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ジストロフィン異常症
(Dystrophinopathies)

[Duchenne Muscular Dystrophy (DMD, Pseudohypertrophic Muscular Dystrophy);Becker Muscular Dystrophy (BMD); DMD-Related Dilated Cardiomyopathy]

Gene Review著者:Basil T Darass, MD; Bruce R Korf, MD, PhD;David K Urion, MD
日本語訳者: 中村昭則(信州大学医学部脳神経内科)
Gene Review 最終更新日: 2008.3.21. 日本語訳最終更新日: 2009.12.13.

原文 Dystrophinopathies


要約

疾患の特徴 

ジストロフィン異常症は,ジストロフィンをコードしているDMD遺伝子の変異に起因する筋疾患である.軽症型として無症候性高CK血症,ミオグロビン尿症を伴う筋けいれん,大腿四頭筋ミオパチーあるが,重症型としてDuchenne/Becker型筋ジストロフィーおよびDMD遺伝子関連拡張型心筋症(DCM)がある.Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の症状は,通常,幼少時期に出現し,座位や起立を含む成長の遅れを伴う.近位筋の筋力低下により動揺性歩行や登攀困難を呈する.DMDの症状は急速に進行し,12歳までに車椅子生活となる.心筋症は18歳以降の全ての患者に起こる.一般的に死因は呼吸器合併症や心筋症であり,30歳を越えて生存する例はほとんどない.Becker型筋ジストロフィー(BMD)では,筋力低下がより遅発性であることが特徴的で,20歳代でも歩行可能な患者が存在している.骨格筋障害が軽度であるが,DCMによる心不全が一般的な死因である.平均死亡年齢は40歳代中頃である.DMD遺伝子関連拡張型心筋症は,左室拡張およびうっ血性心不全が特徴である.DMD遺伝子変異の女性保因者はDCMのリスクが高い.

診断・検査 

DMD遺伝子はジストロフィン異常症と関連する唯一の遺伝子である.DMD遺伝子の分子遺伝学的検査により,多くのDMDおよびBMD患者において筋生検を行なわずにジストロフィン異常症の診断を確定することができる.実際には,DMD患者の全例とBMD患者の少なくとも85%にDMD遺伝子の変異が見出される.DMD遺伝子関連拡張型心筋症およびDMD遺伝子変異を持つ患者数は不明である.その他の症例では,理学所見,家族歴,血清CK値および筋生検の組合せにより確定診断がなされる.

臨床的マネジメント 

症状に対する治療全ての患者において,DCMに対する抗うっ血剤を用いた積極的な治療や重症例には心臓移植が薦められる.プレドニゾンは,副作用が強くない限りDMD患者の筋力や筋機能を向上させる.欧州で使用され,プレドニゾロンの合成誘導体であるデフラザコートはプレドニゾンより副作用が少ないと考えられる.理学療法は可動性の促進と関節拘縮の予防に役立つ.

二次的合併症の予防術前の呼吸器科および循環器科の評価,毎年の肺炎球菌およびインフルエンザワクチン接種,骨密度の改善と骨折の予防のための日光浴とビタミンDおよびカルシウムが豊富なバランスのとれたダイエット食,肥満予防のための体重のコントロールを行う.

経過観察:DMDおよびBMDに対しては,10歳頃から循環器科医の年1〜2回の評価を開始,脊椎側弯のモニタリング,車椅子生活になる前に基礎となる呼吸機能検査,小児呼吸器科医師の頻回の評価を行う.保因者に対しては,10歳代以降に一度は心機能の評価を行う.

避けるべき薬剤/状況:ボツリヌス毒素の注射は避ける.
リスクを有する者の検査:心機能の観察が必要な保因者の同定を行う.

研究中の治療:オキサンドロレン,サイクロスポリン,アミノグリコシド,ナンセンス変異のリボゾームのリード・スル―を促進するPTC124,幹細胞治療,遺伝子治療.
その他:アザチオプリンによる免疫抑制,筋芽細胞移植,クレアチン・モノハイドレートは効果ない.

 

遺伝カウンセリング 

ジストロフィン異常症はX連鎖性遺伝である.発端者の同胞に対するリスクは母である保因者に依存する.保因者女性は各妊娠においてDMD遺伝子の変異を50%の確率で受け渡す可能性があり,変異を受け継いだ息子は患者,変異を受け継いだ娘は保因者となる.DMD男性患者は生殖可能ではないが,BMDおよびDMD遺伝子関連拡張型心筋症の男性患者は生殖可能である.その娘は保因者であるが,息子であればその父親のDMD遺伝子の変異を受け継ぐことはない.DMD遺伝子変異が家族内で確認あるいは遺伝情報に関連したマーカーで特定されていれば,リスクのある妊娠に対して出生前診断は可能である.


診断

臨床診断

X連鎖性遺伝形式に一致する家族歴に加え,次の臨床所見よりDuchenne型筋ジストロフィー,Becker型筋ジストロフィー,DMD遺伝子関連性拡張型心筋症(DCM)の診断が支持される.

Duchenne muscular dystrophy(DMD)

  • 遠位筋よりも近位筋に優位な進行性かつ対称性の筋力低下.しばしば腓腹筋の肥大を伴う.
  • 5歳以前に症状が出現
  • 13歳以前に車椅子に依存

Becker muscular dystrophy(BMD)

  • 遠位筋よりも近位筋に優位な進行性かつ対称性の筋力低下.しばしば腓腹筋の肥大を伴う(大腿四頭筋の筋力低下が唯一の症状である場合あり)
  • 運動誘発性の筋けいれん(一部の患者で出現する)
  • 肘の屈筋群の拘縮(出現する場合は末期)
  • 車椅子への依存(出現する場合は16歳以降)
  • 頸部屈筋の筋力の保持(DMDとBMDの相違点)

繊維束攣縮と感覚の消失の存在よりジストロフィン異常症の診断が除外される.
中間型は中間の重症度の症状と13〜16歳で車椅子生活となる.

DMD遺伝子関連拡張型心筋症(DCM

  • 典型的には男性で20〜40歳,女性では晩年にうっ血性心不全を伴う拡張型心筋症が出現
  • 通常,臨床的に明らかな骨格筋障害がなく,無症候性BMDとして分類されうる.
  • 男性では数年以内に急速に進行して死に至る.女性では10年あるいはそれ以上かけて緩徐に進行する.

検査

血清Creatine kinase(CK)値(表1)

表1.ジストロフィン異常症における血清CK値

 

表現型

患者の割合(%)

血清CK値

男性

DMD

100%1

>10X 正常

BMD

100%1

>5X 正常

DMD遺伝子関連DCM

ほとんどの患者2

“増加”

女性保因者

DMD

〜50%3,

2-10X 正常

BMD

〜30%3,

2-10X 正常

  1. 血清CK値はソースである筋線維の変性が進行性し筋量が減少することにより,年齢が進むにつれて徐々に低下する
  2. 血清CK値は通常増加するが,DMD遺伝子関連性拡張型心筋症では正常の場合があることが報告されている
  3. 他の研究から,平均血清CK値は20歳以上と比較して20歳未満の若い保因者で増加しており,そのようなDMD/BMD保因者では,血清CK値の変動が大きいことが分かっている [Sumita et al 1998].

筋電図検査 筋電図は神経性原性疾患と筋原性疾患を鑑別するために有用である.筋原性の場合は,持続時間の短縮,低振幅,多相性,早期動員の運動単位により示される.進行した場合には,干渉パターンは動員の減少のため不完全となり,最終的には電気的に静止状態となる.しかし,これらの所見は非特異的であり,全ての筋原性疾患で見られる.実際に.筋電図はジストロフィン異常症の診断にはほとんど用いられていない.

筋生検
病理 病初期の筋病理は非特異的なジストロフィー変化を示し,筋線維の大小不同,局所的な壊死・再生,硝子様変化,病末期には脂肪や結合組織の置換を認める.

ウエスタンブロットと免疫組織化学を表2にまとめた.

表2.生検筋を用いたジストロフィンタンパク質の所見

 

表現型

ウエスタンブロット

免疫組織化学1

ジストロフィン分子量2

ジストロフィン量3

男性

DMD

検出不能

0-5%

完全/ほぼ完全欠損

中間型

正常/異常

5-20%

 

BMD

正常
異常

20-50%
20-100%

正常または減少
不規則な染色

女性保因者

DMD random XCI4

正常/異常

>60%5 (70±9%)

モザイクパターン

DMD skewed XCI

正常/異常

平均<30% (29±25%)6

モザイクパターン

  1. ジストロフィンのC端,N端およびロッド・ドメインに対するモノクローナル抗体を使用
  2. 正常の分子量は427 kDa.
  3. ジストロフィンの量は,正常の量に対する割合で表わされている.表に示されている参考値は文献のデータに基づいており,現在,臨床検査室で利用されている.
  4. XCI=X染色体不活化
  5. 臨床的には,女性保因者にジストロフィンの定量解析は,その値の範囲が広いこと,正常者とオーバーラップするために行われない.
  6. 中間型,重症例

細胞遺伝学的解析

男性 稀なケースに,DMD男児が,色素性網膜炎,慢性肉芽腫症およびMcLeod症候群,あるいはグリセロールキナーゼ欠損症や副腎低形成を含むX連鎖性疾患の隣接する遺伝子欠失症候群として見出されることがある.このような男児では,Xp21.2を含む細胞遺伝学的欠失または再構成が,可視できる高解像度染色体検査やプローブ(DMD遺伝子に加え,GKNRDB1遺伝子をカバーしている)を用いたFISH法で証明されることがある.

女性 古典型DMDの女児は,Xp21.2を含むX染色体の再構成や欠失,X染色体の完全欠損(例:ターナー症候群)または,X染色体の片親性ダイソミーを有している可能性がある.典型的なDMDの女児の診断は高解像度染色体検査で証明可能である.

分子遺伝学的検査

遺伝子 DMD遺伝子は,DMD,BMDおよびDMD遺伝子関連DCMと関係する唯一の遺伝子である.

臨床検査

  • 診断的検査

    欠失/重複の解析

    • 欠失の検出のために,マルチプレックスPCR,サザンブロット法,およびFISH(DMD遺伝子のエクソン3−6,8,12,13,17,19,32−34,43−48,50,51,および60をカバーするプローブを用いた)が用いられ,DMD患者の65%の変異,BMDの85%の変異が証明される.欠失の約98%はこれらの方法で検出可能である.
    • サザンブロットおよび定量的PCRは重複の検出に用いられる.重複により,イン・フレームまたはアウト・オブ・フレームが誘導される可能性があり,DMDやBMD男性患者の約6−10%で認められる.ある研究では,重複はBMDの6.8%,DMDの8.18%で検出されている.
    • Multiple ligation probe amplification (MLPA)法が発端者と女性保因者のDMD遺伝子の欠失/重複の解析のために開発された.
  • 変異の検出または塩基配列の解析により,DMD遺伝子変異の30−35%を占める小欠失や挿入,一塩基置換,スプライス変異が検出される.
  • 新しい検査法であるSCAIP (single condition amplification internal primer sequencing)やDGGE(変性濃度勾配ゲル電気泳動)は,半自動,迅速,正確かつ経済的に残る30−35%のDMD遺伝子変異の検出に利用されている.
  • 筋生検を基に変異検出頻度をほぼ100%にまで増加するに最適化された診断法が開発された.この方法は,直接cDNAシークエンスと組み合わせたタンパク質およびRNAを基にした解析を利用している.

表3.本疾患の分子遺伝学的検査のまとめ

ジストロフィン異常症の診断のための分子遺伝学的検査法

検査方法

変異の検出

表現型と検査法による男性患者の変異欠失頻度

検査の
有用性

DMD

BMD

XLDCM

欠失/重複の解析

DMD遺伝子の1個以上の
エクソンの欠失

〜65%

〜85%

不明

臨床検査

DMD遺伝子の1個以上の
エクソンの重複

〜7-10%

〜6-10%

不明

変異の探索
および/あるいは
シークエンス法

DMD遺伝子の小挿入/
欠失/点変異/スプライシング変異

〜25-30%

〜5-10%

不明

検査方法の戦略

ジストロフィン異常症の診断の確立ジストロフィン異常症の臨床症状や高CK血症を示す患者に対する診断の最初のステップは,DMD遺伝子の分子遺伝学的検査である.

  • 原因となる遺伝子変異が同定されれば診断は確定される.この場合の筋組織の評価は,家族歴のない患者におけるDMDとBMDの表現型を鑑別する際に役立つと考えられる.
  • 原因となる遺伝子変異が同定されなければ,筋生検によりジストロフィンのウエスタンブロットおよび免疫組織学化学を用いて診断される.

de novo変異の発生源の同定ジストロフィン異常症が家系内に1名のみである場合,de novo変異の発生源は欠失/重複の解析あるいは連鎖解析法,塩基配列決定法により同定可能である.患者の変異をもつDMD対立遺伝子に関連したハプロタイプは,その母を通して追跡可能である.必要であれば,母方の祖父母を通して原因となる遺伝子変異を持つ個人の同定が可能である.

リスクのある保因者に対する検査 は,家系内において,原因となる変異の同定が先に行われている必要がある.

出生前診断および受精前診断 は,リスクのある妊娠に対して,家系内において,原因となる変異の同定が先に行われている必要がある.

遺伝学的に関連する疾患

DMD遺伝子の変異に関連した他の疾患は知られていない.

臨床像

自然経過

男性

ジストロフィン異常症は軽症例から重症例まで存在する筋疾患である.最軽症型には,無症候性高CK血症,ミオグロビン尿症を伴う筋けいれん,大腿四頭筋ミオパチーがある.また,最も重症型には骨格筋が主に障害されるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD),Becker型筋ジストロフィー(BMD)および心筋が主に障害されるDMD遺伝子関連拡張型心筋症が(DCM)ある.

DMDとBMDの鑑別は,DMDでは13歳以前に,BMDでは16歳以降に車椅子依存する年齢に基づいている.13〜16歳の間で車椅子に依存となる場合は,中間型と呼んでいる.骨格筋障害は見られないものの血清CK高値や筋生検でジストロフィン異常を示す患者はBMD軽症例として報告されている.非典型的患者で重篤な心筋症を呈している場合,BMDとDMD遺伝子関連拡張型心筋症を区別することは困難である.

心障害については,一般に病初期には症状はないが,洞性頻脈や様々な心電図異常を示すことがある.心エコー検査法では,正常あるいは限局性の異常のみを示すことがある.

無症候性あるいは症候性の心筋障害はDMD/BMDの約90%の患者に見られる.しかし,心筋障害が死亡原因となるのはDMD患者の20%,BMD患者の50%である.DCMは一般に,心室腔の拡大と心機能障害によるうっ血性心不全を呈する.XLDCM(X連鎖性拡張型心筋症)は10歳代に発症して急速に進行し,診断後1〜2年以内に心不全により死に至る.DCM患者では骨格筋障害の臨床所見を示す場合としない場合がある.

DMDは通常幼年期に起座や起立の遅れを含む発達遅延で発症する.処女歩行の平均年齢は約18ヶ月(12−24ヶ月)である.両親により気づかれる初発症状は,全身の運動発達遅延(42%),つま先歩行や扁平足を含む歩行障害(30%),歩行遅延(20%),学習困難(5%),発話障害(3%)である.家族歴のないDMD患児の平均診断年齢は4歳10ヶ月(16ヶ月−8年)である.近位筋の筋力低下により動揺性歩行や登攀困難が生じる.患児は腰帯筋力の低下を補うために腕を用いて仰向きの位置から立ち上がる際にGowerの手技を用いる(Gowers徴候).腓腹筋は肥大し,触診で硬い.時折,腓腹筋の痛みを生ずる.症状は急速に進行し12歳までに車椅子生活となる.

DMDの心筋症の発病率は10歳代で着実に増加し,約1/3が14歳までに,1/2が18歳までに,18歳以降では全例に発症する.

DMD男児では,非進行性認知機能障害は古くから知られており,IQスコアーが一般に左方移動している.また,ウェクスラー式知能評価検査では,言語性IQが動作性IQよりも障害されていることが報告されている.

DMD男児にみられる言語障害は,短期言語性記憶障害の結果であることが指摘されている.最近,記憶(特に短期記憶)と実行機能の特定の障害が報告された.また,この記憶障害は,言語と聴覚間の調節と同様に視空間的にも起こっていることが観察されている.言語と作業の解離は,初期の研究で用いられた言語検査による短期記憶に大きな影響を与える人工産物であることが示唆された.以上から,DMD男児の特異な認知機能障害が短期記憶と実行機能異常によることが示されている.この実行機能異常は,しばしば注意欠陥性多動症(ADHD)としばしば混同される.ADHDと広義の実行機能異常を区別するために,神経心理学的検査が根拠となる.

DMDでは運動能が低下するために,骨密度が減少し骨折の危険性が増加する.副腎皮質ステロイドの投与により無症候性の椎骨圧迫骨折の危険が増す.

30歳代を超えた生存はほとんどみられない.呼吸器の合併症と心筋症が一般的な死因である.病院外での死亡が多いため,死因の特定はしばしば困難である.

BMDは筋力低下が遅発性であること特徴的であり,20歳代でも自力歩行は可能である.骨格筋障害が軽いにも関わらず,拡張型心筋症による心不全が一般的な死因となっている.平均死亡年齢は40歳代中頃である.診断技術の改良により,30歳以降に発症し60歳代でも自力歩行可能である症例が存在する.

DMD遺伝子の分子遺伝学的検査や生検筋におけるジストロフィン染色で確認された軽症患者は次のどちらかに分類される.(1)高CK血症,腓腹筋肥大,筋けいれん,筋痛,運動誘発性ミオグロビン尿症の存在からsubclinicalな骨格筋障害を有するBMD,または,(2)腰帯や肩甲帯の筋力低下を伴う「良性」な骨格筋障害を有するBMD.

認知障害は一般的ではないかDMDほど重度ではない.

DMD遺伝子関連拡張型心筋症.1987年に5世代に渡り骨格筋障害が明らかでない63人拡張型心筋症患者の家系が報告された.男性患者は10歳代と20歳代であり,急速進行性の経過で心室性不整脈が見られた.女性保因者は緩徐進行性の経過であり,40〜50歳代で軽い心筋症を呈していた.生化学検査上の唯一の異常は高CK血症であった.この家族と他の1家系において連鎖解析法が行われ,Xp21.2のジストロフィンの遺伝子座に連鎖していることが示された.後の研究により,本患者の心筋にはジストロフィンが産生されていなかったが,骨格筋は障害されていないことが報告された.

DMD遺伝子関連拡張型心筋症は,骨格筋症状をほとんど,または全く示さないBMDである可能性がある.このような患者は無症状または軽症のBMD,または高CK血症を伴う拡張型心筋症患者として分類されている可能性がある.6〜48歳までの無症状あるいは軽症BMD患者28名において,2名は無症候であったが,19名(68%)は心筋障害を有していた.他の研究では,3〜63歳(平均40歳)の患者21名の33%で,骨格筋症状が比較的軽度であるにも関わらず心不全が認められた.

女性―

女性患者がDMD遺伝子を含むX染色体の転座のために,DMDの症状を示すことがある.また,ターナー症候群(完全もしくは部分的なX染色体の欠損)または非ランダム性X染色体不活化によりDMD症状を示すことがある.白血球のX染色体不活化検査を用いたX染色体の活性化対非活性化の比率および血清CK値,臨床徴候または生検筋のジストロフィン陰性線維の割合との間に明らかな関連は示されていない.

DMDおよびBMD保因者の徴候や症状が報告されている(表4).また,6.2〜15.9歳の23名の保因者には心筋障害が見られなかったことが報告されている.

表4.DMDおよびBMDの保因者の症状と徴候

症候/症状

DMD保因者

BMD保因者

なし

76%

81%

筋力低下

19%

14%

筋痛/筋けいれん

5%

5%

左心室拡張

19%

16%

拡張型心筋症

8%

0%

  1. 軽度から中等度の筋力低下

遺伝子型と表現型との関連

DMDとBMDの男性患者の表現型は,ジストロフィンの発現量と最も関連しており,主に欠失した対立遺伝子からのmRNAの読み枠により決められる.

DMD 非常に大きな欠失によるジストロフィンの発現の欠如,またはナンセンス変異,スプライス変異,欠失または重複により読み枠がずれるために非常に短いジストロフィンしか産生されないために,表現型は重症となる.この「読み枠理論」の例外として,イン・フレームにも関わらず,ジストロフィンの機能に影響を及ぼす可能性のあるタンパク質結合領域の欠失や明らかにアウト・オブ・フレームの欠失が,イン・フレームの欠失あるいはその逆として振る舞うようなエクソン・スキップの場合である.この理論による表現型予測の正確性は91−92%である.

脳型のアイソフォームDp140を含むジストロフィンの欠損が知的障害と関連することが示されている.

BMD 通常,N端またはC端が保持されたタンパク質が翻訳された“イン・フレーム”となる欠失,重複,スプライス変異,または短縮にはならない一塩基置換により,ある程度のジストロフィンが産生されている場合にはBMDの表現型を示す.正常より短いものの,機能の一部を保持したジストロフィンが産生されれば,軽症のBMDの表現型を示す.

DMD遺伝子関連拡張型心筋症 DMD遺伝子関連拡張型心筋症は筋型プロモーター(PM)と第1エクソン(E1)に存在した遺伝子変異により,心筋でジストロフィン転写産物が発現していない.しかし,脳(PB)とプルキンエ細胞(PP)の2つのプロモーターが骨格筋で活性化されているために,骨格筋障害を抑えるための十分なジストロフィンが発現している.

DMD遺伝子関連拡張型心筋症が,心筋の機能に重要なタンパク質領域のエピトープの変異により起こっている可能性や,仮想的ではあるが心筋特異的エクソンの遺伝子変異により起こっている可能性も考えられている.ジストロフィン異常症患者においてみられる心伝導異常は,ジストロフィン欠損による心筋NaチャネルNa(v)1.5の発現低下に関連しているかもしれない.

浸透率

ジストロフィン異常症の浸透率は男性において100%である.女性保因者の浸透率はX染色体不活化のパターンにより多様である.

促進現象

表現促進現象はジストロフィン異常症では見られない.

学術名

“仮性肥大筋ジストロフィー”という用語は過去に用いられていたが,仮性肥大がDMDまたはBMDに特徴的ではないことから,現在は用いられていない.

頻度

北イングランドのDMDの出生頻度は出生男児に5,618人の1人,BMDは出生男児18,450人に1人である.

鑑別診断

肢帯型筋ジストロフィー:DMDと臨床的に類似した疾患群であるが,常染色体劣性および常染色体優性遺伝であるため男女両方に起こる.肢帯型筋ジストロフィーは,ジストロフィンと相互作用する筋細胞膜と関連するサルコグリカンやその他のタンパク質をコードする遺伝子変異に起因している.ジストロフィンが陽性である患者では,膜貫通サルコグリカン複合体のタンパク質の欠損の有無について検査が行なわれる.DMD/BMDの表現型に類似しているLGMD2I型は,フクチン関連タンパク質をコードするFKRP遺伝子の変異により発症する.

Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー(EDMD):幼少期から始まる関節拘縮,緩徐進行性の上腕−腓骨筋の筋力低下・筋萎縮(最後には肩甲周囲や骨盤帯筋にも及ぶ),動悸,失神,運動耐性の低下およびうっ血性心不全などの心筋障害が特徴的である.発症年齢,重症度,骨格筋や心筋障害の進行度は家系内,家系間で多様である.臨床経過も幼少時期に早期かつ重篤な表現型を示すものから晩年発症かつ緩徐進行性までと多様である.一般に,関節拘縮は20歳代初頭に現れ,続いて筋力低下と筋萎縮が出現する.心臓障害は通常10歳代以降に起こる.EDMDと関連することが知られている2つの遺伝子はエメリン(X連鎖性EDMD)をコードするEMDと,ラミンA/C(常染色優性EDMDと常染色体劣性EDMD)をコードするLMNAである.

脊髄性筋萎縮症(SMA):筋緊張低下,対称性の筋力低下(顔面筋・眼筋は障害されない)および前角細胞障害(舌の線維束性攣縮,深部腱反射消失)の所見から疑われる.SMAはSMN遺伝子の遺伝子変異に起因する.遺伝形式は常染色体劣性である.

拡張型心筋症家族性と非家族性がある.家系調査に基づく大規模研究から,1/3が非家族性DCM,2/3が家族性DCMであった.家族性DCMの原因は,優性遺伝性(56%),劣性遺伝性(16%),DMD遺伝子異常をもつX連鎖性遺伝性(10%),無症候性筋疾患を有する常染色体優性遺伝性(7.7%),心伝導障害を有するDCM(2.6%)および分類不能(7.7%)であった.

TAZ遺伝子の変異により起こるX連鎖性小児拡張型心筋症の臨床スペクトラムは,Barth症候群,心内膜線維弾性症,左心室性非収縮症,およびX連鎖性重症拡張型心筋症が含まれる.


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

ジストロフィン異常症と診断された患者の状態を確認するために,以下の評価事項が必要である.

  • 理学療法的評価
  • 必要に応じ,個別的教育計画のための小学校入学前の発達の評価
  • 診断時の年齢が10歳以上である場合,心電図,胸部レントゲン,心エコー検査,肺機能検査,および/またはMRIによる心筋症の評価

症状に対する治療

DMD/BMD患者の管理を適正に行うことにより,生存期間の延長と生活の質の改善をはかることが可能である.

拡張型心筋症学米国アカデミーの心臓病学および心臓外科学の小児部門の声明に基づいた推奨

回顧的観察研究から,初期診断時および心筋症の治療を受けているDMDやBMD男児において,心室筋のリモデリングが起こっている可能性が見出されている.心エコー検査で拡張型心筋症のある69名の患児において,DMD27名とBMD4名にはACE阻害剤が平均15歳で開始されていた.投与3ヶ月後の心エコー検査で改善が認められなければ,b-ブロッカー(カロベジロールまたはメトプロロール)が追加された.この31名に対して,平均3.3年後に心エコーを施行したところ,左室の大きさと機能は19名(65%)で正常化,8名(26%)で改善,2名(8%)で変化がなかった.平均のLVEFは36%から53%に増加していた.球指数の減少は,心室の形状が改善したことを示している.本治療により心筋障害が改善したのか,進行過程の徴候をマスクしたのかは不明だが,後負荷を減らす初期治療が心機能の改善を誘導したという仮説が最近の研究から支持されている.

著者らの施設では,通常,DMDまたはBMDの子供に対し初期からACE阻害剤および/またはb遮断薬で治療している.心不全が明らかな症例では,必要に応じて利尿剤やジゴキシンなどの他の薬剤により治療が行われている.心臓移植は重症の張型心筋症例や骨格筋障害が限局的または臨床的にみられないBMDに対して行われている.

  • 必要に応じて.抗うっ血剤を用いた治療
  • 心筋症の初期症状が出現した場合にACE阻害剤やb遮断薬による治療

    記:多くの症例で,本治療により左室の大きさや収縮能が正常化する

  • 重症例に対する心臓移植

薬物治療

プレドニゾン.プレドニゾンはDMD患者の筋力と筋機能を改善させることが示されており,膜の安定化作用と抗炎症性作用によると考えられている.一方,アザチオプリンは有効でなかったことから,改善が免疫抑制作用の効果によるものかは不明である.無作為化二重盲検試験の6ヵ月目の評価では,プレドニゾン0.75 mg/kg/日または1.5 mg/kg/日の投与によりDMD患者の筋力増加と筋力低下率の減少が示された.改善は治療開始後10日以内に始まり,最大の効果を得るのに0.75 mg/kg/日の量が必要であったが,3ヶ月後には安定状態となり,0.5および0.6 mg/kg/日の維持投与量の場合,その効果は3年間持続した.1つの非盲検試験では,プレドニゾンにより歩行可能期間が2年間延長することが示された.副作用は,体重増加(基礎値の20%以上)(40%),高血圧,行動異常,成長遅滞,クッシング様容貌(50%)および白内障である.

追跡調査により0.75 mg/kg/日の投与量が0.3 mg/kg/日より有効であることが示された.後の研究で,DMDとBMDの両方に対してプレドニゾロンの低用量(0.35 mg/kg/日)の有効性が証明された.0.75 mg/kg/日(最大1日量40 mg)で開始し,0.4 mg/kg/日まで徐々に減量(加齢と体重増加のため)することで効果が持続することが報告されている.より低用量では改善の程度はあまり強くない.

隔日投与と間歇投与(例えば10日服薬,10日休薬)も行なわれている.しかし至適投薬量や投薬日数については十分な検討がない.他の研究では,週1回の投与により副作用の発生率が低下することが報告された.6ヵ月間の各月初めの10日間に間歇的プレドニゾン(0.75 mg/kg/日)治療(プレドニゾンまたは偽薬)を行なった無作為化交叉対照試験では,プレドニゾンがDMD患者の筋機能の悪化を遅延させること,および副作用が生活の質に悪影響を与えなかったことが報告された.DMDに対するプレドニゾン治療の効果と副作用については,コクラン・システマティックレビューや124回ENMCワークショップにおいても同様の結論付けがなされている.

記:3または4週齢で週2日の経口プレドニゾロン(5 mg/kg)開始した場合の長期効果は,DMDのモデルマウスmdxにおいても報告されている.

副腎皮質ステロイドの治療を開始する至適年齢や至適投与期間に関するデータは十分にない.最近の数年間では,DMDの診断後(2-5歳)すぐに低用量プレドニゾンの治療が開始されることが推奨されているが,早期治療の有効性や安全性については十分に検討されていない.副腎皮質ステロイド療法は5〜15歳の患者に対する選択的治療法としても残されている.治療開始の至適年齢が5歳未満であるとした研究報告に留意する必要はあるが,発症早期のDMDに対する副腎皮質ステロイド療法の大規模対照試験は未だ行われていない.

BMD患者におけるプレドニゾンの有効性に関する情報は限られている.

  • 免疫抑制療法.免疫抑制療法は,米国神学会と米国小児神経学会によって作成された副腎皮質ステロイド療法に関する診療ガイドラインに基づいている.
    • 5歳以上のDMD男児には,プレドニゾン(0.75 mg/kg/day)の治療が提供されなければならない.治療開始前にその利点とリスクについて各個人と慎重に相談し,検討しなければならない.
    • 副腎皮質ステロイド療法の効果の評価には,定期的な筋機能検査,肺機能検査,独歩不能時の年齢の指標が役立つ.副腎皮質ステロイド療法のリスクの評価には,潜在的な副作用(体重増加,クッシング様容貌,短駆,成長遅延,にきび,多毛,胃腸症状,異常行動など)の認識が必要である.
    • 長期のコルチコステロイドの使用により,椎骨や長幹骨の骨折の頻度が増加する.
    • 副作用が強くなければ,プレドニゾンの至適維持量(0.75 mg/kg/日)は続行する.0.3 mg/kg/日でも著明ではないが,有意な改善が見られることがある.
    • 過度の体重増加が起こる(12ヵ月間以上で身長に対する標準体重の20%以上)場合,プレドニゾンを0.5 mg/kg/日まで減量する.過度の体重増加が続く場合,3〜4ヵ月後にさらに0.3 mg/kg/日まで減量する.
    • デフラザコート(0.9 mg/kg/日)もDMDの治療に使用できるが,無症候性白内障と体重増加に注意する.
    • アザチオプリンによる免疫抑制は有益ではない.

BMD患者のプレドニゾン治療の有効性についての情報は限られている

デフラザコート.デフラザコート(プレドニゾロンの合成誘導体)は欧州で使用されているが,米国では現在使用されていない.特に,体重増加がプレドニゾンより少ないと考えられている.デフラザコートとプレドニゾンとを比較した調査(欧州で実施)では,両薬剤がDMDの筋力低下を遅延させ,同等の効果があることが示された.また,DMDにおけるデフラザコート対プレドニゾンの効果については,別の欧州の多施設・二重盲検・無作為化試験により,筋機能の改善に同等の効果があることが示された.最近のデフラザコート治療の研究では,筋機能と同様に呼吸機能の維持に対しても有効であることが示されている.

DMDに対する2つの異なるデフラザコート投与のプロトコルの比較試験で,0.9 mg/kg/日のプロトコルは,月初めの20日間に0.6 mg/kg/日を服用し,残りの日に服用しないというプロトコルより有効であった.しかし,高容量を内服した患児の30%に無症候性白内障(治療不要)が見られた.15研究の系統的レビューやメタ分析の結果からデフラザコートにより筋力や筋機能が改善することが示されたが,プレドニゾンよりも有効であるかについては不明である.

側弯症の治療は,必要に応じて行う.

二次的合併症の予防

以下の検査を行う.

    • 外科的手術前の呼吸器科と循環器科専門医の評価
    • 肺炎球菌ワクチンと毎年のインフルエンザ予防接種
    • 骨密度の改善と骨折の危険を減らすための日光浴,ビタミンDおよびカルシウムの豊富なバランス・ダイエット食

      記:ビタミンDの補給は血清ビタミンD値が20 ng/ml未満の場合に開始する必要がある.

    • 運動能の促進と肥満予防のための理学療法
    • 肥満予防のための体重コントロール

      記:栄養士による定期的な評価が推奨される

経過観察

心臓.米国小児科学会が推奨するDMDまたはBMD患者の適切な心臓のケア

  • DMDに対して,幼少時より少なくとも2年ごと心臓機能の評価
  • DMDに対して,10歳代に,または心症状あるいは所見の出現時に年1回の心臓の評価

記:心臓の所見または症状を示すDMD患者は比較的は後期である.

  • BMDに対しては,約10歳代または所見あるいは症状が出現したときの心機能評価.評価は少なくとも2年ごとに続ける.

米国小児科学会が推奨するDMDまたはBMD女性保因者の適切な心臓のケア

  • 心筋障害が出現するリスクおよび心不全徴候と症状についての教育
  • 青年後期または成人初期に行われる初めての評価または心臓徴候や症状の出現時の早期の評価とともに,心不全および/または神経筋疾患の治療に経験のある循環器専門医による徹底した心臓の評価,
  • 25−30歳での開始する少なくとも5年毎の完全な心臓評価
  • DMDまたはBMD男児と同様の心疾患治療

呼吸器

  • 車椅子に制限される前の基礎となる呼吸機能検査(通常9〜10歳)
  • 車椅子制限,予測肺活量の減少(80%以下),または12歳齢のいずれか1つ以上当てはまれば,年2回毎の小児呼吸器科による評価が必要

整形外科

  • 整形的合併症,特にDMDとBMDの患者の脊柱側弯症のモニタリング

回避すべき薬物/環境

DMD/BMDでは,ボツリヌス毒素の注射は避ける.

リスクのある親族の検査

女性.女性保因者は,心臓の経過観察の目的について認識しておく必要がある(経過観察の項を参照)

遺伝カウンセリングに対し,リスクをもつ親族の検査に関連した事項については遺伝カウンセリング項を参照のこと.

研究中の治療法

アミノグリコシド.DMD患者の15%が,未成熟終始コドンとして知られる遺伝子変異を有している.培養細胞へのアミノグリコシドの投与によりRNAの読み違いを引き起こし,停止コドンが抑制されて変異した終始コドンの部位に代わりのアミノ酸が挿入される.mdxマウスに対するゲンタマイシン治療の結果,収縮により惹起される筋障害に対して機能的防御に必要なジストロフィン(正常骨格筋の10-20%)が発現した.

アミノグリコシド療法は遺伝子治療に代わるものとして提唱されたが,未成熟終始コドンの変異を持つ患者のみが対象となる.4人の患者に2週間のゲンタマイシン(7.5 mg/kg/日)を投与されたが,骨格筋では全長型ジストロフィンが発現していないことが分かった.DMDマウスモデルでの成果が再現されなかったことから,この治療法の更なる前臨床試験が要求されている.

PTC124は,ナンセンス(ストップ)変異のリボソームによる読み飛ばしを促進する新しい非抗生物質経口薬剤である.mdxマウスを用いた前臨床有効性試験では希望の持てる結果が得られた.現在,第一相試験が進行中である.

モルフォリノ・アンチセンス・オリゴヌクレオチドは,エクソン・スキッピングを誘導し,DMDのモデルマウスmdxの症状を改善した.

オキサンドロレン,はタンパク同化ステロイド(アンドロゲン)であるオキサンドロロンは,予備的研究によりプレドニゾンと同等の効果を持つことが示された.前向き無作為化比較試験では,オキサンドロロンが偽薬と比較してDMDの徒手筋力検査の平均点に有意な改善はもたらさないことが示されたが,定量的筋力検査での変化は有意であった.この研究を行った研究者によりオキサンドロロンが短期的には安全であり,副腎皮質ステロイド治療の開始前に成長の促進,筋力低下の進行を遅延させるために有効である可能性が指摘されている.しかし,DMDに対するオキサンドロロンの長期投与効果については検討されていない.

遺伝子治療.実験的遺伝子治療は現在進行中である.

Gregorevicらは,rAAV6ベクターの全身投与の結果,ジストロフィン欠損mdxマウス骨格筋へのDMD遺伝子の導入に成功したことを報告した.

幹細胞治療は研究されているが,まだ実験段階である.

その他

アザチオプリンによる免疫抑制は有効ではなかった.

筋芽細胞移植治療は十分な効果は得られなかった.

クレアチン一水和物は,筋ジストロフィーや神経筋疾患に対する治療法として研究されている.最近の無作為化二重盲検交叉試験では,30名のDMD男児に対してクレアチン(~0.1 g/kg/day)とプラセボが4ヵ月間投与された結果,クレアチン投与群では利き手の握力の改善と筋量の増加が示されたが機能的改善は見られなかった.限られたデータと有効性が低いことからDMDの治療としてクレアチン一水和物の投与は推奨されていない.

サイクロスポリンが8週間投与されたDMD患児では,臨床的機能の改善が報告されている.サイクロスポリンがその他の理由で投与された患者に,稀にサイクロスポリン誘発性ミオパチーの報告があることから,DMDに対するサイクロスポリンの投与は意見が分かれている.

ヒストン脱アセチル阻害剤は,マイオスタチンを抑制するフォリスタチンの発現を誘導することによりmdxマウスの症状が改善した.

臨床遺伝医学は,消費者思考の資源に役立つ情報と同じように,自然歴,治療,遺伝形式,他の家族の遺伝学的リスクに関する患者や家族の情報源となっている.

支持団体,は患者や家族に対し情報,支持,他の罹患患者との交流を供給するために確立された.その資源局は,疾患特異的および/またはは包括的支援団体を含んでいる.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ジストロフィン異常症はX連鎖性遺伝形式である.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患男性の父は罹患者や遺伝子変異の保因者ではない.
  • 罹患した息子と母方の親族に罹患者がいる場合,母は絶対ヘテロ接合体である.
  • 一人以上の罹患した息子を持ち,他のジストロフィン異常症の家族歴がない場合の母は以下の可能性がある.
    • 生殖細胞遺伝子変異(各細胞にDMD遺伝子変異が存在)
    • 生殖細胞モザイシズム(生殖細胞を含むDMD遺伝子変異のモザイシズム).
  • 家系調査で発端者が唯一の罹患者であれば,彼の母の保因状況や家系内保因者のリスクに関する幾つかの可能性について考慮する必要がある.遺伝学的メカニズムについては,以下の可能がある.
    • 発端者は,以下に示すどちらかの結果によりde novo DMD遺伝子変異を持っている.
      • 発端者の遺伝子変異が受胎時に卵細胞に生じ,その結果,発端者の体のあらゆる細胞で遺伝子変異が存在する.この場合,発端者の母にはDMD遺伝子変異はないし,他の家族メンバーにもリスクはない.
      • 遺伝子変異が受胎後に起こり,発端者の体の全ての細胞ではなく一部の細胞で存在している(体細胞モザイシズム).この場合,母がヘテロ接合体である可能性は低い.
    • 発端者の母がde novo DMD遺伝子変異を持つ.DMD男性を持ち,他にDMDの家族歴を持たない母の約2/3は保因者である.de novo変異が母に起こるメカニズムは以下の通りである.
      • 遺伝子変異が受胎時に卵細胞あるいは精子で起こり(生殖細胞変異),母の体のあらゆる細胞で変異が存在し,白血球から抽出されたDNAで変異が検出される.
      • 遺伝子変異が母の体の全ての細胞ではなく一部の細胞で存在(体細胞モザイシズム)し,白血球から抽出されるDNAで検出されるあるいはされない可能性がある.
      • 突然変異が母の卵細胞のみに存在(「生殖細胞モザイシズム」と呼ばれる)し,血液サンプルから抽出されるDNAでは検出されない.この場合の生殖細胞モザイシズムの起こる可能性は15-20%である.したがって,この母の子供たちにDMD遺伝子変異が遺伝するリスクは高くなる.
    • 発端者の母が,次の中の一つからDMD遺伝子変異を受け継いでいる.
      • 彼女の母(祖母)が保因者
      • 体細胞モザイシズムを持つ彼女の母(祖母)あるいは父(祖父)
      • 生殖細胞モザイシズムを持つ彼女の母(祖母)あるいは父(祖父)

連鎖解析を組み合わせた分子遺伝学的検査により,しばしばde novo変異の起源を同定することが出来る.この情報は,ジストロフィン異常症のリスクがある家系の分家を同定するために重要である.

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは母の保因状況に依存する.
  • 発端者の母には原因遺伝子変異があれば,各々の妊娠における遺伝の確率は50%である.遺伝子変異を受け継いだ男性は罹患者であり,遺伝子変異を受け継いだ女性は保因者である.
  • 発端者の母がDMD遺伝子変異を有していない場合は,発端者がde novo遺伝子変異を持っている可能性がある.しかし,母の生殖細胞モザイシズムの発生率が15-20%であるため,この場合の発端者の同胞はDMD遺伝子変異を受け継ぐリスクが高い.
  • 母が同時に体細胞および生殖細胞モザイシズムを持つならば,DMD遺伝子変異を受け継ぐ同胞へのリスクは母が生殖細胞モザイシズムのみを持つ場合より高いかもしれない.

発端者の子孫

  • DMD男性は通常,生殖可能年齢前に死亡するか衰弱が強いために生殖不能である.
  • BMDやDMD遺伝子関連拡張型心筋症の男性は生殖可能かもしれない.全ての娘は保因者であり,息子には父のDMD遺伝子変異は遺伝しない.

発端者のその他の家族メンバー

発端者の母方の叔母とその子供たちは,性別,家族の関係,および発端者の母の保因状況により保因者または罹患のリスクにさらされているかもしれない.

家族計画

遺伝的リスクの評価や出生前診断の利用に関する話し合いは妊娠前に行われるのが望ましい。

保因者診断

保因者検査はリスクのある女性において臨床的に利用可能である。

関連する遺伝カウンセリング上の問題

早期診断およびちりょうの目的のためにリスクのある親族の情報については「リスクのある親族の検査」を参照のこと

疾患に関連するDMD遺伝子変異の保因者と確定した女性は,DCMのリスクおよび推奨される経過観察について知らされる必要がある.

一つの家系内にBMDとDMD遺伝子関連拡張型心筋症の両方が観察されており,家族歴を聴取する際や遺伝カウンセリングを行う際には,起こりうる筋疾患の全体像について考慮されなければならない.

家族計画.遺伝リスク,保因者であるか否か,出生前診断の有用性に関する議論のための適切な時期は妊娠前である.罹患もしくは保因者であるリスクを持つ若年成人に対する遺伝相談(子孫および生殖に対して起こりうるリスクについての議論を含む)の提供は適切である.

DNA銀行.DNA銀行は,将来,利用するためのDNA(典型的には白血球から抽出された)を保管のことである.検査方法や遺伝子,変異,疾患に対する我々の理解が将来改善される可能性があるため,保管された患者DNAに対して配慮がなされなければならない.DNA銀行は,現在利用可能な検査の感度が100%未満である状況では特に重要である.DNA銀行を提供している研究所のリストを参照のこと.

出生前診断

出生前診断は,DMD遺伝子変異が家族メンバーの1人で確認されていれば,あるいは連鎖が確立されていれば,保因者の妊娠に対して可能である.通常の手順は,妊娠10-12週頃の絨毛膜絨毛サンプリング(CVS),または,妊娠15-18週時に実施可能な羊水穿刺によって得られる細胞から性染色体を同定するために核型または特殊な検査により胎児の性を決定する.核型が46,XYであれば,胎児の細胞から抽出されたDNAを用いて既知の病因となる遺伝子変異の分析や確立された連鎖解析が可能である.

着床前遺伝子診断(PGD).研究所または臨床検査室において罹患患者において同定されている疾患関連性の遺伝子変異を持つ可能性のある家系に対して有用である.

更新履歴

  1. 日本語訳者:中村昭則(国立精神・神経センター)
    Gene Review 最終更新日: 2005.8.25. 日本語訳最終更新日: 2007.7.2.
  2. Gene Review著者:Basil T Darass, MD; Bruce R Korf, MD, PhD;David K Urion, MD
    日本語訳者: 中村昭則(信州大学医学部脳神経内科)
    Gene Review 最終更新日: 2008.3.21. 日本語訳最終更新日: 2009.12.13. (in present)

原文 Dystrophinopathies

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