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糖原病V型
(Glycogen Storage Disease Type V)

[Synonyms: Cori Disease, Debrancher Deficiency, Forbes Disease, GSDV]

Gene Reviews著者:Aditi I Dagli, MD, Christiaan P Sentner, MD, and David A Weinstein, MD, MMSc.
日本語訳者: 和田宏来 (県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)                 

Gene Reviews 最終更新日: 2016.12.29.日本語訳最終更新日: 2017.3.10

原文 Glycogen Storage Disease Type V


要約

疾患の特徴 

糖原病V型(GSDV)はさまざまな肝臓・心筋・骨格筋病変を特徴とする疾患である。

Va型はもっともよく認められる亜型で、約85%を占める。肝・筋病変を呈する。Vb型は肝病変のみで、V型全体の約15%を占める。

肝病変は、乳児期および小児期早期にケトン性低血糖、肝腫大、高脂血症、肝トランスアミナーゼ上昇で発症する。思春期や成人期には、肝疾患は目立たくなる。Va型患者の多くは通常小児期に肥大型心筋症を発症する。多くは無症状だが、重度の心機能障害、うっ血性心不全、(まれに)突然死と臨床的な重症度は多岐にわたる。筋力低下をきたす骨格筋のミオパチーは通常小児期には顕在化しないが、緩徐に進行し、典型的には20-30代に顕著となる。

診断・検査 

肝腫大、空腹時のケトン性低血糖、血清トランスアミナーゼおよび血清CKの上昇が糖原病V型で目立つ特徴である。診断時の精査では血清CKは上昇していない可能性があるが、乳酸アシドーシスの欠如やAST・ALTの著明な上昇が診断の手がかりとなる。グルカゴン投与後の空腹時血糖の測定により診断を支持する。血糖上昇を期待したグルカゴン投与は、長期絶食後の場合は行うべきではないが、絶食期間が2時間未満の場合は行うべきである。診断はAGL遺伝子の両アレル病原性変異の同定によって確定される。

臨床的マネジメント 

症候の治療:

血糖を正常に保つために高蛋白食および頻回食(3-4時間ごと)が乳児期の治療の中心である。果糖(フルクトース)やガラクトースを使用してもよい。特殊ミルクは必要ない。1歳に近づけば、低血糖の回避のためコーンスターチ1g/kgを1日1-3回使用してもよい。3g/kgの蛋白摂取が推奨される。コーンスターチや蛋白では一晩もたない場合は、徐放性コーンスターチであるGlycosade®を使用してもよい。肝移植は重度の肝硬変、肝機能障害、肝細胞癌の患者で施行される。肝移植でミオパチーや心筋症が悪化する可能性がある。

一次症状の予防:
「症候の治療」を参照。

二次合併症の予防:
外科手術を施行する患者に対しては低血糖予防に特別な注意を払う。

定期検査:
最適に近い代謝コントロールの期間を明らかにするために、午前2時〜4時の間の血糖、もしくは起床時の尿中ケトンを少なくとも1ヶ月に数回は測定するべきである。

1年に1回、身長と体重の測定、肝エコー、血液検査(肝機能、CK、脂質プロフィール)、心エコーを施行する。成長期を終えたら骨密度測定が推奨される。

避けるべき薬物や環境:
単糖類の過剰摂取、ステロイドベースの薬剤、成長ホルモン補充療法は避ける。ホルモン剤による避妊、高脂血症に対するスタチンの使用は慎重に行う。

リスクのある親族の検査:
リスクのある同胞で出生前診断を行うことにより、低血糖予防のため早期に食事療法を開始することができる。

妊娠管理:
妊娠期間中はグルコース必要量が増加するため、モニタリングや支援を増やす。

遺伝カウンセリング 

糖原病V型は常染色体劣性遺伝性疾患である。罹患者の同胞は、受胎時には25%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性キャリアであり、25%の確率で罹患者でもキャリアでもない。家族内で病原性変異が判明している場合、リスクのある家族に対する保因者診断やリスク妊娠に対する出生前検査を行うことは可能である。


診断

糖原病V型はさまざまな肝臓・心筋・骨格筋病変を特徴とする疾患である。

組織における不十分な酵素発現の違いに基づき、4つの亜型が知られている。

  • Va型(糖原病V型全体の〜85%) おそらく肝・筋両方における酵素欠損により、肝・筋病変を呈する。
  • Vb型(糖原病V型全体の〜15%) おそらく肝のみの酵素欠損により、肝病変のみを呈する。
  • Vc型(きわめてまれ) おそらくグルコシダーゼ脱分枝活性のみの欠損による。
  • Vd型(きわめてまれ) おそらくトランスフェラーゼ脱分枝活性のみの欠損による。

示唆される所見

以下に示すような糖原病Va型・Vb型の基本的な臨床的特徴や初期検査所見を認めた場合には、糖原病V型を疑うべきである

基本的な臨床的特徴

肝疾患

  • 乳児期や小児期早期における基本的な特徴は肝病変であり、ケトン性低血糖、肝腫大、高脂血症、トランスアミナーゼ上昇などを認める。肝腫大は乳児期早期に明らかとなり、初発症状のこともある。診察で肝臓は硬く著明に腫大していることがある。
  • 思春期や成人期には肝症状は目立たなくなるが、これはおそらく肝線維化の進行とグルコース必要量の減少による。しかし、少数の患者では肝硬変や肝細胞腺腫を認める。

ミオパチーによる筋力低下は緩徐に進行し、20-30代に顕著となる。

Va型患者の多くは通常小児期(まれには生後1年ほど)に肥大型心筋症を発症する。

骨格筋ミオパチーはないかあっても最小限である。臨床的な重症度には幅があり、ほとんどの者は無症状である。しかし、重篤な心機能障害、うっ血性心不全、(まれだが)突然死が報告されている。

初期検査所見

空腹時のケトン性低血糖が糖原病V型の主な特徴である。しかし、非ケトン性低血糖も報告されている。未治療では夜間絶食後のケトン濃度は0.5-1.5mmol/Lに達しうる。低血糖を予防できた場合にはみられなくなる。

血清濃度

ひとたび幼児が活動的になれば、クレアチンキナーゼ(CK)は上昇する。しかし、生後数年間にCKが正常だったとしても筋病変を除外することはできない。同様に、20歳までは臨床的にミオパチー/筋力低下を伴わない孤発性のCK上昇をよく認める。

  • 未治療では、トリグリセリド、コレステロール、トランスアミナーゼは上昇している。
     
  • 血清トリグリセリド濃度は200-500mg/dLで、ときに4000mg/dLまで上昇することが記述されている。治療により、トリグリセリドは正常化するが、最適に近い代謝コントロールを行ってもなお上昇を認めることもある。
  • V型は全ての糖原病のなかでトランスアミナーゼが最も高値を示す。AST・ALTは通常500U/Lより高く、しばしば1000U/Lを超える。
  • 尿酸および乳酸値は通常正常である。

診断の確定

血清トランスアミナーゼやCKの上昇を伴う肝腫大、ケトン性低血糖は糖原病V型の特徴である。
分子遺伝学的検査による両アレルAGL病原性変異の同定が診断確定のための次のステップとなる。

  • 単一遺伝子検査をまず行う(表1参照)。
  • AGLおよび関心領域の他遺伝子(「鑑別診断」を参照)を含む多遺伝子パネルも考慮することがある。注:(1)パネルに含まれる遺伝子や感度については検査施設や時期によって異なる。(2)パネルで用いられる方法には、シークエンス解析、欠失/重複解析、その他シークエンスによらない検査などがある。
    分子遺伝学的検査で診断を確定できない場合、肝もしくは筋の脱分枝酵素活性解析を考慮してもよい(「脱分枝酵素活性解析」を参照)。

表1 糖原病V型で用いられる分子遺伝学的検査の要約

遺伝子1 検査方法 この検査方法によって同定される変異2
を有する発端者の頻度
AGL シークエンス解析2 〜95%3
ターゲット遺伝子の欠失/重複解析4, 5 不明6
  1. 染色体座位と蛋白については、表A「遺伝子・データベース」を参照。
  2. 検出されるアレル変異に関する情報については,「分子遺伝学」の項を参照。
  3. シークエンス解析では、良性の変異、良性と考えられる変異、臨床的意義が不明の変異、病原性と考えられる変異、病原性変異が検出される。病原性変異には、小さな遺伝子内欠失・挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライス部位変異が含まれるが、典型的にはエクソンや遺伝子全体の欠失・重複は検出できない。シークエンス解析の結果の解釈について考慮すべき問題はこちらをクリック。
  4. Goldsteinら(2010)、Sentnerら(2016)。
  5. 標的遺伝子の欠失・重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出できる。検査方法には、定量PCR、ロングレンジPCR、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法、単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどがある。
  6. エクソン欠失や複雑な再構成が報告されている。

脱分枝酵素活性解析 脱分枝酵素はアミロ-1, 6-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.33)と4-アルファ-グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.25)の2つの活性部位を有する単一のポリペプチドである。糖原病V型の診断に肝/筋生検は必須ではなく、行われることもまれである。しかし、分子遺伝学的検査で診断を確定できない場合には、肝/筋生検で得た検体および比較用に対照群の脱分枝酵素活性を測定してもよい。

注:(1)米国では白血球の脱分枝酵素活性測定は行えない。(2)血清CK値が正常でも筋病変を除外できず、臨床的亜型分類を行うには遺伝子型−臨床型の関連性に関する情報は十分ではないため、Va型(肝・筋病変、V型全体の85%)とVb型(肝病変のみ、V型全体の15%)を鑑別するには筋生検による脱分枝酵素活性やグリコーゲン含有量の測定が考慮されることもある。


臨床的特徴

臨床像

糖原病V型(GSDV)はさまざまな肝臓・骨格筋・心筋病変を特徴とする疾患である。Va型(V型全体の〜85%)は肝・筋病変を呈し、Vb型(V型全体の〜15%)は肝病変のみで、典型的には小児期にトランスアミナーゼの著明な上昇や高トリグリセリド血症を伴う肝腫大、ケトン性低血糖で発症する。

肝疾患 発症様式には糖原病T型でみられるような重度の低血糖から無症候性の肝腫大まで含まれる。肝疾患は進行性で肝線維化に至り、一部の症例では肝硬変や肝細胞癌が認められる。

肝臓の組織像では、グリコーゲンによる肝細胞の著明な腫大を認める。線維性隔壁、門脈周囲の線維化はしばしば認められる。疾患の経過に伴って線維化は進行し、V型では他の糖原病よりも程度が強い(「鑑別診断」を参照)。

肝硬変に至った糖原病V型患者では、プロトロンビン時間の延長と血清アルブミンの低値が報告されている。

肝細胞腺腫は小さなコホートだが糖原病V型患者の25%に認められている。しかし、真の発生率はそれいよりも少ないと考えられている。より最近のSentnerら(2016)による報告によれば発生率は6.9%である。代謝コントロールと肝細胞腺腫の発生の関連性は明らかとなっていない。

糖原病V型では、肝硬変(肝細胞腺腫ではない)は肝細胞癌に至る。対して、糖原病T型では肝細胞癌は肝細胞腺腫が存在する場合に発生する。

ミオパチー は小児期には認められないかあっても最小限であり、緩徐に進行して20-30代に目立つようになる。近位筋が主に侵されるが、遠位筋(下腿三頭筋、腓骨筋、手を含む)病変も認められる。
血流の変化や神経の機能障害がそれぞれ運動不耐および筋力低下の一因となっている可能性がある。

心筋症 は肥大型心筋症のエコー像を呈し、Va型患者の多くに認められる。世界的な糖原病V型データベースに基づいた直近の報告によると、心病変はVa患者の58%にみられると報告されている。

心筋症は通常小児期に発症する。しかし、まれに生後1年以内に認められることが報告されている。重症度は一定ではなく、ほとんどの患者は無症状である。しかし、ときに重度の心機能障害、うっ血性心不全、突然死が報告されている。

代謝コントロールが不良の場合、成長に障害をきたすことがある。代謝コントロールが良好になれば成長のキャッチアップを認めることがある。

他の糖原病のようにV型でも骨粗鬆症や骨減少症が報告されている。Mundyら(2008)は骨粗鬆症の原因はおそらく多因子性で、筋力低下、代謝環境の異常、最善には及ばない栄養状態の関与を示唆している。Melisら(2016)も、原因は多因子性で、慢性的な高脂血症や血清IGF-1/インスリン/オステオカルシンの低値による代謝バランスの異常によるという仮説を唱えている。

糖原病V型で多嚢胞性卵巣を認めることがある。妊孕性は侵されないようである。

遺伝子型と臨床型の関連

少なくともエクソン3における2つの病原性変異(c17_18delAGおよびc.16C>T)と糖原病Vb型の間において、明らかな遺伝子型−臨床型の関連性はない。しかし、エクソン3の病原性変異を有する患者の筋組織において、どのような機序で脱分枝酵素活性が保たれるのかは不明である。Goldsteinら(2010)によれば、下流のスタートコドンを用いることでエクソン3の病原性変異をバイパスし、完全に機能するアイソフォームが形成されるためと説明されている。

他のAGL病原性変異と疾患重症度の間における遺伝子型−臨床型の関連性は報告されていない。家族内においてでさえ均一ではないことが報告されている。

命名

GB Forbes医師の患者において、IllingworthとCoriにより短い外鎖を伴う異常なグリコーゲンが初めて見出された。したがって、糖原病V型は限界デキストリン症、コリ病(Cori disease)、フォーブス病(Forbes disease)としても知られている。

発生率

糖原病V型はまれであり、発生率は100,000人に1人である。

ある民族では創始者効果により発生率が高い。

  • ヌナビク(カナダ)のイヌイット(〜2,500人に1人)
  • フェロー諸島民(3,100人に1人)
  • イスラエルの北アフリカ系ユダヤ人(5,400人に1人)

遺伝学的関連(アレル)疾患

このGeneReviewで述べた以外のAGL病原性変異と関連がある他の臨床型は知られていない。


鑑別診断

糖原病V型と他の糖原病を鑑別するのに有用な所見には以下がある。

  • 小児期における低血糖や肝腫大の既往。
  • 若年小児の肝グリコーゲン蓄積病における血清CK濃度の上昇。
  • 治療開始前にしばしば1000倍近くの血清トランスアミナーゼ上昇を認める場合。他の糖原病ではそこまでのAST・ALT上昇は認められない。
  • 肝組織像。糖原病V型では経過とともに線維化は進行し、典型的には他の糖原病よりも程度が強い。線維化は糖原病T型の特徴ではない。脂肪変性はT型でみられるより少ない。線維化はW型でも認めうる。また、\型では線維化はより目立たない。

糖原病T型GSDT)はG6PC変異(Ta型)もしくはSLC37A4(Tb型)の変異によって起こる常染色体劣性遺伝性疾患である。V型は乳児期にはT型と区別できない可能性がある。しかし、いくつかの重要な相違点により2つを鑑別できるかもしれない。

  • 糖原病V型ではT型でみられるような尿酸や乳酸値の上昇は通常みられない。
  • T型とは対照的に、V型ではケトン性低血糖を認め、未治療患者の早朝尿ではケトン体は著明に上昇している。
  • 低血糖および低トリグリセリド血症はV型よりもT型の方がより重度である。

糖原病Y型(GSDY)および糖原病\型(GSD\)はそれぞれ肝グリコーゲンホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼの欠損によって起こる。ホスホリラーゼキナーゼは、グリコーゲン鎖から末端のグルコースを切断する肝グリコーゲンホスホリラーゼの活性化を司る。糖原病Y型と\型を臨床的に区別することはできない。患者はケトン性低血糖と肝腫大を呈する。血清CKは上昇せず、AST・ALTは通常V型ほどは上昇しない。

Y型はPYGL変異によって起こる常染色体劣性遺伝性疾患である。

\型はホスホリラーゼキナーゼをコードする遺伝子の変異によって起こる、X連鎖性もしくは常染色体劣性遺伝性疾患である。

他の筋型糖原病 にはX型やZ型があり、成人期に筋力低下や横紋筋融解症を呈する。


臨床的マネジメント

初期診断後の評価

糖原病V型と診断された患者の疾患の広がりとニーズを把握するため、以下が推奨される。

  • 肝臓のサイズや肝細胞腺腫の有無をみるため肝臓エコー
  • ベースラインの心電図および心エコー
  • 遺伝専門医(biochemical geneticist)への診療依頼

病変に対する治療

糖原病V型の治療の中心は、血糖を正常に保つためのコーンスターチと高蛋白食である。
乳児期には、3-4時間おきの食事が推奨される。糖原病T型の乳児で与えられるような食事とは異なり、V型では利用できるのであれば果糖やガラクトースを含んでいてもよい。特殊ミルクは必要ない。

1歳に近づくにつれコーンスターチを摂取できるようになり、低血糖予防のため用いることができる。最初は1日1-3回を必要とし、典型的には6時間おきに1g/kgで開始する。用量は血糖やケトン体の測定結果に基づいて増量してよい。
糖新生は保たれており、蛋白はグルコースの材料として用いることができるため、3g/kgの蛋白摂取が推奨される。コーンスターチや蛋白では一晩もたない場合、徐放性コーンスターチであるGlycosade®を使用してもよい。

高蛋白食はグルコースの需要に伴った内因性筋蛋白の分解を防止し、骨格筋や心筋を維持する。

月に数回の血糖・血中ケトン測定によって、最適に近い代謝コントロールの期間を見極めることができる。

  • 拮抗調節(counter-regulation)によって血糖は上昇しうるため年長児や成人では起床時の低血糖はまれであるが、午前2時〜4時の間に血糖を測定することで最適に近いコントロールを実現できる。
  • グルコースが利用できず代わりのエネルギー源として脂肪酸の酸化が行われる場合にケトンは産生されるため、ケトンの上昇は代謝コントロールの不良を反映する。少なくとも月に数回、携帯型血中ケトン測定器を用いて起床時の血中ケトンを測定することが推奨される。目標は血中β-ヒドロキシ酪酸濃度を正常範囲(<0.3mmol/L)に維持することである。くわえて、通常の試験紙法を用いた早朝尿ケトン測定により、夜間の代謝コントロールの概容を知ることができる。

ミオパチーや心筋症は高蛋白食および過剰な炭水化物摂取を避けることで改善することができる。
コレステロールやトリグリセリド上昇に対してまず行う治療は、最適に近い代謝コントロールを得るように食事中の蛋白やコーンスターチの量の調整することである。

救急プロトコール 危険な低血糖を回避するための救急プロトコールを確立すべきである。救急処置室に入室したらすみやかに10%デキストロースと1/2生食を維持量の1.5倍静注すべきである。血清電解質、グルコース、ケトン体をモニターするべきである。嘔吐や異化状態を悪化させうるケトーシスは是正するように努力するべきである。

肝移植 糖原病V型では、肝合併症は予後を左右する主な原因とならない。また、現代の治療戦略や良好な代謝コントロールで主な合併症を防ぐことができる。それゆえ、肝移植は糖原病V型患者にとって最後に残された治療法とみなすべきである。肝移植にてVa型およびVb型双方で低血糖を防ぐことができる。しかし、Va型患者では筋障害は残存する。

肝移植では心臓や骨格筋の問題は解決せず、移植はミオパチーや心筋症の悪化と関連するため、肝移植は重度の肝硬変、肝機能障害、肝細胞癌の患者でのみ適応となる。

一次病変に対する予防

糖原病V型の一次病変のほとんどは良好な代謝(食事)コントロールで軽快もしくは回避することができる。
正常血糖が維持されケトーシスが回避された場合、肝腫大は縮小し、他の検査値異常(AST・ALT上昇、血清トリグリセリド上昇など)は正常化するかベースラインに近づく。

ミオパチーと心筋症は良好な食事コントロールによって部分的に回避することができる。最新のエビデンスによれば、糖原病V型患者では運動中に骨格筋の代謝が障害されることが示唆されている。運動前に果糖もしくはショ糖を摂取することで運動耐容能が改善する可能性もあるが、運動で誘発されるダメージを完全に防ぐことはできない。

二次合併症の予防

手術 手術を施行する糖原病V型患者は前夜に入院し、最後のコーンスターチもしくは食事の2時間以内から10%デキストロースを含む点滴を開始するべきである。血糖と血中ケトン体の測定を夜間および手術中は継続するべきである。高インスリン状態による危険な低血糖が起こりうるため、デキストロースの静注は突然中止するべきではない。経口摂取が十分できるようになったら、静注は緩徐に漸減する必要がある。

骨粗鬆症は成人糖原病V型患者でみられることがある。良好な代謝コントロールにより筋力やケトーシスは改善する。骨の石灰化は酸性環境下では障害される。対して、筋の状態や筋力の改善は骨の石灰化を促進する。骨の石灰化を促すためビタミンDやカルシウムの補給も推奨される。

定期検査

最適に近い代謝コントロールの期間を明らかにするために、午前2時〜4時の間の血糖、もしくは起床時の尿中ケトンを少なくとも1ヶ月に数回は測定するべきである。

  • 拮抗調節によって血糖は上昇しうるため、年長児や成人患者で起床時に低血糖を認めることはまれである。しかし、午前2時〜4時に血糖を測定することで最適に近いコントロールを実現できる。
  • 携帯型血中ケトン測定器を用いて、少なくとも1ヶ月に数回は起床時の血中ケトン体を計測することが推奨される。目標は血中β-ヒドロキシ酪酸濃度を0.3mmol/L未満に保つことである。代わりになる方法としては、通常の試験紙法を用いた早朝尿ケトン測定により、夜間の代謝コントロールの概容を知ることができる。

以下を1年に1回施行することがのぞましい。

  • 成長をモニターするため身長および体重の測定。
  • 肝細胞腺腫や肝瘢痕化のスクリーニングのため肝臓エコー。MRI検査はエコーで異常を認めた患者に限られる。
  • 血液検査:肝機能、CK、脂質プロフィール。
  • 心筋症のモニターのため心エコー、心電図。
    成長期が終了したら骨密度測定が推奨される。

避けるべき薬物や環境

以下は避ける。

  • 糖類の過剰摂取。分解することのできないグリコーゲンとして蓄積されるため。
  • グルコースの代謝や利用に影響を及ぼすステロイドベースの薬剤。長期的なステロイドの使用自体が筋力低下を起こしうる。
  • 成長ホルモン補充療法。グルコースの代謝に影響を及ぼし、ケトーシスを悪化させ、理論的には肝細胞腺腫を発生させかねないためである。
    以下は慎重に行う。
  • 女性ではホルモン剤による避妊。肝細胞腺腫を発生させうるため。
  • 高脂血症に対するスタチン。糖原病Va型患者の筋疾患を増悪させる可能性があるため、スタチンを使用する場合はCKのモニタリングが必要である。
  • β遮断薬。低血糖を起こしうるため。

リスクのある親族の検査

リスクのある同胞で出生前診断を行うことにより、低血糖予防のため早期に食事療法を開始することができる。

  • 家族内のAGL病原性変異が既知であるならば、分子遺伝学的検査はリスクのある同胞の遺伝学的状況を知るための最も良い方法である。
  • 家族内のAGL病原性変異が不明であるならば、空腹時のケトン性低血糖の存在で診断してもよい。
    遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

妊娠管理

妊娠期間中はグルコース必要量が増加するため、モニタリングや支援を増やす。代謝要求量(metabolic requirement)は第2三半期・第3三半期で次第に増加し、血糖およびケトン体の緊密なモニタリングが最適な代謝コントロールのためには重要である。ケトーシスは子宮収縮や早産を起こしうるため、第3三半期および予定日に近づいたらケトン体を正常範囲内に維持することが必要不可欠である。分娩時や出産後は、低血糖を防ぐためいつでもグルコース静注を行えるようにしなければならない。

研究中の治療法

さまざまな疾患に関する臨床試験に関する情報はClinicalTrials.govを参照のこと。注:この疾患における臨床試験は行われていない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

糖原病V型は常染色体劣性遺伝性疾患である。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 小児患者の両親は必然的にヘテロ接合保因者である(すなわちAGL病原性変異のキャリア)。
  • ヘテロ接合体(キャリア)は無症状であり、発症リスクはない。

発端者の同胞 

  • 罹患者の同胞は、受胎時には25%の確率で罹患者であり、50%の確率で無症候性キャリアであり、25%の確率で罹患者でもキャリアでもない。
  • ヘテロ接合体(キャリア)は無症状であり、発症リスクはない。

発端者の子

  • 糖原病V型患者の子どもは必然的にAGL病原性変異のヘテロ接合体(キャリア)である。
  • 患者のパートナーがキャリアである場合、子どもが罹患するリスクは50%である。

発端者の他の家族

  • 発端者の両親の同胞がAGL病原性変異のキャリアであるリスクは50%である。

保因者診断

リスクのある親族の保因者診断を行う前に、家族内のAGL病原性変異の同定が必要である。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断・治療を目的としたリスクのある親族の検査についての情報は、「臨床的マネジメント」「リスクのある親族の検査」を参照のこと。

家族計画

  • 遺伝学的リスク評価、保因者診断、および出生前診断の可否などについての議論の最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患者、キャリア、キャリアのリスクがある若年成人に対して遺伝カウンセリング(潜在的な子どもへのリスクや出産方法の選択肢に関する話し合いなど)を申し出ることがのぞましい。

DNAバンクは(主に白血球から調整した)DNAを将来利用することを想定して保存しておくものである。検査技術や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来さらに進歩すると考えられるので、DNA保存が考慮される。

出生前診断および着床前診断

ひとたび家族内でAGL病原性変異が同定された場合、リスク妊娠に対する出生前検査や着床診断を行うことは可能である。
特に早期診断ではなく妊娠中絶を考慮した検査である場合に、医療従事者や家族の間でも出生前検査に関して視点の違いが存在する可能性がある。ほとんどの施設において、出生前診断に関する決定は両親の選択によると考えるが、これらの問題に関して話し合うことがのぞましい。


更新履歴

  1. Gene Reviews著者:Aditi I Dagli, MD, Christiaan P Sentner, MD, and David A Weinstein, MD, MMSc.
    日本語訳者: 和田宏来 (県西総合病院小児科/筑波大学大学院小児科)  
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原文 Glycogen Storage Disease Type V

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