1色覚
(Achromatopsia)

Gene Reviews著者: Susanne Kohl, MSc, PhD, Herbert Jägle, MD, Dhabil, FEBO, Bernd Wissinger, MSc, PhD, and Ditta Zobor, MD, PhD, Dhabil, FEBO.
日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)、平岡美紀(北海道医療大学病院眼科)

GeneReviews最終更新日: 2018.9.20.  日本語訳最終更新日: 2022.8.16

原文 Achromatopsia


要約

疾患の特徴 

1色覚は,視力低下,眼振,羞明,小さな中心暗点,偏心固視,色識別力の鈍麻または完全な喪失を特徴とする.すべての1色覚者は,3種類の錐体に対応する色覚の3軸すべてにおいて色識別の機能が低下している.多くの患者が完全1色覚であり,3種類すべての錐体の機能が失われている.稀に不完全1色覚者もおり,1種類以上の錐体が部分的に機能していることがある.症状は完全1色覚と似ているが,通常やや軽症となる.

1色覚では遠視が多い.生後数週間のうちに眼振が見られ,羞明が見られる.視力は疾患の重症度により様々で,完全1色覚では0.1以下だが,不完全1色覚では0.25以上のこともある.視力は通常経年的に変化しない;羞明は若干改善することが多い.通常,眼底は正常だが,人によっては黄斑の変化(進行性の初期徴候を示すことがある)および血管の狭窄がみられることがある.黄斑の不具合は光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)により可視化される.

診断・検査 

1色覚の診断は,発端者の既往歴,家族歴,眼振の検査,視力検査,色覚評価,眼底検査を通して確定される.1色覚が疑われる場合,光干渉断層計や眼底自発蛍光(fundus autofluorescence; FAF),視野検査,網膜電図(electroretinogram;ERG)などを付加的に行うこともある.ATF6, CNGA3, CNGB3, GNAT2, PDE6C, PDE6Hのいずれかの両アレル性の病的バリアントが同定されれば,臨床診断の確証となる.

臨床的マネジメント 

症状に対する治療
羞明を軽減し視力を向上させる可能性のある暗黒または特殊フィルタの眼鏡や赤色着色コンタクトレンズ,弱視補助具,子どもでは教室の優先席,作業補助具など.

サーベイランス
小児期は6~12ヶ月ごとに,成人は2~3年ごとに眼科検診を受ける.

遺伝カウンセリング 

1色覚は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとる.胎児期に,罹患者の同胞が罹患している可能性は25%で,無症状保因者の可能性が50%,罹患者でも保因者でもない可能性が25%である.家系内で病的バリアントが同定されていれば,リスクのある血縁者に対する保因者検査や妊娠時の出生前検査,着床前の遺伝学的検査が可能である.

訳注:日本では,本症に対する出生前/着床前遺伝学的検査は行われない.いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である.


GeneReview 記載範囲

1色覚:含まれる表現型1
  • 完全1色覚(旧称;杆体1色型色覚,全色盲)
  • 不完全1色覚

同義語と旧称は命名規則を参照すること.

  1. これらの表現型の他の遺伝的要因については,鑑別診断を参照のこと.

診断

1色覚が疑われる所見

以下の典型的な臨床所見や付加的な検査結果,家族歴がある場合は1色覚を疑うべきである.

臨床所見

  • 眼振
  • 羞明
  • 偏心固視
  • 視力障害
  • 色識別力の障害または完全喪失
  • 小さい中心暗点
  • 眼底所見:多くの罹患者で正常だが,中心窩反射の消失,色素斑,網膜血管の狭窄など,微妙な両側性の黄斑変化を示すこともある.高齢者では,眼窩の網膜色素上皮の明らかな萎縮が起こることがある.

付加的な検査

色覚検査. 1色覚の人の色の認識は不確かで;多くの1色覚は特定の色と物体の関連を学び,色によっては,明暗の差で認識する[Sharpe et al 1999].通常,すべての1色覚者で,3種類の錐体に対応する色覚のすべてに色識別の不具合がある.色覚に関する標準検査では,以下のような結果となる:

  • 通常,ファンズワース・マンセル 100 色相検査(FM 100 Hue Test)で,特定の色混同軸は見つからない.
  • パネルD15検査では高彩度および低彩度版どちらも,1色覚特有の混同軸(構成色チップを杆体知覚明度順に並べたもの)を呈する.
  • 最も重要で診断的な検査は,アノマロスコープでレイリー均等をみる赤緑色判定である.完全1色覚では,上半視野の赤と緑の混色光と下半視野の黄色光を条件等色させることはできるが,明度を合わせることができるのは赤色が強い混色光に対してのみである.

視野検査.慎重に検査をすると,小さい中心暗点がみられる患者がいるかもしれない.しかしながら,固視が不安定な場合,中心暗点をみつけられないことがある.

網膜電図(ERG

  • 全視野ERG明所視(30Hzフリッカー応答を含む)は,応答がないか著しく低下しており,暗所視応答は正常か軽度異常である.
  • 15-HzフリッカーERG典型的な所見は,強い閃光強度で誘発される錐体反応性の高速経路の応答がみられないことである[Bijveld et al 2011].

光干渉断層計(OCT)中心窩の低形成の程度は様々で,視細胞の内外節接合部の崩壊や消失,黄斑部におけるRPE(網膜色素上皮)層の萎縮が若年から観察されることがある[Genead et al 2011,Thomas et al 2011,Sundaram et al 2014,Lee et al 2015,Zobor et al 2017].
眼底自発蛍光画像では,中心窩低蛍光の消失または様々な形態,あるいはOCTでみられた病変部に対応する中心部の自発蛍光の消失と周囲の輪状の過蛍光した大きな病変を認める.
補償光学画像では残存する錐体構造をみることができるが,中心窩の錐体の数と分布は非常に多様である-中心窩の錐体モザイクは,隣接して詰まったモザイクから,まばらに配列した錐体の集合まで様々である.
家族歴は,常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)の様式を呈する.

確定診断

1色覚の臨床診断は,発端者における臨床検査や付加的な検査および家族歴に典型的な所見があることで確定する1色覚が疑われる所見).Table 1に掲載される6つの遺伝子のいずれかに両アレル性の病的バリアントが同定されれば,分子遺伝学診断が確定する.
分子遺伝学的検査方法には,多く見つかるCNGB3c.1148delCバリアントだけを調べる標的解析や,マルチジーンパネル検査包括的なゲノム検査(典型的にはエクソーム解析)などがある.

  • 最も多く見つかるCNGB3c.1148delCバリアントだけを調べる標的解析は,ヨーロッパ集団やUS,カナダ,オーストラリア,ニュージーランドのヨーロッパに起源を持つ集団に対しては,最初に行われることもある(分子遺伝学の項,CNGB3病的バリアントを参照).
  • ATF6CNGA3CNGB3GNAT2PDE6CPDE6Hおよび他の関連のありそうな遺伝子(鑑別診断の項参照)を含むマルチジーンパネルは,基本的な表現型を説明しえない遺伝子の病的意義不明および病的バリアントの同定を制御しつつ,最も合理的なコストで症状の遺伝的要因を特定できる可能性が高いと考えられる.注:(1)パネルに含まれる遺伝子と各遺伝子に用いられる試験の診断感度は検査施設により様々であり,また経年的にも変化する.(2)マルチジーンパネルには,このGeneReviewでは言及されていない症状に関連する遺伝子が含まれるものもある.(3) 検査施設によっては,臨床医が指定した遺伝子を含む,カスタム設計された施設独自のパネルや,表現型に焦点を当てたエクソーム解析パネルといった選択肢もある.(4)パネルで用いられる方法には,配列解析,欠失/重複解析,他の配列に拠らない手法が含まれる.

マルチジーンパネルの概要については こちらをクリック.臨床医のための,遺伝学的検査依頼に関するより詳細な情報は こちらを参照.

  • 包括的なゲノム検査では,臨床医が関連のありそうな遺伝子を決める必要がない.エクソーム解析が最も多く用いられる.ゲノム解析も利用可能である.

包括的なゲノム検査の概要についてはこちらをクリック.臨床医のための,遺伝学的検査依頼に関するより詳細な情報はこちらを参照.

表1. 1色覚に用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 この遺伝子の病的バリアントに起因する1色覚の割合2(民族集団) この方法で検出される病的バリアントの割合3
配列解析4 遺伝子標的欠失/重複解析5
ATF6 1.5% 15/156 報告なし7
CNGA3 5-33% (ヨーロッパ)
84% (イスラエル+パレスチナ)8
80% (中国)9
~100%10 報告なし7
CNGB3 60% (ヨーロッパ)
16% (イスラエル+パレスチナ)11
~95%12 7家系で7つの異なる欠失;
10家系で 3つの重複13
GNAT2 1.8% ~99% 3 家系14
PDE6C 2.5%15 全報告16 報告なし7
PDE6H 0.1% 脚注17参照 報告なし7
不明 10-25%18 NA
  1. 染色体座位およびタンパク名はTable A.遺伝子とデータベースの項を参照のこと.
  2. 注意書きのないものはMayer et al [2017]
  3. この遺伝子に検出されたアレルのバリアント情報については分子遺伝学の項を参照.
  4. 配列解析では,良性,おそらく良性,臨床的意義不明,おそらく病的,病的のいずれかのバリアントが検出される.バリアントには,小規模な遺伝子内欠失/挿入やミスセンス,ナンセンス,スプライス部位バリアントなどが含まれる.通常,エクソンや遺伝子全体の欠失/重複は検出されない.配列解析結果の解釈に関して考慮すべき問題についてはこちらを参照のこと.
  5. 遺伝子標的欠失/重複解析は,遺伝子内の欠失や重複を検出する.定量的PCR,広域PCR,MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法や,単一エクソンの欠失や重複を検出するために設計された遺伝子標的マイクロアレイなどの多様な手法が用いられる.
  6. Ansar et al [2015],Kohl et al [2015],Xu et al [2015],Carss et al [2017],Skorczyk-Werner et al [2017]
  7. より広範囲の欠失,挿入,重複は報告されていないか,1例報告または1家系に限定されている[Rosenberg et al 2004].結果的に,これらの病的バリアントの頻度や検出率は推定できない.
  8. Zelinger et al [2015]
  9. Kohl et al [1998],Wissinger et al [2001],Kohl et al [2005],Liang et al [2015],Zelinger et al [2015]
  10. Kohl et al [1998],Wissinger et al [2001],Johnson et al [2004],Tränkner et al [2004],Nishiguchi et al [2005],Varsányi et al [2005],Ahuja et al [2008],Koeppen et al [2008],Reuter et al [2008],Koeppen et al [2010],Thiadens et al [2010],Genead et al [2011],Vincent et al [2011]
  11. Kohl et al [2000],Kohl et al [2005],Thiadens et al [2009b],Zelinger et al [2015]
  12. CNGB3に病的バリアントを持つ163名のうち,105名(64%)はc.1148delCのホモ接合体,44名(27%)は複合ヘテロ接合体,14名(9%)は病的バリアントが1つだけ同定されている[Mayer et al 2017].
  13. Kohl et al [2015],Mayer et al [2017]
  14. Rosenberg et al [2004]; S Kohl未発表データ
  15. Chang et al [2009],Thiadens et al [2009a],Grau et al [2011],Huang et al [2013]
  16. Aligianis et al [2002],Kohl et al [2002],Michaelides et al [2003],Piña et al [2004],Rosenberg et al [2004],Ouechtati et al [2011],Langlo et al [2016],Bryant et al [2017],Carss et al [2017],Taylor et al [2017],Ueno et al [2017]
  17. 3家系に単一のナンセンスバリアントが報告されている[Kohl et al 2012,Pedurupillay et al 2016].
  18. Kohl et al [2005],Thiadens et al [2009b]

臨床的特徴

臨床症状

1色覚は,視力低下,眼振,光感受性の亢進(羞明),小さい中心暗点(見つかりにくい),偏心固視,色識別力の低下または完全喪失を特徴とする.遠視が多い.生後数週間で眼振がみられ,次に明るい光に対する感受性が亢進する.
最高視力は疾患の重症度により様々である;完全1色覚では0.1以下だが,不完全1色覚では0.25以上のこともある.視力は通常経年的に変化しないが,眼振と明るい光に対する感受性は若干改善することもある.眼底は通常正常だが,人によっては,黄斑部の変化や血管狭窄が見られることもあり,光干渉断層計(OCT)により,時間の経過とともに進行する黄斑部の変化が明らかになる[Thomas et al 2012].
多くは完全1色覚で,眼の光受容体である3種類すべての錐体(明所視)が全く機能せず,すべての視機能を杆体(暗所視)が担うことで症状の説明がつく.
稀に,不完全1色覚も存在し,杆体と共に1種類以上の錐体が部分的に機能する場合がある.症状は完全1色覚と類似するが,通常軽症である[Sharpe et al 1999].色識別力は,良好な人~重度に問題のある人まで幅があり;羞明は通常みられず;視力は完全1色覚と比較して良好である.

遺伝型と表現型の相関

完全1色覚.

ATF6,CNGA3CNGB3GNAT2PDE6Cの両アレル性病的バリアントを持つ人の多くは,同様の臨床所見を呈する完全1色覚である.特定の遺伝型-表現型の関連はみられない;しかしながら,ATF6関連1色覚では,通常中心窩の形成が不十分であるか,形成不全である.

不完全1色覚

病名

完全な1色覚は杆体1色覚(1色型色覚),全色盲(OMIM216900),昼盲あるいは”Pingelapese blindness”(訳注:頻度の項参照)とも呼ばれる.臨床的には,典型的な完全1色覚または視力低下を伴う完全1色覚として知られている.

不完全な1色覚は,臨床的に非定型不完全型1色覚または視力低下を伴う不完全型1色覚とも呼ばれる.
訳注:日本では2005年に,日本眼科学会がそれまでの“全色盲”という呼称を廃止し,“1色覚”とした.本稿で記載される完全1色覚は日本眼科学会の提示する杆体1色覚,不完全1色覚は同じく錐体1色覚に相当する.

頻度 

1色覚は稀な疾患で,頻度は30,000人に1人未満と推定される[Sharpe et al 1999].
特定の地域では,血族婚は一般的である.ミクロネシアの東部カロリン諸島に位置するピンゲラップ島では,創始者バリアントであるCNGB3p.Ser435Pheに起因する1色覚の頻度は4-10%である[Sharpe et al 1999].


遺伝的(アレル)に関連する疾患

GeneReviewに記載されている以外の,PDE6H両アレル性病的バリアントに関連する表現型については知られていない.
その他5つの1色覚関連遺伝子のアレルが呈する疾患についてはTables 2aおよび2b.に掲載する.

表2a 1色覚の鑑別診断で考慮すべきアレルのある疾患

遺伝子 疾患1 MOI 参照
CNGA3 進行性錐体ジストロフィ AR Wissinger et al [2001],Nishiguchi et al [2005]
CNGB3 Michaelides et al [2004],Thiadens et al [2010]
GNAT2 Piña et al [2004]
PDE6C Thiadens et al [2009a],Huang et al [2013]
ATF6 錐体-杆体ジストロフィ; 黄斑ジストロフィ AR Carss et al [2017],Skorczyk-Werner et al [2017]

AR=常染色体潜性(劣性);MOI=遺伝形式

  1. 多くの場合,経年的に疾患が進行することによってのみ,1色覚と区別される.

表2b アレルに関連する疾患(1色覚の鑑別診断には含まれない)

遺伝子 疾患 参照
CNGB3 黄斑変性症 Nishiguchi et al [2005]
GNAT2 oligo-cone trichromacy Rosenberg et al [2004]

鑑別診断

1色覚はその特徴から容易に認識することができる(1色覚が疑われる所見参照).鑑別診断を考慮すべき症状としては,先天性眼振(眼振は通常最初に表れる症状であるため)や大脳性1色覚または色弱があり,後者は脳炎や大脳皮質の外傷,脳梗塞後に偶発的に発症し,特に後頭葉腹側皮質の病変が関与する[Bouvier & Engel 2006].
1色覚と混同されやすい遺伝性網膜ジストロフィについてTable 3にまとめた.

表3.1色覚の鑑別診断で考慮される遺伝性網膜ジストロフィ

疾患 遺伝子 MOI 重複する臨床所見 異なる臨床所見 備考
青錐体1色型色覚1 (OMIM303700) OPN1LW;
OPN1MW2
XL3
  • 重度の視力低下
  • 偏心固視
  • ± 幼少期の眼振
  • 眼底の異常は示さない
  • 色識別力の低下または欠如4
青錐体1色型色覚では:
  • 波長感度のピークは 440 nm付近 (S錐体の感度のピーク)であり,507 nm (杆体の感度ピーク) ではない.
  • ほとんどの罹患者は男性
  • 青錐体1色型色覚と1色覚(杆体1色型色覚)では,特別な4色のプレート検査または2色のフィルタ検査により,臨床的に鑑別できる.
  • 黄色の背景に青色の閃光を照射すると,網膜電図の錐体応答が誘発される(杆体だけでなくS錐体が機能しているため).
遺伝性赤緑色覚異常 (OMIM303800,303900) OPN1LW
OPN1MW
XL 色覚異常5 遺伝性赤緑色覚異常では:
  • 眼科的またはその他の関連する臨床所見がない
  • 多くは1型または2型3色覚 (つまり異常3色覚) であり,色の識別に大きな問題がない.
  • ほとんどの罹患者は男性
  • 緑色覚異常の検出には,石原式やAmerican Optical社版HRR 仮性同色表などの臨床的チャートテストが広く用いられている.
  • 1型2色覚,2型2色覚,1型3色覚,2型3色覚として知られる色覚異常の程度分類には,等色させるアノマロスコープが必要である.
3型2色覚
青黄色覚異常
(OMIM190900)
OPN1SW AD 色の混同 3型2色覚では: 色の混同は青と緑に限定される6 その他の非先天性青黄色覚異常(部分的に3型2色覚に類似する)は,加齢や脈絡膜・色素上皮・網膜・視神経の疾患に起因する場合がある.(視神経萎縮症1型など); これらは通常進行性で他の関連所見を有する; 付随する視力障害など7
錐体/錐体-杆体ジストロフィ8 ABCA4,
AIPL1,
CABP4,
CNNM4,
CDHR1,
GUCY2D,
KCNV2,
RAB28,
RPGRIP1
AD, AR
  • 出生時の錐体機能は正常
  • 典型的な症状(視力低下, 羞明, まぶしい光に対する感度上昇, 色覚異常) が遅れて出現する.9
  • 視力低下は,早くて小児期,遅いと60代に発症する.
  • 暗順応した杆体の閾値が上昇することがある10
錐体ジストロフィでは疾患の進行がみられるが,1色覚では進行はしない.
  • 特に小児発症の場合,錐体ジストロフィと1色覚の鑑別は難しい.
  • 臨床的鑑別に最も役立つのは,疾患の進行である.
レーベル(Leber)先天黒内障(LCA) AIPL1
CABP4
CEP290
GUCY2D
RPGRIP1
AR
  • 小児期の眼振
  • 羞明
  • 重度の視力低下
  • 眼底の異常所見はなし
  • 色識別力の低下または欠如
LCAでは,夜盲および疾患の進行がみられる 非常に若年に発症
遅視症; 錐体順応遅延 RGS9
  • 網膜電位差の抑制が長く続き,輝度変化への適応が困難になる
  • 視力への影響は少ないか正常
  • 羞明
Alström症候群11 ALMS1 AR
  • 小児期の眼振
  • 羞明
  • 重度の視力低下
  • 色識別力の低下または欠如
Alström症候群では他の所見の可能性もあり: 心筋症, 腎不全, 肥満, 感音性難聴, 糖尿病 若年発症

AD=常染色体顕性(優性);AR=常染色体潜性(劣性);MOI=遺伝形式,XL=X連鎖性

  1. 青錐体1色型色覚は,S-錐体1色型色覚またはX染色体連鎖性1色覚とも呼ばれる.
  2. L(赤)およびM(緑)錐体の機能低下は,X連鎖性赤(OPN1LW)および緑(OPN1MW)オプシン遺伝子配列の欠失をもたらす病的バリアントや,遺伝子の不等交叉および/または不活性化バリアント,または赤/緑(OPN1LW/ OPN1MW)遺伝子配列の発現制御に重要な領域である染色体座位制御領域に影響する欠失などにより,引き起こされる.
  3. 青錐体1色型色覚の罹患者は,ほとんど男性である.
  4. Sharpe et al [1999]
  5. 軽度の赤緑色覚異常の男性では,検査をするまで気づかない人もいる.北部ヨーロッパを起源に持つ集団では,男性の8%,女性の0.5%が赤緑色覚異常であり,これらの症状はアフリカ人男性(3-4%)やアジア人男性(3%)ではより頻度が低い.
  6. しばしば黄-青異常とも呼ばれるが,3型色覚に影響しているのはS(青)錐体で,色混同が起きるのは一般的には青と緑である.
  7. Sharpe et al [1999]
  8. 1色覚と誤診断された患者で同定された遺伝子については,Glöckle et al [2014],Weisschuh et al [2016],Carss et al [2017]を参照.
  9. Holopigian et al [2004]
  10. Aboshiha et al [2014]
  11. Nasser et al [2018]

臨床的マネジメント

最初の診断時の評価

1色覚と診断された人の視機能の程度と必要事項を確定するために,(診断のための評価として実施されていなければ)以下の評価が推奨される:

  • 視力に焦点を当てた標準的な臨床的眼科評価および検査,ならびに可能な限り良好な矯正視力を得るための眼鏡および/またはコンタクトレンズの使用
  • 色覚評価
  • 近い将来,治療が可能となる可能性があるため,臨床遺伝専門医および/または遺伝カウンセラーへの紹介( 研究中の治療法参照)

症状に対する治療

暗黒または特殊フィルタの眼鏡や赤色着色コンタクトレンズは,羞明を軽減し,視力を改善する可能性がある.
弱視補助具には,読書用の高倍率拡大鏡やデジタル/電子機器などがある.
1色覚の子どもに対しては,教室の席を優先的に決めるべきである(つまり,拡大鏡の効果を最大限に活用するべく前方の席で,まぶしさを軽減するために窓から離れた席).
学習・作業支援に関する幅広い情報は,Achromatopsia Network(1色覚ネットワーク;www.achromat.org)から入手可能である.

サーベランス

以下の眼科検診が必要とされる:

  • 小児期は6~12ヶ月ごとに,最適な矯正視力を得るための屈折力の変化を観察する;
  • 成人では2-3年ごとに実施する.

避けるべき薬剤/環境

網膜に対する光による追加のダメージを避けるため,明るいところでは,適切な(ダークな)保護メガネを着用することが推奨される.

リスクのある血縁者の評価

遺伝カウンセリングを目的とした,リスクのある血縁者の検査についての問題は, 遺伝カウンセリングの項を参照.
研究中の治療法

2012年7月から,CNGB3関連1色覚患者に対する毛様体神経栄養因子(CNTF)放出眼内インプラントの治療効果と安全性を検証する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(NCT01846052)が開始した.視力,薄明視増分感度閾値(mesopic increment sensitivity threshold),網膜電図,色相識別の評価では,客観的に測定可能な錐体機能の増強は認められなかった.主観的には,治療した眼の視機能の有益な変化が見られ,光に対する感度やまぶしい光に対する忌避感が低減し,暗所への適応が遅くなったことが報告されており,杆体光受容体へのCNTFの作用と一致していた[Zein et al 2014].

AAVウイルスベクターを用いたCNGA3関連1色覚(NCT02610582, NCT02935517)およびCNGB3関連1色覚(NCT02599922, NCT03278873, NCT03001310)に対する遺伝子組換え療法の臨床的安全性と有効性を検証するいくつかの介入的第Ⅰ/Ⅱ相試験が,現在進行中で患者を募集している.
これらに加え,1色覚の自然史?を確立するために,臨床的評価のための患者を募集している,またはしていた臨床観察試験もある(NCT02435940, NCT01846052).

広範な疾患や症状の臨床研究に関する情報は, 米国では ClinicalTrials.gov を, ヨーロッパでは EU Clinical Trials Registerを参照のこと.

 

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

1色覚は,常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとる.

家族構成員のリスク

発端者の両親

  • 罹患児の両親は,必然的にヘテロ接合体である(つまり,1色覚関連病的バリアントを1つ持つ保因者である).
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状で,疾患発症のリスクはない.

発端者の同胞 

  • 受胎時に,罹患児の同胞が罹患している可能性は25%,無症状保因者である可能性は50%,罹患せず保因者でもない可能性が25%である.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状で,疾患発症のリスクはない.

発端者の子

1色覚者の子は1色覚関連病的バリアントの必然的なヘテロ接合体(保因者)となる.

他の家族構成員

発端者の親の同胞は,いずれも50%の確率で1色覚関連病的バリアントの保因者である.

保因者の検出

リスクのある血縁者に対する保因者診断のためには,家系内で1色覚関連病的バリアントを同定する必要がある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

  • 遺伝学的リスクの判定,保因状況の確認や出生前/着床前診断を利用可能性の検討は,妊娠前に行うのが望ましい.
  • 罹患している,もしくはリスクのある若年成人に対しては,遺伝カウンセリング(子どもがリスクを持つ可能性や生殖医療における選択肢に関する検討を含む)を提供するのが適切である.

DNAバンキング は、(主に白血球から抽出した)DNAを将来の利用のために保存しておくものである。検査手法や,遺伝子やアレルのバリアント,疾患に対する我々の理解は将来改善すると考えられるため,罹患者のDNAを保管しておくことを考慮するべきである.

出生前および着床前遺伝学的検査

罹患した家系員に1色覚関連病的バリアントが同定されれば、リスクの高まる妊娠に対する出生前診断と着床前遺伝学的検査を受けることが可能である。

医療の専門家の間や家族内においても、特にその検査が早期診断というより妊娠中絶を目的として考慮されている場合,出生前診断に対する考え方の相違が存在しうる。ほとんどの施設では出生前診断を行うか否かの決断は両親に委ねているが、この問題に関しては議論することが適切である。
(訳注:日本では1色覚における着床前診断および出生前診断は行われていない)


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

  • Achroma Corp

Phone: 724-841-4052
Email: bvissari@achromacorp.org
www.achromacorp.org

  • Achromatopsie Selbsthilfeverein e.V.

Germany
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分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A. 1色覚:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座位 タンパク質 座位特異的データベース HGMD ClinVar
ATF6 1q23​.3 環状AMP依存性転写因子 ATF-6 α ATF6 @ LOVD ATF6 ATF6
CNGA3 2q11​.2 環状ヌクレオチド依存性陽イオンチャネル α-3 CNGA3 @ LOVD CNGA3 CNGA3
CNGB3 8q21​.3 環状ヌクレオチド依存性陽イオンチャネル β-3 CNGB3 @ LOVD CNGB3 CNGB3
GNAT2 1p13​.3 グアニン-ヌクレオチド結合G(t)タンパク サブユニット α-2 GNAT2 GNAT2
PDE6C 10q23​.33 錐体cGMP-特異的3',5'-環状ホスホジエステラーゼサブユニットα' PDE6C @ LOVD PDE6C PDE6C
PDE6H 12p12​.3 網膜錐体ロドプシン感受性cGMP 3',5'-環状ホスホジエステラーゼサブユニット γ PDE6H @ LOVD PDE6H PDE6H

データは以下の標準的参照資料をもとに作成した.遺伝子は HGNC;染色体座位はOMIM;タンパク質は UniProtを参照した.リンクが提供されたデータベース(座位特異性, HGMD,ClinVar)の詳細についてはこちらを参照のこと.

表B 1色覚に関するOMIMの登録 (OMIMですべてを見る)

139340 グアニン-ヌクレオチド結合タンパク, αトランスデューシン活性ポリペプチド2; GNAT2
216900 1色覚2; ACHM2
262300 1色覚3; ACHM3
600053 環状ヌクレオチド依存性チャネル, α-3; CNGA3
600827 ホスホジエステラーゼ 6C; PDE6C
601190 ホスホジエステラーゼ 6H; PDE6H
605080 環状ヌクレオチド依存性チャネル, β-3; CNGB3
605537 転写活性因子6; ATF6
610024 網膜錐体ジストロフィ3A; RCD3A
613093 錐体ジストロフィ4; COD4
613856 1色覚4; ACHM4
616517 1色覚7; ACHM7

分子病理学

CNGB3, CNGA3, PDE6C, GNAT2, およびPDE6Hは,いずれも錐体光受容体に発現し,錐体の光情報伝達にきわめて重要である.

  • 光を受容した錐体視物質分子は,トランスデューシンαサブユニット(GNAT2)上で,GDPからGTPへの変換と,抑制系のβ/γサブユニットからの解離を誘発する.
  • 活性化されたGTP-トランスデューシンは,網膜錐体視細胞ホスホジエステラーゼのα'サブユニット(PDE6C)と結合し,抑制系のγサブユニット(PDE6H)を引き込んで活性化させる.
  • 網膜錐体視細胞PDE6CはcGMPを加水分解して細胞内濃度を下げ,ヘテロ4量体のcGMP依存性陽イオンチャネル(CNGA3およびCNGB3)を閉鎖させ,続いて膜の過分極を引き起こす [Lamb & Pugh 2006].

つまり,光伝達カスケードにおいては,トランスデューシンが最初の段階を,ホスホジエステラーゼが中間段階を,cGMP依存性チャネルが最終段階を担っている.
一方,一番最近同定されたACHM(1色覚)関連遺伝子であるATF6は,ATF6小胞体ストレス応答(UPR)経路における機能で知られる,いたるところに発現する膜貫通型転写因子をコードしている[Walter & Ron 2011Wang & Kaufman 2012Kohl et al 2015].この組織特異性なく発現する遺伝子の病的バリアントが,なぜ,どのように錐体の機能不全のみを引き起こすのかは,現在のところわかっていない.
ATF6

遺伝子の構造.

ATFは16のコーディングエクソンで構成される.遺伝子とタンパク質の情報に関する詳細は Table A遺伝子を参照のこと.

病的バリアント

13の異なる病的バリアントが,15家系から報告されている[Ansar et al 2015Kohl et al 2015Xu et al 2015Carss et al 2017Skorczyk-Werner et al 2017].13のうち9つはナンセンスバリアント,スプライス部位バリアント,小規模な挿入,欠失である.ミスセンスバリアントは4つのみ報告されている.
(アイルランド/イギリス系の血縁関係のない2家系から)c.970C>Tのホモ接合体の6例が同定された;この家系は創始者バリアントを示唆する0.7Mbの共通のハプロタイプを持っていることが示された[Kohl et al 2015].別の病的バリアントであるc.1533+1G>Cは,フランス系カナダ人の4家系で繰り返し見つかっており,この集団における創始者バリアントであることが示唆された[Kohl et al 2015Xu et al 2015].

 表4. GeneReviewの中で提示したATF6の病的バリアント

DNA塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.970C>T p.Arg324Cys NM_007348​.3
NP_031374​.2
c.1533+1G>C 脚注1参照

表に掲載されているバリアントは著者らから提供された.GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類分けの検証はおこなっていない.

GeneReviews はHuman Genome Variation Society(varnomen​.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている.命名法の解説については,Quick Referenceを参照のこと.
1. 2つのcDNAが同定され,1つはイントロンの一部が保持され,もう1つはエクソンがスキップされていた [Kohl et al 2015].

ATF6

正常な遺伝子産物.ATF6は670のアミノ酸をコードし,いたるところに発現する90kdのER(小胞体)ストレス制御膜貫通型転写因子で,3つの小胞体ストレス応答(UPR; unfolded protein response)経路のうちの1つ(ATF6経路)として機能することが知られている.小胞体ストレス応答および小胞体ストレス応答エレメント(ERSE)からの転写誘導に必要である.小胞体ストレスがかかると、ATF6タンパクの細胞質側の400残基からなるN末端部分(N-ATF6)が遊離される.N-ATF6は,転写活性化ドメイン,bZIPドメイン,DNA結合ドメイン,核局在化シグナルを持つ.核に移動し,他のいくつかのタンパク質と相互作用してERSE結合複合体を形成し,ERストレス遺伝子の誘導に関与している[Walter & Ron 2011Wang & Kaufman 2012].

異常な遺伝子産物.ほとんどの病的ミスセンスバリアントは,タンパク質の機能を喪失させる.ミスセンスバリアントの1つであるp.Arg324Cysは,bZIPドメインの基本領域に位置し,ATFファミリーだけでなくAP-1ファミリーの転写因子にも保存されているアルギニン残基に影響を与え,ATF6の転写活性を著しく低下させる[Kohl et al 2015].p.Arg324Cysバリアントは,機能的に詳細な特徴を持ち,転写活性を損なうことが示された [Kohl et al 2015Chiang et al 2017].
その他のミスセンス変化についても研究が進んでおり,Class1・2・3に分類される.

  • Class1.ERからゴルジ体への輸送が阻害され,膜内タンパク質分解と転写活性が低下する疾患関連ATF6ミスセンスバリアント
  • Class2.ATF6の細胞質ドメイン全体を保持し,ERストレスがない場合でも転写活性が完全に損なわれず,下流の標的遺伝子を構成的に誘導する疾患関連ATF6ミスセンスバリアント
  • Class3.bZIPドメインが不完全あるいは欠失していることで転写活性が完全に失われるATF6ミスセンスバリアント

ATF6病的バリアントのClass1または3を持つ患者の初代線維芽細胞は,ERストレスに応答して細胞死が増加することが示された [Chiang et al 2017].
特筆すべきは,Atf6ノックアウトマウスはヒトの1色覚の表現型を再現しないことである[Kohl et al 2015].

CNGA3

遺伝子の構造CNGA3は8つのコーディングエクソンで構成される[Wissinger et al 2001].遺伝子とタンパク質の情報に関する詳細は Table A遺伝子を参照のこと.

病的バリアント.150以上の異なる病的バリアントが1色覚と関連している[Kohl et al 1998Wissinger et al 2001Johnson et al 2004Tränkner et al 2004Nishiguchi et al 2005Varsányi et al 2005Ahuja et al 2008Koeppen et al 2008Reuter et al 2008Koeppen et al 2010Thiadens et al 2010Genead et al 2011Vincent et al 2011].ほとんど(~80%)の病的バリアントはミスセンスである.ナンセンスバリアント,挿入,欠失はわずかである.

正常な遺伝子産物.CNGA3は環状ヌクレオチド依存性陽イオンチャネルα3(錐体光受容体cGMP依存性陽イオンチャネル[CNG] の αサブユニット)をコードする.CNGA3は694個のアミノ酸を有し,予測される質量は78.8kdである.コーデイング領域をさらに55個のアミノ酸を延長した,他のスプライシングエクソンも報告されている [Wissinger et al 2001].CNGチャネルのαサブユニットは,機能的な同一のαサブユニットチャネル(ホモオリゴマー)を形成することができるが,その生物物理学的特性は,3つのαサブユニットと1つのβサブユニットからなるヘテロオリゴマー由来のCNGチャネルとは異なるものである.

異常な遺伝子産物.多くの症例でチャネル機能が強力に阻害されあるいは完全に機能していないことが,機能解析で示されている.病的ミスセンスバリアントは,多くがCNGチャネルファミリーに高度に保存されているアミノ酸残基に影響を及ぼし,cGMP結合ドメインを含む構造的・機能的ドメインに集積している [Wissinger et al 2001Faillace et al 2004Patel et al 2005Koeppen et al 2008Reuter et al 2008].
ポア(開口部)領域とcGMP結合ドメインに位置するいくつかの病的バリアントは,不完全1色覚と関連する.これらの異常なタンパク質は機能的なチャネルを形成するが,cGMPやcAMPに対する親和性の変化や,Ca2+の遮断や透過といった錐体CNGチャネルのゲート特性の変化など,性質が大きく変化することがある[Tränkner et al 2004Liu & Varnum 2005Reuter et al 2008Koeppen et al 2010].
動物モデルにより,根本的な発症メカニズムが解明された:

  • マウス.Cnga3(-/-)マウスでは,錐体の機能が失われ,網膜内の錐体の数が減少し,残った錐体の形態異常が見られる.Cnga3(-/-)錐体はオプシンを外節に伝えることができず,光伝達カスケードの様々なタンパク質を発現低下させていることがわかった.アポトーシス細胞死は誘導されるが,Cnga3の欠失は他の錐体特異的遺伝子の転写には影響を与えないようである [Biel et al 1999Michalakis et al 2005].遺伝子治療は,これらのモデルマウスで試験され,首尾よく錐体関連視力を改善することが示された.
  • 羊.先天性昼盲の羊は,ヒツジCNGA3の病的ナンセンスバリアントFN377574:c.706C>T (p.Arg236Ter)のホモ接合体であり,ヒト1色覚の研究や遺伝子治療法の評価のための動物モデルとして利用されている.

CNGB3

遺伝子の構造.CNGB3は18のコーディングエクソンで構成される[Kohl et al 2000].遺伝子とタンパク質の情報に関する詳細は Table A遺伝子を参照のこと.

病的バリアント.125以上の異なる病的バリアントが報告されている [Kohl et al 2000Sundin et al 2000Rojas et al 2002Johnson et al 2004Michaelides et al 2004Okada et al 2004Kohl et al 2005Nishiguchi et al 2005Varsányi et al 2005Khan et al 2007Wiszniewski et al 2007Thiadens et al 2009bAzam et al 2010Mayer et al 2017].ほとんどが病的ナンセンスバリアント,フレームシフト欠失および挿入,推定上のスプライス部位バリアントである.病的ミスセンスバリアントは少数のみ(~10%)見つかっている.
1つは,p.Ser435Pheの変異タンパク質を持つもので,ミクロネシアのピンゲラップ島出身者の1色覚"Pingelapese blindness"の原因となる[Kohl et al 2000Sundin et al 2000].
1塩基欠失であるc.1148delCは世界中の1色覚で最も多い病的バリアントで,CNGB3疾患関連アレルのうち約70%を,すべての1色覚関連アレルの約40%を占める.c.1148delCは創始者効果に起因する[Wiszniewski et al 2007].

表5 GeneReviewの中で提示したCNGB3の病的バリアント

DNA塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.1148delC p.Thr383IlefsTer13 NM_019098​.3
c.1304C>T p.Ser435Phe NP_061971​.3

表に掲載されているバリアントは著者らから提供された.GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類分けの検証はおこなっていない.
GeneReviews はHuman Genome Variation Society(varnomen​.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている.命名法の解説については,Quick Referenceを参照のこと.

正常な遺伝子産物.CNGB3は環状ヌクレオチド依存性陽イオンチャネルβ3(錐体光受容体cGMP依存性陽イオンチャネルの βサブユニット)をコードする.CNGB3は809アミノ酸の長さである.βサブユニットは機能的なホモオリゴマーチャネルを形成することはできない;そのため,調整的な役割を持つサブユニットと考えられる.機能的な錐体CNGチャネルは3つのαサブユニットと1つのβサブユニットで構成される.

異常な遺伝子産物.多くの症例でチャネル機能が強力に阻害されあるいは完全に機能していないことが,機能解析で示されている[Peng et al 2003Okada et al 2004Bright et al 2005].しかしながら,サブユニット中の特定の疾患関連CNGB3バリアントは,明らかな機能獲得型バリアントである[Okada et al 2004Bright et al 2005].ヒト野生型CNGA3とPingelapese blindnessに関連したp.Ser435Pheバリアントを含む変異型CNGB3を発現させると,野生型のヘテロオリゴマーチャネルと比較して,cAMPとcGMPの両方に対する見かけの親和性が増加し,チャネルのポア(開口部)の性質が変化する機能的なヘテロオリゴマーチャネルが生成された.

動物モデルは,根本的な発症メカニズムを解明するのに役立つ.2つの自然発生的な犬のCNGB3非機能モデルが,アラスカンマラミュートとジャーマン・ショートヘアード・ポインターで同定されている[Sidjanin et al 2002].アラスカンマラミュートでは,錐体が退化した仔犬は,昼盲と羞明を呈する.錐体機能は非常に若い仔犬では網膜電図上で検出されるが,数週間で失われ始め,成犬では検出されなくなる.罹患した成犬の網膜には錐体が全くない.これらの動物を用いた最初の遺伝子治療研究では,錐体関連視力の回復が確認されたが,成功するかどうかは介入した年齢に左右されるものであった[Komáromy et al 2010].

GNAT2

遺伝子の構造.GNAT2は8つのコーディングエクソンで構成される.遺伝子とタンパク質の情報に関する詳細は Table A遺伝子を参照のこと.

病的バリアント.16の異なる病的バリアント(ナンセンスバリアント,欠失/挿入,エクソン4の大規模欠失,および隠れたスプライス部位を活性化しフレームシフトとPTCを引き起こすc.461+24G>Aバリアント)が,現在までに明らかになっている [Aligianis et al 2002Kohl et al 2002Michaelides et al 2003Piña et al 2004Rosenberg et al 2004Ouechtati et al 2011Langlo et al 2016Bryant et al 2017Carss et al 2017Taylor et al 2017Ueno et al 2017].

表6GeneReviewの中で提示したGNAT2の病的バリアント

DNA塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.461+24G>A -- NM_005272​.3
NP_005263​.1

表に掲載されているバリアントは著者らから提供された.GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類分けの検証はおこなっていない.

GeneReviews はHuman Genome Variation Society(varnomen​.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている.命名法の解説については,Quick Referenceを参照のこと.

正常な遺伝子産物.GNAT2は,錐体光色素に結合するヘテロ3量体Gタンパク質である,グアニン-ヌクレオチド結合G(t)タンパクα-2サブユニット(トランスデューシンの錐体特異的αサブユニット)をコードする.GNAT2は354アミノ酸の長さである.

異常な遺伝子産物.多くの病的バリアントはタンパク質の機能不全を引き起こす [Cai et al 2001].c.461+24G>Aバリアントは,スプライシング不全が生じ,結果として不完全1色覚やoligocone trichromacyと呼ばれる軽度の表現型となる[Rosenberg et al 2004].
動物モデルは,根本的な発症メカニズムを解明するのに役立つ.
1色覚モデルマウスは,エクソン6にあるマウス Gnat2病的バリアント NM_008141.3:c.598G>A (p.Asp200Asn) (cpfl3バリアントとも呼ばれる)のホモ接合体である [Chang et al 2006].ホモ接合体マウスは,3週齢には網膜電図上の錐体反応が低下し,9か月齢には検出不能となる.網膜を顕微鏡で観察すると,視細胞外節の空胞化が進行していることが確認された.錐体特異的マーカーを用いた免疫染色では,Gnat2タンパクの標識が進行性に失われているが,検査した最も老齢のマウスでは,錐体外節は損なわれていなかった [Chang et al 2006].

PDE6C

遺伝子の構造.PDE6Cは22のコーディングエクソンで構成される[Piriev et al 1995].遺伝子とタンパク質の情報に関する詳細は Table A遺伝子を参照のこと.

病的バリアント.50以上の異なる病的バリアントがPDE6C で見つかっている;ミスセンスバリアント,ナンセンスバリアント,小規模な挿入欠失,スプライシングに影響するバリアントなどである[Chang et al 2009Thiadens et al 2009bGrau et al 2011Huang et al 2013Weisschuh et al 2018].

正常な遺伝子産物.PDE6Cは,錐体cGMP-特異的ホスホジエステラーゼ6C α’ をコードする.この錐体cGMP-特異的ホスホジエステラーゼのα’サブユニットは858のアミノ酸で構成される.

異常な遺伝子産物.疾患関連バリアントでは,PDE6Cの酵素活性が著しく低下するか,完全に消失する [Chang et al 2009Grau et al 2011].

動物モデルは,根本的な発症メカニズムを解明するのに役立つ.錐体視細胞機能欠失1 (cpfl1)マウスは,Pde6c関連1色覚のモデルマウスで[Chang et al 2009],エクソン4と5の間に116塩基が挿入し(NM_001170959.1:c.864_865ins116),エクソン7の1塩基欠失(NM_001170959.1:c.1042delT)をcis(同じアレル上)に持つ.この表現型は,早ければ3週齢でERGによって容易に分類することができる.cpfl1マウスの網膜の組織学的観察では,肉眼的に正常な形態と層状構造が確認された.しかしながら,早ければ3週齢で視細胞層の小さな細胞部分集合の空胞化が見られ,その後急速に錐体視細胞の減少が進行した.錐体の消失は進行し,5ヶ月齢の動物の網膜切片ではほとんど検出されなかった [Chang et al 2009].

PDE6H

遺伝子の構造.PDE6Hは,たった3つのコーディングエクソンで構成される[Shimizu-Matsumoto et al 1996].遺伝子とタンパク質の情報に関する詳細は Table A遺伝子を参照のこと.

病的バリアント.もともとPDE6Hのホモ接合性ナンセンスバリアントc.35C>Gは,ベルギーとオランダに由来する独立した2家系の3人で報告された [Kohl et al 2012]. 近年,同様のホモ接合体がパキスタンの兄弟2人から見つかっている[Pedurupillay et al 2016].

表 7GeneReviewの中で提示したPDE6Hの病的バリアント

DNA塩基の変化 予測されるタンパク質の変化 参照配列
c.35C>G p.Ser12Ter NM_006205​.2
NP_006196​.1

表に掲載されているバリアントは著者らから提供された.GeneReviewsのスタッフはバリアントの分類分けの検証はおこなっていない.

GeneReviews はHuman Genome Variation Society(varnomen​.hgvs.org)の標準的な命名規則に従っている.命名法の解説については,Quick Referenceを参照のこと.

正常な遺伝子産物.PDE6Hは,錐体cGMP-特異的ホスホジエステラーゼ6H γ をコードする;PDE6Hは,錐体視細胞ホスホジエステラーゼの抑制系γサブユニットである.PDE6Hは83アミノ酸のみで構成される.

異常な遺伝子産物.PDE6Hの唯一のナンセンスバリアントは,ナンセンスを介した崩壊によるmRNAの分解またはタンパク質の切断によって,PDE6Hの機能を完全に喪失すると予測される[Kohl et al 2012].
特筆すべきは,Pde6hノックアウトマウスは,ヒトの1色覚の表現型を再現しない[Brennenstuhl et al 2015].


更新履歴:

  1. Gene Review著者: Susanne Kohl, MSc, PhD, Herbert Jägle, MD, Dhabil, FEBO, Bernd Wissinger, MSc, PhD, and Ditta Zobor, MD, PhD, Dhabil, FEBO.
    日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学),櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)
    Gene Review 最終更新日: 2018.9.20. 日本語訳最終更新日: 2022.8.16 [ in present]

原文 Achromatopsia

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