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シトルリン血症Ⅰ型
(
Citrullnemia TypeⅠ)
[Synonyms:アルギニノコハク酸合成酵素欠損症]

Gene Reviews著者: Shane C Quinonez, MD, Jess G Thoene, MD.
日本語訳者: 和田 宏来 (国際親善総合病院小児科/しんぜんクリニック小児科)

Gene Reviews 最終更新日:2016.9.1.  日本語訳最終更新日: 2020.6.8.

原文: Citrullnemia TypeⅠ


要約

疾患の特徴 

シトルリン血症Ⅰ型(CTLN1)の臨床スペクトラムには、急性新生児型(”古典”型)、軽症遅発型(”非古典”型)、症状/高アンモニア血症を伴わない病型、女性が妊娠期/分娩後に重篤な症状で発症する病型がある。臨床的な病型の分類は臨床所見に基づくが、クリアカットではない。
急性新生児型の患児は出生時には正常にみえる。それから間もなく、高アンモニア血症を呈し、
次第に活気不良、経口摂取不良、しばしば嘔吐を認めるようになり、頭蓋内圧亢進(ICP)の徴候が出現することもある。迅速な介入が行われないと、高アンモニア血症およびその他の毒性代謝物質(グルタミンなど)の蓄積によって頭蓋内圧亢進、筋緊張亢進、痙縮、足クローヌス、けいれん発作、意識消失を認め、死に至る。迅速に治療を受けた重症患児の生存期間は予測できないが、通常は著しい神経学的な障害を伴う。
遅発型は急性新生児型より軽症である可能性があるが、その理由は不明である。高アンモニア血症のエピソードは急性新生児型と同様であるが、患児の年齢が高いため初期の神経学的所見はより軽微なことがある。

診断・検査 

CTLN1は、血漿アンモニア濃度上昇(>150μmol/L、場合によっては≧2000-3000μmol/L)および血漿シトルリン濃度上昇(通常は>1000μmol/L)および/もしくは分子遺伝学的検査でASS1遺伝子両アレル変異の同定によって診断される。

診断・検査

症候の治療:
高アンモニア血症の急性期治療では、迅速に血漿アンモニア濃度を下げるために、窒素捕捉療法(安息香酸ナトリウム・フェニル酢酸ナトリウム・アルギニン)を、それに反応しない場合は血液透析を行う。可能であれば、グルコースや脂肪乳剤の静注もしくは蛋白フリーの経腸栄養によって異化を防止する。また、頭蓋内圧のコントロールを行う。
慢性期の治療として、血漿アンモニア濃度を100μmol/L未満および血漿グルタミン濃度を正常値近くに維持するため、生涯にわたる食事管理を行う。フェニル酪酸ナトリウムもしくはフェニル酪酸グリセロールを内服する。低カルニチン血症予防のためL-カルニチンを投与する。唯一の根治療法として知られる肝移植は、合併症の減少や生存率上昇のため、生後3ヶ月(および/もしくは体重5kgに達した時点)~1歳が最適な施行時期となる。肝移植では施行時に存在していた神経学的後遺症が改善することはない。

二次合併症の予防:
感染症合併時には高アンモニア血症を予防する治療を行う。年1回のインフルエンザワクチンを含むルーチンの予防接種を施行する。

経過観察:
代謝内科でルーチンのフォローアップを行う。高アンモニア血症や二次的な必須アミノ酸の欠乏をモニタリングする。高齢者では、切迫する高アンモニアの兆候(すなわち気分変調・頭痛・活気不良・嘔気・嘔吐・経口摂取不良・足クローヌス)や血漿グルタミン濃度の上昇を認めないかモニタリングする。新生児期および乳児期には疾患重症度に応じて頻回にモニタリングを行うべきであるが、年長児では安定していれば6ヶ月~1年に1回でよいかもしれない。

避けるべきもの/環境:
蛋白質の過剰摂取、感染症への罹患を避ける。

リスクのある血縁者の評価:
家族内で病原性変異が判明している場合、出生前診断によって初回哺乳から適切な経口治療を行うことができる。判明していない場合、同胞は生後初日に血漿アンモニア濃度およびシトルリン濃度の測定による評価を行うべきである。いずれかの許容レベルを超える場合(アンモニア>100μmol/Lもしくは血漿シトルリン>~100μmol/L)は治療を開始するのに十分な根拠となる。

遺伝カウンセリング 

シトルリン血症Ⅰ型は常染色体劣性遺伝性疾患である。罹患者の同胞はそれぞれ、受胎時には25%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性保因者であり、25%の確率で罹患者でも保因者でもない。家族内の病原性変異が判明しているのならば、疾病リスクがある家族に対する保因者診断および疾病リスクがある妊娠における出生前診断を行うことができる。


診断

シトルリン血症Ⅰ型(CTLN1)は、尿素回路の第3段階でシトルリンとアスパラギン酸を縮合しアルギニノコハク酸を合成するアルギニノコハク酸合成酵素の欠損によって起こる(尿素サイクル異常症概説 図1を参照)。

示唆的な所見

シトルリン血症Ⅰ型(CTLN1)は、患者で以下のような新生児スクリーニング結果、臨床的特徴(年齢による)、支持的な検査所見を認める場合に疑うべきである

新生児スクリーニング結果

タンデム型質量分析計(MS/MS)による新生児スクリーニングで、乾燥ろ紙血中のシトルリン上昇を認める場合。注:執筆時において、すべての州の新生児スクリーニング対象疾患にCTLN1は含まれている。

臨床的特徴

新生児期の症状 蛋白質の制限を行わない場合、徴候や症状は古典的には生後1週間以内に起こるとされる。

  • 活気不良
  • 傾眠
  • 哺乳の拒絶
  • 嘔吐
  • 多呼吸
  • 脳卒中
  • 頭蓋内圧亢進(高アンモニア血症の続発症)による筋緊張亢進・痙縮・足クローヌス

非古典型の症状 徴候および症状はいつでも起こる可能性があり、新生児期ほど急速に出現しないことがある。

  • 反復性の活気不良および傾眠
  • 激しい頭痛
  • 暗点
  • 片頭痛様のエピソード
  • 運動失調症および不明瞭言語
  • 知的障害

支持的な検査所見

血漿アンモニア濃度

  • 新生児期 重症型では初期の血漿アンモニア濃度は1000-3000μmol/L(正常:40-100μmol/L)のことがある。
  • 遅発型 慢性もしくは反復性の高アンモニア血症を認めるが、しばしば古典型よりは低値である(成人の正常上限は<60μmol/L)。

定量的血漿アミノ酸分析

  • シトルリン 通常は>1000μmol/L。
  • アルギニノコハク酸 認めない。
  • アルギニンおよびオルニチン 低値~正常値。尿素サイクル異常症概説 図3を参照。
  • リシン、グルタミン、アラニン 増加している。高アンモニア血症の代用マーカー。

尿中有機酸分析 正常であるが、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中有機酸分析の一環としてオロト酸が検出されることがある。しかし、感度は抽出方法による。

診断の確定

CTLN1の診断は、発端者で血漿アンモニア濃度の上昇(>150μmol/L、場合によっては≧2000-3000μmol/L)や血漿シトルリン濃度の上昇(通常>1000μmol/L)を認める場合、および/もしくは分子遺伝学的検査でASS1遺伝子両アレル変異を同定することにより確定する(表1を参照)。

注:表現型が生化学的には合致するが臨床的に重症かどうか分からない患者において、予後を予測することは困難なものになりうる。
分子遺伝学的アプローチには、単一遺伝子検査複数遺伝子パネルの利用などがある。

  • 単一遺伝子検査 ASS1遺伝子のシークエンス解析をまず行い、もし病原性変異が1つしか見つからない、もしくは全く見つからない場合は続けて標的遺伝子の欠失/重複解析を行う。
  • ASS1遺伝子および関心の持たれる他の遺伝子(「鑑別診断」を参照)を含めた複数遺伝子パネルが考慮されることがある。注:(1)パネルに含まれる遺伝子や検査の診断感度は検査機関によって異なり、時間とともに変わる傾向にある。(2)一部の複数遺伝子パネルでは、このGeneReviewで触れている病態と関連しない遺伝子が含まれている可能性がある。臨床医は、どの複数遺伝子パネルが最もリーズナブルなコストで病態の遺伝学的要因を同定できるのか見極める必要がある。また、意義不明な変異や表現型を説明できない病原性変異の同定は限られる。(3) 一部の検査機関では、パネルのオプションとして、検査機関毎にカスタマイズされたパネルや、臨床医によって表現型より絞り込まれた遺伝子を含むようにカスタマイズされたエクソーム解析を使用できることがある。(4)パネルに用いられる方法には、シークエンス解析、欠失/重複解析、および/もしくはその他のシークエンスに基づかない検査などがある。
    この疾患では、欠失/重複解析を含んだ複数遺伝子パネルが推奨される(表1を参照)。
    複数遺伝子パネルの導入に関してはこちらをクリック。遺伝学的検査を依頼する臨床医のためのさらに詳細な情報についてはこちらを参照のこと。

表1 シトルリン血症Ⅰ型で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 方法 この方法で同定される病原性変異2を有する発端者の頻度
ASS1 シークエンス解析3 96%4,5
標的遺伝子の欠失/重複解析6 脚注7を参照
  1. 染色体遺伝子座と蛋白については表A「遺伝子およびデータベース」を参照。
  2. この遺伝子で同定されるアレル変異に関する情報は「分子遺伝学」を参照。
  3. シークエンス解析では、良性/おそらく良性/意義不明/おそらく病原性をもつ/病原性をもつ変異を同定する。病原性変異には、小さな遺伝子内欠失/重複、ミスセンス、ノンセンス、スプライス部位変異などがある。典型的には、エクソンもしくは全遺伝子の欠失や重複は同定されない。シークエンス解析結果の解釈について考慮すべき問題についてはこちらをクリック。
  4. 患者80人の評価において、両アレル変異を認めたのは75人(94%)、1つのアレル変異を認めたのは4人(5%)、アレル変異を認めなかったのは1人(1%)である。
  5. 様々な細胞から抽出したゲノムDNAもしくは培養線維芽細胞由来のcDNAのシークエンシングにより、160人のうち154人(96%)で異常アレルが同定された。
  6. 標的遺伝子の欠失/重複解析では遺伝子内欠失/重複を同定する。用いられる方法には、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法、単一エクソンの欠失/重複を同定する標的遺伝子マイクロアレイ(gene-targeted microarray)などがある。
  7. Engelら[2009]によってエクソンおよびマルチエクソンの欠失が報告された。

アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)活性 放射標識されたシトルリンのアルギニノコハク酸への取り込みを培養線維芽細胞で測定する(「出生前検査および着床前診断」の項を参照)。ASS活性は、放射標識された(C14)-アスパラギン酸から(C14)-アルギニノコハク酸への変化に基づく方法によっても測定される。

  • 線維芽細胞における酵素活性の正常値は0.8-3.8nmol/分/mg蛋白だが、組織検体や検査方法、検査機関によって異なる。
  • 臨床症状や比較的特異的な代謝物のパターンから診断を確定できるため、酵素活性測定は広く行われてはいない。

遺伝子型と表現型の相関

一部の表現型は病原性変異が同定されているものの、すべての例で表現型を予測できるわけではない。

  • 重症である古典型シトルリン血症Ⅰ型は、典型的には22の病原性変異による。エクソン15の病原性変異、p.Gly390Argは古典型で最もよく認められる。
  • 軽症(すなわち遅発型)シトルリン血症Ⅰ型は12の病原性変異と相関する。

命名法

アルギニノコハク酸合成酵素欠損症を表す用語として、“シトルリン血症Ⅰ型”および“古典型シトルリン血症”が好まれている。これらは、遺伝学的に異なる疾患でありシトリン欠損症としても知られるシトルリン血症Ⅱ型との混同を避けるために用いられている。

頻度

シトルリン血症Ⅰ型は57,000出生に1人と推定されている。
以下のように、新生児スクリーニングプログラムによってCTLN1が見つかっている。

  • 韓国:44,300出生に2人。
  • ニューイングランド:200,000出生に1人。
  • 台湾:パイロットプログラムで592,717出生に5人(重症2人および軽症3人)。全体の発生率は118,543人に1人。
  • オーストリア:622,489人の新生児において77,811人に1人。
  • テキサス、ニューヨーク、カリフォルニア、マサチューセッツ、ノースカロライナ、ウィスコンシン州における、CTLN1とアルギニノコハク酸リアーゼ欠損症(ASLD)を合わせた推定される発生率:117,000人に1人。

遺伝学的に関連する(アレルに関する)疾患

このGeneReviewで述べている他に、ASS1遺伝子変異と関連することが知られている表現型はない。


臨床像

新生児スクリーニングでシトルリン上昇を認めることがある疾患には、シトルリン血症Ⅱ型、アルギニノコハク酸尿症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症がある。

シトルリン血症Ⅱ型(CTLN2)の原因は、SLC25A13遺伝子の両アレル変異によるシトリンの欠損である。SLC25A13遺伝子はミトコンドリアの促進拡散を担うキャリア(solute carrier)蛋白であるシトリンをコードする。シトリン欠損症では、アスパラギン酸およびグルタミン酸はミトコンドリア内外に輸送されず、軽度の高アンモニア血症とシトルリン血症を呈する。SLC25A13遺伝子両アレル変異は新生児期に肝内胆汁うっ滞もきたす。成人シトルリン血症Ⅱ型患者の臨床経過はCTLN1よりも軽症で、おそらく軽症遅発性のシトルリン血症Ⅰ型とも鑑別可能できる。なぜCTLN2がCTLN1より軽症で遅発性であるのかは不明である。2つの疾患の鑑別は難しい。シトルリン血症Ⅱ型の頻度は報告されていない。

尿素回路の障害によって起こる高アンモニア血症と、有機酸血症でN-アセチルグルタミン酸合成酵素の阻害によって起こる二次性高アンモニア血症を鑑別することが非常に重要である(「尿素サイクル異常症概説」図2を参照)。

ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ(DLD)欠損症でもシトルリン、アンモニア、グルタミンの上昇を認めることが報告されている。DLD欠損症はDLD遺伝子両アレル変異によって起こる。
古典型シトルリン血症Ⅰ型では、他の原因によって尿素回路における最初の4段階に障害を起こした場合にみられるような典型的な急性新生児高アンモニア血症を呈する。軽症のタイプは、遅発性のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症のように発症時期は遅い。「尿素サイクル異常症概説」図3では、高アンモニア血症患者で尿素回路のどの段階で障害を受けているかを調べる診断戦略が提示されている。


臨床的マネジメント

初期診断に続く評価

シトルリン血症Ⅰ型(CTLN1)であると診断された患者において、疾患の広がりやニーズを把握するため、以下のような評価が推奨される。

  • 血漿アンモニア濃度、アミノ酸、電解質の測定。血液ガス。尿中有機酸分析。尿中オロト酸。
  • 頭蓋内圧や全体的な神経学的所見の評価
  • 臨床遺伝専門医への診療依頼。

病変に対する治療

CTLN1と診断した場合、
確立している治療ガイドラインに基づいて急性期(必要であれば)および慢性期の治療を開始すべきである。ACMG-ACTシートACMGアルゴリズムを参照のこと。

高アンモニア血症の急性期治療

治療の要点は、血漿アンモニア濃度の迅速な低下、異化の防止および/もしくは頭蓋内圧亢進に対する加療である。

血漿アンモニア濃度の迅速な低下 高アンモニア血症を認めた場合もしくは疑われる場合、最長で24-48時間は蛋白質の摂取はすべて控えるべきである。この間、窒素捕捉療法および/もしくは透析にて血漿アンモニア血症を低下させながら異化を亢進させる必須アミノ酸欠乏を回避する。

薬物による窒素捕捉療法(安息香酸ナトリウム・フェニル酪酸ナトリウム・アルギニン)は、CTLN1患者で高アンモニア血症を認めた場合可及的速やかに経静脈的に行うべきである。(この治療の作用機序に関する情報については、「捕捉療法」の項を参照)

シトルリン血症Ⅰ型[GeneReview] 捕捉療法
著者:Jess G Thoene JG, Quinonez SC 記載日:2014年1月
注:以下の情報は上記の著者たちによる情報で、GeneReviewsスタッフによるレビューは受けていない。

捕捉療法
捕捉療法は尿中への窒素排泄を促進し、生理的な経路を代替する。安息香酸エステルはグリシン(窒素を1つ含有する)と抱合し、馬尿酸を生成する。一方で、フェニル酢酸はグルタミン(窒素を2つ含有する)と抱合し、フェニルアセチルグルタミンを生成する。双方とも尿中へ排泄される。CTLN1患者でアルギニンを補給すると、不足が解消され、尿中へのシトルリン排泄が持続する。捕捉療法として、初回は90分以上かけてボーラス投与し、以後は24時間以上かけて反復投与を行うべきである。

    • 初回輸注(90分以上かけて持続投与する)
      • 安息香酸ナトリウム:250mg/kgもしくは5.5g/㎡
      • フェニル酪酸ナトリウム:250mg/kgもしくは5.5g/㎡
      • 10%アルギニン塩酸塩:600mg/kgもしくは12.0g/㎡
    • 維持輸注(90分以上かけて持続投与する)
      • 安息香酸ナトリウム:250mg/kgもしくは5.5g/㎡
      • フェニル酪酸ナトリウム:250mg/kgもしくは5.5g/㎡
      • 10%アルギニン塩酸塩:600mg/kgもしくは12.0g/㎡
    • 注:透析を受けているのでなければボーラス投与の反復は推奨されない(以下を参照)。
  • 透析は血漿アンモニア濃度を迅速に低下させる最も効果的な手段である。捕捉療法でアンモニア濃度のコントロールつかない場合に緊急透析が必要となる。
    • 透析の方法としては血液透析が望ましく、アンモニア除去率は腹膜透析や血液ろ過を凌駕する。
    • 透析を行っている間も捕捉療法を継続するべきである。
    • 注:高アンモニア血症の治療で交換輸血が行われることはもうない。

異化の防止 グルコース(および高血糖が起こればインスリン)やイントラリピッドの静注によって同化を促進するべきである。

  • 異化を避けるため、完全な蛋白制限は24-48時間に止めるべきである。
  • 体格の小さな乳児では、異化を避けるには40kcal/100mLの10%ブドウ糖液が重要となりうる。浸透圧負荷が許容されるなら、可及的速やかに完全経静脈栄養を行って蛋白0.25g/kg/日および50kcal/kg/日を投与し、(血漿アンモニア濃度が問題なければ)その後は蛋白1.0-1.5g/kg/日および100-120kcal/kg/日とするべきである。標準的な完全経静脈栄養用製剤としてデキストロース、アミノゾル、イントラリピッドが用いられる。

頭蓋内圧のコントロール 輸液バランス、イン/アウト、体重の経過をみていくことが重要である。

  • 輸液バランスをドライサイドに保つべきである。乳児では体重1kgあたり1日約85mL、小児や成人では適切で相応の水分制限を行う。
  • 頭蓋内圧亢進の症状として、泉門の緊張、肝腫大、浮腫、握りこみ・はさみ肢位・足クローヌス・昏睡といった神経兆候の悪化を呈する。MRIで脳浮腫や虚血を認めることがある。

慢性期治療

CTLN1の慢性期治療として、生涯にわたる蛋白質制限、薬物療法(窒素捕捉療法やカルニチン)、および食事管理や薬物療法による代謝コントロールの程度によっては肝移植を行う。

蛋白質制限 生涯にわたる食事管理が必要であり、代謝栄養士の協力が不可欠である。

窒素捕捉療法

患者が固形食を摂取することができる場合、フェニル酪酸ナトリウム(ブフェニール[Buphenyl]®、アンモナップス[Ammonaps]®)450-600mg/kg/日を1日3回に分服し、またアルギニン遊離塩基400および700mg/kg/日の内服を開始する。患児の成長とともに、フェニル酪酸ナトリウムなら9.9-13g/㎡/日、アルギニンなら8.8-15.4g/㎡/日に用量を変更する。治療の詳細については、Brusilow & Horwich[2001]Häberleら[2012]の文献を参照されたい。

  • フェニル酪酸グリセロール(ラビクティ[Ravicti]®)はより風味の良いオプションである。フェニル酪酸を服用したことがない患者での初回用量は4.5-11.2mL/㎡/日(5-12.4g/㎡/日)である。フェニル酪酸ナトリウムからフェニル酪酸グリセロールに変更する場合、フェニル酪酸グリセロールの1日用量(mL)=フェニル酪酸ナトリウムの1日用量(g)x 0.86と換算する。
  • 治療の成功は、血漿アンモニア濃度が100μmol/L未満および血漿グルタミン濃度が正常値近くになることと定義される。血漿アルギニン濃度は年齢別基準値正常上限の最大250%に達することがある。
  • アシル化剤による治療の結果として起こる可能性があるカルニチン欠乏症を予防するため、補助療法としてL-カルニチンの投与が推奨されてきた。

肝移植は知られる中で唯一の尿素サイクル異常症に対する根治療法である。移植によって食事蛋白制限を行う必要はなくなるが、移植を行う時点で認めていた神経学的後遺症は回復しない。
理想的には、合併症を減らし生存率を上げるため、肝移植は生後3か月を過ぎ体重も5kgを超えた(神経認知障害が認められる前の)1歳未満の患児に行うべきである。

  • 生後6-64か月のCTLN1患児に対する肝移植では、早期に移植を行うほど良好な発達が認められた。
  • 2歳以前に肝移植を施行した際の生存率は移植後5年間で90-95%であった。

注:肝移植にてASS酵素の欠損は改善するが、アルギニンは肝外でも合成され移植後も低値にとどまるため補給が必要である。

  • 生体肝移植
    • 母から生後6か月の娘への生体肝移植(240g)成功例が報告されている。以前は年4-6回ほど高アンモニア血症のエピソードがみられ、コントロールがとても不安定だったが、アロプリノール負荷試験も正常化した。
    • 母から息子への生体肝移植において、血漿シトルリン濃度上昇(200-400μmol/L)の持続が認められた。その母親はヘテロ接合体保有者で、ASS1酵素の残存活性は28%であった。

一次病変の予防

高アンモニア血症を予防するため、生涯にわたる蛋白質制限、窒素捕捉療法、および代謝コントロールの状況によっては肝移植が行われる(「病変に対する治療」を参照)。

二次合併症の予防

間欠的な感染症(とくにウイルス性発疹症)では異化が誘発されることがある。そのような場合は注意深く患者を観察しなければならず、医学的には高アンモニア血症の予防に注意を払う。
インフルエンザワクチンを含め年齢に応じた予防接種を行うべきである。

経過観察

代謝栄養士や臨床生化学遺伝専門医とともに代謝内科で経過観察を行う。以下のモニタリングを行う。

  • 気分変調、頭痛、活気不良、嘔気、嘔吐、経口摂取不良、足クローヌスといった、切迫する高アンモニア血症の早期警告徴候を評価する。
  • 高アンモニア血症や必須アミノ酸欠乏、また切迫する高アンモニア血症を調べるため、それぞれ血漿アンモニアとアミノ酸分析を行う。血漿アンモニア濃度が上昇する48時間前までに血漿グルタミン濃度の上昇を認めることがある。
    疾患の重症度に応じて、新生児や乳児では頻回にモニタリングを行うべきである。
    年齢を重ね(10代や成人期)症状も安定している場合、臨床および生化学的なモニタリングは6か月~1年ごとでもよい。

回避すべき薬物や環境

以下を避ける。
・過剰な蛋白質摂取。
・流行疾患への明らかな曝露。

リスクのある血縁者の評価

シトルリン血症Ⅰ型患者の長期予後は初期およびピーク時の血漿アンモニア濃度によるため、疾患リスクのある同胞を可及的速やかに見つけ出すことが重要である。
評価として以下を行うことができる。

  • 家族内で病原性変異が判明している場合は分子遺伝学的検査。可能であれば、(初回哺乳から適切な経口治療を行うことができるよう)出生前診断を行うことが望ましい。
  • 出生当日に血漿アンモニアおよびシトルリン濃度を測定する。いずれかの許容レベルを超えた場合(アンモニア>100μmol/Lもしくは血漿シトルリン>~100μmol/L)、初期治療を開始するのに十分である。

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある血縁者への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

妊娠管理

妊娠中や分娩後に重篤な症状で発症した女性例が報告されているため、この期間の食事や投薬には細心の注意を払う必要がある。

研究中の治療法

遺伝子治療の可能性が示唆されているが現在まで成功していない。
肝移植の代替手段として、もしくは移植を待つCTLN1患者に対する一時的な治療法として、ヒト肝細胞移植の安全性および効果を評価する第Ⅰ相および第Ⅱ相試験が最近終了した。
疾患や病態の広範囲にわたる臨床試験に関する情報は、米国ではClinicalTrials.govを、欧州ではEUClinical Trials Registerを参照のこと。

その他

必須アミノ酸のケト酸は、窒素を処理する補助療法として早期に行われていたが、現在では「病変に対する治療」で述べた薬物に取って代わられている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

シトルリン血症Ⅰ型(CTLN1)は常染色体劣性遺伝形式で遺伝する。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患者の両親は絶対保因者である(すなわち1つのASS1遺伝子病原性変異の保因者)。
    ・ヘテロ接合体保有者(保因者)は尿路サイクル異常症の表現型の症状を呈さない。肝硬変に至ったヘテロ接合体保有者の一例が報告されている。

発端者の同胞

  • ・受胎時に、発端者の同胞が罹患している確率は25%、無症候性保因者である確率は50%、非罹患者かつ非保因者である確率は25%である。
    ・ヘテロ接合体保有者(保因者)は尿路サイクル異常症の表現型の症状を呈さない。肝硬変に至ったヘテロ接合体保有者の一例が報告されている。
    ・同胞は出生後すぐに評価を行うべきであり、診断的評価が完了するまで蛋白質制限を行うべきである(「臨床的マネジメント」を参照)。

発端者の子

CTLN1患者の子どもは1つのASS1遺伝子病原性変異の絶対保因者である。

発端者の他の家族

発端者の両親の同胞がASS1遺伝子変異の保因者であるリスクは50%である。

保因者(ヘテロ接合体保有者)診断

疾患リスクのある血縁者に保因者診断を行うには、事前に家族内のASS1遺伝子変異が同定されている必要がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断・治療目的で疾患リスクのある血縁者に対して行う検査に関する情報は「臨床的マネジメント」「リスクのある血縁者の評価」を参照のこと。

家族計画

  • 遺伝学的リスクの評価や遺伝学的状況の明確化、および出生前診断の有用性についての議論を行うのに最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患者、保因者、保因者のリスクがある若年成人に対して、遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いを含む)を申し出ることがのぞましい。

DNAバンキング

DNAバンクは(主に白血球から調整した)DNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や、遺伝子・アレル変異・疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、罹患者のDNA保存を考慮すべきである。

出生前診断および着床前診断

疾患リスクが25%ある場合、出生前診断を行うことができる。出生前診断の方法には以下がある。

  • 分子遺伝学検査 ひとたび家族内でASS1遺伝子変異が同定された場合、リスク妊娠の出生前検査や着床診断を行うことができる。
  • アルギニノコハク酸合成酵素活性は、家族内のASS1遺伝子病原性変異が同定されていない場合、絨毛採取(CVS)で採取した未培養の胎児組織もしくは羊水穿刺で採取した羊水細胞で測定することができる。

注:羊水中のシトルリン/オルチニン比やアルギニン濃度を用いた診断精度の向上が報告されている。


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Shane C Quinonez, MD, Jess G Thoene, MD.
    日本語訳者: 和田 宏来 (国際親善総合病院小児科/しんぜんクリニック小児科)
    Gene Reviews 最終更新日:2016.9.1.  日本語訳最終更新日: 2020.6.8. (in present)

原文: Citrullnemia TypeⅠ

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