のステロイド投与量に関する医療情報を携帯するべきである.

古典型21-OHD CAH の患者は生涯にわたってグルココルチコイド投与が必要となる.成長が完了した後はより力価の高いグルココルチコイド(プレドニゾロン,デキサメサゾンのような)を用いることができる.これらは小児では成長を抑制する傾向がある.

ミネラルコルチコイド補充療法 塩類喪失型の 21-OHD CAH患者では,9α-フルドロハイドロコルチゾン(フロリネフ)(0.05-0.2 mg/日 経口)と塩化ナトリウム(1-2 g/日をミルクや食事に加える)が必要となる.

  • すべての古典型患者では,新生児期から乳児期には9α-フルドロハイドロコルチゾンと塩化ナトリウムの治療が必要である.
  • 塩化ナトリウムの補充は乳児期以降必要ないかもしれない.同様に一日に必要なミネラルコルチコイドの量も年齢とともに減少してくる.

女性型の性器形成術 Lawson Wilkins Pediatric Endocrine Society/European Society for Paediatric Endocrinology(LWPES/ESPE)2006年のコンセンサスステートメントでは,
"手術は,重症の男性化(Prader III-V)例でのみ考慮し,適切な時期に,尿生殖洞の修復と同時に実施すべきである.陰核の手術によって性的興奮の機能や勃起する感覚が損なわれる可能性があるため,陰核の勃起能,神経支配を保存するように実施すべきである.外見にこだわるよりもむしろ機能的な結果を重要視すべきである.外見上の理由で生後1年以内に実施される手術は両親の苦痛を和らげ,親と子の愛着形成を改善すると考えられているが,それを証明する根拠はない."とされている.

内分泌学会の診療ガイドラインでは,
"陰核,会陰の形成は乳児期に考慮され,経験豊富な外科医によって,同様に経験を積んだ小児内分泌科医,メンタルヘルスの専門家,ソーシャルワークサービスが整備された施設において実施されるべきである."

  • 適切な年齢,適切な術式に関する比較対照試験はないが,神経血管を温存した陰核形成及び,尿生殖洞及び腟の形成が推奨される.
  • 必要があれば,思春期後期に腟形成術が行われる.これは開口を保つために腟の拡張が必要とされるためである.

思春期早発 21-OHD CAH におこる思春期早発はLHRHホルモンアナログによる治療が行われる.

精巣異所性副腎腫瘍 集中的なグルココルチコイド療法に反応して縮小し、精巣機能が改善するかもしれない.内科的治療が不成功であった場合に精巣温存手術が考慮されるが,その結果は好ましいものではなく,これは長期間に亘る精細管の閉塞によるものであろう.生殖補助医療も考慮される.

思春期から大人への移行 21-OHD CAHに対する治療の改良によって良好な予後および正常と変わらない寿命が得られるようになった.しかしながら,英国においる21-OHD CAHの成人に関する多方面の研究により以下のような点が指摘されている.

  • 罹患者は低身長であり,BMIが高い.
  • 古典型CAHの女性では拡張期血圧が高い.
  • 肥満(41%),高コレステロール血症(46%),インスリン抵抗性(29%),骨量減少(40%),骨粗鬆症(7%)などの代謝異常が多い.

小児期から成人期への医療に移行することは,生涯に亘って適切な治療を受けるために重要な過程である.これは,正常と変わらない寿命と生活の質を得るためである.

  • CAHの成人患者は精神的サポートなどを含め多くの専門分野によるアプローチが必要である.

副腎摘出術 null変異のホモ接合体で,ホルモン補充療法では良好なコントロールが得られなかった重度21-OHD CAH患者に対する両側副腎摘出術が報告されている.こうした患者はアジソン病患者に対する治療のように,より適切に治療できるかもしれない.しかし,術後の投薬に対するコンプライアンスはことのほか重要である.両側副腎摘出術は内科的治療が不成功であった限られた患者でのみ考慮される.コンプライアンス不良の危険性について術前に考慮しなければならない.

副腎摘出術を受けた成人に関する報告はわずかであり,最も大きなもので5例についてである.主な副腎摘出の適応は,不妊,男性化,肥満であった.これらについてはすべての報告例において改善していた.術後のACTH上昇により異所性副腎組織が増悪する可能性があり,副腎摘出術後の予後についてはより長期に亘ってのデータが必要である.

非古典型21-OHD CAH

非古典型21-OHD CAH患者は必ずしも治療を必要としない.多くは生涯にわたって無症状であり,あるいは症状が思春期,思春期後,あるいは産後に現れる.

  • 治療を要する高アンドロゲン症状には,小児期における骨年齢の促進,陰毛の早期出現,早発思春期,高身長,急速な身長の伸び,成人男女における不妊,ざ瘡,低身長,女性における多毛,前頭部禿頭,多嚢胞性卵巣,月経不順,男性における精巣異所性副腎腫瘍である.
  • 治療を受けた場合,症状が軽快すれば治療を中止することもありうる.

非古典型21-OHD CAHは,古典型よりもより少ないグルココルチコイド量で治療されている.

初期症状の予防

塩類喪失クリーゼ 新生児スクリーニングプログラムの目標は古典型21-OHD CAHの新生児を同定し,生命を脅かす塩類喪失クリーゼに先立って治療を開始することである.

二次的合併症の予防

低身長 低身長はグルココルチコイド過剰による成長抑制あるいは不十分なグルココルチコイド治療による骨成熟の促進によっておこる.観察研究によると,グルココルチコイド治療を受けている罹患者の最終身長は正常対照と比して低く,両親の身長から予測される身長よりも低い.低身長に対する治療に関しては研究中の治療法を参照のこと.

定期検査

以下の評価は成長期には3-4カ月ごとに行われるべきである.それ以降はより間隔をあけて行われる.評価の頻度は個々の患者の必要性に応じて変更するべきである.

グルココルチコイド補充療法の効果は以下の測定によってモニターする:

  • 早朝血清中の17-OHP,Δ4-アンドロステンジオン,テストステロンの濃度は,新生児期は3ヶ月毎に,その後は3-6ヶ月毎に測定(24時間尿中サンプルを用いた尿中プレグナントリオール,尿中17-KS測定がホルモンコントロールの評価に役立つという報告がある.しかし,蓄尿法は採血に比べて実用的ではない.)
  • 身長の伸び,体重増加,思春期の発達,コルチゾールやアンドロゲン過剰の臨床徴候.
  • 骨成熟度を評価するための骨年齢(6-12カ月間隔で)

ミネラルコルチコイド補充療法の効果は以下の測定によってモニターする

  • 血圧
  • 早朝血清レニン活性または体位を調整したうえでの直接レニン分析(たいていは直立姿勢で)

男性における精巣異常のモニタリング 超音波やMRIを用いての精巣の定期的な画像診断を思春期以降より開始,3-5年ごとに繰り返し行うべきである.

成人期の妊孕性,代謝リスクのモニタリング 罹患成人においては,定期的に以下の項目を評価するべきである.

  • 生殖能,妊孕性
  • 体重
  • 脂質プロファイル
  • 血圧
  • 骨塩定量

画像診断

定期的な副腎の画像診断、骨塩定量は推奨されていない.

リスクのある血縁者の検査

もし21-OHD CAHの出生前診断が行われていなかった場合,リスクのある同胞については,早期診断と治療のため新生児スクリーニングの血液サンプルより17-OHPを測定するほうがよい.

妊娠の管理

古典型 21-OHD CAH患者の妊娠 古典型塩類喪失型 21-OHD CAHの妊婦は,綿密に内分泌専門医による評価を受ける必要がある.妊娠中には副腎アンドロゲンが増加する傾向にあるので,グルココルチコイドやミネラロコルチコイドの必要量は通常増加する.母体からの過剰な副腎アンドロゲン産生にもかかわらず,女性胎児の外性器は必ずしも男性化を示さない[Loら 1999].

研究中の治療

性器形態があいまいな罹患女性胎児 胎児DNAの分子遺伝子学的検査により21-OHD CAHの出生前診断が可能である.妊娠初期から出産まで母親にデキサメサゾンを投与することにより,胎児期のアンドロゲン産生が抑制でき,罹患女性胎児における性器形態のあいまいさを軽減またはなくすことができる.出生前治療は経験的なものとみなされており,倫理審査を経た臨床研究として実施されるべきである.

低身長への治療

成長ホルモン単独,もしくはゴナドトロピン分泌ホルモン(GnRH)との併用が罹患者における低身長を改善するかもしれない.しかしこれは経験的なものとみなされており,倫理審査を経た臨床研究の枠外では実施すべきではない.

様々な疾患に関する臨床研究情報はClinicalTrials.govを参照.

注:この疾患に対する臨床研究はないかもしれない.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

21-OHD CAHは常染色体劣性遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • ほとんどの両親はヘテロ接合体で,正常アレルと変異アレルを有している.
  • ヘテロ接合体は無症状であるが,正常アレルのみを持つ人に比べてACTH負荷を行ったときの17-OHPレベルがわずかに上昇していることがある.
  • 約1%の変異は新生突然変異で生じるので,発端者の1%では両親のうち一人だけがヘテロ接合体である[Kroneら2000].
  • 時に罹患しているとは思われていなかった親が非古典型 21-OHD CAHであることが判明することがある.両親が非古典型21-OHD CAHであるかどうかを明らかにするために,分子遺伝学的検査やホルモン検査を施行することは適切である.

発端者の同胞 

  • もし患者の両親がヘテロ接合体であるならば,個々の同胞について,変異アレルを 2つ受け継ぎその結果罹患する確率は25%,変異アレルを1つだけ受け継いだ無症候保因者である確率が50%,正常アレルのみを受け継いだ非保因者である確率が25%である.
  • 発症していない同胞が保因者である確率は 2/3である.
  • もし発端者の一方の親がヘテロ接合体でもう一方の親が 21-OHD CAHに罹患している場合,個々の同胞は50%の確率で変異アレルを2つ受け継いで罹患し,50%の確率で変異アレルを1つ受け継いで保因者となる.

発端者の子

  • 罹患した患者から子供には,変異アレルが1つ受け継がれる.
  • 21-OHD CAHの保因者頻度は高いので,患者のパートナーに対して CYP21A1 遺伝子の分子遺伝学的検査を提供するのは適切である.
    • もしパートナーが非保因者であれば,子が21-OHD CAHに罹患する可能性はずっと低くなる.(変異解析の検出率は100%ではないので,遺伝子の全領域をシークエンスしない限り,パートナーが保因者である若干の可能性は残される.)
    • もしパートナーが既知の変異の保因者であった場合,子が罹患する可能性は50%である.遺伝子型にもとづいた表現型の予測は時に有用であるが,不完全である.

発端者の他の家族

発端者に変異を伝えた明らかにヘテロ接合体である親の同胞は 50 %の確率で保因者である.

保因者の検出

分子遺伝子学的検査 CYP21A2 遺伝子の分子遺伝学的検査による保因者検査は,発端者に原因となる変異が同定された場合にリスクのある親族に対して提供可能である.

ホルモン検査 保因者では非保因者に比べて ACTH負荷時の17-OHPがわずかに高くなるが,これは保因者と非保因者との間でオーバーラップがある.したがって,保因者検査には分子遺伝学的検査が実施される.

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

  • 遺伝学的リスク評価や出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うほうが望ましい。
  • 罹患している若い成人,保因者,保因者の可能性がある人に対して,遺伝カウンセリング(同胞のリスクや生殖に関する選択肢についての検討を含む)を提供することは適切である.

DNAバンク DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、罹患者のDNA保存が考慮される。
 
出生前診断

高リスク妊娠 家系内で疾患の原因となっている変異が同定されている場合には,臨床検査として出生前診断が可能である.

低リスク妊娠 出生前超音波検査が多く行われ,解像度が改善しているため,胎児の外性器や副腎の異常がこれまでよりも頻繁に検出されるようになるかもしれない.かつて出生前超音波検査を実施した10,000人のうちの16人であいまいな外性器が指摘されたという報告がある.この16人中3人は最終的に21-OHD CAHと診断された.

もし出生前超音波検査にてあいまいな外性器が指摘された場合,胎児の核型,SRY遺伝子についてのFISH検査,ミュラー管についての超音波検査を実施すべきである.SRY陰性で46,XXであり,正常な形態の子宮を有する胎児であれば,古典型21-OHD CAHが考慮される.羊水穿刺による羊水中17-OHP濃度測定及び/またはCYP21A2遺伝子の分子遺伝学的検査が適切であるかもしれない.

21-OHD CAHに関する出生前診断は,新生児の治療のため,また21-OHD CAHに関連した医学的,社会的問題に対し家族が準備を整えるために有用かもしれない.

着床前診断(PGD) 疾患の原因となっている遺伝子変異が同定されている場合に選択肢となるかもしれない.


更新履歴

  1. GeneReview 最終更新日: 2002.2.26.  日本語訳最終更新日: 2003.8.31.
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
  2. Gene Review 最終更新日: 2006.9.7. 本語訳最終更新日: 2007.9.21
    日本語訳者: 塚本幸子,臼井健(国立病院機構京都医療センター)
  3. Gene Review著者:Saroj Nimkarn, MD  Maria I New, MD
    日本語訳者: 大畑 尚子
    Gene Review 最終更新日: 2013.8.29 日本語訳最終更新日: 2015.4.9( in present)

原文 21-Hydroxylase-Deficient Congenital Adrenal Hyperplasia

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