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ATP7A関連銅輸送異常症
(ATP7A-Related Copper Transport Disorders))

[Menkes Disease, Occipital Horn Syndrome, ATP7A-Related Distal Motor Neuropathy]

Gene Review著者: : Stephen G Kaler, MD, MPH.
日本語訳者: 飛騨美希、大橋育子*、升野光雄、山内泰子、黒木良和
(川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科遺伝カウンセリングコース、三豊総合病院小児科*)
Gene Review 最終更新日: 2010.10.14. 日本語訳最終更新日: 2011.9.23.

原文 ATP7A-Related Copper Transport Disorders


要約

疾患の特徴 

メンケス病、occipital horn症候群(OHS)、ATP7A関連遠位運動神経障害(DMN) は、銅輸送ATPase遺伝子(ATP7A) 変異によって引き起こされる銅輸送障害である。

古典的メンケス病の乳児は、発達遅滞、筋緊張低下、痙攣発作および発育不全が生じる生後2〜3か月までは健康に見える。通常、乳児期に典型的な神経学的変化と同時に特有の頭髪の変化(短く、まばら、粗く、うねりがあり、しばしば軽度の色素沈着)が認められ、診断が疑われる。体温の不安定性と低血糖は新生児期に認められるかもしれない。通常、3歳までに死亡する。

occipital horn症候群は、僧帽筋および胸鎖乳突筋の後頭骨付着部位の特有な楔状石灰化、「occipital horns」に特徴付けられる。occipital hornsは臨床的に触れるか、頭蓋骨のX線写真で観察されるかもしれない。OHSを持つ人は皮膚と関節の弛緩、膀胱憩室、鼠径ヘルニアおよび血管の蛇行も認める。知能は正常であるか、僅かに低下している。ATP7A

関連遠位運動神経障害(シャルコー・マリー・トゥス病に類似する成人発症の障害)はメンケス病やOHSに特徴的な臨床症状もしくは生化学的異常のいずれも共有しない。

診断・検査 

メンケス病とOHSは腸の銅吸収が損なわれた結果、いくつかの組織における銅の濃度低下、他の組織における銅の蓄積およびドーパミンベータヒドロキシラーゼ(DBH) やリシルオキシダーゼなどの銅依存酵素の活性低下によって特徴付けられる。血清銅濃度と血清セルロプラスミン濃度はメンケス病とOHSで低下しているが、ATP7A関連のDMNでは正常である。ATP7Aの分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能である。

臨床的マネジメント 

症状の治療:古典的メンケス病:カロリー摂取量を管理するため胃瘻造設。膀胱憩室に対して外科的処置。

一次症状の予防:日齢10日以内にヒスチジン銅もしくは塩化銅の皮下注射を行うと、発達は正常となる子供もいれば、神経学的に改善する子供もいる。

二次的病変の予防:抗生物質の予防的投与は膀胱感染症を予防できる可能性がある。

遺伝カウンセリング 

ATP7A関連銅輸送異常症はX連鎖性遺伝性疾患である。罹患男性の約1/3にはメンケス病、OHS、DMNの家族歴がない。母親が保因者であれば、ATP7A変異を伝えるリスクは各妊娠で50%である:変異を受け継いだ男性は、兄にみられる疾患に罹患するだろう。変異を受け継ぐ女性は保因者であり、症状は出ないだろう。OHSもしくはATP7A関連DMNを持つ男性は、すべての娘に疾患の病因となる変異を引き継ぎ、息子には引き継がない。古典的メンケス病を持つ人は子孫を残すことはない。疾患の原因となるATP7A変異が家系内で同定されていれば、リスクのある女性近親者の保因者検査とリスクの増加した妊娠に対しての出生前検査は可能である。メンケス病の出生前検査は、培養絨毛細胞もしくは羊水細胞を用いた銅輸送検査によっても可能である。


診断

臨床診断

メンケス病は、生後6〜10週に筋緊張低下、発育不全および痙攣発作を認める男児に疑われる。

その後間もなく、頭髪の変化が現れる:頭髪と(通常)眉毛は短く、まばらで、粗く、撚り合わせたようで、しばしば色素は薄い(白、銀もしくはグレー)。側頭部、後頭部では、頭髪はより短く、薄い。頭髪はスチールウールたわしを連想させる。光学顕微鏡での毛髪分析では捻転毛(180度捻れた毛幹)、裂毛症(毛幹の横折れ)、および毛髪縦裂症(毛幹の縦割れ)が認められる。平らな正常な円柱構造になるので、捻転毛におけるねじれの周期性は縮毛で見られるそれとは異なる。

臨床上の特徴:

  • 特有の顔の特徴(たるんだ頬と二重顎)
  • 漏斗胸(骨性の胸郭の中心線の陥没)
  • 皮膚の弛緩性、特にうなじと体幹
  • 臍ヘルニアもしくは鼠径ヘルニア
  • 筋緊張低下、神経発達遅滞および発育不全は一般に生後3〜6か月で現れる

Occipital horn症候群は以下の男性で疑われる:

  • Occipital horns:後頭骨への僧帽筋と胸鎖乳突筋の付着部の特有の楔形の石灰化。これらの石灰化は臨床的に触れるか、頭蓋骨のX線写真で観察されるかもしれない。
  • 皮膚と関節の弛緩
  • 膀胱憩室
  • 鼠径ヘルニア
  • 血管の蛇行
  • 自律神経障害(慢性下痢、起立性低血圧)
  • 軽度の認知障害

ATP7A関連遠位運動神経障害(シャルコー・マリー・トゥス病に類似する成人発症の障害)はメンケス病かoccipital horn症候群の臨床症状もしくは生化学的異常のいずれも共有しない。

以下によって特徴付けられる:

  • ごくわずかな感覚症状もしくは感覚症状のない進行性の遠位運動神経障害
  • 時に凹足を伴う手足の遠位部筋力低下と萎縮
  • 深部腱反射は正常から減弱しているものまで多様であり、しばしばアキレス腱反射の消失を伴う
  • 神経伝導検査:筋電図によって陽性波と線維自発電位がみられ、一般に伝導速度は正常で複合筋運動振幅は減弱する

検査

血清銅とセルロプラスミン濃度。古典的メンケス病もしくはoccipital horn症候群では血清銅濃度が低く、血清セルロプラスミン濃度も低い(表1参照)。

表1. メンケス病、occipital horn症候群およびATP7A関連遠位運動神経障害における血清銅と血清セルロプラスミン濃度

血清濃度

メンケス病 1

Occipital Horn 症候群

ATP7A関連遠位運動
神経障害

標準

0-55 μg/dL

40-80 μg/dL

80-100 μg/dl

70-150 μg/dL; 
(生後6か月まで: 20-70 μg/dL)

セルロプラスミン

10-160 mg/L

110-240 mg/L

240-310 mg/L

200-450 mg/L; 
(生後6か月まで: 50-220 mg/L)

  1. 通常、生後6か月以内の子供の血清濃度は低値のため、この年齢の子供においてこれらの検査単独でメンケス病を診断することは問題である。

培養線維芽細胞における銅輸送検査 放射性標識された銅を用いたパルス・チェイス実験によってメンケス病とOHSでは細胞内の銅輸送の減少を細胞内への銅の貯留により証明する。

血漿とCSFカテコールアミン分析 血漿中のカテコールアミン濃度は、あらゆる年齢のメンケス病とOHSで明らかに異常(ATP7A関連遠位運動神経障害では正常)である。この検査は臨床的に利用可能である。異常なレベルは、カテコールアミン生合成に重要な銅依存酵素であるDBH(ドーパミンベータ水酸化酵素)の部分的欠損を反映する。

保因者女性 生化学検査は正常域と重なるため、一般に保因者の検出には信頼できない。

分子遺伝学的検査.

遺伝子 ATP7Aはメンケス病、occipital horn症候群およびATP7A関連遠位運動神経障害との関連が知られている唯一の遺伝子である。

臨床検査

  • シークエンス解析もしくは変異スキャニング ATP7Aコード領域および隣接イントロン配列のダイレクトシークエンス解析による検出:
    • 男性:点変異、小さなエクソン内欠失および挿入(〜80%の変異)[Tumer et al 2003]。
    • 女性:点変異、小さなエクソン内欠失および挿入。

注意:女性では、ひとつのエクソン、複数のエクソンもしくはATP7Aアレル全体の欠失は、シークエンス解析もしくは変異スキャニングでは正常アレルによって検出できないことがある。

 

  • 欠失/重複解析 約15%の男女にATP7Aのひとつのエクソン、複数のエクソンもしくは遺伝子全体の欠失を検出する様々な方法の検査が使用可能である[Tumer et al 2003]。

表2. メンケス病とoccipital horn症候群に使用される分子遺伝学的検査の概要

遺伝子記号

検査方法

検出される変異

検査方法による
変異の検出頻度1

検査の実施可能性

罹患男性

保因者女性

ATP7A

シークエンス解析もしくは変異スキャニング 2,3

シークエンスバリアント 4

〜80%

〜80%

臨床

小さなエクソン内欠失および挿入

欠失/重複解析5

エクソンもしくは遺伝子全体の欠失

〜15% 6

〜15%

検査の実施可能性は、GeneTests Laboratory Directoryで利用可能なことを示す。GeneReviewsは、分子遺伝学的検査について、その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り、臨床的に実施可能としている。GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や、研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない。情報を検証するためには、医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない。

  1. 示された遺伝子に存在する変異を検出するために用いられる検査方法の能力  
  2. 全遺伝子のシークエンス解析と変異スキャニングは同等の検出頻度を持ちうる。しかし、変異スキャニングの検出率は、一定のプロトコルに準拠している実験室間でかなり異なる可能性がある。
  3. ゲノムDNAのシークエンス解析では保因者女性のX染色体上のエクソンもしくは全遺伝子の欠失を検出できない。
  4. シークエンス解析で検出された変異例は、小さな遺伝子内の欠失/挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異およびスプライス部位変異を含むかもしれない。
  5. 男女のゲノムDNAのシークエンス解析では容易に検出できない欠失/重複を特定する検査。定量的PCR法、long-range PCR法、multiplex ligation-dependent probe amplification(MLPA法) もしくはターゲットアレイGH(遺伝子/遺伝子の一部特異的)を含む様々な方法を使用することも可能である。また、ゲノムの欠失/重複を検出する全アレイGH解析は、この遺伝子/遺伝子の一部を含むかもしれない。アレイGH参照。
  6. シークエンス解析もしくは変異スキャニングにおいてPCRで増幅されなかった場合、欠失/重複解析が男性で推定されるエクソン/複数のエクソンもしくは全ゲノムの欠失の確認のために利用できる。

 

検査結果の解釈

シークエンス解析結果の解釈で熟慮すべき問題については、ここをクリック

検査手順

発端者における確定診断

  • メンケス病とOHSにおいてのみ血清銅濃度と、血清セルロプラスミン濃度
  • メンケス病とOHSにおいてのみ血漿とCSFカテコールアミン分析
  • 3つすべての表現型において、分子遺伝学的検査
  • メンケス病においてのみ培養線維芽細胞における銅輸送検査

メモ:家系内の変異が同定されていないとき、この方法は緊急の出生前診断として用いられる。しかしながら、分子遺伝学的検査の有用性と効率が増大したため、このような状況は極めて稀になるべきである。

リスクのある血縁者の保因者検査は、家系内の疾患原因となる変異が前もって同定されていることが必要である。

メモ:(1) 女性保因者はこれらX連鎖性疾患のヘテロ接合体であり、有利な偏りのあるX不活化により、通常は無症状である[Desai et al 2010]。理論上、不利な偏りのあるX不活化は、女性保因者の疾患に関連する神経学的もしくは他の臨床所見と関連しうる。(2) 保因者女性の同定には以下のいずれかが必要である(a) 家系内の疾患原因となる変異の事前同定、もしくは(b) 罹患男性が検査できない場合には、最初にシークエンス解析による分子遺伝学的検査を受け、その後、変異が検出されなかった場合には大きな構造異常を検出できる方法を行う。

リスクのある妊娠に対する出生前診断と着床前遺伝学的診断(PGD) は、家系内の疾患原因となる変異の事前同定を必要とする。

メモ: GeneTests Laboratory Directoryに記載された研究室から利用可能な検査の臨床用途を含むことがGeneReviewsのポリシーであるが、これを含めることは著者、編集者、評価者によるそうした使用の推奨を必ずしも反映はしていない。

遺伝学的に関連する疾患

メンケス病、occipital horn症候群およびATP7A関連遠位運動神経障害は現在、ATP7Aの変異に関連していることが判明している唯一の表現型である。


臨床像

自然経過

臨床上、一連のATP7A関連銅輸送異常症では古典的メンケス病が最も重症であり、続いてoccipital horn症候群(OHS)、遠位運動神経障害(DMN) の順である。古典的メンケス病は生後2〜3か月から始まる神経変性症と発育不全によって特徴付けられる。通常、診断されるのはおおよそ8か月のときである。対照的にOHSは幼児期の早期から中期に出現し、主に結合組織異常によって特徴付けられる。ATP7A関連遠位運動神経障害は成人期の発症であり、シャルコー・マリー・トゥス病に類似しており、メンケス病もしくはOHSの臨床像の特徴のいずれとも共有しない。

古典的メンケス病 乳児は、発達遅滞、筋緊張低下、痙攣発作および発育不全が生じる生後2〜3か月までは健康に見える。古典的メンケス病が通常最初に疑われるのは、乳児に典型的な神経学的変化と同時に特有の頭髪の変化(短く、まばら、粗く、うねりがあり、しばしば軽度の色素沈着)、二重あごを認める際である。

体温の不安定性と低血糖を含む自律神経機能異常は新生児期に出現している可能性があり、失神と下痢を伴う乳児もいる。

血管蛇行、膀胱の流出路閉塞をもたらす膀胱憩室および胃ポリープは一般的である。

早期に非経口による銅投与が行われないと、または治療が行われたとしても時に、古典的メンケス病では重度の神経変性が進行し、7か月〜3.5歳の間で死亡する。硬膜下血腫と脳血管障害は一般的である。しばしば肺炎で促進される呼吸不全は一般的な死因である。

画像

  • MRIでは不完全は髄鞘形成、脳室拡大を伴う萎縮、血管蛇行を示す。
  • MR血管造影法では大脳の血管の「コルク栓ぬき」像を示す。
  • X線写真ではウォルム骨と骨端棘突起を認め、肋骨骨折を認めることがある。

軽症のメンケス病 運動と認知発達が古典的メンケス病より良い何人かの罹患者が報告されている。軽症のメンケス病の人は、独歩、会話も可能である。筋力低下、運動失調、振戦、頭の上下運動は特徴的な神経学的所見である。痙攣は、もしあるなら、幼児期の中期から後期に出現し始める。知的障害は軽度である。結合組織の問題は古典的メンケス病より際立っているかもしれない。捻転毛は存在する。

Occipital horn症候群(OHSもしくはX連鎖性皮膚弛緩症) 知能は正常であるかわずかに低下している。OHSに唯一現れる神経学的異常は、自律神経障害とわずかな認知障害である。罹患者は通常少なくとも成人期の中期までは生存する。生殖能は不明である。

ATP7A関連遠位運動神経障害

発症年齢は5〜60歳の範囲で、典型的には20〜30代である [Kennerson et al 2010]。手足では遠位筋の萎縮と筋力低下、鶏歩を伴う下垂足を認め、時に下腿の近位筋の軽度筋力低下、正常の深部腱反射もしくはアキレス腱反射の消失を伴う。感覚検査は正常であるか、もしくは指と趾で軽度の消失を示すかもしれない。報告された最も大きな家系の初発症例では、25年以上かけて緩徐な進行があり、38歳のときに足首と足の装具を必要とした[Kennerson et al 2009]。

女性 保因者は通常、症状はない。メンケスとOHSの絶対保因者の約1/2には部分的な捻転毛を認める[Moore & Howell 1985]。ATP7A関連遠位運動神経障害家系において女性絶対保因者の評価は今日まで限定的である。Kennersonら [2009]の家系では、ヘテロ接合体であると証明された女性の臨床的神経学的検査と運動神経伝導検査は正常であった。

遺伝子型と臨床型の関連

ATPaseの残存酵素活性は、メンケス病、OHSおよびATP7A関連遠位運動神経障害の表現型並びにメンケス病における早期銅治療の反応性に関連する[Kaler et al 2008]。

Tumerら[2003]は、稀に例外はあるものの、大きな遺伝子欠失は、幼児期早期に死亡する古典的メンケス病となることを認めた。

軽症のメンケス病とOHSは、しばしば適切なRNAスプライシングを変化させるが、排除はしないスプライス部位変異と関連する(すなわち「漏出」スプライシング部位異常)。

ATP7A関連遠位運動神経障害に関係しているこの新たに発見されたアリルバリアントは、蛋白の管腔表面の内部かその近くでの特有のミスセンス変異を含んでいる。その変異は、これらの障害にみられる異常な細胞内輸送やこの型の運動ニューロン疾患の機構と関連があるかもしれない[Kennerson et al 2010]。

家系内の表現型の多様性は時折、メンケス病で観察される[Kaler et al 1994, Borm et al 2004, Donsante et al 2007]。ATP7A関連遠位運動神経障害2家系の罹患者において、筋力低下、萎縮および感覚障害の程度の差異がみられた[Kennerson et al 2010]。

頻度 

メンケス病とその関連疾患は10万出生に1人と見積もられている。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

メンケス病 メンケス病の鑑別診断は下記の乳児期発症の神経発達症候群を含む。

  • ビオチニダーゼ欠損症
  • 有機酸尿
  • アミノ酸尿
  • ミトコンドリアミオパチー(ミトコンドリア病概観を参照)

Occipital horn症候群(OHS) OHSの鑑別診断は、

  • 常染色体劣性遺伝形式で、フィブリン-5をコードする遺伝子の変異によって引き起こされるFBLN5関連皮膚弛緩症。
  • 常染色体優性遺伝形式で、エラスチンをコードする遺伝子の変異によって引き起こされるELN関連皮膚弛緩症。

ATP7A関連遠位運動神経障害の鑑別診断は他の型のシャルコー・マリー・トゥス病を含む。


臨床的マネジメント

最初の診断後における評価

メンケス病と診断された男性の疾患の程度を確かめるために、以下の評価が推奨される。

  • 発達評価
  • 摂食と栄養の評価
  • 膀胱機能の評価

OHSと診断された男性の疾患の程度を確かめるために、以下の評価が推奨される。

  • 膀胱憩室
  • 鼠径ヘルニア
  • 血管蛇行
  • 自律神経障害(慢性下痢、起立性低血圧)。メモ:臨床の自律神経検査室を持つ医療センターもある。
  • 軽度の認知障害

ATP7A関連遠位運動神経障害と診断された男性の疾患の程度を確かめるために、以下の評価が推奨される。

  • 神経学的検査
  • 神経伝導検査を含む筋電図

臨床症状に対する治療

メンケス病

  • 古典的メンケス病をもつ一部の男性では、カロリー摂取量と全般的な栄養を管理するための胃瘻造設
  • 古典的メンケス病で起こる、膀胱憩室に対して外科的処置
  • 発達への介入

ATP7A関連遠位運動神経障害

  • 理学療法(筋力とストレッチ体操)
  • 作業療法
  • 足首と足の装具

一次症状の予防

メンケス病 古典的メンケス病では、日齢10日以内にヒスチジン銅もしくは塩化銅の皮下注射を行うと、発達は正常となる子供もいれば、神経学的に改善する子供もいる。 [Kaler et al 2008, Kaler et al 2010]。

メモ:非常に早期のヒスチジン銅治療を行ったにも関わらず、未治療のメンケス病の自然歴と比較して著しい改善のみられない乳児もいる[Kaler et al 1995, Kaler et al 2008]。

血清中の銅濃度を正常域(70〜150μg/dL)に維持するために提案された塩化銅の投与量は以下の通りである。

  • 1歳までの子供:1日2回、皮下注射にて250μg
  • 1歳以上の子供:1日1回、皮下注射にて250μg

二次病変の予防

膀胱感染症予防のために、抗生物質の予防的投与が必要かもしれない。

経過観察

血清銅とセルロプラスミン値をモニターし、正常域以上のレベルになることを避ける。

リスクのある血縁者の検査

遺伝カウンセリングの目的で、リスクのある血縁者を検査することに関する問題については、遺伝カウンセリングを参照。

研究中の治療法

早期診断されたメンケス病治療のためのヒスチジン銅の臨床試験の結果が発表されている[Kaler et al 2008]。

広範囲にわたる疾患と健康状態の臨床研究情報にアクセスするためにはClinicalTrials.govを検索のこと。

その他

ビタミンCは効果が無いと証明された治療法に含まれる。

遺伝クリニックは、遺伝専門職からなり、入手できる利用者本位の資源情報だけでなく、自然歴、治療、遺伝形式とその他の家族構成員の遺伝的リスクに関する情報をも個人と家 族に提供する。Gene Tests Clinic Directory参照。

この疾患に対する疾患特異的か上部支援団体の利用者資源を参照。これらの団体は、個人や家族に情報、支援および他の罹患者との接触が提供できるように設立されている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

メンケス病、occipital horn症候群およびATP7A関連遠位運動神経障害は、」
X連鎖劣性遺伝の形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

罹患男性の父親は、罹患者でもなく、変異の保因者でもない。

  • 2人以上の罹患者を伴う家族においては、罹患男性の母親は、絶対保因者である。
  • 2人以上の罹患した息子をもつ女性の白血球から抽出されたDNAに疾患の原因となる 変異が検出されない場合、その女性は生殖細胞系列モザイクである。
  • 罹患男性の約1/3は孤発例である(すなわち、メンケス病・OHS・DMNの家族歴が全く ない)。男性孤発例の母親の保因者状況については、いくつかの可能性を考える必要がある:
  • 母親は保因者ではなく、罹患男性は疾患の原因となる新生変異をもつ。罹患男性の約1/3は新生変異の結果、メンケス病・OHS・DMNとなる。
  • 母親が疾患の原因となる新生変異による保因者の場合、新生変異の起こり方として以 下がある:
  • 受胎時に存在した生殖細胞系列変異は、女性の体のすべての細胞にあり、白血球から抽出したDNAで検出できる。 

もしくは

  • 体細胞変異(すなわち、胚形成の非常に早期に起こった変化)は、体細胞モザイクとなる。その場合、変異はわずかな割合の細胞にしかなく、白血球DNAでは検出できないこともある。

もしくは

  • 変異が女性の卵巣のみに存在している時、それを生殖細胞系列モザイクと呼ぶ。全ての生殖細胞に変異が存在するというわけではなく、変異は白血球からのDNAでは検出できない。生殖細胞系列モザイクは、メンケス病・OHS・DMNで理論的には可能性があるが、明確には示されていない。

発端者の同胞 

同胞のリスクは、母親の保因者状況に依存する。

  • もし、母親が保因者であれば、各々の妊娠においてATP7A変異を伝える機会は50%である。変異を受け継ぐ男性は、同胞にみられる疾患に罹患するであろう。変異を受け継ぐ女性は、母親と同様保因者となり、罹患しないだろう。
  • 疾患の原因となる変異が、母親の白血球から抽出されたDNAにおいて検出されなかったとき、同胞へのリスクは低下するが、生殖細胞系列モザイクの可能性のため、一般集団よりもリスクが高い。

発端者の子 

  • OHSとATP7A関連DMNをもつ男性は、彼らの全ての娘に疾患の原因となる変異を伝えるが、息子には伝えない。
  • 古典的メンケス病を伴った男性は、今までに子孫を残したことはない。 OHSとATP7A関連DMNをもつ男性は、彼らの全ての娘に疾患の原因となる変異を伝えるが、息子には伝えない。
  • 古典的メンケス病を伴った男性は、今までに子孫を残したことはない。

他の家族構成員 

発端者の母方の女性血縁者は、保因者であるリスクがあるだろう。そしてその子孫は性別によって保因者であるか、罹患者であるリスクがあるだろう。

保因者診断

リスクにある女性血縁者の保因者診断は、家系において変異が確認されている場合、可能である。分子遺伝学的検査を参照。

生化学検査は正常域と重なるため、一般に保因者の検出には信頼できない。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

  • 遺伝的リスクの決定、保因者状況の明確化、および出生前検査の有用性の討論のための最適な機会は妊娠前である。

  • 罹患しているか、リスクのある若年成人に遺伝カウンセリング(子孫への潜在的なリスクと生殖の選択肢の討論を含む)を提供することは適切である。

DNAバンキング は(通常は白血球から抽出された)DNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法並びに遺伝子、変異および疾患に対する我々の理解が将来進歩するかも知れないので、罹患者のDNAの保存は考慮すべきである。DNAバンキングを提供している研究室の一覧についてはTesting参照。

出生前診断

ATP7A変異が家族構成員で同定されたか、もしくは生化学検査で家族構成員の診断を確定したならば、リスクの増加した妊娠で、出生前検査は可能である。およそ妊娠10〜12週に行われる絨毛生検(CVS)や、通常およそ妊娠15〜18週に行われる羊水穿刺で得られた胎児細胞の染色体分析を行い、胎児の性別を決定するのが通常の手法である。核型が46,XYであれば、2つの方法のうち1つで出生前検査が可能である。

  • 疾患の原因となる変異が家族構成員で同定されているのならば、既知の疾患の原因となる変異を胎児細胞からのDNAで解析が可能である。
  • メンケス病のリスクの増加した妊娠で銅輸送検査が行える。しかしながら、出生前診断では分子遺伝学的検査が望ましい検査方法である。

メモ:妊娠期間は、正常な最終月経期の初日からか、超音波による計測のどちらかにより、算出された月経週数として表される。

着床前診断 (PGD)は、疾患の原因となる変異が同定された家族において利用できるかもしれない。PGDを提供している研究室については、Testing参照。

メモ: GeneTests Laboratory Directoryに記載された研究室から利用可能な検査の臨床用途を含むことがGeneReviewsのポリシーであるが、これを含めることは著者、編集者、評価者によるそうした使用の推奨を必ずしも反映はしていない。


 

分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報は、Gene Reviewの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最近の情報を含むかもしれない。

表A.ATP7A関連銅輸送障害:遺伝子およびデータベース

遺伝子記号

染色体座

蛋白の名称

遺伝子座特異的

HGMD

ATP7A

Xq12-q13

銅輸送ATPase1

ATP7A@LOVD

ATP7A

データは、以下の標準的な参考文献を編集したものである:HGNCによる遺伝子記号;OMIMによる染色体の座、座の名前、決定的領域、相補性群;UniProtによるタンパク質名。データベース (遺伝子座特異的, HGMD) の記述についてのリンク、 ここをクリック。

表B.OMIMに登録されているATP7A関連銅輸送障害(OMIMで全てを参照のこと)

300011

ATPase,Cu(2+)-TRANSPORTING,ALPHA POLYPEPTYDE;ATP7A

300489

SPINAL MUSCULAR ATROPHY,DISTAL,X-LINKED 3;SMAX3

304150

OCCPITAL HORN SYNDROME;OHS

309400

MENKES DISEASE

正常アレルのバリアント ATP7Aは23のエクソンを含む150kbのゲノムDNA。コード配列は4.5kb。まれに、選択的スプライシングによる(意義不明の)転写物が正常な組織で認められる。いくつかの正常アレルのバリアントが知られている。

病的アレルのバリアント 病的アレルのバリアントは家族特異的な(特有の)傾向がある。変異の型の範囲が同定されており、小さい挿入と欠失(35%)、ナンセンス変異(20%)、スプライシング異常(15%)、ミスセンス変異(8%)、そして大きな欠失もしくは再構成(20%)である[Culotta&Gitlin 2001]。

ATP7A関連遠位運動神経障害は、蛋白の管腔表面の内部かその近くでの特有のミスセンス変異を含んでいる[Kennerson et al 2010]。その変異は、これらの障害にみられる異常な細胞内輸送やこの型の運動ニューロン疾患の機構と関連があるかもしれない。

正常遺伝子産物。ATP7Aがコードしている蛋白は、P型ATPaseであり、細胞膜で銅を輸送し、銅の恒常性に重要である。

異常遺伝子産物。ATP7A変異は、(重症の表現型と関連した)銅輸送能力の欠如した遺伝子産物、もしくは(軽症の表現型と関連した) 正常に機能する遺伝産物の量的減少を招く。

資源

この疾患に対する疾患特異的か上部支援団体の利用者資源を参照。これらの団体は、個人や家族に情報、支援および他の罹患者との接触が提供できるように設立されている。

Gene Testsは、読み手に利益を与えるような選択された組織と資源についての情報を提供する。Gene Testsは他の組織によって提供された情報について責任をもたない。

参考文献

遺伝医学検索:PubMed Clinical Queriesのページに記載されている臨床家のための特別なPubMed検索。

 

原文 ATP7A-Related Copper Transport Disorders

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