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不整脈原性右室心筋症
(Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy)

[同義語: RVC、ARVD]

Gene Reviews著者: Elizabeth McNally, MD, PhD, Heather MacLeod, MS, Lisa Dellefave-Castillo, MS,CGC
日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科修士課程遺伝カウンセリングコース),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)

Gene Reviews 最終更新日: 2017.5.25 日本語訳最終更新日: 2018.9.18

原文: Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy


要約

疾患の特徴 

過去に不整脈原性右室異形成症(ARVD)として知られていた不整脈原性右室心筋症(ARVC)は、若年者やアスリートにおいて、心室頻拍や突然死を引き起こす心筋細胞の線維化脂肪組織への進行性置換を特徴とする。右心室の症状を主とするが、左心室にも影響を及ぼすことがある。症状は、家族内であっても非常に様々で、罹患者の中には確立された臨床診断基準に当てはまらない事例もある。診断の平均年齢は、31歳(±13歳: 4歳〜64歳)である。

診断・検査 

ARVCの診断は、心臓の構造と心調律を調べる非侵襲的および侵襲的検査法を組み合わせて行う。ARVCに関連する一般的な遺伝的要因としては、DSC2、DSG2、DSP、JUP、PKP2、TMEM43が知られている。あまり一般的ではない遺伝的要因としては、CTNNA3、DES、LMNA、PLN、RYR2、TGFB3、TTNが挙げられる。これら13の遺伝子のサブセットはデスモゾームの構成分子をコードする。

臨床的マネジメント 

症状の治療
臨床的マネジメントは個別に対応し、抗不整脈薬と植込み型除細動器の使用による、失神、心停止、突然死の予防に焦点を当てる。心臓移植は、ARVCが右または左心室の心不全まで進行した場合に検討されるが、拡張型心筋症のような心臓移植を必要とする、重度で広汎性の両室が関与するような状態は稀である。

回避すべき薬剤・環境:
競争的な運動を含む通常のあるいは激しい運動は、右心室への負担となり、ARVCや関連する不整脈を誘発するため控えるべきである。

リスクのある血縁者の検査:
病的バリアントがわかっている家系の、リスクのある血縁者は分子遺伝学的検査を行い、家系内特有の病的バリアントが認められた場合は、10歳から50歳までの間、年一度の心機能と心調律の臨床的スクリーニングが必要とされる。遺伝学的検査を実施していない、あるいは罹患している家族に病的バリアントが認められなかった場合、リスクのある無症状の第一度近親者は、10歳以降、3〜5年ごとの心臓関連の臨床的スクリーニングが推奨される。

遺伝カウンセリング 

ARVCは、概して常染色体優性遺伝形式をとる。常染色体優性ARVCの発端者は、de novoの病的バリアントが生じたことで発症することもある。de novo変異により生じた症例の割合はわかっていない。常染色体優性ARVCの罹患者の子供は、50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ。ARVCは二遺伝子遺伝形式をとることもある(すなわち、2つの異なる遺伝子の片方のアレルに、それぞれ病的バリアントがある)。病的バリアントが家族内で確認されている場合、高リスクの妊娠において出生前診断をすることは可能である。

訳注:日本では,本症に対する出生前診断や着床前診断は行われない.いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である。


診断

ARVCは、不整脈の所見が現れた後、最も一般的に診断される主要な心筋症である。診断基準は、はじめは国際的な特別委員会によって提唱され[McKenna et al 1994]、Marcus et al[2010]によって改訂された。診断基準は、心電図と加算平均心電図の組み合わせ、2次元心エコー検査、心臓MRIまたは右心室血管造影法の画像検査、無線テレメトリー方式のモニターによって記録された不整脈の症状、遺伝学的検査、家族歴に基づく。

不整脈原性右室心筋症が疑われる所見

下記の所見の何れかがある者に対しては,不整脈原性右室心筋症(ARVC)を疑うべきである

  • 失神
  • 動悸
  • 心臓突然死
  • 異常な心電図
  • 心臓の画像に見られる異常な右心室像

国際的な特別委員会によって初期に提唱されたARVCの診断基準[McKenna et al 1994]は、診断の特異性を維持しながら診断の感度を高めるための新たな知見と技術を織り込み、Marcus et al[2010](全文参照)によって改訂された。大項目かつ/または小項目の診断基準にみられる症状の数に基づき、ARVCの「確定診断」、「境界型」、若しくは「可能性あり」と分類される(診断の立証参照)。

画像所見:全体的かつ/または局所的な心機能不全と構造変化

大項目

  • 2Dエコーで
  • 限局性の右室(RV)壁運動消失、奇異性壁運動、心室瘤
  • かつ下記のいずれか1つ(拡張終末期)
    • PLAX(傍胸骨長軸像)RVOT(右心室流出路)が32mm以上;体表面積補正(PLAX/BSA)で19mm/m2以上
    • PSAX(傍胸骨短軸像)RVOTが36mm以上;体表面積補正(PSAX/BSA)で21mm/m2以上
    • 右室面積変化率(FAC, Fractional Area Change)が33%以下
  • MRIで
    • 限局性の右室壁運動消失、奇異性壁運動、非同期右室収縮
    • かつ下記のいずれか1つ
      • 右室収縮末期容積/BSA(体表面積)が110mL/m2以上(男性)。100mL/m2以上(女性)
      • 右室駆出率が40%以下
  • 右室造影で
  • 限局性の右室壁運動消失、奇異性壁運動、心室瘤

 

小項目

  • 2Dエコーで
    • 限局性の右室壁運動消失、奇異性壁運動
    • かつ下記のいずれか1つ(拡張終末期)
      • PLAXRVOTが29〜32mm;体表面積補正(PLAX/BSA)で16〜19mm/m2
      • PSAXRVOTが32〜36mm;体表面積補正(PSAX/BSA)で18〜21mm/m2
      • 右室面積変化率(FAC, Fractional Area Change)が33〜40%
  • MRIで
    • 限局性の右室壁運動消失、奇異性壁運動、非同期右室収縮
    • かつ下記のいずれか1つ
      • 右室収縮末期容積/BSAが100〜110mL/m2以上(男性)。90〜100mL/m2以上(女性)
      • 右室駆出率が40%〜45%

心内膜心筋生検または剖検所見

  • 大項目 
    右室自由壁から採取された心筋生検標本で線維化組織への置換を伴い(脂肪置換の有無は問わず),形態計測解析で残存心筋が 60% 未満(あるいは定性的に推定 50% 未満)
  • 小項目
    右室自由壁から採取された心筋生検標本で線維化組織への置換を伴い(脂肪置換の有無は問わず),形態計測解析で残存心筋が 60〜75%(あるいは定性的に推定 50〜65%)

心電図所見

再分極異常

  • 大項目 右側前胸部誘導(V1〜V3)あるいはそれを越えた誘導での陰性T波(14歳以上で120ms以上の完全右脚ブロックがない場合)
  • 小項目
    • 右側前胸部誘導V1〜V2あるいはV4〜V6で陰性T波(14歳以上で完全右脚ブロックがない場合)
    • 右側前胸部誘導V1〜V4で陰性T波(14歳以上で完全右脚ブロックがある場合)

脱文極・伝導異常

  • 大項目 右側前胸部誘導(V1〜V3)でイプシロン波(QRS波終末とT波間にある再現性のある低電位波形)
  • 小項目
    • 体表面心電図の QRS 幅が 110 msec を超えることなく,加算平均心電図 の 3 つの遅延電位陽性基準のうち1 つが陽性
    • f-QRS(フィルター処理された QRS幅)が114msec以上
    • QRS終末部が40uV以下の状態(低電位の持続時間)が38ms以上
    • RMS40(最終40ミリ秒の2乗平均平方根)が20uV以下
    • 完全右脚ブロックがない場合で、V1、V2、V3上の S 波谷点から QRS 終末まで(R’を含む)までの終末伝播時間が 55 msec 以上

不整脈

  • 大項目 左脚ブロック型・上方軸(U、V、aVF誘導で陰性QRS、aVL誘導で陽性QRS)の非持続性あるいは持続性心室頻拍
  • 小項目
    • 左脚ブロック型・下方軸のいわゆるRVOTタイプ(U、V、aVF誘導で陽性QRS、aVL誘導で陰性QRS)ないしは、不定軸の非持続性あるいは持続性心室頻拍
    • ホルター心電図で500回/24時間以上の心室期外収縮

家族歴

大項目

  • 本診断基準でARVCと診断された一度近親の親族
  • 病理解剖ないし開胸心筋生検でARVCと診断された一度近親の親族
  • ARVC患者に関連する、あるいは関連すると思われる病的バリアントの同定

小項目

  • 本診断基準を満たすことのできないARVCを疑う一度近親の親族[Marcus et al 2010]
  • 35歳未満でARVCを疑う早期突然死の一度近親の親族
  • 病理学的ないし本診断基準によりARVCと診断された二度近親の親族

診断の確定

発端者において異なるカテゴリーから下記所見があれば、ARVCの診断が確立する(疑われる所見参照):

  • 2つの大項目、または
  • 1つの大項目と2つの小項目基準、または
  • 4つの小項目基準

特別委員会の診断基準では、分子遺伝学的検査によって同定されたTable. 1aあるいはTable.1bのリストにある遺伝子にヘテロ接合性の病的バリアントがあれば、大項目の基準を満たすとみなされる。

分子遺伝学的検査の手法は、マルチジーンパネル検査やより包括的なゲノム検査を含む:

  • DSC2DSG2DSPJUPPKP2TMEM43や他の関係のある遺伝(鑑別診断参照)を含むマルチジーンパネル検査は、発端者の初めの検査として推奨される。パネルに含まれる他の遺伝子は、CTNNA3DESLMNAPLNRYR2TGFB3TTNである。注釈:(1)パネルに含まれる遺伝子とそれぞれの遺伝子に使用される検査の感度は、研究室による差異もあれば、時を経ても変化してゆく。(2)マルチジーンパネル検査によっては、GeneReviewで論議された症状と関連しない遺伝子を含む可能性がある。従って臨床医は、関連性が不明なバリアント(Variant of uncertain significance, VUS)や根本的な表現型の説明にならない遺伝子の病的バリアントを避けながら、どのマルチジーンパネル検査が、症状の遺伝的要因を最も適正な価格で同定できる最善の方法であるかを決定する必要がある。(3)研究室によっては臨床医が指定した遺伝子を含むカスタム設計された研究室独自のパネルや、表現型に焦点を当てたエクソーム解析パネルといった選択肢が存在することもある。(4)パネル検査で使用される方法は、シークエンス解析、欠失/重複解析やその他のシークエンシングに基づかない検査も含まれる。 

マルチジーンパネル検査に関する概論はここをクリック。遺伝学的検査を発注する臨床医向けのより詳細な情報についてはコチラを参照のこと。

  • エクソーム解析とゲノム解析を含むより包括的なゲノム検査(利用可能な場合)も検討してもよい。選択肢としては、拡張型心筋症、肥大型心筋症、および左室心筋緻密化障害と(ARVCは)表現型と遺伝型の重複があるため、広範な心筋症の遺伝子パネル検査が一次検査として検討される。広範な心筋症のパネル検査は、包括的なゲノム検査の実施より先に中間検査として、検討される。このような検査は、事前に考慮されなかった診断を提供あるいは示唆しうる。(例:異なる遺伝子の変異ないしは類似の臨床症状をもたらす遺伝子)。

包括的なゲノム解析に関する詳細はここをクリック。遺伝学的検査を発注する臨床医向けの、より詳細な情報についてはコチラを参照のこと。

注:ARVCのための遺伝パネル検査の拡大により、2つの病的バリアントを持つ患者の同定に繋がることもある(二遺伝子遺伝/両アレル遺伝)。二遺伝子遺伝/両アレル遺伝は、4〜47%と多様に見積もられている(Xu et al 2010, Bao et al 2013, Rigato et al 2013, Bhonsale et al 2015, Groeneweg et al 2015)。大多数の研究で、二遺伝子・両アレルの病的バリアント保有者は、より深刻な不整脈の形質を持つ。遺伝子型と表現型の関連参照。

包括的な遺伝学的検査についてはこちらをクリック。遺伝学的検査の発注を希望する臨床医向けのより詳細な情報についてはコチラをご覧ください。

表1a.

不整脈原性右室心筋症で実施される分子遺伝学的検査:最も一般的な遺伝的要因

遺伝子1

この遺伝子の病的バリアントに原因があるARVCの割合2

この方法で発見できる病的バリアント3の割合

配列解析4

対象となる遺伝子の欠失/重複解析5

DSC2

1%-2%

>90%6

不明7

DSG2

5%-26%

>90%6

不明7

DSP

2%-39%

>90%6

0%-8%8

JUP

0.5%-2%

>90%6

不明7

PKP2

34%-74%

>80%6

11.70%

TMEM43

>90%6

不明7

不明9

 

NA

 

この表のリストにある遺伝子の病的バリアントは、いずれもARVCの1%以上を占める;遺伝子は、アルファベット順に表記している。

  1. 染色体座位とタンパク質についての情報は、Table.Aの遺伝子とデータベースを参照。
  2. Jacob et al(2012)より。現在まで公開されたすべての先行研究の包括的な概観により人口全体のうち病的バリアントが同定される遺伝子の有病率。
  3. この遺伝子に同定されたアレルのバリアントに関する詳細については、Molecular Genetics参照。
  4. シークエンス解析は、良性、良性の可能性大、意義不明、病原性の可能性大、病原性のバリアントを同定する。病的バリアントには、微小な遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位バリアントを含む。一般的にエクソンまたは全遺伝子の欠失/重複は検出されない。シークエンス解析の結果の解釈において、考慮する問題については、ここをクリック。
  5.  対象となる遺伝子の欠失/重複解析は、遺伝子内の欠失または重複を検出する。用いられる方式は、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法,単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどである。
  6. Bao et al(2013)、Rigato et al(2013)、Groeneweg et al(2015)、Lazzarini et al(2015)。特定の遺伝子に起因するARVCの割合がコホート研究によって変化するのは、ARVCに関連する異なる遺伝子の相対的寄与が、民族によって異なったり、診断時の医療ケアの背景が(ARVCの診断基準や遺伝学的検査が違うため)異なることが考えられる。
  7. 対象となる遺伝子の欠失/重複解析の検出率のデータは現存しない。
  8. Groeneweg et al (2015), Lazzarini et al(2015)
  9. 追加の座位異質性におけるエビデンスは、未確認の座位/遺伝子と共に、次の遺伝子自体がまだ同定されていない座位が含まれる。ARVD3(14q12-q22)(Severini et al 1996)、ARVD4(2q32.1-q32.3)(Rampazzo et al 1997)、ARVD6(10p14-p12)(Li et al 2000, Matolweni et al 2006)。

表1b.

不整脈原性右室心筋症の分子遺伝学:一般的でない遺伝的要因

遺伝子1,2 文献
CTNNA3 van Hengel et al (2013)
DES Klauke et al (2010), Otten et al(2010), Hedberg et al (2012), Lorenzo et al (2013)
LMNA Quarta et al (2012), Forleo et al (2015)
PLN van der Zwaag et al (2012)
RYR2 Roux-Buisson et al (2014)
TGFB3 Beffagna et al (2015)
TTN Taylor et al (2011), Brun et al (2014)

この表のリストにある遺伝子の病的バリアントは、それぞれ数家族のみに報告され(ARVCの1%未満)、これらの遺伝子に関連する症状は、より広範囲の疾患である不整脈原性心筋症と重複する。遺伝子は、アルファベット順に表記している。
1.染色体座位とタンパク質については、Table. A. 遺伝子とデータベース参照。
2.表に含まれる遺伝子の詳細は、ここ(pdfをクリック。

注:
(1)国際特別委員会の診断基準 (Marcus et al 2010)に基づきARVCの疑いがあるものの、明確に臨床診断基準を満たさない個人*に対しては、分子遺伝子検査を検討すべきである。こういった人の中には、ARVC関連の遺伝子の一つに病的バリアントが同定されることで、残りの基準を満たすこともある(疑われる所見を参照)。

*ARVCの境界型診断

  • 1つの大項目かつ1つの小項目の基準、または
  • 異なるカテゴリーからの3つの小項目の基準 を満たす

*ARVCの可能性ありの診断

  • 1つの大項目の基準、または
  • 異なるカテゴリーからの2つの小項目の基準 を満たす

(2)改訂された診断基準(Marcus et al 2010)を満たす発端者において、検査可能な全遺伝子の遺伝学的検査の総括収率は、約50%である(Quarta et al)。従って、診断基準に適合する人に、分子遺伝学的検査で病的バリアントが確認されない場合でも、ARVCの臨床診断は変わらない。

診断基準外の検討:追加情報

注:ARVCの表現型は非常に多様であり、症状を示す患者でも特定の基準に合わない可能性がある(McKenna et al 1994, Marcus et al 2010)。しかし、このような患者でも、不整脈を含む心血管イベントのリスクがあるため、循環器専門医による継続的なケアが必要とされる。

心臓の構造と心調律の非侵入的および侵入的検査についての追加的考察は、ここ(pdf)に概説される。


疾患の特徴

臨床像

不整脈原性右室心筋症(ARVC)は、右心室に症状の表れる心筋障害で、症例によっては左心室に悪影響を及ぼす事もある。ARVCは進行性であり、心筋細胞の線維化脂肪組織への置換により心室頻拍や若年者の突然死が起こりやすいことを特徴とする(Marcus et al 1982, Thiene et al 1988, Corrado et al 1998, Fontaine et al 1998)。この疾患は、右室心尖部、右室下壁、右心流出路が好発部位である。ARVCの不整脈は、多くの場合右室で生じ、左脚ブロックの形態で起こる。

ARVCの病状によっては左心室にも拡大して影響を及ぼす事もある(Horimoto et al 2000, Hamid et al 2002)。ARVC罹患者に局所的な左心室機能障害が同定された心臓MRIの研究もある(Sen-Chowdhry et al 2006, Jain et al 2010)。遅延造影効果が左心室に見られる事もある(Marra et al 2012)。

症状。最も共通してみられる症状は、心悸亢進、失神、死亡である。予想通り、発端者/初発症例では、より深刻な症状となる。浸透率参照。

診断時年齢と生存率。ARVCは、一般には成人に現れるが、10歳代の子供に現れる事もある。ARVCの罹患者を追跡した2つの長期間の研究では、追跡6年目の生存率は72%より高い事を示している。ARVC全体では、移植を必要とする症例と心疾患による死亡率は5%未満である(Bhonsale et al 2015, Groeneweg et al 2015)。

性差。男性の方が、ARVCの発端者としてみつかりやすい一方、女性は、大規模コホート調査において、患者のほぼ半分を占める(45%)(Bhonsale et al 2015)。遺伝学的に確認されたARVC罹患者の多変量解析では、男性は不整脈イベントとの相関が高かった(Protonotarios et al 2016)。

進行。ARVCの4種類の段階(Dalal et al 2006):

  1. 潜伏期間(ARVCの臨床的症状はないが、心臓突然死のリスクの可能性がある。) 
  2. 明白な電気的障害(症状のある不整脈を特徴とする)
  3. 右室不全
  4. 両室のポンプ不全(拡張型心筋症に類似)(Dalal et al 2006)

左心室への関与は、上記の何れの段階においても起こりうる。(Sen-Chowdhry et al 2007)

不整脈の症状。不整脈の症状は、動悸、失神、異所性心室興奮あるいは、持続性ないし非持続性の心室頻拍に起因する失神性めまいを含む。

不整脈と突然死。不整脈原性心筋症の主な特徴は、明白な心室の機能低下がなくても、心室不整脈と突然死を起こす傾向があることである。ARVCで突然死のリスクが高まるのは、突発性心室不整脈に関連すると考えられる。 

ARVCにおける不整脈の性質を調査した研究には、下記のものがある:

  • Bhonsale et al(2015)は、541人を評価した(220人の発端者と321人の家族)。一次評価の時点では53%は無症状であった。持続性の心室頻拍の症状が25%にみられたが、発端者では54%であったのに対し、家族では4%だった。発症年齢の中央値は30歳である。(10歳〜84歳の範囲)コホート全体では、6年以上の追跡期間中、30%に自発的な持続性の心室頻拍の症状が現れた。
     
  • Rigato et al(2013)は113人のコホート調査を実施した。このうち、84%は単一のデスモゾーム関連遺伝子のバリアントを持ち、16%は複合ヘテロ接合性ないし二遺伝子遺伝だった。平均39年の観察期間を通じて、16%に主要な不整脈イベントが見られた。イベントを起こす特定のリスク要因は、男性であることと複数の遺伝子バリアントを持つことが指摘されている。
     
  • Groeneweg et al (2015)は、特別委員会の診断基準に合致する439人と、その家族562人のコホート調査での結果をレビューした。中央値7年の追跡期間中に、生存する発端者の72%は持続性心室不整脈を経験した。病的バリアントを持つ発端者の家族のうち、11%が追跡期間中に心室不整脈を経験した。
     
  • Protonotarios et al (2016)は、デスモゾーム関連遺伝子のバリアントを持つ105人を追跡し、不整脈イベントは女性よりも男性に多いことを確認した。さらに、41%は29歳までに初期の不整脈イベントを経験した(21歳〜46歳の範囲)。注目に値する内容としては、デスモゾーム関連遺伝子のバリアントが認められる患者において、特別委員会による診断基準を用いた確定診断は、不整脈イベントの発生に対して57%の陽性的中率と100%の陰性的中率を示した。

心筋症。Bhonsale et al(2015)によって実施されたARVC罹患者のコホート調査では、追跡期間中に全体の14%が左心室の機能障害、5%が心不全を発症した。

遺伝型と表現型の相関

特定のARVC遺伝型と臨床結果との関係性から、いくつかの遺伝型と表現型との関連が明らかになっている。一つ目の所見は、DSPのバリアントは、左心室の機能障害に関連する可能性がある(Lopez-Ayala et al 2014, Bhonsale et al 2015)。二つ目の所見は、一つ以上のバリアントの存在が、不整脈の質と心筋症の進行を増悪させる事である(Bao et al 2013, Rigato et al 2013, Bhonsale et al 2015, Groeneweg et al 2015)。PKP2の病的バリアントは、心室頻拍に関連する可能性が示唆されている(Bao et al 2013)。

浸透率

発端者は、彼らの家族よりも心室不整脈を起こしやすい(Groeneweg et al 2015)。病的バリアントを有する家族の中で、385人のうち324人は無症状で、これら324人の無症状者の内221人(68%)は特別委員会の診断基準を満たさなかった。従って、心室不整脈の浸透率は、この疾患では比較的低い。

病名

不整脈原性右室心筋症(Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy : ARVC)は、ウール病(Uhl anomaly)や右室異形成症など多数の名前があった。1996年まで、ARVCは、不整脈原性右室異形成症(arrhythmogenic right ventricular dysplasia: ARVD)と呼ばれていた (Richardson et al 1996)。現在はARVCという用語がよく使われている。

頻度

ARVCの頻度は、一般集団において1000人に1人から1250人に1人と推定されている(Peters 2006)。
ARVCの頻度は、地域によってはこれよりも高い所がある。イタリアやギリシャ(ナクソス島)では、0.4%〜0.8%高い割合で見られる(Thiene & Basso 2001)。


遺伝的に関連する(アレルに関連する)疾患

Table 2参照。注釈:他の表現型は、DSG2PKP2TMEM43の変異とは関連しない。

2
アレルに関連する疾患

遺伝子 表現型1
DSC2 両親が近親婚である2人のきょうだいでは、ARVC、軽度の掌蹠角化症、羊毛状毛髪がみられた。このきょうだいは、塩基対が欠失したホモ接合型だった。2
DSP カルバハル症候群(心室拡張型心筋症、掌蹠角化症、羊毛状毛髪)は、ホモ接合性の病的バリアントに関連する。
JUP ナクソス病(掌蹠角化症、特有の羊毛状毛髪を伴うARVC)は、ホモ接合性の病的バリアント4により起こる。青年期までに発症する。5
RYR2 常染色体優性遺伝疾患であるカテコールアミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)は、器質的心疾患とQT延長は認めず、ストレスに関連した両方向性心室頻拍を特徴とする。CPVTは、幼年期や青年期に失神を伴い現れる可能性がある。RYR2の変異は、早期の心臓死と関連がある。6,7
  1. ハイパーリンクのGeneReview、OMIM phonotype entry、ないし、詳細は引用文献参照。
  2. Simpson et al (2009)
  3. Carvajal-Huerta (1998), Norgette et al (2000), Groeneweg et al (2013), Lopez-Ayala et al (2014), Pugh et al (2014)
  4. McKoy et al(2000)
  5. Protonotarios et al (2001)
  6. CPVTとARVCの表現型は、連続性を示す事が示唆されている。しかし、 CPVTとARVCを罹患する家族については報告されておらず、特有のRYR2病的バリアントは、それぞれの疾患に関連している。従って、RYR2の病的バリアントを有する個人がすべて、ARVCを罹患する者としてではなく、CPVTを罹患する者として分類されるべきかどうかは議論されている。
  7. QT延長症候群(LQTS)に関連する5つの遺伝子に病的バリアントが同定されなかった「異常な」または「境界線」のQT延長症候群を罹患する人々において、RYR2の病的バリアントが確認されている(Tester et al 2005)。

鑑別診断

ARVCと前極白内障(APC。ARVCと、水晶体が混濁する稀な遺伝形式である嚢下白内障に罹患した一家族についての報告がある (Frances et al 1997)。発端者と彼の姉(妹)は、ARVCとAPCに罹患した。APCの責任遺伝子は14q24qterと過去に関連付けられている。このきょうだいの両親は、又いとこであった(OMIM 115650)。

DESDESの病的バリアントは、下記のものと関連する。

  • 家族内での、骨格筋障害、拡張型心筋症、ARVC(1994 年のARVC 診断基準による)の表現型(van Tintelen et al 2009, Otten et al 2010)
  • 心臓伝導障害の有無を問わず、骨格筋障害(Myofibrillar Myopathy参照)または拡張型心筋症
  • 心臓伝導障害の有無を問わず、筋疾患と心筋症の併発(Goldfarb et al 1998, Dalakas et al 2000)

特有のDESバリアントがARVCの表現型の原因となるかどうかについては、現時点では不明である。しかし、デスミンタンパクの最初と最後をコードするDESの遺伝子領域の病的バリアントは、デスミノパシーに関連するARVCを引き起こす原因として同定されている(van Tintelen et al 2009, Otten et al 2010)。

心筋症。心筋症の多くの病態は、ARVCの様々な面で似ている。心筋症は、遺伝、毒性物質、免疫学的要因に起因して発症する可能性がある。臨床検査は、ARVCと心筋症との鑑別に有用である。Dilated Cardiomyopathy Overview参照。

活動型心筋炎。急性心筋炎は、心筋の炎症によって定義される。心筋炎は、毒性物質ないし免疫学的要因、あるいはウイルス性または他の病原体暴露に起因する可能性がある。臨床検査は、ARVCと心筋炎との鑑別に有用である。

冠動脈疾患と心筋梗塞。冠動脈疾患またはアテローム性冠動脈狭窄は、ARVCの症状に似た急性あるいは慢性の虚血状態を引き起こす事がある。臨床検査は、ARVCとこれらの症状を鑑別するのに有用である。

右室流出路頻拍(RVOTは、ARVCにみられる構造的心疾患とは概して関連のない、臨床的不整脈の状態である。心電図と心臓画像診断は、これらの疾患の鑑別に有用である。

ブルガダ症候群は、心電図上のV1-V3誘導のST部分の異常、心室不整脈の高リスク、突然死を特徴とする。ARVCとの無視できない臨床的重複がみられることがある。識別要因: ARVCに特徴的な右心室拡張や線維化脂肪組織の浸潤は、ブルガダ症候群では滅多にみられない。

サルコイドーシス。ARVCの心臓の特徴である線維化脂肪組織の浸潤は、心臓サルコイドーシスにおいてMRIで確認される非乾酪性肉芽腫に似ている(Dechering et al 2013)。

激しい運動。ARVCは、心臓突然死に至るアスリートの4%〜22%に現れる(Corrado et al 2003, Maron et al 2009)。非常に激しい持続性の運動がARVCの症候を促進するかどうかについては、いくつか議論がある。La Gerche et al(2010)は、右室由来の不整脈の既住歴があるアスリートが、1994年の診断基準を満たすか検証するための研究を実施した(McKenna et al 1994)。デスモゾームタンパク質をコードする5つの遺伝子(DSC2DSG2DSPJUPPKP2)のシークエンス解析では、予期されるバリアントの割合よりも低いことが明らかとなり、特に最も運動をするアスリートにその傾向が見られた。最近では、ARVC罹患者の研究で、激しい運動(例:持久性のランニング)の経験がある人ほど、若くしてARVCを発症することがわかった(James et al 2013)。


臨床的マネジメント

初回診断後の評価

不整脈原性右室異形成症/心筋症(ARVC)と診断された人の病気の程度とニーズを評価するために、診断時に実施されていなければ、下記の検査が推奨される。

  • 心電図
  • 画像評価センターの専門的技術による心エコー図やMRI
  • 非侵襲的なモニター。心調律は、ホルター心電図やイベントモニターによって、非侵襲的にモニターされる。これは、非持続性の心室頻拍を含む心室異所性興奮を検出する効果的な方法である。植込み型ループ式心電計もまた、ARVCに罹患しつつも不整脈のリスクが明らかでない人に使用される。加算平均心電図も有用である(Philips & Cheng 2016)。
  • 心室不整脈とデバイスの挿入(例:植込み型除細動器)の適合性のリスク評価をするための電気生理学検査。異常な心拍動を引き起こす組織への心臓カテーテルアブレーションは、電気生理学検査中に実施される。しかし、原発性心室頻拍は多数の箇所に起こるため、アブレーションはARVCの罹患者には長期間有効ではない可能性がある。

症状の治療

罹患者は、ARVCについて知識のある循環器専門医によって継続的に診察されるべきである。ARVCの罹患者は様々な経過をたどり、不整脈のリスクを予測するための臨床的所見の特異性が限られているため、そのマネジメントは複雑である。マネジメントは、個別に、詳細な臨床的かつ遺伝的検査の具体的な結果を基になされるべきである。

  • マネジメントは、失神、心停止、突然死の予防に焦点をおく(初期症状の予防参照)。
  • β阻害薬は、第一選択療法として考慮される。効能は、無作為抽出の前向き臨床試験において確認されてはいないものの、β阻害薬は推奨される(Yancy et al 2013, Corrado et al 2015)。
  • アミオダロンも効果がある可能性がある(Corrado et al 2015)。
  • 不整脈防止の主軸は植込み式装置とマネジメントによる。植込み式装置とその管理についてのリスク・便益解析は、不整脈の臨床的リスクの層別化と照らし合わせて検討するべきである。

罹患している大人や子供の両親への突然死のリスクについての教育は、治療の重要な一面である。

身体活動—特に通常〜激しい運動は、ARVCとそれに関連した不整脈を促進すると考えられる。従って、完全にARVCと診断された人には、通常、長期の運動や競争的なスポーツに参加する機会を減らす、あるいは避ける事を勧める(James et al 2013)。激しい運動はARVCの発症を早めるという考えを支持するように、Ruwald et al (2015)は、競争的なスポーツへの参加歴は、早期発症と関連している事を報告した。これらの発見は、確認できる遺伝的体質がなくても、激しい運動がARVCを引き起こす可能性があるという考えを支持している。

心臓移植は、ARVCが右室または左室の心不全まで進行している際に考慮される。拡張型心筋症に類似する、重度で広汎性の、両室が関与するような状態まで進行し、心臓移植が必要とされることは稀である。

初期症状の予防

前向き無作為化試験は、ARVC患者の不整脈の予防については行われていない。マネジメントは、臨床的評価を基にした個別の推奨事項に頼っている。

植込み型除細動器(ICDs。観察研究では、ICDの植込みは、ARVCにおいて心臓突然死のリスクを軽減させる効果があることを支持している。ICDの植込みは、ARVCの臨床的診断を受けたすべての人に考慮されるべきである。Corrado et al (2010)は、診断基準に適合したARVCの罹患者106人に施術したICDの植込み術の結果を報告した。不整脈のリスク要因を失神、突然死の家族歴、非持続性の心室頻拍と定義し、これらの症状のある者を対象に、装置の移植時に心室頻拍もしくは心室細動が電気生理学に誘導可能かどうかを評価し、装置の植込みを行った。58ヶ月の追跡期間において、対象者のうち24%でICDが適切な放電をしたことが確認されている。ICDの適切な放電は失神によって予測される事がわかった。一次予防のためのICD植込みの適否は、未だ議論の対象である (Zorzi et al 2016)。

ACC・AHA(アメリカ心臓病学会・アメリカ心臓協会)とヨーロッパ心臓病学会(ESC)のガイドラインでは、経験と先行報告に基づき、持続性心室頻拍ないしは心室細動が記録された個人において、ICD植込み術により健全な状態で少なくとも一年以上の生存が見込め、心臓突然死の防止が可能だと見込める場合は、Class Tに分類(すなわち処置・治療が行われるべきとして推奨)される。ICD植込み術がClass Uに分類(つまり処置・治療を行うことが妥当であると)される状況には、広範な疾患(例:左心室まで関与している場合)、突然死の家族歴がある、あるいは個人が最適の医学療法を受けながらも、原因が同定されていない失神を経験し、心室細動ないしは心室頻拍が失神の原因として除外できずにいる場合などが含まれる(Tracy et al 2013, Priori et al 2015)。

経過観察

ARVCと診断された人において、心疾患の程度のスクリーニング検査によって経時的に重症度と病気の進行度を確認する事は必須である。スクリーニング検査の推奨事項:

  • 症状により、年に一回かそれ以上の心電図
  • 症状により、年に一回かそれ以上の心エコー図、
  • ホルター心電図、イベントモニター、植込み型ループ式心電計
  • 運動負荷試験
  • 心臓MRI;頻度は症状と所見による

避けるべき薬剤と環境

右心に負担を与える原因になるので、ARVC罹患者は、競争的なスポーツを含む激しい運動への参加は控えるべきである(Corrado et al 2015)。

リスクのある血縁者の診断

罹患率と死亡率は、早期の診断と治療により軽減されるので、病的バリアントが罹患家族に確認されている場合、ARVCのリスクのある血縁者(18歳未満であっても)に分子遺伝学的検査を提供する事は適切である。発症前診断は、正式な遺伝カウンセリングの中で提案されるべきである。

注釈:二遺伝子性のヘテロ接合(2つの異なる遺伝子におけるヘテロ接合性の病的バリアント)が高率で存在するため、また遺伝子検査の収率を上げるために、発端者の最初の分子遺伝学的検査は、ARVC関連遺伝子を遺伝子パネルとして包含するべきである(Barahona-Dussault et al 2010, Bauce et al 2010, Christensen et al 2010, Xu et al 2010, Nakajima et al 2012)。1つ(あるいはそれ以上)の家族特有のバリアントが確認されれば、対象となるバリアントの検査を血縁者に実施する。

ARVCのリスクのある無症状の第一度近親者に対する、心疾患スクリーニング検査のガイドラインがある(Hershberger et al 2009, Charron et al 2010)。:

  • 家族特有のバリアントが確認されている場合、無症状のリスクのある血縁者には、10歳から50歳の間、年1回の心疾患スクリーニング検査が推奨される。
  • 罹患家族に遺伝子検査が実施されていない、もしくは病的バリアントが確認されなかった場合、無症状のリスクがある第一度近親者に対して、心疾患スクリーニング検査を、10歳以降、3〜5年ごとに実施することが推奨される。

心疾患スクリーニング検査には、下記のものが含まれる(Hershberger et al 2009, Charron et al 2010):

  • 心不全の症状、不整脈、失神性めまい、失神に注目した既住歴
  • 心電図、加算平均心電図も考慮する
  • 心エコー図
  • ホルター心電図
  • 心臓MRI

リスクのある第一度近親者は、臨床スクリーニング検査で心臓に関わる何らかの異常が発見された場合、一年以内に再度スクリーニング検査を受けることを検討すべきである(Hershberger et al 2009)。

ARVCの症状は、通常10歳未満の子供には見られないので、その年齢の子供には、一般的にはスクリーニング検査は行われない。若年層におけるARVCのスクリーニング検査のレビューについてはHamilton & Fidler(2009)参照。若年層におけるARVCの最近のMRI研究では、MRIの感度が上がっても、10歳未満の子供においてARVCを確認することは、まだ稀であることが示された(Etoom et al 2015)。

遺伝カウンセリングに関して、リスクのある血縁者の検査に関する問題については遺伝カウンセリング参照。

妊娠中のマネジメント

症例報告では、ARVC罹患女性の妊娠および出産に関する成功例の報告がある(Agir et al 2014, Cozzolino et al 2014)。妊娠期間中のARVCのマネジメントについての特別なガイドラインはまとめられてない。しかし、罹患者は多くの学問領域にわたるチームによって、モニターされる必要がある。

研究中の治療

広範囲の疾患と症状についての臨床試験情報の詳細のアクセスへは、USにおいてはClinicalTrials.govを、ヨーロッパにおいてはwww.ClinicalTrialsRegister.euを検索。注釈:この疾患に対する臨床試験はないと思われる。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

不整脈原性右室心筋症(ARVC)は、通常、常染色体優性遺伝形式で受け継がれる。また、二遺伝子性あるいは、常染色体劣性形式をとることもある。

発端者がナクソス病やカルバハル症候群のようなARVCに関連する特定の症候群に罹患している場合、常染色体劣性形式に関するカウンセリングが必要となる。

患者家族のリスク―常染色体優性遺伝

発端者の両親

  • 常染色体優性のARVCと診断された人は、片親からヘテロ接合性の病的バリアントを受け継いでいる場合がある。
    • 発端者が同じARVC関連の遺伝子で2つの病的バリアントを持っている場合、両親ともヘテロ接合性である可能性があり、場合によっては稀に片親が同じアレルに2つの病的バリアントを持っていることもある。
    • 正確な遺伝形質を把握し、リスクカウンセリングを可能にするために、両親は確認のための遺伝子検査を行うべきである。この遺伝形質が、どのくらいの頻度で片親または両親から受け継がれるかは、まだはっきりとわかっていない。
  • ARVC病的バリアントのヘテロ接合体を持つ両親は、臨床的所見が有ることもあればと無いこともある。
  • 常染色体優性のARVCの発端者は、de novoの病的バリアントの結果として疾患を発症する可能性がある。de novoの病的バリアントによって発症したケースの割合は、不明である。

  • 病的バリアントがde novoであるかもしれない発端者の両親(つまり、どちらの親も罹患していない場合)の評価については、病的バリアントが発端者に確認されていれば、心臓MRI、心エコー図、心電図、分子遺伝学的検査などが推奨される。
  • ARVCを罹患する家族歴については、発症前の親の早期死亡、病的バリアントをもつ親の発症の遅れや浸透率の低さにより家族内での疾患に気づかず、陰性となる可能性がある。

発端者の同胞

  • 発端者の同胞へのリスクは、発端者の両親の遺伝的状態による。
    • 発端者の片親に症状がみられる、または病的バリアントを持つ場合、同胞が病的バリアントを受け継ぐリスクは、50%である。両親が病的バリアントを持つ場合、同胞が2つの病的バリアントを受け継ぐリスクは25%、1つの病的バリアントでは50%で、どちらのバリアントも受け継がない可能性は25%である。
    • 両親が臨床的に発症していない場合、発端者の同胞へのリスクはより低くなる。表現度に幅があり、浸透率が低くなることが一般的である。
  • 生殖細胞系列モザイクは報告されていないが、可能性がないわけではない。

発端者の子

  • 1つのARVC関連の病的バリアントを持つ個人の子供が病的バリアントを受け継ぐ可能性は、それぞれ50%である。
  • 2つのアレルにARVC関連の病的バリアントを持つ個人の子供は、それぞれ1つの病的バリアントを受け継ぐであろう。

他の家族

他の家族へのリスクは発端者の両親の状態による。片親に症状が見受けられる、または病的バリアントを持つ場合、その家系の家族はリスクを抱える。

家族のリスク―常染色体劣性遺伝

二遺伝子性のARVCは、2つの病的バリアントがあることによって起こる。1つのARVC関連の遺伝子における1つのバリアントと、異なるARVC関連の遺伝子におけるもう1つのバリアントである。二遺伝子遺伝の割合は、4〜47%と多様に見積もられている(Xu et al 2010, Bao et al 2013, Rigato et al 2013, Bhosale et al 2015, Groeneweg et al 2015)。

発端者の両親

  • 一般的には、片親が1つの遺伝子でARVC関連の病的バリアントを持ち、もう片方の親が異なる遺伝子でARVC関連の病的バリアントを持つ。しかし、片親が両方の病的バリアントを持っている可能性もある為、両親とも確認のための遺伝子検査を受けるべきである。

 ・両親は臨床的所見のある場合もあれば、ない場合もある。

発端者の同胞

  • それぞれの親が1つの病的バリアントを持っていると仮定して、各々の同胞が1つまたは2つのARVC関連のバリアントを受け継ぐ(ARVC発症のリスクが増加する)可能性は75%で、病的バリアントを受け継がない(罹患しない)可能性は、25%である。

発端者の子 

子供が1つまたは2つの病的バリアントを受け継ぐリスクは、75%である。

ほかの血縁者

発端者の両親の各々の同胞は、発端者の親の遺伝子の状態によって、0、1つまたは2つのARVC関連の病的バリアントを持つ可能性がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

早期の診断と治療の目的のためにリスクのある血縁者を評価することに関する詳細については、Management, Evaluation of Relatives at Riskを参照。

de novoの病的バリアントが疑われる罹患者の家族に対する考慮常染色体優性遺伝の発端者の親が、発端者に確認された病的バリアントを持たず、疾患の臨床的証拠がない場合、病的バリアントはおそらくde novoである。しかし、父親が異なるあるいは代理母(例:生殖補助医療によるもの)や開示されていない養子縁組のような非医学的な説明による可能性も念頭におく必要がある。

家族計画

  • 遺伝的リスクの判断や出生前検査の利用可能性についての話し合いは,妊娠前に行うのが望ましい。
  • 罹患している、またリスクのある若年成人に遺伝カウンセリング(子どもがリスクを持つ可能性や生殖医療における選択肢に関する検討を含む)を提案する事は適切である。

DNAバンクは、将来的に利用するために(通常は白血球から抽出した)DNAを保管しておくことである。検査方法と遺伝子,アレルの変異,疾患への理解は将来改善する可能性が高いので、罹患者のDNAを保管しておくことは考慮されるべきである。

出生前検査と着床前の遺伝的診断

ARVC関連の病的バリアントが罹患家族員に確認されれば、リスクの高い妊娠に対する出生前検査や着床前のARVC遺伝学的検査を提供することは可能である。

訳注:一般に本症に対して出生前診断の適応があるとは考えられていない.

特に出生前検査が早期診断よりもむしろ妊娠中絶の目的のために考慮される場合、医療従事者や家族内での見解の違いがみられることがある。大抵の医療機関では出生前検査については両親の判断に任せるとしながらも、この問題については話し合うことが適切である。

訳注:日本では行われない.


関連情報

GeneReviewsの担当者は、疾患を持つ個人やその家族のために、下記の疾患特異的支持組織や登録所を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供された情報への責任は負わない。情報の選択基準の詳細は、ここをクリック。

  • My46 Trait Profile
             不整脈原性右室心筋症
  • American Heart Association (AHA)(アメリカ心臓協会)
    7272 Greenville Avenue
    Dallas TX 75231
    電話番号:800-242-8721(フリーダイヤル)
    Email: review.personal.info@heart.org
    www.americanheart.org
  • Sudden Arrhythmia Death Syndromes (SADS) Foundation (不整脈突然死症候群財団)
    508 East South Temple
    Suite#202
     alt Lake City UT 84102
    電話番号:800-786-7723(フリーダイヤル);801-531-0937
    Email: sads@sads.org
    www.sads.org
  • ARVD Patient Registry (ARVC患者登録所)
    The Johns Hopkins Hospital(ジョンホプキンス病院)
    600 North Wolfe Street
    Carnegie 592
    Baltimore
    電話番号:410-502-7161 
    Fax: 410-502-9148
    mail: ctichnell@jhmi.edu
    ARVC患者登録所
  • North American ARVD Registry(北アメリカARVD登録所)
    1501 North Campbell
    Room 5153
    PO Box 245037
    Tucson AZ 85724-5037
    電話番号:520-626-1416
    Fax: 520-626-4333
    mail: kgear@email.arizona.edu;fmarcus@shc.arizona.edu
    www.arvd.org

分子遺伝学

下記の記述は最新の情報が含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なる場合がある。

表 A.
不整脈原性右室心筋症:遺伝子とデータベース

 

座位名 遺伝子 染色体座位 タンパク質 座位特異的データベース HGMD ClinVar
ARVD1 TGFB3 14q24.3 トランスフォーミング増殖因子β3 TGFB3@LOVD
 ARVD/C遺伝的バリアントデータベース(TGFB3)
Loeys-Dietz 症候群変異データベース-TDFB3
TGFB3 TGFB3
ARVD2 RYR2 1q43 リアノジン受容体2 心臓関連遺伝子−リアノジン受容体変異データベース
RYR2データベース
RYR2 RYR2
ARVD3 不明 14q12-q22 不明      
ARVD4 不明 2q32.1-q32.3 不明      
ARVD5 TMEM43 3p25.1 膜貫通タンパク質43 TMEM43@LOVD
ARVD/C遺伝的バリアントデータベース(TMEM43)
TMEM43 TMEM43
ARVD6 不明 10p14-p12 不明      
ARVD7 不明 10q23.2 不明      
ARVD8 DSP 6p24.3 デスモプラーキン DSP@LOVD
ARVD/C 遺伝的バリアントデータベース(DSP)
心臓関連遺伝子−デスモプラーキン(DSP)
DSP DSP
ARVD9 PKP2 12p11.21 プラコフィリン2 PKP2@LOVDARVD/C
遺伝的バリアントデータベース(PKP2)
心臓関連遺伝子−プラコフィリン変異データベース(PKP2)
PKP2 PKP2
ARVD10 DSG2 18q12.1 デスモグレイン2 DSG2@LOVD
ARVD/C 遺伝的バリアントデータベース(DSG2)
DSG2 DSG2
ARVD11 DSC2 18q12.1 デスモコリン2 DSC2@LOVD
ARVD/C 遺伝的バリアントデータベース(DSC2)
DSC2 DSC2
ARVD12 JUP 17q21.2 ジャンクション プラコグロビン JUP@LOVD 
ARVD/C 遺伝的バリアントデータベース(JUP)  
心臓関連遺伝子;ナクソス病データベース(JUP)
JUP JUP

データは以下の標準的参考資料をもとに作成した。遺伝子はHGNC;染色体座位はOMIM;タンパク質はUniProt。リンク先が提供されたデータベース(座位特異的、HGMD, ClinVar)の解説は、ここをクリック。

Table B
OMIMにおける不整脈原性右室心筋症(OMIMを全て参照)

107970

不整脈原性右室異形成症、家族性、1;ARVD1

125645

デスモコリン2;DSC2

125647

デスモプラーキン;DSP

125671

デスモグレイン2;DSG2

173325

ジャンクション プラコグロビン;JUP

180902

リアノジン受容体2;RYR2

190230

トランスフォーミング増殖因子、ベータ3;TGFB3

600996

不整脈原性右室異形成症、家族性、2;ARVD2

602086

不整脈原性右室異形成症、家族性、3;ARVD3

602087

不整脈原性右室異形成症、家族性、4;ARVD4

602861

プラコフィリン2;

604400

不整脈原性右室異形成症、家族性、5;ARVD5

604401

不整脈原性右室異形成症、家族性、6;ARVD6

607450

不整脈原性右室異形成症、家族性、8;ARVD8

609040

不整脈原性右室異形成症、家族性、9;ARVD9

609160

未確認

610193

不整脈原性右室異形成症、家族性、1族;ARVD10

610476

不整脈原性右室異形成症、家族性、11;ARVD11

611528

不整脈原性右室異形成症、家族性、12;ARVD12

612048

膜貫通タンパク質43;TMEM43

分子遺伝学的病因

細胞間結合の障害は、不整脈原性右室心筋症(ARVC)を引き起こす1つの病因である。これは、デスモゾームタンパク質である、デスモプラーキン(DSP)、デスモコリン2(DSC2)、デスモグレイン2(DSG2)、プラコフィリン2(PKP2)、αカテニン(CTNNA3)、プラコグロビン(JUP)をコードしているARVC関連遺伝子のサブセットにおける、病的バリアントによって起こると考えられる。

RYR2の病的バリアントが示すカルシウムの恒常性の変化は、ARVCの別の発病経路を規定する。RYR2は、筋小胞体からの カルシウム放出と興奮収縮連関の調整において重要な役割を担っている。細胞間のカルシウム含有量の減少と興奮収縮連関の変化により、不整脈を起こしやすくなる可能性がある。加えて、細胞間のカルシウムの減少は、細胞壊死や線維化と脂肪組織への置換の促進をもたらす可能性がある(Tiso et al 2001)。

遺伝子のバリアントのデータベースは、Leiden Open Variation Databaseあるいは、ARVD/C遺伝的バリアントデータベースで参照できる。(www.arvcdatabase.info)(van der Zwaag et al 2009, Lazzarini et al 2015)(このデータベースへのリンクは、LSDBの項のTable Aで参照できる。)

多数の研究結果にて示唆されているように、過去に病的バリアントとして見られたものが一般集団にもみられるようなこともあるため、ARVCの病因である配列の変化を解釈することは困難である(Kapplinger et al 2011, Lahtinen et al 2011, Andreasen et al 2013)。遺伝的バリアントの病原性の判断は、常に表現型を注意深く観察した上でなされなければならない。

DSC2

遺伝子の構造

転写バリアントNM_024422.4は、16のエクソンを有し、より長いデスモコリン1タンパク質のアイソフォームであるDSC2a(NP_077740.1)をコードする。転写バリアントNM_004949.4は、フレームシフトの結果として3’末端に追加のエクソンを有し、より短いデスモコリン1タンパク質のアイソフォームであるDSCb(NP_004940.1)をコードする。遺伝子とタンパク質の情報の詳細な概要については、Table A、遺伝子を参照。

病的バリアント

50種以上の病的バリアントが報告されている(Table A、座位特異的参照)。加えて、DSC2バリアントと他のデスモゾーム関連遺伝子変異(Bhuiyan et al 2009, Groeneweg et al 2015)との間に、複合へテロ接合(Lorenzon et al 2015)やホモ接合(Wong et al 2014)の二遺伝子遺伝の多くの実例がみつかっている。

正常な遺伝子産物

デスモコリン2(DSC2)は、デスモゾームの組織の中に広範に現れるが、三種類あるデスモコリンのアイソフォームのうち心臓組織に現れるのはこのDSC2のみである。DSC2は、エクソン16の交互のスプライシングによって生成されるDSC2a とDSC2bの2つの形態がみられる。プレプロタンパク質は、それぞれ901個と847個のアミノ酸からなり、プロセッシングでタンパク分解を受け、成熟タンパク質をつくる。Ca2+依存的に細胞外領域と細胞質領域を通してデスモグレインと結合するデスモコリンは、プラコグロビンの結合部位を有する。

異常な遺伝子産物

DSC2aのカルボキシル末端ドメインの最後の37のアミノ酸残基が不足しているデスモコリンの病原性アイソフォームは、プラコグロビンと結合する事ができない。バリアントがどのようにデスモゾームの形態に影響をあたえるのかは不明であるが、結果としてデスモゾームの構造と機能を阻害すると推測さていれる。

DSG2

遺伝子の構造

この遺伝子は、48.6kbにわたる15のエクソンをもつ。転写物は、NM_001943.4である。遺伝子とタンパク質の情報の詳細については、Table A、遺伝子を参照。

良性バリアント

DSG2では、20種以上の良性バリアントが報告されている(www.arvcdatabase.info)。

病的バリアント

20種以上の病的バリアントが報告されている(Table A、座位特異的参照)。加えて、他のデスモゾーム関連遺伝子変異との間に、二遺伝子遺伝の多くの実例がみつかっている。(Rigato et al 2013, Groeneweg et al 2015)。複合ヘテロ接合性バリアントのARVC について、両アレル遺伝についても報告されている(Awad et al 2006, Pilichou et al 2006, Bhuiyan et al 2009)。

正常な遺伝子産物

デスモグレイン2(DSG2)は、デスモグレインファミリーの1つであり、デスモゾームの必須成分である。DSG2は心筋に発現する(Awad et al 2006, Pilichou et al 2006)。プレプロタンパク質は、1118種のアミノ酸を持ち(NP_001934.2)、プロセッシングでタンパク分解を受けて成熟糖タンパク質をつくる。

常な遺伝子産物

DSG2の病的バリアントの根本的な病因の多くは未だに不明であるが、DSG2の発現低下が、心筋細胞間の細胞同士の接着を阻害すると考えられている(Kant et al 2015)。

DSP

遺伝子構造

最も長い転写バリアント(NM_004415.3)は、24のエクソンからなり、2871個のアミノ酸からなるデスモプラーキンタンパク質をコードする(NP_004406.2)。遺伝子とタンパク質の情報の詳細については、Table A、遺伝子を参照。

良性バリアント

DSPでは少なくとも7つの異なる良性バリアントが確認されており、主にスプライスコンセンサス領域のミスセンス変異である。(Barahona-Dussault et al 2010)

病的バリアント

80種以上の病的バリアントが報告されている(Table A、座位特異的参照)。加えて、他のデスモゾーム関連遺伝子変異との間に、二遺伝子遺伝の多くの実例がみつかっている。(Rigato et al 2013, Groeneweg et al 2015)。

正常な遺伝子産物

デスモプラーキンは、デスモゾームの構成分子である。デスモゾームは、特に上皮細胞と心筋細胞に多く発現する、主要な細胞間結合物質である(Gallicano et al 1998, Smith & Fuchs 1998)。デスモプラーキンは、プラコグロビンと共にデスモゾームカドヘリンに定着し、非膜貫通タンパク質の秩序配列を形作り、ケラチン中間径フィラメントと結合する(Kowalczyk et al 1997, Smith & Fuchs 1998, Leung et al 2002)。デスモゾーム内で、デスモプラーキンは、カドヘリン、プラコグロビン、PKP複合体と中間径フィラメントを結合する。デスモプラーキンの構造は、大きなN末端ドメインであり、中間径フィラメントと結合するC末端領域と二量体化する中央コイルドコイル桿状体である(Choi & Weis 2016)。

異常な遺伝子産物

デスモプラーキンの異常は、デスモゾームの不安定性を引き起こす事が推測される。不完全なデスモゾームは、収縮する心筋細胞の中で一定の力学的負荷を維持できず、心機能不全や細胞死を引き起こす(Yang et al 2006)。

デスモプラーキンを欠損させたマウスモデルからのデータは、異常なデスモゾームが、Tcf-Lefl転写因子を通したβカテニンの異常なシグナル伝達を引き起こし、筋細胞の脂肪細胞への脱分化を誘導する事を示唆している(Garcia-Gras et al 2006)。心臓伝導系のDspを欠失させたHcn4-Creアレルを用いてDspを条件付きで欠失させると、洞結節機能不全を引き起こし、心臓伝導系が完全な状態であるためのデスモゾームの重要性が強調された(Mezzano et al 2016)。

JUP

遺伝子の構造

転写バリアントNM_002230.2は、14のエクソンからなり、1番目はコードしない。遺伝子とタンパク質の情報の詳細 については、Table A、遺伝子を参照。

良性バリアント

1つの良性バリアント(c.2089A>T)が、デスモプラーキンのバリアントと共分離するものとして同定されている。トルコ人集団では、2089の位置にある遺伝型の頻度は、TT/AT/AAがそれぞれ0.57/0.37/0.07である。追加のアレル頻度と文献については、ARVD/C Genetic Variants Databaseを参照。良性バリアントc.2089A>Tは、エクソン3の受容体部位の後ろ+4に位置する。これゆえ、Uzumcu et al (2006)は、c.2089Aのホモ接合においてもスプライシングの効果を仮定すると、心臓の表現型に影響しない可能性を除外できなかった。

病的バリアント

15種以上の病的バリアントが報告されている(表 A, 座位特異的参照)。

3

JUPバリアント

バリアントの分類 DNAヌクレオチド変化
(別表記1)
予測されるタンパク質の変化 参照配列
良性 c.2089A>T p.Met967Leu  
病原性 c.116_118dupGCA
(118_119insGCA)
p.Ser39dup  NM_002230.2
NP_002221.1
  c.2038_2039del  (PK2157del2)  p.Trp680GlyfsTer11  

バリアントの分類についての注釈:表に記録されているバリアントは、執筆者によって提供された。GeneReviewsのスタッフは、バリアントの分類を自主的に立証していない。
命名法についての注釈:GeneReviewsは、the Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に従った。命名法の説明については、Quick Referenceを参照。
1. 最新の命名規則に従わないバリアントの称号

正常な遺伝子産物

JUPの転写物NM_002230.2は、ジャンクション・プラコグロビン、γカテニンとしても知られる細胞質タンパク質をコードするものであり、デスモゾームの膜直下プラークと接着帯の両方にみられる。タンパク質は、カドヘリンとデスモゾームカドヘリンと共に、別の複合体を形成する。それは、アルマジロリピートと呼ばれる明瞭なアミノ酸反復モチーフを持つ745個のアミノ酸(NP_002221.1)である。Swope et al(2012)は、プラコグロビンとβカテニンの関係性を、両方の正常なタンパク質が、ギャップ結合が正常に機能するために必要であることを証明した(Swope et al 2012)。

異常な遺伝子産物

罹患者から心筋を生検すると、N-カドヘリンとプラコフィリン-2がコントロールと同等のレベルで発現している。しかし、プラコグロビン、デスモプラーキン、コネキシン43は、介在板で著しく減少した。

In vivoモデルでは、JUPの病的バリアントが、物理的、電気的な細胞間結合の構造と分布に影響を与え、Wntシグナル伝達によって介在される調節メカニズムを妨害した(Asimaki et al 2007)事を示唆している。蛍光レポーターを用いたノックアウトマウス内の遺伝的原基分布図の研究によると、ARVCの脂肪産生細胞の出所は二次心臓領域であり、核プラコグロビン経由でWntシグナル伝達が抑制されることにより、脂肪を産生するようにリプログラミングされることが示唆された(Lombardi et al 2009)。

PKP2

遺伝子の構造

より長い転写バリアントNM_004572.3は、14のエクソンからなる。この座位によく似たprocessed タイプの偽遺伝子が、染色体 12p13の上に位置することに注意したい。遺伝子とタンパク質の情報についての詳細の概要は、Table A、遺伝子参照。

良性バリアント

少なくとも3つの異なる良性バリアントがPKP2で確認されており、すべてミスセンス変異である(Barahona-Dussault et al 2010)。

病的バリアント

全体の欠失を含む170種以上の病的バリアントが報告されている(Li Mura et al 2013, Robert et al 2013)(Table A、座位特異的参照)。PKP2の病的バリアントともう1つのデスモゾーム関連遺伝子変異との間に、二遺伝子遺伝の多くの実例がみつかっている(Cox et al 2011, Bao et al 2013, Bhonsale et al 2015, Groeneweg et al 2015)。

正常な遺伝子産物

NM_004572.3は、881個のアミノ酸(NP_004563.2)からなるプラコフィリン-2のアイソフォーム2bをコードする。デスモプラーキンに類似して、プラコフィリン-2はデスモゾームのタンパク質で、隣接細胞を構造的かつ機能的に正常化させる。

異常な遺伝子産物

プラコフィリンの異常は、細胞間結合を混乱させ、不整脈を引き起こすと考えられている。

TMEM43

遺伝子の構造

TMEM43の転写バリアントNM_024334.2は、400個のアミノ酸(NP_077310.1)からなるタンパク質をコードした12のエクソンで構成される。遺伝子とタンパク質の情報についての詳細の概要は、Table A、遺伝子参照。

病的バリアント

推定上の病的バリアントであるミスセンス変異p.Ser358Leuは、大部分がニューファウンドランドに祖先を持つ多数の家系内で同定された(Merner et al 2008, Christensen et al 2011, Baskin et al 2013)。このバリアントは、心伝導に必須なタンパク質を再配置し、それによって、心伝導速度を低下させるようなギャップ結合機能の変化をもたらす(Siragam et al 2014)。

Table 4

TMEM43の病的バリアント

DNAヌクレオチドの変化 予測されたタンパク質の変化 参照配列
c.1073C>T p.Ser358Leu NM_024334.2 NP_077310.1

バリアントの分類についての注釈:表に記録されているバリアントは、執筆者によって提供されている。GeneReviewsのスタッフは、バリアントの分類を自主的に立証していない。
命名法についての注釈:GeneReviewsは、the Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に従った。命名法の説明については、Quick Referenceを参照。

正常な遺伝子産物

TMEM43は、膜貫通タンパク質43と命名された新規タンパク質をコードするもので、核膜と小胞体の膜組織に限局する。TMEM43は、エミリンとラミンA、Bと相互に作用し、LINC複合体(核骨格と細胞骨格のつなぎ役)の結合相手となりうる(Bengtsson & Otto 2008, Meinke et al 2011)。

異常な遺伝子産物

異常な遺伝子産物の病原性メカニズムは不明である。

追加のARVCの遺伝的要因

Table 1bに記載されている遺伝子についての詳細は、ここをクリック(pdf)。


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Elizabeth McNally, MD, PhD, Heather MacLeod, MS, Lisa Dellefave-Castillo, MS,CGC
    日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科修士課程遺伝カウンセリングコース),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)in present)

原文: Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy

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