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アデノシンデアミナーゼ(ADA欠損症)
(Adenosine Deaminase Deficiency)

Gene Review著者: Michael Hershfield, MD
日本語訳者: 日本語訳者: 鷹巣祐子(札幌医科大学大学院修士課程遺伝カウンセリングコース),石川亜貴(札幌医科大学医学部遺伝医学)

Gene Review 最終更新日: 2014.6.19.                       日本語訳最終更新日: 2016.9.3 

原文 Adenosine Deaminase Deficiency


要約

疾患の特徴 

アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症は,主にリンパ球の発達,生存能力や機能に影響を与える全身性のプリン代謝障害である.臨床表現型のスペクトラムは以下の4つに分類される.

  • 重症複合型免疫不全症(SCID)は,しばしば6か月から12か月までに診断される.
  • 比較的軽度の遅発型複合免疫不全症(CID)は,1歳から10歳の間に診断される.
  • 遅発/成人発症の複合免疫不全症(CID)は,10代から30代までに診断される.
  • 良性の部分的ADA欠損症(赤血球内ではADA活性が非常に低いもしくはないが,有核細胞内では

ADA活性が非常に高い)は,通常の免疫機能に準拠している.

典型的な早発性ADA欠損SCIDの乳児は成長障害とT,B,NKリンパ球の著しい枯渇や液性及び細胞性の両方の免疫機能不全に関連した日和見感染が生じる.免疫機能が回復していない場合,2歳まで生きることは稀である.遅延もしくは遅発型における感染症(一般的には,再発性中耳炎,副鼻腔炎や上気道)は,病初ではADA欠損SCIDの患者よりそれほど深刻ではないかもしれない.しかしながら,診断される頃には,慢性肺機能不全だったり,自己免疫現象(血球減少症,抗甲状腺抗体),アレルギーを持っていたり,IgEの血清濃度が上昇している可能性がある.診断がつかない期間が長ければ長いほど,免疫機能はより悪化し,反復性の感染症による慢性後遺症がさらに起きやすくなる.

診断・検査 

ADA欠損症の診断基準

  • 複合免疫不全(大抵は末梢血においてT,B,NKリンパ球の数が非常に低下)および胸腺その他リンパ系組織の欠損,かつ
  • (非輸血患者における)溶血血液や他の細胞(例えば,血中単核細胞,線維芽細胞)の抽出物における正常なADA触媒活性が1%以下

ADAは,ADA欠損症に関連する唯一の遺伝子である.最もよく知られるADA遺伝子の病的変異は,欠失/重複解析によって見つけられる大きな欠失を除いて,シーケンス解析で特定可能である.

治療法:感染症に対しては特定の抗生物質,抗真菌薬,抗ウィルス薬,静注免疫グロブリン投与(IVIg)によって治療する.ニューモシスチティス・イロベチ感染に対する予防である.

主な症状に対する予防法:機能的免疫系の回復が不可欠である.望ましい治療法としては,HLAの適合した健康な同胞や近親者からの骨髄幹細胞移植がある.しかしながら, ADA欠損SCID患者のほとんどはHLAが適合している血縁ドナーが不足している状態である.これらの患者に対しては以下の代替療法が考えられる.

  • HLA適合非血縁者のドナー,HLAハプロタイプ一致ドナー(通常は親)もしくは臍帯由来の幹細胞からの骨髄幹細胞移植
  • ポリエチレングリコールで修飾されたウシアデノシンデアミナーゼ(PEG-ADA, Adagen®)による酵素補充療法
  • 現在,試験的に行われている遺伝子治療(登録は世界中の約6つのセンターで行われている進行中の臨床試験に限られる)

サーベイランス:骨髄移植や造血幹細胞移植のフォロー、酵素補充療法中では、1年に1度またはそれ以上の頻回にわたるリンパ球数,血清免疫グロブリンレベルの測定,細胞性,液性免疫機能のさまざまなin vitro検査(遺伝子治療の参加者に対してはより頻回なモニタリングとその他特殊な検査が必要とされる).酵素補充療法中の患者は,抗ADA抗体のためのいくつかの状況下において,血漿中のPEG-ADAレベルや赤血球中の代謝産物レベルの定期的なモニタリングが必要となる.

避けるべき物質や環境:抗ウィルス剤として,あるいは悪性腫瘍の化学療法の為のアデニンアラビノシド(ADAの基質)の使用は避けるべきである.ペントスタチンのようなリンパ系悪性疾患の治療に使われる強力なADA阻害剤は,ADAが欠損している人には効果がなく,かつPEG-ADAを阻害すると考えられる.

リスクのある親族の評価:発端者の新生児の同胞においては,ADA触媒活性を測定するか,分子遺伝学的検査を実施(家系に特異的な病的変異が見つかっている場合)するのが適切である.そうすることによって,早期診断や早期治療によって罹患率や死亡率の減少させることができる.

遺伝カウンセリング 

 ADA欠損症は常染色体劣性遺伝形式である.受胎時,罹患者の同胞が罹患している確率は25%,無症候性の保因者である確率は50%,罹患者でも保因者でもない確率は25%である.リスクのある家族に対する保因者検査やリスクの高い妊娠に対する出生前診断は,家系内で病的変異が同定されていれば可能である.

GeneReviewsの範囲

ADA欠損症:含まれる疾患

  • ADA欠損重症複合型免疫不全症(SCID)
  • 遅発/成人発症の複合免疫不全症
  • 部分的ADA欠損症

診断

臨床診断

ADA欠損症の診断基準:

  • 複合免疫不全,大抵は末梢血においてT,B,NKリンパ球の数が非常に低下,および胸腺その他リンパ系組織の欠損
  • 溶血血液や乾燥血液スポット(DBS), 最近輸血された患者,他の細胞の抽出物(例えば,血中単核細胞, 線維芽細胞)おいて、正常のADA触媒活性が1%以下

予備検査

新生児スクリーニング
殆ど全てのSCIDにおいてTリンパ球の顕著な減少がみられ,それは新生児のDBSから抽出されたDNAにおけるT細胞レセプター切除サークル(TRECs)の減少レベルを実証することによって同定される.TRECスクリーニングは現在,米国のいくつかの州で実施されているが,他でも採用されるかもしれない.SCID全例の約15%はADA欠損症に由来するため,TRECスクリーニングによって陽性である全ての新生児に対して,フォローアップとしてADA欠損症のための生化学検査を実施すべきである.

注意:

  • 遅延,後発/成人発症のADA欠損症の患者はTRECsが正常範囲内であるかもしれない.
  • 遅延,後発型のADA欠損症の患者におけるDBSのDNAから,Bリンパ球マーカー,KRECsのレベルの減少が見つかることもある.

免疫機能

  • リンパ球減少といった,ADA欠損SCIDにおける実験データレベルの顕著な特徴は出生時に存在する.通常,血中総リンパ球数が500/μL(新生児の正常値は2000〜5000)を下回る.
  • 全てのリンパ系統(T,B,NK細胞)の著しい減少がフローサイトメトリーによって実証される.
  • マイトジェンや抗原に対する増殖反応によって測定される体外でのリンパ球機能は低いかもしくは 存在しない.
  • 血清免疫グロブリンは低く,感染及び免疫化に対する特異的抗体反応はみられない.

ADA欠損症の生化学的マーカー

ADAの重篤な欠損により,血中や尿中において特異的な代謝異常を引き起こす[Hershfield & Mitchell 2001].これらのマーカーは診断を確定したり,ADA機能の回復を目的とする治療をモニターすることに役に立ちます.

  • 赤血球中のデオキシアデノシン三リン酸(dATP)または総dAdoヌクレオチド(dAXP)の上昇.

成熟した赤血球は通常dAXPを欠く.ADAを欠く状況下において,過剰なdAdoリン酸化反応はADA欠損症の特徴的所見であるdATPや総dAXPの顕著な増加(ADA2欠損では起こらない)につながる.未治療罹患者では,溶血中またはDBS抽出物中のdAXPレベルは臨床上の表現型(SCID>遅発/後発型ADA欠損症>部分的ADA欠損症)と相関している.たとえ輸血後であったとしても,赤血球中のdAXPのいくらかの上昇は持続し,それはADA欠損症の基本的な病態を強く示唆する.

  • 赤血球中のS-アデノシルホモシステインヒドロラーゼ(AdoHcyase,SAHase)活性の減少.

dAdoによる不活性化のために,赤血球AdoHcyase(時にSAHaseと略される)活性は通常の5%以下である.

  • 尿中dAdoの上昇.dAdoの排泄は未治療罹患者において著しく上昇する.
  • DBSの抽出物中におけるAdoまたはdAdoの上昇レベルをタンデム質量分析計を用いて定量化することは,ADA欠損症の新生児スクリーニングにとって感度の高い方法である[Azzari et al 2011, Speckmann et al 2012, la Marca et al 2013].

診断の確立

アデノシンアミラーゼ(ADA)触媒活性

  • 輸血を受けていない罹患者は,赤血球溶血中またはDBS抽出物中における通常のADA触媒活性の1%未満.
  • 直近で輸血された患者は,線維芽細胞や白血球のような他の細胞型の検査を必要とする可能性がある.

注意

  • 市販のキットと同様,いくつかの分光光度法や放射化学分析は,溶血中やDBS抽出物中のADA触媒活性を分析するために使われる.アデノシン(Ado)または2'デオキシアデノシン(dAdo)の基質濃度は,一般的に150-300μMであり,ADAによってエンコードされたADA1の20-50μMキロを反映する.
  • 正常個体(ADA欠損がない)において血漿中のADA活性は細胞よりも非常に低く,また血漿にはADA2として知られる他の酵素によって引き起こされるアデノシンデアミナーゼ活性を含むため,血漿中のADA酵素活性の分析は診断に有用ではない.ADA2はADA1と異なり,基質(Km〜2mM)に対する親和性が非常に低く, ADA1とADA2を独立して定量することを可能にするEHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)による阻害の影響を受けない.ADA2のA欠損は,CECR1における病原性変異体によって引き起こされると,その結果,自己炎症性の症状に関連する全身性の血管障害となることが最近発見された.

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 ADA遺伝子変異はADA欠損症の唯一の原因遺伝子として知られている.

臨床検査

表1 ADA欠損症で用いられる分子遺伝学的検査の概要

遺伝子1

検査方法

この方法によって検出可能な病的変異
をもつ発端者の割合

ADA

シーケンス解析2

>90%3

削除/重複 解析4

約3%5

  1. 染色体遺伝子座とタンパク質は表Aの遺伝子とデータベースの項を参照.この遺伝子中に見つかった対立遺伝子変異型の情報については分子遺伝学の項を参照のこと.
  2. シーケンス解析は良性,おそらく良性,意義不明,おそらく病的,病的変異が検出される.病的変異は遺伝子内の微小欠失/挿入,ミスセンス,ナンセンスおよびスプライスサイト変異を含む.一般的に,エクソン又は全遺伝子の欠失/重複は検出されていない.シーケンス解析結果の解釈について考慮すべき問題についてはここをクリック
  3. 生化学的にADA欠損症と実証された個体
  4. ゲノムDNAのコーディング領域, 隣接したイントロン領域のシーケンス解析では,エクソン又は全遺伝子の欠失/重複を同定することはできない.定量PCR,ロングレンジPCR,MLPA法,本遺伝子や染色体断片を含む染色体マイクロアレイ解析など用いた様々な手法を含む.
  5. Hirschhorn [1999], Hershfield & Mitchell [2001], Vihinen et al [2001]

検査の特徴

新規の単一ヌクレオチド変化がコード領域内にある場合,ADA酵素活性における影響は評価されるべきである(例えば,大腸菌において新規変異をもつADA cDNAが発現されている).

検査手順

発端者の診断の立証及び確定のためには 

臨床的にSCIDが疑われる人,あるいは,SCIDの新生児スクリーニング(予備検査,新生児スクリーニングの項参照)で陽性と判定された人において,ADA欠損症に対する迅速検査は非常に重要な意味を持つ.なぜなら,罹患している新生児は既にADA酵素活性における影響を持っており,生命にかかわる感染症にかかるリスクが高いからである.また,ADA欠損症に対する治療の選択肢は他の分子学的異常によって引き起こされるSCIDに対する治療とは異なるからである[Gaspar et al 2013].

  • 赤血球におけるADA酵素活性の欠如に対する生化学検査は,通常最も迅速に診断に結びつく手段である.結果は多くの場合,24-48時間以内に得られる.赤血球やDBS中のdATPやdAXPの上昇の発見はADA欠損症の診断を裏付け,しばしば輸血されたSCIDの患者に有益になることが多い.
  • ADA欠損症に対する分子遺伝学的検査は,通常生化学検査のように迅速に実施することはできない.しかしながら,一度家系内でADA欠損症が診断され,病原性変異が同定されたら,分子遺伝学検査は保因者検査や出生前検査として使われることが可能である.
    • ADAのシーケンス解析は最初に実施されるべきである.
    • もし,シーケンス解析において,1つの病的変異が同定されている場合,または,全く病的変異が同定されない場合,ADAの欠失/重複解析が考慮される.

臨床的特徴
 
臨床記述

アデノシンでアミラーゼ(ADA)欠損症は,主にリンパ球の発達,生存能力および機能に影響を与える全身プリン代謝障害である[Hirschhorn 1999, Hershfield & Mitchell 2001, Hershfield 2004].表現型のスペクトラムは,幼児期に診断される早期発症のSCID,年長児や成人で診断され重症度の低い"遅延/後期"発症の複合免疫不全(CID),集団スクリーニングや,赤血球ADA活性の欠損によるSCIDである患者の親戚に対するスクリーニングによって発見される良性の"部分的ADA欠損症"を含む.
 
ADA欠損重症複合免疫不全症(SCID)

典型的な早期発症ADA欠損SCIDの乳児における臨床像は,他の遺伝子異常に起因するSCIDに関連するものと同様である[Dvorak et al 2013, Shearer et al 2014].罹患者は,生後1週間から数か月までの間に,成長障害や顕著なリンパ球減少症と体液性と細胞性の両方の免疫機能の欠乏に関連した日和見感染を呈する.SCIDの診断はしばしば生後6か月以内に,通常12か月までに行われる.

持続性の下痢,広範な皮膚炎,再発性肺炎,その他の日和見感染により引き起こされる生命を脅かす病気が頻繁に起こる.最初の入院はしばしばウィルスかPneumocystis jiroveciによる肺炎である.しかしながら,感染源は多くの場合同定できない.非感染性肺疾患は,SCIDの他の遺伝的背景をもつ患者よりもADA欠損症の患者における方がより頻繁に起こると思われる[Booth et al 2012]. 肺胞蛋白症も他のタイプのSCIDよりもADA欠損SCIDの個体でより頻繁に発見されました[Grunebaum et al 2012].

身体所見は,成長障害,リンパ組織(扁桃腺,リンパ節)の欠損,特定の感染症の影響がみられることである.X線上、胸腺影は存在しない.ADA欠損症の患者の約半数に特徴的な前部肋骨陥凹,肩甲骨骨棘,その他の骨格異常が診断時に存在する.これらの異常は約数か月の治療後,解決すると思われる[Manson et al 2013].

他の臓器病変

T,B,NKリンパ球の著しい枯渇に加えて,ADA欠損症の患者の一部には好中球数の減少や骨髄異形成症や低形成髄のような骨髄異常がみられる[Sokolic et al 2011].いくつかの症例では,肝機能検査異常や様々な神経学的異常(感音難聴を含む)が起こり,臨床的な意義をもつ可能性がある[Bollinger et al 1996, Tanaka et al 1996, Rogers et al 2001, Albuquerque & Gaspar 2004, Nofech-Mozes et al 2007].これらの肝臓や神経学的な異常はADA欠損症自体の代謝効果によって引き起こされたものなのか,免疫不全(すなわち感染症や例えばアミノグリコシド系抗生物質による感染症の治療)に続発するものなのか,多くの場合ははっきりしない.しかしながら,肝臓や神経学的な異常が酵素補充療法(ERT)で改善した患者もいる.

稀な悪性皮膚腫瘍,隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)はADA欠損症患者のいくらかに同定されている[Kesserwan et al 2012].ADA欠損症の患者におけるDFSPの自然歴は現時点では不明であり,サーベイランスが推奨されている.

免疫機能が回復されていない場合はADA欠損SCIDの患者は1歳〜2歳まで生きることは稀です.

遅延/後発型ADA欠損症

ADA欠損症の小児の15%-20%は臨床症状の"遅延"発症型であり,大抵1歳から10歳の間に診断される.稀に,10代から30代で診断される人もいる("後期/成人"発症).免疫学的な異常はSCIDよりはそれほど顕著ではなく,これらの罹患者は通常CID,時に"leaky SCID"と呼ばれる[Shearer et al 2014]. 遅延,後発型における感染症は,病初においては本格的なSCID患者よりも深刻ではなく,成長もあまり深刻な影響を受けない可能性がある.再発性中耳炎,副鼻腔炎,上部気道感染症が一般的である.手のひらや足底のいぼは永続して残る可能性があり,高齢者では通常見られないパピローマウィルス感染が見つかる[Antony et al 2002, Artac et al 2010].診断時には,これらの患者は多くの場合,慢性肺機能不全やもしかすると血球現象や抗甲状腺抗体を含む自己免疫現象をもつ.アレルギーや血清IgEの上昇がよくみられる.

遅延,後発型の患者は,10歳かそれ以上までの間,診断未確定のまま何とか生き延びる可能性がある.しかしながら,障害が認識されていない期間が長ければ長いほど,より免疫機能が低下し,再発性呼吸器感染症や他のタイプの感染症の慢性後遺症が残る可能性が高くなる.

部分的ADA欠損症

集団のスクリーニングやADA欠損SCIDの発端者の家族において,赤血球中のADA活性が非常に低いか欠乏しているが,有核細胞中のADA活性(正常値は2%-50%)のレベルがより高いレベルである健康な人を同定する可能性がある.正常な免疫機能と互換性のあるこの良性の状態を"部分的ADA欠損症"と呼ぶ.

遺伝子型と表現型の相関

最もよく知られているADAの病的変異は遺伝型と表現型の関連の研究を通して発見された[Hirschhorn et al 1990, Santisteban et al 1993, Arredondo-Vega et al 1994, Ozsahin et al 1997].

ADA欠損症の患者において同定された単一のミスセンス変異をもつ30をこえるcDNAの大腸菌における体系的発現は,個々の変異アレルの双方によって発現された総ADA活性が,診断時の年齢と治療前に測定された赤血球dAXPのレベルと相関している事を示した[Arredondo-Vega et al 1998].遺伝型の重症度をランク付けするためのシステムは,これらのデータやADA活性を供給するための他のアレルの可能性に基づいて提案されている.この目的のために,個々のADA変異アレルは次のようにグループ化される.

  • グループ0  "Null"アレル(削除,フレームシフト,ナンセンス変異)
  • グループT-W 大腸菌系で発現している活性上昇の順にランク付けしたミスセンス変異
  • スプライスサイト変異 別グループ,正常スプライシングの低いレベルはADA活性のさまざまなレベルに起因する可能性がある.

変異の種類の表現型との相関は,42の異なった変異アレルで構成された43の遺伝型をもつ52の臨床的に異なる個人に対して評価された[Arredondo-Vega et al 1998]:

  • ADA欠損SCID 両方のアレルがグループ0かTとして検出
  • 遅延/後発型ADA欠損症 少なくとも1つのアレルがグループUかVに検出
  • 部分的ADA欠損症 少なくとも1つはグループWとして検出

いくつかの家系内においてADA欠損症の第一度近親間の表現型の不一致は,以下に起因した:

  • スプライスサイト変異の"脆弱性"における個人差
  • リンパ系細胞における変異アレルの変換のためのモザイク
  • 家系内における重篤な表現型と軽症な表現型を引き起こす両方のアレルの分離[Santisteban et al 1995, Ozsahin et al 1997, Ariga et al 2001b]

有病率

ADA欠損症は20万出生から100万出生に1人に起こると推定されている.

全ての人種や民族グループが罹患する.有病率は近親婚の密度の濃い特定の集団が存在するいくつかの地域においてより高い.


遺伝学的に関連する(対立遺伝子的)疾患

このGeneReviewにかかれているもの以外のADAにおける病的変異と関連した表現型は存在しない.

鑑別診断

プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)欠乏は常染色体劣性免疫疾患を引き起こす先天性プリン代謝異常である.そしてそれは,いくつかの点において臨床的および病理生理学的にアデノシンデアミラーぜ(ADA)欠損症に類似している[Hershfield 2004].ADAおよびPNPの欠損を調べるための生化学検査は,いずれかの障害を有すると疑われる免疫不全の患者に対して実施されるべきである.

SCIDは他の遺伝子の病的変異からも起こり得る[Buckley 2004, Fischer et al 2005, Dvorak et al 2013, Shearer et al 2014].これらの障害は臨床的に類似しているが,末梢血中におけるT,B,ナチュラルキラー(NK)細胞のフローサイメトリー測定によって決定づけられるリンパ球枯渇の特徴的なパターンをもつ.ADA欠乏症におけるリンパ球減少症の"T-B-NK-"パターンは,より一般的なX連鎖SCIDの"T-B-NK-"パターンと異なるが,RAG1, RAG2, DCLRE1C, PRKDC, NHEJ1, AK2
の変異によるSCIDでみられる "T-B-"パターンとそれほど区別されていない[Buckley 2004, Fischer et al 2005].

HIV-AIDSはTリンパ球減少や日和見感染を持つ患者に考慮されるべきであるが,レトロウィルス感染は特定の検査によって同定できる.

遅延,後発型の表現型をもつ高齢者に対しては,嚢胞性線維症,一般的な様々な免疫不全やPNP欠乏も考慮される.細胞のADA活性の測定はADA欠損症と互換性をもつ臨床的特徴に関連した他の全ての疾患を決定的に区別します.


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

アデノシンデアミラーゼ(ADA)欠損症と診断された患者に対する疾患やニーズの範囲を確立するためには,以下の評価を推奨する:

  • 特定の疾患を引き起こすウィルス,真菌または細菌性生物(通常の病原体と日和見病原体の両方)の同定
  • 全血球算定(CBC)
  • リンパ球サブセット(T-B-NK-細胞)を定量化するためのフローサイメトリー
  • 血清免疫グロブリンおよび感染と予防接種に関連した特定の抗体の力価を測定することによる液性免疫機能の評価
  • マイトジェンおよび抗原に対する血中単核細胞の体外での応答による細胞性免疫機能の評価
  • 代謝重症度を評価するための赤血球dAXPの測定
  • 代謝性肝炎に対する評価の為の肝機能検査
  • 聴覚検査
  • 臨床症状によって示されるような他の検査
  • 遺伝医学の相談

症状に対する治療

次に示すものが適切である:

  • 特定の抗生物質,抗真菌剤,抗ウィルス剤による感染症の治療
  • ニューモシスチス・ジロヴェチの予防
  • 静脈内免疫グロブリン(IVIg)

一次症状の予防

免疫機能を回復することが不可欠であり,そしてそれはいくつかの方法で達成することができる.治療の選択は複雑であり,患者の年齢,臨床状態,両親の期待や要望,また,ADA欠損SCIDの治療における医師の専門知識や具体的な経験を含む多くの要因による.ADA欠損症の患者に対する治療経験は2006年にワークショップの主題となった[Booth et al 2007].2008年に開催された第2回のワークショップでは,治療に対する総合ガイドラインを開発した[Gaspar et al 2009 (full text)].

ほぼ30年間,全ての形態のSCIDに対する治療の選択法は,HLA一致の健康な兄弟姉妹からの骨髄幹細胞移植(BMT/SCT)であった[Buckley et al 1999, Gaspar 2010].これは患者の細胞減少状態に関係なく,提供者のT細胞を枯渇することなしに行うことができる.結果は移植センター間で異なるが,約70%もしくはそれより多くの罹患者にとって治癒的である.主なリスクは,移植片対宿主病あるいはIVIgによる継続的治療を必要とするような液性免疫機能の回復の遅延や不完全さである.

HLA一致の血縁ドナーのいないADA欠損SCID罹患者の大半にとって,20年以上用いられてきた他の2つの治療形態が考えられる[Gaspar et al 2009, Gaspar 2010, Candotti et al 2012]:

  • "非理想的"なドナー(HLA一致の非血縁者;HLAハプロタイプ一致の両親;臍帯血)からのBMT/SCT
  • ポリエチレングリコールで修飾されたウシアデノシンデアミナーゼ(PEG-ADA, Adagen@)を用いた酵素補充療法(ERT)

遺伝子治療の状況としては,現在調査中の治療として議論されている.

"非理想的"ドナーからのBMT/SCTドナー由来のT細胞は移植片対宿主病のリスクを最小化するために枯渇される.レシピエント(SCID患者)の移植前の細胞減少の処置は,前処置されていないADA欠損SCID患者に相対的な頻度で起こる移植片喪失を防ぐために行われている.一部の移植センターでは移植前後の病的状態のリスクを理由として,ハプロタイプ一致移植前にレシピエントの前処置を行わない[Buckley et al 1999].しかしながら,この後者のアプローチは安定した生着の達成への失敗に関連することが頻繁にある[Gaspar et al 2009, Gaspar 2010, Hassan et al 2012].

T細胞を激減させた移植の後,機能的なT細胞の回復には3〜4か月を必要とする.B細胞の回復はそれより長い期間を要するか,または適正に達成されず, IVIgによる長期治療を必要とする可能性がある.

部分的に不一致のBMT/SCT実施に対する最善の方法に関する一般的な合意は存在しない[Cancrini et al 2010, Gaspar 2010, Hassan et al 2012].それゆえ治療の選択肢を検討する場合,両親にとって重要なのは,子どもが治療されるセンターでADA欠損SCIDの移植の経験や長期的結果についての具体的な情報を入手することである.

方法論の違いに加えて,ADA欠損症はSCIDのうちの15%ほどであるため,部分的に不一致のBMT/SCTにおける評価は難しい.それにもかかわらず,利用可能なデータはSCIDの他の型の患者よりもADA欠損症の患者の方が,移植前調節の後の重症度や死亡率が高いことを示す[Haddad et al 1998, Antoine et al 2003, Grunebaum et al 2006, Gaspar 2010, Hassan et al 2012].移植後2〜3年の生存率はおおよそ50〜65%の範囲である.ADA欠損SCIDの患者はドナーとレシピエントのHLA適合性に関わらず,BMT/SCT後の後期合併症としての様々な神経学的異常を発症する可能性がより高いかもしれない[Rogers et al 2001, Grunebaum et al 2006, Hönig et al 2007].これは,現在まさに関心を持たれている領域である.

酵素補充療法(ERT)  PEG-ADAは,循環寿命を延長し、免疫原性を減少させるために,精製されたウシADAにPEG(5 KD平均質量)の複数の鎖が共有結合し付加されて構成されている.これは週に1度か2度(週〜15-60 U/kg)筋肉注射によって投与される.血漿中のADA活性レベルを高く維持することにより,PEG-ADAは細胞外にAdoやdAdoを排除する.リンパ球の生存能や機能を妨げたり,他の臓器(肝臓,肺,脳)に損傷を与えたりする毒性代謝効果を防止する[Hershfield et al 1987, Hershfield & Mitchell 2001, Hershfield 2004, Gaspar et al 2009].

ERTは治癒的ではない; PEG-ADAは非毒性代謝環境を維持するために定期的に十分な用量で投与されなければならない.

遅延もしくは後期発症の表現型をもつ高齢者において,部分的に不一致の移植に伴うリスクが大きすぎるとみなされた場合や生着不全のリスクが高い場合, PEG-ADAはHLA一致骨髄幹細胞ドナーのいない患者に対する一次治療として用いられる.PEG-ADAは,前処置されていないBMT/SCT後の生着しなかった患者あるいは実験的な遺伝子治療後の免疫機能の許容可能な回復が達成されなかった患者の二次的治療にも使われる.

PEG-ADAを用いて治療されたほとんどの患者は,日和見感染症とSCIDの他の臨床症状を防止するのに十分である部分的な免疫機能を回復する.T細胞を枯渇させたBMT/SCTと同様に,以前のT細胞機能を示すまでおおよそ2〜4か月の遅れを生じるが,B細胞はBMT/SCT後よりも早く増加する.リンパ球数や体外でのリンパ球機能はたいていERTの最初の年の間は増加するが,最初の1年か2年を超えてPEG-ADA治療を行った患者の殆どはリンパ球減少症のままで,体外でのリンパ球機能は広く変動する.ほとんどの患者は臨床的に良好な状態を保つが,時間と共にTあるいはBリンパ球の両方が徐々に減少し,様々な機能異常を示す[Chan et al 2005, Malacarne et al 2005, Serana et al 2010, Brigida et al 2014].ERTを受けている患者の約半数はIVIgを受け続けている.

1990年にPEG-ADAはFDAの承認を受けた.2014年4月の時点で250人以上の罹患者がPEG-ADAを受けている.2006年4月の検討では,PEG-ADAを用いてERTを始めた150人以上の罹患者のうち,当時おおよそ90人がまだ治療中だった[Hershfield 2004, Gaspar et al 2009]. PEG-ADAで治療された患者における5年から10年の生存率は,BMT/SCTで達成されるものと同等もしくは上回る75%-80%であった.ほとんどの死亡は治療の最初の6か月の間に起こっており,診断時に存在した生命を脅かすような感染症に起因した1ヶ月以内が大多数であった.いくつかの後期での死亡(治療2年超)はERTを開始した時点で存在した慢性肺不全の進行に起因していた.

現在の時点では,8〜22年の間でPEG-ADAを受けた患者の8人にリンパ球増殖性疾患が発症している[Hershfield 2004, Chan et al 2005, Kaufman et al 2005, Husain et al 2007, and unpublished data].
肝細胞がんはERTの13年後の罹患者の1人に発症し,もう1人は不成功の幹細胞移植後に開始されたERTの際に存在した.3番目の罹患者は,ERTの2年半後に肺芽腫で死亡した;腫瘍は存在しているが,ERTより前に検出されていないと考えられた.いく人かの他の患者では持続性の溶血性貧血を発症し,そのうちのいくつかの症例はカテーテルによる敗血症に関連して発症していた[Hershfield 2004, Lainka et al 2005]. 

PEG-ADA治療の限界は, 防御的免疫機能の回復に対するプライマリーな問題を含んでいる.それは,有効性を減少もしくは排除させる中和抗体の出現,免疫機能調節不全(特に治療の最初の数か月における),そして免疫機能が最終的には(すなわち10-15年を超えると)無力なレベルにまで減少するリスクである.患者の約20%はBMT/SCTを受けるためにERTを中止する.これらのケースの殆どは,移植は診断時にするつもりだったが,適したドナーが見つからなかったか,患者の病状が移植を行うには重すぎたために実施されなかったものである.患者の少数派ではあるが,PEG-ADAを受けている間に免疫機能が減少したために移植が行われている.全体的に見て,これらの二次移植の約半分は成功している[Hershfield 2004, Gaspar et al 2009].

1年以上の間PEG-ADAを用いて治療されたほとんどの患者は,ウシADAに特異的に結合する抗体を作り,酵素免疫測定法(ELISA)によって検出可能となる;これらは臨床的意義を持たない.触媒活性を阻害し,PFG-ADAのクリアランスを強め(あるいは効能を損なう)中和抗体は,治療された患者の10%未満に見られる[Chaffee et al 1992, Hershfield 1997].PEG-ADAに対してアレルギー反応や感覚過敏反応は起こらず,治療は一般的に十分許容されている.

二次合併症の予防

症状に対する治療の項目で述べた通り,罹患者は免疫再構築に先立って,ニューモシスチスに対する予防のための抗生物質やIVIGも受けている.移植後やERTを受けている間の予防の使用は,さまざまであり,免疫再構築の達成レベルに依存する.

サーベイランス

1年に1度もしくはそれ以上頻回に,リンパ球数,血清免疫グロブリンレベル,細胞性および体液性免疫機能(すなわち,SCIDをもつと疑われる患者の評価のために上記に掲載されたようなもの)の体外での様々な検査はBMT/SCT後やERT中に実施されるべきである[Gaspar et al 2009].

ERT中の患者は次のような定期的なモニタリングが必要である:

  • 血漿PFG-ADA活性
  • 赤血球dAXP濃度
  • 特に血漿ADA活性や臨床的または免疫学的状態が予期せぬほどに減少する場合の中和抗体の出現隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の出現または再発

回避するための物質/状況

抗ウィルス剤として,あるいは悪性腫瘍の化学療法のためのアデニンアラビノシドの使用(ADAのための基板)は避けるべきである.

ペントスタチン,いくつかのリンパ系悪性腫瘍を治療するために使用される効力のあるADA阻害剤は
ADAを欠乏しているひとには効果がなく,PFG-ADAを妨害する.

リスクのある親族の評価

発端者の新生児の同胞では,罹患率や死亡率は早期診断や治療によって減少させることができるため,ADA触媒活性の測定あるいは分子遺伝学的検査の実施(家系に特定の病原性変異がわかっている場合)することが妥当である.

遺伝カウンセリングのためにリスクのある親族に対する検査に関連する重要な論点については遺伝カウンセリングの項目を参照のこと.

試験中の治療法

ガンマレトロウィルスベクターを用いたADA欠損SCIDに対する実験的な遺伝子治療は20年以上の間臨床試験中である[Engel et al 2003, Cavazzana-Calvo et al 2005].およそ2000年以来の臨床試験はイタリアのミラノで治療した2人の患者に対して最初に報告された方法を採用し,最近10人の患者に対して更新された[Aiuti et al 2002, Aiuti et al 2009].これはPEG-ADA(ERTを受けている患者において)を中止し , ADAベクターを導入した自己CD34+幹細胞の注入の前に骨髄非破壊的前処置を行っている.ミラノでの研究に加えて,このプロトコールのバリエーションはこれまでのところ,イギリス,アメリカ,日本において試験中である.40以上の罹患者(PEG-ADAを受けたほとんどの人)はこれらのセンターで治療されている[Aiuti et al 2002, Gaspar et al 2006, Engel et al 2007, Aiuti et al 2009, Cappelli & Aiuti 2010, Candotti et al 2012, Gaspar et al 2013].現時点で死亡例は報告されていない.免疫機能の再構築は一般的に遅く,1年かそれ以上かかる可能性がある.ほとんどの(全てではない)罹患者におけるリンパ系細胞での安定したADAの発現は,赤血球における代謝異常の補正を伴って達成され,ERTを必要とすることない健康維持をもたらした.X連鎖に対する遺伝子治療における経験と対照的に,これまでのところ,遺伝子治療の後のベクターに関連した挿入した変異体の結果としての白血病を発症した患者はいない[Aiuti et al 2007, Cappelli & Aiuti 2010].しかしながら,この懸案事項から,より効果的なADA発現を達成するためにレンチウィルスベクターを用いた遺伝子治療の臨床試験が今始まったところである[Farinelli et al 2014].

様々な病気や症状に対する臨床試験における情報にアクセスするためにClinicalTrials.govを検索のこと.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

アデノシンデアミラーゼ(ADA)欠損症は常染色体劣性遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患した子の両親は,絶対的なヘテロ接合体であり,それゆえ1つの変異アレルをもつ.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症候性である.

発端者の同胞 

  • 懐妊した際,罹患者の同胞は25%の確率で罹患し,50%の確率で無症候性の保因者で,25%の確率で罹患者でも保因者でもない.
  • リスクを持つ同胞のうちの1人が罹患していない(すなわち,免疫正常者)と保因者であるリスクは2/3である.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症候性である.

発端者の子孫

  • ADA欠損症の患者の子はADAにおける病的変異に対して絶対的なヘテロ接合体(保因者)である.

発端者の他の家族

  • 発端者の両親の同胞は50%の確率で保因者となる.

保因者の検出

分子遺伝学的検査 リスクをもつ家族に対する保因者検査は,家系内で病的変異が同定されていれば可能である.

生化学的検査 赤血球におけるADA活性の測定はヘテロ接合体の同定に使用されてきた.しかしながら,ヘテロ接合体におけるADA活性と正常範囲の下端の間でいくつか重なる部分があるが,生化学的検査の結果は注意深く解釈するべきである.

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断,治療の目的のためのリスクを持つ親族を評価することに対する情報については,管理,リスクのある親族の評価の項目を参照のこと.

癌リスクの遺伝学的評価やカウンセリング分子遺伝学的検査の利用の有無を問わず,癌リスク評価によりリスクを有する個人を確定することによる医学的,心理社会的,倫理的結果に関する包括的な記載は,「癌の遺伝リスク評価とカウンセリング」(Elements of Cancer Genetics Risk Assessment and Counseling)(米国国立癌研究所(NCI)のPDQ(R)の一節)を参照のこと.

見かけ上新生突然変異を持つ家系への配慮常染色体優性遺伝性疾患の発端者の両親のどちらにも病原性遺伝子変異がない場合,もしくは疾患の臨床症状がない場合,発端者に新生突然変異が存在する可能性がある.しかし,父親や母親が異なる場合(生殖補助医療など)や,公開されていない養子縁組といった非医学的原因も検討する必要がある.

家族計画 

  • 遺伝的リスクの決定,キャリア状態の明確化,出生前診断の利用可能性の議論における最適時期は,妊娠前である.
  • 罹患しているか保因者であるかあるいは保因者であるリスクのある若年成人に対する遺伝カウンセリング(子孫や生殖に関する選択肢における潜在的なリスクの議論を含む)を提案することは適切である.

DNAバンキング は,将来利用可能なDNA(通常は白血球から抽出される)の保存しておくものである.検査の方法,遺伝子や変異あるいは疾患に対するわれわれの理解は将来進歩する可能性があるため,罹患者のDNAの保存は考慮されるべきである.

出生前診断

生化学的検査 リスクの高い妊娠に対する出生前診断は,培養羊膜線維芽細胞や羊水穿刺(通常,妊娠15-18週で実施される)で得られた胎児細胞から成長させた培養絨毛膜絨毛細胞もしくは絨毛生検(通常,妊娠10-12週で実施される)におけるADA活性の解析によって可能である.

分子遺伝学的検査 病的変異が罹患者家族において同定されている場合,リスクの高い妊娠に対する出生前診断において,この病気や遺伝子に対する検査もしくはカスタマイズされた出生前診断を提供している臨床検査施設で利用できる可能性がある.

着床前診断(PGD) は病的変異が同定された家系に対して選択肢となる可能性がある.


関連情報

GeneReviewsスタッフは患者とその家族の利益のため,疾病ごとのあるいはサポート組織として以下に示すものをセレクトした.
GeneReviewsは他の組織が提供する情報に責任を持つものではない.

  • Canadian Immunodeficiencies Patient Organization (CIPO)

362 Concession Road 12
RR #2
Hastings Ontario K0L 1Y0
Canada
Phone: 877-262-2476 (toll-free)
Fax: 866-942-7651 (toll-free)
Email: info@cipo.ca
www.cipo.ca

  • International Patient Organisation for Primary Immunodeficiencies (IPOPI)

Firside
Main Road
Downderry Cornwall PL11 3LE
United Kingdom
Phone: +44 01503 250 668
Fax: +44 01503 250 668
Email: info@ipopi.org
ipopi.org

  • Jeffrey Modell Foundation/National Primary Immunodeficiency Resource Center

747 Third Avenue
New York NY 10017
Phone: 866-463-6474 (toll-free); 212-819-0200
Fax: 212-764-4180
Email: info@jmfworld.org
www.info4pi.org

  • National Human Genome Research Institute (NHGRI)

Learning About Severe Combined Immunodeficiency (SCID)

  • NCBI Genes and Disease

Severe combined immunodeficiency

  • Purine Research Society

5424 Beech Avenue
Bethesda MD 20814-1730
Phone: 301-530-0354
Fax: 301-564-9597
Email: PurineResearchSociety@verizon.net
www.purinereasearchsociety.org

  • European Society for Immunodeficiencies (ESID) Registry

Dr. Gerhard Kindle
University Medical Center Freiburg Centre of Chronic Immunodeficiency
Engesserstr. 4
79106 Freiburg
Germany
Phone: 49-761-270-34450
Email: esid-registry@uniklinik-freiburg.de
ESID Registry

  • RDCRN Patient Contact Registry: Primary Immune Deficiency Treatment Consortium

Patient Contact Registry


分子遺伝学

GeneReviewsではMolecular GeneticsOMIM tablesの情報とは一部異なる可能性がある.最新の情報はOMIM tablesを参照.

表A
アデノシンデアミラーゼ欠損症: 遺伝子とデータベース

Gene

Chromosome Locus

Protein

Locus Specific

HGMD

ADA

20q13?.12

Adenosine deaminase

ADA database
ADAbase: Mutation registry for Adenosine Deaminase Deficiency

ADA

データは,次の標準的な参考文献からまとめられた;遺伝子はHGNCから, chromosome locus, locus name, critical region, complementation groupはOMIMから;タンパク質はUniProtからである.リンクが提供されたデータベース(Locus Specific,HGMD)についてはここをクリックのこと.

表B
アデノシンデアミラーゼ欠損症についてのOMIMの登録 (View All in OMIM)

102700

SEVERE COMBINED IMMUNODEFICIENCY, AUTOSOMAL RECESEVE, T CELL-NEGATIVE, B CELL-NEGATIVE, NK CELL-NEGATIVE, DEU TO ADENOSINE DEAMINASE DEFICIENCY

608958

ADENOSINE DEAMINASE; ADA

Gene structure
ADAは32,040塩基対に及び12エクソンからなる.遺伝子,タンパク質の情報の詳細な概要については表Aの遺伝子を参照のこと.

Benign allelic variants. 
ADA活性を著しく減少させない2つの多型が知られている:P.Asp8Asn and p.Lys80Arg [Hirschhorn 1999, Hershfield & Mitchell 2001].

表2
ADA Benign Variants Discussed in This GeneReview

DNAヌクレオチド変化

タンパク質アミノ酸の変化

参照配列

c.22G>A

p.Asp8Asn

NM_000022 0.2

c.239A>G

p.Lys80Arg

NP_000013 0.2

バリアントの分類における注意:表に記載されたバリアントは著者によって提供されたものである.GeneReviewsスタッフはバリアントの分類を独自に検証していない.

命名上の注意:GeneReviewsはHuman Genome Variation Society(www.hgvs.org)における標準的な命名の慣習に従っている.命名の解釈に関しては Quick Reference  を参照の事こと.

病的変異アレル

70以上のADA病的変異は,アデノシンデアミラーゼ(ADA)欠損症の患者あるいは"部分的ADA欠損症"の健常な人々において同定されている[Hirschhorn 1999, Hershfield & Mitchell 2001, Vihinen et al 2001]. 分布は約60%のミスセンス,20%のスプライシング,9%の内部のエクソン欠失,7%のナンセンス,および3%の1つまたは複数のエクソンの欠失となっている(表A参照).

正常な遺伝子産物

ADA,ADA遺伝子産物は,41KDの質量を有し,単量体として活性である;強固に結合した亜鉛イオンは触媒活性にとって必要不可欠である[Wang & Quiocho 1998].ADAは赤血球と多くのリンパ球の細胞質内に存在する.細胞質中に存在するものに加え,ADA結合タンパクとして知られているADAの別の形態,細胞外"ecto"という形で存在する.それは線維芽細胞上,いくつかの活性化したT細胞や髄質胸腺細胞上に,あるいは多くの上皮細胞上で,細胞膜糖タンパクD26/ジパプチジルペプチダーゼW(DPPIV)に結合している.ADAの機能およびADA欠損症の結果は検討されている[Hershfield & Mitchell 2001].ADAは全ての細胞内でプリンヌクレオシドの代謝相互変換においてハウスキーピングの役割を果たしている.リンパ球において,ADAはDNAの複製を妨げ,アポトーシスを促進するdAXPプールの拡張を妨げるために,dAdoを取り除くことによって不可欠な解毒機能を果たす."ecto-ADA"(細胞外ADA)はAdoの細胞外濃度を制御することによって,Adoが介在するシグナル伝達を調節することがきる.

異常な遺伝子産物

SCIDの患者に見つかったいくつかのADAミスセンス変異は,直接基質や亜鉛補因子の結合を変化させる.しかし,そのほとんどは活性部位から離れており,かなり不安定なタンパク質となる.触媒活性への効果は軽微であるが,CD26/DPPIVの結合を強く阻害するADA病原性バリアントは,2つ目の ADAアリルにナンセンス変異をもつ健康な成人に同定されている[Richard et al 2000].マウスにおける観察と組み合わせると,ADAがCD26/DPPIVと結合しないことは,"ecto-ADA"が免疫機能において必須ではないということを示唆している.


原文 Adenosine Deaminase Deficiency

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