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急性間欠性ポルフィリン症(旧ハイドロキシメチルビレン合成酵素欠損症)
(
Acute Intermittent Porphyria)
[同義語: PBGD Deficiency, Porphobilinogen Deaminase Deficiency)

Gene Reviews著者: Sharon D Whatley, PhD and Michael N Badminton, PhD, FRCPath.
日本語訳者:  和泉 賢一 (札幌医科大学医学部遺伝医学,NGSDプロジェクト)

Gene Reviews 最終更新日: 2013.2.7 日本語訳最終更新日: 2017.12.29

原文: Acute Intermittent Porphyriareacher Collins Syndrome


要約

疾患の特徴 

ハイドロキシメチルビレン合成酵素(Hydroxymethylbilane synthase :HMBS)の正常の半分の活性となり、急性間欠性ポルフィリン症(このGeneReviewでは急性間欠性ポルフィリン症Acute Intermittent Porphyria: AIPと呼ぶ)が起こる。臨床的に、腹膜刺激症状を伴わないが、吐き気・嘔吐・頻脈があり、生命の脅威になるような急性の内臓痛が特徴である.発作は神経学的所見(精神変化、てんかん、呼吸麻痺を悪化させることのある末梢神経障害)と低ナトリウム血症であり、わかりにくいかもしれない。特定の薬物、アルコール飲料、内分泌的要因、カロリー制限、ストレス、感染によって引き起こされ、2週間以内に通常改善する。AIPの患者のほとんどは1回か数回の発作を経験している。約5%(主に女性)は、なんども発作をおこし(発作が年4回以上と定義される)、年単位で続く。他の長期の合併症は慢性腎不全、肝癌、高血圧である。発作は、思春期前は稀であり、男性より女性に起きやすい。リスクのあるHMBS遺伝子の遺伝子変異をもつすべての患者は急性の発作を起こすAIPになる素因がある;しかし、ほとんどは症状がなく、後期(発症前)AIPと呼ばれる。

診断・検査 

 一つの例外(5−amonolevulinate dehydratase deficiency;ALAD)はあるものの、ポルフィリン症の急性発作は尿中porphobilinogen(PBG)濃度増加に関与している。AIPによる増加したPBG濃度、便や血漿中のポルフィリン解析により、AIPによる増加したPBG濃度を示せば、他の急性ポルフィリアの除外ができる。分子遺伝学的検査で、症状のある患者の同定された病的変異は、発端者の血縁者のAIPの同定のためにも使うことができる。赤血球HMBS酵素活性定量は、病的変異が同定できない、もしくは分子学的検査をすることができないHMBG病的変異の家系に有効かもしれない。

臨床的マネジメント 

重症神経内臓発作

  • AIPを悪化させる薬物の中止;必要なら経静脈栄養による適切なカロリーの投与(低張性ブドウ糖液は避ける)
  • 急性ポルフィリン症中に安全に使用できるとわかっている薬物での併発感染症や疾患の治療
  • オピエート鎮痛薬での疼痛管理(高容量にしばしばなる);疼痛コントロールチームによるサポートも必要な場合がある
  • 安全な薬剤を使用しての興奮、嘔吐、高血圧、頻脈の治療
  • 血液バランスのモニターと電解質の補正、特に低ナトリウム血症;生理食塩水による重症低ナトリウム血症の治療が必要であり、水分制限はしてはならない
  • 注意深い神経学的所見のモニターと必要であれば呼吸管理
  • ヒトへミン(へマチン(フェリプロトポルフィリン)またはヘムアルギニン)は急性の神経内蔵痛発作を緩和する特別な選択的治療で麻痺を防ぐ。

軽発作:対症療法、カロリー投与と血漿交換
再発性急性発作:ポルフィリア専門家と一緒に管理する;ゴナドレリンアナログ、定期的なヘマチン点滴もしくは(最後の方法として)肝移植を含む排卵抑制を含む治療オプション

リスクのある血縁者の評価
もし、HMBS病的変異が家族でわかっているなら、遺伝的状態を明らかにすることで、リスクのある血縁者が遺伝学的検査から利益を得るかもしれない。つまり、AIPの急性発作を起こすリスクが増大していることが早めにわかり、急性発作のリスクを下げることができる。

一次症状の予防
すべての潜在性ポルフィリア患者、罹患者の両親、緩解した患者は急性発作のリスクを軽減する方法についてアドバイスを受けるべきである。

  • 悪化因子からの逃避(無許可また安全でないとわかっている薬、過度のアルコール摂取、喫煙、重度のカロリー制限)
  • 健康によい行動の習慣化(定期的なメンテナンス、バランスよい食事;感染症の治療を行う;ストレスの軽減)

2次合併症の予防
ヘムアルギニンでの定期的な治療を行っている患者は鉄過剰症の発見のための血中鉄濃度のモニタリングが必要である。

サーベイランス
急性発作を起こした経験のある患者は腎機能のモニタリングが必要である;国によっては、肝癌の発見のため毎年肝臓の画像検査も50歳以上のHMBS病的変異の全ての患者に行っている(急性発作の経験の有無にかかわらず)。

遺伝カウンセリング 

AIPは常染色体優性遺伝形式で遺伝する。発端者の約1%が新生病的変異の可能性がある。HMBS病的変異の患者の同胞や子孫はHMBSを受け継ぐ確率は50%である;しかし、浸透率は低いため、遺伝的にHMBS病的変異を持った人が急性発作を起こす確率は低い。出生前診断は可能だが、低い臨床的浸透率と発症成人の大部分が臨床的に良好な予後を送るため、ほとんどされない。


診断

臨床診断

急性間欠性ポルフィリン症(AIP)患者は2つのカテゴリーに分けられる。

  • 臨床的に明らかなAIP。 現在症状がある患者や急性発作の寛解期にある患者。寛解期にある患者はしばしば症状がなくなってしばらくの間尿に過剰なPBG排出が続く。
  • 潜在性(発症前)AIP。カスケードスクリーニング(例えば、リスクのある家族のスクリーニング)で見つかった、発作が起きたことのない人。潜在性AIPの最大50%まで尿PBG排出が増加している。潜在性AIPの方がのちに症状発症するリスクは年齢、性別、誘発因子への暴露、他の因子による。しかし、多くは生涯を通して無症状のままである。

AIPの急性発作を疑うべき人

他の理由では説明できない、身体的兆候のない重篤で、急激な腹痛(注 参照)。時折背部や大腿でより激しく起きる疼痛で、通常治療にオピエート鎮痛薬が必要となる。吐き気、嘔吐、便秘、頻脈、高血圧がよく見られる。低下している筋力、痙攣、精神変化、低ナトリウム血症のどれか一つ、もしくは複合して起きることがあり、その場合急性ポルフィリア症の可能性が高い[Hift & Meissner 2005, Puy et al 2010]。尿は赤〜赤みがかった茶褐色のことがある;しかし、これは常時みられる所見ではない。検体が新鮮な時には特にそうである。色は空気に触れることによって増強され、ポルフィリンやポルフィリンの前駆体ポルフォビリノーゲン(PBG)から作られるポルフォビリンの尿中濃度増加を反映している。 

注: 腹痛はほとんどの全ての急性発作に存在する:非典型的なことは稀である[Hilt & Meissner 2005, Puy et al 2010]。臨床的に区別できない急性発作が他の急性ポルフィリン症で起こりうる。鑑別診断の項参照。

  • 家族液は急性ポルフィリン症の常染色体優性遺伝と一致する;しかし、しばしばAIPの臨床症状の低浸透率のため、それがわからないことがある。

検査

臨床的に明らかなAIP

特別な量的アッセイを使った尿中PBG濃度の増加の所見は、病状のある患者の急性ポルフィリア症の明確な診断確定に重要である。

AIPによって増加する尿中PBG(表1)の確定には、次のような根拠が必要である。

  • 全糞便中ポルフィリン濃度もしくはコプロポルフィリン異性体比が正常である;
  • 血漿ポルフィリン蛍光発光法スキャンで619nm付近のピークが認められるか、正常である

表1. 臨床的に明らかなAIPの生化学的特徴

欠失酵素 酵素活性 赤血球 尿 血漿
ハイドロキシメチルビレン合成酵素
(HMBS)
(EC2.5.1.61)
HMBS
正常の〜50%1,2
赤血球ポルフィリン:
正常
PBGとALA
増加ポルフィリン:
増加
全ポルフィリン:正常7または少量増加 6 血漿ポルフィリン:増加蛍光発光法
ピーク 〜619nm8
  1. 赤血球でのHMBS活性が正常なAIPの非赤血球型変異の患者の3%を除き、活性はすべての組織で低下している。
  2. 赤血球HMBS活性測定は、AIPの急性発症の診断には必要ではない。赤血球の平均HMBS活性
    は正常の50%だが、AIPと参考データの範囲の重複はAIPの診断テストとしてのその感度・特異度を
    減らしてしまう。たとえ、非赤血球変異の人を除外したときでさえも、そうなる[Kauppinen & Fraunberg 2002]。
  3. PBG(ポルフォビリノーゲン)はALA(5-アミノレブリン酸)よりも増加する。症状のある人が正常なPBG濃度を示したとき、AIP診断からは除外される。PBG濃度は寛解期には低下してくるが、数か月もしくは数年増加したままである。
  4. ALAはしばしば専門施設によってPBGと測定されるが、合併症のないAIPの更なる診断学的情報にはならないようだ(鑑別疾患の項参照)。
  5. ポルフィリン増加は、主に試験管内でPBGのウロポルフィリンへの濃縮を示している。PBGではなく、総尿ポルフィリン濃度は、アルコール乱用や肝疾患を含む様々な疾患で上昇することがある[Badminton et al 2012]。
  6. もし、エーテル非可溶性ポルフィリン、例えばウロポルフィリンを含む分析法を使用している場合、増加は大きいものかもしれない。
  7. 遺伝性コプロポルフィリン症を除く(鑑別疾患の項参照)
  8. 血漿ポルフィリン濃度は通常急性発作の間は増加している。血漿ポルフィリン蛍光発光スキャン法は
    そのピークが622nm以下の時、様々なポルフィリン症を除外できる。

尿中PBGの測定 尿検体を検査前日光遮断した状態で、最もよく検査できる。注:(1)24時間畜尿は解析の不要な遅れをきたし、PBGの変質を起こす;(2)非常に薄まった尿は偽陰性の結果となる

  • 特殊定量検査。 最も広範囲に使用されている方法では、PBG(とALA)は尿の別の色素体からイオン交換カラムクロマトグラフィーによって分離される。PBGは修正エールリッヒ試薬で反応後に分光高度型で測定される[Badminton et al 2012]。

注:尿(と血漿)PBGとALA濃度は高性能な液体クロマトグラフィーや質量分析計でも測定できる[floderus et al 2006, Zhang et al 2011]。PBGのクレアチニン比として、数式により尿濃度を考慮して結果を補正するべきである。

  • 定量的/半定量的PBGスクリーニングテスト。Watson-Schwartz検査もしくはHoescht検査は簡単に行える;しかし、両検査とも、感度・特異度に問題がある。尿中PBG濃度が基準値上限の5倍以上のときは約50%の割合で陽性となり、尿中PBG濃度が、急性発作時に典型的に認められるように、基準値上限の10から20倍以上のとき常に陽性となる。

急速な半定量的PBGアッセイ法は国によっては利用可能である(Trace PBG kit. Thermo Trace/DMA, Arligton, Texas)。このアッセイ法とWatson-Schwartz検査とを比較すると、感度は95%と38%であり、精度は99%と82%であった[Deacon & Peters 1998]。

注:(1)すべての定性および半定性検査は偽陽性を除くため、特定の量的測定法により確定されなくてはならない。(2)もし、急性ポルフィリア症の臨床的疑問が続いているなら、偽陰性の検出とスクリーニング検査の感度以下のPBG濃度の検出のため、ネガティブ試験もおなじ方法で確認すべきである。

判定 AIP様の症状の続く患者が正常な尿中PBG濃度であれば、診断は除外する。

尿中PBG濃度は常にAIPの症状時は上昇している。急性発作の間、しばしばPBG濃度は基準値上限濃度の10−20倍以上になる[Kauppinen & Fraunberg 2002, Anderson et al 2005, Elder et al 2013]。

潜在性AIPの成人や急性発作後の寛解期の患者は増加したPBG量を排泄することがある。このように、増加した尿中PBG排泄は症状がポルフィリン症の結果であることを確定するのに必要ではない。尿中PBG濃度でのベースラインからの最小でも2倍の増加が、AIPにより症状とともに続く[Aarsand et al 2006];しかし、実際には、ベースライン情報はほとんど利用できない。

潜在性(症候前)AIP 関連する遺伝カウンセリングの問題、リスクのある症状のない家族の検査の項目参照。

分子遺伝学的検査

遺伝子

HMBSはAIPを起こすことで知られる唯一の遺伝子である。

臨床検査

表2. AIPに使用される分子遺伝学的検査の要約

遺伝子1 検査法 検出されるアリル変異2 検査法による変異検出頻度3
HMBS シークエンス解析4 シークエンス変異 98%5
欠失/重複解析6 エクソンまたは全ゲノム欠失/重複
  1. 表A参照。
  2. アリル変異の情報の分子遺伝学の項目参照。
  3. 指示された遺伝子に存在する病的変異を検出するために使われる検査法の能力
  4. シークエンス解析により検出された病的変異の例は、小さなゲノム内欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライスサイト変異を含む;一般的に、エクソンまたは全ゲノム欠失/重複は検出できない。シークエンス解析の結果の解釈に関する問題は、本文参照。
  5. 欠失/重複解析で補完されたシークエンス解析の検出頻度は98.1%である(95%信頼区間:95.6%-99.2%)[Whatley et al 2009]。
  6. エクソンまたは全ゲノム欠失/重複を同定する検査は、ゲノムDNAのコードされた領域や隣接したイントロン領域のシークエンス解析では容易には検出できない;これは次のような利用できる様々な方法を含む:定量PCR、広範囲PCR、MLPA、ゲノム/染色体領域を含むCMA(Chromosomal microarray)。

検査戦略

発端者の診断の確定

症状のある患者のAIPの診断は、(解析前に遮光した)任意のサンプル尿中のPBG増加による。正常な総便中ポルフィリンもしくは正常なコプロポルフィリン異性体比、正常か蛍光発光のピークが619nm付近の血清ポルフィリン蛍光発光スキャンでの根拠とともに、

分子遺伝学的検査は症状のある患者の診断確定には必要ないが、臨床的または生化学的寛解にある患者の明らかなAIPの診断の確定もしくは否定に役に立つことがある[Whatley et al 2009]。加えて、その患者の分子遺伝学的検査は、もし臨床症状もしくは生化学的所見がホモ接合性のHMBS病的変異もしくは2重のポルフィリン症(2つの別々のポルフィリン症関連遺伝子のヘテロ接合性病的変異)もしくはなにか非典型的な場合、検討すべきかもしれない。

生化学的に証明されたAIP患者の分子遺伝学的検査の主な目的は患者の家族の分子学的に病的変異を同定することである。

検査する際、分子遺伝学的検査は通常まずHMBSのシークエンス解析をはじめ、もし病的変異が同定されない場合、続いて欠失/重複解析を行う。

分子遺伝学的検査は予後判定には有用ではない。

リスクのある症状のない成人家族の発症予測的検査は、まず家族の病的変異の同定が必要である。

リスクのある妊娠での出生前診断および着床前診断は、まず家族の病的変異の同定が必要である。


臨床的特徴

臨床像

症状は急性ポルフィリン症(AIP)の病気を起こしやすくする遺伝的変化をもつ人のほんの少数に現れる。症状は男性より女性に多く、思春期前は稀である。発症は典型的には、30代か40代に起きる[Anderson et al 2001, Elder et al 2013]。

急性間欠性ポルフィリン症(AIP)

AIPでは、腹部内蔵、末梢、自律、中枢神経系システムが冒される。通常間欠的で時々重篤なこともあるように所見の幅が広い。急性発作の予後は個人によって様々である。
罹患者は通常数日で発作から回復するが、以前に経験や治療したことのないような重篤な発作からの回復は数週間から数か月かかる場合もある。臨床的なAIPの症状は、典型的には個人のある外因性または内因性要素への暴露によって引き起こされるが、急性発作を起こす因子が同定されないことは珍しくない。

急性発作

筋性防御を伴わない、全体的もしくは局所的なひどい腹痛は良く認められ、しばしば急性発作の前兆になる。背部、臀部、四肢は特徴的であるかもしれない。吐き気、嘔吐、便秘または下痢、腹部膨満、イレウスなどの胃腸症状も良く認められる。頻脈と高血圧は高頻度であるが、発熱、発汗、不穏、振戦はあまり見られない。尿閉、失禁、排尿困難は存在することがある。

末梢神経障害

末梢神経障害は主に運動神経であり、過去より現在の方が認められなくなった。筋力低下はしばしば下肢近位側より始まり、上肢や下肢遠位にみられることもあり、呼吸筋まで悪化して呼吸不全を伴う完全麻痺になることがある。両側性軸索運動神経障害は遠位橈骨神経を障害することもある[King et al 2002]。運動神経障害は脳神経も含み、球麻痺をおこすことがある。

まだらな感覚神経障害も起こすことがある[Wikberg et al 2000]。

精神変化

精神的変化は症状を有する患者の最大30%まで存在するが、この疾患の非常に稀ではあるが、強い症状である[Hift & Meissner 2005, Puy et al 2010]。変化は、不眠、不安、うつ、厳格、混乱、パラノイア、記憶喪失、に加え/または傾眠から昏睡までの意識変容を含む。これらの症状は発作後は改善するが、不安は続くかもしれない。

痙攣

けいれんは急性発作中に起こることがあり、特に低ナトリウム血症の患者に起こり、嘔吐や不適切な輸液で悪化する。低ナトリウム血症の原因は不明である;SIADH(syndrome of inappropriate antidiuretic hormone release; 不適切な抗利尿ホルモン分泌症候群)と腎性塩類喪失の両方がメカニズムとして考えられている。
けいれんは急性発作の中枢神経系(CNS)に関する症状としても起こることがある。

MRI所見

MRI変化はCNS病変の兆候のある7人の患者中2人に認められた。主な所見は後頭部の可逆的脳症症候群である[Celik et al 2002, Bylesjo et al 2004, Kauppinenn 2009]。MRI所見は、AIPよりも早急な低ナトリウム血症の補正による結果かもしれない[Susa et al 1999]。

ポルフィリン症の皮膚所見はAIPにはおこらない。

促進因子

急性ポルフィリン症の発作は内因性もしくは外因性因子で促進されることもある[Anderson et al 2001]。その因子に含まれるものとして、

  • 肝臓でチトクロームP450で解毒される処方薬と違法薬物はALA合成とヘム生合成を誘導することになる。発作を誘発する処方薬としては、例えば、バルビツール系薬剤、サルファ剤を含む抗菌剤、いくつかの抗痙攣薬、プロゲスタゲン、そして合成エストロゲン(避けるべき薬物/環境の項目参照)である。
  • 内分泌的因子。生殖ホルモンは臨床的なAIPの発症に重要な役割を果たしている。女性において、急性の神経内蔵発作は月経周期と関連し、通常黄体期である[Andersson et al 2003, Hift & Meissner 2005]。しかし、AIPの女性の多くは、様々なステロイドホルモンの血清濃度は非常に上昇しているにも関わらず、妊娠期間はうまくいく[Andersson et al 2003, Marsden & Rees 010]。
  • 絶食。判明している悪化因子は、例えばダイエットや過酷な運動スケジュールに関連した不適切なカロリー量摂取である。
  • ストレス。精神的、または合併症、感染、過度のアルコール、手術などの他のストレスは症状を悪化させるかもしれない。

慢性合併症

  • 肝癌(HCC)。AIPの患者は臨床的に明らかであろうと、潜在性であろうと、通常54歳以降は原発性肝癌を起こすリスクが高くなるようである[Linet et al 1999, Innala & Andersson 2011]。スウェーデンからの報告が最も高率であった。現在は他の集団がなぜ低くなるように見えるのか不明である[Deybech & Puy 2011]。
  • 腎疾患。 患者によって、とくに何度も長期に発作を経験している人は、他の明らかな原因がないにも関わらず腎不全をおこす。多くは高血圧があるが、他は血圧正常でありながら腎不全になる[Andersson et al 2000b]。腎組織は典型的なびまん性糸球体硬化症、間質変化、虚血領域を示す。AIP発作による長引く血管攣縮が原因の可能性がある[Andersson et al 200b]。
  • 再発する急性発作。約3−5%のAIPの患者は、主に女性だが、長期に何年も発作を繰り返す(通常年4回以上と定義)経験をもつ[Elder et al 2013]。

死亡率

 発作に関連する直接的な死亡は現在ほとんどの国では非常にまれであり、治療の改善(ヒトヘムの使用)や発症前血縁者の同定やカウンセリングのおかげである。死は肝癌や肝移植の合併症として起こりうる。

ホモ接合性のHMBS欠損

今までに、ホモ接合性のHMBS病的変異をもつ5人の子供が報告されている。皆、コントロールのHMBS酵素活性の3%以下の酵素活性であった。

  • 4人はエクソン10の病的変異であった。症状は小児期早期に始まり、重篤な運動失調、不整脈、かなりの精神運動発達遅滞、中枢および末梢の神経学的疾患を起こしていた。一人のMRI検査では大脳オリゴデンドロサイトに選択的に出生後の障害を示す白質異常を示した[Solis et al 2004]。
  • 1人はエクソン6の病的変異のホモ接合で、上記の4人よりも軽症であった[Hessels et al 2004]。

病因

急性ポルフィリン症の臨床症状をおこしている神経領域の病因に対して2つの主要な仮説が示されている:ALA毒性または、神経ヘム欠乏である。しかし、繰り返す発作の治癒としての肝移植の成功[Soonawalla et al 2004]や急性発作を以前起こしたAIP患者から非罹患者への肝臓の移植[Dowman et  al 2011]は明らかに肝由来の神経毒、おそらくALA、の放出が原因と示している。増加するALA産生は肝由来ALA合成活性、AIP急性発作を引き起こす因子の多くの影響によって起こる[Thunell 2006]。

遺伝型―表現型相関

正常活性の約10%の病的変異は、正常活性10%以下の病的変異より浸透率が低いかもしれないといういくつかの報告は別として[Andersson et al 2000a, Fraunberg et al 2005]、遺伝型―表現型相関はAIPでは明白ではない。

浸透率

HMBS病的変異の臨床的な浸透率は正確にはわかっていない。

スイスの患者のある報告によればカスケードスクリーニングで確かめられた52%の血縁者は典型的な臨床症状とALAおよびPBGの増加、HMBS活性の低下が確かめられた[Schuurmansa et al 2001]。しかし、ほとんどの経験のあるポルフィリン症専門家の書いた報告では、彼らは医学的管理のため病院に入院するような急性発作(急性腹痛±関連する自律神経、運動、中枢神経症状)を起こすような浸透率は10%−20%としている[Anderson et al 2005, Puy et al 2010, Badminton et al 2012]。

人口調査では、低い数字が示されている。

フランスでの疾患特異的HMBS変異の最小有病率は住人100万人あたり597人であった[Nordmann et al 1997]。フランスでの明らかなAIPの浸透率は最近では100万人あたり5.5人として報告されている[Elder et al 2013]、そのため、浸透室は約1%となる。

有病率

ほとんどの国では、AIPは急性肝性ポルフィリン症の最も一般的なものである[Anderson et al 2001, Puy et al 2010]。

  • ヨーロッパ(スウェーデンを除く)では、新しく症候性患者と診断されたAIPの発生率は100万人・年あたり0.13と宝庫臆されている。計算された有病率は100万人あたり5.9人である[Elder et al 2013]。
  • スウェーデンではAIPの発症率および有病率は、ラップランドを起源とする創始者効果によってヨーロッパのおよそ4倍である[Floderus et al 2002]。

遺伝的に関連した(アリル)疾患

このGeneReviewで議論されている以外のHMBSの変異に関する別の表現型は知られていない。


鑑別診断

急性神経内蔵発作は急性間欠性ポルフィリン症(AIP)とほかの3つの急性ポルフィリン症では臨床的に区別できない:遺伝的コプロポルフィリン症(HCP)、多様性ポルフィリン症(VP)、ALAD欠損ポルフィリン症(ADP)、そして複雑な遺伝的チロシン血症T型(Table 3)[Puy et al 2010]。

鉛中毒も症状は似ていて、ヘム生合成を邪魔する;しかし、貧血という鉛中毒性の症状は、AIPの症状ではない。

表3臨床的に明らかな鑑別疾患として考えられる疾患

疾患 臨床症状 尿 便 血漿 赤血球
遺伝性コプロポルフィリン症(HCP) 急性発作
±皮膚領域1
PBG,ALA2,ポルフィリン3の増加 コプロポルフィリンV増加 血漿ポルフィリンの増加
蛍光発光ピーク〜620nm4
 
多様性ポルフィリン症(VP) 急性発作
±皮膚領域1
PBG,ALA2,ポルフィリン3の増加 プロトポルフィリン症の増加5 血漿ポルフィリンの増加
蛍光発光ピーク〜626nm6
 
ALAD欠損
ポルフィリン症
急性発作 ALA,コプロポルフィリンV、正常PBG     亜鉛-プロトポルフィリン;ALAD活性の低下
遺伝性チロシン血症1型 急性発作 ALA増加     ALAD活性低下
鉛中毒 腹痛、貧血 ALA増加;正常コプロポルフィリンV、PBG     亜鉛-コプロポルフィリンの増加;ALAD活性低下

診断の異常所見を示した。臨床的明らかなAIPの生化学的特徴は表1参照

ALA=5−aminolevulinic acid
ALAD = 5-aminolevulinate dehydratase

  1. 急性の神経内蔵発作にポルフィリン症皮膚所見(ブラ、弱い皮膚)を伴う人はHCPの約15%、
    VPの約60%である。
  2. PBGはALAよりも濃度は上昇する;症状がなくなると両者とも急に低下する。
  3. PBGとコプロポルフィリンの試験管内の重合からのウロポルフィリン;診断には必要ではなく、迷わせることがある。
  4. 血漿ポルフィリン濃度は時に正常のことがある;蛍光発光スペクトロスコピーはHCPとAIPを区別できない。
  5. プロトポルフィリンは主要な便中ポルフィリンであるが、コプロポルフィリンVのわずかな上昇も認められる。
  6. 血漿ポルフィリン濃度はいつも像冒しており、蛍光発光スペクトロスコピーはVPを他のポルフィリン症と区別する。
    血尿、アオゲイトウの摂取、ある種の薬や食品添加物、ほかのポルフィリン症(皮膚ポルフィリン症、先天性ポルフィリン症)によるポルフィリン排泄は似た尿の赤い変色をするかもしれない。

臨床的マネジメント

初期診断に続く評価

疾患の進展度やAIPと診断された患者の需要を決めるために、次のような評価を勧める。

  • 全ての臨床経過と検査、もし症状があれば神経学的評価も含む。
  • リスクと利益を評価して薬物治療を吟味する(避けるべき薬物と環境の項目参照)
  • 急性ポルフィリン症を疑わせる所見の間にとるものと比べるために、ベースラインを決めるための尿中ポルフォビリノーゲン排泄量の定量
  • AIPに関してより詳細に臨床的アドバイスをもらうため、ポルフィリン症専門家への紹介
  • 臨床的遺伝カウンセリングへの紹介

症状の治療

急性神経内蔵発作

急性神経内蔵発作の直接の治療は急性ポルフィリン症の特殊なタイプの確定に必要ではない。

臨床評価は全神経学的所見を含む

AIPとわかっている人でも、ポルフィリン症に加えて腹痛の原因を検討する。

検査は次のようなことを含む:

  • 全血球検査(FBC)
  • 血清/血漿中の尿素、クレアチニン、電解質の濃度
  • 血清および尿浸透圧
  • もし、低ナトリウム血症であれば、尿中Na濃度
  • 患者の状態や考えられる発作の原因によって他の血液検査、例えばCRP,血液培養、CK, Mg

MRIはCNS症状があれば、検討する

一般的な検査

  • 全ての薬剤を吟味し急性ポルフィリン症を増悪させている可能性のある薬物を中止する[Elder & Hift 2001]。避けるべき薬物/環境の項目参照
  • 可能であれば、腸管ルートを使ってエネルギーバランスの回復。必要な時には、最低でも5%のブドウ糖を有する経静脈点滴;しかし、低張性ブドウ糖液は低ナトリウム血症のリスクのため、避けるべきだである。
  • 介入すべき感染症やほかのすぐに対応すべき疾患の治療

支持療法

  • 疼痛緩和

効果的な鎮痛薬は可能な限り早く与える。通常は非経口オピエート(モルヒネ、ジアモルヒネ、フェンタニルは安全である)の形で投与する。かなり多い量も、重篤な急性発作の際は必要なときがある。患者のコントロール可能な鎮痛薬や疼痛管理チームからのサポートを検討する。

  • 吐き気、嘔吐。

プロクロルペラジン、プロマジン、またはオンダンセトロンは安全と考えられている。

  • 高血圧   βブロッカーは安全と考えられる。
  • 痙攣は経静脈的にジアゼパム、クロナゼパム、マグネシウム硫酸塩で止める
  • 体液バランスと電解質。 ブドウ糖加生理食塩水が好まれる。重症低ナトリウム血症は、引水制限より経静脈的な生理食塩水で治療すべきである[Hift & Meissner 2005]。

特別な治療

  • 軽い急性神経内蔵発作のときは、高炭水化物摂取を、経口が望まれるが他の支持的方法とともに(急性の神経内蔵発作の項参照)、48時間までにすべきかもしれない。改善が不十分な場合もしくは更なる、進行した神経学的症状が出現した場合、へミン製剤の経静脈的投与が推奨される。
  • 経静脈ヒト型へミン製剤は、急性神経内蔵発作に関して最も有効な治療である。経静脈的へミン投与は、早期に使用し神経学的損傷がまだ可逆的なときは、救命できることがあり、麻痺をおこさせないこと、悪化を予防するのに役立つことがある。
    • へミンの推奨投与量は3−4mg/kg経静脈4日間の1日1回投与である。臨床経過により、治療期間は伸びるかもしれない
    • パンヘマチンTM(Ovation Pharmaceuticals, Deerfield, IL)はUSAでの急性発作の治療で許可されている。この製剤は乾燥粉末として供給されており、経静脈注射前すぐに無菌水に混ぜて戻し、10−15分以上かけて投与する。パンヘマチンTMの無菌水に戻してからの投与は一過性の軽い凝固障害と関連があるため、同時の抗凝固療法は避けるべきである。
    • ヘムアルギネート(Normosang Orphan Europe, Paris)はアルギニンで安定化させたヒト型へミンで、ヨーロッパ、アフリカ、中東、南アメリカを含む多くの国で利用できる。少なくとも30分以上かけて注入する。急性神経内蔵発作の治療について、へミンと同じ効果があるが、副作用の報告はほとんどない [Hift & Meissner 2005, Puy et al 2010]。

注:(1)20%ヒト血清アルブミン溶液で戻したヘマチンで、さらに/または大きな静脈または中心静脈カテーテルを使用することで、経静脈的注射後の静脈炎は最小化される。ヘマチンを投与するため使われた末梢のカニューレはそれぞれ交換すべきである。(2)溶解できていない粒子状物質インラインフィルター付きの輸液セットが推奨される。(3)全部で100mLの生食のボーラスでの静脈カテーテルの強いフラッシュが推奨される。
  
再発性急性発作

再発する急性発作はポルフィリン症専門家からのサポートとアドバイスが管理にもっともよい。

ポルフィリアセンターの情報や専門家の詳細を参照。

医療は急性発作の頻度や重症度を減らす目的であり、次のような方法がある。

  • 月経周期に関連した繰り返す急性神経内蔵発作の患者には、ゴナドレニンアナログの排卵抑制[Innala et al 2010]。長期間作動アナログも排卵抑制に使用されることがあり、発作のきっかけとなるホルモン放出の早期刺激効果を最小限にするため、月経周期の最初の数日の間投与される。エストロゲン投与の際には、副作用は最小限にできるかもしれず、パッチ製剤などが好ましい。婦人科検診や骨密度モニタリングが勧められる。
  • へミン製剤の注射。最小限度の効果的な注射頻度で行われ、通常、留置静脈カテーテルに週1回へミンを注射する。これらの問題点は、静脈留置デバイス(感染、閉塞)関連か、鉄過剰症である(一次疾患の予防、二次合併症の予防の項目参照)

他の治療

肝移植は治癒的で複数のセンターで報告されている[Soonawalla et al 2004, Wahlin et al 2010, Dowman et al 2012]。繰り返す命にかかわるような急性発作、医療の効果不十分、QOLの低下などが適応である[Seth et al 2007]。
肝腎同時移植、これはうまく行っているが、繰り返す重篤な発作と腎不全を持つAIP患者に適応と考えられている[Wahlin et al 2010]。腎移植は明らかな、または潜在性AIPの患者の腎不全で行われる[Nunez et al 1987, Warholm & Wilczek 2003]。

シメチジンは代替治療として提案されている[Rogers 1997]。しかし、臨床的有用性の証拠としては、まだわかりにくい。最近の正式な研究は行われておらず、国際的ポルフィリン症ミーテイングにおける経験ある専門家の非公式のフィーバックでは、この治療で利益をえる患者はほとんどいないことが示唆された。
 その他
 患者は、アクシデントの起こった場合に素晴らしい助言をもらえる組織に登録するようアドバイス受けるべきである(例えば、MedicAlertRや似た組織)。
どこか利用できる国際患者組織から利用できるサポートについてアドバイスを受けるべきである。
良い質の情報は、現在紙媒体やインターネットで、患者や専門組織から広く手に入れられ、活用できる。
ある特殊な臨床的な状態(例えばてんかん、HIV、マラリア、結核、高脂血症、高血圧)にあるポルフィリン症の患者の安全な治療のアドバイスは、ヨーロッパポルフィリン症ネットワークウェブサイトおよび/またはポルフィリン症南アフリカウェブサイトで活用可能である。

一次疾患の予防

急性発作を予防するために、患者は次のような潜在的な誘発因子についてアドバイスされる。 適切な栄養を通常のバランスのとれた食事で摂取しているか確かめる。特に、炭水化物を完全に除去した食事など、管理されていないカロリー制限食を避ける。

  • ポルフィリン症を悪化させると知られている薬物や化合物を避ける、特に処方薬や処方箋なしの薬である。避けるべき薬・環境の項参照。
  • 全身疾患や感染症の時宜にかなった治療を探す
  • 限度を超えたアルコール消費や喫煙を避ける

2次合併症の予防

末期腎不全、慢性的全身の動脈性高血圧によるものと思われるが、これは、効果的な血圧コントロールを通して遅らせることができるかもしれない[Andersson et al 2000b]。
 100mgのへミンは8rの鉄を含むため、へミンの頻回投与は鉄負荷過剰のリスクが増す。血清フェリチン濃度そして/またはトランスフェリン充足度の小児のモニターはそれゆえへミンを繰り返し投与する患者には適切である。

サーベイランス

スウェーデンでのAIP患者の肝癌の高リスクの観点から、毎年の肝臓の画像検査を50歳以降は推奨される。そのことは生存率を改善するようである[Innala & Andersson 2011]。少数の国では、初期スクリーニングもしている。国によっては、リスクが低いようであるため、もっと広範囲に似た検査を推奨すべきかどうかは明らかになっていない[Deybach & Puy 2011, Stewart 2012]。 

注:血清α−fetoprotein測定は有効ではない。

避けるべき薬物/環境

限度を超えたアルコール消費や喫煙を避ける。多くの薬の安全性について、またほかの急性ポルフィリン症の販売医薬品についての知識は不十分である;しかし、ポルフィリン症を引き起こすような薬の評価のための根拠に基づいたガイドラインが出版されている[Thunell et al 2007, Hift et al 2011]。

リスクのある血縁者の評価

HMBS病原性変異が家系内でわかっており、リスクのある血縁者は分子遺伝学的検査から遺伝的性質を明らかにすることで利益を得ることができることがあり、そしてAIPの急性発作をおこすリスクの増大した人を早期に同定することができ、予防的方法について、コンサルトを受けることができる。

遺伝カウンセリング目的のリスクのある血縁者の検査に関連した問題については遺伝学的カウンセリングの項目参照。

妊娠の管理

AIPの女性の多くは、ポルフィリン症に関連したなんの臨床的問題なしに完全に正常妊娠をする[Marsden & Rees 2010]。しかし、妊娠がポルフィリン症を引き起こしたり悪化させたりすることはわずかながらある。
AIPをもつ女性は、妊娠中腹痛、高血圧、頻脈を経験するとき、所見が急性発作によるものであると思う前に妊娠の合併症を除外すべきである。

妊娠中に起こる急性発作に対する対症療法は、催奇形性やポルフィリン症の急性発作を早めたり悪化させたりする点について、薬剤の安全性を考慮に入れるべきである。

経静脈的ヒト型へミン(両方とも利用可能な状態で)は妊娠中の急性発作の治療に使われてきたし、安全のようである[Anderson et al 2005, Marsden & Rees 2010]。英国とフランスの女性の何人かの方は定期的にヘムアルギニン注射を妊娠中に、母子ともになんの明らかな副作用もなく受けてきている[Badminton & DeyBach 2006]。

長期の絶食は、エルゴメトリンなどの安全でない薬物の使用と同様に、出産・分娩中は避けるべきである。

注:産科的緊急状態では、主要な臨床的利益が見込まれる場合や命に危険があるときに必要であれば、薬を制限するべきではない。

良い鎮痛薬を使い、ストレスは最小限にすべきである。ブピバカインを使った脊髄または硬膜外麻酔の形での局所麻酔は安全に使用できる。

検査下の治療

アデノ関連ウイルス由来のAIPの遺伝治療の臨床試験はヨーロッパで行われている(詳しくは、cima.es/aipgene参照)。

疾患と状態の広い範囲での臨床研究の情報を得るならばClinicalTrials.govを参照。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

AIP(急性間欠性ポルフィリン症)は常染色体優性形式で遺伝する。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • AIPと診断された人の大多数は、その両親の内のいずれか(症候性である場合も、ない場合もあるが)からHMBS変異遺伝子を受け継いでいる。
  • 新規に発生した遺伝子異常が原因となるHMBS欠損症の発端者もある。発端者の約1%が新規の病的変異かもしれない。 [Whatley et al 1995]。
  • 明らかに新規に遺伝子異常が起こり病因となった発端者の両親の評価には、尿中ALA、及び、PBG測定、及び、発端者のHMBS遺伝子異常が分かっている場合は、HMBS遺伝子解析を行うことが推奨される。

注:AIPの方は、潜在性AIPをもつ家族の疾患の認識不足(例えば、臨床的、生化学的検査で明らかでないHMBS病的変異をもっている)により、しばしば家族歴は陰性である。

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは発端者の両親の遺伝子異常の状況(すなわち、どちらかがが、あるいは、双方共にHMBS遺伝子異常を持っているかどうか)に依る。
  • もし発端者の両親のどちらかのみがHMBS遺伝子異常を持っている場合、発端者の同胞の遺伝子異常を受け継いでいるリスクは50%である。臨床的浸透率は低い(10-50%)ので、HMBS遺伝子異常を受け継いでいる者が将来発症するかどうか、また、もし発症するとして、発症年齢、重症度、及び、症状のタイプ、を予測することは可能ではない。

発端者の子孫

  • HMBS欠損症患者の子は、HMBS病的変異を50%の割合で受け継ぐ。

発端者の他の家族

他の家族のリスクは、発端者の両親の遺伝子変異の状況に依る。両親のいずれかが発症している、あるいは、病的変異を持っている場合は、その者の家族は変異遺伝子を持っている可能性がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

早期診断や早期治療の目的でリスクのある血縁者の評価するときの情報を得るため、管理、リスクのある血縁者の評価の項も参照。

リスクのある無症状の家族に対する検査 

  • 家族内の発症者でHMBS病的変異遺伝子が分かっている場合は、分子遺伝学的検査は変異遺伝子を同定するために選択できる検査であり、それゆえ、急性発作のリスクの同定ができる。
  • 赤血球HMBS活性は感度は良くないが、HMBS病的変異が同定できていないもしくは、分子生物学的検査が利用できないときは有用かもしれない。
  • 尿PBG排泄法は、普通の潜在性AIPの全ての思春期前の子供は使うべきではないし、大人の少なくとも50%は使うべきではない。[Kauppinen & Fraunberg 2002].

18歳より若いリスクのある血縁者の検査

急性発作は思春期前では稀であるが、可能性はあるため、AIPの血縁者の子供は、両親か保護者からの適切な同意を得て、検査の提供を行うべきである。このことは、発作を起こす因子の回避の助言/教育を得る機会を与え、早期の診断と発作が起きたときの迅速な治療を確実なものにする。

明らかな突然病的変異をもつ家族への検討

常染色体優性疾患をもつ発端者の両親のどちらも、臨床的症状や病的変異を持たないとき、発端者は新生病的変異をもつと思われる。しかし、父親が異なる場合や母親が異なる場合(例えば、生殖補助など)、また公にしていない養子縁組の可能性などを含め、可能な非医学的な説明も検討すべきである。

家族計画

  • 遺伝学的リスクの決定や出生前診断の適応や検討のために最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患者やリスクのある血縁者の若い成人に遺伝カウンセリングを提供することは適切である。

DNAバンク

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法や遺伝子、変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,DNAの保存は考慮に値する。

出生前検査や着床前の遺伝学的検査

家族の罹患者で病的変異が同定されれば、出生前診断や妊娠のための着床前診断は、AIPのリスクがあるため可能な選択肢となる。

(a)大抵のHMBS欠損症の方は一生無症状であり、(b)分子的遺伝学的検査も生化学的検査もAIPの臨床的発作を予測できない上、(c)AIP成人の予後や治療はかなり改善しているため、出生前検査の申し出は一般的ではない。特に検査が早期診断より堕胎の目的であると考えられる場合、出生前診断検査をすることに関しての考え方の違いは家族や医学的専門家の間にも存在する。大抵のセンターは出生前診断に関して両親の選択であると考えているが、この問題に対する議論は適切である。


関連情報

 GeneReviewsスタッフは罹患者と家族のための疾患特異的もしくは支持組織もしくは登記を選別した.GeneReviewsは他団体による情報について責任を負わない。

  • American Porphyria FoundationAPF
  • My46 Trait Profile
  • National Library of Medicine Genetics Home Reference
  • European Porphyria Network
  • NCBI Genes and Disease                         Porphyria
  • Swedish Porphyria Patients' Association
  • RDCRN Patient Contact Registry: Porphyrias Consortium          Patient Contact Registry

分子遺伝学

Molecular geneticsやOMIMの情報と,このGeneReviewの項目に記載されているものは違うかもしれない.表には,より最近の情報が含まれている可能性がある.

Table A AIP : 遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座 タンパク質 座位選択的
データベース
HGMD ClinVar
HMBS 11q23?.3 Porphobilinogen deaminase HMBS database HMBS HMBS

Table B.  AIPのOMIM Entries

176000 PORPHYRIA, ACUTE INTERMITTENT; AIP
609806 HYDROXYMETHYLBILANE SYNTHASE; HMBS

分子遺伝学的病因

AIPはHMBSの欠損によって起きる。

遺伝子の構造

15のエクソンからなり、すべての組織で発現しており、偏在するHMBSのアイソフォーム(エクソン1と3−15)と赤血球系細胞にのみ存在する赤血球系アイソフォーム(エクソン2−15)でコードされる10kb以上の遺伝子である[Grandchamp et al 1989]。

しかし、エクソン2は赤血球系の特別なアイソフォームでしか翻訳されない5'領域のRNAのみをエンコードしている。

赤血球系特異的でハウスキーピングなmRNAは2つのプロモーターの制御下、選択的スプライシングによって作られる(最長の翻訳リファレンスシークエンスはNM000190.3)。上流のプロモーターはすべての組織で活動しているが、3kb下流に存在するもう一つのプロモーターは赤血球系細胞でしか働いていない。赤血球系プロモーターはCACCCモチーフ、2つのGATA-1サイト、1つのNF-E2結合サイトを含む他の赤血球系特異的プロモーターの構造的特徴のいくつかをもつ。この所見は共通のトランス作動性の因子がこれらの遺伝子のHMBS酵素活性の転写を同時制御しているかもしれないことを示している。詳細な遺伝子や蛋白の情報の要約は、Table A参照。

病的アレル変異

HMBSには386以上の病的変異が同定されている(Table A,HGMD参照)。ほとんどのHMBS病的変異は、蛋白コーディング領域のミスセンス変異かナンセンス変異もしくは小欠失/挿入である。各エキソンのスプライス領域の変異は共通である。大きな欠失/重複/挿入や全遺伝子欠損も報告がある。

正常な遺伝産物

HMBS(porphobilinogen deaminase)はヘム生合成経路の3番目の酵素である。細胞質で4つのポルフォビリノーゲン分子からlinear tetrapyrrole hydroxymethlbilaneの合成の触媒として局在するモノマーとして働く[Anderson et al 2001]。

異常な遺伝産物

病的変異の大部分(〜85%)は(以前よりCRIM-陰性変異と言われている)蛋白を不安定もしくは欠損する変異の結果、すべての組織での酵素蛋白の50%減少と関連する。残りは、主に(以前よりCRIM陽性として知られる)ミスセンス変異であり、結果として蛋白の安定性やフォールディング、共因子の集合や触媒過程に影響する結果となる。結晶構造を基にしたモデル研究はこれらのメカニズムに重要な洞察を与える[Gill et al 2009]。


更新履歴

  1. ハイドロキシメチルビレン合成酵素欠損症
    (
    Hydroxymethylbilane Synthase (HMBS) Deficiency)
    [Porphobilinogen Deaminase Deficiency, HMBS Deficiency. Includes: Acute Intermittent Porphyria (AIP)]Gene Review著者:Stig Thunell, MD, PhD.
    日本語訳者:大門真(山形大学医学部第三内科) 
    Gene Review 最終更新日: 2010.3.23. 日本語訳最終更新日:2010.4.19.
  2. 急性間欠性ポルフィリン症(旧ハイドロキシメチルビレン合成酵素欠損症) (Acute Intermittent Porphyria)
    Gene Reviews著
    者: Sharon D Whatley, PhD and Michael N Badminton, PhD, FRCPath.
    日本語訳者:  和泉 賢一 (札幌医科大学医学部遺伝医学,NGSDプロジェクト)
    Gene Reviews 最終更新日: 2013.2.7 日本語訳最終更新日: 2017.12.29 in present)

原文: Acute Intermittent Porphyriareacher Collins Syndrome

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