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筋強直性ジストロフィー1型
(Myotonic Dystrophy Type 1)
[Steinert's disease]

Gene Review著者: Thomas D Bird, MD.
日本語訳者: 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 筋チャネル病および関連疾患の診断・治療指針作成および新規治療法開発に向けた基盤整備のための研究班   

Gene Review 最終更新日: 2011.02.08. 日本語訳最終更新日: 2011.03.20.

原文 Myotonic Dystrophy Type 1


要約

疾患の特徴 

筋強直性ジストロフィー1型(myotonic dystrophy type 1: DM1)は、骨格筋・平滑筋に加え眼、心臓、内分泌系や中枢神経系も冒す多臓器疾患である。臨床症状は軽症から重症まで幅があり多少の重なりはあるものの、軽症例、古典型、先天型の3つに分類される。軽症DM1は白内障、軽度の筋強直現象(筋収縮状態の遷延)を特徴とし、生命予後は正常である。古典型DM1は筋力低下・萎縮、筋強直現象、白内障を特徴とし、しばしば心伝導障害を伴う。成人で身体機能が低下し、生命予後も短くなる場合がある。先天型DM1は生下時の筋緊張低下と全身の著明な筋力低下が特徴で、しばしば呼吸不全を来たし早期に死亡する。知的障害を伴うことが多い。.

診断・検査 

DM1はDMPK遺伝子の非翻訳領域に存在するCTG繰返し配列の伸長によって生じる。DM1の診断は、特徴的な筋力低下を有する患者で本症が疑われ、DMPKの分子遺伝学的検査によって確定される。CTGの反復回数が34回を超えるものは異常である。分子遺伝学的検査は発症者のほぼ100%で遺伝子変異を検出し、臨床的に有用である。

臨床的マネジメント 

対症療法:短下肢装具、車いすや他の補装具を利用;甲状腺機能低下症の治療;疼痛治療;心電図上および臨床的不整脈がある場合は循環器専門医にコンサルト;視力低下を来す場合は白内障手術;男性の性腺機能低下症ではホルモン治療;毛母腫の切除。

定期検査:年1回の心電図、ホルター心電図;年1回の空腹時血糖、HbA1c;2年毎の眼科検査;栄養状態に注意

回避すべき薬剤や環境:高脂血症薬(スタチンなど)は筋痛や筋力低下を引き起こしうる;麻酔薬ベクロニウム

リスクのある血縁者の検査:分子遺伝学的検査によるリスクのある血縁者の早期診断は心臓合併症、糖尿病や白内障の早期治療を可能とする。

遺伝カウンセリング 

DM1は常染色体優性遺伝である。伸長したアレルを有する患者の子供は50%の確率で変異アレルを受け継ぐ。変異アレルは配偶子形成過程で伸長しうるため、次世代により長い繰返し配列が受け継がれ、子の世代では親に比べ発症年令が低年齢化したり重症化することがある。有症状の家族が分子遺伝学的検査でDM1と確定診断され、本症のリスクが高い妊娠では出生前診断が可能である。


診断

臨床診断

以下のような症候を呈する成人患者ではDMを疑う.

  • 筋力低下、特に下肢遠位、手指、頚部、顔面優位
  • 筋強直現象(筋収縮状態の遷延)、しばしば手を握った後に素早く開きにくい(把握ミオトニー)現象としてみられ、筋肉(母指球etc)をハンマーで叩打した時にもみられる(叩打ミオトニー)
  • 細隙灯検査で赤色・緑色に輝く混濁として検出される虹色の後嚢下白内障

以下のような症候を呈する新生児ではDMを疑う.

  • 筋トーヌス低下
  • 顔面筋力低下
  • 全身の筋力低下
  • 内反足など肢位異常
  • 呼吸不全

検査

過去にDM1の診断に用いられていた非分子遺伝学的検査は、現在確定診断上の意義は低下しており、DMPKの分子遺伝学的検査が正常で他の筋疾患が疑われる場合に用いられる。その検査には以下のものがある

  • 筋電図:発症成人患者では針筋電図によりミオトニー放電と筋原性変化が遠位筋優位にみられる。ミオトニー放電は新生児期には通常みられないが,ミオトニー放電に似た単線維放電の高速発射が見られることがある。
  • 血清CK値:筋力低下のある症例では血清CK値が軽度高値を示すことがあるが、非発症例では正常である
  • 筋生検:筋生検での異常所見として、中心核鎖(貨物列車が連なったように見える)、輪状線維、sarcoplasmic mass、type 1線維優位および萎縮、線維化、脂肪浸潤、著明な錘内線維増加などがある。

分子遺伝学的検査

遺伝子 DMPKはDM1を引き起こす唯一の遺伝子である。ほぼ100%のDM1患者でDMPK遺伝子のCTG繰り返し配列の反復回数増加(伸長)を認める。

アレルのサイズ

アレルサイズは1999年の第2回international myotonic dystrophy consortium (IDMC)で定められた[IDMC2000]。検査の技術的標準や検査ガイドラインは[Prior, et al 2009]参照。

  • 正常アレル:5-34 CTG反復
  • 変異がおきやすい正常(前変異)アレル:35-49 CTG反復。前変異領域のCTG延長をもつ人が症状を呈した例はないが、その子供はより大きな繰返し配列を受け継ぎ症状を呈するリスクが高くなる[Martorell et al 2001]。
  • 完全浸透アレル:>50 CTG反復。完全浸透アレルは疾患の症状に関連する。

臨床的検査

  • 標的変異検索DMPKのCTG繰り返し回数の定量的検索は100-150回のCTGリピートを確実に検出できるPCRを用いて行う。さらに大きなCTG延長ではサザンブロットを用いる。

Table 1. DM1で用いられる分子遺伝学的検査の概要

遺伝子記号

検査法

検出される変異

変異検出頻度

利用可能性

DMPK

標的変異検索

CTG繰返し配列延長

100%

臨床

検査の利用可能性については、Gene Tests Laboratory Directory参照のこと。Gene ReviewではUS CLIA-licensed laboratoryもしくはnon-US clinical laboratoryによってGene Tests Laboratory Directoryに記載されている場合のみ、分子遺伝学的検査は臨床的に利用可能と位置付けている。GeneTestは検査機関の提供情報の正確性を確認したり、検査機関のライセンスや実績を保障していない。臨床家は直接検査機関に問い合わせて、情報の正確性について確認しなければならない。

検査手順

発端者の診断。筋強直現象を有する患者の診断アルゴリズムはMoxley & Meola[2008]が作成。

  • DMPKの分子遺伝学的検査がDM1の診断の基本
  • 過去にDM1の診断確定に用いていた非分子遺伝学的検査の診断的価値は低下しており、DMPKの遺伝子検査でCTG繰り返し配列の反復回数増加が認められなかった時に主に用いる。

リスクのある非発症成人家族に対する発症前検査には、家系内の発症者で疾患の原因となる変異が同定されていることが必要。
リスクのある妊娠に対する出生前診断および着床前診断には、家系内の発症者で疾患の原因となる変異が同定されていることが必要。

遺伝学的に関連する疾患

DMPKの変異が関連する他の表現型は知られていない


臨床所見

自然経過

DM1の臨床症状は軽症から重症まで連続的に幅がある。臨床病型は多少の重なりはあるものの3つの病型(軽症例、古典型、先天型)に分類され、一般的にCTG反復回数と相関する(Table 2)。Table 2における各病型のCTG反復回数には重なりがあり、CTG反復回数から重症度を推測するには注意が必要である。[Gharehbaghi-Schinell et al 1998, IDMC 2000, Harper 2001, Moxley & Meola 2008]。

Table 2 筋強直性ジストロフィー1型の臨床病型とCTG繰返し配列長の関係

臨床病型

臨床症状

CTG反復回数1,2

発症年令

平均死亡年齢

前変異段階

無し

35-49

適用不能

適用不能

軽症型

白内障
軽度筋強直現象

50-〜150

20-70歳

60歳〜正常

古典型

筋力低下
筋強直現象
白内障
禿頭
不整脈
その他

〜100-〜1000

10-30歳

48-55歳

先天型

幼児期筋トーヌス低下
呼吸不全
知的障害
成人例で見られる典型的症状

>20003

生下時から10歳

45歳4

Die-Smulders et al 1998, Mathieu et al 1999, IDMC 2000

  1. CTG反復回数は病型間で重なりがある
  2. 正常のCTG反復回数は5-34回
  3. Redman et al 1993は、繰り返し回数が730から1000の先天性DM1の少数例を報告した
  4. 新生児期死亡例は含まない

軽症型DM1

軽症DM1症例は、白内障、軽度の筋強直現象や糖尿病のみを呈することがある。軽症例は生涯活動的な人生を送り、正常かわずかに短い寿命を全うする[Arsenault et al 2006]。

古典型DM1

この領域のCTG繰返し配列長は臨床症状と大まかな相関を呈する。CTG繰り返し回数が100から1000の範囲では、通常古典型DM1になり、筋力低下・萎縮、筋強直現象、白内障としばしば心伝導障害を呈する。

DM1の発症年令は古典型では20代から30代で、稀に40歳以上になる。しかし、古典型DM1は小児期から軽度のミオトニー顔貌や筋強直現象などの症状を呈することがある。

骨格筋

古典型DM1症例の主な症状は遠位筋の筋力低下で、これにより下垂足/歩行障害と手先の巧緻性が必要な作業の困難さが生じる。特徴的な顔貌は主に顔面筋と上眼瞼挙筋の筋力低下によって生じる。筋強直現象は工具や家具、ドアノブの使用といった生活動作に影響を及ぼすことがある。把握ミオトニーと筋力は筋収縮を反復することで改善することがある(ウォームアップ現象という)[Logigian et al 2005]。ウォームアップ現象により発声も改善することがある[de Swart et al 2004]
 易疲労性が頻繁に見られる[Kalkman et al 2005]

心筋

様々な程度の心伝導障害が高頻度に見られる。ある研究では、90%の症例で伝導障害が認められた。伝導障害はDM1の早期死亡原因として重要であり、突然死と関連することがある。心筋障害も低頻度に認められる[Bassez et al 2004, Chebel et al, Dello Russo et al 2006, Sovari et al 2007, Gagnon et al 2007, Breton & Mathieu 2009, Morner et al 2010]

消化管

平滑筋障害により嚥下障害、便秘、偽性腸閉塞や下痢が生じうる[Bellini et al 2006]。眼筋麻痺や開鼻声を伴う構音障害を認める症例もある。

胆嚢括約筋の緊張亢進により胆石が生じやすい。

原因不明の理由により肝機能検査(トランスアミナーゼなど)が上昇していることが多い。

高次脳機能および中枢神経

軽度の高次機能障害が見られる症例があるが、それ以外の症例でも茫洋とした顔貌の印象により知的に低いと見られがちである。成人例では加齢に伴う高次機能の低下も報告されている。[Modoni et al 2004, Gaul et al 2006, Sansone et al 2007, Modoni et al 2008]
 前頭側頭葉障害が報告されている[Sistiaga et al 2010]
 回避的性格、強迫症的性格、受動攻撃性格が報告されている[Delaporte 1998, Winblad et al 2005]。
不安やうつもしばしば見られ、全般的なQOLが強く障害されることがある[Antonii et al 2006]。 
 日中過眠症、睡眠時無呼吸は遅れて発現するよく知られた合併症である[Rubinsztein et al 1998, Laberge et al 2009]。
 脳MRIで皮質の軽度萎縮、白質の異常が見られることがある
 剖検で脳の神経細胞にタウ関連神経原線維変化が見られることがある。[Maurage et al 2005, Oyamada et al 2006]

末梢神経

軸索性末梢神経障害が筋力低下に影響することがあるが、まれである [Krishnan & Kieman 2006, Bae et al 2006]

白内障は、細隙灯検査で多色のクリスマスツリー様の外観として観察され、発症者のほぼ全例で認められる。白内障は視力障害をどの年齢でも引き起こしうるが、通常30-40歳ごろである。

内分泌

臨床的に大きな問題とはなりにくいが、高インスリン血症、糖尿病、精巣萎縮、成長ホルモン分泌異常などの内分泌障害がみられる。不妊症はそれ以外に症状のない症例でも生じうる。[Garciua de Andoin et al 2005, Matsumura 2009]

皮膚

毛母腫と上皮腫が、主に頭皮に見られることがあり、皮脂嚢胞と混同されやすい[Geh & Moss 1999, Cigliano et al 2005]。

疾病経過

発症後数十年を経て、車いす生活となる患者も稀にある。横隔膜の筋力低下/筋強直現象と誤嚥しやすさは、進行例において呼吸器合併症のリスクを増大させる[Roses 1997]。
幾つかの研究でDM1の死因と生存期間が調査されてきた(Table 2)[de Die-Smulders et al 1998, Mathieu et al 1999]。代表的な死因は肺炎/呼吸不全、心血管疾患、突然死/不整脈、腫瘍である。de Die-Smulders et al[1998]らの報告では、DM1症例の50%は死の直前には部分的・完全車いす依存状態でであった。ベオグラードでの15年間生存の累積確率は50%であった[Mladenovic et al 2006]。

妊娠

女性DM1患者は妊娠において、自然流産や早産、遷延分娩、遺残胎盤、前置胎盤、産褥性出血のリスクが高い[Zaki et al 2007, Argov & de Visser 2009]。先天性DM1妊娠に関わる合併症としては、胎児運動低下や羊水過多がある。

先天性DM1

世代間のアレル継代におけるひずみのため、親の世代より大きなCTG配列が子に受け継がれる場合が多い[Dean et al 2006]。より大きな反復配列が受け継がれるのはほとんどの場合母親からであるが、父親からでも同様の事例が報告されている[Zeesman et al 2002]。大きな繰返し配列の存在は、発症年令の低年齢化と重症化を引き起こすことがあり、先天性DM1として知られる[De Temmerman et al 2004, Rakocevic-Stojanovic et al 2005]。
 先天性DM1はしばしば、羊水過多や胎動減少など出生前に発症する。
 出産後の主な症状は、全身の筋力低下、筋トーヌス低下や呼吸不全である。典型的な患児は逆V字型(“テント状”または”魚様“)上口唇を呈し、顔面筋の高度の麻痺を特徴的に示す。呼吸不全による死亡率が高い。

乳児期を生き延びると、運動機能は徐々に発達する。患児は多くの場合歩行能を獲得するが、その後古典型と同様の進行性筋障害が生じる[Harper 2001]。

知的障害は先天性DM1患児の50-60%に見られる。知的障害の原因は不明だが、大脳萎縮と脳室拡大が生下時からしばしば見られる。知的障害は初期の呼吸不全と脳におけるDMPK変異の直接的作用の併発によって引き起こされている可能性がある[Spranger et al 1997, Ashizawa 1998]。自閉症スペクトラムの疾患も見られる[Ekstrom et al 2008]。

DM1の患児は視力低下や遠視、乱視を認めることがある[Ekstrom et al 2010]。

遺伝子型と臨床型の関連

一般にCTG反復回数が増大すると、発症年令は低下し重症化する[Logigian et al 2004](Table 2)。軽度の伸張(50-99)では軽症・無症状例が多い[Arsenault et al 2006]。

DMPKのCTG繰り返し配列長は、DM1患者では細胞分裂時に不安定である。この不安定さのため、CTG配列長には体細胞モザイシズムがしばしば認められる。このため、ある組織のCTG配列長と疾患の重症度が相関しないことがある[Moxlet & Meola 2008]。

 1260回と60回のCTG繰返し配列を持つ複合ヘテロ接合体の患者で脳の異常が報告された[Cerghet et al 2008]

浸透率 

本症のわずかな症状も見逃さずに注意深く調べられた場合の浸透率は高い(50歳まででほぼ100%)。しかし、軽症例(たとえば白内障のみを認める症例)では見落とされる場合がある[Moxley & Meola 2008]。

促進現象

DMPKのCTG繰り返し回数が34回以上のアレルは不安定で、減数分裂時にその長さが伸びることがある。リスクのある子供は親よりも長い繰り返し配列を引き継ぐ可能性がある。この現象は世代を経ることで重症化や発症年齢の低年齢化を生じる表現促進現象を引き起こす。

若年発症の重症DM1(すなわち先天性DM1)は、多くの場合母から伸長したDMPKアレルを受け継いでいる[Harper 2001, Rakocevic-Stojanoic et al 2005, Martorell et al 2007]。表現促進現象は母から子への受け継ぎで典型的に認めるものの、父からの継代でも生じうる[Harper 2001, Moxley & Meola 2008]。

 

頻度 

DM1の推定有病率は日本のある地域での1/10万人からアイスランドでの1/1万人までの範囲があり、世界全体では概ね1/2万人程度とされている。

ケベック地方など特定の地域では創始者効果により有病率が高いとされている。[Yotova et al 2005]


鑑別診断

 DM1と他の遺伝性ミオパチーとの鑑別はDMPKのCTG反復回数の検査によってなされる。

筋強直性ジストロフィー type 2(DM2)は筋強直現象(発症者の90%)、筋障害(筋力低下、筋痛、こわばり)(82%)とこれより低頻度で心伝導障害、虹色の後嚢下白内障、インスリン抵抗性2型糖尿病や精巣障害を呈する。筋強直現象は10歳未満でも報告されているが、発症は典型的には20歳代で、変動するまたは一時的な体力を消耗しうる程度の筋痛、頚部屈曲や手指屈曲の筋力低下が最も高頻度に見られる。続いて筋力低下は肘伸展、股関節屈曲・伸展でも見られる。顔面筋力低下や足首の背屈低下は少ない。高度の筋強直現象は稀である。DM1とDM2の詳細な比較が報告されている[Turner & Hilton-Jones 2010]。

CNBP (ZNF9)が、DM2を引き起こす唯一の遺伝子である。CNBPのイントロン1に複雑な繰り返し配列(TG)n(TCTG)n(CCTG)nが存在する。CCTG繰り返し配列の伸長がDM2を引き起こす。伸展アレルのCCTG繰り返し回数は概ね75回から11000回以上で、平均は約5000回である。CNBPのCCTG伸張の検出率は、通常のPCRとサザンブロット、PCR repeat assayを組み合わせた場合99%以上である。
遺伝形式は常染色体優性遺伝である。

 これ以外に多臓器を冒す筋強直性ジストロフィーを引き起こす遺伝子は、その存在の可能性はあるものの、これまでに同定されていない。IDMCは新たに多臓器を冒す筋強直性ジストロフィーが発見された場合は、筋強直性ジストロフィーの病型として連続的に命名することに同意している。

DM3として報告された家系[Le Ber et al 2004]はVCPの変異によって生じた、Paget病と前側頭型認知症を伴う封入体筋炎(IBMPFTD)の非典型例であることが判明した[Udd et al 2006]。

DMPKのCTG配列長が正常範囲で、DM2もCNBPの分子遺伝学的検査により否定された場合は、しばしばEMG、血清CKや筋生検が他の筋疾患との鑑別診断に必要となる。

遺伝的遠位型ミオパチーで鑑別疾患に挙げられるものに封入体筋炎(IBM)、遺伝性ミオフィブリラーミオパチー(MFM)、遠位性筋ジストロフィー(三好型、埜中病、Welander病、Markesbery-Griggs病)や肢帯型筋ジストロフィーがある。

筋強直現象を伴う他の遺伝性疾患としては、CLCN1の変異によって生じる先天性ミオトニー(Thomsen病、Becker病とも呼ぶ)、SCN4Aの変異で生じる先天性パラミオトニーとその類縁疾患、SCN4Aの変異で生じる高カリウム性周期性四肢麻痺がある。

時にDM1は運動ニューロン病 (脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症の項参照)、脳性麻痺、非特異的知的障害と誤診される。また、表情の乏しさや動きの緩慢さからパーキンソン症候群とも混同されることがある。

臨床医への注釈:この疾患に関連した患者特有の同時診療(simultaneous consult)にはSimulConsult(R)、患者の症状に基づいた鑑別診断を行う双方向性の診断支援ソフト(登録か組織のアクセスが必要)を訪れること


臨床的マネジメント

最初の診断後における評価

先天性DM1との診断を受けた小児例では、疾患の程度を明らかにするため、以下の検査が勧められる

  • ベースラインの神経学的検査
  • ベースラインの眼科的検査
  • 運動能力評価
  • 知的能力評価

 古典型DM1との診断を受けた成人例では、疾患の程度を明らかにするため、以下の検査が勧められ

ベースラインの神経学的検査

  • DM1の虹色の後嚢下白内障を熟知した眼科医によるベースライン眼科的検査
  • 甲状腺機能検査
  • 心電図、Holter心電図、心エコー(失神、動悸や他の心臓由来と考えられる症状を評価)
  • 筋力評価[Whittaker et al 2006]
  • 知的能力評価
  • 空腹時血糖検査

症状に対する治療

DM1患者の進行性の筋力低下に対する特別な治療法はない。

リハビリテーション専門医、作業療法士や理学療法士は患者の進行に応じた短下肢装具、車いすや他の補装具の必要性を評価することができる。筋骨格変形のある患児では整形外科的手術も有効である[Canavese & Sussman 2009]。

DM1の筋力低下は甲状腺機能低下症や高脂血症治療薬(スタチン)によっても増悪することがあるため、これらの要因を取り除くことで筋力が若干回復することがある。

DM1の筋強直現象は一般に軽度から中等度で治療を要することは稀である[Ricker et al 1999]。メキシレチンやカルバマゼピンが有効であった報告もある。Logigianら[2010]はメキシレチン150-200mg2回/日(TID)が筋強直の治療に有効かつ安全であったと報告した。

一部のDM1では疼痛治療が重要である。種々の薬剤や薬剤の組み合わせが有効な症例があるが、常に有効な薬はない。これまで用いられてきた薬剤にはメキシレチン、ガバペンチン、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、低容量の甲状腺剤、低容量ステロイド、三環系抗うつ剤がある。包括的疼痛管理プログラムの一部として使用する場合は、低容量の鎮痛剤も有効である。

DM1では致死性の不整脈が他の症状に先駆けて生じることがあるため、心症状や心電図で不整脈が見られる場合は循環器専門医に相談する。より高度の侵襲的な心臓電気生理学的検査が必要なことがある[Sovari et al 2007]。

白内障は、視力に影響を及ぼす場合は手術で除去可能である。手術後の再発も報告されている[Garrott et al 2004]。

男性患者で血清テストステロン濃度が低値の患者では、臨床症状があればホルモン補充療法を要する。

多数例では、毛母腫とその周囲の正常組織を含めた切除が推奨される[Cigliano et al 2005]。

精力的なレビューでは通常の精神刺激薬の過眠症に対するエビデンスは認めなかった[Annane et al 2006]。

経過観察

以下の項目が求められる。

  • 無症状の心伝導障害を検索するために年1回の心電図。施設によっては心症状のないDM1患者に年1回の24時間ホルター心電図を実施する[Sa et al 2007, Sovari et al 2007, Cudia  et al 2009]。組織ドップラー検査も推奨される[Parist et al 2007]。
  • 年1回の空腹時血糖、HbA1cを行い糖尿病が疑われる場合は治療する[Matsumura 2009]
  • 白内障評価のため2年毎の眼科的検査
  • 咀嚼や摂食障害を含めた栄養状態に注意する[Motlagh et al 2005, Engvall et al 2009]。
  • 睡眠障害の睡眠ポリグラフ[Kumar et al 2007]

回避すべき薬物/環境

コレステロール低下のために用いるスタチンは筋肉痛や筋力低下を起こすことがある。

Mathierら[1997]は「DM1では数多くの周術期合併症が報告されている。チオペントン、スキサメトニウム、ネオスチグミンやハロタンの使用と合併症の関連が指摘されている。Chicoutimi病院で最初に全身麻酔下での手術を受けた219例のDM患者の周術期合併症に関する後方視的検討がなされた。全体の合併症頻度は8.2%(18/219)であった。ほとんどの(16/18)合併症は呼吸器系で、呼吸器管理を要す急性呼吸不全が5例、無気肺が4例、肺炎が3例であった。多変量解析により、周術期呼吸器合併症は上腹部手術と近位筋力低下を伴う筋障害の強い症例で多かった。周術期合併症と特定の麻酔薬との関連は認めなかった。周術期呼吸器合併症リスクが高いため、術後早期からの注意深いモニタリング、上気道保護、呼吸理学療法、精力的な肺活量評価が全ての有症状DM患者に必須で、筋障害の強い患者や上腹部手術例では特に重要である。」と述べている。

DM1でバクロニウムを用いた麻酔中に悪性高熱が起きたことが報告[Nishi et al 2004]されているが極めてまれである[Kirzinger et al 2010]。(悪性高熱感受性参照)

DM1の1例でリンパ腫治療にアドリアマイシンを基本とする積極的化学療法で突発性の心房細動が引き起こされた[Montella et al 2005]。

リスクのある血縁者の検査

リスクのある成人の血縁者には早期診断と心合併症、糖尿病や白内障の早期治療を可能にするため、分子遺伝学的検査を勧めることが適切である。

リスクのある血縁者の検査に関連する遺伝カウンセリングの問題については、遺伝カウンセリングの項を参照のこと。

妊娠管理

DM1の女性で妊娠中の特別な検査には、超音波検査、前置胎盤の評価、羊水過多症、分娩遷延や帝王切開の必要性などの予測がある[Argov & de Visser 2009]。

研究中の治療法

筋強直現象に対する治療の試みはほとんど無く、丁寧に実施されているものもない[Trip et al 2006]。

新しい薬物治療の考想は Wheeler[2008]によりレビューされている。

Heatwoleら[2011]は組換えヒトインスリン様成長因子(IGF)のパイロットスタディーでは筋力の増加が得られなかったが、より大規模なコントロールスタディを勧めている。

広範囲の疾患に対する臨床研究の情報にアクセスするにはClinicalTrials.govを検索せよ。

患者登録

任意の患者登録への連絡先がGeneReviewsのスタッフから提供されている。(本邦には2011年3月現在なし)

National Registry of Myotonic Dystrophy & FSHD Patients and Family Members
電話:888-925-4302
Email: dystrophy_registry@urmc.rochester.edu
National Registry of Myotonic dystrophy and FSHD

その他

中等度の強度の筋力トレーニングには危険性はないが、利益をもたらすかどうかは不明である[van der Kooi et al 2005]。

遺伝の専門科が配置された遺伝クリニックは患者や家族に自然経過や治療、遺伝形式、他の家族への遺伝リスクだけでなく、利用可能な民間の情報資源に関する情報を提供できる。GeneTests Clinic Directory参照。

本疾患に対する疾患特異的または包括的支援組織に関する民間の情報資源を参照。これらの組織は患者と家族に情報、支援、他の患者への連絡情報などを提供するために設立されてきた。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

DM1は常染色体優性遺伝形式で伝わる。

患者家族のリスク

発端者の両親

ほとんど全てのDM1患者は、伸長したCTGアレルを変異範囲(>34 CTG反復)のアレルを持つ片親から引き継いでいる。

  • 新規突然変異−正常アレル(≦34 CTG反復)が変異範囲まで伸長すること−は稀である。
  • DM1と診断された患者の多くは明らかに発症している親がいるが、そうでない者もいる。軽症のDM1症状に無自覚で非発症例に見える場合や、異常であってもCTG伸長程度が軽度なために無症状の場合がある。
  • 発端者の両親が無症状の場合は、他の家族への遺伝カウンセリングのためDMPKの分子遺伝学的検査を勧めることが望ましい。この場合、発症前診断に関連した遺伝カウンセリングの問題を考慮する必要がある(遺伝カウンセリングに関連した問題 発症前診断参照)。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは、両親の遺伝的状況による。

  • 片親が伸長したDMPKアレルを持つ場合は、各同胞のリスクは50%となる

発端者の子 

  • 変異したアレル(>34 CTG反復)を持つ患者の全ての子供は、50%の確率で変異アレルを引き継ぐ。

  • 変異アレルは配偶子形成過程で更に伸長する可能性があり、より長いCTG繰り返し配列が受け継がれ、親よりも発症年令の低下や重症度の悪化を生じることがある。

他の血縁者

他の血縁者のリスクは、発端者の親の状況による。もし親も発症者もしくは異常なCTG伸張(>34CTG反復)を持っていれば、その血縁者もリスクがある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

リスクのある血縁者の早期診断・治療のための検査に関する情報は臨床的マネジメント リスクのある血縁者の検査を参照。

明らかに新生突然変異と考えられる家系 

発端者の両親が無症状で変異範囲(>34反復)のCTG延長を認めない場合、非医学的な理由としては代理父、秘せられた養子縁組などの可能性がある。

家族計画

遺伝学的リスク評価や出生前検査の可否などについての議論は妊娠前に行うのが望ましい。
若い成人発症例や発症リスクのある例に対しては遺伝カウンセリング(子供や生殖各選択肢で考えられるリスクについての議論を含む)を勧めることが望ましい。

先天型DM1の経験的リスク 

ある特定のCTG繰り返し長を持つ母親がどの程度のCTG繰り返し長や症状の子供を持つかについてのデータは再発可能性についてのカウンセリングに有用である。利用できるデータには信頼限界があり、特定のリスク予想は困難である。

  • Redmanら[1993]は、100以上のCTG反復を持つ女性において、変異アレルを引き継いだ子供が730以上の反復(従って先天性DM1)を持つリスクは62%と報告した。Martorellら[2007]も母由来の変異を持つ胎児49例(母の変異アレルはCTG反復65から1333回)のうち31例が1000以上のCTG反復であり、その頻度は63%と上記報告と同程度であったと報告した。
  • Coboら[1995]は、CTG反復が300未満の女性では、変異アレルを引き継いだ子供が先天性DM1になるリスクは10%で、300以上のCTG反復を持つ女性では、変異アレルを引き継いだ子供が先天性DM1になるリスクは59%と報告した。Martorellら[2007]も同様の相関を示したが、統計学的解析はなされなかった。

家族スクリーニングにおける軽症者の診断 

軽症DM1患者は多くの場合無自覚で、より重度な発症血縁者の診断過程で診断される。このことは、CTG反復回数が100未満の無症状の母親がCTG反復長が数千の先天性DM1患児を出産した時によく見られる。

発症前診断

無症状のリスクのある成人の検査

リスクのある無症状成人の発症前診断は、分子遺伝学的検査の項で記述した方法により実施可能である。この検査は、発症年令や重症度、病型や進行する確率などの予想には適さない。非特異的・曖昧な症状をもつリスクのある無症状例のルーチン検査は予測検査であって、診断検査ではない。リスクのある症例の検査においては、家系内の発症者の検査を先に実施し分子遺伝学的な診断確定がなされるべきである。

リスクのある無症状成人では、挙児や経済的問題、職業計画などについての決定を行うために発症前診断を求めることがある[Smith et al 2004]。他の動機、たとえば単純に「知りたい」という欲求を持つ者もある。リスクを持つ成人血縁者の発症前診断では、通常検査前面接が行われ、検査を必要とする動機、本症についての知識、検査結果によって生じうる肯定的・否定的影響、神経学的状態などが評価される。発症前診断を求める者は、彼らが直面する可能性のある健康や人生、身体障害保険、雇用・教育差別、社会・家族関係の変化等の問題についてカウンセリングを受けるべきである。それ以外に考慮すべき問題として、対象者以外のリスクのある血縁者に及ぼす影響がある。インフォームドコンセントが必要で、記録は秘密にされなければならない。陽性の結果が出た症例には長期にわたるフォローアップと評価の準備が必要である。

無症状のリスクのある未成年(18歳未満)の検査

18歳未満で成人発症疾患のリスクを持つ無症状の未成年に対して発症前診断は行うべきでないというのがコンセンサスである。このような症例における発症前診断に反対する主な理由は、本人の知る・知らない権利を奪うこと、家族や社会環境の中で烙印を押す可能性があること、教育や職業選択に深刻な影響を与える可能性があることなどがある。18歳未満の発症者では、通常診断を確定することで利益がある。The National Society of Genetic Counselors resolution on genetic testing of childrenやthe American Society of Human Genetics and American College of Medical Genetics points to consider:子供や青年の遺伝子検査における倫理的、法的社会的問題を参照のこと

DNAバンキング 

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断

もともと高リスク 

DM1のリスクが50%の妊娠における出生前診断は、通常妊娠およそ15-18週で行われる羊水穿刺かおよそ10-12週で実施される絨毛膜生検で得られた胎児細胞から抽出したDNAの解析で行われる。出生前診断の前に発症血縁者で伸長したDMPKアレルが見られることを確認しておくことが必要である[Martorell et al 2007]。

注意事項:(1)検査結果が異常でも、3病型と関連するCTGリピート長には重複があることやCTG繰り返し配列長の体細胞性モザイシズムの可能性のため、発症年令や疾患の重症度を予想することはできない。しかし、CTG反復回数が730-1000回以上の場合は先天性DM1が多い[Redman et al 1993, Martorell et al 2007]。(2)妊娠第1期-第2期(妊娠6か月まで)の超音波検査で、胎児運動の低下や羊水過多が認められ、先天性DM1の可能性が示唆されることがある。(3)妊娠週齡は最終正常月経の初日からの週数もしくは超音波測定にて表される。

もともと低リスク 

DM1のリスクが高いと考えられていない胎児の場合、妊娠第3期の超音波検査で羊水過多や胎児運動低下が見られた場合に羊水穿刺で得られた胎児細胞から抽出したDNAの分子遺伝学的検査が考慮される。

着床前診断は病気を引き起こす変異が確認されている場合に利用できる[Kakourou et al 2008]

78組(女性54例、男性24例)のDM1で着床前診断において3塩基繰り返し長は繁殖成績に影響しなかった[Verpoest et al 2010]。これらの症例ではCTG繰り返し回数は50回から1330回で平均は410回であった。累積出産率は205サイクルで46%であった。 (訳注:本邦では着床前診断に対応可能な施設は極めて少なく、個別の倫理審査が必要など利用には障害が多い)


更新履歴:

  1. GeneReview 著者 : Cameron Adams, MD.
    日本語訳者 吉田邦広 (信州大学医学部附属病院遺伝子診療部 )
    GeneReview 最終更新日: 2001.8.14. 日本語訳最終更新日: 2003.6.3.
  2. Gene Review著者: Thomas D Bird, MD.
    日本語訳者: 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 筋チャネル病および関連疾患の診断・治療指針作成および新規治療法開発に向けた基盤整備のための研究班   
    Gene Review 最終更新日: 2011.02.08. 日本語訳最終更新日: 2011.03.20.

原文 Myotonic Dystrophy Type 1

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