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酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症
(Acid Sphingomyelinase Deficiency)

GeneReviews著者: Melissa P Wasserstein, MD and Edward H Schuchman, PhD
日本語訳者: 和田宏来(県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)         

GeneReviews最終更新日: 2015.6.18. 本語訳最終更新日: 2016.11.10.

原文 Acid Sphingomyelinase Deficiency


要約

疾患の特徴 

酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASM欠損症, ニーマン・ピック病)は小児早期に死亡する神経型(ニーマンピック病A型[NPD-A])と非神経型(ニーマンピック病B型[NPD-B])に分類されている。これらの中間型も存在し、症状や重症度には幅があるが、NPD-Aではない全てのASM欠損症をここではNPD-Bと呼ぶことにする。NPD-Aの初発症状は肝脾腫で、通常生後3ヶ月までにおき、経過とともに腫大する。精神運動発達は生後12ヶ月レベルを超えることはなく、それ以降は退行を認める。古典的な黄斑のチェリーレッド斑は出生後数ヶ月間みられないことがあるが、次第に罹患者全員に認めるようになる。肺マクロファージへのスフィンゴミエリン蓄積による間質性肺炎では、反復性呼吸器感染症やしばしば呼吸不全をきたす。多くの患児は3歳前になる前に死亡する。NPD-BはNPD-Aより遅発性で軽症であるが、進行性の脾機能亢進を伴う肝脾腫や安定した肝機能障害、肺機能の緩徐な悪化、骨減少症、動脈硬化をきたす脂質異常などを特徴とする。進行性もしくは臨床的に重大な神経症状はまれである。成人期まで生存しうる。

診断・検査 

SMPD1遺伝子変異の同定、もしくは(末梢血リンパ球もしくは培養皮膚線維芽細胞における)ASM酵素の残存活性が対照群の10%未満であればASM欠損症と診断される。

臨床的マネジメント 

対症療法

  • NPD-A 理学・作業療法、経管栄養、適応があるなら易刺激性や睡眠障害に対して鎮静剤。
  • NPD-B 致死的な出血には輸血、症候性肺疾患に対しては酸素投与、成人期の高脂血症に対する治療、十分なカロリー摂取。

サーベイランス

  • NPD-A 栄養状態および粗大・微細運動能力の定期的な評価。
  • NPD-B 1年に1回(もしくはそれ以上)の評価:小児期の成長と全年齢の体重、活動レベルの変化、出血、息切れ、腹痛、神経学的機能、肝酵素、血小板数、空腹時脂質検査、肺機能、胸部X線、骨粗鬆症の患者では二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)。

避けるべき環境

  • NPD-B 脾腫がある場合はコンタクトスポーツ。

遺伝カウンセリング 

ASM欠損症は常染色体劣性遺伝形式の疾患である。罹患者の子は、罹患する可能性が25%、無症候性キャリアとなる可能性が50%あり、残り25%は罹患しないかキャリアにならない。家族内で双方のSMPD1遺伝子変異があるかどうか不明であるならば、リスクのある近親者がキャリアであるかどうか、リスクある妊娠かどうかの出生前診断を行うことは可能である。ASM酵素活性の検査によっても、25%のリスクがあるか出生前診断が可能である。


診断

ASM欠損症は旧来神経原性もしくは非神経原性に分類されてきた。

  • 神経原性 NPD-Aは、短い発達正常な時期に続いて重篤な神経変性がみられ、小児期早期に死亡する。
  • 非神経原性 NPD-B

しかし、神経所見を認めるが小児期早期を超えて生存する、この2つの中間型というべき例もある。
NPD-Bは重症度もさまざまな幅広い身体所見・神経所見を包含するため、このレビューではNPD-Aに該当しない全てのASM欠損症をNPD-Bと呼ぶこととする。

特徴的な所見

以下のような臨床所見や新生児マススクリーニングの結果によりNPD-Aを疑うべきである。

臨床所見

  • 肝脾腫
  • 発達遅滞
  • 胸部X線で間質性肺疾患の所見がある
  • チェリーレッド斑

以下の所見がある場合に、このレビューで定義したNPD-Bを疑うべきである。

  • 肝脾腫
  • 間質性肺疾患
  • 高脂血症
  • 血小板減少

新生児スクリーニング結果

現在のところ、ニューヨーク州ではNPD-A, NPD-Bを含む4つのライソゾーム病のパイロット新生児スクリーニングを実施している。ハイスループット多重極型タンデム質量分析法を用いて、新生児の乾燥ろ紙血中のASM酵素活性を測定する。他の州ではNPD-A, NPD-Bの新生児スクリーニングの導入を検討している。
ASM欠損症は臨床的見地単独では診断できない。

確定診断

ASM欠損症の診断は、分子遺伝学的検査(表1)によってSMPD1の2つの遺伝子変異のどちらかを同定するか、(末梢血リンパ球もしくは培養皮膚線維芽細胞を用いた)残存ASM酵素活性が対照群の10%未満である場合に確定する。
分子遺伝学的検査には、単一遺伝子検査と多遺伝子パネルを使用した方法がある。

単一遺伝子検査

頻度の高いSMPD1遺伝子変異をよく認める集団(NPD-Aが疑われる重篤な神経変性疾患をもつアシュケナージ系ユダヤ人、NPD-Bの家族歴がある北アフリカ人、チリ人、サウジアラビア人、トルコ人など)においては、

  1. 病原性変異を標的とした遺伝子解析を行う。
  2. 標的遺伝子解析で双方の病原性変異を認めなかった場合には、SMPD1のシークエンス解析が適切である。

前述の集団に該当しない場合は、

  1. シークエンス解析を行う。
  2. 病原性変異がないか1つしか同定されない場合、欠失・重複解析を考慮する。

GENEや他の興味を引く遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含む多遺伝子パネルも考慮する。

注:多遺伝子パネルに含まれる遺伝子や感度は施設や時期により異なる。

表1
ASM欠損症で用いる分子遺伝子学的検査の要約

遺伝子1 検査方法 遺伝子変異同定2の割合
SMPD1 病原性変異の解析3 90%4, 5
シークエンス解析6 >95%7
欠失・重複解析8 不明9
  1. 表A(遺伝子ならびに染色体遺伝子座とタンパク名のデータベース)を参照。
  2. アレル変異の情報に関する「分子遺伝学」の項を参照。
  3. パネルに含まれる遺伝子変異は検査機関によって異なることがある。
  4. NPD-Aでは、アシュケナージ系ユダヤ人における病原性アレルの約90%は3つの変異(p.Arg498Leu, p.Leu304Pro, p.Phe333SerfsTer52)による。
  5. NPD-Bでは、p.Arg610del変異は北アフリカのマグレブ地方(チュニジア、アルジェリア、モロッコなど)における病原性アレルの約90%、グラン・カナリア島の病原性アレルの100%、米国における病原性変異の約20-30%を占める。
  6. シークエンス解析はさまざまな変異(良性、おそらく良性、意義不明、おそらく病原性をもつ、病原性をもつ)を同定する。病原性変異には小さな遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス、ノンセンス、スプライス部位変異などがある。典型的には、エクソンもしくは全遺伝子の欠失や重複は同定されない。シークエンス解析結果の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。
  7. コーディング領域のシークエンス解析により、酵素活性測定で診断されたASM欠損症患者の95%で変異が認められる。
  8. 欠失・重複解析では欠失や重複が同定される。用いられる方法には、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、単一エクソンの欠失/重複を同定するために設計された標的マイクロアレイ法などがある。
  9. SMPD1領域を含む欠失もしくは重複がASM欠損症を起こすことは報告されていない。新しい欠失/重複の検査法は、シークエンス解析では見つからない病原性変異を同定できる可能性はあるが、その確率は明らかではなく、とても低いと思われる。

末梢血もしくは培養皮膚線維芽細胞における酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)酵素活性の測定 :対照群と比較して、罹患者は典型的には酵素の残存活性は10%未満である。

注:(1)SMPD1遺伝子のp.Gln294Lys変異をもつ者は、人工基質を用いた場合に酵素活性が見かけ上正常であることがある。(2)残存酵素活性によって臨床型に関する信頼性のある予測はできない。(3)ASD欠損症の診断は末梢白血球や骨髄検体による酵素活性測定で行うことができるため、肝生検は確定診断には必要ない。

骨髄検査

ASM欠損症では骨髄病変が起こるため、Niemann-Pick病を疑った場合に多くの症例で骨髄検査(および泡沫状マクロファージの検索)が施行されてきた。診断のためには骨髄検査は必ずしも必要ではなく、特別な臨床的な適応がない限りは行うべきではない。


臨床像

臨床症状

ASM欠損症の臨床型は連続的なものであるけれども、歴史的にはNiemann-Pick病A型(NPD-A)と呼ばれてきた重症早期発症型と、この稿でNiemann-Pick病B型(NPD-B)と呼んでいる遅発で軽症の型に区別される。

重症早期発症型(NPD-A)

肝脾腫:ほとんどのNPD-A患児における初発症状は肝脾腫であり、典型的には生後3ヶ月までにあらわれる。神経症状以外には、経口摂取不良、成長障害、消化器症状(便秘、下痢、嘔吐など)、反復性呼吸器感染症、持続性の高トランスアミナーゼ血症、易刺激性などがある。頻回の嘔吐によってカロリー摂取不足となる。
肝脾腫は経過とともに悪化する。次第に、肝臓および脾臓は巨大となる。

肺疾患:肺マクロファージ中のスフィンゴミエリンの蓄積により、胸部X線で間質性肺炎の像を認める。晩期には通常、動脈血液ガスの酸素飽和度低値が認められる。頻回の呼吸器感染症はまれではなく、呼吸不全は死因となりうる。

眼科所見 :ほとんどの小児において、診断時に眼底検査で網膜の変化を認める。網膜神経節細胞への脂質の蓄積により、神経節細胞のない赤い中心窩を囲む神経細胞が白くリング状を呈し、不透明度や径の程度によって、黄斑ハロー、チェリーレッド斑のようにみえる。古典的なチェリーレッド斑は疾患早期には認めないこともあるが、NPD-Aでは経過とともに全員みられるようになる。

神経学的所見:発症時の神経学的所見はわずかに筋緊張低下を認める以外は正常なこともある。筋緊張低下は進行性で、深部腱反射は経過とともに消失する。脳神経機能は保たれる。精神運動発達は生後12ヶ月レベルを超えることはなく、疾患の進行とともに技能は失われる。発達年齢は通常、適応行動は生後10ヶ月を超えず、表現言語は12ヶ月、粗大運動技能は9ヶ月、微細運動技能は10ヶ月を超えない。退行を認め、ほとんどの小児は3歳になる前に亡くなる。

成長:成長曲線は正常範囲内にある一方で、体重増加は生後の1年間で減少する。

NPD-B

NPD-Bは幅広い重症度の身体所見や神経所見を示すことより、ここではNPD-A以外のすべてのASM欠損症をNPD-Bとする。

NPD-Bは、NPD-Aよりも遅発性で軽症であり、脾機能亢進症を伴う肝脾腫、アテローム生成性脂質異常、肺機能の緩徐な悪化および安定した肝機能異常を特徴とする。小児期早期を超えて生存するASM欠損症患者においては、進行性もしくは臨床的に重大な神経症状を呈しうる。
成人期までの生存も起こりうる。

肝脾腫 :肝脾腫の程度は軽度から高度までさまざまである。著しい腫大を認める患者では、脾機能亢進症と二次性血小板減少症を認める。脾梗塞は急性腹症を起こしうる。

肝腫大はまれではない。NPD-B患者の多くは高トランスアミアナーゼ血症を認め、肝線維化から肝硬変に至る組織学的異常を認める者もいる。まれに肝移植を必要とする肝不全がみられる。

肺疾患 :肺疾患はまれではなく、全年齢でみられる。臨床症状は無症状の場合から、酸素を必要とし活動に大きな制限がある場合までさまざまである。ほとんどの患者において胸部X線やシンセクションCTで間質性肺疾患の所見を認める。ほとんどで進行性の換気異常を認めるが、肺機能障害の程度とレントゲン所見は相関しない。
石灰化肺結節も認めうる。

眼科所見 :NPD-Bの最大1/3の患者において黄斑ハローもしくはチェリーレッド斑を認める。ほとんどの患者において進行性神経疾患は認めない。黄斑ハローもしくはチェリーレッド斑の存在は、神経変性の絶対的な予測因子ではない。

神経学的徴候 :小脳症状、眼振、錐体外路障害、知的異常、精神疾患を含む神経学的異常を認めうる。NPD-B患者64人のレビューにおいて、Wassersteinらは19人(30%)が神経学的異常を認めたと報告した。その19人のうち、14人(22%)は軽度で非進行性の所見で、5人(8%)は広範囲で進行性の所見(末梢性神経障害、網膜異常)を2〜9歳の間で認めた。進行性の5人はp.Gln294Lys変異を持っていた。

成長 :成長曲線から外れる、骨成熟が遅れることはまれではなく、著しい低身長となることがある。身長と体重の平均Zスコアはそれぞれ-1.24(29パーセンタイル)および-0.75(34パーセンタイル)で、18歳以下における骨年齢は平均2.5年の遅れが報告されている。低身長と低体重は肝脾腫の大きさや骨年齢の遅れ、血清IGF-1の低値と相関する。
高脂血症 :NPD-Bにおいて、血清高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の低値はまれではない。低HDL-C血症を認めるほとんどの患者では、高トリグリセリド血症や血清低密度リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の高値を伴う。脂質異常は疾患早期から認められる。

成人NPD-B患者でときにみられる若年冠動脈疾患は、おそらく脂質異常に関連したものである。

骨減少症:NPD-Bにおいて骨格異常はまれではない。小児患者の腰椎Zスコアは0.061〜-4.879と報告されている。成人NPD患者のほとんどで、1ヶ所以上の骨減少症もしくはWHO分類による骨粗鬆症が認められる。病的骨折も報告されている。

その他:肺以外の臓器における石灰化像も報告されている。

妊娠および出産 :軽症の女性における妊娠は報告されており、幅広い身体所見を伴う女性において17回の妊娠が成功している。ほとんどは、重度の肺疾患を伴う患者においてでさえ、正常な妊娠および分娩が可能であった。肝脾腫は通常は胎児の成長の妨げとはならない。

遺伝子型と臨床型の関連

ASM欠損症患者の遺伝子型と臨床型の関連でほとんど一致するのは、平均的なp.Arg610delホモ変異患者よりも軽度な臨床的経過をたどることである。他の病原性変異をもつ患者とは対照的に、p.Arg610delホモ変異をもつ患者は通常身長や体重は正常で、肝脾腫や骨年齢遅延はきわだって少なく、血清IGF-1は正常である。

脂質異常はp.Arg610delホモ変異を含むすべての遺伝子型で認められる。

p.Leu139Pro, p.Ala198Pro, p.Arg476Trp変異はNPD-Bでも重症でない型であることを示すいくつかのエビデンスがある。

サウジアラビアで最もよく認められるp.His423Tyrやp.Lys578Asn変異は、早期発症の重症型を示す。

p.Gln294Lys変異は遅発性の神経疾患を伴う中間型と関連し、チェコやスロバキア系で相対的によく認められる

NPD-A患者でよく認められるSMPD1遺伝子のホモ変異もしくは複合ヘテロ変異を認めた場合には、A型の臨床型を示すことが予測される。

有病率 

ASM欠損症の推定有病率は250,000人に1人である。しかしながら人口全体の調査は行われておらず、これや他の推定有病率は生化学的検査により臨床的に診断された数に基づいている。

さらに最近のチリの健康な1691人を対象とした調査では、もっともありふれたSMPD1変異であるp.Ala359Aspのヘテロ変異は105.7人に1人で、これから有病率は44,960人に1人と推測された。

NPD-Aの重篤な神経変性を起こす変異はアシュケナージ系ユダヤ人で広く認められ、3つのありふれたSMPD1変異(p.Arg498Leu, p.Leu304Pro, p.Phe333SerfsTer52)の複合キャリアの頻度は80〜100人に1人であった。この民

では、キャリアスクリーニングプログラムや出生前診断によって出生患者数は減少した。

遅発性で軽症型のASM欠損症(NPD-Bなど)は全民族に認められる。NPD-B患者の遺伝子型について29ヶ国から報告されている。


遺伝的レベルでの関連疾患

このGeneReviewで述べた以外の臨床型でSMPD1変異と相関するものは知られていない。


鑑別診断

ライソゾーム蓄積病(LSD) :ASM欠損症の臨床像はゴーシェ病のような他のライソゾーム蓄積病とオーバーラップすることがある。しかし、生化学的検査によってそのような重篤な疾患は診断できる。加えて、ごく早期からの肺病変や低HDLコレステロール血症の存在はNPDの確かな特徴である。

肝脾腫 はゴーシェ病、ヘキソサミニダーゼA欠損症、サンドホフ病、ニーマン・ピック病C型(NPD-C)、ウォルマン病、ムコ多糖症、オリゴ糖代謝異常(ムコリピドーシスU型、Vα/β型、W型を参照)でも認められる。しかしこれらは、ムコ多糖症では粗な顔・多発性骨異形成、NPD-Cでは特異的な神経所見、ゴーシェ病やサンドホフ病では酵素検査など他の合併する特徴でASM欠損症と鑑別するべきである。

肝脾腫は、感染症や家族性血球貪食リンパ組織球増多症候群や糖原病(糖原病T型を参照)など他の遺伝性疾患でみられることもある。乳児NPD-A患者の診断は、ときに感染症の原因検索のため遅れることがある。

間質性肺疾患 は、環境や膠原病、感染症などを含む多彩な要因による。しかし、肝脾腫の存在はASM欠損症とそれらを鑑別するのに役立つ。

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

ASM欠損症と診断された患者の疾患の程度を確立するために、以下が推奨される:

乳児NPD-A患者

  • まだ行われていない場合眼科診察
  • 包括的な神経学的評価
  • 血算
  • 肝機能を含む血清生化学検査
  • 栄養指導
  • 作業療法・理学療法の評価
  • 臨床遺伝科医や遺伝カウンセラーへの診療依頼

NPD-B

  • 間質性肺炎の程度を評価するため胸部X線
  • 協力を得られる年齢なら拡散能を含む肺機能検査
  • 18歳以下では骨年齢
  • 眼科診察
  • 神経学的診察
  • 血算、空腹時脂質プロフィール、血清生化学検査、肝機能検査などを含む基本的な血液検査
  • 肝機能異常を認める場合には肝生検
  • 臨床遺伝科医や遺伝カウンセラーへの診療依頼

病変に対する治療

重度神経変性型(NPD-A)

  • 進行性神経疾患 :機能を最大化し拘縮を予防するための理学および作業療法は適切である。積極的な治療が必要なく、神経科医・療法士・家族と現実的なゴールを設定して治療計画を立てるべきである。
  • 栄養 :摂食困難により十分なカロリー摂取が大きな課題となる。栄養士への定期的な診療依頼を行うべきである。経鼻胃管栄養もしくは栄養チューブの外科的留置について家族と話し合うべきである。
  • 睡眠障害 :易刺激性や睡眠障害は家族全体のQOLの問題であり、ときに睡眠薬の使用が必要となる。

NPD-B

  • 出血 :ほとんどの患者で血小板減少を認める。致死的な出血を認める場合には輸血が適応である。重篤な脾機能亢進症を認める患者には部分的な脾摘を考慮するが、肺疾患を増悪するため全摘出は避けるべきである。
  • 肺疾患 :有症状の肺疾患患者では酸素投与が必要となることがある。ステロイドなど間質性肺疾患に対する他の治療法はよく検討されていない。気管支肺胞洗浄に関して一定の結果は得られていない。
  • 高脂血症 :成人高脂血症患者においては、血清コレステロール値が正常となるように治療を行うべきである。
  • 成長遅延 :成長に必要なカロリー摂取を行うために全例で栄養の評価を行うべきである。

注:乳児NPD-A患者に対する同所性肝移植およびNPD-B患者に対する羊膜細胞移植が試みられているがほとんど成功していない。

一次病変の予防

造血幹細胞移植(HSCT) :造血幹細胞移植による治療成績は一定していない。ShahらはNPD-A患者に対する造血幹細胞移植の成功例を報告した。移植に成功して代謝異常、血球数が改善し、肝臓や脾臓の容量が縮小した。しかし、造血幹細胞移植後の神経症状の改善は報告されていない。よって、臨床的に明らかな神経疾患をもつ患者に対する造血幹細胞移植は実験的であると考えるべきである。造血幹細胞移植による合併症や死亡も制約となる。

酵素補充療法 :「研究中の治療法」を参照。

二次病変の予防

肝毒性が知られる薬物(高コレステロール血症に対するスタチンなど)の投与を受ける患者においては肝機能をモニターする必要がある。

定期検査

NPD-A患者は小児科や神経科医による以下の評価を含んだルーチンケアを受けるべきある。

  • 栄養状態
  • 作業および理学療法の必要性

NPD-B患者は少なくとも1年に1回は以下の評価を受けるべきである。

  • 病歴(少なくとも6~12ヶ月ごと) :小児の場合は成長や体重増加、倦怠感、社会・家庭・学校・職場に関する活動の変化、出血や息切れ、腹痛、頭痛、四肢の痛み。
  • 神経機能評価を含む身体診察
  • 肝酵素、血小板数、空腹時脂質プロフィールを含む血液検査
  • 肺機能検査および胸部X線
  • 二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA法)による骨格の評価
  • 栄養評価

回避すべき薬物や環境

脾腫のある患者はコンタクトスポーツを避けるべきである。

リスクのある親族の検査

もしSMPD1変異のある家族が存在する場合、早期発見・早期治療が行われれば恩恵があるため、発端者の同胞を可能な限り早く評価することは適切である。

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

妊娠期の管理

妊娠しているNPD-B患者は、肺機能や血液検査の適切なモニタリングを確実に行うため、ハイリスク妊娠専門の産科医による診察を必要とする。

研究中の治療法

酵素補充療法 :5人の成人NPD-B患者に対する患者内用量増量スキームを用いた組み換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼの第T相試験が最近終了した。このレジメンは全体的に忍容性が良好で、肝臓や脾臓の容量が縮小し、肺拡散能の改善がみられた。現在第U相試験が小児NPD-B患者で施行中であり、成人NPD-B患者で第U/V試験が計画されている

さまざまな疾患に対する臨床試験に関する情報は、ClinicalTrials.govを参照のこと。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ASM欠損症は常染色体劣性遺伝形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 患児の両親はヘテロ変異の絶対保因者である(1つのSMPD1変異のキャリアなど)。
  • ヘテロ接合保因者はASM欠損症に合併した脂質異常を認めることがある。

発端者の同胞 

  • 妊娠時に、発端者の同胞の25%は罹患者、50%はヘテロ接合保因者、25%は非罹患者もしくは非保因者である
  • ヘテロ接合保因者はASM欠損症に合併した脂質異常を認めることがある。

発端者の子

  • NPD-A患者は妊孕性がない。
  • NPD-B患者の子はSMPD1遺伝子ヘテロ変異の絶対保因者(キャリア)である。

発端者の他の家族

  • 発端者の両親の同胞がSMPD1変異の保因者であるリスクは50%である。

保因者(ヘテロ変異)の同定

家系のSMPD1変異を同定した後に、リスクのある血縁者がキャリアかどうかを調べる。

ASM酵素活性測定によるキャリアの同定は信頼性がない。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断と治療のためにリスクのある血縁者の評価に関しては、「臨床的マネジメント」および「リスクのある血縁者の評価」の項を参照。

家族計画

  • 遺伝学的リスク評価や出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うのが望ましい。
  • 遺伝カウンセリング(子孫の再発率や生殖のオプションを含む)は罹患するまたはリスクのある若年成人に対して適当である。

DNAバンキング

DNAバンクは主に白血球から調整したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断

分子遺伝学的検査

もしSMPD1変異が家系内に同定されているならば、遺伝子検査またはカスタマイズされた出生前検査を提供する研究所において、リスクのある妊娠での出生前診断は可能かもしれない。

生化学的遺伝子検査

羊水穿刺(通常妊娠15〜18週に行われる)で得られた培養羊膜細胞もしくは絨毛膜絨毛採取(通常妊娠10〜12週に行われる)によって酸性スフィンゴミエリナーゼ活性を測定することで、25%の罹患者リスクがあるか出生前診断を行うことが可能である。

注:在胎週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。

着床前診断(PGD

着床前診断は家系内罹患者にSMPD1変異が同定されている場合に実施可能である。

原文 Acid Sphingomyelinase Deficiency

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