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カルニチンパルミトイル基転移酵素1A欠損症
(Carnitine Palmitoyltransferase 1A Deficiency
)
[Hepatic CPT1, CPT1A Deficiency, Hepatic Carnitine Palmitoyltransferase 1 Deficiency, L-CPT 1 Deficiency]

日本語訳者: 訳者(所属) 坂本修(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座小児病態学分野)
Review 最終更新日: 2007.9.24. 本語訳最終更新日: 2009. 2.1

原文 Carnitine Palmitoyltransferase 1A Deficiency


要約

疾患の特徴 

カルニチンパルミトイル基転移酵素1A(CPT1A) 欠損症は長鎖脂肪酸酸化の経路の障害である。通常、臨床症状はエネルギー需要が高まるような発熱や胃腸炎に伴って急激に発症する。3つの臨床型に大別される。肝性脳症型は小児において典型例であり、低ケトン性低血糖に伴って発症し、急激な肝不全を呈する。成人筋型はイヌイット由来の症例でみられる。妊娠急性脂肪肝は、CPT1A欠損症に至るようなCPT1A遺伝子異常をホモ接合で有する胎児を妊娠した妊婦に発症する型である。脳症を繰り返しても、代謝不全による神経系の障害を残していない限りにおいては、発達・認知能力は正常である。

診断・検査 

脳症においては低血糖、低ケトン血症、肝トランスアミナーゼ、アンモニア、総カルニチンの上昇などの所見が典型的である。ほとんどの症例において、培養線維芽細胞のCPTI活性はコントロールの1-5%である。血清もしくはろ紙血での遊離/総カルニチン比の上昇によるCPT1A欠損症のスクリーニングは、幾つかの新生児スクリーニングプログラムにおいて可能である。CPT1A欠損症の原因遺伝子としてはCPT1Aのみが知られている。酵素学的に診断がついている症例においては、シークエンス法による遺伝子変異の検出率は90%以上である。CPT1A遺伝子の分子遺伝学的検査は臨床レベルで利用できる。

臨床的マネジメント 

病態に関する治療:低血糖に際してはすみやかに10%ブドウ糖を経静脈的に投与する。 一次的な症状の予防:低血糖の予防。成人は持続的に炭水化物からのエネルギーを供給するため高炭水化物・低脂肪食と総カロリーの1/3にあたる量の中鎖トリグリセリド(C6-C10の脂肪酸はミトコンドリアに入るためにカルニチンシャトルに依存しない)が必要である。小児では日中は頻回の食事、夜間はコーンスターチをとるようにする。体調不良や手術など医療処置での絶食は12時間を越えないようにする。

合併症の予防低血糖の予防により神経障害のリスクが軽減される。 定期検査:女性保因者が妊娠した際には、妊娠急性脂肪肝のモニターをすべきである。CPT1A欠損症の症例においては、無症候での定期受診時およびカロリー摂取低下や発熱している期間においては、肝酵素(AST, ALT, ALP)やPT, PTTなどを含めた肝機能をチェックする。

避けるべき薬物・状況長時間の絶食。バルプロ酸、サリチル酸のような肝障害の可能性のある薬物。

罹患可能性のある親族の検査年齢にかかわらず、発端者の同胞は、酵素診断やその家族における病因変異が確定されていれば分子遺伝学的診断を組み合わせて、CPT1A欠損症に関し評価すべきである。

その他罹患者、両親や保護者、健康管理にあたる者は、異化亢進による代謝性クライシス対しての救急対処プロトコールをいつでもできるようにしておく必要がある。にも確定できる.このような者には,経過観察回数を増やし,がんが発見された場合には早期介入を行う必要がある.

遺伝カウンセリング 

CPT1A欠損症は常染色体劣性遺伝型式をとる。ヘテロ接合体(保因者)は無症状である。基本的に罹患者の同胞は25%の確率で罹患者、50%の確率で非罹患の保因者、25%の確率で変異を有しない非罹患者である。罹患者の同胞が非罹患者であれば、変異保因者である確率は2/3である。女性保因者が妊娠した際には急性脂肪肝発症のリスクがある。保因者診断や出生前診断は、生化学的診断もしくはその家系の2つの病因変異が確定している場合には分子遺伝学的診断により可能である。


診断

臨床診断

カルニチンパルミトイル基転移酵素T(CPTT)はミトコンドリア膜タンパクであり、長鎖脂肪酸アシルCoA分子をそれに対応するアシルカルニチンに変換する。そうしてできたアシルカルニチンは、脂肪酸酸化が行われるミトコンドリアマトリックスへの輸送が可能となる。絶食でグリコーゲンの蓄積が枯渇した際の代替エネルギー源(ケトン体)は、肝ミトコンドリアでの脂肪酸酸化により産生され、脂肪酸酸化ができない末梢組織に供給される。

臨床徴候はエネルギー需要が高まるような発熱や胃腸炎に伴って発症する。比較的一般的な感染症でも発症は助長され、症状の発現は急激である。こういった発症の場合には脂肪酸酸化異常症の可能性を考慮すべきである。

CPT1A欠損症での下記の症候のような3つの病型が認められる。

  • 肝性脳症 一般に小児の罹患者において、絶食や発熱によって低ケトン性低血糖の検査所見や急性発症の肝不全、肝性脳症を呈する。これらの所見はライ様症候群での所見と同様である。
  • 成人筋症 p.Pro479Leu変異をホモ接合でもつイヌイット由来の患者において報告されている。症状は運動で誘発されたこむら返りであり、低血糖や肝不全の徴候はみられていない。
  • 妊娠急性脂肪肝 CPT1A遺伝子異常をホモ接合で有する胎児を妊娠することが、母体の急性脂肪肝に関連する。

検査

低血糖、低ケトン血症、肝トランスアミナーゼ、アンモニア、総カルニチンの上昇が典型的な検査所見である。

低ケトン性低血糖 ほとんどの症例において低ケトン性低血糖は低血糖(40 mg/dl未満)ながら尿ケトン体陰性として気づかれる。

肝性脳症 AST, ALTが正常上限の2-10倍となり、高アンモニア血症(例えば血漿アンモニア値が100-500μmol/l [正常70μmol/l未満])となる。

血清総カルニチンの上昇 70-170μmol/lのレベルに上昇し得る(正常25-69μmol/l)。低ケトン性低血糖を伴う総カルニチン上昇の所見はCPT1A欠損症を多分に疑わせる所見である。

その他

  • CPT1A欠損症の診断において尿有機酸分析はアシルカルニチン測定より感度が高く、他の脂肪酸酸化異常症や有機酸血症との鑑別に有用である。

注:(1)罹患者が無症候時には CPT1A欠損によって特異的な有機酸が産生されるわけではないが、多くの鑑別すべき他の疾患では特徴的なパターンが認められる。(2)最近の研究ではドデカン二酸(dodecanedioic acid)が急性発作時およびその後数日間上昇していると報告されている[Korman et al 2005]。この著者はCPT1A欠損と診断された症例の急性期にC12ジカルボン酸も認められたとしている。

  • 脂肪酸酸化能をトリチウムでラベルした脂肪酸を使用し、細胞質へのトリチウムの取り込みを測定する方法で異常値が得られる[Olpin et al 2001]。この検査は臨床的に利用可能である。
  • タンデム質量計を使用し、蓄積した各種アシルカルニチンを検出する方法では正常のパターンになりうる。

妊娠急性脂肪肝 母体の検査所見は低血糖、肝酵素異常、高アンモニア血症などCPT1A欠損症罹患者で認められるものと同様である。肝不全が進行すると肝での合成能が低下し出血傾向に至る。

カルニチンパルミトイル基転移酵素1活性測定 [McGarry & Brown 1997]

  • 健常者由来の培養線維芽細胞でのCPT1A酵素活性は0.58±0.11 nmol/min/mg proteinである[Bennett et al 2004]
  • ほとんどのCPT1A欠損症患者で残存活性は1-5%である。
  • イヌイットの筋型の症例では、残存活性は15-25%である。
新生児スクリーニング 血清、血漿もしくは新生児スクリーニングのろ紙血における遊離/総カルニチン比は上昇している[Sim et al 2001]。幾つかの新生児スクリーニングプログラムにおいては、C16:0(パルミトイルカルニチン)と遊離カルニチンの比を用いてCPT1A欠損症のスクリーニングが可能である。この方法の感度は高く、確定診断がついた3症例において、C0/(C16+C18)比は、コントロール177,000の99.9パーセンタイル値より5-60倍高値であった

分子遺伝学的検査

遺伝子 CPT1AがCPT1A欠損症の原因として唯一知られている遺伝子である。

臨床的検査法

  • シークエンス解析 酵素学的に診断がついている症例においては、シークエンス法による遺伝子変異の検出率は90%以上である[Bennett et al 2004]。
  • 特定の変異の検出 アラスカ州の新生児スクリーニングプログラムやカナダ先住民でCPT1A欠損症とされた児などp.Pro479Leu変異率が高い地域ではこの変異の検出が有用である。この集団での罹患者のほとんどはp.Pro479Leu変異のホモ接合である[Park et al 2006]。

表1. カルニチンパルミトイル基転移酵素1A欠損症で用いられる分子遺伝学的検査

検出法

変異検出

変異検出率1

シークエンス解析

CPT1Aの変異2

>90%3

特定変異の検出

CPT1A p.Pro479Leu

ハイリスクの児で〜100%4

1、それぞれの検査によって変異が見つかる罹患者の割合
2、シークエンスでは フッター派集団(Hutterite)でのp.Gly710Glu[Prasad et al 2001]や、イヌイットでのp.Pro479Leu[Brown et al 2001]のような高頻度変異も検出される。
3、酵素学的に診断がついている症例においての値
4、拡大新生児スクリーニングによってCPT1A欠損症とされたアラスカ州の児

検査手順

急性期における患者の確定診断手順

  • 血清もしくは血漿での血糖、アンモニア、肝酵素、クレアチンキナーゼの測定
  • 総・遊離カルニチン、アシルカルニチンプロフィール、遊離脂肪酸、3-ヒドキシブチル酸
  • 尿中ケトンおよび有機酸[Korman et al 2005]
  • 培養線維芽細胞での酵素欠損の確認
  • 酵素診断を確認するための分子遺伝学的検査
  • カナダ先住民、イヌイット集団ではp.Pro479Leu変異の検討[Park et al 2006]。

臨床的に落ち着いている患者の確定診断手順

  • 総・遊離カルニチン、アシルカルニチンプロフィール。これらはその他の代謝不全のマーカーが正常な場合でも有用である。
  • 培養線維芽細胞での酵素欠損の確認
  • 酵素診断を確認するため、以下のいずれかの分子遺伝学的検査
    • イヌイット集団もしくはカナダ先住民ではp.Pro479Leu変異の検討
    • 酵素学的に診断された例でのシークエンス解析

リスクのある親族の検査 事前に家系内の病因変異が特定されている必要がある。

注:保因者は常染色体劣性遺伝の疾患でのヘテロ接合体であり、発症のリスクはない。

出生前診断 次児に罹患者のリスクのある出生前診断においては、事前に家系内の病因変異が特定されている必要がある。

遺伝学的に関連する疾患

CPT1Aの変異による他の表現型は知られていない

臨床像

自然経過

カルニチンパルミトイル基転移酵素1A(CPT1A) 欠損症は長鎖脂肪酸酸化の経路の障害である。

肝性脳症 新生児期に「生理的な」低血糖を呈することもあるが、ほとんどのCPT1A欠損症の罹患者は乳幼児期に空腹により誘発された肝性脳症を呈する。これは潜在的に致死的な症候である。肝性脳症から回復した児でも、同様のエピソードを繰り返すリスクがある。

乳幼児期をとおして特に症状が認められない症例も報告されているが、より遅い時期に同様の急性肝不全が初発症状となることもある。

早期に脂肪酸酸化異常症と診断されていながら、17歳で急性の肝不全で死亡したCPT1A欠損症例もある[Brown et al 2001]。

代謝不全のエピソードとエピソードの間では、代謝不全によって神経系の障害を残していない限りにおいては、発達・認知能力は正常である。

CPT1A欠損症を診断し、脂肪分解を防ぐよう初期介入することで代謝不全のエピソードを減らせる[Stoler et al 2004]。

 脂肪肝による長期的な肝障害の影響は報告されていない。

肝性脳症を呈し、さらに腎尿細管性アシドーシスをきたす症例もある。

他の長鎖脂肪酸酸化異常症と異なり、心筋・骨格筋障害は一般的ではない[Bonnefont et al 2004]。

成人発症筋型 いまのところ、p.Pro479Leu変異をホモ接合でもつイヌイット由来の患者が1人報告されている[Brown et al 2001]。臨床症状は血清CK上昇を伴う、運動に関連した筋痛であった。

胎児CPT1A欠損症 CPT1A欠損症胎児は、母体の急性脂肪肝に関連する[Innesr et al 2000]。CPT1A欠損症のホモ接合の胎児を妊娠したヘテロ接合女性は妊娠合併症に至るリスクを抱えている。

遺伝子型と臨床型の関連

遺伝型と表現型の関連が明確である変異はイヌイットにおけるp.Pro479Leu変異のみであり、高い残存活性と成人発症筋型の症状を呈する。

その他の症例において、残存活性は0-5%であり、病因変異も確認されている。

用語

以前は非ケトン性低血糖および肝型CPT欠損症として記載されている。

頻度

CPT1A欠損症は極めて稀な疾患と考えられている(報告例は30例未満および未報告50例程度)。新生児期のCPT1A欠損症の診断法の進歩により、診断率の上昇の可能性がある[Sim et al 2001]。

Alaska Division of Public Healthからの拡大新生児スクリーニング資料によると、アラスカの集団においてp.Pro479Leuのホモ接合の頻度は極めて高い(1.3:1000出生)。

イヌイット集団におけるp.Pro479Leuの保因者率は現在のところ不明である。集団を対象としたプレリミナリーな研究によるとp.Pro479Leuは頻度の高い塩基多型である[Sinclair et al 2005]。古いイヌイットの生活習慣に関連した陽性選択(positive selection)が反映している可能性が推測されている[Gillingham et al 2006]。

フッター派集団(Hutterite)におけるp.Gly710Gluの保因者率は、16人に1人まで高い可能性がある[Prasad et al 2001]。


鑑別診断

低血糖でありながらケトン体がみられないもしくは低値の際には、CPT1A欠損症を含めた脂肪酸酸化異常症やカルニチンサイクル異常症の疑いがあがる。

CPT1Aは肝臓で主に発現しているので、CPT1A欠損症は肝症状を伴う脂肪酸酸化異常やケトン体合成異常に密接に関連している。上述の病状を呈する疾患には以下のものも含まれる。

  • 中鎖アシルCoA脱水素酵素 (MCAD) 欠損症
  • 3水酸化-3メチルグルタリル(HMG)-CoA合成酵素欠損症
  • HMG-CoAリアーゼ欠損症

筋・心筋症状を欠く場合、CPT1A欠損症の急性肝症状は他の長鎖脂肪酸酸化異常症やライ様症候群をきたす疾患と区別することはできない。上述の病状を呈する疾患には以下のものも含まれる。

  • カルニチンパルミトリル基転移酵素U(CPTU)欠損症
  • カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠損症
  • 極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症
  • ミトコンドリア三頭酵素欠損症
  • 尿素サイクル異常症
  • 有機酸尿症(メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症など)
  • 酸化的リン酸化異常症
  • 糖新生系の障害(糖原病I型など)

臨床的マネジメント

病状を把握するための初期診断時の評価法

著明な低血糖もしくは遷延する低血糖に至った罹患者では、二次性の神経障害の有無を明らかにするため十分な神経学的な評価を実施すべきである。

病態に関する治療

急性の低血糖をきたした際には、低血糖を是正し、脂肪分解とそれに続く脂肪酸のミトコンドリアへの移行を防ぐため、できる限り早く十分な量の10%ブドウ糖を投与すべきである。

著明な低血糖をきたしている症例では肝グリコーゲンが枯渇しているので、グリコーゲン新生のための十分量の基質を供給する目的で、血糖が正常化した後もブドウ糖の静脈投与を続けるべきである。

罹患者(もしくは両親・親権者)やその健康管理に関わる者には、「罹患者が生命の危機にいたるような代謝性クライシスを来たす可能性」があり、「適切な緊急治療を実施すべき」である旨を記載した文書を持つようすべきである。

一次的な症候の予防

炭水化物に由来するエネルギーを持続的に供給するために高炭水化物(カロリーの70%)・低脂肪(カロリーの20%未満)の食事が推奨されている(特に体調不良時)。

総カロリーの約1/3を中鎖中性脂肪(MCT)として供給することが推奨されている。C6-C10の脂肪酸はミトコンドリアへの移行にカルニチンシャトルを必要としない。

特に乳幼児ではグリコーゲンの蓄積が限られているため、頻回の食事が勧められる。夜間のコーンスターチ投与は、コーンスターチがゆっくり分解され炭水化物を持続的に供給することで、睡眠中の低血糖を予防できる。

年長児でも12時間以上空腹にすべきではなく、発熱や胃腸炎の際にはより空腹時間を短くすべきである。

成人罹患者においても空腹の危険性を認識し、その健康管理に関わる者にも手術などの代謝ストレスや空腹時にリスクがあること知ってもらうべきである。

体調不良や手術・医学的処置のため、12時間以上絶食になる場合にはブドウ糖の静脈投与の目的で短期間の入院管理を考慮すべきである。

二次的な合併症の予防

低血糖の予防が、二次性の神経障害のリスクを減じる。

実施すべき検査

定期受診もしくは代謝不全に至るようなカロリー摂取低下・発熱の際の受診時には、症候があるなしに関わらず肝機能検査を実施する。検査にはAST、ALT、ALPに加え、PT/PTTなどの凝固検査も加える。

回避すべき薬物や環境

長時間の空腹の回避(特に発熱・胃腸炎時)。

例え副作用の報告がCPT1A欠損症で報告されてなくとも、バルプロ酸やサリチル酸のような潜在的な肝毒性のある薬物は投与されるべきではない。

リスクのある親族の検査

小児での遅発例の可能性もあるので年齢に関わらず発端者の同胞は、酵素診断および罹患者に病因変異が特定されている際には遺伝子診断を組み合わせて評価されるべきである。家系内の変異が知られてなくとも、酵素活性が正常の際にはその健常同胞は非罹患者である。

早期に診断して治療することにより罹患率と死亡率を低下させることができるため、リスクのある親族に遺伝学的検査を提供することがのぞましい。

その他

データは限られているものの、女性保因者に妊娠合併症のリスクに関して説明するよう配慮する。

特に合併症なくCPT1A欠損症の児を出産した女性でも、次の妊娠で胎児が罹患児の場合は、母体急性脂肪肝のリスクがある。

遺伝クリニックは遺伝専門家をスタッフとし、個人や家族に対し自然歴、治療、遺伝形式、他の家族の遺伝的リスクに加え、活用できる利用者向けの社会資源なども情報も提供する。

支援グループは、個人や家族に対して、情報、支援、他の罹患者との交流の機会を提供するためにつくられた。そういった資源は疾患ごとの組織や包括的な支援組織を含んでいる。

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

カルニチンパルミトイル基転移酵素1A(CPT1A)欠損症は常染色体劣性形式で遺伝する。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患者の両親は、必然的にヘテロ接合保因者であり変異のある対立遺伝子を一つ有する。
  • ヘテロ接合保因者は無症状である。妊娠女性保因者は急性脂肪肝を発症するリスクがある。

発端者の同胞

  • 基本的に罹患者の同胞は25%の確率で罹患者、50%の確率で非罹患保因者、25%の確率で変異を持たない非罹患者である。
  • 罹患者の同胞が非罹患者であれば変異保因者である確率は2/3である。
  • ヘテロ接合保因者は無症状である。妊娠女性保因者は急性脂肪肝を発症するリスクがある。

発端者の子

  • CPT1A欠損症罹患者の子どもは必然的にCPT1A遺伝子に病因変異を持つヘテロ接合者(保因者)である。
  • 保因者率の高い集団や血族婚の多い集団においては発端者のパートナーが罹患者や保因者である可能性がある。このような場合、児の再発率は発端者のパートナーの分子遺伝学的解析や生化学的検査の実施にてより正確に得られる。

発端者の他の家族 発端者の両親の同胞は、50%の確率で保因者である。 

保因者診断

CPT1Aの酵素学的検査や発端者において病因変異が確定されていれば分子遺伝学的検査にて罹患家族の保因者診断は臨床の場で可能である。

遺伝カウンセリングに関連する諸問題

早期診断・治療のため目的としたリスクのある親族に対する検査については前述の「リスクのある親族の検査」の項を参考のこと。

家族計画 遺伝的なリスク、保因者であるか否か、出生前診断が可能かの内容について、妊娠前に時間をとって話しあうようにする。罹患者もしくは保因者の可能性のある若年成人に対し、(次世代の再発率や児を持つためのいくつかの手段についても含め)遺伝カウセリングを提供することは適切である。

DNAバンキング DNAバンクは、DNA(一般に白血球から調製)を将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,DNAの保存は考慮に値する.ことに現在用いられている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患では特に重要である.

出生前診断

生化学的検査 次児に再発の可能性のある妊娠における出生前診断は羊水穿刺(通常妊娠15−18週に実施)によってえられた培養羊水細胞もしくは絨毛採取(chorionic villus sampling CVS、妊娠10−12週に実施)による培養絨毛での酵素活性測定にて可能である。

遺伝学的検査 出生前診断は羊水穿刺(通常妊娠15−18週に実施)によってえられた胎児細胞もしくはCVS(妊娠10−12週に実施)による培養絨毛にて可能である。DNAによる出生前診断を行う前に、罹患している家族において病因となる両方の遺伝子変異が同定されている必要がある。

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

着床前診断 家系における罹患者の病因変異が確定されていれば可能である。

訳注:本邦においては着床前診断の実施のためには症例ごとに実施施設における倫理委員会および日本産科婦人科学会審での審議が必要とされる。


原文 Carnitine Palmitoyltransferase 1A Deficiency

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