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先天性肝線維症総論
(Congenital Hepatic Fibrosis Overview)

Gene Review著者: Meral Gunay-Aygun, MD, William A Gahl, MD, PhD, and Theo Heller, MD.
日本語訳者: 和田宏来 (県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)      

Gene Review 最終更新日: 2014.4.24.  日本語訳最終更新日: 2016.12.17

原文 Congenital Hepatic Fibrosis Overview


要約

疾患の特徴 

先天性肝線維症(Congenital hepatic fibrosis; CHF)は、組織学的に胆管板形成異常(ductal plate malformation; DPM)、肝内門脈枝の分枝異常、門脈域の進行性の線維化を認める門脈・胆管系の発生異常である。先天性肝線維症は肝内胆管の肉眼的な嚢胞状拡張を伴う場合と伴わない場合がある。臨床所見としては、形態異常を伴った肝腫大、相対的によく保たれている肝機能、門脈圧亢進症およびそれによる脾腫・脾機能亢進・胃食道静脈瘤などがある。肺高血圧(門脈肺高血圧症)や肺実質の血管シャント(肝肺症候群)、門脈圧亢進症の合併症もまれながら見られることがある。先天性肝線維症は腎疾患を伴う繊毛障害に合併することが最も多い。いわゆる肝腎線維嚢胞症(hepatorenal fibrocystic diseases; FCDs)である。現在肝腎線維嚢胞症は臨床型によって分類されているが、疾患の間で遺伝子型や臨床型の重複がかなり大きいため、将来的な遺伝学的分類はかなり異なってくるだろう。

診断・検査 

先天性肝線維症は典型的には肝実質のエコー輝度上昇とときにそれに伴う大きな嚢胞によって診断される。MRCPを含むMRIもまた用いられることがある。まれに肝生検が必要になる。肝腎線維嚢胞症に合併する多系統の症候群は、身体診察もしくは他の特異的な検査、家族歴、分子遺伝学的検査によって診断される。

臨床的マネジメント 

症候の治療:
胆管板形成異常、線維化、胆管枝異常に対する治療法はない。先天性肝線維症の合併症には食道静脈瘤、脾機能亢進症・胆管炎、それとより少ないが胆石、胆管癌、肝細胞癌などがあり、通常の治療が行われる。

二次的合併症の予防:
A型肝炎ワクチンおよびB型肝炎ワクチンの接種。

定期検査:
小児では成長率をモニターする。経過とともに血小板数が著しく減少した場合もしくは腎移植のような治療を行う前には、胃食道静脈瘤や肝肺症候群のスクリーニングを行う。

避けるべきもの/環境:
アルコール、肥満、糖尿病、栄養不良、HIV感染、免疫抑制状態、肝毒性のある薬剤、出血リスクがあるため静脈瘤がある患者ではNSAIDs、脾損傷のリスクがあるため脾腫がある患者ではコンタクトスポーツ/活動。

遺伝カウンセリング 

先天性肝線維症に合併する症候群のほとんどは常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。しかし、X連鎖優性、常染色体優性遺伝形式をとることもある。遺伝カウンセリング正確な遺伝学的診断に基づいて行う。


診断

臨床診断

先天性肝線維症(CHF)は以下のような門脈・胆管系の発生異常による組織学的所見をもって診断される。
・胆管板の形成異常(ductal plate malformation; DPM)
・肝内門脈枝の分枝異常
・門脈域の進行性の線維化

胆管板形成異常 による異常の範囲は、主に侵される胆管枝のレベルによって決まる。
・肝内胆管の肉眼的な嚢胞状拡張を伴わない先天性肝線維症
・胆管に連続する肉眼的な肝嚢胞を伴った先天性肝線維症、ときにカロリ症候群(Caroli syndrome; CS)と呼ばれる。
注:カロリ病(Caroli disease; CD)はカロリ症候群よりもまれだが、先天性肝線維症を伴わない胆管枝に連続する肝嚢胞をさして言う。カロリ症候群およびカロリ病は同じ家族内でともに見られることもあり、おそらく連続した疾患である。

先天性肝線維症では以下のような特徴的な臨床所見を認める。

  • 大きく形態異常を伴う肝臓で、剣状突起下に左葉を触れ、典型的には右葉は触れない。
  • エコーで肝実質の輝度上昇を認める。大きな嚢胞は認めることも認めないこともある。しばしば肝機能は相対的によく保たれている。
  • 門脈圧亢進症による脾腫、脾機能亢進、胃食道静脈瘤。

注:出生時には全ての先天性肝線維症患児において肝生検で胆管板形成異常を認めるが、門脈域の線維化や門脈圧亢進症(portal hypertension; PH)は年齢とともに進行する時間依存性の病状を呈するため、小児期早期には肝のエコー輝度上昇や脾腫は認めないことがある。

先天性肝線維症の他の臨床所見には、とくにカロリ症候群の場合に反復性胆管炎があげられる。
先天性肝線維症の重症度や進行度および合併症は同じ家族内でも大きく異なる。

門脈圧亢進症(portal hypertension; PH)は厳密には臨床的続発症を起こす門脈圧の上昇と定義され、先天性肝線維症でよく認められる症候である。先天性肝線維症における門脈圧亢進症は肝臓そのものの血流に対する抵抗の増加によって起き、進行性の線維化と同様に先天性の血管異常によると考えられている。
一般的に、肝線維症や門脈圧亢進症が悪化するにつれ、脾腫は進行し、血小板数や白血球数は減少し(脾機能亢進)、食道および胃静脈瘤を含む門脈体循環側副血行路が発達する。静脈瘤は大きくなるにつれ出血のリスクは増加する。乳児期以降どの年齢においても静脈瘤出血は起こりうる。しかしながら、著しい門脈圧亢進症は進行するまで時間がかかり、通常は年長児や成人で起こる。

肺高血圧症(門脈肺高血圧症)および肺実質の血管シャント(肝肺症候群)は先天性肝線維症でもまれに認めうる門脈圧亢進症の合併症である。

腹水や脳症のような門脈圧亢進症のその他の合併症は、先天性肝線維症では肝硬変よりもみられない。さらに、先天性肝線維症患者は、クモ状血管腫は除いて女性化乳房や耳下腺腫大など慢性肝疾患に合併する他の全身症状をまれに呈する。

先天性肝線維症/カロリ症候群患者の肝疾患は通常無症状であるが、胆管炎や、それよりは少ないが胆管結石や比較的若年に発症する胆管癌のリスクがある。

先天性肝線維症の自然歴に関する前方視的な報告はない。最近の155報のレビューでは先天性肝線維患者計1230人が評価され、多く(64%)は常染色体劣性多発性嚢胞腎/先天性肝線維症(ARPKD/CHF)に分類され、9.5%は孤発性の先天性肝線維症と診断されていた。フォローアップ期間は0〜38年で平均7.5年であった。ほとんどは小児期に診断され、門脈圧亢進症の続発症が目立って報告された所見だった(409人)。静脈瘤を認めた門脈圧亢進症患者164人の中で、74人は出血を認め、81人は門脈体循環シャントを認めていた。152人で胆管炎を認め、腎移植を行った23人のうち3人が胆管炎で亡くなっていた。21人に肝胆道癌がみられ、うち19人は胆管癌だった。肝胆道癌の最年少例は33歳で、

癌の診断の平均年齢は60.1歳だった。

先天性肝線維症の自然歴に関する他の報告のほとんどは、進行した先天性肝線維症や不確定の腎疾患患者の小規模なものである。先天性肝線維症の症状や進行の速さが合併する遺伝疾患によって異なるかどうかは明らかではない(「先天性肝線維症の原因」の項を参照)。非肝硬変性門脈圧亢進症の症状やARPKD/CHFに伴う胆管異常の合併症はよく知られているが、同じ家族内であっても先天性肝線維症の進行には差があるため予後予測は難しい。

線維化を悪化もしくは加速化させうる因子には、アルコール摂取、脂肪性肝炎、肝毒性のある薬物、ウイルス肝炎がある。

先天性肝線維症の診断

エコー検査はもっとも情報が得られるモダリティであり、しばしば以下を認める。

  • 肝エコー輝度の上昇
  • 肝実質内の嚢胞
  • 脾腫
  • 付随する腎の線維性変化

肝臓や脾臓を評価するのに標準的な解像度のエコーで十分である。著者の経験では、軽度な腎嚢胞性疾患の診断に関して5-7MHzの高解像度エコープローブは標準的な解像度のプローブよりも優れている。

MRCPを含むMRIでは典型的には以下を認める。

  • 肝内胆管の嚢胞状もしくは紡錘状の拡張や不整
  • 剣状突起下の前方や脾臓を超えて左方へ広がる肝左葉の腫大
  • 肝外胆管の紡錘状拡張
  • 胆嚢の伸長
  • 容積の算出によって定量化しうる脾腫
  • 付随する腎の線維性変化

先天性肝線維症やカロリ症候群と腎疾患はよく合併するため、先天性肝線維症患者の多くはすでに腎の評価を行われている。

エコーやMRIで、とくに肝腎線維嚢胞症(FCDs)を構成する以下の腎所見を認める場合に、先天性肝線維症は強く示唆される。

  • 多発性嚢胞腎(Polycystic kidney disease; PKD) 両腎の遺伝性嚢胞変性で、ほとんどの患者で進行性の腎機能障害および高血圧を合併する常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)や常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)は多発性嚢胞腎で最も多い病型である。
  • 糸球体嚢胞腎およびびまん性嚢胞性異形成腎
  • 以下を含む尿細管間質性疾患および一連の疾患
  • ネフロン癆(Nephronophthisis; NPHP)は腎のサイズは正常か小さく、腎エコーで輝度上昇を伴う。腎嚢胞は典型的には末期腎疾患(end-stage renal disease; ESRD)の発症後に起こり、主に皮髄境界に限局する。末期腎疾患の発症前には、ネフロン癆患者の血圧は正常範囲内に保たれる傾向にある。
  • 慢性尿細管間質性疾患は組織学的に、相対的に糸球体や血管構造は保たれた腎尿細管萎縮および尿細管間質性線維症を特徴とする。
  • 尿濃縮障害は肝腎線維嚢胞症で最も早期で軽症の症状である。尿濃縮障害は集合管における自由水の再吸収の調節異常のため起こり、多尿や多飲を呈する。
  • 髄質海綿腎は、静脈性腎盂造影のような造影検査で認められる腎尿細管の小嚢胞状拡張のことを指す放射線学用語である。髄質海綿腎患者の一部は、腎髄質石灰化症に進展する(放射線検査で認める腎実質の石灰化)。

注:腎石灰化症は石灰化が集合管もしくは尿管の管腔内に起きる腎結石とは異なる。

肝生検では胆管板形成異常に伴って以下のような特徴的な異常所見を認める。

  • 門脈域に豊富な異常な形態の胆管を認めるが、これは原始胆管板の形をとどめる胎児胆管構造の過剰による(しばしば間違って"胆管増殖"と記述される)。
  • 門脈の異常な分枝
  • 炎症を伴わない門脈周囲の線維化
  • 門脈域間の線維性架橋(肝硬変に典型的な門脈−中心静脈架橋ではない)
  • 密な線維性間質内にみられる多発性胆管過誤腫(von Meyenburg complexes)
  • 一部の胆管内に濃縮胆汁

注:肝実質は正常で肝内胆汁うっ滞や肝細胞板の破綻は認めない。

肝生検による組織病理像が先天性肝線維症の診断のゴールドスタンダードである。しかし、臨床所見のみによっても診断できるので、ほとんどの患者において肝生検は必要ない(とくに線維嚢胞性腎疾患患者)。

先天性肝線維症の鑑別診断

肝硬変 肝生検でみられる広範な線維化や門脈圧亢進症を認めるため、先天性肝線維症はしばしば肝硬変と混同される。先天性肝線維症と非肝硬変性門脈圧亢進症を区別する特徴は、一般的に肝の合成機能が保たれていることである。

原発性胆汁性胆管炎(primary biliary cholangitis; PBC)や原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis; PSC)のような胆管疾患は肝硬変に進展する。しかし、双方の疾患とも小児期には多くはなく、肝酵素のALPやGGTが著増し(先天性肝線維症ではまれ)、画像で先天性肝線維症と同様の像は呈さない。PBC・PSCともに肝嚢胞性疾患は合併しない。

  • PBCではほとんどの患者で抗ミトコンドリア抗体陽性である。先天性肝線維症ではみられない。
  • 先天性肝線維症と同様に、PSCはしばしば胆管炎を合併する。さらに、PSCでしばしば認められる胆管狭窄や拡張は先天性肝線維症の拡張した肝外胆管や肝内嚢胞にさえ間違われる可能性がある。
    ウイルス性肝炎、アルコール関連肝疾患、自己免疫性肝炎、α1-アンチトリプシン欠損症、ウィルソン病、HFE関連遺伝性ヘモクロマトーシスのような肝硬変の他の原因は、病歴や検体検査で鑑別される。

非肝硬変性門脈圧亢進症は、先天性肝線維症との鑑別において肝硬変性門脈圧亢進症よりもさらに難しい可能性があり、病歴、身体診察、検体検査、画像検査によって診断する。

非肝硬変性門脈圧亢進症の原因はしばしば肝前性(門脈塞栓など)、肝性(住血吸虫症、結節性再生性過形成など)、肝後性(右心不全など)に分類される。肝生検は非肝硬変性門脈圧亢進症の肝内の原因を特定するのにしばしば必要となる。

肝嚢胞は、特に少なくて小さい場合、正常の範囲内である可能性がある。良性肝嚢胞の頻度は年齢とともに増加する。
異なる遺伝性疾患である常染色体優性多嚢胞性肝疾患にみられる肝嚢胞も、門脈圧亢進症に進展する可能性があるが、典型的には先天性肝線維症に合併しない。多数の嚢胞と肝実質への進展によって、先天性肝線維症に合併した嚢胞と鑑別することができる。

カロリ病(Caroli disease; CD)は、先天性肝線維症を伴わない肝内胆管の嚢胞状拡張を特徴とする先天性の肝疾患である。カロリ病の診断は画像検査による。カロリ症候群、先天性肝線維症と胆管に連続する肉眼的肝嚢胞の合併、カロリ病が同一家族内で同時にみられることから考えると、カロリ症候群とカロリ病はおそらく連続した疾患である。

悪性肝疾患 von Meyenburg complexの多発性胆管過誤腫は胆管嚢胞腺腫や嚢胞腺癌と誤診される可能性がある。

腎線維嚢胞疾患を伴わない先天性肝線維症 先天性肝線維症と慢性下痢や成長障害、低血糖、凝固障害を伴う蛋白漏出性胃腸症の合併は先天性グリコシル化異常症Tb型を示唆する(先天性グリコシル化異常症総論を参照)。診断には等電点電気泳動による血清トランスフェリン糖型の分析やそれに続く白血球細胞のマンノースリン酸イソメラーゼ酵素活性が推奨される。

先天性肝線維症の有病率

先天性肝線維症の有病率のデータは存在しない。しかし、先天性肝線維症に合併したさまざまな特異的な繊毛障害の有病率に基づけば、有病率は10,000-20,000人に1人と推定できる。


先天性肝線維症の原因

先天性肝線維症/カロリ症候群(CHF/CS)はまれに孤発性にみられることがある。孤発症例を起こす遺伝子変異は不明である。

ほとんどのCHF/CSは腎疾患を伴う繊毛障害(一次繊毛の障害)を合併している。多発性嚢胞腎、ネフロン癆、慢性尿細管間質性疾患、これらはまとめて肝腎線維嚢胞症と呼ばれる。

繊毛障害は繊毛に存在する蛋白もしくはその基部構造の欠損によって起こる。繊毛障害には一次(無動性)繊毛および呼吸(運動性)繊毛双方の障害がある。肝腎線維嚢胞症で侵されるのは運動性繊毛ではなく一次繊毛である。一次繊毛はほとんどの真核細胞に1つあるアンテナのような細胞小器官で、細胞外からの化学および機械的刺激(液体の流れなど)を感知し、ソニック・ヘッジホッグやWntのような重要な発達シグナル経路を司る。正常な一次繊毛のシグナルは胆管および腎尿細管の正常な発達や維持に必要である。

肝腎線維嚢胞症については表1で論じている。

注:カルタゲナー(Kartagener)症候群は、反復性の副鼻腔・肺感染症、左右の内臓逆位、不妊を特徴とする運動性繊毛の障害であり、肝腎嚢胞線維症とは合併しないためここでは論じていない(「原発性線毛機能不全症候群」を参照)。

常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD) ほとんどのARPKD患者は新生児期にエコー源性の腎腫大を呈する。初期に肝腫大、肝内(ときには肝外も)胆管拡張、軽度のエコー輝度上昇などの肝臓の異常を認める乳児は半数にも満たない。罹患乳児の約30%は新生児期もしくは生後1年以内に主に呼吸不全や混合型肺感染症で死亡する。患児の50%以上は通常は10歳までに末期腎疾患(ESRD)へと進展する。新生児期の呼吸補助や腎代替療法によって1歳以上の10年生存率は82%に改善した。15年生存率も67-79%と推定されており、改善している可能性がある。少数の患者では年長児や若年成人の時期に肝脾腫や門脈圧亢進症で発症する。ARPKDにおいて、腎移植後の合併症に進行した先天性肝線維症が起こりうる。ARPKDは他臓器の異常は合併しない。ARPKD/CHFに関するさらなる情報についてはこちらをクリック。

メッケル症候群(Meckel syndrome; MKS) 嚢胞性腎異形成、先天性肝線維症、軸後性の多指症、後頭部脳ヘルニア、他の中枢神経異常などの特徴がある致死的な周産期異常である。肝生検を施行したメッケル症候群患者全員に先天性肝線維症は認められている。メッケル症候群は遺伝的に均一の疾患ではなく、ジュベール症候群および関連疾患(Joubert syndrome and related disorders; JSRDs)、バルデー・ビードル症候群(Bardet-Biedl syndrome; BBS)と著しく重複する。

ネフロン癆(NPHP) ネフロン癆は尿細管間質性疾患の疾患スペクトラムの一部で、初期には尿濃縮障害や貧血を呈し、ほとんどの患者は小児期に末期腎疾患に進展する。ネフロン癆の乳児型、若年型、思春期型で末期腎疾患に至る平均年齢は、それぞれ1, 13, 19歳であった。もっとも多い病型である若年型ネフロン癆は、典型的には4-6歳で多尿、多飲、貧血で発症する。若年型ネフロン癆では、腎不全の発症前の血圧は典型的には正常である。若年型ネフロン癆は小児末期腎疾患の5-10%を占める。ネフロン癆患者の約10-20%は小脳・中脳の構造異常などの中枢神経および眼病変を呈するが、これはジュベール症候群関連疾患および色素上皮網膜変性(シーニア・ローケン症候群、Senior-Løken症候群)と重複する。
腎エコーでは、腎のサイズは正常もしくは小さく、エコー輝度は上昇している。乳児型ネフロン癆では、まれに腎サイズが拡大していることがある。ネフロン癆の腎嚢胞は二次的で、典型的には末期腎疾患に進展したのちに起こり、主に皮髄境界に限局する。

ジュベール症候群および関連疾患(JSRDs)

  • ジュベール症候群は3つの一次所見を特徴とする。特徴的な小脳・脳幹奇形(大臼歯サイン, the molar tooth sign[MTS])、筋緊張低下、発達遅滞である。発作的な多呼吸もしくは無呼吸、異常な眼球運動をしばしば伴う。一般的に呼吸異常は加齢とともに軽快、体幹失調は経過とともに増悪し、粗大運動発達は遅れる。認知能力はさまざまで、重度の知的障害から正常まで幅広い。ジュベール症候群および関連疾患(JSRD)という表記は、網膜ジストロフィー、腎疾患、ブドウ膜欠損(コロボーマ)、後頭部脳ヘルニア、肝線維症、多指、口腔内過誤腫、内分泌異常などの所見があるジュベール症候群患者に用いられる。家族内、家族間ともに多様性がみられる。JSRD患者のなかには症候性の先天性肝線維症をもつ患者もいる。ジュベール症候群は遺伝的に均一ではなく、現在までに20を超える遺伝子が同定されている。

JSRDsという用語は、症候群を示唆する他の症候に加えて、大臼歯サインやジュベール症候群の臨床的特徴を共有する病態で用いる。
JSRDsは以下を含む。

  • COACH症候群 COACHは小脳虫部(cerebellar vermis)低形成、精神遅滞(oligophrenia)、運動失調(ataxia)、コロボーマ(coloboma)、肝線維症(hepatic fibrosis)の頭文字である。
  • シーニア・ローケン症候群 ネフロン瘻に伴う重度網膜変性。シーニア・ローケン症候群はネフロン癆や重度の網膜変性を特徴とする。
    注:ときどきシーニア・ローケン症候群の重度網膜変性は、レーバー先天性黒内障によるものと誤解されることがある。レーバー先天性黒内障は網膜だけを侵し、少なくとも17遺伝子の病原性変異によって起こりうる。

バルデー・ビードル症候群(BBS)は、錐体杆体ジストロフィー(>90%)、肥満(72%)、軸後性の多指症、知能障害、男性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、複雑な女性泌尿生殖器奇形、腎機能障害を特徴とする。バルデー・ビードル症候群患児の視覚予後は不良である。夜盲は通常7-8歳頃までには明らかとなってくる。法的な全盲の平均年齢は15.5歳である。出生体重は通常正常だが、生後1年以内に著しい体重増加があり、ほとんどの患者で生涯の問題となる。患者の多くは学習に著しい困難を伴うが、IQ検査で重度の障害を認める者は少数に過ぎない。腎疾患は重症化および死亡の主な原因である。

頭蓋・外胚葉異形成(Cranioectodermal dysplasia; CED)(Sensenbrenner症候群)は骨成長異常(長頭症・肢根型四肢短縮・狭い胸郭・骨密度減少)、歯や爪の異形成、小児期早期に末期腎疾患に至る進行性の尿細管間質性腎炎を特徴とする。網膜ジストロフィーは少数報告されている。

エリス・ファンクレフェルト症候群(Ellis-van Creveld syndrome; EVCは骨成長異常(短い四肢や肋骨を伴う均整のとれていない低身長)、先天性心疾患(最も多いのは房室中隔欠損症)、軸後性の多指症、爪や歯のジストロフィー、網膜変性を特徴とする。

ジューン窒息性胸郭ジストロフィー(Jeune asphyxiating thoracic dystrophy; JATD)は骨成長異常とそれによる低成長、小さな胸郭、肺低形成、慢性間質性腎炎、先天性肝線維症を特徴とする。乳幼児期に死亡することが多く、通常は呼吸不全による。乳幼児期以降も生存するJATD患者のほとんどは網膜ジストロフィーや慢性尿細管間質性腎炎による腎不全をきたす。剖検や肝生検標本で先天性肝線維症は一貫してみられる。肝疾患を評価したJATD患者では、著しい肝酵素ALT, AST, GGTの上昇を伴う先天性肝線維症が認められている。

腎・肝・膵異形成(Renal-hepatic-pancreatic dysplasia; RHPD)は、嚢胞性異形成腎、肝臓の胆管板形成異常、膵の線維嚢胞性異形成を特徴とする。部分的もしくは完全な内臓逆位を認めることがある。しかし、内臓の位置異常を認めるのは一部の罹患者のみである。これは、ノード繊毛機能の障害によって左右の位置決定はランダムに行われ、50%は正常な位置となるからである。RHPD患者は通常周産期に死亡する。臨床的な多様性はかなり大きい。NPHP3はRHPDと関連することが分かった最初の遺伝子である。

口・顔・指症候群1型(Oral-facial-digital syndrome type1; OFD1)は一次繊毛障害と関連し、以下の異常を特徴とする。

  •  分葉舌、舌の過誤腫もしくは脂肪腫、硬口蓋もしくは軟口蓋の口蓋裂、歯肉の副小帯、減歯症およびその他の歯の異常
  •  眼間開離もしくは眼角開離、鼻翼低形成、上口唇正中裂もしくは偽性正中裂、小顎症
  •  短指症、さまざまな程度の合指症、第5指の斜指症、重複母趾(足の第1趾)、手の軸前性もしくは軸後性多指症
  •  脳内嚢胞、脳梁欠損、ダンディー・ウォーカー奇形を伴う/伴わない小脳無形成
  •  多嚢胞腎疾患
  • 肝/膵 肝内胆管の嚢胞性病変や膵嚢胞
    OFD1患者の50%はいくらかの知的障害を伴うが通常は軽度である。患者はほぼすべて女性である。しかし、OFD1の男性例も報告されており、ほとんどはOFD1の母親によって出産された奇形児である。

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は一般的に遅発性の多系統疾患で、両側の腎嚢胞を特徴とする。肝臓・精嚢・くも膜などの他臓器の嚢胞、頭蓋内動脈瘤・大動脈基部拡張・胸部大動脈解離などの血管異常、僧帽弁逸脱症、腹壁ヘルニア、高血圧・腎部疼痛・腎不全などの腎症状を呈する。ADPKD患者の約50%は60歳までに末期腎疾患を認める。

ADPKDでもっとも多い腎外症状である肝嚢胞の有病率は年齢とともに増加するが、エコーやCTでは低く見積もられてきた可能性がある。頭蓋内動脈瘤の有病率において、動脈瘤やくも膜下出血の家族歴がある患者(22%)は家族歴のない患者(6%)より高い。弁疾患のなかで最も多い僧帽弁逸脱症は~25%の患者でみられる。腎疾患や腎外症状の重症度には同じ家族内でさえもかなり幅がある。

ADPKDにおいて肝嚢胞は先天性肝線維症もしくは門脈圧亢進症に通常合併しない。しかし、14家系19人のADPKD患者において先天性肝線維症と門脈圧亢進症の合併が報告されている。これらのうち(米国)国立衛生研究所で評価された3人はPKD1に変異を認めていた。修飾因子の可能性があるPKHD1のシークエンスでは病原性変異は明らかにならなかった。O'Brienら(2012)はADPKD-CHF患者19人(男児9人、女児10人)全員の特徴を一覧にした。ADPKD患者における先天性肝線維症の特徴はARPKDの合併例に類似していた。先天性肝線維症の主症候は門脈圧亢進症で、肝機能は保たれており、肝酵素はおおむね正常だった。14家系すべてにおいて、先天性肝線維症は垂直遺伝していなかった。すなわち、発端者の両親は多発性嚢胞腎を有するが先天性肝線維症はみられず、このことは修飾遺伝子もしくは遺伝子の影響を示唆している。男児および女児双方が罹患していることから考えると、修飾遺伝子は常染色体に存在しているようで、X連鎖性ではないようである。

表1 肝腎線維嚢胞症の分子遺伝学の要約

 

疾患名

遺伝子座名

遺伝子

常染色体劣性

ARPKD

PKHD1

PKHD1

ネフロン癆1 NPHP12 NPHP1
NPHP2 INVS
NPHP3 NPHP3
NPHP4 NPHP4
NPHP5(SLSN5) IQCB1
NPHP63(SLSN6) CEP290
NPHP7 GLIS2
NPHP84 RPGRIP1L
NPHP9 MEK8
NPHP11 TMEM67
NPHP12 TTC21B
NPHP13 WDR19
NPHP14 ZNF423
NPHP15 CEP164
NPHP16 ANKS6
ジュベール症候群および関連疾患5 JBTS1 INPP5E
JBTS2 TMEM216
JBTS3 AHI1
JBTS42 NPHP1
JBTS53 CEP290
JBTS66 TMEM67
JBTS74 RPGRIP1L
JBTS8 ARL13B
JBTS9 CC2D2A
JBTS10 OFD1
JBTS11 TTC21B
JBTS12 KIF7
JBTS13 TCTN1
JBTS14 TMEM237
JBTS15 CEP41
JBTS16 TMEM138
JBTS17 C5orf42
JBTS18 TCTN3
JBTS19 ZNF423
JBTS20 TMEM231
  TCTN2
バルデー・ビードル症候群7 BBS1 BBS1
BBS2 BBS2
BBS3 ARL6
BBS4 BBS4
BBS5 BBS5
BBS6 MKKS
BBS7 BBS7
BBS8 TTC8
BBS9 BBS9
BBS10 BBS10
BBS11 TRIM32
BBS12 BBS12
BBS138 MKS1
BBS143 CEP290
メッケル症候群9 MKS18 MKS1
MKS2 TMEM216
MKS35 TMEM67
MKS43 CEP290
MKS54 RPGRIP1L
MKS6 CC2S2A
MKS7 NPHP3
MKS8 TCTN2
MKS9 B9D1
MKS10 B9D2
MKS11 TMEM231
頭蓋・外胚葉異形成   IFT122
エリス・ファンクレフェルト症候群 EVC10 EVC
EVC2
ジューン窒息性胸郭ジストロフィー JATD1 不明
JATD2 IFT80
腎・肝・膵異形成   NPHP3
X連鎖性 OFD1   OFD1
常染色体優性 ADPKD PKD1 PKD1
PKD2 PKD2

ARPKD:常染色体劣性多発性嚢胞腎
ADPKD:常染色体優性多発性嚢胞腎

  1. OMIMにおいてこの臨床型に関連する遺伝子を閲覧する場合は「ネフロン癆:臨床型シリーズ」を参照。
  2. NPHP1の遺伝子座名:NPHP1, JBTS4
  3. CEP290の遺伝子座名:NPHP6(SLSN6), JBTS5, BBS14, MKS4。CEP290変異はレーバー先天性黒内障(網膜だけが侵される)から典型的には周産期に死に至るメッケル症候群まで幅広い臨床型を示す。
  4. RPGRIP1Lの遺伝子座名:NPHP8, JBTS7, MKS5
  5. OMIMにおいてこの臨床型に関連する遺伝子を閲覧する場合は「ジュベール症候群:臨床型シリーズ」を参照。
  6. TMEM67の遺伝子座名:NPHP11, JBTS6, MKS3
  7. OMIMにおいてこの臨床型に関連する遺伝子を閲覧する場合は「バルデー・ビードル症候群:臨床型シリーズ」を参照。
  8. MKS1の遺伝子座名:BBS13, MKS1
  9. OMIMにおいてこの臨床型に関連する遺伝子を閲覧する場合は「メッケル症候群:臨床型シリーズ」を参照。
  10. EVCEVC2は同じ遺伝子座に面と向かった構造で位置している。

肝腎嚢胞線維症に共通する臨床型 ここでは肝腎嚢胞線維症でもっとも多い臨床型について述べる。ひとつひとつの肝腎嚢胞線維症ははっきりとした特徴をもつが、いくつか重複する臨床的特徴や関連遺伝子が存在する(表1を参照)。

  • 先天性肝線維症はARPKDやメッケル症候群では一貫して認められる。ジュベール症候群および関連疾患、バルデ
  • ビードル症候群、口・顔・指症候群1型、エリス・ファンクレフェルト症候群、ジューン窒息性胸郭ジストロフィー、腎・肝・膵異形成における頻度はさまざまである。
  • ダンディー・ウォーカー奇形/巨大脳槽から(ジュベール症候群および関連疾患やメッケル症候群でみられるような)後頭部脳ヘルニアまでに至る中脳/後脳の発達異常は肝腎嚢胞線維症で2番目に多くみられる症候である。
  • 網膜変性は網膜の特化した一次繊毛である光受容体の結合繊毛の病変で、肝腎嚢胞線維症ではよくみられる症候である。網膜変性は、バルデー・ビードル症候群、シーニア・ローケン症候群、ジュベール症候群および関連疾患の一部では一貫して認められる。
  • 多指症はメッケル症候群、バルデー・ビードル症候群、口・顔・指症候群1型、ジュベール症候群および関連疾患などの多くの繊毛障害でさまざまな頻度で認め、ほとんどは軸後性で上下肢ともにみられうる。
  • 内臓逆位(側性奇形、situs inversus)は一次繊毛疾患の一部(バルデー・ビードル症候群、腎・肝・膵異形成など)に認められる。位置異常は肺・心臓・肝臓・消化管・脾臓といった内臓の完全もしくは部分的な逆位を呈する。腎・肝・膵異形成における内臓逆位にはいわゆる多脾症候群/無脾症候群が含まれる。一部の繊毛障害にしか内臓逆位を認めないのは、一次繊毛蛋白の一部しか体の非対称性を決定する胎芽のノード繊毛の機能に重要ではないという事実に基づいている。

現在のところ、肝腎嚢胞線維症は臨床型によって分類されている。しかしながら、肝腎嚢胞線維症の間においてかなり多くの臨床型や遺伝子型が重複しているため(表1を参照)、将来的な遺伝子に基づく分類は現在の臨床型に基づく分類とはかなり異なったものになると思われる。

さらに、繊毛障害(ネフロン瘻やジュベール症候群および関連疾患など)患者の大部分では、同定される遺伝子変異は1つだが遺伝子変異(NPHP6, JBTS5, MKS4やレーバー先天性黒内障に関連するCEP290など)に関連した臨床型はきわめて多彩である。このことは、一部の肝腎嚢胞線維症患者では繊毛や基底小体のタンパクをコードする遺伝子変異が1つより多い可能性があることを示唆している。

遺伝子型と臨床型の関連

ARPKD 周産期に重篤なARPKDや先天性肝線維症を呈する患児のほとんどはPKHD1に2つのタンパク切断型変異をもつ。新生児期をこえて生存する患児のほとんどは少なくとも1つのより軽度な病原性(ミスセンス)変異をもつ。しかし、ARPKD/CHFにおける周産期の重症度は腎疾患の程度によるところが大きい。PKHD1関連先天性肝線維症における遺伝子型−臨床型相関のデータは現時点で存在しない。


評価戦略

一度発端者で先天性肝線維症の診断がつけば、予後予測や遺伝カウンセリングの助けとなるように先天性肝線維症の特異的な原因の精査を続いて行うことができる。

家族歴 肝腎嚢胞線維症、先天性肝線維症/カロリ症候群、原因不明な肝・腎疾患、そしてこのGeneReviewで論じた多系統疾患の合併所見についての詳細な三世代にわたる家族歴は、先天性肝線維症患者における遺伝パターンを知る助けとなりうる。

  • 親族の病歴や同胞の医学的問題に対する注意や同胞における通常ではみられない所見の評価は、
    表1で論じた常染色体劣性疾患の1つが存在するかをはっきりさせるかもしれない。
  • 発端者で常染色体劣性疾患を認めず所見や家族歴が常染色体優性遺伝を示唆するのなら、ADPKDに特徴的な無症候性の腎・肝疾患の存在を評価するために両親や同胞に対するエコー検査を行うことは、家族歴がない場合においてでさえも有用である。

身体診察 以下のような他の所見の存在により、多発性嚢胞腎、ネフロン癆、尿細管間質性腎炎、腎石灰化症、海綿腎、正常に見える腎臓における尿濃縮障害など特異的な診断を下せる可能性がある。

網膜障害、眼コロボーマ、眼球運動失行、発語失行、脳底槽の拡大やダンディー・ウォーカー奇形から古典的な大臼歯サインに至るまで非特異的な後頭蓋窩の異常を含む中脳・後脳の異常、発達遅滞、口腔異常、多指症、肥満、内臓逆位、低身長もしくは骨格形成異常を示唆するその他の異常など。

検査

腎機能検査、エコー、骨格系の検査、完全な眼の検査、脳MRIを含むその他の評価は、家族歴や身体診察で認めた異常に基づき、先天性肝線維症を合併する肝腎嚢胞線維症の診断を行う際に有用である可能性がある。

分子遺伝学的検査

肝腎嚢胞線維症の臨床的診断は分子遺伝学的検査につながるけれども、同疾患のいくつかの独特な側面は一般的に診断的アプローチを複雑にする可能性がある。肝腎嚢胞線維症は遺伝学的には不均一で、臨床型と関連遺伝子はきわめて重複している。ネフロン癆は15遺伝子、ジュベール症候群および関連疾患は20遺伝子、バルデー・ビードル症候群は14遺伝子、メッケル症候群では11遺伝子の病原性変異と相関する(表1を参照)。
典型的なARPKD/CHFにおいて診断はしばしば臨床所見によって行われる。しかし、とくに非典型的な症例においてPKHD1の分子遺伝学的検査が行われることが増えてきている。

ヨーロッパを起源とする民族のメッケル症候群患者では、MKS1における29塩基対のIVS15-7_35欠失の検査を優先すべきである。MKS1TMEM67の検査は臨床型に基づいて優先される可能性がある(「原因」の「メッケル症候群」の項を参照)。

多遺伝子パネル 先天性肝線維症を合併する疾患が疑われる発端者の遺伝学的診断において、単一遺伝子もしくはシークエンス解析の代わりになるものに多遺伝子パネルがある。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

先天性肝線維症を合併する症候群は、多系統疾患として常染色体優性、常染色体劣性、X連鎖性に遺伝する。遺伝カウンセリングは正確な遺伝学的診断に基づく。
先天性肝線維症はまれに孤発症例がある。孤発性の先天性肝線維症を発症する遺伝子変異は不明である。

患者家族の経験的リスクー孤発性先天性肝線維症

発端者の両親、同胞、子ども 孤発性先天性肝線維症患者の両親、同胞、子どもにおける経験的リスクのデータはない。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画

  • 遺伝学的リスク評価、出生前診断の可否などについての議論の最適な時期は妊娠前である。
  • 若年成人患者に対して遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いなど)の申し出をすることは適切である。

DNAバンキング は主に白血球から調整したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断および着床前診断

分子遺伝学的検査 先天性肝線維症は、典型的には特異的な症候群の患者において認めるいくつかの症候の一つである。ひとたび家族内で病原性変異が同定された場合、リスク妊娠の出生前診断や着床前診断は可能なオプションである。

エコー検査

  • このGeneReviewで述べた肝腎嚢胞線維症患者における胎児肝のエコー輝度は、出生前エコー検査においては確認されていない
  • 肝腎嚢胞線維症のほとんどの症例において、出生前エコー検査では肝疾患よりも腎疾患の所見(拡大または正常サイズの高輝度な腎および羊水過少)を認める、もしくは多指症、後頭部脳ヘルニア、小脳低形成、そのほかの中枢神経奇形、口唇口蓋裂、骨成長異常のような合併奇形を認める傾向にある。
  • カロリ症候群の出生前発症を認めたまれな例では、エコーで胎児肝嚢胞が認められる。

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

先天性肝線維症と診断された患者において、疾患の広がりやニーズを把握するため、以下のような評価が推奨される。

  • 軽度〜重度の門脈圧亢進症、脾機能亢進症、胆管枝の異常を識別するために、血算、肝酵素、凝固系、エコー。
  • とくに血小板が経時的に著しく減少した場合もしくは腎移植のような治療を開始する前に、静脈瘤のスクリーニングのため上部消化管内視鏡。小児では広く受け容れられているわけではないが、静脈瘤のスクリーニングは予後予測、治療計画、静脈瘤出血の一次予防を可能にする。
  • 立位の酸素飽和度計測によって肝肺症候群、心エコーによる肺動脈圧の推定によって門脈肺高血圧症のスクリーニングを行う。
  • 臨床遺伝科への診療依頼。

病変に対する治療

先天性肝線維症の根本的な治療法はない。原発性の胆管板形成異常、線維化、胆管枝異常に対する治療法はない。合併症の治療には、他の肝疾患からの類推、症例報告、演繹的推論をもとにした治療法が用いられる。
先天性肝線維症の最も重要な症候は静脈瘤出血、脾機能亢進症、胆管炎、そしてそれよりは少ないが胆管結石、胆管癌、肝細胞癌である。

静脈瘤出血 静脈瘤の治療法は概説されてきた。門脈圧亢進症の治療経験がある者により治療は行われるべきである。
(静脈瘤出血に先立つ)一次予防は静脈瘤のスクリーニングと、心拍数や血圧で調整した非選択性β遮断薬による中等度〜大きな静脈瘤の治療である。もしβ遮断薬に忍容性がない場合は、静脈瘤の結紮を考慮すべきである。小児における治療は成人ほどよく確立していない。小児の静脈瘤治療に経験のある三次施設に患児を紹介するべきである。

静脈瘤出血の標準的な治療法には初期の十分な静脈アクセス、蘇生、過剰にならない輸血、オクトレオチド、予防的抗菌薬、プロトンポンプ阻害薬などがあり、安定した場合は内視鏡を行う。

静脈瘤出血の二次予防(出血が一度既に起きた場合)には、食道静脈瘤の結紮、胃静脈瘤へのヒストアクリル注入、非選択性β遮断薬の継続使用などがある。結紮器具は一番小さな内視鏡にはうまく装着できないため、静脈瘤出血を起こしている体格が小さな小児ではしばしば硬化療法が代わりに施行される。

反復性の静脈瘤出血(とくに胃静脈瘤が存在する場合)を起こした患者では、静脈瘤結紮の反復よりも門脈体循環シャント術を考慮するべきである。この治療は経験のある施設で行われるのが最もよい。

議論の余地はあるが、門脈圧亢進症が進行性で肝移植でも合成能の回復が期待できない場合には、静脈瘤出血をおこしたことがない先天性肝線維症患者に対してシャント術を考慮することは合理的であるかもしれない。たとえば、静脈瘤出血に対する緊急治療を行える専門施設がない場合、出血を起こしたことがない大きな静脈瘤を有する患者でシャント術は強く考慮されるだろう。

経頚静脈肝内門脈体循環シャント術(TIPS)は広く行われている。しかし、筆者の意見ではあるがTIPSは緊急を除けば適応ではない。その閉塞率を考えると、とくに長期にわたって考慮した場合に、TIPSは十分な開通を維持するためには繰り返し施行が必要になる可能性がある。さらに、TIPSの評価や施行にしばしば用いられる経静脈的な造影剤は潜在的な腎毒性がある。これは先天性肝線維症とARPKDの典型的な合併例ではよく考えなければならない。

脾機能亢進症 脾機能亢進症は通常臨床的に重大な続発症はきたさない。著しい脾腫を認める患者は、コンタクトスポーツや脾損傷を起こしうる活動を行う際には脾臓保護具を装着する。
脾摘は門脈圧亢進症をよくせずしばしば増悪させるため禁忌である。

胆管枝の異常 胆管拡張を認める患者に、原因不明の発熱もしくは黄疸を伴う/伴わない右上腹部痛を認めた場合、胆管炎を考慮し精査すべきである。
胆管炎は適切な抗生剤の早期投与でよく治療される。
分節的な胆管枝異常を認め胆管炎を反復する患者に、術後に他の部位に嚢胞がみられる可能性はあるけれども肝臓の部分切除を行うかどうかについては意見が分かれている。さらに広汎な胆管異常を伴うか伴わないかによらず、反復性胆管炎は肝移植で最もよく治療される。肝外胆管の嚢胞が反復感染もしくは結石を合併する場合、総胆管切除およびRoux-en-Y法による肝十二指腸吻合が推奨される。

胆管結石 胆管結石の治療はその部位、数、サイズによる。最善の治療は胆管結石の治療経験が豊富な三次施設で受けられる。

胆管癌および肝細胞癌 これらは多くの専門チームによって治療されるべきである。

患者教育 静脈瘤出血の症状(吐血・下血・血便)や胆管炎の症状(発熱・腹痛・黄疸)を教え、そのような症状が起きた場合には適切な治療を受けられるように受診を指示する。

二次合併症の予防

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は慢性肝疾患患者に対するA型肝炎、B型肝炎の予防接種を推奨している。
エビデンスは欠いているが、反復性胆管炎に対する予防的抗菌薬はときに胆管炎患者に用いられる。

経過観察

全体的な健康状態を緊密にフォローすべきである。成長率の低下は、門脈圧亢進症による可能性よりも腎機能低下のような他の合併症による可能性のほうが高いため精査を行うべきである。
肝硬変患者の研究結果から類推すると、先天性肝線維症患者においてもとくに血小板減少が経時的にきわめて減少する場合もしくは腎移植のような治療を行う前には食道静脈瘤のスクリーニングを行うべきである。小児におけるスクリーニングについては議論の余地があり、治療(β遮断薬、静脈瘤結紮など)を考慮する場合にのみ施行されるべきである。

  • 小さな静脈瘤は1年に上部消化管内視鏡を繰り返す必要がある。
  • 血小板減少を認めるが上部消化管内視鏡で静脈瘤を認めない場合、内視鏡を2〜3年ごとに行うべきである。

肝肺症候群のスクリーニングは立位での酸素飽和度測定によって行う。門脈肺高血圧症のスクリーニングは、血小板減少を認めるか治療開始前にエコーによる肺動脈圧測定によって行う。
画像検査により以下が可能となる。

  • 脾臓サイズの評価による間接的な門脈圧亢進症のフォロー。
  • 胆管異常(肝嚢胞など)の視覚化により、胆管炎・胆管結石・胆管癌の高リスク患者を特定できる。
    経過観察目的の画像検査の適切な頻度は決まっておらず、疾患の重症度による。軽症患者においては、2年ごとのエコー検査で十分であろう。より重症な患者においては、1年に1回のエコー検査で疾患の進行の十分なモニタリングを行える。

    注:胆管癌や肝細胞癌の経過観察におけるデータはない。しかし、小児における頻度はきわめてまれであると考えられている(「診断」「臨床診断」の項を参照)。

避すべき薬物や環境

以下の薬物/疾患は肝線維化を進行させることが知られているが先天性肝線維症でも同様で、避けるか積極的に治療していくべきである。

  • アルコール
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 低栄養
  • HIV感染
  • 免疫抑制状態(腎移植後など)

肝毒性のある薬物は避けるべきである。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は消化管出血や血小板機能障害による凝集能低下のリスクがあるため、静脈瘤を認める患者では避けるべきである。

ウイルス性肝炎のリスクを増加させるような行動は避けるべきである。

コンタクトスポーツ、脾損傷を起こすような活動は脾臓が著しく大きな場合には避けること。

予防研究中の治療法

なぜウルソデオキシコール酸のような利胆薬が胆管異常の進展やあまつさえ線維化も阻害するのか、理論的な理由はあるけれども証明はされていない。
さまざまな疾患に対する臨床試験に関する情報は、ClinicalTrials.govを参照のこと。


 

原文 Congenital Hepatic Fibrosis Overview

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