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糖原病II型 (ポンぺ病)
(
Glycogen Storage Disease Type II (Pompe Disease))
[Acid Alpha-Glucosidase Deficiency, Acid Maltase Deficiency, GAA Deficiency, GSD II, Glycogenosis Type II]

GeneReviews著者:Brad T Tinkle, MD, PhD, Nancy Leslie, MD
日本語訳者:窪田美穂(ボランティア翻訳者),山本佳世乃(お茶の水女子大学特設遺伝カウンセリング講座)
GeneReviews 最終更新日: 2008.8.5.   日本語訳最終更新日: 2009.4.3.

原文 Glycogen Storage Disease Type II (Pompe Disease)


要約

疾患の特徴 

糖原病II型(GSD II)、別名ポンぺ病は、発症年齢、発症臓器、重症度、進行度により分類される.古典的乳児発症型ポンぺ病は妊娠中に明らかなこともあるが、生後1ヵ月間に筋緊張低下、全身の筋肉虚弱、心肥大や 肥大型心筋症、哺乳困難、発育不良、呼吸困難、難聴を伴って現れることの方が多い.酵素補充療法(ERT)をしなければ、通常、古典的乳児発症型ポンぺ病は生後1年以内に進行性左室流出路閉塞で死亡するのが普通である.非古典的な乳児発症型ポンぺ病では生後1年以内に運動機能遅滞および、もしくは緩徐に進行する筋肉虚弱が起こり、典型例では小児初期に換気不全で死亡する. 心肥大がみられる場合があるが、心臓疾患は大きな死亡原因でない.遅発型 (すなわち小児、青年、成人発症型) ポンぺ病の特徴は近位筋肉虚弱および心臓病変を伴わない呼吸機能不全である.

診断・検査 

酸性α-グルコシダーゼ (GAA) 酵素活性は診断基準となる.糖原病II型に関連することが知られている唯一の遺伝子であるGAA遺伝子の分子遺伝学的検査は臨床的に実施可能である.

臨床的マネジメント 

症状の治療: 米国臨床遺伝学会のマネジメントガイドラインによる:標準薬剤が適応禁忌である場合があり、頻脈性不整脈および突然死のリスクが高いことから、心筋症へは個別的なケアを行う; 筋肉虚弱は、運動範囲を維持し歩行を補助するために、理学療法を行う;必要な場合は拘縮への手術を行う;栄養・哺乳補助を行う.呼吸補助には持続的気道陽圧法 (CPAP)、陽圧人工呼吸器(BiPAP)、および、もしくは気管開口術が含まれることがある.

一次病変の予防: 診断が確定したらすぐにミオザイム(Myozyme(R)アルグルコシダーゼα)の酵素補充療法(ERT)を開始する.生後6か月以前の換気補助が必要となる前に酵素補充療法を開始した乳児の大多数では、未治療群と比べて生存率が改善しており、換気補助なしの生存、運動能力の獲得、心筋重量の低下といった点で改善がみられる.酵素補充療法では治療可能な注入反応やアナフィラキシーガ起こることがある.

続発性合併症の予防:感染の積極的管理;ワクチン接種を最新の状態にしておくこと;患者とその家族の毎年のインフルエンザ予防接種;生後2年以内のRSウイルス予防(パリビズマブ接種);絶対的に必要な場合に限定した麻酔薬の使用.

経過観察: 呼吸状態、心臓、筋骨格機能、栄養哺乳、腎機能、聴覚へのルーチンのモニタリング.

回避すべき薬剤・環境ある病期では左室流入路閉塞を増悪させる可能性があるため、ジゴキシン、強心薬、利尿薬、後負荷軽減薬が適応禁忌である;筋緊張低下および体液量減少; 感染源への暴露;交感神経様作用薬を含む市販薬剤.

リスクのある親族への検査:早期診断を可能とし酵素補充療法の早期開始のための発端者の同胞へのGAA酵素活性測定もしくは分子遺伝学的検査(病原性変異が発病している家系メンバーで同定されている場合).

遺伝カウンセリング 

糖原病II型 (ポンぺ病)は常染色体劣性の遺伝形式をとる.ほとんどの場合、発端者の両親はヘテロ接合体であり、GAA病原性変異のコピーを1つ持つ.ヘテロ接合体(保因者)は無症状である.受精時、患者の同胞が発病する確率は25%、無症状の保因者となる確率は50%、発病もせず保因者ともならない確率は25%である.古典的乳児発症型ポンぺ病の患児には子供ができない.リスクのある家系メンバーへの保因者診断およびリスクの高い妊娠に対する出生前診断は、発病性変異が家系内で分かっている場合には可能である.


診断

臨床診断

ポンぺ病としても知られる糖原病型(GSDII)には一般的に2つの型があるが、以下の所見を示す場合に疑われる:
乳児発症型ポンぺ病は以下の所見を示す乳児に疑われる:

  • 哺乳不良・発育不良(全体の44〜97%)
  • 運動機能遅滞・筋肉虚弱(全体の20〜63%)
  • 呼吸関連の症状(感染・呼吸困難) (全体の27〜78%)
  • 心臓症状(a broad, wide QRS complexを伴うP-R間隔の短縮・心肥大・左室流出路閉塞・心筋症) (50〜92%).

注: 特徴的な心電図変化は房室伝導の促進を示すものであり、ポンぺ病の診断を考慮してもよい.
遅発型(小児・青年・成人発症型)ポンぺ病は、近位筋肉虚弱および呼吸機能不全がみられるが、心臓病変がない患者に疑われる.

検査

ポンぺ病の診断を裏付ける非特異的検査

  • 血漿クレアチンキナーゼ (CK)は、古典的乳児発症型ポンぺ病、および小児・青年発症型では一様に上昇する((2000 IU/Lぐらいまで上昇; 正常値は 60〜305 IU/L).成人発症型では正常であることがある.しかし、血漿クレアチンキナーゼ値の上昇は多くの疾患でみられるため、非特異的であると考えなければならない.
  • 尿中オリゴ糖 ある種の尿中グルコース四糖類値の上昇はポンぺ病での感受性が高いが、他の糖原病でもみられる.

ポンぺ病の確定診断に用いられる検査 生化学的検査を行う施設に関してはgraphic elementを参照のこと:

  • 酸性α-グルコシダーゼ(GAA) 酵素活性 GAAの酵素活性の測定は培養皮膚線維芽細胞を用いて実施された場合が最も信頼性が高い.結果を得られるまでに4〜6週間かかる場合がある:
    • GAA酵素活性の完全な欠損(酵素活性は正常対照群の1%未満)は、古典的乳児発症型ポンぺ病と関連がある.
    • GAA酵素活性の部分的な欠損(酵素活性は正常対照群の2〜40%)は、非古典的乳児発症型および遅発型と関連がある.

注:

(1) 一般に、GAA酵素活性の低下とともに発症年齢は若齢化する. (

2) GAA 酵素活性は筋肉で測定可能であるが、この侵襲的方法には通常麻酔が必要であり、心肺合併症を持つ乳児発症型ポンぺ病患者には忍容性がない場合がある. (

3) 末梢リンパ球がGAA酵素活性を測定するのに用いられているが、マルターゼ-グルコアミラーゼのような代用アイソザイムは測定結果に影響を与える可能性がある. (

4) GAA酵素活性分析は乾燥血液スポットで実施でき、迅速で感受性の高い分析が可能となることから新生児スクリーニングとして有用である可能性がある.

  • 酸性α-グルコシダーゼ・タンパク質定量法は、乾燥血液スポット標本で抗体を用いた方法により実施される.この検査が有用性を持つことが時々あるのは、存在するタンパク量の評価により、GAA酵素活性測定を解釈することができるからである.
  • 筋生検 他の糖原病とは異なり、糖原病II型はリソソーム病でもある.糖原病II型では、グリコーゲンの蓄積が小胞となって筋肉細胞のリソソームでみられることがある.さまざまな重症度を示すグリコーゲンが蓄積された小胞は過ヨウ素酸シッフ法で染まる.しかし、部分的な酵素活性の欠損であるとわかっている遅発型ポンぺ病患者の20〜30%には、このような筋肉に特異的な変化がみられないことがある.

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは、分子遺伝学的検査について、その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り、臨床的に実施可能であるとしている. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし、研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには、医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子  GAAは糖原病II型と関連することが知られている唯一の遺伝子である.

臨床検査

  • シークエンス解析 シークエンス全体を解析する前に、民族的背景および表現型に基づき、患者はまずよくみられる3つの変異−p.Asp645Glu変異、 p.Arg854X変異、および IVS1 -13T>G変異 ―のうちの1つを検査する.

GAA酵素活性が低下しているか完全に欠損している患者の83〜93%では、ゲノムDNAのシークエンス解析から2つの変異が検出される.

  • 欠失・重複分析 より多くみられる病原性アレルにエクソン18の欠失があり、約5〜7%のアレルにみられる. 単一のエクソンの欠失も複数のエクソンの欠失もともにある.エクソン18欠失以外には、近親婚が行われる集団を除いてはこのような欠失は稀である.

表1に本疾患の分子遺伝学的検査をまとめる.


1.糖原病II型(ポンぺ病)の分子遺伝学的検査

遺伝子記号

検査方法

検出変異

検査方法ごとの変異検出率

検査実施可能性

GAA

シークエンス解析

p.Arg854X変異

50〜60%未満 1

臨床的に実施可能 graphic element

p.Asp645Glu変異

40〜80%未満 2

IVS1 -13T>G変異

50〜85%未満 3

他のGAAシークエンス型

83〜93% 4

欠失・重複解析 5

単一エクソン、複数エクソン、全遺伝子の欠失・重複

5〜13%

  1. 乳児発症型ポンぺ病のアフリカ系米国人患者における割合
  2. 乳児発症型ポンぺ病の中国系患者における割合
  3. 遅発型の成人患者における割合(この変異は典型的に複合ヘテロ接合体に起こる)
  4. GAA酵素活性が低下もしくは完全欠損している患者のゲノムDNAのシークエンス解析での2つの変異の検出率
  5. ゲノムDNAのシークエンス解析で容易に検出できない欠失・重複を検出する検査.制限酵素断片長多型(RFLP)、PCR断片長、定量PCR、リアルタイムPCR、多重ライゲーション依存プローブ増幅(MLPA)、アレイCGH、高密度SNPアレイ解析といったさまざまな方法が用いられる. (graphic elementを参照のこと).

検査結果  

検出されうる変異

  • 既に報告されている病原性変異
  • 病原性と推測されるが過去の報告がない変異
  • 臨床的意義が不明なシークエンス変化
  • 病的意義がないと考えられるが過去に報告がないシークエンス変化
  • 既に報告されている病原性のないシークエンス変化

変異が検出されない場合に考えられる可能性

患者は解析した遺伝子に変異を有していない

  • 患者は変異を有しているがシークエンス解析で検出できない
  • 患者は解析した範囲以外の領域に変異を有している

検査手順

ポンぺ病の診断ガイドラインがアメリカ臨床遺伝学会の専門家パネルから出されている.

発端者のポンぺ病診断 臨床評価のみでは、どの型のポンぺ病の診断を行うにも不十分である:

  • 培養皮膚繊維芽細胞もしくは筋肉における酸性α-グルコシダーゼ(GAA)酵素活性測定は診断になくてはならないものと考えられており、実施可能であるならば診断を行うために実施するが、結果が出るまでに数週間かかることがある.
  • 全血もしくは乾燥血液スポットにおけるGAA酵素活性測定は高い信頼度でGAA酵素欠損を検出する.別の方法による診断の確認を治療開始前に行うことが望ましい.
  • 尿中の四糖類値は乳児発症型ポンぺ病患者のほぼ100%で上昇するが、遅発型では正常値であることがある.

注:筋肉中のグリコーゲン蓄積の組織化学的証拠は糖原病の診断を裏付けるが、ポンぺ病に特異的なものではない.

発端者のポンぺ病診断の裏付け 分子遺伝学的検査を用いた2つのGAA病原性アレルの同定により、さらに診断は裏付けられるが、生化学的検査の代用として行うべきではない.

リスクのある無症状の家系メンバーに対する予測的検査 分子遺伝学的検査を用いたリスクのある無症状の家系メンバーに対する予測的検査には、事前に家系内のGAA病原性変異が同定されている必要がある.

保因者診断 リスクのある親族に対する分子遺伝学的検査を用いた保因者診断には、事前に家族内のGAA病原性変異が同定されている必要がある.
注:保因者は常染色体劣性疾患でのヘテロ接合体であり、発症リスクはない.

出生前診断および着床前診断(PGD) リスクのある妊娠に対する分子遺伝学的検査を用いた出生前診断および着床前診断には、事前に家系内の病原性変異が同定されている必要がある.

遺伝学的に関連する疾患

GAA遺伝子変異に関連する表現型はポンぺ病以外にはまだない.


臨床像

自然経過

糖原病II型(GSDII・ポンぺ病)は発症年齢、発症臓器、重症度、進行度により分類されてきた.一般的に、症状の発現が早いほど進行度も速くなる.遅発型のサブタイプの正確性と有用性は疑問視されることがあるが、一般的分類として以下に提示する.

非古典的乳児発症型ポンぺ病は典型的には生後1年の間に発症する.

「遅発型」ポンぺ病は小児、青年、成人発症型に分けられるが、成人発症型患者の多くが症状が始まったのが小児期であることを覚えているため、「遅発型」は生後数年間の後の発症を表す型とする方がよいことが多い.遅発型ポンぺ病は、発症年齢によって簡単に区別することができない臨床的連続性を示すと考えるのがよいだろう .

古典的乳児発症型ポンぺ病 は妊娠中に明らかなこともあるが、多くは生後1カ月のうちに、筋緊張低下、全身の筋肉虚弱、哺乳困難、発育不良、呼吸困難として現れる(表2参照のこと).

哺乳困難は顔面の筋緊張低下、巨大舌、舌虚弱および、もしくは口腔運動能力の低さによることがある.

聴覚異常はよくみられる.蝸牛もしくは伝導路、もしくは両方の障害によることが考えられる.

酵素補充療法(ERT)がなされなければ、出生時の心エコー検査で認められることが多い心肥大や肥大型心筋症が進行して、左室流出路閉塞に至る.心臓の肥大は、肺容量の減少、無気肺、時には気管支圧迫の原因となることもある.グリコーゲンの蓄積が進行すると、心電図でPR間隔の短縮として表れる伝導欠損が起こる.
未治療の乳児は心肺不全により生後1年間に死亡するのが普通である.

2. 乳児発症型ポンぺ病によくみられる臨床所見

身体徴候

全体における割合 1

筋緊張低下・筋肉虚弱

52〜96%

心肥大

92〜100%

肝腫大

29〜90%

左心室肥大

83〜100%

心筋症

88%

呼吸困難

41〜78%

心雑音

46〜75%

巨大舌

29〜62%

哺乳困難

57%

発育不良

53%

深部腱反射消失

33〜35%

正常な認知力

95%

1. [Hirschhorn & Reuser 2001, van den Hout et al 2003]

非古典的タイプ 乳児発症型ポンぺ病の非古典的タイプは通常生後1年以内に運動能力遅滞と、もしくは筋肉虚弱を伴って発症する.グリコーゲンの蓄積により、筋肉は固く弾性がある.脹脛筋肉の偽肥大とガワーズ(Gowers)徴候はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)と似ているが、これらの症状はDMDよりポンぺ病の方が典型的により若年齢で起こる.筋肉虚弱の進行は、古典的乳児発症型ポンぺ病よりも緩徐である.
左室流出路閉塞の有無に関わらず心肥大がみられるが、臨床的に主な死亡原因ではない.
換気不全による死亡は典型的に小児早期に起こる.

遅発型ポンぺ病は、筋肉虚弱および呼吸機能不全を伴って、さまざまな年齢で起こる.症状が小児期に現れた場合には進行がより速くなるため、疾患の進行は発症年齢で予測できることが多い.
乳児期もしくは小児早期に現れる遅発型ポンぺ病は非古典的乳児発症型との区別が困難なことがある. 典型的には心肥大はみられないが、乳児発症型で通常みられるのと同様に、進行性の筋肉虚弱から運動機能遅滞、嚥下困難、呼吸機能不全が起こるが、乳児発症型よりも進行は緩徐である.

典型的には小児後期から青年期にあらわれる初症状に心臓疾患は含まれない.骨格筋病変の進行は乳児発症型よりも緩徐であるが、最終的には横隔膜および副呼吸筋に及ぶ.

下肢の虚弱から、患者は車椅子に頼る生活を送ることになることが多い.遅発型では呼吸機能不全が有病率および死亡率の最大原因である.10歳代もしくは20歳代の死亡が多い.

遅発型ポンぺ病の発症は10歳代から70歳代であり、肢帯型筋ジストロフィーや多発性筋炎のように、下肢を主体とする進行性の近位筋肉虚弱を伴う.成人患者は症状の発現をスポーツへの参加が困難であった小児期と表現することが多い.その後、座位からの起立や階段を上ること、歩行に疲労と困難を感じるようになり医学的関心が向けられたと言う.

ポンぺ病成人患者では骨粗鬆症の進行がみられるというエビデンスが集積されており、かなりの部分で続発的に歩行能力を低下させるようであるが、他の症状の進行も軽視してはならない.

呼吸機能不全は、遅発型ポンぺ病の有病率と死亡率の主な原因である.

遅発型ポンぺ病の臨床症状

  • 進行性近位筋肉虚弱(95%)
  • 呼吸機能不全
  • 運動不耐性
  • 労作性呼吸困難
  • 起座呼吸
  • 睡眠時無呼吸
  • 脊柱前弯過度および、もしくは脊柱側弯(小児および青年発症型)
  • 肝腫大(小児および青年発症型)
  • 巨大舌(小児発症型)
  • 咀嚼・嚥下困難
  • 呼吸器感染の増大
  • 深部腱反射の低下
  • ガワーズ(Gowers)徴候
  • 関節拘縮
  • 心肥大 (小児発症型)

電気生理学的検査 ポンぺ病のすべての型では、筋電図(EMG)により筋疾患がみられるが、なかには正常とみられる筋肉もある.
神経伝導速度(NCV)は運動神経でも感覚神経でも正常である.

遺伝子型と表現型の相関

大ざっぱな」原則としては、GAA酵素活性は発症年齢と進行度と関連があることがある:

  • 基本的に酵素活性をもたない2つの変異アレルの組み合わせが乳児発症型ポンぺ病の原因であると考えられる.
  • 酵素活性がいくらか残存するようなさまざまなアレルの組み合わせは発症原因となる可能性があるが、発症年齢と進行度は残存GAA酵素活性に直接比例する可能性が高い.

ホモ接合体における多くの変異は遺伝子型-表現型の相関を示すことがあるが、同一家系内に乳児発症型および遅発型ポンぺ病発症例が存在するという多く報告は、このような状況に対する推定には十分な注意が必要であることを示唆している。

ナンセンス変異のようなmRNAの不安定性を引き起こす変異は、GAA酵素活性のほぼ完全な欠損をもたらすため、乳児発症型ポンぺ病により多くみられる.

ミスセンス変異およびスプライシング変異はGAA酵素活性の完全な欠損もしくは部分的な欠損を引き起こすことがあるため、乳児発症型および遅発型ポンぺ病どちらにもみられる.
特異的変異に関連する遺伝子型-表現型の相関についての見解を以下に掲げる(表3参照のこと):

  • c.525delT変異 は特にオランダ人によくみられる変異である.この変異によりGAA酵素活性はごくわずかとなるため、きわめて重篤な変異の1つであると考えなければならない. 絶対的ではないが、c.525delT変異のホモ接合体、もしくは他の重症変異との複合ヘテロ接合体では、乳児発症型ポンぺ病が予測される.
  • エクソン18欠失も特にオランダ人によくみられる変異である.この変異によりGAA酵素活性はごくわずかとなり、きわめて重篤な変異の1つであると考えなければならない. エクソン18欠失のホモ接合体、もしくはもう1つの重症変異との複合ヘテロ接合体では、乳児発症型ポンぺ病が予測される.
  • IVS1 -13T>G変異は36〜90%の遅発型ポンぺ病にみられるが、乳児発症型との関連はない.この変異により漏出性スプライス部位が生じるため、GAA酵素活性は完全に消失することはないが、著しく低下する.

3. 特定のGAA変異をもつ患者の割合

GAA 変異

患者数における割合(%

出所

c.525delT変異

オランダ人症例の34%

Van der Kraan et al [1994]

米国人症例の9%

Hirschhorn & Huie [1999]

エクソン18欠失

オランダ人およびカナダ人乳児発症型症例の25%

Van der Kraan et al [1994]

米国人症例の5%

Hirschhorn & Huie [1999]

IVS1 -13T>G変異

遅発型症例の36〜50%

 

促進現象

GAA遺伝子欠損における臨床的もしくは遺伝学的促進現象は知られていない、もしくは予測されていない.

頻度

ポンぺ病のすべての型をまとめた発病率は、エスニシティや地理的地域によって、アフリカ系米国人の14,000人中1人から白人の100,000人中1人まで、さまざまである(表4参照のこと).

4.各エスニック集団におけるポンぺ病の発症率

エスニック集団

発症率

出所

アフリカ系米国人

14,000人中1人

Hirschhorn & Reuser [2001]

オランダ人

合計40,000人中1人・乳児発症型138,000人中1人・成人発症型57,000人中1人

Ausems et al [1999], Poorthuis et al [1999]

米国人

合計40,000人中1人

Martiniuk et al [1998]

中国南部・台湾

50,000人中1人

Lin et al [1987]

白人

乳児発症型100,000人中1人・遅発型 60,000 人中1人

Martiniuk et al [1998]

オーストラリア人

145,000人中1人

Meikle et al [1999]

ポルトガル人

600,000人中1人

Pinto et al [2004]

p.Asp645Glu変異  台湾および中国の乳児発症型症例で高率(最大80%)にみられるp.Asp645Glu変異はハプロタイプと関連があり、創始者効果が示唆される.
p.Arg854X変異  p.Arg854X変異は乳児発症型ポンぺ病と関連があることが多い. さまざまなエスニシティで検出されているが、共通のハプロタイプを持ったアフリカ系患者の最大60%にみられることから、創始者効果が示唆される.

鑑別診断

本稿で扱われる疾患の遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は、GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと. ―編集者注.

乳児発症型ポンぺ病 鑑別診断で考慮される疾患を以下に掲げる:

  • 脊髄性筋委縮症1型(ウエルドニッヒ-ホフマン病). 筋緊張低下、哺乳困難、進行性近位筋肉虚弱、反射消失がみられ、心臓病変はない.SMN遺伝子欠損が原因である.遺伝形式は常染色体劣性である.
  • ダノン病 リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2)の欠損によるグリコーゲンの過剰蓄積の結果、筋緊張低下、肥大型心筋症、筋疾患というポンぺ病類似の症状を示す. 遺伝形式はX連鎖である.
  • 心内膜線維弾性症 著しい筋肉虚弱を伴わない呼吸困難および哺乳困難、心肥大、心不全がみられる.発病はウイルス性の場合が多いが、家族性の場合、X連鎖、常染色体優性、常染色体劣性の遺伝形式が報告されている.
  • カルニチン取り込み障害 血漿クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇を伴わない筋肉虚弱および心筋症がみられる. 遺伝形式は常染色体劣性である.
  • 糖原病IIIa型(脱分枝酵素欠損症) 筋緊張低下、心肥大、筋肉虚弱、血漿クレアチンキナーゼ値の上昇がみられ、ポンぺ病に典型的にみられるよりも激しい肝病変を伴う. 遺伝形式は常染色体劣性である.
  • 糖原病IV型(分技酵素欠損症)  筋緊張低下、心肥大、筋肉虚弱、血漿クレアチンキナーゼ値の上昇がみられ、ポンぺ病に典型的にみられるよりも激しい肝病変を伴う(糖原病Va型に類似).遺伝形式は常染色体劣性である.
  • 特発性肥大型心筋症 筋緊張低下や著しい筋力虚弱を伴わない両室肥大がみられる.
  • 心筋炎 心肥大に至る心筋の炎症. 筋緊張低下や筋力虚弱を伴わない.
  • ミトコンドリア呼吸鎖障害  臨床症状はさまざまであり、筋緊張低下、呼吸不全、心筋症、肝腫大、痙攣、難聴、血漿クレアチンキナーゼ値の上昇がみられることがある.筋緊張低下がみられないこと、および認知障害がみられることから、ポンぺ病と鑑別される場合が多い. 「ミトコンドリア異常症概説」を参照のこと.

遅発型ポンぺ病(小児・青年・成人発症型) 早期からみられる呼吸筋病変は、青年発症型ポンぺ病と多くの神経筋疾患との鑑別で役立つことが多い
鑑別診断で考慮すべき疾患を以下に掲げる:

  • 肢帯型筋ジストロフィー 下肢、骨盤、肩における進行性の筋力虚弱であり、体幹部の筋肉虚弱はみられない.
  • デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー 進行性の近位筋肉虚弱、呼吸機能不全、歩行困難がみられ、患者はほとんど男性である.遺伝形式はX連鎖である.
  • 多発性筋炎  進行性、左右対称性の筋肉虚弱であり、原因不明である.
  • 糖原病V型(マッカードル病・ 筋ホスホリラーゼ欠損症)  血漿クレアチンキナーゼ値の上昇および労作時の筋痙攣がみられる.遺伝形式は常染色体劣性である.
  • 糖原病VI型 筋緊張低下、肝腫大、筋肉虚弱、血漿クレアチンキナーゼ値の上昇がみられる.遺伝形式は常染色体劣性である.

臨床的マネジメント

初回診断後の評価

糖原病II型(GSDII・ポンぺ病)と診断された患者における疾患の程度を確定するためには、以下に掲げる米国臨床遺伝学会の専門家パネルのポンぺ病初回評価に関するガイドラインが推奨される:

  • 胸部X線  乳児発症型ポンぺ病では、ほぼ全員の患児の胸部X線写真で心肥大がみられる.さらに、明らかな肺容量の減少、無気肺、胸水(pulmonary fluid)の評価が他の治療方法を選ぶ際に役に立つことがある.

遅発型では、初回検査として肺と心臓のX線撮影が行われるが、心肥大が見つかることは極めてまれである.

  • 心電図検査  乳児発症型ポンぺ病では、患児の大部分に左室肥大が、多くの患児に両室肥大がみられる.伝導障害があることが多い.
  • 心エコー検査 乳児発症型では典型的に、罹病初期の心エコー検査で、左室流出路閉塞を伴う、もしくは伴わない肥大型心筋症がみられる.疾患が進行すると、拡張型心筋症がみられることがある.
  • 肺機能検査 大部分の乳児にはさまざまな程度で呼吸機能不全がみられる. 呼吸状態は咳、喘鳴や努力性呼吸の存在、哺乳困難の有無から評価されるべきである.グリコーゲンの過剰蓄積による横隔膜の虚弱により、軽度から中等度の肺活量低下が起こるが、乳児における肺機能の客観的評価は実施できたとしても困難である.大部分の乳児は哺乳障害や睡眠障害により呼吸困難を表す.

遅発型患者は、咳、喘鳴、呼吸困難、エネルギー準位(energy level)、運動耐性、易疲労感から評価されるべきである.遅発型患者への正式な肺機能検査では肺機能不全が示される. 肺胞低換気を評価するために、パルス酸素濃度、呼吸数、静脈中の重炭酸値、および・もしくは二酸化炭素分圧(pCO2)を計測するべきである.

  • 栄養・哺乳  患児は哺乳困難の可能性を評価するべきである(例えば、顔面の筋緊張低下、巨大舌、舌虚弱、および、もしくは口腔運動能力の低さ).

成長(身長、体重、頭囲)、エネルギー摂取量、哺乳(ビデオ嚥下造影を含む)への評価を行うことが適切である.
すべての患児は胃食道逆流を評価すべきである.

  • 聴覚検査 初回の聴覚検査にティンパノメトリー検査を含むことが望ましい. 年齢ごとの聴覚検査方法については、「遺伝性難聴および聴覚消失概説」を参照のこと).
  • 骨密度測定 症状が安定したら、二重X線吸収(DXA)法による骨塩量測定を行うべきである.
  • 日常生活機能評価  これからの治療を考え、疾患の進行を監視していくために、すべての患者が運動能力および全般的機能への評価を受けるべきである.

症状の治療

ポンぺ病の管理に関するガイドラインが米国臨床遺伝学会の専門家パネルにより出されている:

  • 心筋症 ある病期では標準治療薬が適用禁忌である場合があるため、患者個人に合わせた医学的介入が必要である(「回避すべき薬剤・環境」の項を参照のこと).

酵素補充療法(ERT)による心筋質量の減少の程度はさまざまであるが、駆出率は改善される.しかし、酵素補充療法開始後の数週間に駆出率の一過性の低下が起こることがある.

  • 伝導障害  肥大型心筋症患者は頻脈性不整脈と突然死のリスクが高い. 調律障害のタイプと重症度の診断には、24時間ホルター心電図が役立つ.ストレス、感染、発熱、脱水、麻酔を避けるといった管理が必要である.薬剤治療が適応となった場合には、心室機能との注意深いバランスが必要な場合が多く、ポンぺ病に詳しい心臓専門医の診察を受けるべきである.

酵素補充療法によりPR間隔が延長し左心室の電位差が低下する.

  • 筋肉虚弱 理学療法が運動領域の維持と歩行補助には適切である .

近位筋肉虚弱(Proximal motor weakness)により、乳児や小児において腰帯の拘縮が起こることがあり、この場合には手術を含めた積極的なマネジメントが必要である.

  • 栄養・哺乳  乳児には特別な食事と最大限の栄養が必要なことがあり、なかには経胃栄養が必要なこともある.遅発型患者にも栄養的な問題が生じることがあり、やわらかい食事を摂取することで対処されることが多い.経胃栄養や経空腸栄養を必要とする患者も少数いる.
  • 呼吸機能不全 持続的気道陽圧法 (CPAP)、陽圧人工呼吸器(BiPAP)などの呼吸補助が必要となる場合がある.

乳児発症型における巨大舌と重症呼吸機能不全では、気管開口術が必要となる場合がある.

一次症状の予防

酵素補充療法(ERT)はポンぺ病の診断が確立したらすぐに開始すべきである.
2006年、食品医薬品局(FDA)は乳児発症型ポンぺ病治療薬ミオザイム(Myozyme(R) アルグルゴシダーゼα)を承認し

.遅発型ポンぺ病での治療は研究段階である.

ミオザイムは2週間に1回20〜40mg/kgを緩徐に静注投与する.

臨床研究では、ミオザイム治療を受けた患者の半数に注入反応がみられた.治療を受けた患児の大多数では、治療開始からの3ヶ月間にミオザイムに対するIgG抗体が生じた.注入反応はIgG抗体を持つ患者ではより多くみられるようである.IgE抗体の産生はそれほど多くみられないが、アナフィラキシー反応と関連がある場合がある.高IgG抗体価が維持されている患者では治療への臨床反応が良くない場合もある.これらの反応のほとんどが、注入速度を遅くすることや、解熱剤、抗ヒスタミン剤、糖質コルチコイドを投与することで抑えることが可能な場合がある.しかし、延命装置を必要とするアナフィラキシーが報告されている. これらの理由に加え、多くのポンぺ病患者がすでに呼吸および心臓機能に合併症を持っていることから、緊急時対応のできる施設で注意深く注入投与を行うことが推奨される.

薬剤関連反応に加えて、乳児発症型ポンぺ病の患児は、静脈血管確保に関連する手続きで、麻酔が困難なことがある
αグルコシダーゼ投与による効果的なグリコーゲン減少に対する骨格筋の相対的抵抗が、動物やヒトで観察されているが、酵素の調合の違いによりばらつきがある. II型筋繊維は治療への抵抗性がきわめて高いようである.臨床的な観点からみると、人工呼吸器を付けた大多数の患者が侵襲的な換気器具なしの生活が可能とならないことは驚くに値しない.もっと残念なことは、生後6か月以前に治療開始した18人の乳児のうちの5人が意味のある運動機能を獲得せず、18人のうちの6人が人工呼吸器の補助を必要とする生活となったことであろう.治療中の筋グリコーゲン値の上昇、αグルコシダーゼへの高IgG抗体価、交差反応物質陰性など、予後不良の予測因子はさまざまであった.GAA遺伝子型と酵素補充療法との相関関係は現在研究段階である.

要約すれば、未治療群と比較した場合、生後6か月以前に換気補助が必要となる前に酵素補充療法を開始した大多数の患者の生存率は改善し、人工呼吸器を使わない生存率も改善している.また、心筋質量の低下や、運動能力の獲得では著しい向上がみられる.不良な治療反応の予測因子は完全には知られておらず、治験で各個人に対して推論されるのみである.長期的予後はまだ不明であり、治療を受けている患児の多くは認知評価には幼すぎるが、予測よりも良好な認知能力という結果を示す研究もある.

続発性合併症の予防

積極的な感染症管理が必要である.
予防接種は最新の状態にしておく必要がある.
患者と家族は1年1回インフルエンザワクチンを接種すべきである.
RSウイルス予防(パリビズマブ)は生後2年以内に接種すべきである.
心血管の流入量(cardiovascular return)の低下と既存の呼吸機能不全がリスクとなるため、麻酔は絶対的に必要な場合にのみ使用すべきである.

経過観察

詳細なフォローアップが適用される.管理および経過観察に関するガイドラインが、ポンぺ病管理に関する米国臨床遺伝学会の作業部会により提唱されている:

  • 発達、臨床状態、成長、補装具の使用に対して1年2回臨床評価を行う.
  • 診察の度に、咳、呼吸困難、喘鳴、易疲労性、運動耐性に関する呼吸状態を評価する:
    • 定期的な胸部X線写真撮影
    • 肺機能検査は1年に1回、適応があればより多く実施する.
    • 通常の吸気中二酸化炭素濃度およびパルス酸素濃度測定を含む定期的な睡眠評価
  • 身体的障害と合併症を予防もしくは最小限に抑えるための治療方法を考えるために、筋骨格および機能状態の全般的モニタリングを行う.
  • 栄養・哺乳状態の定期的評価
  • 心臓障害および・もしくは肺機能障害に関連する続発性合併症と薬剤の影響とをモニタリングするために、少なくとも年1回腎機能検査を行う.
  • 心臓検査は、遅発型では年1回、乳児発症型では必要に応じて行う:
    • 定期的な心エコー検査
    • 24時間心電図検査は初回診察および定期的間隔で行う.
  • 年1回の聴覚検査

回避すべき薬剤・環境

心臓病変の治療への標準薬剤の使用はある病期では適用禁忌であることがある. ジゴキシン、強心薬、利尿薬、後負荷軽減薬の使用は左室流出路閉塞を増悪することがあるが、疾患の後期では適応となることがある.
低血圧および体液量減少は避けるべきである.
感染源への暴露は避けるべきである.
急性呼吸疾患に用いられる市販薬は交感神経様作用薬を含むことがあるため避けるべきである.

リスクのある親族の検査

早期診断および早期の酵素補充療法開始により有病率および死亡率が低下するため、発端者の同胞へGAA酵素活性もしくは(発病性変異が発病している家系メンバーに同定されている場合には)分子遺伝学的検査を提供することが適切である.
遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族への検査に関する問題については「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

開発中の治療

元々の酵素の欠損を治療するための遺伝子治療は、現在研究中である.
幅広い領域の疾患と症状に関する臨床研究の情報はClinicalTrials.govにアクセスして検索のこと.

その他

α-グルコシダーゼ欠損症のヒトおよび牛への骨髄移植例は限定されており、現在のところ成功とは考えられていない.
Genetics Clinicsは患者や家族に自然経過、治療、遺伝形式、患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに、患者サイドに立った情報も提供する. GeneTests Clinic Directory参照のこと.

支援グループは、患者やその家族に情報、支援、他の患者との交流の場を提供する.「関連情報」には疾患別の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループが掲載されている.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

糖原病II型(GSDII・ポンぺ病)は常染色体劣性の遺伝形式をとる.

家系メンバーへのリスク

発端者の両親

  • ほとんどの症例で、発端者の両親はヘテロ接合体であるため、疾患の原因となるGAA遺伝子変異のコピーを1つ持つ.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である.

発端者の同胞

  • 受精時に、患者の各同胞が発病する確率は25%、無症状の保因者となる確率は50%、発病せず保因者ともならない確率は25%である.
  • リスクのある同胞が発病しないとわかった場合、その同胞が保因者である確率は2/3である.
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である.

発端者の子

  • より多くみられる乳児発症型糖原病II型の患児は子どもができないが、酵素補充療法への反応が良好な患者の適応度の改善により、この予測が変わる可能性がある.
  • 遅発型糖原病II型患者の子は、GAA遺伝子の病原性変異の絶対的ヘテロ接合体(保因者)である。

発端者の他の家系メンバー  絶対的ヘテロ接合体の各同胞が保因者であるリスクは50%である.

保因者診断

生化学的遺伝子検査 皮膚の線維芽細胞、筋肉、もしくは末梢血リンパ球における酸性α-グルコシダーゼ酵素活性の測定は、絶対的保因者と一般集団(非保因者)との残存酵素活性の範囲が重複するために、保因者診断には不適切である.

分子遺伝学的検査 リスクのある家系メンバーに対する保因者診断は、家系内で変異が同定されていれば、臨床的に実施可能である.

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断および治療目的のリスクのある親族の検査に関する情報については、「マネジメント」の項、「リスクのある親族への検査」の項を参照のこと.


家系メンバーにおける表現型の一致性・不一致性

  • 乳児発症型ポンぺ病における同胞対一致性は、無発現変異のみられる患児で高率である.
  • 世代間の表現型のばらつきがポンぺ病の数家系で報告されているため、注意深い遺伝カウンセリングが勧められる.

家族計画 遺伝的リスクや保因者診断の評価、出生前診断の有用性についての話し合いは妊娠前に行うのが望ましい. 発病している若い成人もしくはリスクのある若い成人に、(子どもがもつことになる潜在的なリスクや生殖の選択に関する話し合いも含めた)遺伝カウンセリングを提供することが適切である.

DNAバンキング DNAバンキングとは、将来の使用のために、通常は白血球から調整したDNAを貯蔵しておくことである.検査手法や、遺伝子、変異、疾患への理解は将来改善する可能性があり、患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.ことに現在行っている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはgraphic elementの項を参照のこと.

出生前診断

分子遺伝学的検査  リスクの高い妊娠に対する出生前診断は、通常胎生週数15〜18週頃に実施される羊水穿刺もしくは通常胎生週数10〜12週頃に実施される絨毛標本採取(CVS)により得られた胎児細胞から調製したDNA解析により可能である.出生前診断が実施される前に、発病している家系メンバーの両方の病原発病性アレルが同定されていなければならない.出生前診断の結果で、発症年齢、臨床経過、機能障害の程度を予測することはできない.
注:胎生週期とは最終月経の第1日から換算するか、超音波による計測によって算出される.

生化学的遺伝学的検査  出生前診断は、培養する前の絨毛膜絨毛もしくは羊膜細胞におけるGAA酵素活性の測定により可能である.しかし、家系内変異が同定されている場合、分子遺伝学的検査は臨床的に実施可能であり、望ましい方法である.

着床前診断は家系内に発病性変異が同定されている場合に実施可能である.着床前診断を行っている施設に関してはgraphic element参照.


分子遺伝学

「分子遺伝学」の項の表に掲げられた情報は初回投稿もしくは最新投稿時点での最新情報である.―編集者注.

Table A. 糖原病II型(ポンぺ病)の分子遺伝学

遺伝子記号

染色体座

タンパク質名

GAA

17q25.2-q25.3

リソソームα-グルコシダーゼ

データは以下の標準的参考資料による: 遺伝子記号はHUGO、染色体座位、座位名、必須領域, 相補群は OMIM、タンパク質名はSwiss-Protから得た。

Table B. 糖原病II型(ポンぺ病)のOMIM登録

遺伝子記号

Entrez Gene

HGMD

GAA

2548 (MIM No. 606800)

GAA

上記のゲノムデータベースでの記載は、こちらをクリック.
: HGMDには登録が必要である.

正常なアレルの多変型: GAA遺伝子は約20kb長で20のエクソンを含む. 相補的DNAは3.6kb長以上でコーディング配列は2859ヌクレオチドである.この遺伝子には少なくとも47の多型があることが知られている.2つの多型(「正常」多型)により3つのアロ酵素(GAA1・GAA2・GAA4)が生じる.

病因性アレルの多変型: GAA遺伝子の150以上の変異がポンぺ病患者で同定されている. HGMD (要登録) およびポンぺ病データベースを参照のこと.
ナンセンス変異、長短双方の遺伝子再配列、スプライシング異常がある.多くの変異は家系、地理的地域、もしくは民族的背景に特異的である可能性がある.GAA酵素活性を完全に失わせる変異の組み合わせが乳児発症型患者ではより多くみられる.部分的に酵素活性を失わせる組み合わせは、遅発型に典型的にみられる.

正常遺伝子産物: GAA酵素はリソソーム酵素で、α-1,4- およびα-1,6-グルコシド結合を酸性pHで触媒する.糖鎖付加部位は7箇所ある.未成熟なタンパク質は952のアミノ酸を含み、糖化される前の推測重量は105kdである.成熟した酵素は76kdもしくは70kdの単量体として存在する.

異常な遺伝子産物: GAA 遺伝子変異はmRNAの不安定化および / もしくは著しい短縮酸性α-グルコシダーゼ、または活性が非常に低下した酵素を生じる.


関連情報

GeneReviews は読者に役立つ全国組織や情報センターに関する情報を提供する.GeneReviewsは他の組織によって提供される情報には責任を持たない. GeneReviewの関連情報の項の情報は初回投稿時の最新のものかGeneReview 更新時に最新のものである.本疾患を GeneTestsで検索してgraphic elementを選択すれば最新情報が得られる.---編集者注.

Acid Maltase Deficiency Association
Email: tianrama@aol.com
www.amda-pompe.org

Association for Glycogen Storage Disease
PO Box 896
Durant IA 52747
Phone: 563-785-6038
Email: maryc@agsdus.org
www.agsdus.org

National Library of Medicine Genetics Home Reference
Pompe disease

Muscular Dystrophy Association (MDA)
3300 East Sunrise Drive
Tucson AZ 85718-3208
Phone: 800-572-1717
Fax: 520-529-5300
Email: mda@mdausa.org
www.mdausa.org

Pompe Registry
Pompe Registry

関連文献

Medical Genetic Searches: PubMed Clinical Queriesの専門分野の医師向け検索

遺伝子診断に関する刊行物および政策

米国臨床遺伝学会「実践ガイドライン」(2006)ポンぺ病の診断および管理ガイドライン(pdf).


原文 Glycogen Storage Disease Type II (Pompe Disease)

印刷用ページ

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