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ジストニア概説
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Dystonia Overview

Gene Review著者: Andrea H Nemeth, MRCP, DPhil
日本語訳者: 和泉唯信,梶龍兒(徳島大学医学部 臨床神経科学)     
Gene Review 最終更新日: 2006.1.23. 日本語訳最終更新日: 2010.2.18.

原文 Dystonia Overview


要約

疾患の特徴 

ジストニアは身体のひとつ以上の部位の不随意な持続する筋収縮で特徴付けられ、しばしばねじるような反復する運動や異常姿勢の原因となる。ジストニア運動はアテトーシスから素早い、ぎょっとさせたようなミオクローヌス反射にまで及ぶ。それらは時に周期的で振戦を伴うこともある。ジストニア運動は動作によってより悪化する傾向がある(“動作性ジストニア”)。このような動作は非特異的であったり動作特異性があったりする(例えば、書字で出現するが食事動作では出ない)。経過とともにジストニアは特異的な運動で生じることは少なくなるが、結局は安静時に生じたり持続する異常姿勢の原因になったりする。より若年での発症のジストニアは全身性になりやすくより重症の経過をとりやすい。

診断・検査 

ジストニアの診断は第一に臨床的に行う。診断を迷うとき、経験のある運動障害の専門医に患者の診察(あるいは患者ビデオの評価)を依頼する。ジストニアは“症候性”あるいは“二次性”のことがあり、それは虚血性イベント、脱髄、感染、腫瘍、薬物、あるいは毒物といった障害による。DNAを用いない臨床検査はドパ反応性ジストニア、家族性特発性基底核石灰化症症(ファール病)、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症(pantothenate kinase-associated neurodegeneration;PKAN)、有棘赤血球舞踏病、およびマクラウド神経有棘赤血球症候群には有用である。分子遺伝子検査は若年発症一次性ジストニア、ドパ反応性ジストニア、ミオクローヌス・ジストニア、急性発症ジストニアーパーキンソン症候群、PKAN、パーキン型の若年性パーキンソン病、およびdeafness-dystonia-optic neuronopathy syndromeに有用である。

臨床的マネジメント 

ジストニアの特異的な治療可能な原因(例えば、腫瘍、脱髄、あるいはドパ反応性ジストニアのひとつといった)が見つからなければ、治療は対症的で薬物投与、罹患筋へのボツリヌス毒素の注射、そして時には末梢性手術や定位脳手術を行うことがなる。有用な薬剤としては抗コリン作動物質薬、ドパミン遮断薬、その他にバクロフェン、ベンゾジアゼピン、標準的な鎮痛薬が挙げられる。ボツリヌス毒素注射はアセチルコリン放出を阻害して、数週間から数ヶ月持続する注射した筋肉の局所的な弛緩性麻痺を引き起こし、ジストニア治療の“ゴールドスタンダード”と考えられている。末梢性手術は選択的な除神経や筋切除であり、深部脳刺激は試験的な技術であるが成功例の報告が増えつつある。

遺伝カウンセリング 

遺伝性ジストニアは、常染色体優性、常染色体劣性、およびX連鎖の形式で遺伝する。遺伝カウンセリングとリスク評価は患者の特異的なジストニア診断を決定するかどうかによる。ジストニアのいくつかの型では出生前診断が有用である。


定義

臨床症状

ジストニアは“身体のひとつ以上の部位の不随意な持続する筋収縮で、しばしばねじるような反復する運動や異常姿勢の原因となる”と特徴付けられる運動障害である[Ad Hoc Committee 1984, Fahn et al 1987]。

ジストニア患者は罹患した身体部位の固くなり、痙攣する、ねじるような動き、あるいは異常姿勢をとる。罹患した身体部位の機能の障害や低下が生じる。ジストニア運動はアテトーシスから素早い、ぎょっとさせたようなミオクローヌス反射にまで及ぶ。それらは反復性で時には周期的で振戦を伴うこともある。ジストニア運動は動作によってより悪化する傾向があり(“動作性ジストニア”)、患者は最初に特定の動作に関連する症状に気付く。このような動作は非特異的であったり動作特異性があったりする(例えば、書字で出現するが食事動作では出現しない、前方に歩いたら出現し後方に歩いたら出現しない、ピアノ演奏で出現しオルガン演奏では出現しない、針仕事で出現し編み物では出現しない)。経過とともにジストニアは特異的な運動で生じることは少なくなるが、結局は安静時に生じたり持続する異常姿勢の原因になったりする。頸部ジストニア(痙性斜頸)は、最も多いジストニアの一型だが、頭部をねじったりぐいと引くような動きや、頭部の振戦、頸部の痛みがあり、相当な社会的および心理的障害を生じる[Dauer et al 1998]。ジストニアの他の型では痛みは通常は目立たない。

緩和させる要因 ジストニアの筋収縮はしばしば“感覚トリックgestes antagonistiques”として知られる触覚や固有感覚の感覚刺激によって緩和する。例えば、頭部を正中位に戻すように手で顎を触ったり壁に頭の後ろをもたせかけて休んだら頸部ジストニアが一時的に改善する。

悪化させる要因 ジストニアはストレスや疲労で悪化し、寛いだり催眠や睡眠で消失する傾向がある。ひとたびそのような傾向が出現すればジストニア運動は通常生涯にわたり持続する。患者の約10%、特に頸部ジストニアにおいて、数年間持続する一回以上の寛解期を経験することがある。末梢神経の損傷はジストニアを悪化させうることに関しては議論がある[Jankovic 2001, Weiner 2001]。

ジストニアは罹患部位や発症年齢によって分類される。

罹患部位(表1)

罹患部位が多いほどジストニアはより重症になりやすい。四肢、特に下肢で発症するジストニアは他の部位により広がりやすく、そのためより重症の転帰をとりやすい。

表1 罹患部位によるジストニアの分類

ジストニアの型

罹患部位

局所性 

単一身体部位が罹患 例:
・眼瞼(眼瞼痙攣)
・口(口部咬筋ジストニア、吹奏楽者のジストニア)
・喉頭(ジストニア性内転性発声障害、“ささやくような発声障害”)
・頸(頸部ジストニア、以前は痙性斜頸として知られた)
・手と腕(書痙)

分節性

・脳神経(2つ以上の部位の脳神経と頸部筋)
・体軸(頸部と体幹)  
・分節性上肢(片側の腕と体軸;両腕±頸部±体幹)
・分節性下肢(片側の下肢と体幹;両下肢±体幹)

全身性

分節性cruralと他の分節の組み合わせ

多巣性 

隣接しない2つ以上の部位

ヘミジストニア

一側の腕と下肢 

  • 発症年齢 より若年発症するジストニアは全身性になりやすくより重症の経過になりやすい。小児期に発症するジストニアは全身性になる傾向があり(あるいは全身性になっていきやすい)、成人期発症のジストニアは局所性のままでいる傾向がある[Ad Hoc Committee 1984]。

確定診断

ジストニアの診断は第一に臨床的に行う。診断を迷うとき、経験のある運動障害の専門医に患者(あるいは患者のビデオ)の再評価を依頼する。一般的な原則として、ジストニアの全ての小児例と全身性ジストニアを呈する全ての成人例は十分な精査を必要とする。安定している局所性ジストニアの成人例ではこのような精査は必ずしも必要ではないが、症状が広がったり他の神経学的な特徴を呈してきたら運動障害の専門医に検査してもらい診断を見直すべきである。

鑑別診断

ジストニアと鑑別すべき神経疾患は:

  • 本態性振戦 頸部ジストニアは時に本態性振戦と混同される、特に発語(喉頭ジストニア)や手(“ジストニア性手指振戦”)も罹患している時はそうである。後者は低振幅の傾向があり、生理的振戦の強いものと考えられている[Deuschl et al 1997]。本態性振戦と頸部ジストニアも動作とストレスのかかる状況で悪化する。そして両者とも家族歴があることがある。発症年齢(成人で通常50歳以上である)も同様である。しかしながら、ジストニア性振戦はより不規則でけいれん的な傾向がある。ジストニア性振戦はアルコールやβブロッカーに反応する頻度が少ない(ミオクローヌス・ジストニアを除いて)。頸部ジストニアでは頸部筋肉の肥大(例えば、胸鎖乳突筋、頭板状筋)がしばしば起こる。
  • 小脳性運動失調 ジストニア性振戦は小脳性運動失調とも誤診されうる(遺伝性失調症概説を参照)。全身性ジストニア患者のあるものは振戦と歩行障害があることから“オリーブ橋小脳萎縮症”と誤診されている。ジストニア患者では測定障害、協調運動障害、構音障害、眼振といった小脳疾患でみられるその他の徴候がみられない。これらの徴候を認める患者は一次性ジストニアらしくなくむしろ遺伝性変性疾患のあるものや非遺伝的な原因によるジストニアを考えさせるものである。
  • チック/ジルドラトゥレット症候群 チックとジストニアの鑑別は困難なことがあり、特にミオクローヌス性ジストニアの時はそうであり、ミオクローヌス反射はトゥレット症候群のチックに外見上は類似している。しかしながら、チック患者では通常は運動よりも動きたい衝動を訴える。チックは通常は短時間でも抑制できるし睡眠の全ての段階で持続する。トゥレット症候群の患者では様々の運動性チックに加えてしばしば声帯のチック、それらは咳払い、鼻すすり、咳、ほえるような声を出すこと、口笛、あるいは汚言(みだらな言葉が口をついてしまう)がある。チックとトゥレット症候群の詳細は、Jankovic 1987を参照せよ。
  • 脳性麻痺とその他の原因による痙性対麻痺 よくある誤診として“ジストニア性脳性麻痺”、“非典型的脳性麻痺”、“非典型的”遺伝性痙性対麻痺、およびパーキンソニズムがある(遺伝性痙性対麻痺概説を参照)。脳性麻痺に合致する明らかな病歴がない脳性麻痺に類似した状態の患者では、ドパ反応性ジストニアの可能性があるためL-dopaの投与を考慮すべきである(以下のジストニアープラス症候群を参照)。
  • パーキンソン病 成人発症の局所性ジストニアの振戦は時に早期のパーキンソン病の振戦と間違われる。ドパ反応性ジストニアにはパーキンソン病の特徴を認めるが、遅発性ジスキネジアは出現せずパーキンソン病の特徴は多くはない。ジストニア、特に睡眠効果のある足ジストニアは、通常は40歳以前の発症で固縮・動作緩慢・安静時振戦を認め、L-dopaの良好な反応とジスキネジアの早期での出現で特徴付けられる、若年発症のパーキンソン病で認められることがある[Tassin et al 1998]。Park2(Parkin型の若年性パーキンソン病を参照)、DJ-1PARK7)あるいはPINK1は早期発症のパーキンソン病の原因となる[Kitada et al 1998, Bonifati et al 2003, Valente et al 2004]。ドパ反応性ジストニアと若年発症のパーキンソン病での臨床的特徴のオーバーラップが診断を混乱させている原因となっている。
  • 精神科疾患と非器質性ジストニア 非器質性(“機能性”)ジストニアはよく認識されているがまれな精神疾患である。非器質性の原因と診断する前に器質性の原因を除外しなければならない。神経遮断薬を投与された精神科での病歴がある患者では特に混乱が生じやすい。ジストニアは精神科疾患、特に痛みや障害による抑うつ状態、の結果としても生じうる。
  • 遺伝性変性症候群ではジストニアは症状のひとつかもしれないが通常は重要な症状で はなく認ないこともある:
  • 常染色体性優性
    • ハンチントン病(まれにジストニアを呈する)
    • 脊髄小脳変性症、特にSCA3(マシャド・ジョゼフ病;時にジストニアを呈する)
    • Huntington disease like-2
    • DRPLA
    • プリオン病
  • 常染色体性劣性
    • セルロプラスミン欠損症
    • Aicardi-Goutieres症候群
    • 毛細血管拡張運動失調症
    • 眼球運動失行を伴う失調症1型(AOA1)および2型(AOA2)
    • ビオチニダーゼ欠損症
    • ビオチン反応性基底核疾患
    • グリコシル化の先天性疾患およびグリコシル化の先天性疾患1a型
    • フリードライヒ運動失調症
    • フコース蓄積症
    • ゴーシェ病3型(亜急性神経型)
    • 糖輸送担体1欠乏症
    • グルタル酸尿1型(有機酸血症概論参照)
    • GM1ガングリオシドーシス
    • GM2ガングリオシドーシス
    • 酢酸グアニジンメチルトランスフェラーゼ欠損症
    • ハートナップ病
    • 乳児両側基底核壊死
    • 若年性神経細胞内セロイドリポフスチン症
    • 脂肪蛋白症
    • 異染色性白質ジストロフィー
    • メチルマロン酸およびプロプリオン酸によるアシデミア(有機酸血症概論参照)
    • ニーマン・ピック病A型(スフィンゴミエリナーゼ欠乏症)
    • ニーマン・ピック病C型
    • プリンヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症
    • アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症
    • Succinylsemialdehyde dehydrogenase deficiency
    • 亜硫酸オキシダーゼおよびモリブデン補因子欠損症
    • トリオースホスフェートイソメラーゼ欠損症
    • ビタミンE欠乏に伴う失調症
    • ウイルソン病
  • X連鎖
    • ARX関連疾患(伴性若年性の筋痙攣と精神遅滞、しばしばジストニアを伴う)
    • クレアチン・トランスポーター(SLC6A8)欠損症
    • レッシュ・ナイハン症候群
    • ペリツェウス・メルツバッハー病
    • レット症候群

ジストニアの頻度

ジストニアの頻度は概算ではおよそ1/10,000(医療機関の受診からの概算)から1/200以上(人口からの概算)に及ぶ[Nutt et al 1988, Nakashima et al 1995, ESDE Collaborative Group 2000, Muller et al 2002]。全体的に見て、最も多い型は成人発症の局所性ジストニアである。

原因

非遺伝要因によるジストニア
症候性あるいは二次性ジストニアは外的な障害がその原因になる。ジストニアの非遺伝要因としては脳卒中や虚血性イベント、脱髄、感染、腫瘍、薬物および毒物がある。二次性ジストニアの最も一般的なものは薬物によって引き起こされるものである(遅発性ジストニア)。遅発性ジストニアに関連する薬物としては向精神薬、L-dopa、制吐薬がある。薬物によるジストニアの遺伝的背景は知られていない。
Intraneuronal inclusion diseaseは小児に発症する原因不明の稀な疾患である。

遺伝性ジストニア
遺伝性ジストニアは一次性ジストニア、ジストニアープラス、遺伝性変性性ジストニア、およびジストニアを伴う発作性ジスキネジアに分類される。

一次性ジストニア
一次性ジストニアは他の神経学的異常を認めない。一次性ジストニアは初め“特発性”と記載されていたが、それは神経生理学的、神経化学的、あるいは病理所見が原因となるものの手がかりを与えてくれなかったためである。しかし、現在は多くジストニアに遺伝的バイアスがあることが知られている。家族性一次性ジストニアは全身性になりやすいものと局所性になりやすいものに分類される。時に、同一家系の異なる患者が違う型を示すことがありこのような時には“混合性”という言葉が使われる。しかしこれらの小分類に完全に区別できるわけではない。一次性ジストニアの多くは常染色体優性遺伝形式をとる(表2参照)。常染色体劣性遺伝の存在、ジストニア2は証明されていない[OMIM224500]。X連鎖ジストニアーパーキンソニズムは、以前は一次性ジストニアに分類されていたけれども、遺伝性変性性疾患に分類されるのが適切でありその節で記述される。

早期発症一次性ジストニア(DYT1)は典型的には21歳以前に不随意に持続する筋収縮を生じ足、下肢、腕の異常姿勢の原因となる。収縮はしばしば、必ずではないが、他の部位に広がっていく。手の姿勢時振戦以外は他の神経学的異常を認めない。疾患の重症度は同一家系内においてさえ相当に異なる。書痙のみが唯一の徴候のこともある。DYT1は早期発症の一次性ジストニアの最も一般的なものである。DYT1はTOR1A遺伝子の分子遺伝学的検査で診断でき、全ての患者で三塩基対CAGの欠失を示す。

表2 常染色体優性遺伝の一次性ジストニアの臨床的特徴

臨床的特徴

疫学

発症年齢

OMIM

ジストニア1
変形性筋ジストニア;特発性捻転ジストニア;オッペンハイムのジストニア

ジストニアは局所性、通常四肢ではじまり特に早期発症ではしばしば全身性になる   

非ユダヤ人の若年発症ジストニアの50%、ユダヤ人では90%、
非ユダヤ人の1/10000-1/15000、ユダヤ人の1/3000-1/5000の頻度

通常小児期だがより遅いことも(たいてい26歳未満)

128100,
605240

ジストニア4

喉頭と頸部ジストニア

単一のオーストラリア大家系

13―37歳

128101 

ジストニア6 

局所性あるいは全身性;脳神経、頸部、あるいは四肢ジストニア

2つのメノ派教徒家系

平均19歳

602629

ジストニア7 

局所性ジストニア(頸部および喉頭ジストニア)と姿勢時振戦

単一のドイツ家系

28−70歳

602124

ジストニア13

脳神経あるいは頸部ジストニア;局所性、全身性

単一のイタリア家系

5歳から成人

607671 

表3 常染色体優性遺伝の一次性ジストニアの分子遺伝学

遺伝子座

遺伝子記号

染色体座位

蛋白

検査利用

ジストニア1

TOR1A

9q34

Torsin A

臨床検査

ジストニア4

DYT4

不明

不明

不明

研究検査のみ

ジストニア6 

DYT6

8p21-q22

不明

ジストニア7 

DYT7

不明

18p

不明

ジストニア13

DYT13

不明

1p36.3-p36.1

不明

ジストニアープラス症候群

ドパ反応性ジストニア(dopa-responsive dystonia: DRD, DYT5)は小児期発症とlevodopaの経口投与が低用量で持続して劇的に有効であることで特徴づけられる。この臨床症候群は典型的には足ジストニアに原因する歩行障害があり、後にパーキンソン症状に進展する。夕方にかけて症状は悪化し睡眠後の朝は軽減する(日内変動といわれる現象)。DRDの平均発症年齢はおよそ6歳である。女:男は3:1である。最初の症状は下肢のジストニアに起因する歩行障害で典型的には足は屈曲し内反する(内反尖足姿勢)。患者によっては腕や首のジストニアで始まり、明らかなジストニアはない易疲労性や筋痙攣であったり、手の姿勢時振戦、あるいは動作緩慢を認めたりする。多くの患者では、下肢の痙縮(深部反射亢進、足クローヌス)、あるいは足の親指(線条体足趾)のジストニア性伸展が特徴として挙げられる。患者の最低でも76%が全身性ジストニアへの伸展を認める。認知機能は正常である。上記のような臨床所見を示す典型的なDRDは不完全な浸透率を示す常染色体優性遺伝形式を示しGTP cyclohydrolase1欠乏が原因となる[Ichinose et al 1994]。酵素活性が残存するtyrosine hydroxylase(TH)低下症(TH欠乏症の軽症型)は常染色体劣性遺伝形式をとりL-dopaに反応するジストニアを呈する[Blau et al 2000]。しかしながら、TH欠乏症はより重症な進行性の神経疾患の原因となり、ジストニアは特徴のひとつに過ぎず、運動退行、変動する錐体外路症状、眼球運動障害、自律神経障害、およびL-dopaが部分的に反応するだけの知的退行を起こす。

Cyclohydrolase1(GTPCH1)という酵素はTHの重要な補酵素で、tetrahydrobiopterin(BH4)生合成の最初の段階を触媒する。脳脊髄液における総ビオプテリン(BP、多くはBH4として存在)量とネオプテリン(NP、GTPCH1反応として合成される)量の組成を測定することはGTPCH1欠乏性DRDの診断に有用である。GTPCH1欠乏性DRDでは脳脊髄液におけるBPとNPの濃度は低いが、TH欠乏性DRDは脳脊髄液におけるBPとNP濃度は両方とも正常である。GTPCH1酵素をコードするGCH1遺伝子の変異は常染色体優性遺伝のDRDの原因となり[Ichinose et al 1994]、TH酵素をコードするTH遺伝子の変異は常染色体劣性遺伝のDRDの原因となる[Bartholome & Ludecke 1998]。

ミオクローヌス・ジストニア(Myoclonus-dystonia: M-D, DYT11)は素早い短時間の筋収縮(ミオクローヌス)および/あるいは持続するねじるような反復する運動の結果として異常姿勢を呈する(ジストニア)ことの組み合わせで特徴付けられる運動障害である。M-Dに典型的なミオクローヌス反射は頸部、体幹、および上肢に頻繁にみられ、下肢でみられることはより少ない。患者のおよそ半数にはさらに局所性あるいは分節性ジストニアがみられ、頸部ジストニアおよび/あるいは書痙を呈する。最も重要な非運動症状は精神的な問題でうつ病、不安、強迫神経症(OCD)、人格障害、嗜癖、およびパニック障害がみられる。初発は通常小児期あるいは思春期早期であるが6ヶ月から38歳までの幅がある。障害にもかかわらず、活動性は保たれ寿命も健常者と変わらない。たいていの成人患者はアルコール摂取に反応してミオクローヌスが劇的に減少する;しかしながら、アルコール嗜癖の危険性が重要である。SGCE遺伝子の変異は多くのM-Dでみられる家族性のものに関連している[Zimprich et al 2001];2番目の遺伝子座が18番染色体に同定されている[Grimes et al 2002, Schule et al 2004]。遺伝形式は常染色体優性である。

急性発症ジストニアーパーキンソニズム(rapid-onset dystonia-parkinsonism: RDP, dystonia12)はジストニア性攣縮、動作緩慢、姿勢保持障害、構音障害、嚥下障害が数時間から数週間のうちに進行するとても稀な状態である[Dobyns et al 1993]。もっとゆっくりな臨床経過のものも6から18ヶ月で全身に進行するジストニアとパーキンソニズムとして記載されている[Brashear et al 1996]。発症は小児期、思春期、あるいは成人期でも起こりうる[Dobyns et al 1993, Brashear et al 1996]。L-dopaによる治療は有効でない。脳脊髄液内に低濃度のホモバリン酸が検出される。神経画像検査は正常である。ATP1A3の変異が原因である。低い浸透率を示す常染色体優性遺伝をする。

表4 ジストニアープラス症候群の分子遺伝学

遺伝子記号

染色体座位

蛋白名

検査利用

ジストニア5

GCH1

14q22.1-q22.2

GTP-cyclohydrolaseI

臨床検査

TH

11p15.5

Tyrosine hydroxylase

臨床検査

ジストニア11 

SGCE

7q21

Epsilon-sarcoglycan

臨床検査

ジストニア12 

ATP1A3

19q12-q13.2

Sodium/potassium-transporting
ATPase alpha-3 chain

臨床検査

遺伝性変性性ジストニア
遺伝性変性性ジストニアは主要なあるいは症状の一つとしてジストニアがあり他の神経症状も出現することがあるものと定義される。他の神経学的特徴としては認知症、構音障害、失調症、および舞踏アテトーシスやパーキンソニズムといったその他の運動異常症がある。ジストニアとしては典型的には分類されていない他の遺伝性変性症候群もジストニアを呈することがあり鑑別診断の中で記述した。
以下の節ではジストニアが出現したり主要な症状になることもある遺伝性変性疾患について詳述する。

家族性特発性基底核石灰化症(Familial idiopathic basal ganglia calcification: FIBGC, ファール病、両側線条体淡蒼球歯状核石灰沈着症としても知られる、は神経変性疾患で、CT画像でたいていは簡単に確認できる基底核や脳の他の部位への特徴的な石灰沈着をきたす。たいていの患者は小児期と青年期は健康に過ごし典型的には30から40歳台に緩徐に進行する神経精神症状と運動異常を呈する。初発症状として巧緻運動障害、易疲労性、不安定歩行、緩徐あるいは不明瞭言語、嚥下障害、不随意運動、あるいは筋痙攣をしばしば認める。様々な型の発作が頻回に起きる。神経精神症状はしばしば初発したり主要な症状になるが、軽度の集中および記憶困難から人格あるいは行動の変化、精神病や認知症まで幅がある。1家系では、家族の半数以上がジストニアー通常は上肢あるいは下肢の局所性ジストニア、下顎のジストニア、あるいは書痙を呈している。遺伝形式は常染色体優性である。遺伝的な表現促進現象が示唆される[Geschwind et al 1999]。

神経フェリチノパチーはジストニア、舞踏病、および動作緩慢で特徴付けられる成人発症の稀な基底核疾患でイギリスの一大家系で最初に同定された[Curtis et al 2001, Crompton et al 2002]。典型的には進行する成人発症の舞踏運動あるいはジストニアと軽度の認知障害を呈する。運動障害は5から10年以内に四肢に広がり20年以内でより全身性になる。症状の非対称性があれば疾患の全経過を通してそれは残る。患者の大部分では特徴的な口顔面の動作特異的なジストニアを認めるようになり言語が構音発声障害になる。前額部の過活動と口舌ジスキネジアがよくみられる。認知障害、行動の問題、および嚥下障害が経過とともに大きな問題になる。FTLが最近判明した神経フェリチノパチーに関連する唯一の遺伝子である。遺伝形式は常染色体優性で浸透率は低い。

脊髄小脳失調症は失調症と様々な神経学的特徴で特徴付けられる神経変性疾患の不均一なグループである。ジストニアは多くの脊髄小脳変性症、常染色体優性遺伝のものも常染色体劣性遺伝のものもあるが、にとってよく認識されてはいるが一般的ではない症状である(失調症概論参照)。ジストニアがあればそれはSCA3(マシャド・ジョセフ病)を示唆しうる[Schols et al 2000]。

パントテン酸キナーゼ関連神経変性症(Pantothenate kinase-associated neurodegenaration ;PKAN)は脳内鉄沈着をきたす神経変性疾患(neurodegeneration with brain iron accumulation; NBIA;以前はハラーフォルデン・シュパッツ症候群と呼ばれた)の一群である。PKANは10歳以前に発症する基底核への鉄沈着で特徴付けられる。ジストニアは必発で通常は早期に認める。よく認める症状には構音障害、固縮、舞踏アテトーシス、および網膜色素変性症がある。患者の約25%は“非典型的な”病状を示しもっと遅い発症(10歳以降)で“非典型的”な病状、著明な言語障害、精神障害、およびより緩徐な進行を呈する。

HARP 症候群 (hypoprebetalipoproteinemia, acanthocytosis, retinitis pigmentosa, and pallidal degeneration) (OMIM 200150)は現在PKANの疾患スペクトラムの一部と考えられている[Ching et al 2002, Houlden et al 2003]。患者はジストニアも示す。PANK2遺伝子の変異がHARP症候群として報告されている2家系のみに同定されている。

“虎の目”はPKANでみられる特徴的の所見で、前額断あるいは水平断のT2強調MRIで確認できる淡蒼球の高信号域を中心として低信号域の縁取りが取り囲む所見である。この特徴的な所見は典型例および非典型例の両方でPANK2変異の存在と高い相関を示す。臨床的にNBIAと診断された患者の約半数にPANK2遺伝子の変異を同定できる[Zhou et al 2001, Hayflick et al 2003]。遺伝形式は常染色体劣性である。

有棘赤血球舞踏病 (choreoacanthocytosis; ChAc) は進行性の運動障害で無症候性かもしれないミオパチーと赤血球の有棘赤血球を伴う。運動障害はたいてい舞踏運動であるが患者によってはパーキンソン症候群を呈する。ジストニアはよくみられ口部とりわけ舌に生じ構音障害や重度の嚥下障害の原因となり結果的に体重減少をきたす。習慣的な舌や唇を噛む動作は特徴的である。進行性の認知と行動の変化は前頭葉症候群に類似する。発作は患者のほとんど半数にみられ初発症状のこともある。ミオパチーは進行性の遠位筋の萎縮と脱力をきたす。ChAcは早ければ10歳台遅ければ70歳台に発症する;発症年齢の平均は約35歳である。慢性進行性の経過をとり数年のうちに重篤な障害になる。生命予後は悪い。
ChAcの診断は特徴的なMRI所見と筋病変を証明することによってなされる。CTとMRIは前角の拡大を伴った尾状核の萎縮を示す。MRIはT2強調で通常は尾状核と被殻の高信号を示す。有棘赤血球は全赤血球の5−50%に存在する。症例によっては有棘赤血球を認めなかったり病歴の後期だけに現れることもある。血清の筋由来のクレアチンホスホキナーゼの上昇が患者の大部分でみられる。筋生検は中心核と萎縮線維を示す。VPS13Aは最近知られたChAcに関連する唯一の遺伝子である[Rampoldi et al 2001, Ueno et al 2001]。遺伝形式は常染色体劣性である。

マクラウド神経有棘赤血球症候群(McLeod neuroacanthocytosis syndrome; MLS)の所見は意義深いことにChAcのそれとオーバーラップする[Danek et al 2001];より古い報告ではMLSはChAcに間違えられていた。MLSは男性の中枢神経系(central nervous system; CNS)、神経筋、および血液学的所見の多系統の異常を示す。CNSの所見は神経変性性の基底核疾患により1)運動障害、2)認知障害、および3)精神症状を示す。神経筋所見はたいてい無症候性の感覚運動性軸索障害と臨床的に重要な筋脱力と萎縮を示す。

MLSの血液学的所見は赤血球の有棘化、代償的な溶血、およびKx赤血球抗原の発現消失とKell血液群抗原の発現低下に起因するマクラウド血液群の表現型がある。特異的なKell抗原発現を用いた免疫血液学的検査はChAcとMLSの鑑別に必要である。ChAc患者は正常な抗原発現を示す、一方Kell抗原の発現減弱はマクラウド赤血球の表現型を診断させる。女性のヘテロ接合体はKell系血液抗原と赤血球の有棘化を示すがCNSと神経筋の所見を欠くモザイクを示す。XK遺伝子の変異が原因となる。遺伝形式はX連鎖である。

X連鎖ジストニアーパーキンソニズム症候群(X-linked dystonia-parkinsonism syndrome; XDP, “Lubag”)は神経変性症候群で初発症状としてはほとんどが一般的なパーキンソニズムである。患者によっては何年間も純粋なパーキンソニズムでジストニアを示さない[Evidente et al 2002]。ジストニアは局所的に進展し、多くは顎、首、体幹、および目から、稀には四肢、舌、咽頭、および喉頭に生じる。男性の平均発症年齢は39歳で12歳から64歳までの幅がある[Evidente et al 2004]。局所性ジストニアの発症から全身性に至るまでの時間は1から23年で平均は3.8年である。その他の神経学的所見としては純粋な振戦、舞踏運動、アテトーシス、およびミオクローヌスがある。病歴の最初の1,2年でパーキンソニズム、口頬部舌ジストニア、頸部ジストニアを合併するような症例は最も予後が悪い;発症して2から5年で多巣性または全身性の症状に進展する場合は早く臥床状態になり年齢の割に早く死亡する。女性のXDP保因者はたいてい無症状だが少数例では症状を呈することもある。
XDPはフィリピン、特にPanay島の祖先から始まったと信じられている。Panay島の頻度は5.24/100,000で、最も高頻度なのはそれが風土病であるCapizの州で18.9/100,000である。遺伝形式はX連鎖である。

訳注:患者では転写調節にかかわるTAF1遺伝子のイントロン内にレトロトランスポゾンの疾患特異的な挿入を認める[Makino et al 2007]。

Deafness-dystonia-optic neuronopathy syndromeは小児期早期に生じる言語獲得の前後に感覚性聴覚障害、10歳台に緩徐進行性ジストニアあるいは失調症、20歳頃に始まる視神経萎縮から生じる緩徐進行性の視力低下、および40歳頃に始まる認知症で特徴付けられる。性格変化や妄想症といった精神症状は小児期に出現し進行する。聴力障害は発症年齢と進行に相関する傾向にあるが、神経学的所見、視力障害、および精神徴候は重症度と進行速度の程度に比してばらつく。女性が軽度の聴力障害と局所性ジストニアを生じることがある。Deafness-dystonia-optic neuronopathy syndromeはTIMM8変異の結果として単一遺伝子疾患として生じたりTIMM8Aにテロメア側に位置するBTK遺伝子の障害に続発するX連鎖無ガンマグロブリン血症もきたすXq22の隣接する遺伝子欠失症候群として生じる[Jin et al 1996]。遺伝形式はX連鎖劣性である。

リー症候群(亜急性壊死性脳筋症)は進行性の神経変性疾患で特徴的な神経病理学的な特徴を呈する、すなわち基底核、小脳、視床、脳幹、および視神経の対称性壊死である[Lera et al 1994, Huang 1995, Sudarsky 1999]。リー症候群の臨床症状で最も多く遭遇するのは進行する退行と呼吸異常や眼振といった脳幹機能不全の徴候である。その他の主要な症状としては視神経萎縮、眼筋麻痺、発育障害、筋緊張低下、脱力、痙縮、失調症、発作、球症状、不随意運動、およびジストニアがある。この疾患はミトコンドリアの機能障害に続発する酸化的リン酸化の変動が原因になる。ミトコンドリアと核での遺伝子変異が報告されている[Dahl 1998, Schapira 2002]。(ミトコンドリアDNA関連リー症候群およびNARP参照)

レーバー遺伝性視神経ニューロパチー(LHON)は典型的には成人早期に痛みを伴わない亜急性の両側視力障害を呈する。男性の方が女性より罹患しやすい。女性の方がやや遅く病気が進展する傾向があるがより重症になる場合もある。急性期は中心視野の霧視と色彩度低下で始まり、両眼同時に罹患するのは患者の50%までである。初発症状の後に両眼とも6ヶ月以内に罹患する。中心視力は患者の80%で指数弁のレベルまで低下する。神経学的異常(ジストニア、姿勢時振戦、あるいはアキレス腱反射消失)はLHON患者に一般的であると言われる。LHON患者によっては、通常は女性だが、多発性硬化症(MS)様の病状を呈することもある。LHON患者の95%はミトコンドリアDNA(mtDNA)の3つの点変異の1つを持つ:G11778A、T14484C、G3460A。

表5 遺伝性変性性ジストニアの分子遺伝学

疾患名

遺伝子座

遺伝子記号

染色体座位

蛋白名

検査利用

OMIM

家族性特発性基底核石灰化症

IBGC1

不明

14q

 

研究検査のみ

213600,
606656

神経フェリチノパチー

FTL

19q13.3-q13.4

Ferritin light chain

606159,
134790

パントテン酸キナーゼ関連神経変性症
(PKAN)(ハラーフォルデン・シュパッツ症候群)

PANK2

20p13-p12.3

Pantothenate kinase 2

臨床検査

234200,
606157

早期発症パーキンソン病、パーキン型を含む

PARK2

6q25.2-q27

Parkin

臨床検査

602544,
600116

有棘赤血球舞踏病
(ChAc)

VPS13A

9q21

Vacuolar protein sorting 13A

研究検査のみ

200150,
605978

マクラウド神経有棘赤血球症候群

XK

Xp21.2-p21.1

Membrane transport protein XK

314850

X連鎖ジストニアーパーキンソニズム症候群(“Lubag”)

TAF1

Xq13.1

N-TAF1

314250,
313650

Deafness-dystonia-optic neuronopathy syndrome

TIMM8A

Xq22

Mitochondrial import inner membrane translocase subunit TIM 8A

臨床検査

304700,
300356

訳注:X連鎖ジストニアーパーキンソニズム症候群の原因遺伝子同定により改変した。

ジストニアを伴う発作性ジスキネジア
ジストニアを伴う発作性ジスキネジアは症状や徴候が間歇的であるため他のジストニアと臨床的に異なる[Bhatia 1999]。患者は発作のない間は臨床的に良好である。患者はてんかんや舞踏運動といった他の特徴を示すことがある。多くは常染色体優性遺伝形式で遺伝する。

家族性発作性非運動性ジスキネジア(家族性paroxysmal nonkinesigenic dyskinesia: PNKD, dystonia 8)は発作性ジストニア性舞踏アテトーシス(paroxysmal dystonic choreoathetosis: PDC)あるいはMount-Reback症候群としても知られる。家族性PNKDは片側あるいは両側の不随意運動で特徴付けられる;発作は自発的でアルコール、コーヒー、茶、チョコレート、興奮、あるいはストレス性疲労によって誘発される。発作は舞踏様およびバリズム様運動を伴うジストニア姿位をきたし、時々前兆を伴うことがあり、患者が覚醒している間に生じてんかん発作に関連するものではない。発作は数分から数時間持続し稀には1日に1回以上生じる;発作頻度、持続時間、重症度、および症状の組み合わせは家系内および家系間でばらつく。発症年齢は典型的には小児期あるいは10歳代早期だが50歳ということもある。MR1はmyofibrillogenesis regulator 1をコードする遺伝子であるが、家族性PNKDに関連する遺伝子で唯一知られているものである。

発作性舞踏アテトーシスおよび反復発作性運動失調症と痙縮(dystonia 9)はおよそ20分持続する不随意運動、足趾、下肢、および腕のジストニア姿位、構音障害、異常感覚、および複視の発作を呈する。発作頻度は日に2回から年に2回と幅がある。発作はアルコール、疲労、および感情のストレスで誘発される。しかし、PNKDと違って身体運動は発作を誘発しうる。18名の患者のうち5名がジスキネジアの発作の間と間歇期の両方に痙性麻痺を呈したと報告されている。発症は2から15歳までの範囲である。

家族性発作性運動性ジスキネジア(家族性paroxysmal kinesigenic dyskinesia: PKD, dystonia 10は座位からの起立、びっくりさせる、速度が変わるといった急な動作で誘発される片側あるいは両側性の不随意運動として特徴付けられる;発作はジストニア、舞踏アテトーシス、およびバリズムの組み合わせで生じ、時に前兆が先行し、意識消失は伴わない。発作は多ければ日に100回で少なければ月に1回である。発作の持続時間は一般的に数秒から5分だが数時間持続することもある。家族性PKDは乳児に発症し成人発症やてんかん発作はない。重症度と症状の組み合わせのばらつきが生じる。発症年齢は典型的には小児期から思春期だが4ヶ月から57歳まで及ぶ。家族性PKDは男性優位にみられる。発作性運動性ジスキネジアに関連する遺伝子は同定されていない。家族PKDの少なくとも10人の患者で染色体16qへの連鎖が確立している。

表6 ジストニアを伴う発作性ジスキネジアの分子遺伝学

遺伝子座

遺伝子記号

染色体座位

蛋白名

検査利用

ジストニア8

MR1

2q35

Myofibrillogenesis regulator 1

研究検査のみ

ジストニア9

CSE

1p

不明

ジストニア10

PKC

 

16p11.2-q12.1

不明


評価手順

患者においてひとたびジストニアという診断が確定すれば、引き続いてのアプローチは予後や遺伝カウンセリングを議論するのを助けるジストニアの特異的な原因を決定するように行われる。ジストニアの特異的な原因を決定することは詳細な家族歴と分子遺伝子検査だけでなく、通常は病歴、理学的所見、神経学的所見、および神経画像検査で行われる。とりわけジストニアの治療可能な原因をさがすことは重要であり、そのようなものにDRD、ウイルソン病、および稀な代謝異常症や中毒や薬物関連のものがある。

病歴 出生前および出生時の病歴を記録すべきである。特に胎児仮死や薬物投与、とりわけ抗ドパミン薬やL-dopaの使用が大切である。

臨床所見 重要な特徴は発症年齢、初発部位、他の神経学的異常の有無、および神経以外の異常(例えば、発達遅滞、異常形態の特徴)があることである。臨床所見は一次性ジストニア、ジストニアープラス、遺伝性変性性ジストニア、およびジストニアを伴う発作性ジスキネジアを鑑別するのに役立つことがある。

家族歴 神経学的徴候や症状をもつ他の親類にも注意した3世代の家族歴を聞くべきである。親類たちの実際的な価値をもつ所見の記録をその人たちを実際診察したりDNAに基づいた検査の結果、神経画像検査、剖検所見の結果を含む医学的記録の見直しによって完成させるべきである。

検査 DNAに基づかない臨床検査は以下のものが行える:

  • ドパ反応性ジストニア。L-dopaの投与、異常フェニルアラニン負荷試験、CSFの総ビオプテリン(BP、多くはBH4として存在)とネオプテリン(NP、GTPCH1の副産物)の計測はGTPCH1欠乏性DRDの診断に有用である。GTPCH1欠乏性DRDではCSFのBPとNP濃度は低いが、TH欠乏性DRDではCSFのBPとNPともにその濃度が正常である。
  • 家族性特発性基底核石灰化症あるいは両側線条体淡蒼球歯状核石灰沈着症(ファール病)。CTスキャンによって最もよく検出される[Manyam et al 1992]。
  • パントテン酸キナーゼ関連神経変性症(PKAN)。MRIでの古典的な虎の目徴候は100%診断できないけれども有用である。
  • 有棘赤血球舞踏病。末梢血液像は有棘赤血球を呈する;血清クレアチンキナーゼ濃度は上昇することがある。
  • マクラウド神経有棘赤血球症候群。Kell抗原の弱発現。

分子遺伝学的検査は以下の疾患における診断確立に行える:

  • 早期発症一次性ジストニア(DYT1)
  • ドパ反応性ジストニア
  • ミョクローヌスジストニア
  • 急性発症ジストニアーパーキンソニズム(ジストニア 12)
  • パントテン酸キナーゼ関連神経変性症(PKAN)
  • パーキン型の若年性パーキンソン病
  • 難聴―ジストニアー視神経ニューロノパチー症候群

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

患者家族のリスク―常染色体優性遺伝

発端者の両親

  • 常染色体優性遺伝のジストニアの患者は罹患した親がいるかde novo変異の結果として発症している。
  • 明らかなde novo変異をもつ発端者の両親の評価は臨床的評価と可能なら分子遺伝学的検査を含めるのがすすめられる。
  • 一見家族歴が陰性でも適切な検査が施行されるまでは確定できない。

注意:罹患した親をもつ常染色体優性遺伝のジストニアと診断された患者であっても家族歴が陰性であるように見えることがある。家族の者の疾患を認識していなかったり、症状が発症する前に親が早死にをしたり、罹患した親の発症が遅かったり、無症候性の親がもつ変異遺伝子の浸透率が低いことが理由である。

発端者の同胞

  • 同胞のリスクは発端者の両親の遺伝子の状況に依存する。
  • 発端者の両親のひとりが変異遺伝子をもっていたら同胞に変異遺伝子が遺伝する危険は50%である。

発端者の子

  • 常染色体優性遺伝のジストニアの子はおのおの50%の確率で変異が遺伝する。
  • 遺伝性ジストニアの多くは不完全な浸透率を示すため、変異を遺伝した必ずしもすべての者がジストニアを呈さない。

患者家族のリスク―常染色体劣性遺伝

発端者の両親

  • 両親は必ずヘテロ接合体で、そのため疾患の原因となる変異を1コピーもっている。
  • ヘテロ接合体は無症候性である。

発端者の同胞

  • 一般的に、発端者の同胞はおのおの25%の確率で罹患する、50%の確率で無症候性保因者、および25%の確率で罹患もしないし保因者でもない。
  • 危険性のある同胞が無症候性であるならばその人が保因者である確率は2/3である。
  • ヘテロ接合体は無症候性である。

発端者の子 すべての子は必ず保因者である。

患者家族のリスク―X連鎖遺伝

  • 罹患した息子と別の罹患した男性の親類がいる女性は必ずヘテロ接合体である。
  • 家系の解析で罹患男性が家族内で唯一罹患しているのが明らかになれば、その母の保因 者かどうかの状態を考えさせるいくつかの可能性が挙げられる:
    • 罹患男性はde novoの疾患の原因となる変異でその母は保因者ではない。
    • 罹患者の母はde novoの疾患の原因となる変異をa) “胚細胞系列の変異”(すなわち、 彼女の受胎の時に生じそのため彼女の身体の全ての細胞に存在する);あるいはb) “胚細胞系列のモザイク”(すなわち、彼女の胚細胞のいくつかに生じるだけ)できたす。
    • 罹患者の母は母方の女性の先祖から遺伝した疾患の原因となる変異をもつ。

発端者の同胞

  • 同胞の危険は発端者の母の遺伝子の状態による。
  • 保因者の女性は妊娠ごとに疾患の原因となる変異を50%の確率で遺伝する。変異を 遺伝された息子は罹患する;変異を遺伝された娘は保因者になるが罹患しない。
  • 母が保因者でなければ、同胞への危険は低いが一般人口のそれよりは大きい。それ は母の胚細胞系列のモザイクの危険は知られていないためである。

発端者の子 罹患男性はその娘全員に疾患の原因となる変異を受け継ぎ息子には受け継がない。

発端者の他の親族 発端者の母方のおばは保因者である危険がある。そのおばの子は、性別次第であるが、保因者になったり罹患する危険がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

DNAバンキング 

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである。将来に検査法や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するだろうから、患者のDNAの保存は考慮に値する。ことに現在用いられている分子遺伝学的検査が研究機関のみで行われる状況では特に重要である。DNAバンキングについてこの仕事を行う研究所のリストを参照せよ。

出生前診断

出生前診断は分子遺伝学的検査の項で述べた方法を用いて、ジストニアのいくつかの型には技術的には可能である。DNAは胎生約15-18週に採取した羊水中細胞や胎生約10-12週に採取した絨毛から調製する。出生前診断を行う以前に、罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある。

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。
訳注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない。

着床前診断(preimplantation genetic diagnosis: PGD)は罹患している家族において病因となる遺伝子変異が研究機関や臨床施設の研究所で同定されている場合は行うこともできる。PGDを行う研究所を参照せよ。

訳注:日本では本症に対する着床前診断は行われていない。

臨床的マネジメント

病変に対する治療

ジストニアの患者は全て神経内科や脳外科の専門家による評価とマネジメントを必要とする。
腫瘍、脱髄、あるいはドパ反応性ジストニアといったような特異的な治療可能な原因が見つからなければ、治療は対症療法になり通常は以下のものからなる:

・ 薬物的介入

  • 抗コリン薬、あるいは一般的ではないけれども、ドパミン遮断薬(例えば、レセルピン)は特発性ジストニア患者の少数に有効なことがある。ドパ反応性ジストニアの患者は場合によっては抗コリン薬に反応する。
  • 対症的な経口薬物にはバクロフェン(筋弛緩薬)、ベンゾジアゼピン(マイナートランキライザー)、および一般的な鎮痛薬がある。全ての薬物は副作用と耐性や嗜癖を避ける管理が必要になる。

罹患筋へのボツリヌス毒素注射 ボツリヌス毒素、細菌のClostridium botulinumが作る神経毒、は致死的なヒトの神経毒で神経筋接合部でのアセチルコリン放出を阻害することによって神経筋伝達をブロックする。市販されているボツリヌス毒素の注射は筋肉の局所的な弛緩性麻痺をきたしそれは数週間から数ヶ月持続する。成功率が高く合併症の頻度が低いため、その他に行えるジストニア治療に対してそれは“ゴールドスタンダード”になった。注射はその使用に経験のある者だけが施行すべきである[Dauer et al 1998, Adler 2000, Adler & Kumar 2000]。

時には重篤なジストニア患者に対して末梢あるいは定位脳の手術を考慮することがある。

  • 末梢の手術は選択的な除神経や筋切除がある[Cohen-Gadol et al 2003]。
  • 深部脳刺激(deep-brain stimulation: DBS)は元々1950年代にパーキンソン病に対する破壊術から発達したが、おそらく手技的な限界の結果として成功がまちまちだった。過去数年にわたってDBSはジストニアの治療として再評価され成功例の報告が増えている。それはまだ実験的な手法である[Coubes et al 2000, Krauss 2002, Castelnau et al 2005, Marks 2005, Vidalihet et al 2005]

リソース

疾患特異的あるいはこの疾患の包括的なサポート組織については利用者のリソースを参照せよ。これらの組織は個人や家族で成り立ち情報、サポート、および他の患者とのコンタクトを提供する。GeneTestsは読者に利益をもたらす選ばれた組織やリソースを提供する;GeneTestsは他の組織から提供された情報については責任がない

原文 Dystonia Overview

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