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拡張型心筋症概説
(Dilated Cardiomyopathy Overview)

Gene Reviews著者: Ray E Hershberger, MD and Ana Morales, MS, LGC.
日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)

Gene Reviews 最終更新日: 2015.9.24 日本語訳最終更新日: 2017.11.27

原文 Dilated Cardiomyopathy Overviewngelman Syndrome


要約

疾患の特徴 

非症候性で特発性の拡張型心筋症(DCM)の特徴は,左室拡大と収縮機能障害,すなわち心筋の収縮力低下である.拡張型心筋症は通常,以下の症状のいずれかを伴ってあらわれる.

  • うっ血(浮腫,起坐呼吸,発作性夜間呼吸困難)や心拍出量の減少(疲労,労作性呼吸困難)の症状を伴う心不全
  • 不整脈や伝導障害
  • 脳卒中を含む(左室壁在血栓由来の)血栓塞栓症

診断・検査 

遺伝性の拡張型心筋症は,他の原因が確認されている心筋症と鑑別しなければならない.発端者が発症した拡張型心筋症について,確認できる非遺伝性の要因をすべて除外した後に残るものは従来,特発性拡張型心筋症(IDC)と呼ばれてきた.特発性拡張型心筋症の正式な診断基準を満たす近親者が2人以上いる場合,家族性拡張型心筋症(FDC)との診断が確定する.家族性症例では,稀な遺伝子バリアントについて評価が行われ,同定される.病原性バリアントは特発性拡張型心筋症の孤発症例でも同定されるが,非家族性症例や家族性症例での遺伝性の頻度はまだ確定されていない.遺伝性の拡張型心筋症は,家族歴と臨床検査機関で行われる分子遺伝学的検査によって診断される.

臨床的マネジメント 

症状の治療
症候性/無症候性の拡張型心筋症の診断と治療に熟達した医師の治療を受けることにより寿命と生活の質が改善する.治療方法は薬物治療,ペースメーカー,植込み型除細動器などである.薬物療法や医療機器でも奏効が得られない進行性拡張型心筋症や重症心不全には,現在でも心臓移植が確実な治療法である.

経過観察
心血管系のスクリーニング検査(身体的診察,心エコー,心電図)

  • とりわけ,家系内に早期発症者がいる場合,既知の病原性バリアントが同定されているならば,無症状者(小児を含む)では1〜3年に1回,実施するとよい.
  • 検査が未実施,もしくは病原性バリアントが同定されていない特発性拡張型心筋症患者の第1度近親(成人/小児)では3〜5年に1回,実施するとよい.

妊娠管理
拡張型心筋症の女性の妊娠は禁忌である場合がほとんどである.特発性/家族性の拡張型心筋症の女性が妊娠した場合は,ハイリスク妊娠外来の診察を受けること.特発性拡張型心筋症の家族歴があるが無症状の女性には,周産期心筋症(PPCM)や妊娠関連の心筋症(PACM)のリスクがあるため,拡張型心筋症の検査に関するガイドラインに沿った管理が必要となる.

遺伝カウンセリング 

遺伝性拡張型心筋症の遺伝形式は,常染色体優性,常染色体劣性,X連鎖性である.ミトコンドリア遺伝も報告されているが,ミトコンドリア遺伝による拡張型心筋症は病態に大きなばらつきがある(軽度の成人発症型など)が,多くが症候性であるため,本項では扱わない.遺伝カウンセリングとリスク評価は,患者で確定された拡張型心筋症のサブタイプの判定に基づいて行われる.


定義

拡張型心筋症の臨床症状

拡張型心筋症は何年もの間,無症状であることがある.症状が現れるのは,通常,かなり疾患経過が進んだ段階であり,以下のいずれかの症状を伴う.

  • 心不全.うっ血(浮腫,起坐呼吸,発作性夜間呼吸困難)や心拍出量の減少(疲労,労作性呼吸困難)といった症状
  • 不整脈や伝導障害.こうした症状は進行した心筋症や心不全に随伴することが多い.遺伝学的要因(LMNA遺伝子,SCN5A遺伝子,DES遺伝子の病原性バリアントなど)のなかには,左室機能不全の進行度合いでは考えられないほどの顕著な伝導障害や不整脈を生じさせるものもある.
  • 血栓塞栓症.左室壁在血栓に続発した脳卒中や全身血栓症が生じることもある.

拡張型心筋症の発症は通常,30〜50歳代にかけての成人期であるが,胎児期,乳児期,幼少期,青年期,高齢期の発症もある.このほかにも詳細な背景情報がわかっている[Burkett & Hershberger 2005Sivasankaran et al 2005Judge 2009Dellefave & McNally 2010Hershberger et al 2010aHershberger & Siegfried 2011].

拡張型心筋症の確定診断

拡張型心筋症の診断が確定するのは,以下の双方を認める場合である:

  • 左室拡大成人期に二次元心エコーでみつかる場合がほとんどであるが,身長と性別を考慮して最適な評価を行うこと[Vasan et al 1997].小児期の成長は早いため,左室拡大の評価に際しては専門科医による心血管系の評価が推奨される.
  • 収縮機能障害(心筋収縮力の低下)
    • 駆出率が50%未満の場合,収縮機能障害を考慮する.左室駆出率は収縮機能障害の臨床的測定に最も多く用いられており,通常,二次元心エコーで測定されるが,このほかの非侵襲的検査(心臓核・磁気共鳴画像検査など)や左室血管造影によっても測定できる.
    • 左室内径短縮率も,収縮機能の臨床的測定に用いられる.左室内径短縮率が25%未満になると,収縮機能障害とみなされる.

特発性拡張型心筋症の確定診断

特発性拡張型心筋症(IDC)は臨床診断である.確認できる(非遺伝的)原因をすべて除外しても残る拡張型心筋症は,従来,特発性拡張型心筋症と呼ばれてきた.特発性拡張型心筋症という用語が生まれたのは拡張型心筋症に遺伝性のタイプがあるとわかる前であるため,特発性拡張型心筋症との診断では遺伝性であるか非遺伝性であるかを区別できない.このため,遺伝性の患者が確認されるのは「特発性拡張型心筋症」患者の一部であることに留意することが重要である.

拡張型心筋症の第1病因(この場合の拡張型心筋症とは一般に,病因を問わず,左室の形態と機能を指す)は,虚血 障害(冠動脈疾患による心筋梗塞の既往などに起因するもの)である.

虚血 障害の次に多い他の拡張型心筋症の原因は,心臓弁膜 症や先天性心疾患,毒素(アントラサイクリン系薬剤など),甲状腺疾患,炎症状態,心筋炎,長期にわたる重度の高血圧,放射線療法などである.これらのほとんどは,慎重な病歴聴取,標的を絞った身体的診察,臨床検査結果,心エコーによって判別できるが,適応があれば,冠動脈疾患を除外するため,冠動脈造影を行うこともある.

家族性拡張型心筋症(FDC)の確定診断

近親者の2人以上が特発性拡張型心筋症(IDC)の正式な診断基準を満たす場合(すなわち,確認できるすべての非遺伝的拡張型心筋症の原因が除外された場合),家族性拡張型心筋症との診断が確定する[Burkett & Hershberger 2005].
家族性拡張型心筋症はほとんどが成人発症であるが,発症年齢と浸透率の低下には広いばらつきある.こうした問題について包括的なレビューが行われている[Burkett & Hershberger 2005,Sivasankaran et al 2005,Judge 2009,Dellefave & McNally 2010,Hershberger et al 2010a,Hershberger & Siegfried 2011].
周産期/妊娠関連心筋症(PPCM/PACM)周産期心筋症や妊娠関連心筋症(妊娠中,もしくは妊娠直後に起こる拡張型心筋症)が拡張型心筋症と異なる疾患とみなされた時期もあったが,現在では拡張型心筋症の臨床スペクトラムの一部とされている.このため,拡張型心筋症の臨床検査と遺伝学的検査(「評価手順」を参照)は周産期/妊娠関連心筋症にも適応される[Elkayam et al 2005,Morales et al 2010,van Spaendonck-Zwarts et al 2010].

拡張型心筋症の鑑別診断

孤発性拡張型心筋症は,顕著な左室機能障害を伴う不整脈原性右室心筋症(ARVC)などの左室機能障害を呈する他の心筋症と区別しなければならない[Sen-Chowdhry et al 2008].
また,拡張型心筋症は症候性の症例とも区別しなければならない.鑑別を要する疾患リストが報告されている[Hershberger et al 2009a,Hershberger et al 2013].症候性の心筋症患者も拡張型心筋症を発症するため,こうした患者の管理では心血管モニタリングを行うことが重要である(「臨床的マネジメント」,「経過観察」を参照).

    • HFE遺伝子関連の遺伝性ヘモクロマトーシス.HFE遺伝子の両アレル変異から生じる遺伝性ヘモクロマトーシスは,肝硬変,糖尿病,メラニン増加による色素沈着,血清鉄増加,血清フェリチン増加を随伴する常染色体劣性遺伝性疾患である.ヘモクロマトーシスに起因する鉄過剰により拡張型心筋症が生じることもあるが,ヘモクロマトーシスでは非拡張型や浸潤性の心筋症の発症の方が多い.
    • エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィーの特徴は,関節拘縮,血清クレアチンキナーゼ(CK)増加,不整脈,小児期発症の筋力低下である.LMNA遺伝子変異が常染色体劣性型や常染色体優性型での発症原因であることがわかっている.EMD遺伝子変異でX連鎖型が生じることがわかっている.
    • 肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)の臨床的スペクトラムに含まれる肢体型筋ジストロフィー1B型の原因もLMNA遺伝子変異である.肢帯型筋ジストロフィー1B型は常染色体優性であり,軽度の関節拘縮,CK増加,不整脈,肩/腰帯の脱力を伴う.
    • Laing型遠位型ミオパチーでは,主に顔面脱力と,小児期発症の足首・母趾・手指の伸筋・首の屈筋の脱力が生じる.この疾患の遺伝形式は常染色体優性であり,MYH7遺伝子変異により発症する.
    • Carvajal症候群OMIM)は常染色体劣性遺伝性疾患であり,掌蹠角化症と縮れ毛を伴う拡張型心筋症を伴う.DSP遺伝子変異が原因である.
    • デュシェンヌ・ベッカー型筋ジストロフィーはX連鎖性疾患であり,DMD遺伝子変異により発症する.男性に最も多い症状は筋力低下と血清CK増加であり,歩行機能は小児期,もしくは後年に失われる.ヘテロ接合体の女性が孤発性の拡張型心筋症を発症することがある.
    • バース(Barth)症候群TAZ遺伝子変異によって発症するX連鎖性疾患であり,成長遅延,乳酸アシドーシス,好中球減少症,3-メチルグルタコン酸増加が生じる.
    • ミトコンドリア拡張型心筋症ミトコンドリアDNAの病原性バリアントにより,とりわけ巣状分節性糸球体硬化症やケアーンズ・セイヤー症候群などといったさまざまな複雑な表現型を生じることがわかっている.

拡張型心筋症の頻度

1975年から1984年にミネソタ州のオルムステッド郡で行われた研究は特発性拡張型心筋症の頻度を公式に推定した唯一のものであり,特発性拡張型心筋症の頻度は10万人中36.5人と推定されている(1985年1月1日現在)[Codd et al 1989].この数値は,同じ調査期間に同一コホートで算出された10万人中19.7人(5,000人中に1人未満)という肥大型心筋症(HCM)の頻度の2倍であった.

その後,優れた研究デザインをもつ複数の疫学的研究で,肥大型心筋症の頻度がおよそ500人中1人であることが示された.肥大型心筋症よりも特発性拡張型心筋症の頻度の方が高いと考えている専門家が大多数であることを考えると,オルムステッド郡での研究では特発性拡張型心筋症の頻度が大幅に過小評価されている可能性が強い.しかし,これ以降,正式な集団ベースの疫学的研究は行われていない.拡張型心筋症の頻度を修正すべきであることについては,250人中1人という推定値が詳細な根拠とともに出されている[Hershberger et al 2013].


原因

家族性拡張型心筋症(FDC)

原因不明の孤発性(非症候性)拡張型心筋症(心血管系の文献では,特発性拡張型心筋症[IDC]として知られている)に遺伝学的背景をもつ症例が幾つか示されているが,遺伝学的背景をもつ非家族性症例と家族性の特発性拡張型心筋症の頻度はまだ確定していない.

遺伝的な因果関係の解明に向けて基盤となる知見を提供しているのが多数の家族性拡張型心筋症を有する多数の大家系であり,30以上の遺伝子における病原性バリアントが家族性拡張型心筋症の約40〜50%の原因となっていることがわかっている[Hershberger & Siegfried 2011,Hershberger et al 2013](表1).孤発例(家系内で唯一の特発性拡張型心筋症の発症)でも,病原性バリアントの存在が明らかになっている[Hershberger et al 2008,Hershberger et al 2010b].

3つの拡張型心筋症コホートでは,(家族歴の有無を問わず)拡張型心筋症の約10〜20%はTTN遺伝子の短縮型の病原性バリアントに起因している[Herman et al 2012].しかし,特筆すべきことに,参照集団の最大3%でもTTN遺伝子に短縮型のバリアントを認めた.

確実にアレル異質性が存在する.多数の家系に共通する病原性バリアントはごくわずかである.

少数の研究で,拡張型心筋症におけるコピー数多型(CNV)の関与を裏付けるエビデンスが示されている(EYA4遺伝子における4.8kbの欠失[Schönberger et al 2005],1人の家族性症例の発端者における大規模なLMNA遺伝子の欠失[Gupta et al 2010],1大家系におけるBAG3遺伝子のエクソン全体の欠失[Norton et al 2011a]).58人の発端者にLMNA遺伝子のMLPA法によるスクリーニングを行ったが,コピー数多型を同定できなかった[Norton et al 2011b].大規模研究が行われていないため,特発性/家族性の拡張型心筋症における大規模ゲノム再構成の頻度は依然として不明のままである.

拡張型心筋症の原因遺伝子に病的バリアントが同定されているかどうかにかかわらず,特発性拡張型心筋症の発端者の第1度近親者に心エコーや心電図を行うと,約20〜35%の発端者が家族性であることがわかる[Michels et al 1992,Baig et al 1998,Grünig et al 1998].

表1.
家族性拡張型心筋症(FDC)の分子遺伝学

遺伝子 タンパク質 OMIM 当該遺伝子内病原性バリアントによる家族性拡張型心筋症(%)1 原因遺伝子を同じくする疾患
Allelic Disorders2
常染色体優性
TTN3 タイチン 188840 10〜20%
  • LGMD2J4
  • 致死性の心筋症を伴う若年発症ミオパチー
  • 早期の呼吸筋障害を伴う近位筋のミオパチー
  • 遅発性脛骨筋ジストロフィー
LMNA プレラミンA/C 150330 6%
MYH7 ミオシン7 160760 4.2%
  • Laing型遠位型ミオパチー
  • 家族性肥大型心筋症(FHC
  • MYH7関連ミオシン貯蔵ミオパチー
  • 左心室の心筋緻密化障害
  • MYH7関連肩甲腓骨ミオパチー
MYH6 ミオシン6 160710 3〜4%
  • 家族性肥大型心筋症(FHC
SCN5A ナトリウム・チャネルタンパク質5型サブユニットα 600163 2〜4%
MYBPC3 ミオシン結合タンパク質C(心筋型) 600958 2〜4%
TNNT2 心筋トロポニンT 191045 2.9%
BAG3 BAGファミリー分子シャペロン制御因子3 603883 2.5%
ANKRD1 Ankyrin repeat domain-containing protein 1 609599 2.2%
RBM20 RNA結合タンパク質20 613171 1.9%
TMPO ラミナ関連ポリペプチド2,アイソフォームα 188380 1.1%
LDB3 LIMドメイン結合タンパク質3 605906 1%
TCAP テレソニン 604488 1%
  • LGMD2G4
VCL ビンキュリン 193065 1%
TPM1 トロポミオシンα-1鎖 191010 1〜1.9%未満
TNNI3 心筋トロポニンT 191044 1.3%?
TNNC1 遅筋線維や心筋のトロポニンC 191040 1〜1.3%未満
ACTC1 αアクチン1(心筋) 102540 1%未満
ACTN2 αアクチン2 102573 1%未満
CSRP3 システイン・グリシンリッチタンパク質3 600824 1%未満
DES デスミン 125660 1%未満
NEXN ネキシリン 613121 1%未満
PSEN1 プレセニリン1 104311 1%未満
PSEN2 プレセニリン2 600759 1%未満
SGCD δ-サルコグリカン 601411 1%未満
  • δサルコグリカン異常症(LGMD2F) 5
EYA4 眼欠損ホモログ4 603550
PLN 心臓ホスホランバン 172405
DSG2 デスモグレイン-2 125671
X連鎖性
DMD 300377
TAZ タファジン 300394
  • 心内膜線維弾性症2型
  • 家族性孤発性の左心室心筋緻密化障害
常染色体劣性
TNNI3 心筋トロポニンI 191044 1%未満

遺伝形式ごとに頻度の高いものから掲載

拡張型心筋症を参照.OMIMでの当該表現型の関連遺伝子を検索する際にはOMIM表現型を参照のこと.

  1. ここに掲げた割合(%)は(複数の特発性拡張型心筋症,もしくは家族性拡張型心筋症の発端者を対象とした複数のスクリーニング検査を基づいて算出されたものであり),予備的推定と解釈すること.
  2. 原因遺伝子を同じくする疾患=同一遺伝子の病原性バリアントによって生じる他の表現型
  3. 拡張型心筋症におけるTTN遺伝子変異の役割は,対照群でも短縮型の病原性バリアントが3%同定されていることから結果の解釈が難しくなっており,完全に検証されているとはいえないことに留意すること.拡張型心筋症患者のTTN遺伝子でみつかる短縮型バリアントはタイチン蛋白のAバンド領域に集積することが報告されている[Roberts et al 2015].拡張型心筋症の全家系を観察すると,TTN遺伝子の短縮型病原性バリアントのなかに分離が認められないものもあることがわかった[Norton et al 2013].TTN遺伝子のミスセンス・バリアントは良性の場合もあるが,この種のバリアントに関する正式な研究は行われていない.
  4. 肢帯型筋ジストロフィー概説を参照.

孤発例の拡張型心筋症

孤発例の拡張型心筋症患者(すなわち,家系内で唯一の発症)のうち,遺伝性症例の頻度は正式に評価されておらず,ほとんどが不明のままである.しかし,最近の予備的報告では,遺伝学的背景をもつ頻度が家族性症例と孤発例のようにみえる症例で同程度であることが示されている[Hershberger et al 2008Hershberger et al 2010b].

症候性拡張型心筋症

拡張型心筋症を随伴する症候群は数多く報告されており,このうちの多くが表1に掲載された遺伝的原因に限定されない遺伝的原因をもつ(「鑑別診断」を参照).上述の特徴が1つでも認められる場合,もしくは家族歴や身体的診察で心臓以外の疾患


家族性拡張型心筋症の発見・確定するための評価手順

特発性拡張型心筋症(IDC)の診断が確立している発端者への拡張型心筋症(DCM)の遺伝学的評価に関するガイドラインが公表されている[Hershberger et al 2009b].
推奨される手順の概略を以下に記した(家族歴,第1度近親者の心血管系の検査,分子遺伝学的検査など).
この評価手順の目的は家族性拡張型心筋症を発見,もしくは診断の確定であり,適正なカウンセリングと検査を提供することである.拡張型心筋症の患者が何年もの間,無症状である場合,この手順はとりわけ重要である.

家族歴

家族性拡張型心筋症の可能性を評価する際には,3〜4世代にわたる家族歴(特に心不全,拡張型心筋症,心臓移植,原因不明の突然死,原因不明の心伝導障害や不整脈,原因不明の脳卒中,その他の血栓塞栓症などの心血管疾患について)を聴取すること.

近親の2人以上が特発性拡張型心筋症の厳密な診断基準を満たしている場合,家族性拡張型心筋症の診断が確定する.家族性拡張型心筋症と診断されたら,遺伝形式を判断するため,家族歴から得られた情報を評価する.
父系と母系の双方について家族性疾患への寄与を考慮すること.家族性拡張型心筋症が父系と母系の双方にみられる家系が報告されており,これまでの経験からいうと,見かけ上の家系内遺伝形式がどうであろうと,当該家系における家族性拡張型心筋症の病原性バリアントが母系,もしくは父系であると仮定することの信頼性は低く,誤った結論に至るおそれがある.双系家系が1家系,報告されており,ここではLMNA遺伝子の病原性バリアントが父系で,PLN遺伝子の病原性バリアントが母系で遺伝していた[Liu et al 2015].

拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価

現在,特発性拡張型心筋症(IDC)症例の約20〜35%が家族性(すなわち遺伝性)であるとされている.
家族性拡張型心筋症の発見や確定診断を目的として発端者に行う評価のなかで,拡張型心筋症の診断を裏付ける心血管異常の有無を調べる心血管系の検査を血縁者に行うとよい.心血管系の検査では段階的アプローチを用いること.まず,新たに確認された特発性拡張型心筋症患者の第1度近親者のスクリーニング(病歴聴取,身体的診察,心エコー,心電図など)を行い,(症状が現れていない疾患についても)罹患の有無を判断し,家族性拡張型心筋症の診断が裏付けられるかどうかを判断する[Hershberger et al 2009b].
拡張型心筋症の浸透度は年齢に依存しているため,リスクのある第1度近親者への心血管系の検査は定期的に実施すべきである(「臨床的マネジメント」,「経過観察」を参照).

注:このような家系調査で拡張型心筋症の徴候や症状を認めた場合,すぐに包括的な心血管系の検査を行うこと(「臨床的マネジメント」を参照).

分子遺伝学的検査

遺伝学的検査は,特発性拡張型心筋症,家族性拡張型心筋症,周産期心筋症(PPCM),もしくは妊娠関連心筋症(PACM)の患者に行われることがある.

家族性症例では主に稀な遺伝子バリアントに対して評価,確認がなされるが,遺伝学的要因によって起きる孤発例の拡張型心筋症(家系での唯一の症例)の頻度については,まだ大規模試験での公式な調査がない.しかし,予備データで家族性症例と孤発例での病原性バリアントの頻度が近似していることが示されている[Hershberger et al 2010b].このため,孤発例についても分子遺伝学的検査を検討すべきである.現在,心血管系の遺伝医学センターではこうした症例への遺伝学的検査を行っている[著者の私信].

単一遺伝子検査遺伝型と臨床型の相関はあまり解明されていないが,伝導系障害を有する患者や家族歴に若年での予期せぬ突然死を認める場合には,LMNA遺伝子,SCN5A遺伝子,DES遺伝子の検査を検討すべきである[Hershberger et al 2009bAckerman et al 2011].

複数遺伝子パネル検査.現在,心血管系の遺伝医学の通常診療で,複数遺伝子に対する分子遺伝学的検査が可能である.多数の遺伝子をまとめてプラットフォームで検査できるパネルが数10種類ある.家族性拡張型心筋症の40〜50%以上に遺伝的素因を認めることが研究報告で示されており,複数遺伝子の検査を行うパネルを用いた検査の検出率と同程度であろうと予想される.

複数の遺伝子の検査を行うことのできるパネルを用いた遺伝学的検査をオーダーする医療従事者は,以下を考慮すべきである.

  • すべてのパネルに同じ遺伝子が含まれているわけではないため,臨床像と家族歴を注意深く検討して,パネルに含まれる遺伝子について調べること.例えば,すべての検査機関がミトコンドリア遺伝子の検査を行っているわけではない.一般に,ミトコンドリア疾患の検査は小児科で重要視される.
  • 拡張型心筋症に対する遺伝学的検査パネルが常に刷新されていることに注意すること.このため,前回行った検査に含まれている遺伝子数が少なく,病原性バリアントが同定されなかった患者に再度,多数の遺伝子の検査を行うことのできるパネルを用いた検査が指示されることがある.

特に孤発例での遺伝学的検査の検査結果の解釈は,現時点では非常に困難であると思われる.

  • 症例を認める家系以外には存在しないバリアントが多く,孤発例では定義上,他の血縁者での発症について遺伝的状況(segregation)を評価できないため,このほかの点については通常のカテゴリー2のバリアント基準[Richards et al 2008][米国臨床遺伝学会(ACMG)ガイドライン:「配列多様性はこれまで報告されておらず,疾患を発症させることが予測されるものである」]を満たすが,拡張型心筋症の発症機序における重要性が不明瞭な変異(意義不明のバリアント[VUS])が幾つか存在する可能性もある.カテゴリー2のバリアントをもつ特定遺伝子による拡張型心筋症の発症頻度にばらつきがあることとも関連して,分子遺伝学的診断検査の報告でのこうしたバリアントへの解釈は様々である.しかし,以前同定され実証された病原性バリアントが孤発例で確認されることもある.
  • また,病原性である可能性をもつ稀なバリアントを複数もつ発端者がいることも明らかになっているため,遺伝子結果の解釈はますます複雑になってくる[Hershberger et al 2008,Hershberger et al 2010b,Li et al 2010Liu et al 2015].

遺伝学的検査をオーダーする医療従事者はこうした結果について理解した上で,遺伝カウンセリングを提供しなくてはならない[Burkett & Hershberger 2005,Judge 2009,Caleshu et al 2010,Hershberger et al 2010a,Hershberger & Siegfried 2011,Hershberger et al 2013].複雑性を考慮すると,心血管系の遺伝医療センターへの紹介も検討すべきである.このようなセンターの認定遺伝カウンセラーはこうした問題の包括的な扱いに精通しており,心血管系の遺伝学やゲノム医療を専門とする遺伝専門医や循環器専門医と協力して対応する.

検査の特徴

検査の感度や特異性については,Clinical Utility Gene Cardを参照.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

遺伝性家族性拡張型心筋症(FDC)の遺伝形式は,常染色体優性,常染色体劣性,X連鎖性である.家族性拡張型心筋症の大部分(約80〜90%)は常染色体優性であり,X連鎖性や常染色体劣性はそれほど多くない.

常染色体劣性の遺伝形式は近親婚の家系や早期発症患者での頻度が最も高いが[Hanson & Hershberger 2001],常染色体優性の拡張型心筋症との関連が高い遺伝子バリアントでも起きることがある.

母系のミトコンドリア遺伝も報告されているが,これらのタイプは(臨床像がきわめて多様であり,軽度の成人発症型も含んでおり)症候性であることが多いため,本項では扱わない.

血縁者のリスク−常染色体優性の遺伝性拡張型心筋症

発端者の親

  • 常染色体優性の拡張型心筋症と診断された患者のなかには,拡張型心筋症に罹患した親を持つ者もいる.
  • 常染色体優性の拡張型心筋症の発端者には,新生突然変異によって発症した可能性がある者も含まれる.新生突然変異症例の割合は不明である.
  • 一見,新生突然変異によって発症したかのようにみえる発端者の両親への評価は,「拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価」「経過観察」で述べた検査手順に従って行う.両親を評価することによって,心不全の臨床徴候はないが心エコー所見に拡張型心筋症が疑われる患者(すなわち無症状の患者)を含め,これまでの検査で診断がなされなかった患者や症状が軽症な患者への診断が可能となる場合がある.
  • 割合は不明であるが,両親に拡張型心筋症を示す所見を認め,拡張型心筋症に関連する病原性バリアントを有しているため,発端者が片親,もしくは両親から病原性バリアントを受け継いだといえる症例も存在する.

注:(1)常染色体優性の特発性拡張型心筋症/家族性拡張型心筋症と診断される場合,多くは親が罹患者であることが多いが,家族歴が陰性であるようにみえる場合がある.この理由として,家系内での発症が認識されていない場合,発症以前の親の早期死亡,罹患している親の発症が遅い場合が考えられる.(2)病原性バリアントが初めて親に現れた場合,その親が病原性バリアントの体細胞モザイクで発症が軽度となる可能性があるが,これまで体細胞モザイクの報告はない.

発端者の同胞

  • 同胞のリスクは発端者の両親の遺伝学的状態により異なる.
  • 発端者の両親が罹患している場合や病原性バリアントをもつことがわかった場合,同胞に病原性バリアントを遺伝するリスクは50%である.しかし,表現型にばらつきがあり,浸透度が低下していることから,発症年齢や重症度を予測することはできない.
  • 発端者の両親がどちらも病原性バリアントを有する場合,同胞が両親どちらか,もしくは双方から拡張型心筋症関連の病原性バリアントを受け継ぐ確率は75%,いずれの病原性バリアントも受け継がない確率は25%である.
  • 両親に拡張型心筋症の徴候を認めない場合,発端者の同胞のリスクは一般集団よりは高いが,正確に推算することはできない.同胞に行うことが勧められる検査は「拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価」に記載した検査手順で述べられている.
  • どちらの両親の白血球DNAにも発端者に確認された病原性バリアントが同定できない場合,同胞が発端者で確認された病原性バリアントを受け継ぐリスクは低いが,親の生殖細胞モザイクの可能性があるため,一般集団のリスクよりも高くなる.
  • 発端者で発見された病原性バリアントがどちらの親にも検出されないが,心血管系のスクリーニングで片親,もしくは両親とも無症候性の拡張型心筋症に罹患しているという稀なケースがある.こうした場合,罹患している両親に発端者とは異なる病原性バリアントが存在している可能性があるため,同胞のリスクは50%程度であろうと考えられる.

発端者の子

常染色体優性の拡張型心筋症患者の子が親から病原性バリアントを受け継ぐ確率は少なくとも50%である.しかし,表現型にばらつきがあり,浸透度が低下していることから,発症年齢や重症度を予測することはできない.

血縁者のリスク−常染色体劣性の遺伝性拡張型心筋症

発端者の親

  • 者の両親は絶対的ヘテロ接合体(病原性バリアントの保因者)である.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状であり,発症リスクはない.

発端者の同胞

  • 罹患者の同胞が病原性バリアントを2つ受け継ぎ,拡張型心筋症の発症リスクを有する確率は25%,無症状の保因者となる確率は50%,病原性バリアントを受け継ぐことも罹患することも保因者ともならない確率は25%である.
  • 同胞に行うことが勧められる検査は「拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価」に記載した検査手順で述べられている.

発端者の子

拡張型心筋症患者のパートナーが罹患者や保因者でない場合,子は病原性バリアントの絶対的ヘテロ接合体(保因者)となる.

保因者診断

リスクのある血縁者への保因者診断には,あらかじめ家系内で拡張型心筋症関連の病原性バリアントが同定されていなければならない.

血縁者のリスク−DMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントによる無症候性X連鎖性拡張型心筋症

発端者の親

  • 罹患者男性の父親が拡張型心筋症を発症することはなく,DMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントのヘミ接合体でもない.
  • 家系内の罹患者が1人以上である場合,1人の息子が罹患している母親は絶対的ヘテロ接合体(保因者)である.注:子に1人以上,罹患者がいるが,他の親族に罹患者がいない母親や,母親の白血球DNAにDMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントが検出されない場合,この母親は生殖細胞モザイクである.
  • 家系内で男性1人が罹患者である場合(孤発例),彼の母親の遺伝的状態について幾つかの可能性を検討する必要がある.
    • 罹患者男性には新生突然変異が生じており,母親は保因者でない可能性.
    • 母親に(a)「生殖細胞の病原性バリアント」(受精時から存在しているため母親の身体の全細胞に変異が存在),もしくは(b)「生殖細胞モザイク」(母親の生殖細胞のみに変異が存在)によって,新生突然変異が生じた可能性.
    • 母親が他の血縁者に受け継がれていないか発現していない拡張型心筋症関連の病原性バリアントのヘテロ接合体である可能性.
  • ヘテロ接合体の母親には多少の発症リスクがあるため,息子が罹患している場合には「拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価」で記載した検査手順を行うとよい.

発端者の同胞

  • 同胞のリスクは母親の遺伝学的状態により異なる.
  • 発端者の母親がDMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントをもつ場合,1回の妊娠で遺伝する確率は50%である.病原性バリアントを受け継いだ男性は発症するが,病原性バリアントを受け継いだ女性はヘテロ接合体となり,発症する場合もあればしない場合もある.
  • 発端者が孤発例(家系内で唯一の発症例)である場合,母親の白血球DNAにDMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントが検出されない場合,同胞のリスクは低いが,母方の生殖細胞モザイクの可能性により,一般集団よりは高くなる.

発端者の子.

  • 罹患男性はDMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントを,
    • 娘には確実に遺伝するが(ヘテロ接合体となる),
    • いずれの息子にも遺伝しない.

発端者の他の血縁者.

発端者の母方の伯/叔母はDMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントのヘテロ接合体である可能性があることから,その伯/叔母の子は,性別により,ヘテロ接合体,もしくは罹患者となるリスクがある.

ヘテロ接合体(保因者)診断

DMD遺伝子,もしくはTAZ遺伝子の病原性バリアントが発端者で確認された場合には,リスクのある女性血縁者に分子遺伝学的検査を行って遺伝学的状態を判断することが極めて有益である.
注:(1)病原性バリアントのヘテロ接合体であり,多少の発症リスクのある女性.(2)女性ヘテロ接合体を確認する際には,(a)家系内で病原性バリアントが事前に同定されていることが必要であり,(b)罹患男性への検査ができない場合にはまず,配列解析で分子遺伝学的検査を行い,病原性バリアントが同定されない場合には遺伝子標的欠失・重複解析を行う.

遺伝カウンセリングに関連した問題

家系内での家族性拡張型心筋症の確認,もしくは確定診断を目的とするリスクのある血縁者への検査に関する情報については,「拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価」を参照.
リスクのある患者に対する拡張型心筋症の早期診断と治療を目的とする経過観察の継続に関して勧められる事項については,「経過観察」を参照.

心エコーや心電図で曖昧な所見を認める無症状のリスクのある血縁者拡張型心筋症の診断基準を満たさないが,心臓に異常所見(収縮機能は正常だが左室拡大を認める場合,左室の大きさは正常だが駆出率減少を認める場合,心電図は正常だが顕著な伝導障害や不整脈がある場合など)を呈する無症状のリスクのある血縁者に,心エコーや心電図で曖昧な所見が現れた場合,他の原因が除外できるならば,初期の拡張型心筋症の可能性がある.このような結果により患者や他の血縁者の家系リスク評価や管理/経過観察が困難になる.

リスクのある無症状の成人血縁者への検査拡張型心筋症患者のリスクのある無症状の成人血縁者への分子遺伝学的検査は,家系特異的病原性バリアントが分子遺伝学的検査で同定されていれば可能である.このような検査は正式な遺伝カウンセリングのなかで行うべきであるが,無症状者の発症年齢,重症度,疾患の進行速度の予測には有益ではない.無症状のリスク保持者に対する検査は診断検査ではなく,予測的検査である.

18歳未満で成人発症疾患のリスクを持つ無症状の未成年への発症前診断.拡張型心筋症の発症には家系内であっても大きなばらつきがあり,乳児期や小児期に発症することもあるため,18歳未満であっても検査を行うべきである.また,早期発症の侵襲性の拡張型心筋症が大多数となっている家系も報告されている.

遺伝学的検査によりリスクのある児を特定しやすくなり,児は早期治療によりベネフィットを得られ,病勢の進行を抑えることが可能となると考えられる.早期発症の侵襲性の拡張型心筋症の家系では,家族性の病原性バリアントの同定により,より厳密な臨床スクリーニングを提供できるようになり,無症状ではあるが心血管疾患の徴候を臨床的に検出できると思われる.

成人発症が多い疾患のリスクについて無症状の未成年に検査を行うことに関しては,自律性の否定,遺伝的差別,社会的烙印づけ,家族関係への悪影響への懸念が挙げられるが,早期治療によるベネフィットはリスクを十分上回る.
未成年者への成人発症疾患に対する遺伝学的検査に関する米国遺伝カウンセラー学会の意見書,米国小児科学会,米国遺伝医学・ゲノミックス会議の意見書「小児への遺伝学的検査とスクリーニングに関する民族的・政治的問題」を参照.

DNAバンキングは,将来の使用のために,DNA(通常は白血球から調製)を貯蔵しておくことである.検査手法や,遺伝子,変異,疾患への理解は将来改善する可能性があり,罹患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.

出生前診断と着床前診断

家系内罹患者の家族性拡張型心筋症関連の病原性バリアントが同定されている場合,拡張型心筋症のリスクの高い妊娠に対して,出生前診断や着床前診断を選択することができる.
遺伝学的検査が早期診断よりも中絶を目的として考慮される場合には,医療関係者の間や家族の間で出生前診断に対する見解の相違が生じる.多くの医療機関では最終的には両親の意思を尊重するとしているが,この問題については注意深い検討が求められる.


関連情報

以下の疾患ごとのサポート組織や傘下団体は,本疾患患者やその家族に役立つよう,GeneReviewsスタッフが選択したものである.このほかの他の団体が提供する情報に関してGeneReviewsは責任を持たない.選定基準に関する情報についてはこちらを参照.

  • 米国心臓協会(American Heart Association

拡張型心筋症(DCM)

  • 米国脳卒中学会(American Stroke Association

拡張型心筋症

  • Cardiomyopathy UK

Chiltern Court
Asheridge Road
Unit 10
Chesham Buckinghamshire HP5 2PX
United Kingdom
電話:0800 018 1024 (UK only); 0800 018 1024 (UK only)
Email: info@cardiomyopathy.org
www.cardiomyopathy.org

  • Children's Cardiomyopathy Foundation (CCF)

PO Box 547
Tenafly NJ 07670
電話:866-808-2873 (toll-free)
ファックス:201-227-7016
Email: info@childrenscardiomyopathy.org
www.childrenscardiomyopathy.org

  • Medline Plus

心筋症

  • My46 Trait Profile

拡張型心筋症


臨床的マネジメント

症状の治療

治療により拡張型心筋症(DCM)の自然経過が,(時に劇的に)改善する可能性がある.症候性・無症候性の拡張型心筋症の治療は,(1)薬物療法,(2)ペースメーカーや植込み型除細動器の挿入などである.心不全や拡張型心筋症の診断や治療に精通した医師が治療を行うこと.

症状には心不全,不整脈,脳卒中の関連症状が含まれる.症候性拡張型心筋症となるのは疾患経過の後期である.この分野に精通した循環器専門医が抗不整脈治療(ペースメーカー,植込み型除細動器など)を評価しつつ,包括的な治療(ACE阻害薬,ベータ遮断薬)を検討すること.
特発性/家族性拡張型心筋症の患者は以下について留意する.

  • 症状が現れる前でも特発性/家族性拡張型心筋症が治療可能であるか,治療で拡張型心筋症に寛解が得られるか,治療が症状の発生を抑えることができるか,症状に対する治療(心不全,不整脈,血栓塞栓症)により寿命や生活の質が改善するかを相談すること.
  • 心不全,不整脈(失神寸前の状態や失神も含む),血栓塞栓症の症状を理解し,このような症状が新たに現れたら早急に治療が受けること.

特に突然死や重篤な不整脈の家族歴が強く現れている家系では,親族や介護者が心肺蘇生(CPR)の訓練を受けることが望ましい.

治療や医療機器による治療では奏効が得られない進行性の拡張型心筋症や心不全には,現在でも心臓移植が確実な治療である.

このほかにも包括的なガイドラインがある[Yancy et al 2013].

経過観察

既知の病原性バリアントをもつ無症状者1〜3年ごとに心血管系のスクリーニング(身体的診察,心エコー,心電図)を受けること.

家系特有の病原性バリアントは不明であるが家族性拡張型心筋症の診断が確定している罹患者の無症状のリスクのある第1度近親.年齢に応じて,3〜5年ごとに心血管系のスクリーニング(身体的診察,心エコー,心電図)を受けること.リスクのある第1度近親に特発性/家族性拡張型心筋症の徴候を認めた場合,本項に記載された経過観察をこの患者の第1度近親全員に行うこと.

家系内罹患者の特発性拡張型心筋症が家族性であるかが不明の無症状の第1度近親.小児期から3〜5年ごとに心血管系のスクリーニング(身体的診察,心エコー,心電図)を受けること.リスクのある第1度近親に拡張型心筋症の徴候を認めた場合,家族性拡張型心筋症の診断が確定する.その後は,本項に記載された経過観察を,この患者の第1度近親全員に行うこと.
拡張型心筋症の診断基準には達しない程度に検査結果が異常であるが,初期の拡張型心筋症と考えられるリスクのある血縁者.拡張型心筋症の診断基準には達しない程度に検査結果が異常であるが,初期の拡張型心筋症と考えられるリスクのある血縁者(心機能は正常であるが左室拡大がみられる場合,左室サイズは正常であるが左室駆出率が低下している場合,心エコー所見は正常であるが心電図が異常である場合など)[Burkett & Hershberger 2005,Hershberger et al 2010a,Hershberger & Siegfried 2011]には,後天的な病因(心筋梗塞の既往や心毒性を有する薬剤の投与歴がある場合の冠動脈疾患など)を探るため,包括的な心血管系の検査を行い,その後は1年に1回スクリーニングを行うとよい.

リスクのある血縁者の検査

罹患者家系内の無症状にみえる高齢者や若年者には,できるだけ早期に経過観察や予防的措置でベネフィットが得られる血縁者を特定するため,拡張型心筋症の発端者の第1度近親者の評価に記載した検査手順を用いて評価を行うとよい.
病原性バリアントが既知であるならば,血縁者に遺伝学的検査を行ってリスクを明確化することもできる.しかし,病原性バリアントが2つ以上,存在する家系も幾つかあるため,罹患していない血縁者に病原性バリアントである可能性の高いバリアントが存在しない場合の解釈には注意を払うべきである.
遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある近親者の検査に関連する問題については,「遺伝カウンセリング」の項を参照.

妊娠管理

大抵の場合,拡張型心筋症では妊娠は禁忌である.

特発性/家族性拡張型心筋症の妊娠女性は,ハイリスク出産専門の産科医の診察を受けること.

特発性拡張型心筋症の家族歴陽性の無症状女性には周産期心筋症(PPCM)や妊娠関連の心筋症(PACM)のリスクがあると考えられる.従来,周産期心筋症や妊娠関連心筋症には家族性拡張型心筋症とは別の原因があると考えられてきたが,遺伝的素因を裏付けるエビデンスが現れている[Elkayam et al 2005Morales et al 2010van Spaendonck-Zwarts et al 2010].このため,医療従事者は周産期心筋症や妊娠関連心筋症が遺伝的原因をもつ可能性を認識し,拡張型心筋症の評価に関するガイドラインに従うこと(「評価手順」を参照).これらの症例では,生殖医療に関する遺伝カウンセリングや遺伝子検査を考慮すべきである.

研究中の治療

種々の疾患の臨床試験に関する情報については,こちらを参照されたい.LMNA遺伝子バリアントによる症候性拡張型心筋症(LMNA DCM)に対する臨床試験が実施されている[著者,私信(2015年)].


更新履歴

  1. GeneReviews著者:Ray E Hershberger, MD, Jessica D Kushner, MS, CGC, Sharie B Parks, PhD
    日本語訳者:窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    GeneReviews 最終更新日: 2008.7.10. 日本語訳最終更新日: 2009.3.19.
  2. Gene Review著者: Ray E Hershberger, MD,Ana Morales, MS, CGC
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)  
    Gene Review 最終更新日: : 2013.5.9. 日本語訳最終更新日: 2013.9.25 
  3. Gene Reviews著者: Ray E Hershberger, MD and Ana Morales, MS, LGC.
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    Gene Reviews 最終更新日: 2015.9.24 語訳最終更新日: 2017.11.27 (in present)

原文   Dilated Cardiomyopathy Overviewngelman Syndrome

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