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軟骨無形成症
(Achondroplasia)

Gene Review著者: Richard M Pauli, MD, PhD
日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),澤井英明(兵庫医科大学)  
Gene Review 最終更新日: 2012.2.16. 日本語訳最終更新日: 2012.4.16.

原文 Achondroplasia


要約

疾患の特徴 

軟骨無形成症は不均衡な低身長をきたす病態のなかでは最も一般的な疾患である.患者は短い腕と下肢,大きな頭,前額部の突出と顔面中央部の下顎後退(これまでは顔面中央部の低形成として知られていた)による特有の顔貌といった症状を特徴とする.乳児期には筋緊張低下を広く認め,運動面での発達パターンが異常となったり,遅滞することが多い.乳児期には頭頸接合部の圧迫が死亡リスクを高めるが,知能と寿命は通常,正常である.

診断・検査 

大部分の患者で軟骨無形成症は,特徴的な臨床所見やX線所見により診断可能である.診断が不確定であったり,典型的でない所見を有する患者では,軟骨無形成症との関連が知られている唯一の遺伝子であるFGFR3遺伝子の変異を検出するために,分子遺伝学的検査を用いることができる.こうした検査により患者の99%で変異が検出できる.検査は臨床検査室で実施可能である.

臨床的マネジメント 

症状の治療頭蓋内圧上昇に対して,脳室腹腔シャントが必要となることがある.頭頸接合部の圧迫徴候や症状に対して,適応があれば後頭下減圧を行う.閉塞性睡眠時無呼吸の是正には,アデノイド口蓋扁桃摘出,気道陽圧や,稀に気管切開を施行する.中耳機能障害に対して,積極的な管理を行う.下肢の進行性弯曲が生じた場合,整形外科医による評価を行う.症状のある成人に対して,脊柱管狭窄症の是正手術を行う.社会生活と学校への適応のため,教育支援を行う.

経過観察小児期の軟骨無形成症児に対して,標準化した成長曲線を用いて身長,体重,頭囲をモニタリングする.乳児期から小児期を通じて発達段階を評価する.乳児期にベースライン時の脳CT検査を行う.睡眠時無呼吸の徴候や症状に対するモニタリングを行う.小児期の中耳障害や難聴所見の有無に対するモニタリングを行う.後弯や下肢の弯曲に対する臨床評価を行い,必要な場合には,X線評価や整形外科医への紹介を行う.成人期には,脊柱管狭窄症に対するスクリーニングのための臨床経過や神経学的検査を3〜5年に1回行う.

避すべき薬剤・環境:体同士がぶつかり合うスポーツのような頭頸接合部への損傷リスクを伴う活動.トランポリンの使用.飛び込み台からの飛び込み.体操競技の鞍馬.遊具で膝や足をかけて頭を下にすること.

妊娠管理軟骨無形成症の妊娠女性は骨盤が小さいため,帝王切開を行うこと.

遺伝カウンセリング 

軟骨無形成症は常染色体優性で遺伝する.軟骨無形成症患者の約80%の両親は平均身長を有しており,こうした患者は新生遺伝子突然変異の結果,軟骨無形成症となっている.こうした両親の場合,次の子供が軟骨無形成症となるリスクは低い.軟骨無形成症患者と正常身長者の間の子が軟骨無形成症となるリスクは,各妊娠当たり50%である.両親とも軟骨無形成症の場合,子供が平均身長となる確率は25%,軟骨無形成症となるリスクは50%,軟骨無形成症のホモ接合体(致死性)となるリスクは25%である.リスクの高い妊娠に対する出生前診断が可能である.


診断

臨床診断

公式な診断アルゴリズムは発表されていないが,軟骨無形成症の臨床症状とX線所見は十分に定義されている[Langer et al 1967].

軟骨無形成症の臨床所見は以下の通りである.

  • 低身長
  • 弛んだ皮膚を伴う両腕と両下肢の肢根型(近位)短縮
  • 肘の伸張制限
  • 短い指
  • 三尖手
  • 内反膝(O脚)
  • 乳児期の胸腰部後弯
  • 歩行開始とともに進展する極度の腰椎前弯
  • 前額部が突出した大きな頭部
  • 顔面中央部の下顎後退と低い鼻橋

小児の軟骨無形成症のX線所見は以下の通りである.

  • 短くがっしりとした管状骨
  • 下部脊椎の椎弓根間距離の短縮
  • 腸骨の円形化や寛骨臼の水平化
  • 狭い仙坐骨切痕
  • 近位大腿部のX線透過性
全身の軽度骨幹端病変

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 FGFR3遺伝子は軟骨無形成症を発症させることが知られている唯一の変異である.

臨床検査

表1.軟骨無形成症で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子記号

検査方法

検出変異

検査方法ごとの変異検出率1

検査の実施

FGFR3

標的変異解析

c.1138G>A (p.Gly380Arg)

〜98%

臨床
説明: Image testing.jpg

c.1138G>C (p.Gly380Arg)

〜1%

選択したエクソンのシークエンス解析

選択したエクソンのシークエンス・バリアント2,3

脚注4を参照

シークエンス解析

 

FGFR3遺伝子のシークエンス・バリアント2,3

99%超5

検査の利用とは,GeneTests Laboratory Directory掲載施設での利用状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証を行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 当該遺伝子に存在する1つの変異を検出する際に用いられる検査方法の精度
  2. シークエンス解析で検出される変異は小さな遺伝子内欠失/挿入,ミスセンス変異,ナンセンス変異,スプライス部位変異などである.
  3. これらの方法は,臨床的背景やX線検査所見から軟骨無形成症の疑いが高く,2種類の発症頻度の高い変異が検出されない場合にのみ実施すること.典型的には,選択したエクソンに対するシークエンス解析は,軟骨無形成症を発症させることがわかっている報告された少数の変異の検出のために作られている.全コード領域のシークエンス解析では,こうした既知の変異の検出と,臨床的重要性が知られていない新規のシークエンス・バリアントを検出する可能性もある.
  4. 標的変異解析で検出される2種類の変異を含む.
  5. Shiang et al [1994]Bellus et al [1995]Rousseau et al [1996]

検査結果の解釈

  • 検出されうる変異
    • 既に報告されている病原性変異
    • 病原性と推測されるが過去の報告がない変異
    • 臨床的意義が不明なシークエンス変化
    • 病的意義がないと考えられるが過去に報告がないシークエンス変化
    • 既に報告されている病原性のないシークエンス変化
  • 変異が検出されない場合に考えられる可能性
    • 患者は解析した遺伝子に変異を有していない
    • 患者は変異を有しているがシークエンス解析で検出できない

特異的アレル・バリアントに関する情報は「Molecular Genetics」(表Aを参照.遺伝子とデータベース,病的アレル・バリアントを参照)で入手できる.

検査手順

発端者の確定診断.軟骨無形成症の典型的な臨床所見とX線所見を有する患者には,一般に分子遺伝学的な診断の確定は不要である.診断が不確実となる患者に対しては以下を行う.

  • まず,2種類の発症頻度の高い変異に対する標的変異解析を行う.
  • 臨床的背景やX線所見に基づき軟骨無形成症の疑いが高いが,発症頻度の高い2種類の変異に対する標的変異解析で変異が検出されない場合,シークエンス解析を行うことができる.

出生前診断や着床前診断(PGD)リスクの高い妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)には,家系内の発病性変異の事前同定が必要である.

注:GeneTests Laboratory Directoryに掲載されている検査機関で検査が臨床的に行われている場合に限り,臨床的に実施されているとするのがGeneReviewsの方針である.こうした掲載には著者,編集者,査読者の意向は必ずしも反映されていない.

遺伝的に関連のある疾患

FGFR3遺伝子変異に関連するその他の表現型

SADDAN異形成(発育遅延と黒色表皮症を伴う重度の軟骨無形成症:severe achondroplasia with developmental delay and acanthosis nigricans).SADDAN異形成は稀な疾患であり,極度の低身長,重度の脛骨弯曲,顕著な発達遅滞,黒色表皮症を特徴とする.致死性骨異形成症患者とは異なり,SADDAN異形成患者は乳児期の生存が可能である.この患者では,FGFR3遺伝子のLys650Met変異が同定されている[Bellus et al 1999,Zankl et al 2008].特筆すべきことに,黒色表皮症は古典的な軟骨無形成症患者でもみられる[Alotzoglou et al 2009].

臨床像

自然経過

その他,軟骨無形成症患者の自然経過と適切な介入法に関して,詳細な要約が発表されている[Trotter et al 2005,Pauli 2010].

軟骨無形成症患者は,四肢の肢根型短縮が原因の低身長,前額部の突出と顔面中央部の下顎後退を呈する特徴的な顔貌,極度の腰椎前弯,肘の伸張および回転制限,内反膝,短指症と三尖手を有する.膝,股関節その他の関節は,関節可動域が過剰である場合が多い.

軟骨無形成症の成人男性の平均身長は131±5.6 cmであり,女性は124±5.9 cmである.軟骨無形成症では肥満が大きな問題となる[Hecht et al 1988].過剰な体重増加が小児初期に明らかになる.成人の場合,肥満が腰部脊柱管狭窄症関連の罹病率を悪化させかねず,非特異的関節障害が生じやすくなり,心血管合併症による早期死亡に至ることもある[Hecht et al 1988].

乳児期では軽度から中等度の筋緊張低下が多く,運動面の発達段階の獲得が遅滞したり,稀な異常パターンを呈することもある[Fowler et al 1997,Ireland et al 2010].乳児は筋緊張低下と大きな頭部のため,自らの頭部を支えることが困難である.

水頭症やその他の中枢神経系合併症が生じない限り,知能は正常である.

軟骨無形成症患者では真性巨脳症が起こり,軟骨無形成症の大多数の患児に大頭症を認める[Horton et al 1978].治療を要する水頭症が起こるのはおそらく5%未満[Pauli 2010]であるが,頭蓋内静脈圧の亢進が頸静脈孔の狭窄が原因で生じる可能性がある[Pierre-Kahn et al 1980,Steinbok et al 1989].

軟骨無形成症の乳児の中には,頭頸接合部関連の合併症により生後1年以内に死亡する者もいる.地域住民調査研究では,これが原因の死亡リスクはきわめて高く,7.5%であることが示された[Hecht et al 1987].このリスクは,呼吸制御中枢の損傷に関連する中枢型無呼吸に続発すると考えられ[Nelson et al 1988,Pauli et al 1995],軟骨無形成症の乳児全員に対する包括的評価[Trotter et al 2005]や神経外科的介入を選択的に行うことにより,リスクの低下が可能である.1件の研究[Pauli et al 1995]では,頭頸接合部に対する外科的減圧術を施行した患児全員で,神経機能の顕著な改善を認めた.手術後,最長20年間に渡って測定したQOL指標は,小児期に手術が適応にならなかった者のQOL指標と同等であった [Ho et al 2004].

年長児と成人に多く認める閉塞性睡眠時無呼吸は[Waters et al 1995, Sisk et al 1999],気道を縮小させる顔面中央部の下顎後退[Stokes et al 1983, Waters et al 1995]とリンパ組織環の肥大と,おそらく気道筋系の異常な神経支配[Tasker et al 1998]との合併症により生じる.

中耳機能障害が頻繁に生じ[Berkowitz et al 1991],治療が不適切な場合には言語発達に影響して重度の難聴となりかねない.

軟骨無形成症患者では下肢の弯曲が極めて多い[Kopits 1988a].未治療の成人の90%以上には,ある程度の弯曲を認める[Kopits 1988a].「弯曲」は実際,外弯,脛骨内捻転,膝の動的不安定の組み合わせから生じる複合的奇形である[Inan et al 2006].

軟骨無形成症の乳児の90〜95%に胸腰結合部の後弯を認める[Kopitz 1988b,Pauli et al 1997].約10%は自然回復せず,重篤な神経的後遺症に至りやすい[Kopits 1988b].予防手段[Pauli et al 1997]を講じることにより,外科的介入の必要性を低下できることがある[Ain & Browne 2004,Ain & Shirley 2004].

成人期で最も多い医学的愁訴はL1-L4の脊柱管狭窄症による症状である[Kahanovitz et al 1982].症状は,可逆的な運動誘発性間欠性跛行から重度で不可逆的な下肢機能の異常や失禁に及ぶ[Pyeritz et al 1987].

軟骨無形成症の成人での死亡率の高さが報告されている[Hecht et al 1987,Wynn et al 2007].Wynn et al 2007では,25〜35歳の心疾患関連死亡率が10倍となっており,総じて寿命は約10年短縮しているようである.

軟骨無形成症のホモ接合体.FGFR3遺伝子の1138ヌクレオチドの変異アレルが2つ存在する軟骨無形成症のホモ接合体では,軟骨無形成症のX線所見とは質の異なる変化を伴う重度障害をきたす.狭隘な胸郭と頸延髄狭窄による神経障害から呼吸不全が生じることが原因で,早期死亡に至る[Hall 1988].

遺伝子型と臨床型の関連

軟骨無形成症のほぼ全症例が同一のアミノ酸置換に続発して発症しているため,一次変異に関連した遺伝子型と臨床型の相関関係はないと考えられる.

浸透率 

浸透度は100%であり,軟骨無形成症を発症させるFGFR3遺伝子変異のコピーを1つ持つ者はすべて軟骨無形成症の臨床症状を呈する.

表現促進現象

表現促進現象は観察されない.

病名

歴史的に見ると,当初,軟骨無形成症という用語は,四肢が短い低身長症患者すべてに用いられていた.軟骨無形成症はその他の低身長症と比べて発症頻度が多く,「小人(dwarf)」という用語はこれまで軟骨無形成症患者に対して用いられることが極めて多かった.過去40年間に診断基準が作成され,軟骨無形成症は,外見上同様の病態を呈する他の疾患と鑑別できるようになった.

頻度

軟骨無形成症は,遺伝性の不均衡な低身長を有する最も一般的な病態である.最も正確な発症率の推定値は,生児出産の26,000〜28,000人のうち1人である[Oberklaid et al 1979,Orioli et al 1995].

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

低身長を発症させる骨格異形成症は100以上認められているが,極めて稀である疾患が多い.実際には,すべての疾患が軟骨無形成症と容易に鑑別できる臨床所見とX線所見を持つ.軟骨無形成症と混同される可能性のある病態は以下である.

  • 軟骨低形成症(この疾患もFGFR3遺伝子変異から発症することが多い).軟骨無形成症と軟骨低形成症の鑑別は,時に極めて困難となる.実際のところ,この2つの疾患にはX線所見と臨床型に幾分重複があるようである[Almeida et al 2009].
  • 致死性骨異形成症
  • 軟骨毛髪低形成(骨幹端軟骨異形成症マクージック型)
  • 偽性軟骨無形成症(臨床的,遺伝学的に区別される骨格異形成症.類似の病名であるため混乱されることがある.)
  • その他の骨幹端異形成症
臨床医への注:この疾患に関する患者特異的な説明: Image SimulConsult.jpgについては,患者ごとの所見にい基づいて鑑別診断を行う双方向型診断決定補助ソフトを参照のこと(要登録,アクセス制限あり).

臨床的マネジメント

初回診断後の評価

軟骨無形成症の臨床症状にはややばらつきがある.軟骨無形成症の診断を受けた患者の疾患の程度を知るためには,以下の評価手順が推奨される.

  • 遺伝専門医との診察は,実施可能であるならば,骨異形成症の小児のケアに精通した臨床医と行う.
  • 軟骨無形成症の標準的成長曲線と比較して,身長,体重,頭位を記録する.
  • 神経学的既往を評価し,頭頸接合部のCT画像,睡眠ポリグラフなどの頭頸接合部を評価する.
  • ベースライン時,脳CTを行う.

症状に対する治療

軟骨無形成症児で推奨される管理に関しては,米国小児科学会遺伝学委員会の勧告がある[Trotter et al 2005].同委員会の勧告では,平均身長を有する患児への治療ガイドラインが追加されている.最近のレビュー[Pauli 2010]では,Trotter et al[2005]で得られる情報が更新されている.

勧告には以下が含まれる(これに限定されるわけではない).

低身長

  • 多数の研究で,成長ホルモン(GH)療法が軟骨無形成症による低身長に対して可能性のある治療として評価されている[Seino et al 2000,Kanaka-Gantenbein 2001,Kanazawa et al 2003].
    • 一般に,こうした研究などでは治療開始時の成長の加速化が示されたが,時間が経過するにつれて治療効果は低下した.
    • 成人の身長に対してはわずかな効果しか得られていないようである.
  • 様々な手法を用いた四肢伸張が選択肢として残る患者もいる.最長12〜14インチまでの身長増加が得られる[Peretti et al 1995,Ganel & Horoszowski 1996,Yasui et al 1997, Aldegheri & Dall’Oca 2001].
    • こうした処置を6〜8歳という早期に施行することを推奨する者もいるが,小児科医,遺伝専門医,倫理学者は,若年者が同意の上で意思決定に参加できるようになるまで,こうした手術を延期することを推奨している.
    • 少なくとも北米では,患者のごく一部が四肢伸張術を受けることを選択している.Little People of America(LPA)の医学諮問委員会は,四肢伸張術の使用に関する声明を発表している.

肥満. 肥満予防措置は小児早期に開始すべきである.

  • 軟骨無形成症向けの標準的体重と,身長と体重を対比させた表[Hunter et al 1996,Hoover-Fong et al 2007]を用いて,経過のモニタリングすべきである.
  • 体格指数(BMI)は軟骨無形成症患者にあわせて標準化されたものではないため,誤解を招く結果となるため,軟骨無形成症候群患者に対しては,正常範囲に至るまではBMI指数を使用すべきでない.

水頭症

  • 頭蓋内圧が上昇した場合,神経外科医への紹介が必要となる.
  • 軟骨無形成症患者ではなんらかの機序で水頭症が生じるため,第3脳室造瘻術よりも脳室腹腔シャント術の適応が妥当であろう.

頭頸接合部の狭窄

  • 後頭下減圧術の必要性に対する最適な予測因子は以下である.
    • 下肢の反射亢進や間代
    • 睡眠ポリグラフによって示された中枢型減呼吸
    • 頭頸接合部のCT検査と軟骨無形成症児の基準から判断した大後頭孔の縮小[Pauli et al 1995]
  • 症状を呈する圧迫が明らかに示される場合,減圧術を行うため,すぐに小児神経外科医に紹介すべきである[Bagley et al 2006].

閉塞性睡眠時無呼吸

  • 治療は以下である.
    • アデノイド口蓋扁桃摘出
    • 体重減量
    • 持続性気道陽圧
    • 極端な症例に対する気管切開
  • こうした介入により,睡眠障害の改善や神経機能の幾分の改善がもたらされる可能性がある[Waters et al 1995].
  • 閉塞が気管切開を要する程度に重度である稀な場合,上気道閉塞を緩和させるため,顔面中央部を隆起させる外科的介入を行う[Elwood et al 2003].

中耳機能障害

  • 必要に応じて,頻回の中耳感染,持続性中耳分泌液,その結果生じた難聴に対する通常の管理を行うべきである.
  • 会話に関しては,スクリーニング時に懸念が生じた場合,2歳までに評価を行うべきである.

内反奇形

  • 外科的介入の基準がこれまでに発表されている[Kopits 1980,Pauli 2010].
  • 進行性症候性の弯曲を認める場合,整形外科医への紹介を迅速に行うべきである.様々な介入が選択できる(外反形成骨切り術,減捻骨切り術The eight-Plate Guided Growth Systemなど).

後弯.角状後弯の固定化を予防プロトコルが利用できる[Pauli et al 1997].

  • 躯幹筋力が増強して児が歩行を開始しても自然寛解に至らなかった場合,矯正器具の使用で胸腰部後弯の持続を予防できることが多い.
  • 重度の後弯が持続する場合,神経学的合併症を予防するため,脊椎手術が必要となることがある[Ain & Browne 2004,Ain & Shirley 2004].

脊柱管狭窄症

  • 脊柱管狭窄症の徴候や症状が重度となった場合,緊急手術の検討が妥当である.
  • 広範囲椎弓切除術[Pyeritz et al 1987,Lonstein 1988]をできるだけ迅速に施行する必要がある[Carlisle et al 2011].

社会生活への適応

  • 軟骨無形成症の低身長は目に付きやすいため,患者や家族が社会生活や学校への適応で困難に直面することがある.
  • Little People of America(LPA)などの支援団体(関連情報を参照)は,ピアサポート,体験談,社会意識プログラムを通じてこのような問題がある家族を支援する.
  • 国内向けニューズレター,セミナー,ワークショップを通じて,雇用,教育,障害者の権利,低身長児の養子,医学的問題,体に合った衣服,適応装置,子育てに関する情報が得られる.

続発性病変の予防

軟骨無形成症で生じることがある続発的合併症に関連する問題は,「症状の治療」と「経過観察」を参照のこと.

経過観察

経過観察のためのガイドラインは,米国小児科学会の臨床報告に統合された[Trotter et al 2005].

成長. 毎回,診察ごとに,軟骨無形成症に対して標準化された成長曲線を用いて身長と体重の測定するHorton et al 1978,Hoover-Fong et al 2007].

発達. 乳児期から小児早期を通じて発達評価のスクリーニングを行い,軟骨無形成症に特異的な評価を行うべきである[Fowler et al 1997,Ireland et al 2010].

頭部の成長と水頭症リスク

  • 乳児期にベースライン時の脳CT(もしくはMRI)検査を実施する.
  • 軟骨無形成症に対して標準化された成長曲線を用いた頭囲測定[Horton et al 1978]を、小児期を通じて行う.

頭頸接合部

  • すべての乳児に対して頭頸接合部のCT(もしくはMRI)を実施し,診断特異的基準に照らし合わせて大後頭孔の大きさを比較する[Hecht et al 1989].
  • 乳児期には一晩の睡眠ポリグラフ検査も行い,頭頸接合部への重要な評価点を考慮して解釈する[Pauli et al 1995].
  • 乳児・小児期には,頚髄症の徴候の有無など神経学的評価を,毎回の診察に加えて行う.

睡眠時無呼吸

  • 睡眠時無呼吸の徴候と症状に関して質問すべきである.
  • 懸念される夜間や昼間の徴候が生じた場合,睡眠ポリグラフ検査を実施する.

耳と聴覚

  • 新生児スクリーニングに加え,乳児に対して,1歳頃までに鼓膜聴力検査や聴性行動反応検査を行う.
  • 中耳障害や難聴所見の有無は,小児期を通じて検査する.

後弯

  • 乳児や小児の脊椎は,3歳までは6カ月に1回,臨床評価する.
  • 重度後弯が進行しているように思われる場合は,X線評価が必要となる(年齢に応じて,補助枕を用いて,座位もしくは立位の腹臥位もしくは仰臥位の側面像を撮影する).

下肢.弯曲や脛骨内捻転の臨床評価は,毎回の診察で行うこと.

脊柱管狭窄症.軟骨無形成症の成人では脊柱管狭窄症のリスクが高いため,患者が成人に達したら,臨床歴聴取や神経学的検査を必ず3〜5年に1回行う.

相違への適応.社会的適応に関する質問を,かかりつけ医との毎回の診察で行うこと.

回避すべき薬物や環境

とりわけ小児期には,頭頸接合部の脊髄損傷のリスクが最小限となるよう注意を払わなければならない.これには,体同士がぶつかり合うスポーツ(アメリカンフットボール,アイスホッケー,ラグビーなど),トランポリン,飛び込み台からの飛び込み,体操競技の鞍馬,遊具で膝や足をかけて頭を下にすることといった活動の禁止などが含まれる.

角状後弯の固定化が発症するリスクを低下するため,避けなければならない姿勢に関するプロトコルが発表されている[Pauli et al 1997].

骨の脆弱性や関節の変性のリスクは高くないため,骨の脆弱性や関節変性を恐れて回避すべき状況は存在しない.

リスクのある親族への検査

遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族に対する検査に関連する問題は,「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

妊娠の管理

妊娠女性が平均身長で胎児が軟骨無形成症の場合,児頭骨盤不均衡のため帝王切開が必要となることがある.

軟骨無形成症の妊娠女性は,骨盤が狭いため必ず帝王切開を行うこと.

研究中の治療法

様々な疾患や病態に対する臨床試験に関する情報へアクセスしたい場合には,ClinicalTrials.govを参照のこと.注:当該疾患の臨床検査が行われていない場合がある.

その他

遺伝クリニック.遺伝専門医を擁する遺伝クリニックでは,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する. GeneTests Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報.この疾患に特異的な,または大規模な支援組織に関する情報に関しては,「患者情報」を参照のこと.これらの組織は患者や家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立されている.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

軟骨無形成症は常染色体優性で遺伝する.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 軟骨無形成症患者の約80%の親が平均身長を有しており,真性突然変異により軟骨無形成症を発症している.
  • 35歳以上と定義されることが多い父親の年齢の高齢化が真性突然変異と関連している[Penrose 1955,Stoll et al 1982].軟骨無形成症を発症させる真性突然変異は,父親からのみ遺伝する[Wilkin et al 1998].
  • 軟骨無形成症患者の残りの20%の親は,少なくとも1人罹患者である.

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは,両親の遺伝学的状態に基づく.
  • 両親とも平均身長である場合,同胞が軟骨無形成症となるリスクは極めて低い.両親が平均身長を有する場合,1人以上軟骨無形成症の子供が生まれる少数の症例が報告されている[Henderson et al 2000,Mettler & Fraser 2000,Sobetzko et al 2000など].生殖細胞系モザイク[Henderson et al 2000, Natacci et al 2008]や,FGFR3遺伝子変異付近の精子前駆細胞が生存しやすいことから,再発リスクは非常に低いと思われるが,一般人口対照よりも高くなる[Mettler & Fraser 2000].
  • 親の1人が軟骨無形成症である場合,同胞のリスクは50%である.

発端者の子

  • 軟骨無形成症患者の子が変異アレルを受け継ぐリスクは50%である.
  • 軟骨無形成症患者と平均身長者の子が軟骨無形成症となるリスクは50%である.
  • 両親とも軟骨無形成症の場合,子供が平均身長となる確率は25%,軟骨無形成症となるリスクは50%,軟骨無形成症のホモ接合体(致死性)となるリスクは25%である.
  • 低身長者の多くが低身長者と結婚して子どもを持つことが多いため,軟骨無形成症患者の子には,2つの優性遺伝性の発達性骨疾患の二重ヘテロ接合体となるリスクがある.こうした患者の表現型は,両親の表現型とは異なることが多い[Flynn & Pauli 2003].発端者と他の優性遺伝性の骨格異形成症患者との子供が平均身長となる確率は25%,父親と同じ骨格異形成症となるリスクは25%,母親と同じ骨格異形成症となるリスクは25%,両親から発病性変異を受け継ぎ,予後不良となる可能性があるリスクは25%である.
    • 軟骨低形成症と軟骨無形成症を発現させる変異のヘテロ接合体の患者や,FGFR3遺伝子のp.Asn540Lys変異から生じる軟骨低形成症を有する患者は,重度の骨格症状を呈する表現型となり,障害が重度となる可能性がある[McKusick et al 1973,Sommer et al 1987,Huggins et al 1999].2つの別々の遺伝子座(FGFR3遺伝子と非FGFR3遺伝子)に存在する変異の二重ヘテロ接合体を有する患者では,表現型の異常はそれほど顕著ではない[Flynn & Pauli 2003].
    • 軟骨無形成症と先天性脊椎骨端線異形成症[Young et al 1992,Gunthard et al 1995,Flynn & Pauli 2003],もしくは軟骨無形成症と偽性軟骨異形成症[Langer et al 1993]の二重ヘテロ接合体患者において,予後不良が報告されている.軟骨無形成症と先天性脊椎骨端線異形成症,もしくは軟骨異形成症と偽性軟骨無形成症の二重ヘテロ接合体患者では,身体特徴,X線所見,臨床関連後遺症が増える傾向がある.
    • 軟骨無形成症と異軟骨骨症(「SHOX関連ハプロ不全疾患」を参照),もしくは軟骨低形成症と異軟骨骨症の二重ヘテロ接合体の表現型は,親の表現型よりは重症化しないようである[Ross et al 2003].実際,軟骨無形成症と異軟骨骨症の二重ヘテロ接合体では,特定所見(大頭症,身長,脛骨短縮)の緩和効果がみられるようである.
発端者のその他の親族その他の親族のリスクは,発端者の両親の遺伝学的状態に基づく.親の1人が罹患者である場合,その親族にはリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

見たところ新生突然変異を有する家系での配慮常染色体優性疾患の発端者の両親のどちらにも疾患の臨床所見を認めない場合,発端者は新生突然変異を有する可能性がある.しかし,父親や母親が異なる場合(生殖補助医療など)などの非医学的理由や非公表の養子関係なども考えられよう.

家族計画

  • 遺伝的リスク,保因者状態の確認,出生前診断の利用に関する話し合いを行う最適な時期は妊娠前である.
  • 保因者であるかもしくは保因者リスクを持つ青年成人に対して,遺伝カウンセリング(子どもへの潜在的リスクや出産手段に関する話し合いなど)を申し出ることが望ましい.
DNAバンキングは,将来の使用のために,通常は白血球から調整したDNAを貯蔵しておくことである. 検査手法や,遺伝子,変異,疾患への理解は将来改善する可能性があり,患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.ことに現在行っている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照のこと.

出生前診断

リスクの高い妊娠リスクの高い妊娠とは,親の1人もしくは両親が軟骨無形成症患者の場合である.リスクの高い妊娠に対する出生前診断は,通常胎生週数約15〜18週に実施される羊水穿刺,もしくは胎生週数約10〜12週に実施される絨毛生検により胎児細胞から抽出したDNA解析により可能である[Bellus et al 1994,Shiang et al 1994]. 出生前診断の実施前に,罹患者である親もしくは両親の病原性アレルの同定が必要である.

注:胎生週期とは最終月経の第1日から換算するか,超音波による計測によって算出される.

リスクの低い妊娠通常の妊娠中の超音波検査で胎児の四肢が短いことがわかったり,リスクが高いと考えられていない胎児に軟骨無形成症の疑いが生じることがある.

Krakow et al[2003]は,胎生16〜28週の妊娠期に3D超音波検査を用いることにより,顔貌や体肢骨格や四肢の相対比率の描出性能が向上すると述べている.Ruano et al[2004]は3D超音波検査と子宮内ヘリカルCT画像を組み合わせることにより,子宮内骨格異形成症の診断精度を高めた.Chitty et al[2011]は軟骨無形成症胎児の様々な超音波検査の発症頻度に関する報告を行った.

軟骨無形成症が疑われる場合,羊水穿刺により胎児細胞から抽出したDNAを用いてFGFR3遺伝子変異に対する検査が可能である.予備的根拠から,母体血清中の胎児DNAにおけるFGFR3遺伝子変異の検出による診断が可能であることが示された[Chitty et al 2011,Lim et al 2011].

着床前診断(PGD)リスクのある妊娠に対する着床前診断には,家系内の発病性変異が事前に同定されている必要がある.着床前診断を提供している施設に関しては,「Testing」を参照のこと.

注:GeneTests Laboratory Directoryに掲載されている検査機関で検査が臨床的に検査がおこなわれている場合に限り,臨床的に実施されているとするのがGeneReviewsの方針である.こうした掲載には著者,編集者,査読者の意向は必ずしも反映されていない.


更新履歴

  1. Gene Review著者: Clair A Francomano, MD, FACMG
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),四元淳子(お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科)
    Gene Review 最終更新日: 2006.1.9. 日本語訳最終更新日: 2009.4.1.

  2. Gene Review著者: Richard M Pauli, MD, PhD
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),澤井英明(兵庫医科大学)  
    Gene Review 最終更新日: 2012.2.16. 日本語訳最終更新日: 2012.4.15. (in present)

原文 Achondroplasia

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