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2q37微小欠失症候群
(2q37 Microdeletion Syndrome)

[オルブライト遺伝性骨形成異常症様症候群、短指症‐精神遅滞症候群]

Gene Review著者: Emily S Doherty, MD, FAAP, FACMG and Felicitas Lacbawan, MD, FCAP, FACMG.
日本語訳者: 江田 肖(瀬戸病院 遺伝診療科),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)    
Gene Review 最終更新日: 2013.1.31  日本語訳最終更新日: 2014.4.29

原文 2q37微小欠失症候群


要約

疾患の特徴 

2q37微小欠失症候群は軽度〜中度な発達遅延/精神遅滞、第3指〜第5指の中手骨指骨短縮(しばしば第4指のみ)(>50%)、低身長、肥満、低緊張、特徴的顔貌、自閉症または自閉症スペクトラム症候群(30%)、関節過度可動性/脱臼、脊柱側弯症に特徴付けられる。痙攣(20%-35%)、先天性心疾患、中枢神経系異常(水頭症、脳室拡張)、臍帯/鼠径ヘルニア、気管軟化症、内臓逆位、消化管異常や腎奇形も見られる。ウィルムス腫瘍は2例に報告されている。

診断・検査 

患者の80%-85%は染色体検査で2q37欠失が認められる。残りの15%-20%は欠失解析(検査方法は様々)でしか検出できない微小な欠失による。一部の患者において、本症は2q37領域を含む染色体再構成(2番染色体逆位、環状2番染色体または2番染色体とほかの染色体における転座)により生じたものである。2q37微小欠失症候群のほとんどの特徴的所見はHDAC4遺伝子変異が原因と考えられている。微小欠失を有しない一部の患者においても、2q37欠失領域にあるHDAC4遺伝子の不活性型変異が認められるため、HDAC4遺伝子変異が本症のほとんどの所見を引き起こすと推測される。

臨床的マネジメント 

対症療法:遺伝医学、言語病理学、作業療法や理学療法、小児発達、神経内科、循環器科、消化器科、栄養/摂食、眼科および聴覚の専門家による集学的医学管理が必要となる。早期介入プログラムへの登録は乳児期、個別的教育プログラム(IEP)は学齢期の患者にメリットがある。

サーベイランス:継続的な一次医療、本症に関する新しい推奨および情報を提供するために臨床遺伝医による定期的再評価、認知的および行動的問題の管理を補助するために小児科医による定期的な神経発達/発達/行動的評価を受ける。四歳時および思春期における腎嚢胞スクリーニング検査は推奨されている。染色体欠失に2q37.1が含まれる小児患者にはウィルムス腫瘍のスクリーニング検査は考慮されるべきである。

リスクのある血縁者における評価:染色体欠失に2q37.1が含まれる小児にウィルムス腫瘍サーベイランスの適応ができるため、リスクのあるすべての小児に遺伝学的検査を行うのが適切である。

遺伝カウンセリング 

2q37微小欠失症候群のほとんどは正常核型の両親を有し、本人の染色体欠失は突然変異(de novo)によるものである。均衡型転座を有する片親から染色体欠失を受け継いだ発端者は、報告された症例の約5%を占める。発端者同胞のリスクは両親の核型によって決まる。両親が正常核型であれば、次の妊娠におけるリスクは無視できる。両親のどちらかが均衡型の染色体構造異常であれば、発端者の同胞のリスクは増え、染色体再構成の特異的パターンによってリスクが変わる。発端者の子のリスク:細胞遺伝学的に明らかな2q37欠失を有する患者は生殖能力がない。しかし、2q37微小欠失症候群の軽症患者は生殖能力が正常と考えられる。リスクの高い妊娠に対する出生前診断は可能。通常、本症は突然変異(de novo)であるが、染色体欠失またはHDAC4遺伝子変異は常染色体優性遺伝形式をとる。


診断

臨床診断

下記の所見を有する小児は2q37微小欠失症候が疑われる

  • 発達遅滞/知的障害
  • 中手指骨短縮症E型とよばれる第3指〜第5指の中手指骨短縮(しばしば第4指のみ)
  • 低身長
  • 肥満
  • 筋低緊張
  • 特長的顔貌
    • 丸い顔(個人差がある)
    • 前額部の突出
    • 高い眉毛
    • 深い眼球
    • 眼瞼裂斜下
    • 内眼角贅皮
    • 鼻翼低形成
    • 目立つ鼻柱
    • 薄い上口唇
    • 耳介の小奇形
  • 自閉症あるいは自閉症スペクトラム症候群
  • 間接過度可動性/脱臼、脊柱側弯症

    注:上記所見は同時に見られる場合、最初の4つ(発達遅滞/知的障害、第3指〜第5指の中手指骨短縮、低身長、肥満)はオルブライト遺伝性骨形成異常症様(AHO-like)所見とも呼ばれる。

その他の形態異常 

  • 痙攣
  • 先天性心疾患(心房/心室中隔欠損、動脈管開存)
  • 中枢神経系(CNS)異常(水頭症、脳室拡大)
  • 臍帯/鼠径ヘルニア
  • 気管軟化
  • 内臓逆位
  • 消化管異常
  • 腎奇形

その他の臨床所見

  • 湿疹
  • 骨減少症
  • 行動異常(活動亢進、注意力障害)                            

腫瘍 ウィルムス腫瘍

検査

細胞遺伝学的検査

2q37微小欠失症候群の80%は染色体検査で診断を確定できる。残りの15%〜20%は、欠失領域が非常に小さいため、従来の染色体検査では正常核型となる。AHO-like表現型の集団に2q37微小欠失(ルーチンの細胞遺伝学的検査で検出できない欠失)が認められたとの報告がある。2q末端における微小欠失は、ルーチンの細胞遺伝学的検査では見逃され,より詳細な欠失/重複検査でないと検出できない可能性がある(Table 1:脚注2-4)。
一部の2q37微小欠失症候群では、2番染色体逆位、環状2番染色体あるいは2番染色体とほかの染色体の転座のような2q37領域を含む染色体再構成により2q37欠失が生じている。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

報告されている2q37染色体領域におけるテロメア欠失の大きさは、大きいものでは約10Mb、最小のものは3-4Mb程度である。父親由来の1.6Mb末端欠失による奇形および発達遅滞の1例が報告されているが、現時点で、最も小さい末端欠失は2.7Mbである。この染色体領域における遺伝子欠失は2q37微小欠失症候群を引き起こす可能性が高い。2q37微小欠失症候群の臨床所見を有する一部の患者では、単独のHDAC4遺伝子変異あるいは隣接部の遺伝子欠失を有しないHDAC4遺伝子発現低下が認められるため、本症のほとんどの所見はHDAC4遺伝子変異により生じると推定される。そのほかの候補遺伝子は「分子遺伝学」の項を参照のこと。

臨床検査

Table 1. 2q37微小欠失症候群の診断に使用される遺伝学的検査の概要

2q37領域における遺伝子変異

検査方法

検査法¹による検出される
変異の頻度

欠失あるいは
2q37を含む染色体再構成

細胞遺伝学的検査

80%-85%

欠失/重複解析²

>99%&3,4,5

2q37欠失/再構成を有しないHDAC4遺伝子変異

HDAC4シークエンス解析6

不明だが、稀

  1. 現時点で、記載されている遺伝子における遺伝子変異を検出する能力
  2. ゲノムDNAの翻訳領域や隣接するイントロンに存在し、シークエンス解析で検出されない欠失/重複のための様々な検査方法である。この遺伝子/染色体断片を含む定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA、染色体マイクロアレイ(CMA)などの方法が含まれる。
  3. 2qサブテロメアのプローブは市販されている。サブテロメアFISHプローブは染色体2q37欠失の大多数を確認すべきである。この方法は理論的に、サブテロメア配列が存在する場合、2q37中間部欠失が見逃される可能性がある。
  4. BACクローンを用いた染色体マイクロアレイ(CMA)で、習慣流産の胎児組織から、2q37.2を含む短い非均衡型転座が同定された[Bruyere et al 2003]。欠失領域に対するより精密なマッピングは研究レベルでのみ行われるが、ほとんどの2q37微小欠失は市販のCMAでも検出できる。
  5. サブテロメア欠失はFISHあるいはCMAにより検出されるが、FISH法は同時に存在する重複と欠失を見逃す可能性がある。
  6. シークエンス解析で検出されるのは、小さな遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンスやスプライスサイト変異である。通常、エクソンや全遺伝子欠失/重複は検出されない。

 

検査結果の解釈

臨床的にはASと診断されながら11%あるいはそれ以上の患者で変異を同定できない理由としては,1)臨床診断が正しくない,2)UBE3Aの調節領域に同定できない変異が存在する,3)UBE3Aの機能に関連する他の未確認の機序や遺伝子変異がASの原因になっている,などがあげられる.

検査手順

q37微小欠失症候群発端者における確定診断のための検査 下記の検査手順が推奨される。

第一選択

  • 欠失/重複解析は2q37染色体領域における大きい欠失、微小欠失や微小重複を検出できるため、最初に行われるべきである。また、欠失/重複解析は2q37微小欠失症候群と重なった所見を有するほかの微小欠失/重複症候群(例:Smith-Magenis症候群)をスクリーニングすることができる。

    注:欠失/重複解析(例:CMA)は通常、染色体構造を直接評価しない。非均衡型転座や環状染色体が示唆される場合、これらの染色体構造異常を確認するために、従来の細胞遺伝学的検査が必要となる

第二選択

  • ほかの染色体再構成が見られる家系においては、核型検査(ルーチン的細胞遺伝学的検査)を実施すべきである。
  • 染色体検査は正常だが、疑いが濃厚である場合に、2q37領域における標的欠失解析を行う。

上記の検査で2q37領域における微小欠失や染色体異常が認められず、2q37微小欠失症候群所見を有する発端者にHDAC4シークエンス解析を考えるべきである。

遺伝学的関連(アレル)疾患

2q37微小欠失症候群は幅広い臨床所見を呈する。染色体マイクロアレイが臨床的に用いられる以前に、ほかの異常所見を伴うあるいは伴わない発達遅滞/知的障害を有する一部の患者における2q37欠失が、FISH法による染色体サブテロメア解析で同定されている[Anderlid el al 2002, Sogaard et al 2005, Ravnan et al 2006]。しかし、これらの患者の2q37微小欠失症候群表現型についての明確な記載がなかった。
自閉症の児童に関するあるパイロット研究では、検査結果が正常で異常所見のない1人の児童で2qサブテロメア欠失が認められた[Wolff et al 2002]。同様に、400人以上の大規模な自閉症に関するコホート研究では、自閉症および大頭症を有する1名の児童からFISH法により2q37欠失が検出された[Reddy 2005]。これらの患者に関する更なる分子的情報は有用であろう。


臨床像

自然歴

2q37微小欠失症候群は下記のような幅広い臨床所見を呈する。
単離の2q37微小欠失(例:非均衡型転座ではない)を有する患者の機能的評価は自閉症、発達遅滞、および/または先天性大奇形の有無に左右される。
2q37微小欠失症候群の表現型は分子的ブレイクポイントがまだ定義されていなかった早期の報告と異なる。
報告例の男女比は1より大きい(女性に多い)。

発達遅滞 ほとんどの患者に軽度〜中度の発達遅滞が見られる。しかし、発達の遅れがあるにも関わらず図書館員助手として働いている1例や、大学生で、自閉症と平均的認知機能を有する1例の報告がある。

自閉症あるいは自閉症スペクトラム症候群 症候性自閉症には2q37微小欠失がよく見られる。個人差があるものの、2q37微小欠失を有する個人のおおよその3分の1は自閉症や自閉的特徴が見られる。上記にもかかわらず、2q37微小欠失症候群に特異的な行動表現はない。

中手指骨短縮 第3指〜第5指(通常は第4指のみ)の中手骨/中足骨の短縮は報告された症例の半数に見られる。指骨の短縮は機能的意味を有しない。1歳未満の幼児に報告された症例もあるが、中手指骨短縮は小児早期には臨床的に明らかではない。

成長 2q37微小欠失症候群では一般より高頻度に低身長が見られる。時に罹患乳児の成長障害が報告される。

肥満は小児期より現れ、年齢とともに頻度が上昇する。

低血圧 2q37微小欠失症候群の多くは低血圧や摂食困難が見られる。膝の外反/反張や扁平足も多い。

特徴的顔貌およびその他の奇形 細くて高い眉毛を伴う深い眼球、鼻孔低形成、突出した鼻柱、薄い唇紅、軽度な耳介奇形を含む特徴的顔貌を認める。丸い顔は伴うことも伴わないこともある。顔貌の特徴は軽微であるため、経験の浅い医師は見逃しやすい。顔貌特徴の識別に実体写真測量が使用されている。
乳首の低位や低形成は良く見られる。関節過度可動性や皮膚の過伸展性も観察される。

痙攣 大発作、部分発作や筋クローヌス性発作は報告された症例の20%に見られる。大多数の報告で臨床情報がほとんど記載されていない。

湿疹 中度〜重度の湿疹は少数に報告されている。

骨減少症 2q37欠失による骨減少症は良く知られていないが、X線精密検査では一部の患者に骨減少症が認められる。臨床的意味に関する記載はなかった。

胃食道逆流症(GER)中度〜重度のGERが見られ、外科的介入が必要とする場合もある。

ウィルムス腫瘍 2q37欠失およびウィルムス腫瘍を有する3名の孤発例が報告されている。これらの患者全員は2歳前に発症していた。Olsonら[1995]は、非均衡型転座der(2)t(2;15)(q37;q22)を伴うウィルムス腫瘍の症例を報告した。Jones[2011]は46,XY,add(2)(q35) の核型にウィルムス腫瘍を有する1例を報告している。上記の2例はともに2歳〜3歳の間にウィルムス腫瘍を発症した。しかし、2q末端欠失に関する大規模なコホート研究に行われたスクリーニング調査では、ウィルムス腫瘍が見つからなかった。Jonesらは2q欠失を有する場合のウィルムス腫瘍のリスクを1%と推測している。

その他の構造異常

  • 口蓋裂
  • 先天性難聴
  • 先天性心疾患(通常は心房/心室中隔欠損)
  • 内臓逆位
  • 馬蹄腎を含む腎奇形
  • 全前脳胞症、脳梁無形成や水頭症を含む中枢神経系異常
  • 食道裂孔ヘルニア、幽門狭窄、異常回転や閉鎖を含む消化器異常および食道閉鎖
  • 関節過度可動性/脱臼および脊柱側弯症
  • 臍帯/鼠径ヘルニア
寿命 先天奇形の有無は寿命に影響する最も重要な要因である。2q37微小欠失症候群の高齢者はほとんど報告されていないが、筆者はFISH法によるサブテロメア解析、CMA検査の応用や、本症における長期的データの蓄積によって、より多くの患者が診断されると予測している。文献的には、患者の大多数は寿命が短縮しないことが示されつつである。

遺伝子型‐表現型の相関

2q37微小欠失症候群は完全浸透であるが、表現型の幅が広い。細胞遺伝学および分子学的検査では、欠失のサイズと表現型に相関は見られない。HDAC4遺伝子を含むAlbright遺伝性骨形成異常症様症状の責任領域を欠失する例の約半数に中手指骨短縮が見られる。
さらなる遺伝子型‐表現型の相関はまだ確立されていない。
親の由来による影響はまだ確立されていない。

浸透率

2q37微小欠失症候群の臨床的特徴は明らかで、現時点でモザイクは報告されていない。

命名

2q37微小欠失症候群はオルブライト遺伝性骨形成異常症様3型とも呼ばれる。

頻度

2q37微小欠失症候群の頻度は不明。ルーチンの細胞遺伝学的検査では微小な末端欠失が検出されにくいことや、身体診察で本症の臨床症状を鑑別できないことから、本症は過少診断されている可能性がある。サブテロメアFISH法やCMA研究の臨床応用の普及によって、本症と診断される症例は増えると推測されている。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

オルブライト遺伝性骨形成異常症(AHO)は肥満、低身長、中手指骨短縮、皮下骨化や知的障害に特徴を付けられる。ほとんどのAHO罹患者はGタンパクのアルファサブユニットをコードするGNAS遺伝子における不活性化変異を有する。

  • 変異が母親由来の場合に、副甲状腺ホルモン(PTH)不応症(偽性副甲状腺機能低下症1A型として知られる)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)やゴナドトロピンに対する不応症も伴う
  • 変異が父親由来の場合に、AHO(偽性偽性副甲状腺機能低下症として知られる)のみとなる

AHO/偽性偽性副甲状腺機能低下症と2q37微小欠失症候群は臨床的にかなりオーバーラップしている可能性がある[Aldredら2004,Aldred 2006] 。(ただし)著者らはAHOに見られる皮下石灰化またはホルモン不応症を有する2q37微小欠失症候群患者は認識していない。

Smith-Magenis症候群との表現型の重なりはWilliamsら[2010]によって実証された。

歌舞伎症候群と疑われた2人の患者は2q37欠失を含む染色体再構成を有していた[Cusco et al 2008]。

CHARGE症候群 2qと21qの不均衡型転座による2q37微小欠失を有する同一家系の2名の罹患小児に後鼻孔閉鎖が見られ、最初はCHARGE症候群と誤診された[Fernandez-Rebollo et al 2009]。

短指症E型(第3指〜第5指の中手骨短縮)はターナー症候群にも見られる。中手指骨短縮症D型、E型と重なった所見を有する骨格奇形症候群にHOXD13遺伝子変異が報告されている[Johnson et al 2003]。

注:本症に関する鑑別診断は、診断支援ソフトを参照すること(事前登録または研究目的の使用が必要)。


臨床的マネジメント

初診時の評価手順

2q37微小欠失症候群を診断するには下記の評価手順が推奨されている。

  • すべての先天奇形、痙攣あるいは行動の問題を示す自然歴
  • 全身の身体診察および奇形の評価
  • 頭囲、体重およびその他の身体測定
  • 肥満および成長障害における専門評価
  • 運動、認知機能および自閉症、自閉症スペクトラム行動、その他の行動的問題を診断するための集学的な発達と神経学的評価
  • 先天性心疾患を診断するための心臓超音波検査
  • ウィルムス腫瘍、腎奇形あるいはその他の腎臓疾患を診断するための腎臓超音波検査
  • 斜視や屈折異常を診断するための眼科検査
  • 難聴を診断するための聴覚検査
  • 異常神経所見を有する患者に対する脳画像検査(MRI, CTスキャン)
  • 痙攣や治療経過観察のための脳波検査
  • 脊柱側弯症や骨格異常を検出するためのX線検査。2q37微小欠失症候群における骨減少症の臨床的意義はまだ研究されていないが、この所見は良く見られると認識されるべきである。骨減少症が見られる最も若い患者は3歳である。
  • 遺伝医学的診察

治療法

2q37微小欠失症候群患者の年齢や主訴に基づき、遺伝医学、言語病理学、作業療法や理学療法、小児発達、神経内科、循環器科、消化器科、栄養/摂食(摂食困難の場合)、眼科および聴覚などの専門家による健康管理が必要となる。
医学的管理は臨床遺伝医あるいは、複合的治療が必要とする患者を管理するスキルを持つほかの医療従事者の協力のもとで行う。
早期介入プログラムへの登録は乳児に有益である。小児科的評価に基づき、理学、作業や言語療法士の多分野の専門家グループによる個別的教育プログラム(IEP)はほとんどの学齢期の小児に有益である。

二次病変の予防

現時点で、なぜ2q37微小欠失症候群の多くが肥満になるのかまだ不明である。肥満の進行を予防するために、筆者は実行できるかぎりの活動的なライフスタイルおよび良い食生活習慣を勧める。

サーベイランス
 
 Jonesら[2011]は2q37.1領域を含まない2q欠失を有する患者のウィルムス腫瘍の発症するリスクが5%以下と報告した。従って、彼らはこれらの患者におけるウィルムス腫瘍サーベイランスを推奨していない。スクリーニングの間隔は明らかではないが、2q37.1領域を含む欠失を有する患者にはウィルムス腫瘍スクリーニングが考慮されるべきである。WAGR症候群およびBeckwith-Wiedemann症候群におけるウィルムス腫瘍スクリーニング手順には小児中期までに3ヶ月ごとの腹部超音波検査が含まれる。2q37欠失を有する乳児や小児を管理する医師は最新の文献をチェックするのが勧められる。
 小児早期に2q37微小欠失が同定された場合に、腎嚢胞の進行に対するスクリーニング検査は4歳時と思春期に実施されるべきである。
下記項目も推奨されている。

  • 継続的な小児科の日常管理
  • 本症に関する新しい推奨や情報を得るために、臨床遺伝医による小児科的再評価 
  • 認知的/行動的問題を管理するために、小児科医による小児神経発達的や発達的、行動的評価

 
リスクのある血縁者の評価

リスクのある若い小児に遺伝学的検査を行うことは適切である。2q37.1領域を含む欠失を有する患者にはウィルムス腫瘍サーベイランスは考慮されるべきである。リスクのある血縁者に対する検査は「遺伝カウンセリング」項目を参照する。

研究中の治療

注:本疾患における臨床試験は行われていない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

2q37微小欠失症候群は突然変異(de novo)で起こった染色体異常によるものか、あるいは均衡型転座の片親から受け継がれたものである。

HDAC4遺伝子における欠失や変異は常染色体優性遺伝形式で受け継がれるが、本症は通常突然変異である。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 発端者のほとんどは突然変異による染色体欠失が生じ、その両親は正常核型である。家系内染色体再構成は報告された症例の約5%に見られる。これらの再構成の一部は細胞遺伝学的に微細である。
  • HDAC4遺伝子における欠失や変異のほとんどは突然変異であるが、家族性のケースも報告されている[Villavicencio-Lorini et al 2012]。
  • 構造的不均衡型染色体構成(欠失や転座)を有する発端者の両親は均衡型染色体再構成のリスクがあるため、染色体検査を実施すべきである。

発端者の同胞 

  • 2q37微小欠失症候群発端者の同胞のリスクは両親の遺伝学的状態によって決まる。
  • ほかの突然変異による染色体再構成と同様に、発端者の両親は正常核型であれば、次の妊娠におけるリスクは無視できる。
  • 片親が均衡型染色体再構成の場合に、発端者同胞のリスクは高くなり、特異的染色体再構成のパターンやその他の変数によってリスクが決まる。
  • 可能性は否定できないが、2q37微小欠失症候群における生殖細胞モザイクは報告されていない。
  • 片親がHDAC4遺伝子変異を有する場合、発端者の各同胞のリスクは50%となる。

発端者の子 

  • 現時点で、細胞遺伝学的に明らかな2q37欠失を有する患者が子をもうけたという報告はない。
  • ある2q37欠失を有する罹患女性は潜在性のサブテロメア欠失を有する‘正常な’父親から生まれた。初潮や後の続発性無月経を経験した1人目の女性患者と正常月経を有する2人目の女性患者が報告されている [Wilson et al 1995]。2q37微小欠失症候群の軽症な患者において、正常な妊孕率を持つことは可能である。この場合、全妊娠において、染色体欠失が50%の確率で受け継がれる。

他の家族 

  • その他の血縁者のリスクは発端者両親の遺伝学的状態によって決まる。
  • 片親が均衡型染色体再構成を有する場合に、彼/彼女の血縁者はリスクがあり、染色体検査およ びFISH法に関する情報が提示されるべきである。

保因者検査

発端者の片親が均衡型染色体再構成を有する場合に、リスクのある血縁者は染色体検査および/またはFISH法による保因者検査が可能。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断および治療を目的とする血縁者のリスク評価は「臨床的マネジメント」および「罹患者家族のリスク」項目を参照する。

家族計画 

  • 意思決定に至るまで、妊娠前に遺伝的リスク、保因者の分類や出生前診断の適応を話し合うための十分な時間をとる。
  • 罹患者、保因者あるいは保因者になる可能性のある若い成人に遺伝カウンセリング(子の潜在的リスクや生殖の選択肢に関する話し合いを含む)が行われることが望ましい。

DNAバンキング DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対する私たちの理解が進歩するため,罹患者のDNAを保存することは考慮すべきかもしれない。

出生前診断

通常より高いリスクのある妊娠に対する出生前診断は羊水検査(妊娠15−18週)または絨毛検査(妊娠10−12週)から採取した胎児DNAを用いて行うことができる。胎児細胞の染色体末端を観察するのが困難であるため、FISH法による確認するための検査を行うべきである。

HDAC4遺伝子変異/欠失により高まったリスクのある妊娠に対する出生前診断は、羊水や絨毛検体に含まれる胎児細胞から抽出DNAを用いて分析することが可能。出生前診断の前に、家系内におけるこの病的変異が同定される必要がある。
*妊娠週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。

 

着床前診断(PGD) 一部の家系において、2q37欠失やHDAC4遺伝子変異/欠失により高まったリスクを有する妊娠にとって、着床前診断は一つの選択肢となる。


関連情報

染色体起因しょうがいじを持つ親の会「Four-Leaf Clover」(略称 FLC)
http://www.eve.ne.jp/FLC/top.html


分子遺伝学

下記の記述は最新の情報が含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なる場合がある

Table A 2q37微小欠失症候群:遺伝子とデータベース

遺伝子記号

遺伝子座

タンパク質

座位特異性

HGMD

該当なし

2q37

該当なし

 

 

HDAC4

2q37.3

ヒストン脱アセチル化酵素4

HDAC@LOVD

HDAC4

Table B  OMIMにおける2q37微小欠失症候群の関連情報

600430

BRACHYDACTYLY-MENTAL RETARDATION SYNDROME; BDMR

605314

HISTONE DEACETYLASE 4; HDAC4

分子遺伝学的発病原因

2q37微小欠失症候群のオルブライト遺伝性骨形成異常症様(AHO-like)表現型の責任候補遺伝子は下記に含まれる。
Chaabouniら[2006]は初めてAHO-like表現型の原因が2q37.3にあるHDAC4, GPC1, STK25遺伝子を含む約2Mbの中間領域に絞り込んだ。

    • HDAC4遺伝子 2010年、Williamsらは単離のHDAC4遺伝子不活性化変異によるAHO-likeの2症例を報告した。彼らは2q37微小欠失症候群の症候性的特徴がHDAC4遺伝子変異により生じたと唱えた(この2症例で同定されたアレル変異はOMIM 605314を参照する)。最近、2q37と10q26のあいだに起こった潜在的均衡型転座を有する患者が、軽度な2q37微小欠失症候群所見が見られると報告された。この症例のHDAC4遺伝発現量は対症群の67%であった。患者の息子は、2q37.1領域における9.84Mbの欠失による非均衡型転座を有し、表現型がより重症で、遺伝子発現量が対照群の23%であった。HDAC4遺伝子には27個のエクソンが含まれており、1084個のアミノ酸から構成されたタンパクをコードする。
    • ウィルムス腫瘍および、2q37あるいは2q37.1の構造的欠失(その他の染色体異常がない)を有する3名の患者は報告されていた。HDAC4遺伝子のセントロメアにある2q37.1領域に腫瘍抑制遺伝子が含まれるとの仮説があるため、2q37.1を含むより大きい染色体欠失によりウィルムス腫瘍がなりやすくなる。Drakeら[2009]は孤発性のウィルムス腫瘍集団を研究したところ、DIS3L2遺伝子および隣接する非翻訳領域microRNAであるmiR-562を含む360Kbの重要な領域が、腫瘍抑制遺伝子の役割を担うとのエビデンスを発見した。
    • 全ゲノム解析研究では2q37における自閉症易罹患性領域が解明された。

 2q37微小欠失を有する自閉的所見の関連候補遺伝子は下記に含まれる。

    • KIF1A遺伝子(ATSV遺伝子として知られていた)はシナプス小胞の軸索輸送に関与する。
    • 神経および骨格経路の構造的、機能的に関与する、FARP2, HDLBP, PASKは候補遺伝子であることが分かった。3.5Mbの欠失および自閉症を有する患者において、この三つの遺伝子は患者の血縁者や対症群に比べ、すべてが下流制御されている。FARP2は神経突起および軸索誘導に関与するGTP加水分解酵素(GTPase)である。Vigilin(高密度リポタンパク質結合タンパク質, HDLBP)はコレステロール代謝に関与するマルチ-DH-ドメインタンパクであり、構造的にFMR1(脆弱X)に類似する。PASK(Pas-ドメイン-セリン/スレオニンキナーゼ)は正常軸索脱鞘に重要なキナーゼである。
Lukusaら[2004]はCENTG2AGAP1として知られている)が自閉症の候補遺伝子の一つであると考えた。細胞遺伝学的に明らかな2q37欠失、AHO-like特徴および正常な知能を有する自閉症の女性におけるこの遺伝子の欠失がWassinkら[2005]に確認された。AGAP1遺伝子は胎児および成人の脳に発現し、エンドサイトーシス輸送に関与する。

 

原文 2q37微小欠失症候群

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