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シャルコー・マリー・トゥース遺伝性ニューロパチー概説
(Charcot-Marie-Tooth hereditary neuropathy overview)

Gene Review著者: Thomas D Bird, MD
日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),関島良樹(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
Gene Review 最終更新日: : 2012.2.9. 日本語訳最終更新日: 2012.4.7.

原文 Charcot-Marie-Tooth hereditary neuropathy overview


要約

疾患の特徴

シャルコー・マリー・トゥース遺伝性ニューロパチーは,慢性の運動・感覚多発ニューロパチーを特徴とする疾患群を指す.患者は典型的には,四肢遠位筋の筋力低下および萎縮を呈し,軽度から中等度の感覚喪失,腱反射の減弱,凹足を伴うことが多い.

診断・検査 

遺伝性ニューロパチーは後天性(非遺伝性)ニューロパチーを引き起こす多くの原因と鑑別する必要がある.臨床診断は家族歴,および特徴的な臨床所見,筋電図・神経伝導速度の所見,そして必要に応じて施行される腓腹神経生検の所見に基づく.少なくとも40の遺伝子および遺伝子座がCMTと関連がある.分子遺伝学定期検査が臨床的に実施可能であるCMTが幾つかある.

遺伝カウンセリング

CMT遺伝性ニューロパチー症候群は,常染色体優性,常染色体劣性,X連鎖性で遺伝する.親族のリスクに関する遺伝カウンセリングは,正式な診断,各家系内の遺伝形式の判定,分子遺伝学的検査の結果に基づいて行われる.幾つかのタイプのCMTでは,当該家族における原因遺伝子の変異が同定されていれば,リスクの高い妊娠に対する出生前診断が可能である.

臨床的マネジメント 

治療・ケア.症状の治療:
神経内科医,リハビリテーション医,整形外科医,理学療法士,作業療法士によるチーム医療.垂れ足の矯正および歩行補助のための足形装具や短下肢(足首・足)装具(AFO).手の筋力低下に対する手の握りしめ体操.重度の凹足奇形および股関節異形成に対しては,必要に応じて整形外科手術.筋骨格痛に対するアセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬の投与.神経障害性疼痛に対する三環系抗うつ薬,カルバマゼピン,ガバペンチンの投与.

続発的合併症の予防
毎日のアキレス腱のストレッチ体操.

回避すべき薬剤・環境
ビンクリスチン,タキソール,シスプラチン,イソニアジド,ニトロフラントインといった薬剤は神経損傷を引き起こすことがわかっている.肥満は歩行をより困難にする.

診断

臨床症状

シャルコー・マリー・トゥース(CMT)遺伝性ニューロパチー(別名:遺伝性運動・感覚ニューロパチー, HMSN)は,運動系や感覚系の末梢神経が障害される疾患である.CMT患者は,通常10歳以前から20歳代に緩徐進行性の両腕および両足の左右対称性の遠位型運動ニューロパチーで発症し,両足や両手の筋力低下や萎縮をきたす.凹足奇形は多い.

CMTニューロパチーは通常「無痛性」と言われているが,痛みを伴うこともあると報告されている[Carter et al 1998].

他の所見には,難聴,股関節異形成があるが,こうした症状はCMT症状とは認識されにくい[McGann & Gurd 2002].

シャルコー・マリー・トゥース病の診断

診断に関する総説報告には,Pareyson & Marchesi [2009a],Pareyson & Marchesi [2009b],Reilly & Shy [2009]がある.

既往歴から両足および,もしくは両手の遠位筋の進行性の筋力低下が明らかである.

典型的CMT患者には凹足がみられ,足関節の背屈が難しくなり,遠位筋が細くなり,腱反射は減弱し,遠位部の感覚が消失する.

電気生理学的検査(筋電図および神経伝達速度)を注意深く実施すれば,たいていの場合,異常が示される [Carter et al 2004,Pareyson et al 2006].

腓腹神経生検はルーチンでは実施されないが,CMT1型,ハンセン病,血管炎,アミロイドニューロパチーでは比較的類似した症状がみられるため,CMT遺伝性ニューロパチーの診断の確定に際して,これらの疾患との鑑別に役立つことがある[Schroder 2006].

シャルコー・マリー・トゥース病の鑑別診断

後天性のニューロパチーの病因には,アルコール依存症,ビタミンB12欠乏,甲状腺疾患,糖尿病,HIV感染,血管炎,ハンセン病,神経梅毒,慢性炎症に関連したアミロイド沈着,潜在性の腫瘍,重金属中毒,慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)などの炎症性免疫介在性ニューロパチーがある.

失明,痙攣,認知症,知的障害はCMT遺伝性ニューロパチーの表現型には含まれないため,別の診断が考えられる.

ニューロパチーを伴う常染色体優性疾患

ニューロパチーを伴う常染色体劣性疾患

遺伝性運動ニューロパチー(HMN).この疾患では感覚喪失を伴わない遠位筋の筋力低下がみられる[Irobi et al 2004Auer-Grumbach et al 2005].典型的CMTと遺伝性運動ニューロパチーとの重要な鑑別点は,後者で感覚障害を認めないことである.

痙直を伴うCMT症候群.遠位筋の萎縮と筋力低下を伴う患者の中には,腱反射の亢進やバビンスキー反射陽性などの痙直徴候を認める患者もいる.これらの所見が揃った場合,遺伝性運動ニューロパチー5型(HMSN V)と呼ばれ,遺伝性運動ニューロパチーと重複することがある.

この病型の中にはBSCL2遺伝子変異(「BSCL2関連神経障害」を参照)によるものと,スパルチンをコードする遺伝子であるSPG20遺伝子変異によるもの(「トロイヤー症候群」を参照)がある.

「遺伝性痙性対麻痺概説」も参照.

遺伝性感覚ニューロパチー(HSN).幾つかの常染色体優性の軸索型ニューロパチーでは,感覚障害が主症状であり(ある家系では「足が焼けるように痛い病気(burning feet syndrome)」と表現されている[Stogbauer et al 1999]),遺伝性感覚ニューロパチーと分類されている[Auer-Grumbach et al 2003].遠位筋の筋力低下が生じることもある.

「遺伝性感覚ニューロパチー1型」,「遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー2型」も参照のこと.

遠位型ミオパチー.表1を参照.

疾患名 平均発症年齢 初症状が見られる筋肉群 遺伝形式 遺伝子記号
Welander型遠位型ミオパチー 40歳以上 上肢の遠位筋
(指および手関節伸筋)
常染色体
優性
不明
Udd型遠位型ミオパチー 35歳以上 両下肢の前区域 TTN
Markesbery-Griggs型遅発性遠位型ミオパチー 40歳以上 LDB3
遠位型myotilinopathy 40歳以上 両下肢の前区域よりも後区域に優位 MYOT
Laing型早発性遠位型ミオパチー(MPD1) 20歳未満 両下肢の前区域および首屈筋 MYH7
埜中型早期成人発症性遠位型ミオパチー 15~20歳 両下肢の前区域 常染色体
劣性
GNE
三好型早期成人発症性遠位型ミオパチー 両下肢の後区域 DYSF
声帯および咽頭徴候を伴う遠位型ミオパチー(MPD2) 35~60歳 下腿および両手の左右非対称的発症・発声障害 常染色体
優性
不明
凹足および反射消失を伴う遠位型ミオパチー 15~50歳 下腿の前後区域・発声障害および嚥下障害
新規フィンランド型遠位型ミオパチー(MPD3) 30歳以上 両手もしくは下腿の前区域

出典:Udd & Griggs [2001]

ニューロパチーを伴うミトコンドリア病

「ミトコンドリア病概説」も参照のこと.

頻度 シャルコー・マリー・トゥース(CMT)遺伝性ニューロパチーは,最も多い遺伝性ニューロパチーである.頻度は,3,300人に1人程度である. 慢性のニューロパチーで神経内科の診察を受ける患者の約20%がCMT 1A型患者である. 日本におけるCMTのサブタイプの頻度は上述とは異なり,CMT 1A型患者の割合が少なく(CMT 1型患者の23%),遺伝的原因が不明な症例数が多い[Abe et al 2011].

原因

単一遺伝子疾患 GeneReviewで使用する分類は遺伝形式と分子遺伝学に基づいている(表2を参照).しかし,単一遺伝子内の異なる変異がそれぞれ常染色体優性性疾患と常染色体劣性疾患の両方に関連していたり,軸索性と脱髄性ニューロパチーの両方に関連している場合,鑑別は非常に困難となる.診断と自然経過に関する総説には,Pareyson & Marchesi [2009a],Pareyson & Marchesi [2009b],Reilly & Shy [2009]がある. 表2.単一遺伝子変異によるシャルコー・マリー・トゥース遺伝性ニューロパチー

疾患名1 病態 遺伝形式 全CMTにおける割合2
CMT1 脱髄 常染色体優性 40~50%
CMT2 軸索変性 常染色体優性 10~15%
中間型 脱髄と軸索変性の併発 常染色体優性
CMT4 脱髄もしくは軸索変性 常染色体劣性
CMTX 続発性脱髄を伴う軸索変性 X連鎖性優性 10~15%
  1. CMT1,CMT2,CMT4,CMTXというCMTのサブタイプには,さらに分子遺伝学的所見に基づく下位分類がある[De Jonghe et al 1997, Keller & Chance 1999, Nelis et al 1999].
  2. Saporta et al [2011]

Vance [2000]は上記の分類とはわずかに異なる分類を挙げており,CMT3を常染色体劣性の軸索変性,CMT4を常染色体劣性の脱髄を伴うものとしている.

他の有用性の高い分類には,神経伝導速度といった電気生理学的特徴や病理所見を重視するものもある.

CMTの分子遺伝学に関してはCarter et al [2004], Kleopa & Scherer [2006],Houlden & Reilly [2006],Nicholson [2006]による総説があり,分子レベルでの発症機序に関してはZuchner & Vance [2006]やBernard et al [2006]による総説がある.様々な遺伝的サブタイプと関連遺伝子を表1に記す [Pareyson & Marchesi 2009a].

シャルコー・マリー・トゥース病1(CMT1)は,遠位筋の筋力低下および萎縮,感覚障害,神経伝導速度の低下(典型的には5~30 m/秒,正常値は40~45 m/秒以上)を特徴とする脱髄性ニューロパチーである.通常,緩徐進行性であり,多くは凹足奇形および左右の垂れ足を伴う.患者は通常5~25歳で発症する. 患者の5%未満が車椅子生活となる.寿命は短縮されない.

CMT1には6つのサブタイプがあるが,臨床的には鑑別不能であり分子的所見にのみ基づいて決定される[Saifi et al 2003](表3).

表3.シャルコー・マリー・トゥース病1型の分子遺伝学

遺伝子座 CMT1における割合(CMTXを除く)1 遺伝子記号 産生蛋白 検査の実施
CMT1A 70~80% PMP22 末梢髄鞘蛋白22 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT1B 10~12% MPZ 髄鞘p0蛋白 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT1C ~1% LITAF リポ多糖誘発性腫瘍壊死因子-α 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT1D 不明 EGR2 初期成長応答蛋白2 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT1E ~1% PMP22 末梢髄鞘蛋白22(配列変化) 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT1F/2E 不明 NEFL 神経フィラメント軽鎖ポリペプチド 臨床
説明: Image testing.jpg

「検査の実施」とは,GeneTests Laboratory Directory掲載施設での利用状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証を行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. Saporta et al [2011]

シャルコー・マリー・トゥース病2型(CMT2)は,遠位筋の筋力低下と萎縮を特徴とする軸索型(非脱髄型)ニューロパチーである.神経伝達速度は通常,正常域にあるが,数値が低めになったり軽度異常域(35~48 m/秒)となる場合もある.末梢神経の肥大や肥厚はない.

CMT2の臨床像はCMTとかなり重複するが,一般にCMT1患者と比べて,CMT2患者の機能障害の程度は軽く,感覚障害も軽度である.CMT1とCMT2の鑑別には,運動神経伝達速度の平均値38 m/秒を閾値として用いることが多い.

CMTX1では,軸索優位の障害を認めることがあり,CMT2と混同されることがある.

CMT2のうち最も多いタイプであるCMT2A2は,MFN2遺伝子変異が原因である(Chung et al [2006]のレビュー).既知のMFN2変異と関連する病理生理学は,Cartoni & Martinou [2009]の総説でまとめられている.

RAB7A変異によるCMT2Bでは,顕著な感覚障害を伴う[Cogli et al 2009].

表4.シャルコー・マリー・トゥース病2型の分子遺伝学

遺伝子座 CMT2
における割合2
遺伝子記号・
染色体座1
産生蛋白 検査の実施
CMT2A1 不明 KIF1B キネシン様蛋白KIF1B 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2A2 20% MFN2 ミトフシン2 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2B 不明 RAB7A Ras関連蛋白Rab-7 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2B1 不明 LMNA ラミンA/C 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2B2 不明 MED25 RNAポリメラーゼII転写メディエーターサブユニット25 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2C 不明 TRPV4 一過性受容体電位カオチンチャネルサブファミリー5メンバー4 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2D 3% GARS グリシルtRNA合成酵素 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2E/1F 4% NEFL 神経フィラメント軽鎖ポリペプチド 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2F 不明 HSPB1 熱ショック蛋白β-1 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2G 不明 12q12-q13 不明 研究のみ
CMT2H/2K 5% GDAP1 ガングリオシド誘発性分化関連蛋白1 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2I 不明 MPZ ミエリンp0蛋白 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2J 不明 MPZ ミエリンp0蛋白 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2L 不明 HSPB8 熱ショック蛋白β-8 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2N 不明 AARS アラニルtRNA合成酵素(細胞質) 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT2O 不明 DYNC1H1 細胞質ダイニン1重鎖1 研究のみ
CMT2P 不明 LRSAM1 E3ユビキチン蛋白リガーゼLRSAM1 研究のみ

「検査の実施」とは,GeneTests Laboratory Directory掲載施設での利用状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証を行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 遺伝子が不明な場合のみ,染色体座を記す.
  2. Saporta et al [2011]

常染色体優性中間型CMT 常染色体優性中間型CMT(DI-CMT)(表5)は,臨床的および病理学的に髄鞘と軸索双方に異常を認める比較的典型的なCMTの表現型を呈する.神経伝導速度はCMT1およびCMT2で観察される値と重複する[Nicholson & Myers 2006].運動神経伝導速度は通常25~50 m/秒である.

表5.常染色体優性中間型シャルコー・マリー・トゥース病の分子遺伝学

遺伝子座 中間型CMTにおける割合 遺伝子希望・染色体座1 産生蛋白 出典 検査の
実施
DI-CMTA 不明 10q24.
1-q25.1
不明 Verhoeven et al [2001] 研究のみ
DNM2関連中間型シャルコー・マリー・トゥース・ニューロパチー(DI-CMTB) DNM2 ダイナミン2 Kennerson et al [2001]Zuchner et al [2005] 臨床
説明: Image testing.jpg
YARS関連中間型シャルコー・マリー・トゥース・ニューロパチー(DI-CMTC) YARS チロシルtRNA 合成酵素 Jordanova et al [2003]Jordanova et al [2006] 臨床
説明: Image testing.jpg
MPZ関連中間型シャルコー・マリー・トゥース・ニューロパチー(DI-CMTD) MPZ ミエリンp0蛋白   臨床
説明: Image testing.jpg

「検査の実施」とは,GeneTests Laboratory Directory掲載施設での利用状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証を行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 遺伝子が不明な場合のみ,染色体座を記す.

シャルコー・マリー・トゥース病4型(CMT4)は進行性の軸策性および脱髄性の運動・感覚ニューロパチー群である.常染色体劣性の遺伝形式をとることから,他のCMTと区別される(表6を参照).患者には,感覚障害と,しばしば凹足奇形を伴う遠位筋の筋力低下と萎縮という典型的CMT症状がみられる. 常染色体劣性のCMTに関して,Bernard et al [2006]とKabzinska et al [2008]の総説がある.

注:神経伝達速度の高度の低下,脳脊髄液中の蛋白値の上昇,臨床的に顕著な筋力低下,オニオンバルブ形成を伴う神経肥厚を伴う乳児期と小児期の重度の脱髄性ニューロパチーは,従来,デジェリン・ソッタス症候群(DSS)と呼ばれており、常染色体劣性疾患であると考えられていた.その後,デジェリン・ソッタス症候群と臨床診断されていた患者は,様々なタイプの常染色体劣性のCMT(CMT4)であり,PMP22変異(CMT1A),MPZ変異(CMT1B),EGR2 変異(CMT1D)などのCMT1関連遺伝子における点変異のヘテロ接合体であることが判明した[Boerkoel et al 2001a, Boerkoel et al 2001b].

デジェリン・ソッタス症候群という病名は,現在でも臨床型を示す場合に用いられることがあるが,遺伝形式や特定の遺伝子異常を示すものではない[Parman et al 2004].

表6.シャルコー・マリー・トゥース病4型の分子遺伝学

遺伝子座 CMT4における割合 遺伝子記号 産生蛋白 検査の実施
CMT4A 不明 GDAP1 ガングリオシド誘発性分化関連蛋白1 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT4B1 MTMR2 ミオチューブラリン関連蛋白2 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT4B2 SBF2 ミオチューブラリン関連蛋白13 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT4C SH3TC2 SH3ドメインおよびテトラトリコペプチド反復配列含有蛋白2 臨床
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CMT4D NDRG1 NDRG1蛋白 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT4E EGR2 初期成長応答蛋白2 臨床
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CMT4F PRX ペリアキシン 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT4H FGD4 FYVE,RhoGEF,PHドメイン含有蛋白4 臨床
説明: Image testing.jpg
CMT4J FIG4 ホスファチジルイノシトール3,5二リン酸 臨床
説明: Image testing.jpg
「検査の実施」とは,GeneTests Laboratory Directory掲載施設での利用状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証を行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

X連鎖性CMT X連鎖性シャルコー・マリー・トゥース・ニューロパチー1型(CMTX1)は,男性患者では軽度から重度の運動・感覚ニューロパチーを呈し,保因者女性は通常,軽度の症状を呈するか無症状である.なかには感音難聴や中枢神経系症状も生じる家系がある(表7を参照).

X連鎖性遺伝性ニューロパチーには他に4つの型が存在するが,これらの原因遺伝子はまだ同定されていない.随伴所見はHuttner et al 2006による.

Kennerson et al [2010]は,CMTに類似するX連鎖性遠位型運動ニューロパチーを有する2家系を報告している.これらの家系では,メンケス病に関連する遺伝子と同一のATP7A遺伝子にミスセンス変異がある.

小児期のX連鎖性CMTに関する総説が報告されている[Yiu et al 2011].

表7.X連鎖型シャルコー・マリー・トゥース病の分子遺伝学

疾患名 X連鎖性CMTにおける割合 遺伝式記号・
染色体座1
産生蛋白 検査の実施
CMTX1 90% GJB1 ギャップ結合β-1蛋白(コネキシン32) 臨床
説明: Image testing.jpg
CMTX2 不明 Xp22.2   研究のみ
CMTX3 Xq26   研究のみ
CMTX4/カウチョック症候群 Xq24-q26.1   研究のみ
CMTX5 PRPS1 リボースリン酸ピロホスホキナーゼ1 臨床
説明: Image testing.jpg

「検査の実施」とは,GeneTests Laboratory Directory掲載施設での利用状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証を行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 遺伝子が不明な場合のみ,染色体座を記す.

評価手順

各患者のCMT遺伝性ニューロパチーの病因特定には,病歴聴取,診察,神経学的検査,神経伝導速度および筋電図検査に加え,詳細な家族歴の聴取と,可能であれば分子遺伝学的検査を行う.

家族歴家系内に神経学的徴候や症状を有する者がいないかに注意しながら,3世代の家族歴を聴取する.近親の関連所見は,その近親を直接診察したり,分子遺伝学的検査結果,筋電図,神経伝導速度検査などの医療記録を再検討することによって確認できる.

CMT患者が家族歴を持たない理由は様々であるが,他の親族の症状が臨床症状に至らない軽度である場合,常染色体劣性の遺伝形式である場合,優性遺伝子の新生突然変異である場合などが考えられる.

診察ニューロパチーの家族歴を持たない患者においては,まず標準的な神経学的評価を行い,ニューロパチーの後天的原因を除外する(「鑑別診断」を参照のこと).

遠位筋の筋力低下,感覚障害,腱反射の減弱,足の奇形はよくみられる(が,すべての患者にみられるわけではない).

最も多いCMTのサブタイプであるCMT1では,神経伝達速度は非常に遅く,末梢神経は触知可能なほど肥厚していることがある. この所見はCMT2には該当しない.

分子遺伝学的検査類似の表現型に関連する多数の遺伝子変異に関しては,現在,分子遺伝学的検査が臨床的に実施可能である(表3,表4,表5,表6,表7を参照のこと).注:発端者に原因遺伝子変異を同定できない場合でも,検出されていない他の遺伝子変異による発症の可能性があるため,CMTの診断を除外しない.

家族歴と神経生理学的データに基づく検査手順検査手順に関してはEngland et al [2009]とSaporta et al [2011]に基づく

家族歴がある場合

家族歴がない場合(すなわち,家系内で唯一の発症者である場合)

 


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

シャルコー・マリー・トゥース(CMT)遺伝性ニューロパチーは,家系の遺伝的サブタイプに応じて,常染色体優性,常染色体劣性,X連鎖性で遺伝する.

患者家族のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子 常染色体優性CMT患者がそれぞれの子に変異アレルを伝える確率は50%である..

親族のリスク:常染色体劣性 

発端者の両親

発端者の同胞

発端者の子.全ての子は絶対的保因者である.

親族のリスク:X連鎖性

発端者の両親

発端者の同胞

発端者の子.男性患者の全ての娘は変異を受け継ぐが,発症する場合もあればしない場合もある.男性患者の息子は発症しない.

発端者の他の親族発端者の母方の叔母および叔母の子には,保因者となるリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

新生突然変異であるようにみえる患者家族に対する配慮常染色体優性もしくはX連鎖性優性疾患の発端者の両親のどちらにも病原性変異,もしくはその疾患の臨床症状がみられない場合,発端者が新生突然変異を持つ可能性がある.しかし,生物学的父親もしくは母親が異なる(補助生殖),もしくは非公開の養子縁組であるといった非医学的原因も考えられる.

家族計画 

CMTの発症リスクがある無症状の成人親族の検査 は,発症している近親の遺伝子変異が同定されている場合、実施可能である.このような検査は正式な遺伝カウンセリングの中でおこなうべきである.

CMTの発症リスクがあるのある無症状小児の検査 は控えるべきである.米国遺伝カウンセリング学会の小児の遺伝子診断に関する決議文も参照のこと.米国人類遺伝学会と米国臨床遺伝学会は,小児および青年の遺伝子診断の倫理的,法的,精神的影響を考慮すべきであると指摘している.

DNAバンキング は,将来の使用のために,通常は白血球から調整したDNAを貯蔵しておくことである.検査手法や,遺伝子,変異,疾患への理解は将来改善する可能性があり,患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.ことに現在行っている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照のこと.

出生前診断

リスクが高い妊娠に対する出生前診断は、CMTのいくつかのタイプで、妊娠10~12週頃の絨毛採取(CVS)、もしくは妊娠15~18週頃実施される羊水穿刺で得られた細胞から抽出したDNAの分析により可能である.家系内メンバーの病原性アレルが出生前診断実施前に同定されていなければならない.出生前診断を実施している施設に関しては,GeneTests(TM) Laboratory Directoryを参照のこと.

注:胎生週期とは最終月経の第1日から換算するか,超音波による計測によって算出される.

(典型的に)成人発症性の疾患に対する出生前診断の要望は多くない.出生前診断の利用に関しては,特に出生前診断の目的が早期診断ではなく中絶を考慮している場合,医療従事者内でも家族内でもさまざまな意見があるだろう. 出生前診断の決定を両親の選択として捉えている医療機関がほとんどであるが,これらの問題について慎重な議論を行うことが望ましい[Bernard et al 2002].

CMTのいくつかのタイプに対する着床前診断(PGDが報告されており[Sharapova et al 2004],病原性変異が同定されている家系では実施可能である. 着床前診断を実施している施設に関しては,「Testing」を参照のこと.

注:GeneTests Laboratory Directoryに掲載されている検査機関で検査が臨床的に検査を行っている場合に限り,臨床的に実施されているとするのがGeneReviewsの方針である.こうした掲載には著者,編集者,査読者の意向は必ずしも反映されていない.


臨床的マネジメント

症状の治療

CMTに対する治療アプローチに関する総説が公表されている[Carter et al 2008,Young et al 2008, Reilly & Shy 2009].診断,自然経過,臨床管理に関する総説が公表されている[Pareyson & Marchesi 2009a,Pareyson & Marchesi 2009b].

治療は対症療法である.患者は神経内科医,リハビリテーション医,整形外科医,理学療法士,作業療法士から成る医療チームの評価と治療を受けることが多い[Carter et al 2004,Grandis & Shy 2005]. QOLが様々なCMT患者集団で測定・比較されている[Vinci et al 2005a,Burns et al 2010].手や足の持続性筋力低下は,職業や雇用面に重大な影響を与える.事前に情報を提供するカウンセリングを行うこととよい.

足首をしっかりと支える靴型装具などの特別仕様の靴が必要なことがある.下垂足の矯正や歩行補助のために,短下肢(足首・足)装具(AFO)が必要なことが多い.

歩行の安定化のために松葉杖や杖を要する患者もいるが,車椅子使用となる患者は5%未満である.

患者のできる範囲内の運動が推奨され,多くの患者は身体的活動性を維持する.

重症の凹足奇形を矯正するために,整形外科的手術が必要な場合がある[Guyton & Mann 2000, Guyton 2006,Casasnovas et al 2008,Ward et al 2008].股関節異形成に対して手術が必要なこともある[Chan et al 2006].

いかなる痛みでも,原因を可能な限り正確に特定するべきである[Padua et al 2006].

モダフィニルが疲労感の治療に用いられている[Carter et al 2006].

続発的合併症の予防

アキレス腱の短縮を予防するためのストレッチ体操と,手の筋力低下を予防するための両手の握りしめ体操を毎日行うことが望ましい[Vinci et al 2005b].

回避すべき薬剤・環境

肥満は歩行をより困難にするので避けるべきである.

CMT患者に毒性を有することがわかっている薬剤や毒性を起こす可能性がある薬剤のリスクの程度は様々である.

表8.CMT患者に毒性を有する可能性がある薬剤

中等度から重大なリスク1
  • アミオダロン(コルダローン)
  • ボルテゾミブ(ベルケイド)
  • シスプラチン,
  • オキサリプラチン
  • コルヒチン(適用拡大)
  • ダプソン
  • ジダノシン(DDI,ヴァイデックス)
  • ジクロロ酢酸 ジスルフィラム(アンタビュース)
  • 金塩類 レフルノミド(アラバ)
  • メトロニダゾール/ミソニダゾール(適用拡大)
  • ニトロフラントイン(マクロダンチン,フラダンチン,マクロビッド)
  • 亜酸化窒素(吸入乱用もしくはビタミンB12欠乏)
  • ペルヘキシリン(米国では未使用)
  • ピリドキシン(ビタミンB6の大量投与)
  • サニルブジン(d4T,ゼリット)
  • スラミン
  • タキソール(パクリタキセル,ドセタキセル)
  • サリドマイド
  • ザルシタビン(ddC,ハイビッド)

リスクの低いこの他の薬剤に関する情報はこちらをクリックしてください.

ここに掲載した薬剤のCMTニューロパチーを悪化させる可能性のあるリスクの程度は様々である.薬剤の服用前や交換前には,必ず治療を行っている医師に相談すること.

  1. Weimer & Podwall [2006]に基づく.Graf et al [1996]Nishikawa et al [2008]Porter et al [2009]も参照.

研究中の治療

Dyck et al [1982],Ginsberg et al [2004],Carvalho et al [2005]は,急性増悪を起こしたCMT1患者の少数で,ステロイド(プレドニゾン)や静注用免疫グロブリンを投与したところ,改善の幅にはばらつきがあったものの,有効であったと報告している.神経生検ではリンパ球の浸潤を認めた.このような家系のうち1家系では,特異的なMPZ遺伝子変異 (p. Ile99Thr変異)がみられた[Donaghy et al 2000]. CMT1Aと炎症性ニューロパチーを有する幼児が報告されている[Marques et al 2010].

Sahenk et al [2003]はCMT1A患者におけるニュートロフィン-3の効果について研究している.

Passage et al [2004]はCMT1マウスにおけるアスコルビン酸(ビタミンC)の効果を報告している. しかし,CMT1A患者277人を対象として,1日1.5 gのアスコルビン酸を2年間投与した臨床試験では,アスコルビン酸の有効性は証明されなかった[Pareyson et al 2011].少数の患者を対象とする同様の試験でも,この治療の有効性は示されなかった[Micallef et al 2009,Verhamme et al 2009].

Sereda et al [2003]とMeyer zu Horste et al [2007]はCMT1Aのトランスジェニックラットのニューロパチー治療にプロゲステロン拮抗剤を用いた.

様々な疾患や病態に対する臨床試験に関する情報へアクセスしたい場合には,ClinicalTrials.govを参照のこと.

その他

夜間用副子は足首の可動域を改善しなかった[Refshauge et al 2006].

遺伝クリニック遺伝専門医を擁する遺伝クリニックでは,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する. GeneTests Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報この疾患に特異的な,または大規模な支援組織に関する情報に関しては,「患者情報」を参照のこと.これらの組織は患者や家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立されている.


更新履歴

  1. Gene Review 著者:Thomas D Bird, MD
    日本語訳者:窪田美穂(ボランティア翻訳者),関島良樹(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    Gene Review最終更新日: 2008.7.24.   日本語訳最終更新日: 2009.2.2.
  2. Gene Review著者: Thomas D Bird, MD
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),関島良樹(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
    Gene Review 最終更新日: : 2012.2.9. 日本語訳最終更新日: 2012.4.8. (in present)

原文 Charcot-Marie-Tooth hereditary neuropathy overview

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