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コフィン-ローリー症候群
(
Coffin-Lowry Syndrome)

Gene Review著者:Alasdair GW Hunter, MD, Fatima E Abidi, PhD
日本語訳者:市川真臣、山内泰子、升野光雄、黒木良和
(川崎医療福祉大学大学院医療福祉学研究科遺伝カウンセリングコース)
Gene Review 最終更新日: 2009.1.15 日本語訳最終更新日:2010.5.17.

原文 Coffin-Lowry Syndromey


要約

疾患の特徴 

コフィン-ローリー症候群(以下CLSと略す)は、通常、男性の重度から最重度精神遅滞によって特徴付けられ、さほど重度ではない罹患者も報告されている。ヘテロ接合の女性では、知能の範囲は正常から最重度の遅れまである。顔貌は、罹患した年長男児や成人に特徴的である。手は短く、柔らかく、肉付きが良く、しばしば、幅広(近位)から小さな末節骨と爪へと先細りする、著しく過伸展する指を伴っている。男性は、一貫して身長は3パーセンタイル以下である。小頭症は、よくみられる。心奇形もあるかも知れず、これは早死にの原因となりうる。刺激誘発転倒発作(SIDAs)(予期せぬ触覚や聴覚の刺激あるいは興奮が誘引となる意識喪失のない短時間の虚脱)が罹患者のおよそ20%にみられる。典型的なSIDAsは、幼児期中期と10代の間に始まる。進行性の脊柱後側弯症が、長期管理のうちで最も難しい側面のひとつである。寿命は短縮されるだろう。

診断・検査 

CLSの診断は、重度発達遅滞、特徴的な頭蓋顔面と手およびX線所見を伴う男性において確立される。保因者女性は、軽度に罹患しているかもしれない。
CLSとの関連が公表されている唯一の遺伝子である、RPS6KA3の分子遺伝学的検査は、典型的なCLSの確定診断に利用されるが、除外診断には利用できない。シークエンス解析は、発端者のおよそ35%~40%において変異を確認する。

臨床的マネジメント 

症状の治療:SIDAsは、バルポレイトやクロナゼパム、あるいは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のような薬剤によって治療されており、頻繁にSIDAsを経験する者は、車椅子の使用が求められるかもしれないし、可能ならば刺激するものから保護されるべきであろう。リスペリドンは、破壊的あるいは自傷行為がみられる者には有益かもしれない。哺乳困難、成長速度の異常、問題行動、脊柱後側弯症や肥満がもしみられたら、標準的な方法による治療を行う。

二次的合併症の予防心臓呼吸を危機にさらすまでの脊柱後側弯症の進行を妨げる介入。サーベイランス:定期的な聴覚、歯、視覚の検査。毎年の臨床的な心臓の検査に加えて、10才までにと、以降5から10年毎の心エコー図。進行性の脊柱後側弯症に対する脊柱の定期的な観察。

回避すべき薬剤や環境SIDAsを経験している罹患者は、可能な限り驚かされることや転倒から保護されるべきである。

遺伝カウンセリング 

CLSは、X連鎖優性形式で遺伝する。発端者のおよそ70%~80%はCLSの家族歴をもたず、20%~30%は、さらに1人以上の罹患した家族構成員をもつ。保因者であることが分かっている女性の子どもは、疾患の原因となる変異を受け継ぐリスクが50%である。疾患原因の変異を受け継いだ男性は罹患するだろう。疾患原因の変異を受け継いだ女性は保因者となり、少なくとも何らかの発達遅滞と、軽いCLSの身体徴候の高いリスクがあるだろう。リスクのある血縁者のための保因者診断とハイリスク妊娠のための出生前診断は、疾患原因の変異が罹患している家族構成員において確認されている場合か、連鎖研究が変異を伝える(潜在的に伝える)X染色体を除外できる家族において可能である。


診断

臨床診断

罹患男性

fig1

図1.CLSを伴った2歳男児の正面像。比較的軽微な顔貌特徴として、両眼隔離、軽度の眼瞼斜下、幅広い鼻小柱を伴った短い鼻、厚くわずかにめくれあがった口唇がみられる(患者は既知のRPS6KA3の変異をもつ)。

fig2

図2 AとB. 同じ男児の5歳時の正面と側面像。より三角形の形をした顔、粗野が増し、典型的なCLSの顔貌の徴候の発現がみられる(患者は既知のRPS6KA3の変異をもつ)。

fig3

図3.青年の正面像。両眼隔離、軽度の眼瞼斜下、厚い口唇と小さい歯、といった比較的軽度の顔貌の徴候が見られる。その鼻小柱は厚みがあるが、鼻孔はちょうど良い大きさであり、疾患の発現における異人種間の違いが反映されているようである。(患者は既知のRPS6KA3の変異をもつ)。

fig4

図4 AとB. 図1と2で例示した子供の2歳時(A)と5歳時(B)の手(患者は既知のRPS6KA3の変異をもつ)。

fig5

図5  AとB. 

  1. 古典的な先細りと柔らかい外見の年長児の手。

B.図3で例示した罹患者の手にみられたよりわずかな特徴。
(患者は既知のRPS6KA3の変異をもつ)。

(日本語訳・編集者注:詳細な図は、原文参照のこと)

臨床所見

CLSに罹患している男性における最も大切な臨床的徴候は以下の通りである(図1,2,3,4,5参照)。

  • 発達典型的な罹患男性は中等度から重度精神遅滞がある。分子遺伝学的検査の出現により軽度罹患男性が今日同定されている[Field et al 2006]。
  • 頭蓋顔面罹患している年長男児や成人において、顔貌は特徴的である(図1,2と3参照)。
    • 通常、前額突出と突出した眉、盛り上がった眼窩上縁
      • 通常、眼瞼斜下を伴った際立った両眼隔離、時折、軽い内眼角開離を伴った比較的正常な眼窩周囲域
      • 一貫して、しばしば目立つ、鼻の所見として低い鼻梁、丸い鼻先、厚みのある鼻翼と中隔を含み、結果として生じる小さい鼻孔
      • 通常、開いたままの大きな口、めくれあがった下口唇を伴った開いた口唇
      • 幼児期には厚みをおびた顔貌で、しばしば、年齢と共に、より‘拳闘家’の容貌へと粗野になる
  • 聳立耳
  • 四肢
    • 短く、やわらかい、肉付きのよい手、しばしば目立って過伸展する指、小指球の一部を横切る短く水平な手掌線
    • 比較的幅広い近位から遠位にかけて狭くなる際立った先細りの指、小さな末節骨と爪(図4参照)。手の特徴は時々微妙かもしれない(図5参照)。
    • やわらかく、柔軟な手は、肥満者にみられるような、手のひらにほとんど‘フラシ天の座布団‘のような感じを伴う
    • 丸々とした、肉付きのよい前腕:年少児の診断において、もしかすると有用な徴候
  • 筋骨格
    • 頻繁に鳩胸や漏斗胸
    • 幼児期に始まる脊柱後側弯症は、しばしば進行性である

メモ:何人かの著者は年少児における診断は難しいかもしれないと述べている。確かに、ほとんどの症候群においてよりも、CLSの顔の特徴は年齢と共にだんだん見分けられるようになる。しかしながら、新生児においてさえも良く考えれば、CLSの診断は、多くの場合明白である。

CLSのX線写真所見は、個々にはあるいはパターンとしては非特異的であるが、診断を確実にする手助けになるかもしれない[Hanauer & Young 2002]。
  ・大きな前頭洞を伴う厚い頭蓋
  ・狭い椎間腔と関連する変形性椎骨変化を伴う椎骨前縁突出
  ・脊柱後側弯症
  ・狭骨盤
  ・中手骨の偽骨端、中節骨の過少モデリング、ドラムスティック状の末節骨(中手骨・指節骨プロフィールは診断の助けとはならないようである)。

罹患女性

発達遅滞や頭蓋顔面と四肢の変化の程度は、重度(男性において見られるような)から全く無い程度にまで及ぶ。罹患者の知的に正常な女性血縁者の慎重な診察は、軽度の顔貌や 手の症状発現を明らかにするかもしれない。

検査

リボソームS6キナーゼ酵素測定

  • リボソームS6キナーゼ酵素測定は、培養線維芽細胞や形質転換リンパ芽球に行われ、RPS6KA3変異をもつ男性において活性の減少を示す。そのような検査は研究ベースにおいてのみ利用可能である[Merienne et al 1998, Delaunoy et al 2001, Zeniou et al 2002a]。

    メモ:X染色体の不活化の結果生じる広い範囲の酵素活性のため、その測定は女性にお いては有用ではない [Delaunoy et al 2001]。

  • Micheliら[2007]は、CREB-ペプチドを基質として用いる研究法を改善し、男性と2人の臨床的に罹患している女性に成功のうちに検査できた。そのような検査は研究ベースにおいてのみ利用できる。

分子遺伝学的検査

遺伝子RPS6KA3RSK2としても知られている)はCLSとの関連が知られている唯一の遺伝子である。

その他の座CLSに一致すると考えられる臨床像をもつ者すべてが、RPS6KA3遺伝子変異を持つとは限らないことが示されてきた[Delaunoy et al 2001, Zeniou et al 2002b]。しかしながら、この所見が、CLSにおける真の遺伝的異質性を示すのか、臨床的根拠のみでは重複する特徴をもつ疾患を区別することができないことを示すのかは、まだ決定されていない。第2のCLSの遺伝子座を示すような、十分に記述されたCLSの家族における公表された連鎖データはない。

RPS6KA3経路において相互作用すると考えられる遺伝子が、RPS6KA3に確認される変異を持たない罹患者で分析され、いくつかの遺伝暗号の変化が見いだされた[CE Schwartz, 私信]。しかしながら、研究対象の臨床データと写真がまだ入手できていないので、これらの変異の重要性は、まだ証明されていない。このように、これらの人がCLSの表現型にいかによく適合するかは知られていない。

臨床検査

シークエンス解析.シークエンス解析は臨床ベースにおいて入手できるが、この方法を用いた変異検出率の研究報告はない。変異検出率の入手できるデータは、変異スキャニングを用いた研究からのものである(現在のところ入手できるのは研究ベースのみである)。RPS6KA3のすべてのエクソンとイントロン−エクソン境界の完全二方向性シークエンスは、下記の2つの変異スキャニング研究において用いられた方法と少なくとも同様に感度の良い方法であると期待できる。

  • CLSの臨床像を伴った250を超える罹患者を含む研究において、一本鎖コンフォメーション多型分析(SSCP)は、1つの研究では細胞機能分析を組み合わせたもので、約37%の罹患者において変異を確認した[Jacquot et al 1998a, Delaunoy et al 2001, Zeniou et al 2002b]。
  • 血縁のないCLS 106人において、変異は26%に確認された[Abidi & Schwartz, 未発表]。この研究では、SSCPを用いた変異スキャニングにより最初は見逃されていた1つのスプライス部位変異が、二方向性シークエンスによって発見された。注目すべきことは、この集団におけるほとんどすべての変異は、研究の最初の半分で発見されていた。これは、全体での低い検出率は、検査の臨床的閾値を下げたことを反映するかもしれないという見解を支持する。

欠失/重複解析.罹患した男性において、RPS6KAのエクソンシークエンスは遺伝子内の欠失を検出できるが、いくつかの重複の確認を見落とすであろう。一方、保因者女性におけるエクソンシークエンスでは、欠失も重複も容易には検出しない。Marques Pereiraら[2007]は、CLS罹患者においてRPS6KA3遺伝子内のインフレームの多数のエクソンの縦列重複の最初の例を報告し、遺伝子内の高頻度のAluシークエンスに気づき、これらは比較的一般的な出来事かもしれないと示唆している。しかしながら、このような研究はこれから成し遂げられねばならない。RPS6KA3のエクソンと多数のエクソンの欠失のいくつかの事例が記述されている。(表A参照:遺伝子座特異的データベースとHGMD)

表1は、この疾患における分子遺伝学的検査を要約する。

1CLSに用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子記号

検査方法

検出される変異

検査方法による変異の検出頻度

検査の実施可能性

罹患男性

保因者女性

RPS6KA3

シークエンス解析

シークエンスバリアント

〜90%‐95%2

〜90%‐95%2

臨床

部分的と全遺伝子欠失

0%3

欠失/重複検査4

部分的と全遺伝子の欠失と重複

不明3

不明5

 

 

 

 

 

  1. リンパ球で測定されるような偏りのあるX不活化が、保因者女性で観察される臨床的差 異の原因となるか、あるいは保因者検出に有用な手段であるかという想定を支持するデータは今までにない。
  2. 著者の未発表の経験では、臨床的に典型的な事例においては、検出率は著しく高い(〜90%−95%)。
  3. シークエンス解析は、PCRによる遺伝子増幅の欠如により、罹患男性におけるX染色体の推測上のエクソン、多数のエクソンと全遺伝子の欠失を検出できる。確定には欠失解析が必要となるかもしれない。シークエンス解析は、罹患男性におけるエクソン、多数のエクソンと全遺伝子の重複は検出できない。
  4. ゲノムDNAのシークエンス解析では容易には検出できない欠失/重複を検出する検査。定量的PCR、リアルタイムPCR、MLPAとアレイCGHを含む多様な方法が使えるだろう。
  5. ゲノムDNAのシークエンス解析は、保因者女性におけるX染色体のエクソン、多数のエクソン、または全遺伝子の欠失や重複は検出できない。

検査結果の解釈シークエンス解析結果の解釈で熟慮すべき問題については、ここをクリック。

検査計画

発端者における確定診断

  1. 罹患男性において、RPS6KA3の22のエクソンの二方向性のシークエンスは、コード領域やイントロン/エクソンの境界におけるいかなる変異も検出するはずである。
  2. 欠失/重複解析は、シークエンス解析によって変異が確認されなかった罹患女性において考慮される。
  3. リボソームS6キナーゼ酵素活性測定は、CLSの表現型と一致するが、シークエンス解析によってRPS6KA3変異が見つからない男性において研究ベースで行われる。この検査は女性においては有用ではない。

女性保因者の同定には、以下のいずれかを必要とする。(1)家族における疾患原因となる変異の事前同定か(2)罹患男性が検査の求めに応じられない場合は、分子遺伝学的検査(a)最初はシークエンス解析により、もし変異が確認できなかったら、(b)エクソン、多数のエクソン、または全遺伝子欠失の検出法による。
メモ:保因者は、このX連鎖性疾患のヘテロ接合体であり、疾患に関連した臨床所見をもっているかもしれない。

リスクにある妊娠に対する出生前診断と着床前遺伝学的診断(PGTは、家族における疾患原因変異の事前確認を必要とする。

遺伝学的に関連する疾患

非症候群性精神遅滞.CLSの軽い表現を伴った2人の同胞は、RPS6KA3におけるミスセンス変異をもっていると報告された[Manouvrier-Hanu et al 1999]。類似した家族は、Fieldsらによっても報告されている[2006]。

非症候群性精神遅滞(MRX19)の一つの型は、RPS6KA3のミスセンス変異によることが示された[Merienne et al 1999]。ミスセンス変異と軽い精神遅滞のみを伴ったもう一人が、Delaunoyら[2001]によって報告された。分子遺伝学的診断の出現は、さらなる軽い事例の診断の確定において助けになるかもしれない。


臨床像

自然歴

発達.CLSは男性において重度から最重度精神遅滞によって特徴づけられる。ヘテロ接合体の女性においては、知的範囲は正常から最重度精神遅滞にまでわたる。早期の発達評価は、最終的な発達の予後を過大評価してしまうかもしれない[Hunter 2002]。Touraineら[2002]は、詳細については提供していないが、“私たちのデータは、適切なケアが提供されるやいなや、精神遅滞は大多数の患者で中等度にすぎないことを示す”と述べた。そしてFieldら[2006]によって報告された家族は、多様で軽度の身体的徴候を示し、軽度の精神遅滞だけを伴ったメンバーを含んでいた。著者らは、ファーストフードレストランで働いているRPS6KA3変異が証明された患者を知っている[ C Skinner, 私信]。

神経精神医学.CLS患者は、一般的に幸福で、のんびりしているようにしばしば記述されるが、自傷とその他の行動の問題が報告されている。

詳細な神経学的評価は、重度の精神遅滞によって妨げられるかもしれない。報告された所見は、体力と筋肉量の喪失、深部腱反射の低下と亢進の両者、睡眠時無呼吸、脳卒中、進行性痙縮、および歩行能力の喪失を伴った進行性の対麻痺を含む。後者は、黄色靭帯の石灰化と先天性脊柱管狭窄症の両者によるものとみなされてきた[Hunter 2002]。

特に注目すべきは、刺激誘発転倒発作(SIDAs)であり、発症は4から17歳の間で、平均発症年齢は8.6歳である[Nakamura et al 2005]。SIDAの間、予期せぬ触覚や聴覚の刺激あるいは興奮が、下肢の60から80msの無筋電図活動を誘発し、意識喪失がないにもかかわらず短時間の虚脱を招く[Crow et al 1998, Nakamura et al 1998]。NelsonとHahn[2003]は、SIDAsのビデオによる例証を提示した。Stephenson[2005]らは、CLS財団データベースから20%(34/170)の有病率を記録した。

女性もまた罹患するかもしれない[Fryssira et al 2002]。NelsonとHahn[2003]によって報告された2名の2例目では、6歳時の典型的なSIDAsは、後に、緊張性の筋電図活動性の増加を伴う短時間のミオクローヌス攣縮と強直性攣縮に取って代わられた。

Stephensonら[2005]もまた、運動異常症の性質は年齢によって変化し、1個人は1種類以上の神経学的徴候をもつことがあると強調した。症状発現の範囲は、刺激によって変化する情動脱力発作、驚愕過剰症、遷延性緊張性反応、および真のてんかん発作を含む。

てんかん発作は、およそ5%の個人が冒される[Stephenson et al 2005]。

女性保因者は、一般集団よりも高い割合で精神疾患を有するかもしれない。女性68人(CLS女性22人、ヘテロ接合体38人、‘罹患した’姉妹8人)中6人(8.8%)は、統合失調症、双極性障害、‘精神病’を含む精神疾患の診断を受けていた[reviewed in Hunter 2002]。Micheliら[2007]によって研究された2人の女性のうち1人が、‘精神病’を有していると記述され、Wang[2006]らによって2人の罹患している姉妹のうち1人が、統合失調症を有していると報告された。

心血管.罹患男性のおよそ14%と罹患女性の5%が、心血管疾患を有している[Hunter 2002]。CLS患者の多くは、徹底した初回や継続した心臓の評価を受けていないので、これらの割合は、低く見積もられているだろう。報告は以下を含む:僧帽弁、三尖弁、大動脈弁の異常;短い腱索;心筋症(1人に心内膜線維弾性症を伴う);説明できない、うっ血性心不全;および大動脈と肺動脈の拡張[reviewed in Hunter 2002]。Facherら[2004]により報告された1人に拘束性心筋症がみられた。心臓異常は、早死にの一因となるかもしれない。

筋骨格.進行性の脊柱後側弯症は、CLS患者の長期管理のうちで最も難しい側面のひとつである。正確な有病率は知られていないが、罹患男性の少なくとも47%と女性の32%が、進行性の脊柱後側弯症をもっていることを報告されている[Hunter 2002]。その割合は、整形外科の紹介クリニックからの報告においてより高かった[Herrera-Soto et al 2007]。公表された報告において、いかなる重篤さの公認の定義も採用されてはいないが、重篤さは、しばしば長い年月の間に進行し、脊柱後側弯症により呼吸器が危険にさらされることが早死にの一因となることは明らかである。少なくとも2人の死亡が、脊柱後側弯症の手術の間に起こっている。

X線写真にみられるその他の微小な骨格変化は、臨床的転帰をもたらさない。

成長.出生前の成長は正常である。成長障害は、通常、出生後の時期の早期に起こる。男性と重度の罹患女性は、一般的に身長の3パーセンタイルより下になるが、曲線をたどると予測される。低身長は、不均衡に短い四肢を反映しているかもしれない[Hunter 2002, Touraine et al 2002]。小頭症はよく起こるが、多くのCLS患者は、正常な頭囲をもつ。

歯科.歯の異常はよく起こり、小さい歯、位置異常、開咬、歯数不足症、早期萌出、または萌出遅延、1つ以上の原因と思われる早期喪失を含む。口蓋は高い。年齢と共に年少児の下顎後退症は、顎前突症に取って代わる傾向がある。

聴力損失.CLS患者のほんの少数だけが視覚と聴覚の形式的な評価を受けていると思われる。しかしながら、14/89の罹患男性と1/22の罹患女性は、聴力損失をもつと報告されている[Hunter 2002]。

聴力図は、感音難聴を明らかにするだろう。

内耳奇形が後期発症の聴力損失の原因として報告されている[Rosanowski et al 1998]。家族内における聴力損失の集積性が起こるかもしれない。

視覚の問題.重大な視覚の問題はめったにないようにみえるが、白内障、網膜色素の萎縮、視神経萎縮が報告されている。慢性的な瞼の炎症(眼瞼炎)の発生が増加しているかもしれない[reviewed in Hunter 2002]。

神経画像検査は、脳室内、くも膜下とウィルヒョウ−ロバン腔の増加を示すかもしれない[Patlas et al 2003]。ウィルヒョウ−ロバン腔は、脳の加齢徴候と思われ、年齢と認知機能に関連している。菲薄化と無形成を含んだ脳梁の異常は何人かの著者によって報告されている[Kondoh et al 1998, Wang et al 2006]。1例にMRIにて多発性限局性前頭葉の低密度が報告された[Kondoh et al 1998]。脳脊髄液の限局性領域によると考えられる低密度は、3人の罹患同胞においてWangら[2006]によって報告された。彼らは脳梁の菲薄化、小脳虫部の低形成といくらか軽度の脳室の非対称も示した。著者らは、精神遅滞の程度は、MRI所見の重大さと相関すると結論を下した。

Keslerら[2007]は、定量的MRIを行い、罹患男性と女性において、代償性脳室拡大を伴わない、灰白質と白質の容積低下を証明した。それは、細胞増殖の減少のような早期の神経発達異常を示唆する。最大変化の領域は、小脳、側頭葉と海馬であった。後者は、1つの家族で増加し、もう一方で減少した。より大きな容積は年齢の増加に相関した(rho=.986,P<0.000)。脳梁と小脳虫部もまた、全脳容積に比較して相対的に拡大していた。

唯一の磁気共鳴分光法の研究において、大脳基底核と脳室周囲白質は正常と報告された[Patlas et al 2003]。

神経病理学.脳回と層板構造の異常は、剖検で指摘された[Coffin 2003]。

その他.一例のみに報告された所見は、直腸脱、子宮脱、空腸憩室、神経節細胞の減少を伴った結腸憩室、膝窩部のガングリオン、幽門狭窄、一側性腎無発生、前位肛門、顔の色素の増加と拡大した気管を含む[reviewed in Hunter 2002]。

死亡率.寿命は、CLS患者の中には短縮する者もある。文献に報告された者では、死は男性の13.5%と女性の4.5%で、平均年齢20.5(範囲:13−34)歳において起きていた[Hunter 2002]。悪化させる要因は、心臓異常、汎細葉性肺気腫、呼吸器合併症、進行性脊柱後側弯症、痙攣に関連した吸引を含んでいた。Coffin[2003]は、彼の最初の患者の1人は、慢性的な肺と心疾患に肺炎を重ねた結果により18.8歳で死亡し、2番目の患者は、急性の食物吸引により18歳で死亡したと報告した。著者らは、生命を脅かす中枢性と閉塞性の睡眠時無呼吸を呈したCLS患者を知っており、顎の前進術の手術を行った後に呼吸器合併症により死亡した、慢性的な閉塞性と中枢性の睡眠時無呼吸の病歴をもつ別の男性を知っている[Manouvrier-Hanu et al 1999]。

1人の罹患した男性と1人の絶対保因者女性がホジキン病で死亡した。もう一人の保因者である母はウィルムス腫瘍をもっており(ウィルムス腫瘍の概観を参照)、一卵性双胎児の罹患した一人は、後頭蓋窩腫瘍により死亡した。

遺伝子型と表現型の関連

表現型とRPS6KA3変異の部位あるいは型との間に強い相関が存在する訳ではないが、一定のミスセンス変異を伴った者は、より軽い疾患の表現をもつ傾向にある[Delaunoy et al 2001]。非症候群性精神遅滞の一つの型(MRX19;遺伝学的に関連する疾患を参照)をもつと分類された家族は、RPS6KA3にミスセンス変異をもっており、それはリボソームS6キナーゼ酵素活性の80%減少の原因となり、CLS患者で、全てのリボソームS6キナーゼ酵素活性を失う原因となる多くの変異とは対照的である[Merienne et al 1999]。この所見は、いくつかのRPS6KA3変異は、おそらく非CLS表現型または非症候群性]連鎖精神遅滞を引き起こすことを示している。

7人の試料において、Harumら[2001]は、IQとリンパ芽球におけるRPS6KA3を介したCREBペプチドのリン酸化反応の減衰の程度との間に相関があることを示した。

Yangら[2004]は、RPS6KA3によるATF4のリン酸化の欠如は、骨芽細胞の分化におけるATF4の正常な調節機能を妨げるかもしれないと提案し、それは、脊柱後側弯症の進行性をもしかすると説明するだけでなく、CLSにみられるいくつかの骨異常をも説明する。

Nakamuraら[2005]は、N末端キナーゼ領域内か上流のどちらかで切断された変異は、SIDAs特有の感受性の原因となるかもしれないと示唆した。

RPS6KA3変異陽性者と陰性者の一連の臨床デ−タは、肉付きの良い先細りの指、両眼隔離、眼瞼斜下のような一定の臨床徴候の存在が、RPS6KA3変異陽性群を区別する助けとなりえることを示している[F Abidi & CE Schwartz, 私信]。

命名法

初期の著者らは、Lowryら[1971]によって報告された患者が同様の症候群であることが認められるまで、Coffin症候群と引用した。

いくつかの初期の教科書や論文は、Coffin−Siris症候群とCLSを混同していた。

有病率

CLSの推定有病率は公表されていない。著者らの経験に基づくと、1:40,000から1:50,000の割合が適当であろう。これは、しかしながら、実際の有病率を過小評価しているかもしれない。

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

年長児や成人においてCLSの診断は、通常、問題を呈さない。年少児やより軽い罹患女性の所見は、他の症候群と重複するかもしれない。同様に、年長女児と成人は、たとえ彼女らが発端者であったとしても、十分に症候群を表現していれば容易に診断できる。

Borjeson−Forssman−Lehmann症候群(BFLS)は、重度の精神遅滞、CLSと似た手の所見、厚い中隔と小さい鼻孔を伴うこともある短い上向きの鼻と脊柱後側弯症を特徴とするX連鎖劣性疾患である。追加の所見としては、大きく、突出した耳と視覚の問題である。BFLS患者は、さらに極端な性腺機能低下症を呈し、著しい女性化乳房を呈する傾向にある。女性は、症候群の部分的な表現を示すかもしれない。欠けている所見は、著しい両眼隔離、大きな口と厚い口唇である。PHF6遺伝子における変異が原因となる[Lower et al 2002]。

CLSは、Williams症候群、遺伝学的に異質なFG症候群とX連鎖アルファ−サラセミア精神遅滞(ATRX)症候群といくつかの顔貌所見を共有するが、これらの疾患はいずれもCLSにみられる手の変化を示さず、各々が追加の区別する特徴を持つ:

  ・Williams症候群は、さらに心血管疾患(エラスチン動脈症、末梢肺動脈狭窄、大動脈弁上狭窄、高血圧)、結合組織の異常、精神遅滞(通常軽度)、特異的認知の側面、特有の性格特徴、成長障害と内分泌異常(高カルシウム血症、高カルシウム尿症、甲状腺機能低下症と思春期早発)を含む。哺乳困難は、しばしば乳児期において発育不全に導く。罹患者の99%以上は、7q11.2の隣接した遺伝子欠失をもっており、FISHや標的変異分析によって検出可能である。

  ・FG症候群1型(MED12関連疾患を参照)は、X連鎖遺伝、精神遅滞、広い前額、眼瞼斜下を伴った両眼隔離、突出した下口唇、脊柱後側弯症、漏斗胸、いくつかの行動をCLSと共有する。不均衡性大頭、肛門の異常に関連する便秘、幅広い母指(趾)、突出した指尖の隆起、および小さく、丸い、しばしば折り重なった上部耳輪をもったカップ状耳介によって区別される[Graham et al 1998]。筋緊張低下は、しばしば関節制限に進展する。

   部分的な脳梁欠損と乳頭体の結合は比較的よく起こる。

  ・アルファ−サラセミアX連鎖精神遅滞(ATRX)症候群は、性器異常、筋緊張低下を伴った重度の発達遅滞と精神遅滞によって特徴付けられる。性器異常は、尿道下裂と停留精巣から重度の尿道下裂と判別不明性器、46,XYの核型を伴った者における正常にみえる女性性器にまで及ぶ。ATRX症候群は、ATRX遺伝子における変異による。

McCandlessら[2000]は、CLSを示唆する所見をもつ罹患者にdel(10)(q25.1q25.3)を伴っ
た家族を報告した。このように、CLSの非定型的か不確かな診断を伴った者において染色

体検査を得ることは理にかなっている。

臨床的マネジメント

最初の診断後の評価

CLSと診断された者の疾患の程度を確かめるために、以下の評価が推奨される。

  • 身長、体重、頭囲の計測
  • 歩行、腸管あるいは膀胱機能の変化および、てんかん、あるいは運動異常症の評価のための病歴と神経学的診察
  • 発達評価と介入計画の明確化
  • 特に胸部と脊柱に注意した、徹底した筋骨格の診察、もし臨床的な適応があるときは、X線写真による評価
  • 発達と年齢に応じた聴力の評価
  • 歯科の評価
  • 心臓の身体的診察と心電図、10歳までに基線としての心エコー図
  • 眼科評価、屈折と眼底鏡を含む
  • 健康状態の徴候に対して適切な家族構成員の評価
  • 子どものケアのための家族の能力の評価、特にもし母が知的に影響を受けている時には

症状の治療

CLS患者は、コミュニケーションスキルの発達と、自立度を発達させるための活動とセルフケアへの参加といった、あらゆる機会を与えられるべきである。

SIDAsを認識することは、刺激の引き金の発生を最小限にし、転倒からの保護を与える早期介入を可能にするだろう。

  • 異なった投薬の試みと投与量を至適にする努力は、成果を改善するかもしれない[O'Riordan et al 2006]。
    • 抗てんかん薬(AEDs)(例えば、バルプロエイト、クロナゼパム、または選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の試みは、一般にそれらは効果がないが、適応となるかもしれない[Fryssira et al 2002]。
    • ベンゾジアゼピンは、時々服用量の増加において、いくつかの症例において効果的であることを証明している[Nakamura et al 2005, Touraine et al 2002]。
    • 様々な投薬によって改善されなかった1例において、Havaligiら[2007]は、sodium oxybateによる良い反応を報告した。
  • もし頻繁に発作が起こるなら、車椅子の使用は、転倒と負傷を予防するために必要とされるだろう。

リスペリドンは、破壊的行為や自傷行為をあらわす者において有益かもしれない[Valdovinos et al 2002]。

哺乳困難、成長速度異常や肥満が存在するなら、標準的な方法で評価と治療をすべきである。

行動問題の治療は標準的なものであり、定期的な再評価を必要とする。

脊柱後側弯症の治療は標準的なものであるが、成人期に入るときに十分な再評価が必要である。

二次的合併症の予防

脊柱後側弯症と狭窄症のような背椎の問題の早期認識は、進行予防と長期における心血管系や神経系の合併症を防ぐための介入を可能にするだろう。介入は、生命を脅かすかもしれない心臓・呼吸を危険にさらすまでの脊柱後側弯症の進行予防に向けられるべきである。

同様に、いくつかの心臓異常の早期認識は、二次的合併症の予防や適切な機能の延長を可能にするかもしれない。SBE(亜急性細菌性心内膜炎)の予防を必要とするCLS患者もいる。

視覚と聴覚への注意は、いくつかの二次的な行動の変化を防ぐだろう。眼瞼炎の同定と治療は、眼をこすることと、起こりうる網膜の損傷を防ぐだろう。

歯の衛生と歯肉疾患への注意は、早期に歯を失うことのリスクを減少させるだろう。

経過観察

下記のものが適切である:

  • 聴覚と視覚の定期的な検査
  • 年1回の心臓の身体的診察と10歳までに心エコー図。たとえ正常でも、心エコー図は、心筋症の発生率と発症年齢の範囲に関しての不確かさを考慮して、5〜10年毎に行うべきである[Massin et al 1999, Facher et al 2004]。
  • 進行性脊柱後側弯症の進展に対する脊柱の観察。歩行と腸管/膀胱の体質の変化、痛みの表出、およびクローヌスや腱反射異常のような局所の神経学的変化に注目した、脊椎管の狭小化を疑うすぐれた指標があるべきである。
  • 一般集団におけるようなルーチンの歯科評価、しかし、歯の喪失のリスクへ特別の注意を払う。

メモ:CLS患者のフォローアップのために提案されたガイドラインを含んだ表は、Hunter [2005]によって提供された。

回避すべき薬剤や環境

SIDAsを経験したCLS患者は、可能な限りびっくりさせられることや転倒から保護されるべきである。

リスクにある血縁者の検査

遺伝カウンセリングの目的で、リスクにある血縁者を検査することに関する問題については、遺伝カウンセリングを参照。

研究中の治療法

広い範囲の疾患と健康状態に対する臨床研究情報にアクセスするために、米国政府機関の臨床試験を捜してみなさい。

メモ:この疾患における臨床試験はないかもしれない。

その他

相当な社会資源が、CLSと発達遅滞を伴った女性の家族を援助するために必要とされるだろう。

遺伝クリニックは、遺伝専門職からなり、入手できる利用者本位の資源情報だけでなく、自然歴、治療、遺伝形式とその他の家族構成員の遺伝的リスクに関する情報をも個人と家 族に提供する。GeneTests Clinic Directory参照。

この疾患に対する疾患特異的か包括的な支援団体の利用者資源を参照。これらの団体は、個人や家族に情報、支援、および他の罹患者との接触が提供できるように設立されている。

 


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝専門医や出生前診断クリニックをお探しの場合には、GeneTests Clinic Directoryを参照のこと.

遺伝形式

CLSはX連鎖優性遺伝の形式をとる。

患者家族構成員のリスク

発端者の両親

  • 発端者のおよそ70%−80%は、CLSの家族歴はなく、20%−30%は1人以上の罹
    患している家族構成員をもつ[Delaunoy et al 2001]。単一の事例(すなわち、1家族において1人のCLS患者)の高い発生率は、精神遅滞がみられるヘテロ接合の女性に反しておこる遺伝的選択に帰することができる。

    • 罹患男性の父親は、罹患者でも、変異の保因者でもない[Jacquot et al 1998a]。
    • 1人以上の罹患者を伴う家族においては、罹患男性の母は、絶対保因者である。
    • 発端者の母は、粗野な顔の特徴、厚い口唇、先細りの指のようなCLSの徴候を診察 されるべきである。
  • もし、疾患の原因となる遺伝子変異が、発端者において同定された場合、分子遺伝
    学的検査を母に提案することは理にかなったことである。

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは、母の保因者状況に依存する。

    • もし、発端者の母が疾患の原因の変異をもっている場合、各々の妊娠において変異 を伝える機会は50%である:
    • 変異を受け継ぐ男性同胞は、罹患するであろう。変異を受け継ぐ女性同胞は、保因 者となり、少なくともいくらかの発達遅滞とCLSの軽い身体的徴候を有する高いリスクがある。
    • 無作為のX染色体不活化(ライオニゼーション)から予測されるように、軽い罹患女性が、重度に罹患した娘をもつかもしれない。
    • 女性保因者は、IQに相関しないX染色体不活化の軽度から中等度の偏りを示す [Simensen et al 2002]。
    • 身体的徴候や精神遅滞の全くない、CLSの家族歴が知られていない発端者の母は、おそらく保因者であるリスクは低い。
    • 生殖細胞系列モザイクは、この状態において証明されている。このように、発端者 に見出された疾患の原因の変異が、母親のDNAにおいて確認されなかったとしても、 発端者の同胞は、依然として、疾患原因の変異を受け継ぐリスクが増加している[Jacquot et al 1998b, Horn et al 2001]。

発端者の子孫

  • CLSを伴った男性と重度に罹患している女性は、通常は生殖しない。
  • CLSを伴った女性は、疾患の原因の変異を各々の子供に伝える50%の機会をもって おり、変異を受け継ぐ息子は罹患するであろう。娘は保因者となり、少なくともいくらかの発達遅滞とCLSの軽い身体的徴候の高いリスクを有するであろう。 .

発端者のその他の家族構成員 

もし、発端者の母が疾患の原因の変異をもつことが発見さ れたなら、母の女性家族構成員は保因者のリスクがあるだろう(無症候性か症候性か)。そ して母の男性家族構成員は、彼らの発端者との遺伝的関係に依存して、罹患リスクがある だろう。

保因者の検出

リスクにある女性血縁者の保因者検査は、家族において変異が確認されている場合に可能である。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

特定のカウンセリングの問題

  • CLSを伴った発達遅滞の女性と彼女らの家族を生殖の選択と子供のケアに関して支援するために、相当な社会資源が必要とされるであろう。
  • 疾患の原因の変異が確認された、CLSの家族歴の知られていない男性(すなわち単 一の事例)の母の分子遺伝学的検査の結果の解釈には注意すべきである。生殖細胞 系列モザイクが観察されている。従って、罹患した子孫において検出された変異が、 女性のDNAに検出されないような時でさえ、このような女性に出生前検査の提案は 適切である

家族計画 

  • 遺伝的リスクの決定、保因者状況の明確化、および出生前検査の有用性の討論のための最適な機会は妊娠前である。

  • 罹患しているか、保因者であるか、または保因者であるリスクのある、若年成人に 遺伝カウンセリング(子孫への潜在的なリスクと生殖の選択肢の討論を含む)を提 供することは適切である。

DNAバンキング DNAバンキングは、(通常は白血球から抽出された)DNAを将 来の使用のために保存しておくものである。検査法や遺伝子、変異および疾患に対する我々の理解が将来進歩するかもしれないので、罹患者のDNAの保存は考慮すべきで ある。現在利用可能な検査の感度が100%ではないような時、DNAバンキングは特に重大なかかわりをもつ。DNA バンキングを提供している研究室一覧については参照。

出生前診断

リスクが増加している妊娠の出生前診断は、およそ妊娠15−18週に通常行われる羊水穿刺やおよそ妊娠10から12週に行われる絨毛生検(CVS)により得た胎児の細胞から抽出されたDNAの分析により可能である。罹患した家族構成員の疾患原因のアレルは、出生前検査が行える前に確認されなければならない。

メモ:妊娠期間は、正常な最終月経期の初日からか、超音波による計測のどちらかにより 算出された月経週数として表される。

着床前遺伝学的診断(PGD)は、疾患の原因の変異が確認された家族において利用できるか もしれない。PGDを提供している研究室について、参照。

訳注:CLSに対する着床前診断は,日本では行われていない。

分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表における情報は、GeneReviewにおける他の場所の情報と異なっているかもしれない:表は、より最近の情報が含まれているだろう。

表A.CLS:遺伝子とデータベース

遺伝子記号

染色体の座

タンパク質名

遺伝子座特異的

HGMD

 

RPS6KA3

 

Xp22.2‐p22.1

 

リボソームタンパクS6 キナーゼ アルファ−3

癌における体細胞変異の一覧(COSMIC)                    コフィンローリー症候群変異データベース
RPS6KA3@LOVD

 

RPS6KA3

データは、以下の標準的な参照文献を編集したものである:HGNCによる遺伝子記号; OMIMによる染色体の座、座の名前、決定的領域、相補性群;UniProtによるタンパク質名。データベース (遺伝子座特異的, HGMD) の記述についてのリンク、 ここをクリック

表B.CLSのOMIM登録(OMIM のすべてを参照のこと)

300075

リボソームタンパクS6キナーゼ, 90‐KD, 3; RPS6KA3

303600

コフィン−ローリー症候群;CLS

データは、以下の標準的な参照文献を編集したものである:HUGOによる遺伝子記号;OMIMによる染色体の座、座の名前、決定的領域、相補性群;Swiss‐Protによるタンパク質名。

リストされたゲノムデータベースの記述について、ここをクリック

メモ:HGMDは登録が必要である。

分子遺伝学的病因論

CLSに関連する遺伝子、RPS6KA3RSK2)は、成長因子調節性セリン/スレオニンキナーゼをコード化している。ヒトは、4つの密接に関連したRPS6KARSK)遺伝子をもっている。各々の遺伝子は、2つの同一ではないキナーゼ触媒ドメインをもっており、両者は 最大限の活性のために必要とされる[Yntema et al 1999, Yang et al 2004]。

RPS6KA3の発現は、ヒトの胚形成において、一時的で空間的な制限の両者を示し、妊娠9週の終脳から菱脳にかけて均一に脳に発現し、皮質板よりも脳室帯でより高いレベルの発現がみられる [Guimiot et al 2004]。

RPS6KA3によりコード化されるタンパク質、リボゾームタンパクS6キナーゼアルファ−3(RPS6KA3)は、ras‐MAPK、タンパクキナーゼCとアデニルシクラーゼを含むいくつかの経路においてキナーゼの活性化に関係している[Harum et al 2001]。MAPK/RSK経路とヒストンH3の上皮細胞成長因子(EGF)刺激リン酸化を経て、G0とG1間の細胞 周期の刺激の役割を果たしているようである。RPS6KA3は、さらにCREB(CRE結合性タンパク質)を活性化させることが示され、それは、神経細胞の生存と、短期記憶から長期記憶への転換に関係している[Harum et al 2001]。CLS患者の細胞は、S6、H3 Sassone-Corsi et al 1999]とCREB [Harum et al 2001]の不完全なEGF刺激リン酸化を示した。そして、これらの経路の1つまたはそれ以上は、CLSの症状発現のいくつか の原因の役割を果たしているかもしれない。

正常アレルのバリアント.22のエクソンを含むその遺伝子は、リボゾームS6キナーゼ(代 わりの名前としてRSK2)に対してRPS6KA3と名づけられている。疾患の表現型に関わ らないRPS6KA3におけるいくつかの正常アレルのバリアントが発見されている [Delaunoy et al 2001; Abidi & Schwartz, 未発表]。

病的アレルのバリアント.RPS6KA3における変異は、特定の表現型に関連した集積性の根 拠はなく、遺伝子の至る所に分布している。

今までにもっとも大きな研究において(250人)、71の変異が86の血縁のない家族におい て発見された。ほぼ60%がタンパク質の短縮の原因となるか、または短縮が予測された。 38%はミスセンス変異、20%はナンセンス変異、18%はスプライシングの異常、そして21% は遺伝子内の欠失か挿入であった[Delaunoy et al 2001]。

CLSを伴った血縁のない106人のより小さな研究は、28の変異(26%)を見いだした。28の変異のうち、60%はタンパク質の短縮の原因となるか、または短縮が予測された。36% はミスセンス変異、21%はナンセンス変異、11%はスプライシングの異常、そして32%は 遺伝子内の欠失か挿入であった[Abidi & Schwartz, unpublished]。

イントロンのミスセンス変異の結果、異常なスプライシングと切断されたLINE‐1配列の イントロンへの挿入をきたす疾患の原因の変異が報告されている[Zeniou et al 2002a, Martinez-Garay et al 2003, Zeniou et al 2004]。(より多くの情報には、表A参照:遺 伝子座特異的データベースとHGMD)

正常遺伝子産物.リボゾームタンパクS6キナーゼアルファ−3(RPS6KA3)は、セリン/ スレオニンキナーゼとRASシグナル伝達カスケードの一員である。そのタンパク質は、成 長因子、インスリンと腫瘍原性形質転換に反応してMARKキナーゼによりリン酸化される。
RSKファミリーのメンバーは、増殖と分化のような細胞事象に関与する。RPS6KA3にお ける変異は、CLSだけでなく、非症候群性のXLMR(MRX19;遺伝学的に関連する疾患 を参照)を生じうるという事実は、その遺伝子は脳のいくつかの認知機能に決定的に重要 であることを示している。

異常遺伝子産物.RPS6KA3遺伝子における変異は、CLSと非症候群性のXLMRの両方の 原因となる。CLS患者における変異は遺伝子産物のキナーゼ活性の喪失を生じる。しかしながら、MRX19に関連した変異は、遺伝子の2つのキナーゼ領域の外部で起こり、80%の RPS6KA3活性の減少を生じる。それは、脳は、CLSで冒されるその他の臓器系よりも RPS6KA3活性の水準により敏感であることを示している。


原文 Coffin-Lowry Syndromey

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