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ファブリー病
(Fabry Disease)

[同義語: Alpha-Galactosidase A Deficiency, Anderson-Fabry Disease]

Gene Reviews著者: Atul Mehta, MA, MD, FRCP, FRCPath、Derralynn A Hughes, MA, DPhil, FRCP, FRCPath.
日本語訳者: 中川直樹(旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野)
AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)

Gene Reviews 最終更新日: 2017.1.5 日本語訳最終更新日: 2018.9.5

原文: Fabry disease


要約

疾患の特徴 

ファブリー病は、全身の細胞における酵素αガラクトシダーゼA(α-Gal A、GLA)の活性欠損と、グロボトリアオシルセラミド(GL-3)のライソゾームへの進行性の蓄積により発症する。古典型は、α-Gal Aの酵素活性が1%未満の男性にみられ、通常は小児期や思春期に周期的な四肢末端の重度の疼痛発作(四肢末端感覚異常)、皮膚血管病変(被角血管腫)、発汗異常(無汗症、発汗減少、まれに多汗症)、特徴的な角膜や水晶体の混濁、および蛋白尿などで発症する。一般に、進行性の腎機能障害を男性患者に認め、20代から40代で末期腎不全に至る。中年期においては、末期腎不全が良く管理されている男性患者でも、多くの患者で心疾患および/または脳血管疾患が進行し、主たる死因となる。ヘテロ接合体の女性は男性に比べ概して発症年齢が遅く、症状も軽度である。さらに、まれにほとんど無症状で通常の寿命を全うする場合や、古典型の男性患者と同様の重度な症状が現れる場合がある。

一方、α-Gal A酵素活性が1%以上の男性患者では以下のケースが存在する。(1)通常50代から70代において、末期腎不全には至らないものの、左室肥大、心筋症、不整脈、および蛋白尿を呈する心亜型、(2)皮膚病変や疼痛は認めないものの、末期腎不全に至る腎亜型、(3)脳卒中または一過性脳虚血発作などの脳血管疾患を発症する。

 

診断・検査 

男性患者の最も効率的で信頼できる診断方法は、血漿、分離された白血球、および/または培養細胞中の、αガラクトシダーゼ(α-Gal A)の活性低下あるいは欠損を確認することである。男性発端者は、分子遺伝学的検査によりGLAにヘミ接合体変異が同定されれば確定診断となる。ヘテロ接合体の女性は、分子遺伝学的検査によりGLAにヘテロ接合体変異が同定されれば確定診断となる。

臨床的マネジメント 

症状の治療
疼痛(四肢末端感覚異常)の緩和にはジフェニルヒダントイン、カルバマゼピン、ガバペンチン、尿蛋白の減少にはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬、末期腎不全に対しては慢性血液透析または腎移植を行う。

一次的合併症の予防
酵素補充療法(ERT)による腎臓、心臓、中枢神経系病変に対する長期的な予防効果は証明されていない。しかし、専門家はファブリー病に罹患している全ての男性(子供や、透析および腎移植を受けている末期腎不全を有する患者を含む)、および明らかな疾患を有する女性などは全て心臓、脳血管、および腎臓の合併症のリスクが高いため、可能な限り早期のERT開始を推奨している。

二次的合併症の予防
腎血管疾患、虚血性心疾患、および脳血管疾患の予防措置は一般人と同様に講じる。

経過観察:
1年毎またはより高頻度での腎機能の評価、1年毎の心機能および聴力の評価、2年毎の脳MRI・MRAを施行する。

避けるべき薬剤・状況
喫煙

リスクのある血縁者に対する評価
罹患者の分子遺伝学的検査の結果、病気の原因となる変異がわかった場合、罹患している血縁者に可能な限り早期のERTを開始するため、リスクのある血縁者に対しても分子遺伝学的検査を実施し罹患の有無を早期に確認する。

遺伝カウンセリング 

ファブリー病はX連鎖性遺伝形式で遺伝する。ある家系に罹患者が1人以上いる場合、罹患男性の母親は無条件にヘテロ接合体(キャリア)である。ある家系で男性1人のみが罹患している場合、その母親はヘテロ接合体を有している可能性が高い。しかし稀ではあるが、ある家系で男性1人のみが罹患している場合、新生突然変異の場合もある。ヘテロ接合体の女性からはそれぞれの妊娠ごとに、50%の確率でGLAの病原性変異が子供に遺伝する。男性患者の娘すべてに病原性変異は遺伝する。ある家系の病原性変異が判明している場合、リスクのある血縁者に対しヘテロ接合体を判定する検査や、リスクのある妊娠に対し出生前検査を実施することは可能である(訳者注:出生前診断を日本国内で行なうことは困難である)。


GeneReviewの本記事の範囲

ファブリー病の以下の表現型を扱う


診断

疑わしい所見

以下の臨床所見を認める男女はファブリー病を疑うべきである

診断の確定

診断アルゴリズムがGalらにより提唱され(2011年)(全文を参照)、意義不明遺伝子変異の解析手法がSmidらにより作成された(2014年)。

男性発端者 

男性発端者のファブリー病診断は、以下のように確立されている

女性発端者 

女性発端者に対しファブリー病の診断を確定できるのは、分子遺伝学的検査によりGLAにヘミ接合病原性変異が同定された場合である(表1参照)。

(注)女性のヘテロ接合体を確定する手段としてはα-Gal A酵素活性の測定は信頼性に欠ける。女性のα-Gal A酵素活性の顕著な低下が明らかになればヘテロ接合状態の診断に役立ちはするが、ヘテロ接合体の中にはα-Gal A酵素活性が正常範囲にあるものもある。

分子遺伝学的検査

分子遺伝学的検査の方法には単一遺伝子解析多重遺伝子パネルの使用、およびより包括的な遺伝子解析などが含まれる。

単一遺伝子解析 

最初にGLAの配列分析を行い、病原性変異を認めない場合は、次に遺伝子を標的とした欠失・重複解析を実施する。
カナダのノバスコシア州の住民であれば、まず病原性変異p.Ala143Proを標的とした解析を考慮してもよい(発現率1:15,000)。

亜型症状を伴う中国系の症例であれば、まず病原性変異IVS4+919G>Aを標的とした解析を考慮してもよい(「分子遺伝学」を参照)(Liuら)。

多重遺伝子パネル

多重遺伝子パネルにはGLAや他の遺伝子(「鑑別診断」を参照)が含まれ、この検査が考慮される場合もある。注:(1)遺伝子パネルに含まれる遺伝子や、各遺伝子に用いる検査の診断感度は検査施設により異なり、また経時的に変化する。(2)多重遺伝子パネルにはGeneReviewで検討されていない遺伝子が含まれる場合がある。したがって臨床医は、意義不明遺伝子変異や表現型が不明の病原性変異が発見される可能性を考慮しつつ、最も合理的な費用で遺伝的要因特定のための最良の多重遺伝子パネルは何かを決定する必要がある。(3)いくつかの研究室では、パネルの選択肢には、臨床医が指定した遺伝子を含む独自に設計したパネルまたは独自にある表現型に焦点を当てたエキソーム解析が含まれていることもある。(4) 遺伝子パネルに用いられる方法には配列分析、欠失・重複解析、またはシークエンシング以外の他の検査がある。

多重遺伝子パネルに関してさらに情報を得る場合はこちらをクリック。遺伝学的検査を依頼する臨床医のためのより詳細な情報は、こちら。

より包括的な遺伝子解析

ファブリー病の特徴を有する症例に対し単一遺伝子検査を行っても診断を確定できない場合、より包括的なゲノム検査を考慮する。この場合の検査には、エクソームシーケンス、ゲノムシーケンス、ミトコンドリアシーケンスなどがある。
より包括的なゲノム検査に関してさらに情報を得たい場合はこちらをクリック。遺伝学的検査を依頼する臨床医のためのより詳細な情報は、こちら。

表1. ファブリー病で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 検査方法 この検査により病原性変異2を有する発端者が検出される割合
GLA 配列分析3 ~95%4
標的とした遺伝子の欠失・重複解析5,6 ~5%7
  1. 染色体遺伝子座および蛋白質について記載した表A「遺伝子とデータベース」を参照
  2. GLA遺伝子中に検出されたアレル変異に関する情報は「分子遺伝学」を参照。
  3. 配列分析では、良性、おそらく良性、意義不明、おそらく病原性、または病原性の各変異体を検出する。病原性変異には、小さな遺伝子内欠失・挿入、ミスセンス、ナンセンス、スプライス部位変異などがあり、通常はエクソンや全遺伝子の欠失・重複は検出されない。配列分析の結果の解釈を考慮する事項はこちらをクリック。
  4. 配列分析に先行して行うPCRによる増幅の欠如は、男性患者におけるX染色体の(複数の)エクソンや全遺伝子の欠失を示唆する。それらが確認された場合は、標的とした遺伝子の欠失・重複解析による追加検査が必要となる。
  5. 標的とした遺伝子の欠失・重複解析は遺伝子内の欠失や重複を検出する。使用される得る方法には、単一エクソンの欠失・重複検出のため設計された定量的PCR、long-range PCR、多重連鎖反応依存性プローブ増幅(MLPA)法、および標的遺伝子のマイクロアレイ解析がある。
  6. 欠失・重複解析は、男性で配列分析でのPCR増幅が出来なかった場合に推定されるエクソンや全遺伝子欠失を確認するために、また女性では部分的および全遺伝子欠失の特定のために用いることができる。
  7. Bernsteinら(1989年)、Kornreichら(1990年)。

追加検査

バイオマーカー

(注)ファブリー病に関して普遍的に認知されているバイオマーカーは存在しない。

心内膜心筋生検

心内膜心筋生検で特徴的なグロボトリアオシルセラミド(GL-3)の蓄積が認められれば、左室肥大および意義不明GLA変異の症例の確定診断が可能となる。


臨床像

自然像

ファブリー病の表現型は、重度の症状を伴う古典型から亜型まで多様である。古典型が恐らく最も多いが、中年期以降に出現するファブリー病亜型が過小診断されている可能性もある(Sachdevら(2002年)、Nakaoら(2003年))。
ファブリー病の自然歴やERTの効果を検証するために計画された国際的で多施設共同での取り組みであるファブリー病実態調査(FOS:Fabry Outcome Survey)やファブリー病登録事業(Fabry Registry)は、ファブリー病の新しいデータソースとして重要である(Mehtaら(2004年)、Engら(2007年))。

表2. 古典型および亜型ファブリー病の主な症状

  古典型 腎亜型 心亜型
発症年齢 4~8歳 >25歳 >40歳
平均死亡年齢 41歳 >60歳 >60歳
症状 被角血管腫 ++
四肢末端感覚異常 ++ −/+
発汗減少・無汗症 ++ −/+
角膜・水晶体の混濁 +
心疾患 LVH・虚血 LVH LVH・心筋症
脳血管疾患 一過性脳虚血発作
腎疾患 末期腎不全・脳卒中 末期腎不全 蛋白尿
α-Gal A残存酵素活性 <1% >1% >1%

+:有、−:無、α-Gal A:αガラクトシダーゼA、LVH:左室肥大、(Mehtaら(2004年)、Engら(2007年))

古典型ファブリー病

通常、小児期や思春期に発症し、被角血管腫や周期的な重度の四肢疼痛発作(四肢末端感覚異常)、発汗減少、および特徴的な角膜や水晶体の混濁などを呈する。蛋白尿は早期からみられるが、腎不全となるのは通常20~40歳代である。腎疾患、心疾患、および/または脳血管疾患の合併により死亡する。

被角血管腫

被角血管腫は、しばしばファブリー病患者の最も早期に出現する症状の一つである。これは皮膚表層に暗赤色から暗藍色の血管拡張の集簇として認められる。病変は平坦かわずかに盛り上がっていることが多く、圧をかけても凹まない。病変が大きい場合は軽度の角質の増加が認められる。病変は臍部から膝にかけて最も密であり、腰部、背部、大腿部、臀部、陰茎、陰嚢などによく認められ、左右対称に現れる傾向がある。口腔粘膜、結膜、その他の粘膜部などにもよく出現する。また、分布のパターンや密度は病変によって大きく異なる可能性がある。特に陰嚢や臍部の皮膚の観察では限局性病変を発見できることがある。ファブリー病実態調査によれば、714名の患者(男性345名、女性369名)(Orteuら(2007年))のうち、男性の66%、女性の36%に限局性病変が見られたとされる。
これらの皮膚血管病変の数や大きさは年齢とともに徐々に増加する。被角血管腫の有無は全身病変の重症度と相関していたという報告もある(Zampettiら(2012年))。

四肢末端感覚異常

四肢末端感覚異常は四肢の末端に苦しく焼けるような疼痛発作が小児期や思春期以降に始まることが多く、本疾患の発症を気づかせるものとなる。この発作は数分から数日間続き、通常その引き金となるのは運動、疲労、感情的ストレス、たは温度や湿度の急激な変化である。疼痛はしばしば四肢の近位部や身体の他の部位に広がる。腹部または側腹部痛の発作は虫垂炎や腎疝痛に間違われる可能性がある。
発作の頻度や重症度は、一般的には年齢とともに低下するが、中には発作の頻度が増加し、疼痛があまりに耐え難く自殺を考えるようになる場合もある。

発汗減少・無汗症

発汗減少・無汗症は早期より見られ、頻度の高い所見である。また多汗症も現れることがあるが、ファブリー病実態調査によれば女性患者の12%、男性患者の6.4%にみられる(Lidoveら(2006年))。

渦巻き状角膜混濁

渦巻き状角膜混濁は、細隙灯(スリットランプ)検査によってのみ観察できる特徴的な角膜混濁であり、男性患者やほとんどの女性ヘテロ接合体に認められる。最も初期の角膜病変は上皮下層のびまん性陰影として認められる。経過とともに、混濁は渦巻き状に見え始め、その筋が渦巻きの中心から角膜の周辺部に向かって広がる。この渦巻き状の混濁は通常クリーム色であるが、白色から琥珀色まで幅があり、角膜の基底層に存在し、その色が非常にぼやけている場合もある(Nguyenら、(2005年))。ファブリー病実態調査によれば、渦巻き状角膜は眼科の精密検査を受けた女性の77%、男性の73%に存在する(Sodiら(2007年))。

水晶体の変化は男性患者の約30%に存在し、水晶体前嚢または被膜下の沈殿物や、疾病特異的な水晶体混濁(「ファブリー白内障」)がみられる。この白内障は、瞳孔を散大し徹照像を用いた細隙灯検査で最もよく観察され、水晶体後嚢上に付着または近位部に存在する、白っぽく細かい顆粒状物質が車輪のスポークのように沈殿したものである。これらの線は通常、水晶体後部皮質の中心部から放射状に拡がっている。角膜や水晶体のこうした混濁は視力を障害しない。

眼に関する他の特徴 

また、結膜および網膜の血管に動脈瘤性拡張や、蛇行を認めることがある。ファブリー病に特異的な所見ではないが、血管の蛇行は重症な患者に高頻度に認められる(Sodiら(2007年)、Allenら(2010年))。ファブリー病実態調査のデータでは、眼病変が全体的な疾患重症度や遺伝子型とよく相関することが示されている(Pitzら、2015年)。

心疾患 

僧帽弁閉鎖不全症は小児期または思春期にみられることがある。左室拡張や伝導障害は早期からの所見である。左室肥大は、しばしば心室中隔の肥大を伴い肥大型心筋症(HCM)と同様の外見を呈するが、進行性であり、女性に比べ男性でより早期に発症する(Kampmannら(2005年))。心疾患は古典型の男性患者では中年までに発症し、末期腎不全で透析や移植を受けた患者の死亡の主な原因となる。

ST変化、T波陰転、短いPR間隔および間欠性上室性頻拍のような不整脈を含む心電図変化は、伝導系への浸潤によりおこる。心心エコー検査では、心室中隔や左室後壁の肥厚が明らかとなる(Pieroniら(2006年))。ガドリニウムを用いた磁気共鳴画像検査では、心筋線維化と一致して遅延増強部位が認められ、これはストレイン・ストレインレート法により評価された局所的機能低下と関連する(Moonら(2003年)、 Weidemannら(2005年))。T1画像により壁内脂肪沈着および後壁の線維化を検出することができる(Sadoら、2013年)。

ファブリー病実態調査で調査対象となった成人714名のうち(Linhartら(2007年))、狭心症、動悸・不整脈、および労作性呼吸困難は、男性患者の23%~27%、女性患者の22%~25%に認められた。高血圧、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、うっ血性心不全、および僧帽弁逆流症は末期の症状である。ファブリー病実態調査によれば、高血圧は男性の50%以上、女性の40%以上に認められる(Kleinertら(2006年))。

脳血管症状

脳血管症状は主に多発性小血管障害に起因し、血栓症、一過性脳虚血発作、脳底動脈虚血、動脈瘤、片麻痺、片側感覚消失、失語症、内耳迷路障害、または明らかな脳出血などである(PoliteiとCapizzano、2006年)。ファブリー病実態調査によれば、脳卒中または一過性脳虚血発作は、患者全体の約13%(男性患者の15%、女性患者の11.5%)にみられる(Ginsbergら(2006年))。ファブリー病登録事業の報告によれば、脳血管症状はしばしばみられるファブリー病の特徴的所見であり、これまでの認識よりさらに頻度が高い可能性がある(Simsら(2009年))。Rolfsら(2005年)は、ドイツで原因不明の脳卒中を発症した18歳から55歳の男性432名のうち21名(4.9%)、女性289名のうち7名(2.4%)にGLAの病原性変異を確認したことを報告した。しかしながら、他の試験ではこのような高い有病率は確認できていない(Brounsら(2010年)、Wozniakら(2010年)、Rolfsら(2013年))。また、血栓塞栓イベントは、第V因子ライデン変異を有するファブリー病患者によくみられる(Lendersら(2015年))。

さらに、運動能力低下や非運動性の神経系症状も神経障害の表現型として報告されている。ファブリー病患者は対照群に比べ、歩行や移動の速度が遅く、手先で細かい作業をする器用さに劣り、手の動きも遅かい。患者はうつ病、疼痛、および日中の眠気の発現率が高かったが、錐体外路症状や著しい認知機能障害の徴候は示さなかった(Löhleら(2015年))。

腎障害

腎臓に進行性に蓄積するスフィンゴ糖脂質が腎機能を障害し、尿毒症や腎不全をもたらす。
小児期や思春期において、尿沈渣に蛋白、円柱、赤血球、および特徴的な「マルタの十字架」を伴う複屈折性の脂肪球が観察される。高齢になると、蛋白尿、等張尿、および尿細管再吸収と尿の分泌・排泄に関する段階的な悪化が現れる。多尿症やバソプレシン抵抗性尿崩症を発症する場合がある。
腎機能の緩徐進行性の廃絶や尿毒症は、通常20~40歳代に見られるが、末期腎不全は10歳代でも報告されている。慢性血液透析や腎移植を受けていない患者では末期腎不全から死亡する例が最も多くなる。末期腎不全を治療していない男性の平均死亡年齢は41歳であるが、治療を受けていない古典型の男性患者が60歳代まで生存することもある。

他の臨床的特徴

上記の主要症状以外にも、古典型の男性患者および女性患者が、消化器系、聴覚系、呼吸器系や他の部位に症状がみられることがある。

ヘテロ接合体(キャリア)女性

ヘテロ接合体女性の臨床症状は、通常の寿命で生涯を通じて無症状の場合から、男性患者と同様に重度になる場合まで多岐にわたる。臨床症状が多様であることはX染色体のランダムな不活性化に起因する(Deeganら(2006年))。重症の女性患者では、臓器病変にGLAの病原性変異を伴うX染色体が発現している可能性が高い(Echevarriaら(2016年))。

古典型の男性患者から出生したヘテロ接合体の女性の大部分は、男性患者に比べより軽度な臨床経過をたどり、予後もより良好である。

軽度の症状には、視力には影響しない特徴的な渦巻き状角膜(70%~90%)、及び水晶体混濁、四肢末端感覚異常(50%~90%)、一般には孤立しているかまばらである被角血管腫(10%~50%)、および発汗減少などがある。さらに、ヘテロ接合体では慢性腹痛や下痢を伴うことがある(Guptaら(2005年))。
加齢とともに、ヘテロ接合体に軽度から中等度の左心拡大(左室肥大)や弁膜症を発症することがある。より重篤な症状では、顕著な左室肥大、心肥大、心筋虚血・梗塞、不整脈などがある(Shahら(2005年)、Deeganら(2006年)、Wilcoxら(2008年))。

一過性脳虚血発作や脳血管発作などの脳血管疾患の発症は、ファブリー病の微小血管病変に基づくものである(MacDermotら(2001年)、Whybraら(2001年)、Galanosら(2002年))。

ヘテロ接合体の腎所見には、等張尿、尿沈渣にみられる赤血球、白血球、顆粒円柱、硝子様円柱、および蛋白尿がある。米国および欧州の透析・移植の登録情報によれば、ヘテロ接合体の約10%が透析や移植を要する腎不全に至っている。
過度の罪悪感、疲労、職業困難、自殺念慮、およびうつ病がヘテロ接合体において報告されている(Sadekら(2004年))。

平均余命と死因

ファブリー病登録事業のデータによれば、男性1,422名中75名、および女性1,426名中12名の死亡が報告されている。同調査の中で死亡が報告された87名は他の対象者に比べ、高齢でファブリー病と診断されていた。ファブリー病の男性患者の平均余命は58.2歳であり、一方で米国の一般集団の平均余命は74.7歳である。ファブリー病の女性患者の平均余命は75.4歳であり、他方、一般集団の平均余命は80.0歳である。男女とも最大の死因は心血管疾患である(Waldekら(2009年))。心血管疾患で死亡した個人のほとんど(57%)は過去に透析や腎移植などの腎代替療法を受けていた。ファブリー病実態調査において、181名(ほとんどが2001年以前に死亡)の主な死因は、男性では腎不全(42%)、女性では心血管疾患(25%)であった(Mehtaら、2009年)。一方、2001年から2007年までにファブリー病実態調査で死亡が報告された42名のうち、心疾患が男性(34%)および女性(57%)と男女ともに主な死因となっていた。ERTが平均余命に影響を与える可能性は「初発症状の管理と予防」で検討されている。

ファブリー病の亜型変異

心亜型 

心亜型の男性および女性は人生のほとんどを無症状で経過し、通常は50~70歳代になって左室肥大、肥大型心筋症、伝導障害、および不整脈を呈する。遅発性のHCM男性患者のスクリーニング検査で、40歳以上で肥大型心筋症と診断された男性の6.3%、および40歳以前に肥大型心筋症と診断された男性の1.4%に、α-Gal Aの酵素活性低下やGLAのヘミ接合病原性変異を特定することでファブリー病の診断に至った(Sachdevら、2002年)。心臓磁気共鳴映像法では典型的には後壁にガドリニウムの遅延造影部位を認めるが、これは剖検で認める後壁の線維化を反映している(Moonら(2003年))。心合併症の発現率は、心亜系のファブリー病患者と古典型のファブリー病患者は同程度に認める(Patelら(2015年))。

心亜型の患者は軽度から中等度の蛋白尿を呈するが、腎機能は年齢相応に正常範囲を保つ。腎病理所見ではスフィンゴ糖脂質の蓄積はポドサイト(たこ足細胞)に限局されており、これが蛋白尿の原因であると考えられる。しかし、通常は腎不全に進行することはない。

腎亜型 

腎亜型は、かつて慢性糸球体腎炎による末期腎不全と誤診され、慢性血液透析を受けていた日本人患者に同定された(Nakaoら(2003年))。注目すべきことは6人中5人の患者は被角血管腫、肢端感覚異常、発汗減少、または角膜混濁は認めないものの、中等度から重度の左室肥大を有していたことである。これらの所見が示唆するのは、腎不全に至る腎亜型患者には古典型ファブリー病の初期症状は発症せず、また腎亜型が過小診断されている可能性があるということである。したがって、腎疾患の原因が特定されずに透析および/または腎移植を受けている患者はファブリー病のスクリーニング検査を行うべきである。

遺伝型と表現型の相関

遺伝型と表現型の相関を立証しようとする取り組みには限界がある。なぜなら、ファブリー病の病原性変異は家系ごとに異なり、また同じ家系内でも表現型に著しいばらつきが存在するためである。
・古典型の男性患者では、大きな遺伝子再構成、小さな遺伝子再構成、スプライシング異常、およびミスセンスまたはナンセンス変異など様々なGLA変異が認められる(Desnickら(2001年)、Schaferら(2005年)、「人間の遺伝子突然変異」より)。
・遅発性の亜型変異(腎臓、心臓、または脳血管疾患)では、ミスセンス変異またはスプライシングの変異を認めα-Gal A酵素活性が残存している(Rolfsら(2005年))。
・p.Arg112His、p.Arg301Gln、p.Gly328Argなど病原性変異の中には、古典型および心亜型の両者を呈する病原性変異が認められているが、このことは他の修飾因子が病気の発症に関与していることを示唆している(Ashton- Prollaら(2000年))。
・ファブリー病実態調査の結果では、病原性変異p.Asn215Serの患者は、年齢を一致させた場合、古典型ファブリー病より、重症度は軽度である(Schaeferら(2005年))。
・台湾で実施された新生児のスクリーニング検査で、病原性変異IVS4+919G>Aは高い有病率を認め(男児1600人に1人)、その家系は高齢で遅発性心疾患を発症することが報告された(Linら(2009年))。

有病率

ファブリー病の発症率は、男性で50,000人から117,000人に1人と推定されている(Meikleら(1999年)、Desnickら(2001年))。

最近の研究によれば、人生の後半に心血管、脳血管、または腎臓系などに軽度の疾患を発症する場合も多く、過小診断されている可能性があることが示唆されている。

イタリアから報告された新生児スクリーニング検査の結果では、発症率は3,100人に1人という高率であり、遅発型および古典型の各疾患の比率は11:1であった(Spadaら(2006年))。35,000人近い新生児にスクリーニング検査を実施したオーストリアの報告では、ファブリー病の発症率は3,859人に1人であった(Mechtlerら(2012年))。
また、台湾のスクリーニング試験で、心亜型のファブリー病を引き起こす病原性変異c.640-801G>A(IVS4+919G>Aおよびc.639+919G>Aとしても知られている)を特発性肥大型心筋症患者同様、新生児にも予期せぬ高頻度(男児1,600人に1人)で認めた(Linら2009年)。

ファブリー病はあらゆる民族、人種、地域で認められる。


遺伝学的に関連する(アレル)疾患

このGeneReviewで議論されているもの以外の表現型で、GLAの病原性変異と関連するものはなかった。


鑑別診断

ファブリー病の疼痛は、微熱および赤沈亢進を伴うことがあるので、リウマチ熱、神経症、または先端紅痛症などに誤診されやすい。

ファブリー病患者の症状は、関節リウマチ、若年性関節炎、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス(SLE)、“成長痛”、点状出血、レイノー症候群、若年性脳卒中(Cabrera-Salazarら(2005年)、Rolfsら(2005年))、および多発性硬化症(Callegaro & Kaimen-Maciel、(2006年))などの症状に類似している。

ファブリー病の男性患者は心臓外来でも気付かれることなく、肥大型心筋症と診断される可能性があり、腎臓外来においても末期腎不全と診断される(Bekriら(2005年)、Ichinoseら(2005年)、Tanakaら(2005年))。
家族性地中海熱は疼痛や腎障害も伴うため、家族性地中海熱の患者数人がファブリー病と誤診されていたことという報告が2つある(Lidoveら(2012年)、Zizzoら(2013年))。

皮膚病変の鑑別診断ではフォーダイス斑の被角血管腫、ミベリ被角血管腫、および限局性被角血管腫を除外する必要がある。これらはいずれもファブリー病の病変に典型的に見られるライソゾーム蓄積症の組織や超微細構造などは有していな。

臨床所見・分布ともにファブリー病の皮膚病変に類似し、見分けがつきにくい被角血管腫は、他のライソゾーム病、すなわちフコシドーシス、シアリドーシス(β-ガラクトシダーゼ欠損症を伴う、または伴わないα-ノイラミニダーゼ欠損症)、成人型β-ガラクトシダーゼ欠損症、アスパルチルグルコサミン尿症、成人発症型α-ガラクトシダーゼB欠損症、β-マンノシダーゼ欠損症、知的障害およびムコ多糖症の何らかの特徴を伴うライソゾーム異常などでも認められる(Desnickら(2001年))。


臨床的マネジメント

初回診断後の評価

ファブリー病と診断された患者については、病気の広がりと今後の対応を明らかにするために、以下の評価を行うことが推奨される。

症状の治療

四肢末端感覚異常

腎疾患

腎不全は、古典型男性患者の後期合併症としては最も頻度が高く重篤なものである。腎障害のある患者には、特に蛋白尿を改善するために、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARBs)を投与すべきである(WaldekとFeriozzi(2014年)、Wamockら(2015年))。

慢性血液透析および腎移植は救命処置となる。同種移植片中の正常なα-Gal A酵素活性は腎臓内の基質であるスフィンゴ糖脂質を異化するため、移植された腎臓では組織学的にスフィンゴ糖脂質が蓄積されないままとなる。したがって、腎移植が成功すれば腎機能は改善される。欧州腎臓協会・欧州透析移植協会、および米国腎臓情報システムの登録内容を再検討すると、ファブリー病患者への腎移植が優れた成果を挙げていることが示されている。例えば、米国の登録では、1988年から1998年までの10年間で93名が腎移植を受けている。条件を一致させた対照群との比較では、ファブリー病の被移植者(レシピエント)は5年生存率(82%対83%)および移植腎生着率(67%対75%)は同等である。

(注1)ファブリー病男性患者の免疫機能は他の尿毒症患者と同様であり、ファブリー病では移植に関する免疫学的禁忌はない。しかしながらファブリー病患者では、自己免疫的状態は高頻度にみられることが報告されている(Martinezら(2007年))。ヘテロ接合体女性からの腎移植は、臓器に既に基質が著しく蓄積している可能性があるため避けるべきである。ドナーとなり得る血縁者は全員、男性患者またはヘテロ接合体女性ではないことを確認されるべきである。

主要症状の予防

酵素補充療法(ERT

遺伝子組み換え、または遺伝子活性化ヒトα-Gal A酵素を用いたERTで治験により評価が行われた医薬品には、Fabrazyme(アガルシダーゼベータ1 mg/kg、2週間毎の投与)およびReplagal(アガルシダーゼアルファ0.2 mg/kg、2週間毎の投与)の2種類がある。両薬剤とも2001年に欧州医薬品審査庁より販売が承認され、Fabrazymeのみ米国での使用がFDAより承認された。

以下に各薬剤の治験結果の要旨を示す。

現在、ERTがファブリー病の長期的な転帰における効果は限定的という合意が形成されつつある。個々の施設における研究では、心臓、腎臓、および心血管系疾患の転帰は治療群と非治療群で同等であることを示唆している(Rombach(2013年)、Weidemannら(2013年))。最近のコクランレヴューでも、ファブリー病に対するERTの有用性を支持するエビデンスは不十分であることが強調されている。
このような情報が明らかになりつつある一方で、専門家集団は、ファブリー病男性患者については全員(小児や透析や腎移植を受けた末期腎不全患者を含む)、また重大な疾患を有するヘテロ接合体の女性に対し、一過性脳虚血発作や脳卒中などの心臓、脳血管、および神経の合併症を生じるリスクが高いとして、できるだけ早くERTを開始することを推奨している(Desnickら(2003年)、Engら(2006年))。欧州の医師らのグループが作成した治療開始に関するガイドラインは、概してより保守的である(Biegstraatenら(2015年))。ガイドラインでは不可逆的な合併症の発症前にERTを開始する必要性を強調しており、不可逆的な臓器障害発症後のERT開始は避けるよう推奨している。ERTが患者の臓器機能に何の効果ももたらしていない場合は中止すべきであり、また継続する際には服薬順守を厳重にモニターすべきである。

二次合併症の予防

ファブリー病患者の腎血管疾患、虚血性心疾患、および脳血管疾患の予防法は、一般人における予防法と同様である。

定期検査

避けるべき物質・環境

高齢のヘミ接合体の男性およびヘテロ接合体の女性に閉塞性肺疾患を発症することが報告されているが、喫煙者ではより重症になる。したがって、患者が喫煙することを阻止すべきである。

アミオダロンは、細胞性および生化学的変化を惹起し、ファブリー病の角膜症に類似した所見を引き起こすことが報告されている(Whitleyら(1983年))。α-Gal Aの酵素活性の細胞レベルでの影響を考えると、アミオダロンはファブリー病患者に禁忌とされてきた。しかしながら、有害作用を示すエビデンスはほとんど存在しておらず、不整脈を有する患者への投与はその便益を慎重に考慮すべきである。

リスクのある血縁者の検査

患者の血縁者で、一見無症状だがリスクのある高齢または若年の男性および女性を可能な限り早く評価することは適切であり、治療(ERT)や予防処置の導入において恩恵を受けることができる。
評価には以下の方法が考えられる。

遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある血縁者の検査に関する事項は、「遺伝カウンセリング」を参照。

試験が実施されている治療法

遺伝子置換療法

遺伝子置換療法がファブリー病マウスモデルを用いて研究されてきた(Zieglerら(1999年)、Zieglerら(2002年)、Zieglerら(2004年))。自己細胞移植による遺伝子療法の治験が現在カナダで進行中である。

シャペロン療法

シャペロン療法は新たなアプローチであり、細胞内で変異酵素が誤って折り畳まれたり、劣化したりすることを防ぐことにより残存酵素活性を増強するように設計された小分子を使用する(Desnick & Schuchman(2002年))。心亜型の男性患者1名にシャペロン療法を行った報告では、ファブリー病に対する本治療戦略の「概念を実証した」ことが示された(Frustaciら(2001年))。

第I相試験では、健康ボランティアにおいて血漿中α-Gal A濃度の上昇が示された(Fanら(1999年)、Ishiiら(2004年))。現在、ファブリー病の男女に対し薬理学的シャペロン(米国ニュージャージー州に拠点を置くAmicus Therapeutics の1-デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ):ミガーラスタット)を投与する第III相試験が進められている。DGJは、ファブリー病患者から抽出した線維芽細胞において突然変異α-Gal Aのライソゾームへの移動を増強し、酵素活性を増加させ、一方でファブリー病の遺伝子導入またはノックアウト動物モデルの組織内においてGL-3を減少させることが示されている。2016年、ミガーラスタットの欧州連合内での販売が承認された(訳者注:日本においても、2018年3月に製造販売が承認された)。

代替酵素療法

循環半減期がより長いペグ化された組換えα-Gal Aの第II相試験が現在進行中である。

Clinical Trials.govでは幅広い疾患の臨床試験に関する情報の入手が可能である。

その他

ファブリー病に対する基質減少療法は生化学的原理に基づいている。基質減少療法の臨床試験は間もなく開始される予定となっている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ファブリー病はX連鎖性の遺伝形式に従う。

血縁者のリスク

発端者である男性患者の両親

発端者である男性患者の同胞

同胞へのリスクは母親がヘテロ接合体か否かに依存する。

ヘテロ接合体女性(症候性または無症候性)の同胞

男性患者の子孫

男性患者がGLAの病原性変異を遺伝させるのは、

ヘテロ接合体女性(症候性または無症候性)の子孫

その他の血縁者

発端者の母方の伯母・叔母はヘテロ接合体のリスクを有しており、その伯母・叔母自身の子孫もその性別により、ヘテロ接合体および/またはヘミ接合体のリスクを有する。

ヘテロ接合体(キャリア)の検出

分子遺伝学的検査 

発端者にGLAの病原性変異が同定された場合、リスクのある女性血縁者の遺伝状態を確認するためには、分子遺伝学的検査を行うことが最も有益である。

αガラクトシダーゼA(α-Gal A)酵素活性の測定

キャリアを発見するためのαガラクトシダーゼA(α-Gal A)酵素活性測定は、信頼できない。女性のα-Gal A酵素活性の低下が証明されればヘテロ接合体であることの診断に役立つが、ヘテロ接合体ではα-Gal A酵素活性が正常範囲である場合もある。

眼科検診

酵素活性の測定で情報が得られず、また分子遺伝学的検査で特異的なGLA病原性変異が血縁者に確認できなかった場合は、細隙灯検査で特徴的な渦巻き状の角膜混濁の有無を評価するために眼科検診が考慮されてよい。しかしながら、角膜病変を有するヘテロ接合体の女性は80%~90%にとどまる。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

ファブリー病の診療ガイドラインが利用可能である。「ファブリー病診療ガイドライン」(米国遺伝カウンセラー協会推薦)を参照(Laneyら(2013年))。
また、早期診断と治療のためにリスクのある血縁者を評価することについての情報は、「リスクのある血縁者の管理と評価」を参照。

家族計画

DNAバンク

DNAバンクでは、DNA(通常白血球から抽出されたもの)が将来利用される可能性に備えて保管されている。検査方法や遺伝子、アレル変異、および疾患の理解は将来向上すると考えられるため、罹患者のDNAを保管しておくことを考慮すべきである。

出生前診断

分子遺伝学的検査 

家系内の罹患者にGLAの病原性変異が一旦確認されれば、リスクのある妊娠に対し出生前検査や着床前遺伝子診断を実施することが可能である(訳者注:出生前診断を日本国内で行なうことは困難と思われる)。

生化学的検査

核型が46XYである場合、胎児の細胞のα-Gal A酵素活性を測定することが可能である(罹患した家系内の罹患者にGLAの病原性変異が確認された場合、胎児DNAの分子遺伝学的検査により生化学的な確定診断が可能である)。


関連情報

本疾患の罹患者とその家族に益するため、GeneReviewsのスタッフが本疾患に特化した、および/または統括的な支援団体、および/または登録制度を選定した。GeneReviewsは下記以外の組織から提供された情報について責任を負わない。選択の基準に関する情報はこちらをクリック。


分子遺伝学

下記の記述は最新の情報が含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なる場合がある

表A. ファブリー病:遺伝子およびデータベース

遺伝子 染色体遺伝子座 蛋白質 遺伝子座特異的データベース HGMD
GLA Xq22.1 アルファ-ガラクトシダーゼA GLA @ LOVD
CCHMCヒト遺伝子突然変異データベース(HGMD)(GLA)
GLA

以下の標準的な基準から引用してデータをまとめた。ヒューゴ遺伝子用語委員会(HGNC)の遺伝子、オンライン・ヒトメンデル遺伝形質(OMIM)カタログの染色体遺伝子座、遺伝子座名、責任領域、相補性グループ、UniProtの蛋白質。データベース(遺伝子座特異的、HGMD)の説明についてはこちらのリンクをクリック。

表B. ファブリー病に関するOMIMの見出し語(OMIM内の「全てを表示」)

300644 GALACTOSIDASE, ALPHA; GLA
301500 FABRY DISEASE

遺伝子構造

GLAの長さはゲノムDNA上の約13 kbであり、7つのエクソンを含む。相補的DNAは1,290 bであり、31のアミノ酸とシグナルペプチドを含む429のアミノ酸からなるポリペプチドをコードする。遺伝子と蛋白質の情報に関する詳細な概要は、表Aの「遺伝子」参照。

良性の亜型

亜型のp.Asp313Tyrはエクソン6の変異であり、試験管内および中性のpHでは活性が低下し、血漿アルファ-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)活性の低下をもたらすが、健常人の0.45%に認められる(n = 800アレル)。COS-7細胞にp.Asp313Tyrを発現させると野生型の酵素活性を約60%にまで低下させるが、正常なライソゾームの局在を示す(Froissart(2003年)、Yasuda(2003年))。したがって、p.Asp313Tyrはファブリー病の原因とはならない亜型である。

病原性変異

800を超えるGLAの病原性変異が確認されているが、そのほとんどは各家系に特異的であり、それぞれ単一の家系のみに生じる。フレームシフト変異およびナンセンス変異を有する男性患者は古典型ファブリー病を呈する。病因となるミスセンス変異を有する男性患者は、古典型または亜型の表現型のいずれかを示す可能性がある(Panら(2016年))。

約20%のα-Gal A残存酵素活性をもたらすGLAの病原性変異が、ファブリー病の亜型変異を有する患者に確認されている。亜型患者に発症する臨床症状はファブリー病に特異的なものではなく(例:脳卒中、心筋症)、したがって、いくつかの亜型は病原性がはっきりしない(Lukasら(2016年))。p.Ile91Thr、p.Arg112His、p.Phe113Leu、p.Asn215Ser、p.Met296Ile、p.Arg301Gln、およびp.Gly328Argを含む多くの亜型はまま見られ、遅発型の心疾患を発症する(Patelら(2015年))。遅発型の病原性変異IVS4+919G>Aを有する患者の多くは、その孫の新生児スクリーニング検査で検出されるまでこの変異を突き止められなかった(Liuら(2015年))。

いくつかのGLA変異はその病原性が議論されている。変異p.Arg118Cysは、リスクが高い患者を対象とした大規模なファブリー病のスクリーニング検査でたびたび報告されてきた。しかしながら、この変異が常にメンデルの法則のようにファブリー病を区別するわけではなく、一方、脳血管疾患リスクの調節因子にもなる場合もある(Ferreiraら(2015年))。変異p.Ala143Thrは腎不全、脳卒中、および左室肥大を伴うが、ほとんどの患者はスクリーニング検査で検出されており、選択バイアスがかかった可能性もある(Terrynら(2013年))。

表3. GLA変異の例

変異の分類 DNAのヌクレオチド変化 予期される蛋白質変化 基準配列
良性 c.937G>T p.Asp313Tyr NM_000169.2
NP_000160.1
意義不明 c.352C>T p.Arg118Cys
c.427G>A p.Ala143Thr
病原性 c.272T>C p.Ile91Thr
c.335G>A p.Arg112His1
c.337T>C p.Phe113Leu
c.427G>C p.Ala143Pro
c.640-801G>A (IVS4+919G>A; c.639+919G>A)  --
c.644A>G p.Asn215Ser
c.888G>A p.Met296Ile
c.902G>A p.Arg301Gln1
c.982G>A p.Gly328Arg1

変異の分類に関する注記:表に掲載されている変異は著者が提供したものである。GeneReviewのスタッフは変異の分類を独自に検証はしていない。
用語に関する注記:GeneReviewはヒトゲノム変異協会(varnomen.hgvs.org)の標準的な命名の慣例に従った。用語の説明については「クイックリファレンス」を参照。

  1. 「遺伝子型と表現型の相関」を参照。

正常な遺伝子産物

アルファ-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)はライソゾームのexoglycohydrolaseである。成熟したα-Gal A酵素のポリペプチドは398アミノ酸であり、3つの機能的なN-グリコシル化部位を含む。活性酵素は約101 kbのホモ二量体である。

異常な遺伝子産物

GLAの病原性変異はmRNAの不安定性や、および/または大幅に欠失したα-Gal A、または顕著な酵素活性低下をもたらす。


更新履歴

  1. Gene Review著者: Atul Mehta, MA, MD, FRCP, FRCPath ,Derralynn A Hughes, MA, DPhil, MRCP, MRCPath
    日本語訳者: 福嶋義光(信州大学医学部遺伝医学・予防医学講座教授、信州大学医学部附属病院遺伝子診療部長)
    Gene Review 最終更新日: 2008.2.26. 日本語訳最終更新日: 2008.3.29.
  2. Gene Reviews著者: Atul Mehta, MA, MD, FRCP, FRCPath、Derralynn A Hughes, MA, DPhil, FRCP, FRCPath.
    日本語訳者: 中川直樹(旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野)
    AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)
    Gene Reviews 最終更新日: 2017.1.5 日本語訳最終更新日: 2018.9.5in present)

原文: Fabry disease

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