GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト
grjbar

先天性筋ジストロフィー 概説
(
Congenital Muscular Dystrophy Overview)

Gene Review著者: Erynn Gordon, MS, CGC, Eric P Hoffman, PhD, Elena Pegoraro, MD, PhD
日本語訳者: 谷口真理子 大阪大学大学院医学部臨床遺伝学教室/遺伝子診療部門


Gene Review 最終更新日: 2006.12.22.   日本語訳最終更新日: 2007.03.31.

原文 Congenital Muscular Dystrophy Overview


要約

疾患の特徴 

先天性筋ジストロフィー(CMD)は,出生時期から筋弱力がみとめられる遺伝性疾患の総称をさす.罹患した幼児は典型的には‘floppy(だらりとした)’な状態を呈し,筋の緊張低下や関節拘縮を認める.筋力低下は大抵の場合進行しないが,筋組織の破壊に伴う合併症が年齢とともに深刻になる.

診断・検査 

先天性筋ジストロフィーの診断は,筋生検により脂肪細胞の浸潤のあるなしにかかわらず認められる筋線維の壊死性あるいはミオパチー様所見,たいていの例で上昇している血清中のクレアチンキナーゼ,あるいは免疫染色によりある特定の筋のサブタイプに認められる異常,頭部MRIにおける先天性筋ジストロフィーに特徴的な脳の構造異常,あるいは白質病変がみられるかどうか,などを参考になされる.およそ50%のCMDはメロシン欠損症によるものである.筋生検による組織切片で,メロシンに対する免疫染色でメロシンの完全欠損を認めるか,または生後4ヶ月以降において頭部MRIで白質病変を示す異常信号がみられることにより診断が確定する.分子遺伝学的検査は,CMDのタイプによっては,その臨床診断を遺伝学的に確認,同定するのに役立つ.

臨床的マネジメント 

先天性筋ジストロフィーの臨床的マネジメントは,個々の患者や疾患に合わせて行われる.大切なのは,肥満を避けるための食事療法や,関節可動域を上げ,関節拘縮を予防するための関節の伸展運動や理学療法,歩行や移動を補助する器具の利用,整形外科的な合併症に対する手術,呼吸機能の経過観察などである.カフマシーンや非侵襲性の(体外式)人工呼吸器,または気管切開を施行し呼吸器による人工換気が有効となるケースもある.CMDでは一般的にみられる社会からの孤立を和らげるための社会的,感情的支援が必要である.

遺伝カウンセリング 

一般的には常染色体劣性疾患である.例外的にUlrich病では常染色体優性遺伝形式が2例報告されている.常染色体劣性遺伝形式では発端者の同胞のうち25%が同疾患に罹患し,50%が無症状の保因者,残り25%が非保因者かつ非罹患者となる.罹患者の同胞が無症状である場合,その同胞が保因者である確率は2/3である.ヘテロ接合(保因者)は無症状である.保因者診断が可能なCMDがある.出生前診断はメロシン欠損症,muscle-brain-eye disease,福山型先天性筋ジストロフィー,Walker-Warburg症候群,1C型先天性筋ジストロフィー,1D型先天性筋ジストロフィー,そし強直性脊椎型筋ジストロフィーでなされている.それ以外の疾患における出生前診断は,個々の研究室で出生前診断を提供している施設で可能な場合がある.


診断

臨床診断

先天性筋ジストロフィー(CMD)は筋力低下が出生時にあり,筋生検で採取された筋組織に異常所見がみられる遺伝性疾患の総称である.CMDの患者はたいてい‘floppy’であり,筋の緊張低下,関節拘縮がある.筋弱力は通常進行性ではないが,年齢とともに筋の壊死性変化に伴う合併症が深刻となる.

確定診断

その患者が先天性の筋ジストロフィーであることを評価するために以下のことを参考にする

  • 血清中CK(クエアチンキナーゼ)濃度 通常患者で上昇する.
  • 筋生検 筋組織で脂肪組織の浸潤のあるなしにかかわらず,通常壊死性または,ミオパチー様パターンを示す
  • 筋組織の免疫染色 ある特定の筋線維のサブタイプに異常を示す.
  • 頭部MRI 症候性のCMDに特徴的な構造異常を呈す,または白質の異常信号があれば,非症候性CMDとの鑑別に役立つ.
  • 遺伝子検査 原因遺伝子の同定が進み,遺伝子検査は今やいくつかのCMDで臨床診断の遺伝学的確定診断のためになされている.

鑑別疾患

先天性筋ジストロフィーは以下の疾患との鑑別を要する.

  • 先天性ミオパチー(X染色体連鎖ミオチュブラーミオパチーやネマリンミオパチーも含む)通常は正常か軽度異常の血清CK値を示し,筋生検において,筋組織は壊死性障害ではなく,成長障害を認める.
  • ベスレムミオパチー コラーゲンタイプVI 関連疾患のスペクトラムの中の一疾患で,遺伝子変異はCOL6A1COL6A2COL6A3に見つかっている.この疾患の特徴は近位筋優位の筋力低下,とくに長指伸筋,肘及び踵部においてみられる,関節の過伸展がある.臨床症状や組織学的所見においても,肢帯型の筋ジストロフィーと多く重複する.ベスレム型ミオパチーの場合,発症は出生前から成年中期まで幅広い.出生前発症は,胎動の減少が特徴的であり,新生児時期発症は筋緊張低下あるいは斜頸がみられる.幼少期発症型は運動発達遅延,筋力低下,関節拘縮が見られる.成人発症型(40歳から60歳)では,近位筋優位の筋力低下,アキレス腱や長指伸筋の拘縮がみられる.症状は緩徐であるが,進行性である.それゆえに,50歳以上の罹患者では,2/3以上の人で移動に介助が必要である.呼吸筋や横隔筋には症状はでることがまれであり,老後におこる重度の筋力低下が呼吸症状に影響するようである.常染色体優性遺伝形式をとる.
  • プラダーウィリー症候群(PWS) 乳幼児期からの重度の筋緊張低下及び哺乳不良,そして幼児期後期に過食が発症し,厳重な食事制限をされなければ,肥満が問題となる.PWSの人々は,認知障害がある程度存在し,特徴的な行動パターンがある.精腺低形成は男女両方で認められる.15q11のPWS/AS領域の特異的メチル化パターンの解析により99%以上で確定診断が得られる.
  • 脊髄性筋萎縮症(SMA) 脊髄前角細胞が進行性に破壊され喪失する疾患であり,筋弱力と筋の萎縮が特徴となる.ときには病変は大脳基底核にも及ぶ.筋症状の出現は出生前から青年,または若い成人まで幅広い.筋弱力は進行性である.出生前に発症するSNAは先天性軸索ニューロパチー,または先天性多発性関節拘縮症と呼ばれていたが,6ヶ月以前に発症するものはSMA1型と定義される.98%以上(欧米)のSMAでは疾患の原因遺伝子SMNに疾患の原因となる変異が見つかる.
  • 筋緊張性ジストロフィー1型(DM1) 骨格筋や平滑筋,目,心筋,内分泌系,また中枢神経系にも症状の出る全身性疾患である.症状は非常に軽微な例から重症例まで多彩である.先天性DM1は重症型の早期発症に分類され,筋緊張低下と出生時の全身性の重度の筋弱力が特徴でしばしば呼吸不全を起こし早期に亡くなることもある.精神発達遅延を一般的に認める.原因遺伝子であるDMPKにCTGの3塩基リピートの延長を検出できれば確定診となる.

罹患(有病)率

先天性筋ジストロフィー全体の罹患率は1人/125,000人で発症率はおよそ1人/21,500人と見積もられている.この統計学的数字はイタリア北西部を参考にされているので,世界中での罹患率,発症率を反映しているとは限らない.先天性筋ジストロフィーの全体のおよそ60%が古典的CMD(精神遅滞がなく,メロシン陽性,陰性のいずれのCMDも含まれるタイプ)という統計学的見積りからは,古典的CMDの発症率は38,000人に1人と考えられる.

病因

遺伝的原因

一つの例外を除き,現在までに原因遺伝子が同定されている先天性筋ジストロフィーで症候性(福山型先天性筋ジストロフィー,muscle-eye-brain disease, Walker-Warburg syndrome, CMD1C)及び非症候性(メロシン陽性先天性筋ジストロフィー,及びメロシン欠損型先天性筋ジストロフィー)のどちらも,殆どすべてが常染色体劣性遺伝形式である(例外として,今までに2例,常染色体優性遺伝形式で発症したUllrich病があるが,この疾患も通常は常染色体劣性遺伝形式をとる).分子遺伝学的検査や生化学的な染色法などを用いればさらに詳細にCMDを分類できる.現在まで10以上にわたる遺伝子がCMDの原因遺伝子として同定されてきた.

症候性のCMD:分子遺伝学

先天性筋ジストロフィーという大きな分類のなかで,症候性先天性筋ジストロフィーは以下の2つの点で特徴的である.(1)臨床症状として,筋以外の多臓器において症状を呈し,また重度の脳奇形,成長発達遅延がみられる(2)生化学的,分子学的観点から,原因遺伝子の欠損によりαジストログリカンやその他の未知の蛋白の翻訳後の修飾に異常が引き起こされて発症する.αジストログリカンはジストロフィンと糖蛋白の架橋成分であり,筋の収縮や弛緩の際に筋細胞の安定化に関与している.αジストログリカンのグリコシル化障害により福山型先天性筋ジストロフィーをもたらし,O型糖鎖のマンノシル化によりWalker-Warburg syndrome, muscle-eye-brain diseaseをもたらす.蛋白のグリコシル化は一般的にみられるものであるが,もっとも一般的なものはN型糖鎖でみられる.しかしながら,先天性筋ジストロフィーでは,O型糖鎖のグリコシル化の異常が疾患の原因となる.ジストログリカンは発生過程での中枢神経系や網膜,蝸牛などで発現しており,神経細胞の遊走や,シナプス形成,基底膜成分を集結させるためには欠かせない役割を持っている.

表1 症候性先天性筋ジストロフィー(CMD):分子遺伝学

病名

遺伝子名

染色体座

蛋白名

分子遺伝学的検査の可否

福山型CMD

FCMD

9q31

Fukutin

原文臨床検査参照

(FCMD)

Muscle-eye-brain

POMGNT1

1p34-p33

Protein O-mannoside beta-1,2-N-acetylgluco saminyltransferase 1

原文臨床検査参照

(MEB)disease

Walker-Warburg Syndrome(WWS)

POMT1

9q34.1

Protein O-mannosyl-transferase 1

原文臨床検査参照

POMT2

14q24.3

Protein O-mannosyl-transferase 2

1D型CMD

LARGE

22q12.3-q13.1

Glycosyltransferase-like protein LARGE

原文臨床検査参照

(MDC2D)

福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD) FCMDはもともと殆どが日本人に見られる疾患であり,ごくまれに海外での報告が見られる.3 kbのレトロトランスポゾンが3’UTR内の非コード領域に挿入された変異型が疾患の87%を占める.これは1人の祖先に起こった変異の創始者効果であると考えられる.フクチンという蛋白は糖転移酵素として働くと考えられている.FCMDに変異がおきるとグリコシル化されたαジストログリカンが完全に欠損する.患者ではラミニンα2にも異常が起きることが分かっている.

Muscle-eye-brain disease (MEB)  臨床的にMEBと診断のついた全ての患者でPOMGNT1に変異がみつかっているわけではないが,MEBはFCMDやWalker-Warburg 症候群やその他のCMDとははっきりと区別できる疾患である.遺伝子変異が5’側に近いと,3’側に比べて重症となる傾向がある.POMGNT1の遺伝子変異はPOMGnT1の骨格筋での酵素活性と相関する.MEBは全世界で患者が存在するが,近親婚の両親から患児が出生したフィンランドに最も多い.おそらくフィンランド人に変異が起こった創始者効果が示唆されている.

Walker-Warburg 症候群(WWS) 臨床的にWWSと診断のついた患者の20%にPOMT1遺伝子に変異がみられる.Van ReeuwijkらはPOMT2の変異によるWWSの3家系を同定した.まだ同定されていないグリコシル化に関連した酵素がコードする未知の遺伝子がおそらく主要な責任遺伝子であろう.

1D型先天性筋ジストロフィー(MDC1D) LARGE遺伝子はαジストログリカンのグリコシル化に明らかに関与することが最近見つけられた遺伝子である.現時点で,I遺伝子の複合へテロ変異による患者が1人見つかっている.

症候性CMD:臨床学的特徴

表2 症候性CMD:臨床症状

病名

臨床症状

他の所見

年齢

筋緊張
低下

筋弱力

関節拘縮

発症時期

歩行

死亡

福山型先天性筋ジストロフィー

全身性

全身性

股関節,膝,踵,肘にもありうる

●"敷石状の脳所見"1

新生児時期

獲得しない

10代後半から20代

Muscle-
eye-brain disease

全身性

全身性

●"敷石状の脳所見"1

新生児時期

まれに4歳までに歩行可能,しかし20歳までに歩行不能となる

 

●先天性白内障を伴わない眼奇形

●水頭症

●白質の変化が乳幼児早期に出現

Walker-
Warburg syndrome

全身性

全身性

●"敷石状の脳所見"1

新生児時期

獲得しない

乳幼児早期

●眼奇形2

●扁平橋部

●Dandy-
Walker奇形

●小脳低形成

●水頭症

●白質の変化

ID型先天性筋ジストロフィー

不明

不明

不明

●全般性の成長発達遅延

1歳前

4歳半までに独歩可能であるが老化とともに歩行不能となる

不明

●軽度筋仮性肥大

●顔面筋の軽度罹患

●近位筋弱力 > 遠位筋弱力

  1. 敷石状の脳所見とは側脳室の拡大,基底核の扁平化,小脳低形成を含む
  2. 眼奇形には前眼房の線維柱帯が粗であり,進行性網膜萎縮,若年性白内障により起こる緑内障や近視などの症状のいずれをも含む.先天性眼奇形とは,白内障,少眼球,牛眼,第1次硝子体過形成遺残,Peter’s奇形を含む.

福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD) FCMDは最も良く見られる常染色体劣性遺伝疾患であり,また日本では二番目に多い筋ジストロフィーである.主要な症状としては哺乳障害,弱い泣き声などの筋弱力が見られる.股関節や肘,膝,踵,などの関節拘縮が1歳前から見られる.FCMDの患者は座位までは獲得するが,歩行することはない.精神発達遅延はしばしば重度であり,IQは30から50である.FCMDの他の特徴として,事実上ほぼ全ての患者に痙攣がみられる,また近視,白内障,視神経乳頭部の蒼白化,網膜剥離がある.三角筋,下腿三頭筋舌の仮性肥大が見られる.殆ど全ての患者が拡張型心筋症と呼吸不全が10歳代までに進行し,しばしば20歳までに死亡する.

Muscle-eye-brain disease (MEB) 新生児期の筋緊張低下,発達遅延,眼部の異常がMEBの特徴である.MEB病で見られる症状は重症で寝たきり(例,座位不可能,定頸不能,重度視力障害)から,やや軽症(数年間は歩行可能,視力障害も軽度)まで幅がある.発語は症状の軽度から中程度の患者で可能である.しかし,語彙は数語と限られる.頭部MRI画像における変化は症状の程度と相関する.
厚脳回/多小脳回/無脳回やII型滑脳症が,重症の患者においてみられ,軽症では大脳基底核の扁平化と小脳の嚢胞のみがみられる.特徴的な眼奇形として緑内障,進行性近視,進行性網膜萎縮,若年性白内障がある.MEBは病理学的にも臨床的にも,症状の進行は他のCMDに比べ緩徐である.

Walker-Warburg 症候群(WWS) WWSの臨床的特徴はMEBに似ている.先天性白内障,小眼球,先天性緑内障,Peter奇形はWWSに特有な眼科的特徴である.後頭部髄膜瘤,大脳半球癒合,脳梁欠損はWWSに特徴的な脳奇形所見である.脳奇形の程度が重度であるため,経口栄養は困難で,しばしば胃瘻からの経管栄養が必要となる.WWSは他のCMDに比べ重症な経過をとり,幼児期に死亡する.

非症候性CMD:分子遺伝学

表3 非症候性CMDの分子遺伝学

CMD全体にに占める割合

疾患名

遺伝子名

染色体座

蛋白名

分子遺伝学検査の可否

〜50%

メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー(MDC1A)

LAMA2

6q22-q23

Laminin, alpha-2 chain

原文臨床検査参照

1

まれ

メロシン部分欠損型
筋ジストロフィー

LAMA2  2

6q22-q23

Laminin, alpha-2 chain

研究レベルのみ

不明

1C型先天性
筋ジストロフィー

FKRP

19q13.3

Fukutin-related protein

原文臨床検査参照

〜3%

ITGA7欠損型
先天性筋ジストロフィー

ITGA7

12q13

Integrin alpha-7

研究レベルのみ

不明

強直性脊椎型
筋ジストロフィー(RSS)

SEPN1

1p36-p35

Selenoprotein N

原文臨床検査参照

不明

Ullrich型先天性
筋ジストロフィー

COL6A1/2

21q22.3

Alpha 1 and alpha 2 collagen VI

原文臨床検査参照

 

1.連鎖解析のみ
2.部分欠損型のメロシン欠損症でLAMA2が責任遺伝子であるのは22%のみ,他の原因は不明.

メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー(ラミニンα2欠損症,LAMA2欠損症,occidental congenital muscular dystrophy, 乳幼児多発筋炎)  メロシン欠損症は比較的全世界で発症率が高い.
LAMA2遺伝子は64のエクソンをもち,翻訳領域全長の9,5 kbのなかの様々な場所に疾患で変異が見つかっている.LAMA2遺伝子では変異のホットスポットはない.LAMA2の6つのドメインのうち,ドメインT,U,Gではより症状が重症となる.2塩基欠損の頻度が高いという報告はその後の調査で確証されなかった.他のCMDでラミニンα2が二次的に欠損することがあるため,蛋白のうち様々な部分での抗体染色をすることで,1次的欠損か2次的欠損かを区別し,メロシンの部分欠損かそうでないかを判別できる.

メロシン部分欠損型先天性筋ジストロフィー 生化学的研究により,CMDのうちメロシンの部分欠損が沢山見つかっているが,遺伝子変異の解析はほとんどされていない.9人中2人の部分欠損の患者でLAMA2遺伝子内に変異が見つかったが,殆どの患者は免疫染色でメロシンの部分欠損があっても, LAMA2には変異がみつからない.

1C型先天性筋ジストロフィー(MDC1C) MDC1Cはメロシン部分欠損型CMDやαジストログリカンの部分欠損の中では重症型である.このタイプのCMDは遺伝子座が19q13.3上のFKRP遺伝子内のホモ接合体変異が原因であることがわかった.FKRPは3つの非翻訳領域と1つの大きい本翻訳領域をもつ12 kbの遺伝子であり,LGMD2T型の原因遺伝子でもある.LGMD2Tは様々な臨床症状を呈するにもかかわらず,よりも軽症である.FKRPには比較的良く見られる変異領域が一つ見つかっているがLGMD2T型の患者にのみみられ,MDC1C患者にはその変異はみられない.Brownらが,αジストログリカンの発現と遺伝子変異のタイプを臨床症状と比較検討したところ,とくにMDC1Cの患者は一貫して,αジストログリカンの発現が高度に低下していて,その患者は片アレルがミスセンス変異でもう片アレルがナンセンス変異の複合へテロ型かあるいは,両アレルともミスセンス変異のホモ接合体であった.反対に,LGMD2T型では,C826Aに良く見られる変異があり,ミスセンス変異もナンセンス変異の患者では,αジストログリカンは殆ど低下していなかった.LGMD2Tの患者で中程度の重症度の患者はその変異のホモ接合体であり,αジストログリカンの低下は軽度であった.

インテグリンα7欠損型CMD この疾患は非常にまれだと考えられている.3人の患者で,生化学的にインテグリンα7が欠損しているという報告がなされている.そして責任遺伝子はITAG7である.

強直性脊椎型筋ジストロフィー(RSS) 臨床的にRSSと診断をうけている10家系で,SEPN1の変異が報告されている.その家系はモロッコ人(1家系),アルジェリア人(1)イラン人(2)フランス人(1)イタリア人(1)トルコ人(4)を祖先にもつ.うち5家系でミスセンス変異,ナンセンス変異,そしてフレームシフト変異が5家系ともそれぞれ異なったエクソンから同定され,イラン人とトルコ人を祖先にもつ家系からは同じエクソン6の817G>Aが同定された.近い臨床症状を呈したアメリカ人家系の非近親婚からの関連解析では関連の可能性は決定的なものにはいたらなかった.

2番目の候補に,1q42がアラブの家系やドイツの家系から報告された.これらの家系では,免疫染色でメロシンの部分欠損あるいは二次的欠損がみられた.

Ullrich型先天性筋ジストロフィー(UCMD) UCMDはコラーゲンタイプ6型関連の疾患でCOL6A1, COL6A2, COL6A3の変異により発症する.殆どのUCMDは常染色体劣性遺伝形式であるが,2例の常染色体優性遺伝形式が新生突然変異で見つかった.UCMDでは,コラーゲンタイプ6型の免疫染色では,染色性の著しい低下は筋内膜や基底膜ではみられるが,血管周囲では正常である.筋生検の組織を用いた組織免疫染色は,確定診断のための強力な助けとなるが,臨床症状との相関には注意を要する.免疫染色でのCOLYの完全欠損では臨床症状は重篤となるが,部分欠損では症状は軽微例から重症例まで様々である.

非症候性のCMD:臨床的特徴

表4 非症候性CMD:臨床的特徴

病名

臨床症状

他の所見

年齢

筋緊張

筋弱力

関節拘縮

発症時期

歩行

死亡

低下

メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー(MDC1A)

重度

近位筋

●多発

●出生4ヶ月以降で頭部MRI所見が出現

生下時

獲得しない

10代

関節拘縮

遠位

 

●IQは通常正常

球部

 

●痙攣

 

 

●時として哺乳障害

 

 

●呼吸障害

メロシン部分欠損型CMD/MDC1B

軽度から中等度

近位筋

●肘

●MRIで白質病変

1-12歳

2-3歳

多様

●踵

●MRI上で構造と信号の異常

●脊柱

 

1C型先天性筋ジストロフィー

重度

近位筋

●肘

●MRI 正常

出生から6ヶ月の間

獲得しない

20代

遠位

●膝

●IQ 正常

上腕

●指

●血清中CK の上昇

>下腿

顔面

 

●時に拡張型心筋症

 

 

●呼吸不全

 

 

●ヒラメ筋と大腿四頭筋の仮性肥大

 

 

●EMGでミオパチー様

●三角筋と大胸筋萎縮

 

 

●巨舌

 

 

●左室機能の低下

ITGA7欠損型先天性筋ジストロフィー

 

近位

●斜頚

●先天性股関節脱臼

 

2-3 歳

 

●精神発達遅延 (1例)

強直性脊椎型筋ジストロフィー(RSS)

近位

 

●強直性

●夜間睡眠時無呼吸

出生- 1歳

2 1/2 歳または獲得しない

10から20代

●脊椎

遠位

●肘

●進行性の呼吸不全

顔面

●股関節

 

 

●踵

 

Ullrich型 CMD

新生児期は

全身性 

●股関節

●遠位関節の過外旋

出生から1歳の間

1歳以降あるいは獲得しない

20代から成人

全身性

遠位>近位

●膝

●IQは正常

 

 

●指

●CK 2-3倍から正常

 

 

●肘

●小顎

 

 

 

●脊柱の硬化/側弯

 

 

 

●丸い顔

 

 

 

●萎縮下腿> 大腿

 

 

 

●夜間睡眠時無呼吸

メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー メロシン欠損症の新生児は‘floppy infant’として出生するのが典型的であるが,人工換気が必要な場合もあり,中には1ヶ月以上生存できない児もいるが,ほとんどは症状が安定し,人工換気を必要としない.球症状(呼吸,嚥下)は四肢筋に比べて症状は重篤ではない.しかし哺乳困難となり,再発性の誤嚥や低栄養となる場合もある.呼吸不全を来すことが一般的に多く,夜間睡眠時無呼吸となり,非侵襲性の夜間のみ使用する人工換気(鼻マスク人工呼吸器など)が必要となることもある.運動発達のマイルストーンでは,支持の必要なつかまり立ちができるまでがせいいっぱいである.典型的な患者は歩行を獲得することはなく,支えなしでは立ち上がることはできない.関節拘縮や側彎もよくみられる.

罹患児の知的発達は全般的に正常と言われる.しかし,さらに脳の詳細な解析によると行動性IQは低い.およそ30%がてんかんを患う.患児では頭部MRI上で随鞘形成不全,白質の低信号といった白質病変があり,それらはメロシン欠損症だけに特徴的ではないにもかかわらず,比較的認知機能が正常に近いのは,興味深い.出生直後は頭部MRIではその所見ははっきりしないが,この不可解な画像所見は生後6ヶ月までには必ず全ての患児に見られる.頭部MRI ではときおり,後頭部のT型滑脳症や小脳虫部低形成などを含む脳の構造異常を示す.大脳,小脳,脳梁,そして大脳基底核は正常である.Walker-Warburg syndrome や muscle-eye-brain diseaseに見られる,神経細胞の遊走の障害はみられない.血管系でのメロシン欠損による脳血液関門の破綻が二次的にもたらす白質の異常信号が,メロシン欠損症の特徴的なMRI所見である.

メロシン欠損症の筋症状はその特徴がよくとらえられており,また,MRIでの所見も特徴的であることに加えて,脳質周囲や,皮質下の白質に,白質脳症と同様のMRI 所見を呈する患者もみられる.この所見は,神経伝導速度が遅延しているという検査の結果も含めて,メロシン欠損症は,脱随性ニューロパチーのような側面をもつことを示唆する.

メロシン部分欠損型先天性筋ジストロフィー この疾患群では,臨床症状のスペクトラムは広い.生下時に,著明は筋緊張低下と関節拘縮を呈し,運動発達遅延が重篤であるものから,肢帯型筋ジストロフィーのように,10歳代に発症するもの,近位側の肢帯型の筋力低下が血清中のCK高値に伴う成人発症型のものまで様々である.9人のメロシン部分欠損症の組織免疫染色では,22%が責任遺伝子であるLAMA2の遺伝子内に変異を認めたという報告がある.LAMA2遺伝子に変異のある全ての症例において,頭部MRI上で白質の異常がみられる.

1C型先天性筋ジストロフィー(MDC1C) この疾患は他の非症候性のCMDとははっきりと区別できる.それはヒラメ筋の仮性肥大があり,左心室に病変が及ぶ拡張型心筋症があり,頭部MRI上には白質病変がない点においてである.この疾患で精神発達遅延を認めた2例が報告されていることより,この疾患において,症候性のものも存在する可能性を示唆する.

ITGA7に変異を認めるCMD インテグリンα7欠損型CMDとしても知られるが,現在まで3人の患者で報告があり,症状はCMDの中では軽い.

Ullrich型先天性筋ジストロフィー(UCMD) この疾患は先天性の筋弱力,筋緊張低下,近位関節拘縮(特に指伸筋の拘縮),遠位関節の過外旋が特徴である.他の特徴としては,先天性股関節脱臼,踵骨の突出,新生児時期の脊柱後弯がみられる.中には自立歩行を獲得する患児もいる,しかしながら病状は進行し,徐々に歩行不能となる.早期または重篤な呼吸不全を呈する場合は,10歳代から20歳代に人工換気を必要とされるかもしれない.

原因不明のCMD

表5 原因不明の先天性ジストロフィー 臨床的特徴

病名

臨床症状

他の所見

年齢

筋緊張低下

筋弱力

関節拘縮

発症時期

歩行

死亡

メロシン陽性先天性筋ジストロフィー

軽度から中等度

近位

●多発

MRI:通常正常

出生時

2-3 歳

10代

小脳低形成を呈するCMD

軽度

近位

●関節固縮

●小脳の萎縮と低形成

出生時

獲得しない

報告なし

●側弯

●失調

●偏平足

●測定障害

 

●眼振

 

●構音障害

 

●軽度精神発達遅延

CMDと筋の仮性肥大

横隔膜

 

●踵

●全身性の仮性筋肥大

 

18-30ヶ月

報告なし

近位> 遠位

●脊椎

●正常のIQ

 

 

ミトコンドリアの構造異常を伴うCMD

近位

 

 

●拡張型心筋症

 

遅い

報告なし

●精神発達遅延

関節拘縮と上肢筋欠損を伴うCMD

 

遠位

●肘

●上肢下肢筋の萎縮

出生時

獲得しない

報告なし

●腕

●MRIで上肢及び下肢の筋が欠損

●指

●体幹筋は保持

●股関節

●失調性歩行

●膝

 

●踵

 

Salih 型CMD (家系内の2例報告)  

出生時

近位

 

●心筋症

出生時

T-2歳

報告なし

●心電図上AV伝導障害

●左脚前枝ブロック

●心房性不整脈を伴わない左房拡大

CMD with 仮性筋肥大,巨舌,呼吸不全を伴うCMD(4例)  

出生時

近位

●肘及び下肢

●CKの上昇

出生時

半分は獲得しない,それ以外は多様

報告なし

●ヒラメ筋の仮性筋肥大

●肥大

●呼吸不全

●巨舌

●手足先端の萎縮

●丸い顔

●IQ正常

●軽度の心筋障害

拇指と足趾の先天性拘縮を伴うCMD  (家系内の2例報告)  

顕著かつ持続性

全身性 遠位 > 近位

●拇指と足趾の先天性拘縮

●眼瞼下垂

出生時

2-3 歳

報告なし

●外眼筋麻痺

●麻痺

●精神発達遅延

●小脳低形成

 


評価の手順

個々の先天性筋ジストロフィーの症例をある特定の疾患として確定するには,通常,既往歴,身体所見,神経学的評価,家族歴,画像所見,血清CKの濃度,そして組織学的評価および免疫染色のための筋生検が必要である.

家族歴と遺伝子検査が可能な場合 カルテの記録などを参考に,家系内に先天性の筋弱力症状の有無や,新生児時期の死亡歴の有無がないかどうかを確認する.

現在までに知られている先天性筋ジストロフィーは,ほとんどが常染色体劣性遺伝形式をとる.そして非近親婚では,合衆国やヨーロッパ諸国に典型的な小さい核家族では家系内に一人しか罹患者がいないことが多い.発端者の同胞で新生児時期の死亡がみられた家系では,発端者の既往歴や検査可能な組織をさらに詳しく検証する正当な理由となる.メロシン欠損症の児の同胞で新生児時期に死亡した例があれば,おそらく,同疾患による死亡だったであろうと考えられる.

身体所見 眼科的異常が見られる場合,福山型先天性筋ジストロフィーやmuscle-eye-brain diseaseやWalker-Warburg syndromeが考えられる.

神経学的画像検査 頭部MRI,は時として最初の診断過程で行われるものであるが,MRI所見が正常か,または症候性のCMDにみられる脳の奇形や,神経細胞の遊走異常があるか,また,メロシン欠損症やメロシン部分欠損症にみられるような良性の白質病変があるか,を区別するのに有用である.

血清中のCK濃度と筋生検所見

表6 血清中のCK濃度と筋生検所見

病名/遺伝子

血清中CK濃度 (正常35-160 IU/L)

筋生検

組織

免疫染色

所見

生化学的検査の可否

メロシン完全欠損/LAMA2変異

上昇または 著しい上昇

●新生児期:炎症性所見   
●末期:壊死性変化

メロシン完全欠損

臨床的に可能
原文の臨床診断参照

メロシン部分欠損型CMD

上昇または 著しい上昇

●小児期:筋線維の大小不同

メロシン:部分欠損

●筋線維内の線維化の亢進

メロシン陽性型 CMD

正常かやや 上昇

ミオパチー様変化(軽度の壊死,再生,脂肪細胞浸潤)

メロシン:正常

MDC1C/ FKRP 変化

著しい上昇(1,000-10,000 U/I)

壊死性変化

●メロシン:部分欠損

研究ベースのみ

●グリコシル化したαジストログリカンの著しい 低下

 ITGA7 変異を伴うCMD (日本人1例報告)

軽度に上昇

●軽度の筋線維の大小不同

●メロシン:正常

●タイプ1線維の軽度増加(65%)

●インテグリンα7:欠損

●壊死,再生,脂肪細胞浸潤はみられない

 

硬直性脊椎性症候群(RSS)/SEPNの変異

正常

●筋線維の大小不同

メロシン:正常

●壊死性線維もときおりみられる

●筋線維内線維化はほとんどみられない

呼吸不全と筋の仮性肥大を伴うCMD(1例報告)

非常に高い (1700-7600 U/I)

壊死性変化

●メロシン:低下

●Integrins alpha 7 とbeta 1D: 減少

●プロテオグリカン:正常

Ullrich 型CMD

軽度上昇:正常の  2-3倍

●筋線維の大小不同

●メロシン:正常

●壊死性線維

●COL6: 著しい低下あるいは欠損

●軽度筋線維内の線維化

 

関節拘縮と上肢筋欠損を伴うCMD

U-3倍

●壊死性変化

メロシン:皮膚生検で正常

●筋線維の大小不同

●脂肪細胞浸潤

 

Salih 型CMD

やや上昇

壊死性変化

●ジストロフィン:正常

●メロシン:正常

●サルコグリカン:正常

CMD with 仮性筋肥大,巨舌,呼吸不全を伴うCMD

Markedly elevated

●筋線維の大小不同

●ジストロフィン:正常

●中心核増加

●αサルコグリカン:正常

●タイプ1線維優位

●メロシンの2次的低下

●壊死再生線維

●ラミニン5の上昇

 

●ジストログリカンレベルの減少

拇指と足趾の先天性拘縮を伴うCMD  (家系内の2例報告) 

正常からやや上昇

●筋線維の大小不同

●メロシン:正常

●中心核増加

●Collagen VI: 正常

●筋線維内線維化

●Emerin: 正常

●脂肪腫

●Lamin A/C: 正常

Walker-Warburg syndrome

上昇:正常の2-15倍

ミオパチー様変化

●メロシン:正常かやや減少

研究ベースのみ

●グリコシル化したαジストログリカンの部分的低下

●βジストログリカン:正常

 小脳低形成を伴うCMD

著明な上昇

筋細胞の大小不同を伴う壊死性変化で著しい線維化を伴う

メロシン:正常

ミトコンドリアの構造異常を伴うCMD with  (1例報告)

軽度上昇

●筋細胞の大小不同

●メロシン:正常

●壊死再生変化

●SDH とCOX: タイプ2線維の増加,細胞の中心部での染色性の低下

●電顕:ミトコンドリアの構造異常を伴う膨化

 

福山型CMD

正常の2から15倍の上昇

●筋線維の大小不同

●Fukutin欠損

●組織の線維化が進行

●グリコシル化したαジストログリカンの欠損

●中心核増加

●βジストログリカン正常

Muscle-eye-brain disease

正常の2から15倍の上昇

●1歳までは再生線維の上昇がみられる

●メロシンの部分的低下

●1歳までに筋組織の壊死,再生,脂肪細胞の浸潤及び線維化が進行する

●グリコシル化したαジストログリカンの部分的低下

 

●ラミニンβ2mの上昇

MDC1D (1例報告)

正常の2から20倍の上昇

未知

●αジスとログリカンの糖鎖認識抗体の染色性の低下

●βジストログリカンとラミニン染色は正常

完全メロシン欠損型CMD 血清中のCKは出生時,通常非常に高い.筋組織は年齢,時期と共に変化する.新生児時期の筋生検は,著明な炎症所見を示し,‘乳幼児多発筋炎’とも言われる.炎症は後により‘壊死性の’典型的所見に変化する.しかし筋の再生所見は他のCMD(例えばジストロフィノパチー)に見られるほど活発ではない.筋線維の再生能力が乏しいことの理由はおそらく筋線維の再生がおこるべき場所である基底膜の足場としての機能の破綻によるものであろう.年齢が進行すると,組織学的には,より安定した‘ミオパチー’様の所見となり,脂肪細胞の浸潤が激しくみられ,活発な壊死や再生が見られなくなる.

メロシン欠損症での,蛋白レベルでの診断は,感受性も特異性も高いために,筋生検で得られた組織を利用し診断の確定が行われる.絨毛組織から採取した細胞を用いて,出生前の蛋白レベルでの診断が行われうる.

メロシン部分欠損型先天性筋ジストロフィー メロシン部分欠損という所見は,診断に関わる病態を必ずしも反映してはいない.筋生検資料を利用して蛋白レベルで調べたメロシン部分欠損の特異性や感受性は未知である.それ故に,この筋生検由来でのメロシン部分欠損という所見の病態との関連や重要性に関しては,注意を要する.メロシン部分欠損は,肢帯型筋ジストロフィーでも同様にみられることがある.

1C型先天性筋ジストロフィー(MDC1C) 筋生検の組織において,fuuktin-related protein(FKRP)の完全欠損かつ/あるいは,臨床症状とともにFKRPに遺伝子変異が見つけられれば,確定診断となる.このCMDでは,メロシン及びαサルコグリカンの部分欠損,血清中CKの異常高値を示す.巨舌を含む,特徴的な臨床像が適切な遺伝子診断への助けとなるであろう.

ITGA7に変異を認めるCMD ITGA7遺伝子に変異をもつ患者でのインテグリンα7の生化学的検査には特異性が無いようである.

福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD) 骨格筋内,心筋,脳において,高度にグリコシル化されたαジストログリカンが欠如しているが,αジストログリカン自体は,FCMDの患者の筋膜に存在する.しかし,ラミニン,ニューレキシン,アグリンとの結合能がグリコシル化の破綻のために低下する.最近の発見は著しいが生化学的診断には現時点ではいたっていない

分子遺伝学的診断 殆どの先天性筋ジストロフィーの確定診断のための遺伝子検査は臨床レベルではまだ困難である.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

先天性筋ジストロフィーは,常染色体劣性遺伝形式で受け継がれる.Ullrich病だけが,常染色体優性あるいは劣性の両方のケースが例外的にみられる.

患者家族のリスク
 
発端者の両親

  • 罹患児の両親は,絶対保因者であり,それゆえに,疾患原因遺伝子の変異遺伝子を1コピー保有している.
  • 保因者は無症状である.

発端者の同胞 

  • 妊娠時に発端者の同胞は25%の確率で罹患,50%が無症状の保因者,残りの25%が非罹患かつ非保因者である.
  • その同胞が非罹患であるとき,保因者である確率は2/3である.
  • ヘテロ接合(保因者)は無症状である.

発端者の子 

  • 殆どのCMDの患者には次の世代が生まれない.
  • もし常染色体劣性遺伝形式のCMDの次の世代がうまれたとしたら,その子孫は全員が絶対保因者となる.
  • 保因者頻度が全体に比べて低いことを考慮すると,常染色体劣性遺伝形式のCMDの保因者の子がCMDに罹患するリスクは全体に比べると一般集団より高いが,1%以下である.

発端者の他の家族 

常染色体劣性遺伝形式のCMDの絶対保因者の同胞が保因者である確率は50%である.

保因者の同定 

保因者の検査には,臨床レベルでは,発端者の遺伝子変異が同定されている場合,福山型先天性筋ジストロフィー,muscle-eye-brain disease, Walker-Warburg syndrome,IC型CMD,ID型CMD,脊髄硬直型CMD,メロシン欠損型CMDにおいて可能である.

患者家族のリスク 常染色体優性遺伝型Ullrich CMD

  • 現在まで診断された2例の常染色体優性遺伝形式のUllrich CMDの両親はいずれも患者ではない.
  • その2例ともが,患児の受精卵レベル(精子,卵子)での新生突然変異によるものである.

保因者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは,発端者の両親の遺伝的背景によって,決まる.
  • もし両親が臨床的に無症状であれば,発端者の同胞での再発率は低いであろう.
  • もし疾患の原因となる遺伝子が発端者のDNAや両親のいずれかのDNAからも見つからなかった場合,同胞での再発率は低い,しかし,一般における頻度よりは高い.なぜなら,おそらく性腺モザイクの可能性があるからである.

発端者の子 優性遺伝形式で受け継がれるUllrich CMDの子は,50%の確率でその変異をもつ遺伝子を受け継ぐ可能性がある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画

遺伝的リスクの評価や遺伝カウンセリングは妊娠前に行われるのが望ましい.患者家族が遺伝子検査を受ける場合も同様である

筋生検バンキング

凍結された筋組織を用いて将来的に研究や診断に対する検査が行われるかもしれない.確定診断のために行われた筋生検の残存組織をバンキングして保存しておくことで,将来の研究に役立つ可能性がある.

DNAバンキング

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,DNAの保存は考慮に値する.ことに現在用いられている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患では特に重要である.

明らかに新生突然変異による家族 発端者の両親が罹患していない場合は,父親が異なる場合や明らかにされていない養子縁組など,医学的要因以外の原因も考えられる.

出生前診断

出生前診断は分子遺伝学的検査の項で述べた方法を用いて,技術的には可能である.DNAは胎生16−18週に採取した羊水中細胞や10−12週*に採取した絨毛から調製する.出生前診断を行う以前に,罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある.

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

メロシン欠損症の出生前検査は再発率が25%のメロシン欠損症の妊娠に対し,発端者の筋組織から,メロシンの完全欠損が証明されていれば可能である.出生前診断では,新鮮または凍結の絨毛(妊娠10週から12週の間に行われる)組織を用いて免疫染色で行われる.70例の出生前診断の報告では,連鎖解析と絨毛組織の免疫染色の一致率は100%である,つまり,絨毛組織による免疫染色法は正確であり感受性が高い.

発端者の変異の遺伝子型がすでに同定されていれば,出生前診断においても,遺伝子検査や変異絨毛や羊水を用いて検査できる.発端者の遺伝子変異解析が完了していない場合や,絨毛組織が生化学的解析に用いることができない場合,連鎖解析が考慮されるが,一般的には勧められない.連鎖解析は通常,出生前診断が行われる以前にその家系で確立されていなければならない.

福山型先天性筋ジストロフィー,muscle-eye-brain disease, Walker-Warburg syndrome,IC型CMD,ID型CMDtype,脊髄硬直型CMD これらの疾患の出生前診断はは妊娠15〜18週の間に採取される羊水あるいは,妊娠10週から12週の間に採取される絨毛から抽出されたDNAを用いて,可能である.両親の疾患の原因となる遺伝子変異は出生前診断が行われる前に同定されておくべきである.

その他の先天性筋ジストロフィー GeneTests Laboratory Directoryに表示されていない他のタイプのCMDの遺伝子診断や出生前診断はおこなわれていない.しかし,家系のなかで疾患の原因となる責任遺伝子の変異が研究室レベルで同定されている場合は,出生前診断が可能かもしれない.出生前診断を提供している研究室はTesing を参照してください.

着床前診断 疾患の責任遺伝子の変異が研究レベルでその家系の中で見つかっている場合,可能かもしれない.着床前診断を提供している研究室は,Testingの項を参照のこと.


臨床的マネジメント

先天性筋ジストロフィーには治療法がない.マネージメントは肢帯型筋ジストロフィーと同様であり,疾患の特徴や患者個人に合わせて治療がなされるべきである.適切なマネージメントで,CMD患者の長期生存やQOLの向上が期待される.以下の一般的アプローチ法は,BushbyによりLGMDの患者の典型的な症状の進行や合併症に対して記載されたものを基準に書かれている.

  • 体重管理と肥満予防
  • 理学療法,及び運動域を上げ,関節拘縮を予防するための関節の伸展運動
  • 杖や歩行器,装具や車椅子を使用することで,歩行を介助し,運動範囲をより大きくする.
  • 足の変形や,側弯などの整形外科的合併症の経過観察や外科的治療
  • 呼吸機能管理,必要時の人工呼吸器管理,特にカフマシーンや非侵襲的な体外色人工呼吸器,気管切開を施行し人工換気とすることで呼吸状態の改善が得られることがある.
  • これらの疾患に共通して見られる社会からの孤立感を和らげるために,社会へ参加し,生産性への意識を最大限高めることができるように,社会的かつ感情的な支援や勇気付けが必要である.

 

原文 Congenital Muscular Dystrophy Overview

印刷用ページ

 

grjbar
GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト