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Leber (レーベル)遺伝性視神経症
(Leber Hereditary Optic Neuropathy)

[同義語: LHON, Leber病,Leber視神経萎縮症,Leber視神経症]

Gene Reviews著者: Patrick Yu-Wai-Man, BMedSci, MBBS, PhD, FRCPath, FRCOphth and Patrick F Chinnery, BMedSci, MBBS, PhD, FRCPath, FRCP, FMedSci.
日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)

Gene Reviews 最終更新日: 2016.6.23 日本語訳最終更新日: 2018.6.11

原文: Leber Hereditary Optic Neuropathy


要約

疾患の特徴 

Leber遺伝性視神経症(LHON)は,若年成人期に発症する,両側性,無痛性の亜急性視覚障害である.男性は女性より4-5倍発症しやすい.罹患者は通常,片眼の視野中心がぼやけるようになるまでほとんど無症状で,同様の症状が平均2-3ヶ月後に対側眼にも表れる.症例の約25%で,発症時に両側性の視力低下が起こる.視力は大多数の症例で,指数弁まで重度に減退するかそれ以上に悪化し,視野検査では絶対中心暗点または傍中心暗点の拡大が認められる.急性期の後、視神経乳頭の萎縮が始まる.視力が著しく改善することは稀であり,多くの人は法的に視覚障害者として登録認定される(視力は20/200(0.1)以下に低下する).姿勢時振戦や末梢神経障害,非特異的筋障害,運動障害のような神経学的異常は,一般集団と比べてLHONで共通して多く報告されている.LHON患者の中には,通常女性で多発性硬化症様の症状を起こすこともある.

診断・検査 

LHONは,両側性無痛性の亜急性視覚障害を若年成人期に発症すること,また/あるいは分子遺伝学検査において,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の3つの主要な病的バリアント(m.3460G>A in MT-ND1, m.11778G>A in MT-ND4, or m.14484T>C in MT-ND6)のうち1つが同定されることによって確定診断となる.

臨床的マネジメント 

症状の治療 罹患者のマネジメントは,視覚教材の提供、職業リハビリの支援、関連する地域社会サービスへの登録など,主に支持的なものになる.LHONの原因となるmtDNAの病的バリアントを持つ患者の心電図で早期興奮症候群が見つかることもあるため,循環器科への紹介も考慮する.症状のある患者に対しての治療は,一般集団と同様である.眼科外神経症状(運動失調や末梢神経障害,非特異的筋障害,運動障害)のある罹患者に対しては,これらの合併症の機能的帰結を最小限にするために,多領域に渡ったアプローチが検討されるべきである.

初期症状の予防 LHONの原因となる病的バリアントを持つ患者に対しては眼圧の上昇に対する治療.

避けるべき薬剤/環境 LHONの原因となるmtDNAの病的バリアントを持つ患者に対しては,飲酒は適量にとどめ,禁煙することを強く勧める.視力低下を招くことが推測される環境因子,特に産業毒性のあるものやミトコンドリア毒性のある薬剤などに暴露しないように注意する.

遺伝カウンセリング 

Leber遺伝性視神経症はmtDNAに病的バリアントがあることで発症し,ミトコンドリア性(母系)遺伝により受け継がれる.LHONに対する遺伝カウンセリングは,LHONの原因となる主要なmtDNAの病的バリアントが,性年齢依存的浸透率を示すため,複雑である.発端者の母親は通常mtDNAの病的バリアントを持っているが,症状が出ていることもあれば,出ていないこともある.多くの症例において,母方の血縁者に若年で視力低下した家族歴があるが,最大40%は孤発例(つまり家系内で唯一の発症者)である.LHONの原因となるmtDNAの病的バリアントを持つ男性(罹患者,非罹患者問わず)から,彼の子孫にこのバリアントを受け継ぐことはない.同様のバリアントを持つ女性(罹患者,非罹患者問わず)からは,すべての子供にこのバリアントが受け継がれる.家系内でそのバリアントがあることがわかっている場合は,ミトコンドリアの病的バリアントの出生前診断をすることは可能である.しかしながら,羊水細胞や絨毛組織のmtDNA変異の配分が,胎児や妊婦の他の組織と一致しない可能性があり,また,mtDNAの病的バリアントがあるからといって,発症可能性や発症年齢,重症度,病状の進行度についてまでは予測できないため,出生前診断の結果が陽性となった場合の正確な解釈は難しい.

訳注:日本では,本症に対する出生前診断や着床前診断は行われない.いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である


診断

Leber遺伝性視神経症が疑われる所見

以下の眼科的,眼科外,神経画像的,生化学的および家族歴の所見がある者に対しては,Leber遺伝性視神経症(LHON)を疑うべきである

眼科的所見

  • 若年成人期に発症する両側性無痛性の亜急性視覚障害
    • 大多数の症例で,視力は指数弁もしくはそれ以上に悪化する.
    • 動的または静的視野測定による視野検査で深い中心暗点または傍中心暗点の拡大が認められる.
  • 視神経乳頭の発赤・腫脹,視神経乳頭網膜神経線維層の肥厚,網膜毛細血管拡張蛇行

注:約20%の患者では,急性期には基底部の異常は認められない.

  • 視神経乳頭萎縮症
  • 電気生理学的試験(パターン網膜電図および視覚誘発電位)では,視神経機能不全がみられ,網膜疾患は認められない.

眼科外の所見

  • 神経学的異常
    • 姿勢時振戦
    • 末梢神経障害
    • 運動障害
    • 多発性硬化症様症状
  • 非特異的筋障害
  • 不整脈

神経画像的所見  磁気共鳴画像法(MRI)は正常所見であることが多いが,白質病変や/あるいは視神経内の高信号を認めることがある[Matthews et al 2015].

生化学的所見  生化学的検査では,呼吸鎖の機能不全が他のミトコンドリア遺伝病に見られるより少ない.MT-ND1遺伝子のm.3460G>A病的バリアントは,最も重症な生化学的表現型と関連している.(Table 1参照)

Table 1. LHONにおける呼吸鎖の機能不全

ミトコンドリアDNA
バリアント

試験管内実験

生体内

呼吸鎖複合体 I 活性

ミトコンドリアの
呼吸効率 1

MRS 1

m.3460G>A

60%-80% コントロール群より少ない

30%-35%

0%

m.11778G>A

0%-50% コントロール群より少ない

30%-50%

75%

m.14484T>C

0%-65% コントロール群より少ない

10%-20%

50%

 Man et al [2002]を参照のこと.

MRS(magnetic resonance spectroscopy)=磁気共鳴分光法

  1. コントロールとの相対的な減少率

家族歴  発端者の最大60%に似たような症状の家族歴が見られる.注:LHONの家族歴がないからといって,診断を否定するものではない.

確定診断

LHONの診断は,疑われる所見Suggestive Findingsに掲載されている眼科症状のある発端者で,かつ/あるいは分子遺伝学検査において,mtDNAの3つの主要な病的バリアントのうち1つが同定されることによって確定される.( Table 2を参照)

分子遺伝学検査の手法には,標的遺伝子検査,マルチジーンパネル検査,全mtDNAシークエンス解析などが含まれる.

標的遺伝子検査  LHONの90-95%にmtDNAの3つの共通した病的バリアントがみられる.まず初めにこの3つのうちのいずれか1つを標的にした解析を実施するべきである.

マルチジーンパネル検査  この検査の対象には, LHONの原因となることが知られている,ミトコンドリア遺伝子のNADH脱水素酵素のサブユニット,MT-ND1MT-ND2MT-ND4MT-ND4LMT-ND5, および MT-ND6の各遺伝子をコードする領域が含まれ,他の可能性のある遺伝子(鑑別診断 Differential Diagnosisの項を参照)も考慮される.注:マルチジーンパネルに含まれる遺伝子の種類と感度は,研究室によって異なり,また時代の変化とともに変わりうる.

全mtDNAシークエンス解析  父系遺伝の根拠がなく,臨床的疑いが解決しないままで,標的遺伝子検査および/またはマルチジーンパネル検査で病的バリアントが同定されなかった場合に選択肢となる.

 Table 2. Leber遺伝性視神経症(LHON)で使用される分子遺伝学検査

遺伝子 1

この病的バリアントを原因とするLHON患者の割合 検出方法による病的バリアントの割合2
病的バリアントを標的とした検査 シークエンス解析3 遺伝子標的欠失複解析4
MT-ND4,
MT-ND6,
MT-ND1
~90%5,6 下記注釈7参照 90%6 報告なし6
任意のミトコンドリア遺伝子 ~10%6,8 10%6 報告なし6
  1. 染色体の位置とタンパク質については, Table A. 遺伝子とデータベース参照.
  2. この遺伝子に検出されうるアレルのバリアント情報については,分子遺伝学の項を参照.
  3. .シークエンス解析で検出されるバリアントには,病的でないもの,おそらく病的でないもの,意義不明なもの,おそらく病的なもの,病的なものがある.病的バリアントには微小な遺伝子内欠失/挿入やミスセンス,ナンセンス,スプライス部位バリアントが含まれる.通常,エクソンや全遺伝子の欠失/重複は検出されない.シークエンス解析結果に対する解釈は別項を参照すること.
  4. 標的遺伝子の欠失・重複解析では,遺伝子内の欠失や重複が検出できる.検査方法は,定量的PCR,ロングレンジPCR,MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法,単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどである.
  5. Mackey et al [1996]
  6. Mitomap
  7. 3つの主要な病的バリアントを以下に記す:m.11778G>A (MT-ND4) は,北ヨーロッパ民族の症例のおよそ70%にみられる [Wallace et al 1988Mackey et al 1996];m.14484T>C (MT-ND6) は,創始者効果により,フランス系カナダ人に共通して見られる [Johns et al 1992aMacmillan et al 1998];もう1つはm.3460G>A (MT-ND1)である [Howell et al 1992].
  8. Achilli et al [2012]

検査結果の解釈

白血球中に変異のあるmtDNAと野生型のものが混在しているヘテロプラスミーの状態は,LHON患者の約10-15%に見られる.

  • ヘテロプラスミーであっても,罹患者は一般的に白血球中mtDNAに70%以上の変異を有しており,標準的な技法により容易に検出できるため, LOHNの分子遺伝学検査の感度には影響しない.
  • ヘテロプラスミーの度合いは,未発症者がLHONを発症するリスクや遺伝するリスクと関連する可能性がある[Chinnery et al 2001].しかしながら,この可能性を確かめるための厳密な前向き研究はまだ実施されていない.

疾患の特徴

臨床像

Leber遺伝性視神経症(LHON)は,一般的に若年成人期において,両側性,無痛性の亜急性視覚障害を呈する.LHONの発症ピーク年齢は20-30歳代で,50歳までに失明した95%がこの年代で発症している.稀に,70-80歳代で最初の症状が現れる人もいる[Dimitriadis et al 2014].男性は女性より4-5倍罹患しやすいが,性別や変異の状態が最初の視力低下が始まる時期や重症度に及ぼす影響は,有意には示されていない.
発症前の段階では,以前より乳頭周囲毛細血管の拡張やさまざまな度合いの網膜神経線維層の肥厚 を含む基底部の異常が記録されている.これらは時間と共に変化しうる [Nikoskelainen 1994].光干渉断層計で撮影すると,mtDNAにLHONの原因となる病的バリアントを持つが臨床的には発症していない個体において,耳側の網膜神経線維層の肥厚が確認され,LHONでは特に黄斑乳頭線維束が脆弱であることのさらなる証拠となった [Savini et al 2005].より詳細な調査では,mtDNAにLHONの原因となる病的バリアントを持つ人の中には,(a) 主に赤緑系の色覚喪失,(b)コントラスト感度の減退,(c)網膜電図および視覚誘発電位の低下 を含む視神経機能の微細な障害を生ずる可能性がある [Sadun et al 2006].

罹患者は通常,片眼の中心視野がぼやけてくるまでは全くの無症状である(急性期).平均して2-3か月後に同様の症状がもう片方の眼に現れ,多くの症例で6ヶ月以内に両眼が発症する.LHONに関連する視神経症状で,片眼のみに出ることは稀である.もしそういった症例があれば,根底に存在しうる他の病理学的作用を積極的に排除するべきである.およそ25%の症例で,発症時に両側性の視力喪失が起こる.最も特徴的な症状は絶対中心暗点または傍中心暗点の拡大と,視野欠損の範囲と密度が増加することに伴い,視力は指数弁レベルまで低下あるいはそれ以上に悪化する.視力が最低まで落ちた後,改善することがある.このような改善は,m.11778G>Aやm.3460G>Aのバリアントを持つ人より,m.14484T>Cのバリアントを持つ人に多く見られる(遺伝型-表現型の相関を参照).

他の肯定的な予後因子としては,早期発症(10歳未満),視力低下が緩徐な亜急性の症状,比較的大きな視神経乳頭などが同定されている [Barboni et al 2006Ramos et al 2009].

萎縮期は視神経萎縮(一般的に視力低下の開始から6週間以内に起こる)と中心暗点または絶対暗点によって特徴づけられる.ほとんどの人の視力障害は深刻なまま改善せず,視覚障害者として登録する法的要件に該当する [Kirkman et al 2009].

LHONに関連するその他の神経学的特徴.いくつかの神経学的異常(例えば,姿勢時振戦,末梢神経障害,非特異的筋障害,運動障害,Leigh症候群)がLHONの人に共通して報告されている [McFarland et al 2007Martikainen et al 2016].

LHONの中には,通常女性で進行性の多発性硬化症(MS)様症状をきたす人もいる.LHON-MSの人の視力低下は,古典的LHONとは異なる表れ方をし,再発の際に眼の痛みと関連しうる視力低下がみられるという特徴があるが,罹患者の半数では視力回復は不完全で,法的な失明に至るまで進行する[Pfeffer et al 2013].これらの患者では,深刻な両側性の視神経障害に加えて,特徴的な脳室周囲白質病変および非定型的な脳脊髄液中のオリゴクローナルバンドを伴う,播種性の中枢神経系脱髄が見られる [Bhatti & Newman 1999Horváth et al 2000Palace 2009].

心伝導障害とLHON.フィンランドの研究では,LHONと関連した副伝導路による不整脈の発生率が増加したことが示された[Nikoskelainen 1994].これは他の集団では見られなかった[Bower et al 1992].

遺伝型と表現型の相関

特定のLHONの原因となる病的バリアントに関して,いくつかの広範な分類がある.

  • m.3460G>Aは,視機能障害の度合いが最も強い.
  • m.11778G>Aは,中間型の表現型.
  • m.14484T>Cは,最も長く視機能を維持できる.

LHONにおける視機能の回復については,もしそれが起こったら,通常は不完全であることを強調しなければならない.LHONの人たちの視覚回復についての報告をTable 3にまとめる.性別,年齢別の,ホモプラスミーの主要なLHONの原因となる病的バリアントを持つ人が失明する生涯のリスクを Table 4にまとめる.

Table 3. LHON患者の病的バリアントごとの視力回復率

ミトコンドリアDNAのバリアント 視力回復1 参照
m.11778G>A 4%-25% Newman et al [1991]Harding et al [1995]Lam et al [2014]
m.14484T>C 37%-64% Johns et al [1993]Macmillan et al [1998]Spruijt et al [2006]
m.3460G>A 15%-25%2 Johns et al [1992b]Harding et al [1995]Spruijt et al [2006]
  1. 視力回復を同定する基準は異なるものが用いられている数値に幅があるのは,部分的にこの変動性によるもの.
  2. 公開されている報告をみるとそう見えないが,専門家の間では,m.3460G>Aの病的バリアントが,最も視力回復率が悪いと認識されている.

Table 4. ホモプラスミーの主要なLHONの原因となる病的バリアントを持つ人が失明する性別,年齢別の生涯リスク

ミトコンドリアDNA の病的バリアント 発症リスク 発症年齢
中央値
(男性)
男女比 参照
男性 女性

m.3460G>A

32%

15%

20歳

4.3:1

Nikoskelainen [1994]

m.3460G>A

49%

28%

22歳

1.7:1

Man et al [2003]

m.11778G>A

43%

11%

24歳

3.7:1

Harding et al [1995]

m.11778G>A

51%

9%

22歳

5.1:1

Man et al [2003]

m.14484T>C

47%

8%

20歳

7.7:1

Macmillan et al [1998]

多発性硬化症様症状は,3つの主要なLHONのmtDNA病的バリアント(m.3460G>Am.11778G>A, および m.14484T>C)すべてにおいて関連していると報告されているが,女性に偏在している [Pfeffer et al 2013].

浸透率

LHONの原因となるmtDNAの病的バリアントは低い浸透率を特徴とする.LHONを発症するのは,原因となる病的なmtDNAバリアントを持つ人だけであるが,主要な病的バリアントを保有する男性の約50%,女性の約90%が失明に至らない.同じ家系内でも異なる分家であったり, LHONの原因となる同じ病的バリアントを保有している家族間でも,浸透率は著しく異なり,そのことが個々のレベルでの遺伝カウンセリングを複雑にしているということは強調しておかなければならない.付加的な環境要因や遺伝的要因がmtDNA病的バリアントと相互作用し,その人が最終的に視神経機能異常や視神経障害を発症するかどうかを決定している.失明に関わる最も重要なリスク要因は,性別と年齢の2つである(Table.4参照)  [Yu-Wai-Man et al 2009].

  • LHONの年齢関連浸透率.LHONの浸透率は年齢依存的である.発症年齢の95%タイルは,3つの主要な病的バリアントすべてで50歳である.それゆえ,50歳の時点で臨床的に未発症の男性が視力を失う可能性は5%未満である [Man et al 2003].
  • ヘテロプラスミー.多くのミトコンドリア(つまりmtDNA分子)はどの細胞にも存在している.病的なLHONの原因となるmtDNAのバリアントを持つ人の中には,変異のあるmtDNAと野生型のmtDNAを混合して持っている場合があり,こういった所見をヘテロプラスミーという.LHONの原因となるmtDNAバリアントを持つ人の10-15%にヘテロプラスミーが存在する.ある研究では,白血球中のm.11778G>Aの病的バリアントが75%未満である人は,罹患しなかった [Smith et al 1993].m.11778G>Aの病的バリアントを持つヘテロプラスミーの17家系の後方視的分析では,白血球中の変異率が60%以上の男性は,それ以下の変異率の人と比べて視神経障害の頻度が増加した [Chinnery et al 2001].しかしながら,LHONの原因となるmtDNAバリアントを持つ人の多くはホモプラスミーであるため,発症前診断目的でヘテロプラスミーのレベルを定量化することの効果は限定的である.

促進現象

LHONの促進現象は認められていない.

病名

以前,LHONはLeber遺伝性視神経性網膜症と呼ばれていたが,この名称は時代遅れであり用いるべきではない.

頻度

イングランド北東部では,LHONの原因となる病的バリアントを保有する人は85,000人に1人の割合で見つかり,31,000人に1人がLHONの結果として視力を失っている[Man et al 2003Gorman et al 2015].北欧のその他の集団でもかなり類似した割合で報告されており,オランダで1:39,000人,フィンランドで1:50,000人の疾患頻度となっている[Spruijt et al 2006Puomila et al 2007].


遺伝的に関連がある疾患

ミトコンドリアDNAの病的バリアントは,遺伝性疾患の集団異質性に関与し(ミトコンドリア病の概要参照),多臓器が関与することと関連して,進行性の神経学的障害(真性糖尿病、心筋症など)を引き起こすことが多い [McFarland et al 2010Lightowlers et al 2015].

  • 少数の家系において,呼吸鎖複合体TのmtDNAに病的バリアントがあることで,運動失調、ジストニア、および脳症を含む重度の神経学的障害と関連した視神経萎縮症が生じる[Jun et al 1994De Vries et al 1996Gropman et al 2004Tarnopolsky et al 2004Watanabe et al 2006].
  • 呼吸鎖複合体TのmtDNAの単一塩基バリアントm.3376G>Aとm.3697G>Aの2つでは,LHON様の視神経症状とMELAS(mitochondrial encephalomyopathy:ミトコンドリア脳心筋症, lactic acidosis:乳酸アシドーシス,およびstrokelike episodes:脳卒中)の臨床的所見のある患者が同定されている [Blakely et al 2005Spruijt et al 2007].

鑑別診断

眼科的評価(視力,色覚,視野および電気生理学的評価を含む)や分子遺伝学的検査を実施してもLeber遺伝性視神経症(LHON)の診断が確実でない場合は,両側性視神経症の他の原因の可能性を除外し,視力が回復しうる間に迅速な治療の開始を可能にするべく,さらなる検査を実施することが必要となる.臨床的な症状とその進行具合に応じて,自己抗体検査および感染性または血管炎性のスクリーニングを実施する.脱髄が疑われる症例や感染症あるいは腫瘍性の原因を除外したい症例で,異常なオリゴクローナルバンドを評価する必要性が示唆された場合,腰椎穿刺を実施すべきである.適切な神経イメージングの手法を選択し,その画像は理想的には経験のある神経画像診断医(Neuroradiologist)によって評価されることが望ましい.

急性期.急性期では,両側性の視力喪失をきたす原因は,非遺伝性のものも幅広く存在するため,それらを除外する必要がある.

萎縮期.この段階のみの症状がある患者で,特に明らかな母系の家族歴がない場合は,その他の視神経萎縮の原因を除外することが困難である.こういった場合は,分子遺伝学的検査の結果が出るまでの間に,前部視覚路の神経イメージングを必ず行う.


臨床的マネジメント

初回診断後の評価

Leber遺伝性視神経症(LHON)と診断された人において,疾患の程度や必要性を確かめるために,以下の評価が推奨されている.

  • 最適に調整した矯正視力測定
  • 静的または動的周辺視野測定法による視野評価
  • 心電図.比較的稀な所見ではあるが,LHONの原因となるmtDNAバリアントを持つ人において,症状のある人もない人も,心電図で早期興奮症候群が見つかることがある.もしこれが見つかっても,心臓の症状がなければ特に追加介入する必要はない.
  • LHONにおいて視力障害を悪化させる可能性のある神経学的合併症のスクリーニング
  • 臨床遺伝専門医および/または遺伝カウンセラーとの面談

症状の治療

罹患者のマネジメントは支持的であり,視覚教材の提供や職業リハビリ,関連する地域社会サービスへの登録などが含まれる.

LHON患者の一部では,運動失調や末梢神経障害,非特異的筋障害,運動障害などの神経学的特徴を呈する.こういった罹患者は,これらの神経学的合併症の機能的帰結を最小限に抑えるために,医師及び関連専門家の多職種が連携したチームによって管理されるべきである.

ECGで早期興奮症候群がみつかった患者は,心臓の専門家への紹介も検討する.早期興奮症候群の症状に対する治療は,一般集団と同様に行う.

一次病変の予防

LHONのリスクのある人にとって,眼内圧の上昇は視力喪失のトリガーとなるリスク因子となりうるというエビデンスがある.さらなるエビデンスが得られるまでは,眼圧上昇がミトコンドリア機能と網膜神経節細胞の生存に有害な結果をもたらす可能性を考慮して,LHONの原因となるバリアントを持つ人においては,眼圧の上昇に対する治療を開始する閾値を低く設定することは合理的である[Thouin et al 2013].

経過観察

症状のないLHONの原因となるmtDNAのバリアントの保有者に対しては,継続的な経過観察は必要ない.しかし,視覚に何らかの異常を感じたらすぐに医療機関にかかるように伝えておくべきである.
罹患者のフォローアップ頻度は,その個人の状況や地域医療の利用可能性によって変わってくる.

避けるべき薬剤や環境

既知のLHONの原因となるmtDNAバリアントの保有者は禁煙と,大量飲酒を避けた適量飲酒について,強く助言するべきである.大部分は小規模なエビデンスに基づくものが多いが,LHONにおける視力低下を促進することに関与するその他の環境因子(頭部外傷、産業毒性、ミトコンドリア毒性作用を有する薬物)を避けることも合理的と思われる.

リスクのある血縁者に対する検査

リスクのある血縁者に対する検査に関する問題について遺伝カウンセリングを行う目的は,遺伝カウンセリングの項を参照のこと.

研究中の治療

イデベノン.小規模な症例研究では,イデベノン(短鎖ベンゾキノン誘導体;2,3-dimethoxy-5-methyl-6-(10-hydroxydecyl)-1,4-benzoquinone)および/またはビタミン(B12とC)のサプリメントの経口投与によってLHON患者の視力回復を促進し,最終的な視覚関連評価項目を改善したという報告がある [Mashima et al 2000Carelli et al 2001].その後の2名のLHONに関する報告では,イデベノンとマルチビタミンサプリメントの服用は,視覚に有用な結果をもたらさなかった [Barnils et al 2007].

これらの矛盾した事例報告を受けて,LHONに対する経口イデベノン投与の有効性,安全性および忍容性を調査するために,第U相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が実施された:RHODOS (Rescue of Hereditary Optic Disease Outpatient Study:遺伝性視神経症の外来患者救済研究).LHONの原因となる3つの主要なmtDNAバリアント(m.3460G>A, m.11778G>A, m.14484T>C)のうち1つを保有する,合計85名の罹患者がこの多施設共同研究に正式に登録された [Klopstock et al 2013].研究対象者は,イデベノン投与群(300mg/3回/日)とプラセボ群に2:1の割合でランダムに割り当てられた.このイデベノンの用量は重大な薬剤関連有害事象がなく安全であることが判明した.視力に左右差のある (両眼間に0.2LogMARより大きい差が認められた) 患者と,少しでも症状のある眼においてさらなる視力低下のリスクが高い患者では,イデベノンによる治療はより有益なものとなった [Klopstock et al 2011].

これに従う研究(RHODOS-OFU)では,イデベノンによる6ヶ月間の治療の有益な効果は,治験終了時に内服を中断しても持続していた [Klopstock et al 2013].LHON患者103名に関する大規模な後方視的研究では,視力低下から1年以内の44名にイデベノンを投与し,少なくとも5年間フォローアップした.非治療群に比べ,治療群では視力が回復する割合がより大きく,視力回復につながる最も確実な要因は,疾患の急性期に早期に治療介入することだった [Carelli et al 2011].イデベノンは,すでに視神経に持続的な重大な障害があれば完全に元に戻すことはできないが,反応のあった罹患者では,既知の自然歴と比較して,視力回復率が高くなる傾向があることは,強調しなければならない.

LHONの原因となるmtDNAバリアントを持つ未発症者に対してイデベノンを予防的に使用することを支持するエビデンスはない.

EPI-743.疾患の発覚から90日以内に治療された急性期のLHON患者5名に対する,抗酸化剤のα-トコトリエノール - キノン(EPI-743),ビタミンE誘導体の非盲検試験では,期待できる結果が示された [Sadun et al 2012].これに力を得て,急性期および慢性LHONの両方で,この薬剤の視覚に対する有用性を確かめるための,二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が求められる [Sadun et al 2012].

遺伝子治療.LHON患者に対する遺伝子を標的とした治療が,m.11778G>Aの病的バリアントを持つ罹患者を対象にして積極的に探究されている [Qi et al 2003Qi et al 2004Qi et al 2007Ellouze et al 2008Lam et al 2010].in vitroおよびげっ歯類を対象とした前臨床データが有望であったことより,最近になって,MTND4サブユニットを置換するよう改変したアデノ随伴ウイルス(AAV2)ベクターをm.11778G>A病的バリアントを持つ罹患者の硝子体内に注入するという重要な臨床試験が開始された( ClinicalTrials.gov参照).

ホルモン治療.LHON が男性に偏在することに注目すると,女性ホルモンが予防的に影響することが考えられ,この仮説は最近,LHONのサイブリッド細胞株(罹患者の細胞の核を,脱核したドナー細胞に入れたもの)を用いて調査された.エストロジェンによって処理すると,これらのLHONサイブリッド細胞株中の活性酸素種のレベルが低下し,抗酸化酵素であるスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の活性が増加することが見いだされた.これらのエストロジェンによる有用な効果は,より効率的なミトコンドリアの酸化的リン酸化をもたらす[Giordano et al 2011].LHONの原因となるバリアントを持つ女性は閉経前後や閉経の開始に従って視力喪失のリスクが高まるかどうかを確認するためにも,さらなる研究が必要である.

ミトコンドリア置換.mtDNAの病的バリアントを母から子へ母系遺伝することを防ぐ目的で,体外受精(In vitro fertilization; IVF)の技術が開発されている.前核移植および中期Uの紡錘体移植の2つが,現在研究が行われているアプローチ法で,これらのIVFの方法の安全性および臨床適応の可能性を検証するために,さらなる実験が現在進行中である [Tachibana et al 2009Craven et al 2010Chinnery et al 2014].

広い領域にわたる疾患や病態に関する臨床試験についての情報は  ClinicalTrials.govを参照すること.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Leber遺伝性視神経症(LHON)は,mtDNAの病的バリアントが原因となり,厳密にミトコンドリア(母系)遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 発端者の父がmtDNAの病的バリアントを持っているリスクはない.
  • 通常,発端者の母はmtDNAの病的バリアントを持っており,視力喪失が起きていることもあれば起きていないこともある.
  • およそ60%の症例で,母系の血縁者に視力喪失の家族歴が見られる.
  • LHONの最大40%に家族歴が見られないことがある.明らかに単発の症例に対する説明としては,広範なかつ/または信頼できる家族歴がないことが挙げられる.あるいは,稀ではあるが,発端者のmtDNAに病的バリアントの新生突然変異が生じることもある.

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは母親の遺伝的状況による.母親がmtDNAの病的バリアントを持っていれば,すべての同胞はこのバリアントを受け継ぐが,発症する場合もあればしない場合もある.(発端者の子の項参照)

発端者の子

  • LHONの原因となるmtDNAバリアントを持つ男性(罹患者または非罹患者)は,その子供にそのバリアントを伝える可能性はない
  • LHONの原因となるmtDNAバリアントを持つ女性(罹患者または非罹患者)は,そのすべての子供にそのバリアントを伝える.
  • mtDNAの病的バリアントがあるからといって,その発症可能性や発症年齢,重症度あるいは視力低下の進行度を予測できるものではない.主要なLHONの原因となるmtDNAバリアントと罹患リスクに関する情報は,遺伝型と表現型の相関と浸透率の項を参照のこと.
  • 罹患した女性がLHONの原因となるmtDNAバリアントのヘテロプラスミーである場合,その子供へ変異したmtDNAを受け継ぐ程度は少なくなり,疾患リスクも低下する.

他の血縁者

他の家族のリスクは発端者の母親の遺伝的状況による.発端者の母親がmtDNAの病的バリアントを持っている場合は,彼女の同胞および母親にもリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題.

浸透率 主要なLHONの原因となるmtDNAバリアントの浸透率は,性年齢依存的であるため,LHONの遺伝カウンセリングは複雑である.m.11778G>Aとm.14484T>Cの病的バリアントの正確なリスクは,大規模研究で立証されている(Yu-Wai-Man et al [2009]でレビューされている).カウンセリングを希望していて,これらの病的バリアントのいずれかを有している人では,遺伝的状況を確認することで,すでに確立している年齢・性特異的な浸透率のデータから正確なリスクを算出することができる(遺伝型と表現型の相関の項参照).m.3460G>Aの病的バリアントについてのデータは限定的である.同様にその他の病的バリアントに対してのカウンセリングは,慎重な推定が求められる.

リスクはあるが無症状の成人血縁者に対する検査 LHONのリスクのある無症状の者に対しては,家系内で病的なmtDNAバリアントが分子遺伝学的検査で特定された後であれば,検査が可能である.このような検査は,正式な遺伝カウンセリングの環境を整えて実施されるべきである.白血球中の病的バリアントの存在は,生涯の発症リスクを示唆するものではあるが,検査によって無症状の人の発症年齢や重症度,視力低下の進行度を予測できるものではない.リスクを決定する最も重要な因子は性別と年齢である(遺伝型と表現型の相関と浸透率の項を参照のこと).例えば,18歳の男性で,遺伝学的検査の結果が陽性であった場合,LHONの生涯の発症リスクはおよそ50%である.年齢とともにリスクは下がるが,視力低下はどの年齢でも起こりうるため,リスクがゼロになることはない.大規模で多世代のLHON家系において,これらのリスクは分子遺伝学的検査の出現前に知られていた.より小規模な家系では,罹患者やその母親の病的バリアントがヘテロプラスミーである可能性があり,すべての血縁者が保有しているわけではないかもしれないため,遺伝的状況を確認することが重要である.同じLHONの原因となるmtDNAの病的バリアントを保有している家族間あるいはその分家においても,浸透率は非常に異なるものであることは強調しておかなければならない.

無症状の18歳未満に対する検査 成人発症のリスクがある無症状の18歳未満の血縁者に対しては,治療法がなく,子供にとっては検査を受けることの早急な有益性がないため,この時点での遺伝学的検査を検討することは子の自律性を否定することとなり,適当ではない.さらに言えば,そのような情報が家族の精神的変遷に影響を与えたり,将来的に差別や烙印付けにつながるリスクがあり,健康に対する有害な影響を与えたり,このような情報のもたらしうる不安に関する懸念がある.

LHONと確定診断された人のいる家系内で,症状のある人については,年齢に関係なく遺伝学的検査を検討することは適切である.

さらなる情報については,米国立遺伝カウンセラー協会の成人発症病態に関する未成年者の遺伝学的検査についての声明や,米国小児科学会と米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)から政策声明として出されている“子供の遺伝学的検査とスクリーニングにおける倫理的および政策課題”を参照のこと.

家族計画

  • 遺伝学的リスクを判定および出生前診断を利用するかどうかの議論は,妊娠前に行うのが望ましい.
  • 罹患している,もしくはリスクのある若年成人に対しては,遺伝カウンセリング(子どもがリスクを持つ可能性や生殖医療における選択肢に関する検討を含む)を提供するのが適切である.

DNAバンク は,将来的に利用するために,(通常は白血球から抽出した)DNAを保管しておくことである.検査手法や,遺伝子,アレルの変異,疾患への理解は将来改善する可能性が高く,罹患者のDNAを保管しておくことは考慮されるべきである.

出生前診断および着床前の遺伝的診断

LHONの原因となるmtDNAのバリアントが母親(となる予定の女性)で同定されれば,LHONのリスクの高い妊娠のための出生前診断や着床前の遺伝学的診断が実施可能な選択肢となる[Sallevelt et al 2013] .

出生前診断の結果が陽性だった場合の正確な解釈は,以下のような理由により困難である.

  • LHONの原因となるmtDNAのバリアントを持つ母親の大多数はホモプラスミーである.ヘテロプラスミーの母親では,羊水や絨毛細胞におけるmtDNAの変異率は,M期分裂の際に変化するため,胎児の他の細胞や母体の組織と一致しない可能性がある.
  • LHONの原因となるmtDNAのバリアントがあるからといって,このミトコンドリア遺伝病の発症可能性や発症年齢,重症度,視力低下の進行度を予測できるものではない.主要なLHONの原因となるmtDNAバリアントと罹患リスクに関する情報は,遺伝型と表現型の相関と浸透率の項を参照のこと.

訳注:一般に本症に対して出生前診断の適応があるとは考えられていない.また,日本では行われない.


関連情報

GeneReviewsスタッフは罹患者と家族のための疾患特異的もしくは支持組織もしくは登録所を選別した.GeneReviewsは他団体による情報について責任を負わない。情報の選別基準はこちら 


分子遺伝学

分子遺伝学およびOMIMの表の情報はGeneReviewの他の情報と異なることがある。表にはより最近の情報が含まれていることがある。−ED.

Table A. Leber遺伝性視神経症:遺伝子およびデータベース

遺伝子記号 染色体座位 タンパク質 ClinVar

MT-ATP6

ミトコンドリア ATP合成酵素サブユニットa MT-ATP6
MT-CO3 ミトコンドリア シトクローム c 酸化酵素サブユニット3 MT-CO3
MT-CYB ミトコンドリア シトクローム b MT-CYB
MT-ND1 ミトコンドリア NADH-ユビキノン酸化還元酵素鎖 1 MT-ND1
MT-ND2 ミトコンドリア NADH-ユビキノン酸化還元酵素鎖2 MT-ND2
MT-ND4 ミトコンドリア NADH-ユビキノン酸化還元酵素鎖4 MT-ND4
MT-ND4L ミトコンドリア NADH-ユビキノン酸化還元酵素鎖4L MT-ND4L
MT-ND5 ミトコンドリア NADH-ユビキノン酸化還元酵素鎖5 MT-ND5
MT-ND6 ミトコンドリア NADH-ユビキノン酸化還元酵素鎖6 MT-ND6

MT-ATP6

ミトコンドリア ATP 合成酵素サブユニット a MT-ATP6

データは以下の標準的参照資料をもとに作成した。遺伝子はHGNC、染色体座位はOMIM、タンパク質は UniProtを参照した。リンクが提供されたデータベース(座位特異性, HGMD ,ClinVar )の詳細についてはこちら を参照のこと。

Table B. OMIMにおけるLeber遺伝性視神経症 (View All in OMIM)
516000 複合体 I, サブユニット ND1; MTND1
516001 複合体I, サブユニット ND2; MTND2
516003 複合体I, サブユニット ND4; MTND4
516004 複合体I, サブユニットND4L; MTND4L
516005 複合体I, サブユニット ND5; MTND5
516006 複合体I, サブユニット ND6; MTND6
516020 複合体IIIのシトクロームb; MTCYB
516050 酸化酵素III のシトクローム c; MTCO3
516060 ATP 合成酵素 6; MTATP6
535000 LEBER 視神経萎縮症

分子遺伝学的病因 

ミトコンドリア病の概要を参照のこと.
Leber遺伝性視神経症における眼病理は,網膜色素上皮および光受容体層を除いた網膜神経節細胞層に限局される.外側膝状体まで及ぶ顕著な細胞体と軸索の変性および関連脱髄が見られる.ミトコンドリアの呼吸鎖(Table 1)により生成されるATP量の減少やグルタミン酸輸送機能の障害,活性酸素種の産生増加など,アポトーシスの機構を介して最終的に網膜神経節細胞死のトリガーとなる,様々な病原性因子が関連する [Danielson et al 2002Beretta et al 2004Zanna et al 2005Levin 2015].

LHONは臨床的,分子遺伝学的表現型は同定されやすいが,その病態生理は複雑で,なぜこのミトコンドリア病において網膜神経節細胞が選択的脆弱性を持つのかは,まだ解明されていない[Yu-Wai-Man et al 2011].なぜ,その他はまったく健康な人が若年成人期に突然視神経障害を発症するのかもわかっていない.浸透率が不完全であり,視力喪失が男性に偏在して見られることは,その他の遺伝的および/または環境要因がLHONの表現型の発現を調整していることを暗示している(遺伝型と表現型の相関と浸透率の項を参照).あるいは,性によるバイアスは,男女間の微妙な解剖学的,ホルモンおよび/または生理学的多様性の組み合わせによるものであるかもしれない.

良性バリアント ミトコンドリア病の概要を参照のこと.

病的バリアント ミトコンドリア病の概要を参照のこと.

文献や数々のオンラインデータベース上で (www.mitomap.org),LHONには多くの異なるmtDNAバリアントが関連していることが示されている.これらの変化は,稀な多型もあれば,一般集団中に共通してみられる配列もある.それゆえ,孤発例や家族内で見つかる“稀な”LHONの原因となるmtDNAのバリアントが病的であると結論づける際には,十分な注意を払うべきである.

病原性があることが強く証明されているmtDNAバリアントのリストは Table 5 (pdf) を参照のこと.

原性が推定されるmtDNAバリアントのリストは Table 6 (pdf)を参照のこと.

正常遺伝子産物 ミトコンドリア病の概要を参照のこと.

異常遺伝子産物 ミトコンドリア病の概要を参照のこと.


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Patrick Yu-Wai-Man, BMedSci, MBBS, PhD, FRCPath, FRCOphth and Patrick F Chinnery, BMedSci, MBBS, PhD, FRCPath, FRCP, FMedSci.
    日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    Gene Reviews 最終更新日: 2016.6.23 日本語訳最終更新日: 2018.6.11 in present)

原文: Leber Hereditary Optic Neuropathy

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