拡張型心筋症概説
(Dilated Cardiomyopathy Overview)

[Synonyms:OFD1,OrofaciodigitalSyndromeⅠ]

Gene Reviews著者: BRay E Hershberger, MD and Elizabeth Jordan, MS, LGC
日本語訳者:武井 眞(東京都済生会中央病院循環器内科)

GeneReviews最終更新日: 2022.4.7.  日本語訳最終更新日: 2023.7.12.

原文: Dilated Cardiomyopathy Overview


要約


本概説の目的は臨床家の拡張型心筋症(Dilated cardiomyopathy, DCM)の遺伝的背景に対する認識を高め、遺伝性DCMの症例に対して早期の診断と介入によるメリットを提供することである。
以下に本概説の目標を示す。

目標1.

DCMを定義すること

目標2.

DCMの分類を理解すること

目標3.

他の先天性症候群を伴わないDCM発端者の評価戦略を提供すること

目標4.

DCM発端者の無症状の親族に対して遺伝的リスクの評価を行い、心臓サーベイランスの提供、早期のHCMの診断および治療を可能とすることで長期予後を改善すること


1.拡張型心筋症の定義

拡張型心筋症は以下の二つの兆候の確認により診断される

注:主に左室に病変が認められる不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy: ARVC)はDCMと診断されることがある。[Sen-Chowdhry et al 2008]

DCMは通常40-60歳の成人で発症することが多いが、どの発生段階、年齢でも発症しうる(胎児期、新生児期、幼児期、小児期、老年期)。より詳細なDCMについての臨床的及び遺伝的情報は以下の文献を参照すること。[Burkett & Hershberger 2005, Sivasankaran et al 2005, Judge 2009, Dellefave & McNally 2010, Hershberger et al 2010a, Jordan & Hershberger 2021]

DCMの患者は年余にわたり無症状でありうる。臨床症状の発現は病期としては後期に起こることが多く、以下のような兆候を含む。


2.拡張型心筋症の分類

DCMは後天性のDCM、DCMを表現型として含む先天性症候群(他臓器にも所見を有する)もしくは非症候群性(他臓器に所見を有さない)の先天性DCMに分類される(FIgure1)。

DCMは後天性のDCM、DCMを表現型として含む先天性症候群(他臓器にも所見を有する)もしくは非症候群性(他臓器に所見を有さない)の先天性DCMに分類される(FIgure1)。

後天性(二次性)DCM

後天性DCMのもっとも一般的な原因は冠動脈疾患からの心筋梗塞などの心筋虚血である。
その他のより頻度の低い原因として弁膜症、先天性心疾患、心毒性物質(アンスラサイクリンなどの抗がん剤、 この次訳まだ)、甲状腺疾患、炎症性疾患または感染症によるもの、長時間持続している高度の高血圧、放射線被ばくなどが挙げられる。近年抗がん剤暴露後に発症するDCMについても遺伝的背景が影響する可能性が示唆されているが、臨床的にはまだ議論のある部分である。[Garcia-Pavia et al 2019].
注:後天性DCMについては本概説ではこれ以上は扱わない。

先天性症候群に伴うDCM(他臓器にも所見を有する)

GeneReviewsでは、a)特定の診断名を示唆する(分子遺伝学的検査により確定されうる)もしくはb)確定的分子遺伝学的所見がない状態でも診断を確定できる一連の多臓器の臨床所見を示すものを症候群と定義する。先天性症候群に伴うDCMの一部のリストをTable1.に示す。[Hershberger et al 2009, Hershberger et al 2013].
注:本概説では先天性症候群に伴うHCMについて以下の表以上の言及は行わない。

表1. 先天性症候群に伴うDCM

疾患名 1 原因遺伝子 遺伝形式 臨床的特徴 コメント
Barth症候群 TAFAZZIN(TAZ) XL
  • 好中球減少
  • 筋力低下
  • 発達遅滞
  • 新生児もしくは小児早期の発症
 
Carvajal 症候群
(OMIM 605676)
DSP AR    
Duchene, Becker型筋ジストロフィ DMD XL 男性において
  • 筋力低下
  • 血清CK上昇  
  • oss of ambulation
ヘテロ接合の女性はDCMのみの表現型を呈することがある。
Emery-Drefuss筋ジストロフィ EMD
FHL1
XL
  • 関節
  • 血清CK上昇
  • 小児期もしくは成人期発症の筋力低下
刺激伝導系の異常、不整脈のに頻度が高い
LMNA AD/AR
HFEヘモクロマトーシス HFE AR
  • 肝硬変
  • 糖尿病
  • ピグ面テーション?
  • 血清鉄、フェリチンの上昇
非拡張型もしくは浸潤性心筋症の頻度がDCMよりも高い
Laing遠位型ミオパチー NYH7 AD
  • 表情筋筋力低下
  • 小児期に発症する足関節、趾関節、指伸筋、頸部進展筋群の筋力低下
 
ミトコンドリア病に伴うDCM(ミトコンドリア病概説を参照) mtDNA Mat

以下を含む複雑な表現型

  • 巣状糸球体硬化症
  • Kearns-Sayre症候群
 

AD = 常染色体顕性遺伝; AR = 常染色体潜性遺伝; Mat= 母系遺伝; XL = X連鎖

  1. アルファベット順

先天性DCM(先天性症候群に分類されない)

後天性DCMもしくは先天性症候群に伴うDCM(Table1)は先天性症候群に伴わない先天性DCM(GeneReviewでは他臓器病変を伴わないDCM)に含まれない。現在知られているDCM関連遺伝子について、ClinGen分類の強さ及びアルファベット順により並べたリストをTable2に示す。[Jordan et al 2021]
ClinGen DCM Gene Curation Expert PanelはClinGenフレームワークを用いて単一遺伝子による非症候群性DCMとの関連の強さを評価し、DCM関連遺伝子を分類している。それぞれの遺伝子についてまとめられたデータはClinGen Gne Validity Classificationから入手できる。

注:左室緻密化障害(Left ventricular non-compaction: LVNC)は左室心筋の形態的な特徴で、一般人でも認められるがDCMをはじめとしたほかの心血管疾患との関連も報告されている。しかしながら、LVNCとDCM表現型やその強さとの関連は以前不明である。 [Hershberger et al 2017, Ross & Semsarian 2018, Ross et al 2020]

表2.非症候群性DCM関連遺伝子

遺伝子1 遺伝形式 DCMに占める当該病的バリアントの割合2 ClinGenによる臨床的妥当性分類 特徴的な表現型 同一アレル疾患 3 参考文献/OMIM Gene Entry
TTN 4 AD 15-20% Definitive DCMはtruncating vatiantと関連する 拡張型心筋症
早発性呼吸不全を伴う遺伝性ミオパチー
肢帯筋ジストロフィー2J
Salih ミオパチー
Udd 遠位型ミオパチー
HCM
188840
LMNA AD 6% Definitive 不整脈、刺激伝導系異常 一部の例として
 Partial lipodystrophy シャルコーマリートゥース遺伝性ニューロパチー2B1
 Emery-Drefuss筋ジストロフィ
 Hutchinson-Gilford早老症
150330
FLNC AD 2-4% Definitive 不整脈、刺激伝導系異常 Myofibrillarミオパチー
肥大型心筋症
拘束型心筋症
遠位型ミオパチー
102565
BAG3 AD 3% Definitive   Myofibrillarミオパチー 603883
TNNT2 AD 3% Definitive   肥大型心筋症
拘束型心筋症
191045
RBM205 AD 2% Definitive 不整脈、刺激伝導異常
DCMはエクソン9のホットスポットと関連
  613171
SCN5A AD 2% Definitive 不整脈、刺激伝導系異常 一例として:QT延長症候群、Brugada症候群、特発性心室細動 600163
DES AD <1% Definitive 不整脈、神経筋疾患 筋原線維性ミオパチー; Kaeser型神経性肩甲腓骨症候群 125660
PLN AD <1% Definitive4 不整脈、刺激伝導系異常 肥大型心筋症 172405
TNNC1 AD <1% Definitive   肥大型心筋症 191040
DSP AD 不明 Strong 不整脈、刺激伝導系異常、右室への進展 不整脈源生右室心筋症、致死性アカントライティック表皮水疱症、掌蹠線状角化症(II)、皮膚脆弱-羊毛髪症候群、Carvajal症候群 125647
ACTC1 AD <1% Moderate   肥大型心筋症 102540
ACTN2 AD <1% Moderate   肥大型心筋症 102573
TPM1 AD <1% Moderate   肥大型心筋症 191010
JPH26 AD,AR 不明 Moderate   肥大型心筋症 605267
NEXN AD 不明 Moderate   肥大型心筋症 613121
TNNI3 AD, AR <1% Moderate   肥大型心筋症
拘束型心筋症
191044
VCL AD 不明 Moderate   肥大型心筋症 193065
MYH6 AD 4% Limited   肥大型心筋症、心房中隔欠損症 160710
MYPN AD 3% Limited   拘束型心筋症、肥大型心筋症
ネマリンミオパチー
608517
MYBPC3 AD 2% Limited   肥大型心筋症 600958
CSRP3 AD <1% Limited   肥大型心筋症 600824
ILK AD <1% Limited     602366
LAMA4 AD <1% Limited     600133
LDB3 AD <1% Limited   肥大型心筋症、筋原線維製ミオパチー 605906
PS601419
PSEN2 AD <1% Limited   早発性アルツハイマー認知症 600759
SGCD AD <1% Limited   肢帯型筋ジストロフィ2F/R6 601411
TCAP AD <1% Limited   肥大型心筋症
肢帯筋ジストロフィ2G/R7
604488
ABCC9 AD 不明 Limited   家族性心房細動、Cantu症候群(多毛症を伴う骨軟骨異形成症) 601439
ANKRD1 AD 不明 Limited     609599
CTF1 AD 不明 Limited     600435
DSG2 AD 不明 Limited 右室進展の可能性 不整脈源生右室心筋症 125671
DTNA AD 不明 Limited   先天性心奇形 601239
EYA4 AD 不明 Limited 難聴 DFNA10非症候群性難聴 603550
GATAD1 AR 不明 Limited     614518
MYL2 AD 不明 Limited   肥大型心筋症 160781
NEBL AD 不明 Limited     605491
NKX2.5 AD 不明 Limited   先天性心奇形 600584
OBSCN AD 不明 Limited     608616
PLEKHM2 AR 不明 Limited     609613
PRDM16 AD 不明 Limited     605557
TBX20 AD 不明 Limited   心房中隔欠損

606061

TNNI3K AD 不明 Limited 不整脈、刺激伝導系異常 刺激伝導系異常 613932

AD = 常染色体顕性遺伝; AR = 常染色体潜性遺伝

  1. 表の順序は臨床的妥当性分類、DCMの原因としての頻度、アルファベット順に従った。
  2. 呈示された頻度(DCM発端者を多数スクリーニングした2件以上の報告に基づく)は、予備的なものとして解釈すること。
  3. 同一遺伝子の病的バリアントによって引き起こされる他の表現型
  4. 注:
    DCMの3つのコホートの報告(家族性、孤発例いずれも含む)によると、10-20%のDCMはTTNの病的なトランケーションバリアントを持つとされる[Herman et al 2012]が、TTN病的バリアントのDCMにおける役割を決定するのは以下の理由から困難である。a)健常コントロールの3%がトランケーションバリアントを有する、b)TTNの病的トランケーションバリアントはすべての家系でDCMの発症と一致した分離を示すわけではない[Norton et al 2013]。DCM罹患者から同定されたTTNのトランケーションバリアントはタンパクコーディング領域であるA-band領域に集積していることも報告されている[Roberts et al 2015]。今日まで、DCMとの関連が報告されているTTNのミスセンスバリアントはない。
  5. RBM20の病的もしくは病的である可能性が高いDCM関連バリアントはエクソン9に集積している。エクソン9以外のRBM20のバリアントがDCMと関連するかどうかは不明である。
  6. Sabater-Molina et al [2016], Miura et al [2020]

3.(可能な場合における)拡張型心筋症の特定の遺伝的背景の確立

遺伝学的検査はPPCM/PACMを含む非虚血性DCMのすべての症例について年齢にかかわらず提供されるべきである。[Goli et al 2021](Figure1)現状のDCM関連遺伝子についてはTable2を参照すること。DCMの遺伝学的診断を確立する目的は発端者の血縁者についてリスク評価を提供するためである。(4章を参照)

家族性DCM症例(家系内の2親等以内にDCM症例)や孤発例DCMの30-35%程度までに30以上の遺伝子のバリアント(病的、病的である可能性が高いもしくはVUS)が報告されている。[Hershberger et al 2013, Jordan & Hershberger 2021] [Hershberger et al 2008, Hershberger et al 2010b, Pugh et al 2014, Morales et al 2020]病的もしくは病的である可能性が高いバリアントの検出率は27%程度とされている。[Pugh et al 2014]

ClinGen分類でdefinitive, strong, moderate 以上(Table2参照)の遺伝子を含む心筋症マルチ遺伝子パネル検査が遺伝的原因の同定できる確率が高く、同時に意義不明のバリアント(VUS)や病態を説明しえない病的バリアントが同定される頻度を制限することが可能である。

注:1)検査機関によってパネルに含まれる遺伝子の種類、検査精度が異なる可能性がある。また、これらの事柄は経時的にも変化すると考えられる。2)いくつかのマルチジーンパネルにはGeneReviewで取り上げている病態と関連しない遺伝子が含まれている可能性がある。3)いくつかの検査機関ではパネルオプションとして検査機関によってデザインされたパネルや臨床家によって指定された遺伝子を含む表現型に注目したエクソーム解析を提供している。4)パネル検査で行われる解析手法にはシークエンス、欠失/重複解析、シークエンスを用いない遺伝子解析が含まれる。

マルチジーンパネルについての基本的な情報はこちらを、遺伝学的検査を依頼する臨床家に向けた詳しい情報はこちらを参照。

遺伝学的検査を依頼する医療従事者はDCMの遺伝学に精通していることが求められる。
[Burkett & Hershberger 2005, Judge 2009, Caleshu et al 2010, Hershberger et al 2010a, Hershberger & Siegfried 2011, Hershberger et al 2013, Jordan et al 2021].遺伝学的検査の結果解釈は複雑で、患者のサーベイランスや臨床的マネジメントに及ぼす影響を考慮すると心血管遺伝センターや心血管疾患の遺伝学に精通した遺伝カウンセラーへの紹介を検討する必要がある。(NSGC-Find a Genetic CounselorやABGC Find a Certified Genetic Counselorなどで検索可能)


4.リスク親族において早期治療可能なDCMの表現型を検知するための遺伝的リスク評価

DCM患者の無症候の一親等の血縁者における心血管スクリーニングは早期のDCMの検知、迅速な治療の開始を可能とし、長期予後を改善するとされる。[Morales & Hershberger 2015]. DCM患者の一親等以内の血縁者において遺伝学的背景を明らかにすることでリスクのある親族がだれなのか、それ以降の心血管スクリーニングの頻度について情報を得ることができる。[Hershberger et al 2018].

非症候群性のDCMにおけるリスク親族に対する遺伝的リスクの評価、心血管サーベイランスについての基本的な考え方を本章で提示する。それぞれの家系、遺伝子に特異的な事象については完全に網羅することは本章では行っていない。

注:
発端者がDCMを表現型として含む先天性の症候群(Barth症候群、Duchene型筋ジストロフィなど)を呈している場合、その症候群に対するカウンセリングを施行すること(Table1を参照)。こうした先天性の症候群に伴うDCMについては本概説ではこれ以上扱わない。

図1:DCMの分類
注:

  1. 発端者を含み家系内に二人以上のDCM患者が同定されること
  2. ACMG/AMP分類に従う

遺伝リスクの評価

遺伝カウンセリングとは、個人及び家族に対して、遺伝性疾患の性質、遺伝の 様態及び遺伝の意味について情報を提供し、十分な情報に基づいた医療上及び個 人的な意思決定を支援するプロセスである。以下のセクションは、遺伝的リスク評価、家族の遺伝的状態を明らかにするための家族歴と遺伝学的検査の利用を扱っている。-ED。
非症候群性DCMは、一般的に常染色体優性遺伝する。JPH2およびTNNI3関連非症候群性DCMは常染色体優性遺伝または常染色体劣性遺伝をする。
DMD関連DCMは、男性では症候群性DCMとして、保因者の女性では孤立性DCMとして現れることがあり(Table1)、X連鎖的に遺伝する(ジストロフィノパチーの項を参照)。

発端者の同胞

同胞のリスクは発端者の両親の臨床的、遺伝的状態による.

常染色体潜性遺伝

発端者の両親

JPH2またはTNNI3の両アレル変異を持つ子どものヘテロ接合体の両親はDCMのリスクがある可能性がある。JPH2関連DCMおよびTNNI3関連DCMは常染色体潜性遺伝または常染色体顕性遺伝する可能性があり、それぞれの病的バリアントがどちらの遺伝形式をとっているか区別することは現状できない。従って、発症した患者の両親が、発症した患者に同定された2つの病的バリアントのうち1つしか持っていない場合でも、心臓サーベイランスを受けることは妥当である。

発端者の同胞

発端者の子供

常染色体劣性JPH2またはTNNI3関連DCM患者の子供は、定義上JPH2またはTNNI3の病的バリアントのヘテロ接合体であり、DCMのリスクがある可能性がある。したがって、子供はDCMの心臓サーベイランスを受けるべきである。

心血管系サーベイランス

DCM発症リスクを有する家系内の個人に対して疾患の発症前に臨床的、遺伝的評価を行うことは、無症候性のDCM診断、未発症者の早期診断を行うことでを疾患晩期の症候性病期への進展を予防、もしくは遅延させることが可能となり、適切である。[Morales & Hershberger 2015].

発端者がDCM関連遺伝子に既知の病的バリアントを有する場合

Figure1の青緑の枠を参照すること(病的バリアントが同定されている場合)。発端者の両親、同胞、子供、リスク親族について遺伝的診断を明らかにするために分子遺伝学的検査が推奨される。
家族性DCM関連病的バリアントが同定された血縁者については生涯でのDCM発症リスクが高くなる。無症候性である場合、個々の年齢に併せて臨床的な心血管スクリーニングを受けるべきである。[Hershberger et al 2018].

注:
無症候のリスク親族では、DCMの臨床診断基準を満たさない症例であっても、心臓超音波検査の解釈があいまいである場合(左室拡大はあるが左室収縮は良好である場合、逆に左室拡大はないが左室収縮能が低下している場合等)や心臓超音波検査が正常であっても心電図に異常がある場合(伝導障害や不整脈)が認められる場合、早期のDCMである可能性がある。

一般的に、発端者に同定された病的バリアントが検出されない血縁者についてはDCMの障害発症リスクは上昇していないと考えられるため、心血管スクリーニングの必要はない。しかしながら、非症候群性DCMの患者にはDCM関連遺伝子に複数のバリアントが検出されることがあり、血縁者ではこうした複数のバリアントが分離して検出されることがあるため、臨床所見、遺伝的背景、家族歴を考慮した個別のリスク評価を行い、心血管サーベイランスが不要かどうかを判断する必要がある。[Morales et al 2020] [Liu et al 2015, Cowan et al 2018].

発端者においてDCMの特異的な遺伝的原因が特定されていない場合

Figre1のオレンジの枠(病的バリアントが同定されない場合)を参照すること。無症候のリスク親族に対して年齢に応じた間隔で心血管スクリーニングを行う。
注:
無症候のリスク親族では、DCMの臨床診断基準を満たさない症例であっても、心臓超音波検査の解釈があいまいである場合(左室拡大はあるが左室収縮は良好である場合、逆に左室拡大はないが左室収縮能が低下している場合等)や心臓超音波検査が正常であっても心電図に異常がある場合(伝導障害や不整脈)が認められる場合、早期のDCMである可能性がある。

発端者の一親等以内のリスク親族がDCMと診断された場合、家族性DCMの診断となり、サーベイランスの範囲を新たにDCMと診断された親族の一親等以内の親族にも拡大することが推奨される。

以下の場合は将来再度の遺伝学的検査が発端者(及び遺伝的背景を把握することが有益な情報を提供する可能性のある親族)に行うことを考慮する。


関連情報

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更新履歴:

  1. GeneReviews著者:Ray E Hershberger, MD, Jessica D Kushner, MS, CGC, Sharie B Parks, PhD
    日本語訳者:窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    GeneReviews 最終更新日: 2008.7.10. 日本語訳最終更新日: 2009.3.19.
  2. Gene Review著者: Ray E Hershberger, MD,Ana Morales, MS, CGC
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)  
    Gene Review 最終更新日: : 2013.5.9. 日本語訳最終更新日: 2013.9.25 
  3. Gene Reviews著者: Ray E Hershberger, MD and Ana Morales, MS, LGC.
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    Gene Reviews 最終更新日: 2015.9.24 語訳最終更新日: 2017.11.27 (
  4. Gene Reviews著者: BRay E Hershberger, MD and Elizabeth Jordan, MS, LGC
    日本語訳者:武井 眞(東京都済生会中央病院循環器内科)
    GeneReviews最終更新日: 2022.4.7.  日本語訳最終更新日: 2023.7.12.[in present]

原文: Dilated Cardiomyopathy Overview

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