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遺伝性出血性末梢血管拡張症
(Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia)

[Synonyms: HHT, Osler-Weber-Rendu Disease]

GeneReviews著者: Jamie McDonald, MS, CGC and Reed E Pyeritz, MD, PhD, FACMG.
日本語訳者:塩谷隆信(秋田大学名誉教授)

GeneReviews最終更新日: 2017.2.7. 日本語訳最終更新日: 2021.7.26.

原文 Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia


要約

疾患の特徴 

遺伝性出血性末梢血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)は,毛細血管の介在がなく,結果的に動脈と静脈が直接結合する,多発性動静脈奇形(AVMs)の存在を特徴とする.最も多くみられる臨床所見は,平均12歳で発症する自然に繰り返す鼻出血である.小さな動静脈奇形(末梢血管拡張症)は,口唇,舌,頬粘膜,顔面,胸部,指に顕著に出現する.発症の平均年齢は,通常鼻出血より遅れ,小児期である.大きな動静脈奇形は,脳,肝臓,肺に出現するとしばしば症状を惹起し,出血やシャントなどの合併症は突然に出現し重篤となることがある.HHT患者の約25%は消化管出血をきたし,これは通常50歳を過ぎてから始まる.

診断・検査 

HHTの診断は,臨床的特徴である鼻出血,皮膚あるいは粘膜の末梢血管拡張症,内臓動静脈奇形と家族歴の存在のうち3つ以上を有する発端者で診断される.もし臨床所見で結論できない場合は,ENGACVRL1SMAD4そして GDF2のヘテロ接合性病原性バリアント(heterozygous pathologic variant)の同定で診断が確立する.

臨床的マネジメント 

症候に対する治療
鼻出血は加湿,鼻潤滑剤,止血製品,レーザー焼灼,硬化療法,鼻腔閉鎖,内服あるいは局所の止血剤により治療される.消化管出血は,鉄補充療法により治療され,必要であれば内視鏡焼灼,出血部位の外科的切除,または内科的治療が行われる.直径が1mm以上の流入動脈をもつ肺動静脈奇形は,塞栓術が考慮される.脳動静脈奇形は,位置あるいは症状により,外科手術,塞栓術,定位固定放射線手術療法により治療される.症状のある肝動静脈奇形患者は内科的に管理され,肝移植は内科的治療でコントロールできず肝不全となった患者に対して推奨される.妊娠の可能性のある女性HHT患者は肺および脳動静脈奇形のスクリーニングと治療が行なわれ,妊娠中に発見された肺動静脈奇形は,妊娠第Ⅱ期に治療される.貧血に対しては鉄剤が投与され,症状がでるほどの貧血に対しては数単位の輸血が必要になることもある.

二次的合併症の予防
肺動静脈奇形が存在するか疑われる場合,歯科や侵襲的処置に対する予防的抗菌薬の投与,誤って注入された気泡を予防するための静脈ラインへのフィルターが推奨される.

監視:1年毎の貧血の評価;
小児期の1-2年毎の臥位と座位のパルスオキシメータによる評価;10歳まで5年毎のコントラスト心エコーによる肺動静脈奇形の評価;幼児期の頭部MRIとその後思春期以降脳MRIによる脳動静脈奇形の再評価;若年性ポリープを有する人では定期的な胃腸のポリープと悪性変化のスクリーニング.

回避すべき薬剤や環境
勢いよく鼻をかむこと;重いものを持ち上げること;排便時力むこと;鼻出血に対する電気的あるいは化学的焼灼時;鼻出血あるいは消化管出血のある患者に対する抗凝固薬あるは抗炎症薬(アスピリンを含む);スキューバダイビング(過去5年以内にコントラスト心エコーで右左シャントが否定された場合を除く):肝生検.

リスクのある親族の評価:
もし家系に遺伝的病原性バリアントが証明された場合,分子遺伝学的検査がリスクのある家族のメンバーに提供される.

遺伝カウンセリング 

HHTは常染色体優性形式をとるが浸透率は家系ごとにかなり異なる.殆どの患者は両親のどちらかが罹患している.発端者の子そして血縁者は50%の確率で病原性変異を継承する.家系内の遺伝子変異が同定されている場合には,出生前検査が可能である.


診断

示唆する臨床診断

遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)は以下の特徴のいくつかがみられる個人で考慮される.

動静脈奇形は毛細血管が欠如し,動脈と静脈が直接結合する.動静脈奇形は以下の臓器に出現する可能性がある.動静脈奇形は肺,脳,肝,脊髄,胃腸,膵臓に起きうる.

診断の確立

出版されコンセンサスの得られた診断基準によると,HHTは上記のうち3つ以上の所見がある場合に「確実」と診断される.2つの所見が存在する場合に「疑い」と診断される[Shovlin et al, 2000].もし臨床所見で結論できなくても,表1に掲載されたヘテロ接合性病原性変異のうち1つが同定されれば診断が確立する.

:臨床診断規準は,主として成人を対象としているため,小児に適応すると診断を誤る可能性がある.HHTの症状や徴候は,一般的に小児期から青春期にかけて発現するので,鼻出血,末梢血管拡張あるいは固形臓器の動静脈奇形の症状がHHTに罹患している小児にみられないことがよくある(リスクのある同胞の評価を参照).
 

 分子遺伝学的検査が考慮される.ACVRLENDのシークエンス解析が最初に行われるシリアル単一遺伝子検査マルチ遺伝子パネル検査,さらに包括的遺伝 学的検査がある. シリアル単一遺伝子検査が考慮される.ACVRLENDのシークエンス解析が最初に行われる.もし病的変異がみつからない場合にはACVRLENDの欠失/重複解析が行われる.

表1遺伝性出血性末梢血管拡張症に使われる分子遺伝学的検査

遺伝子 1 病原性変異のHHT全体に占める割合 各方法により病原性変異2のHHT全体に占める割合
シークエンス解析3 遺伝子特異的欠損/重複解析 4
ACVRL 25%-57% 5, 6 90% 6 10% 7
ENG 39%-59% 5, 6 90% 6 10% 7
GDF2 3 individuals 8 100% Unknown 9
SMAD4 1%-2% 6, 10 >99% 6 Unknown 9
Unknown 11, 12 NA NA
  1. See Table A. Genes and Databases for chromosome locus and protein.
  2. See Molecular Genetics for information on allelic variants detected in this gene.
  3. Sequence analysis detects variants that are benign, likely benign, of uncertain significance, likely pathogenic, or pathogenic. Variants may include small intragenic deletions/insertions and missensenonsense, and splice site variants; typically, exon or whole-gene deletions/duplications are not detected. For issues to consider in interpretation of sequence analysis results, click here.
  4. Gene-targeted deletion/duplication analysis detects intragenic deletions or duplications. Methods used may include quantitative PCR, long-range PCR, multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA), and a gene-targeted microarray designed to detect single-exon deletions or duplications
  5. There is a slight preponderance of ENG pathogenic variants in North America (~50%) and in northern Europe [Brusgaard et al 2004Letteboer et al 2005Schulte et al 2005Bossler et al 2006Prigoda et al 2006Gedge et al 2007] compared to ACVRL1 pathogenic variants (~35%), and a greater preponderance of ACVRL1 pathogenic variants in southern Europe [Lenato et al 2006Lesca et al 2006Olivieri et al 2007].
  6. Sequence analysis of ACVRL1, ENG, and SMAD4 identifies pathogenic variants in approximately 75% of individuals with HHT [Bossler et al 2006Prigoda et al 2006Gedge et al 2007Richards-Yutz et al 2010]. There are no common pathogenic variants, and sequence variants interpreted to be of uncertain significance are particularly common
  7. The use of deletion/duplication analysis in addition to sequence analysis increases the detection rate by approximately 10% for ACVRL1- and ENG-related HHT [Bossler et al 2006Prigoda et al 2006McDonald et al 2011b].
  8. Pathogenic variants in GDF2 were identified in three individuals with features of HHT [Wooderchak-Donahue et al 2013].
  9. No data on detection rate of gene-targeted deletion/duplication analysis are available; however, one large deletion has been associated with juvenile polyposis and HHT [Wain et al 2014].
  10. Approximately 10% of those who test negative for a pathogenic variant in ACVRL1 and ENG [Gallione et al 2006Lesca et al 2006Prigoda et al 2006]
  11. One individual with signs of HHT and prominent pulmonary hypertension had a pathogenic variant in BMPR2 [Rigelsky et al 2008].
  12. Linkage analysis in one pedigree suggests a 5.4-cm disease gene interval on chromosome 5 (HHT3) [Cole et al 2005]. Linkage analysis in another pedigree suggests a disease gene in a 7-Mb region on the short arm of chromosome 7 (7p14) (HHT4) [Bayrak-Toydemir et al 2006a]. Rare pedigrees are not linked to any of these loci, suggesting additional heterogeneity.

臨床的特徴

臨床的記述

遺伝性出血性末梢血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia; HHT)は,毛細血管の介在がなく,結果的に動脈と静脈が直接結合する,多発性動静脈奇形(AVMs)の存在を特徴とする.小さな動静脈奇形は末梢血管拡張症と呼ばれる.動静脈奇形という用語は通常直径数mmより大きな「大」血管拡張を意味し,時に数cmまで達する.HHTを有する患者にもっとも特徴的な特徴で医学的に注目されるのは鼻出血(nosebleeds)である.

鼻出血 鼻腔粘膜は脆弱なため,乾いた空気や繰り返す擦り傷のような小さな刺激により頻回に出血する.鼻出血は,平均約12歳で発症する[Aassar et al 1991].95%の罹患患者は結果的に反復性鼻出血を経験し,10歳までに1/3が発症し,20歳までに約80%,30歳前には90%が発症する[Berg et al 2003].しかし,頻回あるいは貧血をきたし内科的治療や医療相談をするような鼻出血患者は多くはない.一方,鼻出血は,輸血が行なわれるようになるまでは,HHTにおける通常の死因であった.

末梢血管拡張症は,口唇,舌,頬粘膜,顔面,胸部および手指に最も顕著である.発症年齢は通常鼻出血よりも遅いが子供時代になる;30%の患者は20歳前に末梢血管拡張症が最初に出現し,2/3では40歳前に出現する[Berg et al 2003].これらは,帽針頭大かそれよりも大きく,多発する流出静脈を伴う隆起した病変として出現する.すべての末梢血管拡張症は,静かに圧を加えたときに白くなりすぐに戻ることで,点状出血あるいは血管腫とは明確に区別できる.これらの壁が薄いこと,細く曲がっていること,皮膚表面の近位部にあることから,末梢血管拡張症は破裂し,わずかな外傷により出血する.血管壁内に弾性線維がなく,異常な動脈結合であることから,末梢血管拡張症からの出血は頻回に起こり,そして止血しにくい.皮膚の末梢血管拡張症は鼻粘膜のものより明らかに出血しにくい.

末梢血管拡張症は,成人期に消化管(GI)粘膜に通常みられ,胃粘膜,小腸(十二指腸)の近位部が最も罹患する.HHT患者の約1/4で結果的に消化管末梢血管拡張症からの出血がみられる.これらは50歳を過ぎてから始まり,ゆっくりではあるが持続的であり;しかし年齢とともに重症になっていく[Plauchu et al 1989 Kjeldsen & Kjeldsen et al 2000].これらは急性消化管出血よりは鉄欠乏性貧血を呈するが;しかし消化管出血はHHT患者の鉄欠乏性貧血の原因としては過小評価されている鼻出血よりも一般的ではない.

動静脈奇形.動静脈奇形は通常,脳,肺そして肝臓に出現する.出血は脳動静脈奇形で症状が出現するが,内臓の動静脈奇形は,毛細血管床をバイパスする異常血管による血液のシャントによる結果の症状を呈する.

肺動静脈奇形はHHT罹患者の約30-50%に発生し[McDonald et al 2011a],時間経過とともに発達するが,30歳を過ぎてからは稀である.直径3.0mm以上の輸入血管をもつ肺動静脈奇形を有する患者では,空気,血栓,細菌のシャントは肺動静脈奇形を通して(肺のフィルター毛細血管をバイパスして),一過性脳虚血(TIA),塞栓性卒中,脳膿瘍が生じる[White et al 1996].このような神経学的合併症は,孤立した肺動静脈奇形でほぼ正常の動脈血酸素分圧でも起こることがある.肺動静脈奇形はしばしば年齢とともに大きくなる[White et al 1996].肺動静脈奇形を有する小児42例の研究では,小児はこれらの病変により生命をおびやかすような合併症が生じると報告している.半分以上の症例で運動耐容能の低下,チアノーゼ,バチ状指がみられ,成人に比べ神経系合併症の頻度は少ないが,発見し治療する前には19%に出現すると報告している[Faughnan et al 2004].偏頭痛と多血症は肺動静脈奇形の他の合併症である.時に,肺動静脈奇形は破裂し喀血を呈する.

HHT罹患者の肝臓をCTにより系統的に画像診断したある報告によれば,肝臓血管異常の頻度は74%であり[Ianora et al 2004],そして超音波検査による他の検討では41%であった[Buscarini et al 2004a].しかし,症状があるのは少数(CT検査では8%)であった.肝動静脈奇形は高拍出性心不全,門脈圧亢進症,胆道疾患を生じることがある[Garcia-Tsao et al 2000].また,肝限局性結節性過形成は,これらの高流速血管病変によるシャント効果に合併する[Buscarini et al 2004b, Brenand et al 2010].

脳においては,動静脈奇形は出生後に典型的に存在する.脳動静脈奇形はHHT患者の約10%に生じる[McDonald et al 2011a].

脊髄動静脈奇形は非常にまれであるが,麻痺が生じることがある.

膵臓の血管病変は普通にあるが,臨床的な問題になることはない[Lacout et al 2010].

貧血.鼻出血は,消化管出血はそれほど多くないが,軽度から重度の貧血を惹起し,しばしば鉄剤の補充療法が必要になり,非常に稀ではあるが輸血を必要とすることもある.中年では,消化管出血が貧血と鉄補充の重要な寄与因子となる.

肺高血圧症は,肺高血圧症は,HHTの肺血管病変のもうひとつの徴候である.肺動静脈奇形よりも頻度はずっと少ないが,肝臓における体動静脈シャントによる心拍出量の増加により,臨床的そして組織学的に肺高血圧症は,HHTの肺血管病変のもうひとつの徴候である.肺動静脈奇形よりも頻度はずっと少ないが,肝臓における体動静脈シャントによる心拍出量の増加により,臨床的そして組織学的に特発性肺動脈性肺高血圧症と鑑別できないこともある[Cottin et al 2007, Girerd et al 2010, Austin et al 2013](肺動脈性肺高血圧の項を参照).

遺伝子と臨床型の関連

肺動静脈奇形はENDの病原性変異を持つ患者患者により多く.肝動静脈奇形はACVL1の病原性変異を持つ患者患者により多い.しかし,両方のタイプは明らかに両者に記載される症候をもつ多系統血管異形成である[Kjeldsen et al 2005, Bayrak-Toydemir et al 2006b, Letteboer et al 2006, Lesca et al 2007].

重度の血管シャントがない肺高血圧症は,稀なHHTの症候で,ACVL1病原性変異を有する患者により多く生じるが,END病原性変異を有する患者にも生じる[Soubrier et al 2013].

SMAD4病原性変異は,若年性ポリープ症候群(JPS)あるいはHHTだけを有する家系だけでなくJPSとHHTが合併した症候群を有する家系で報告されている[Gallione et al 2004].最近の研究では,若年性ポリープ(JP)だけを示すSMAD4病原性変異を大部分では,兆候を再度よく検査するとHHTの特徴を有していることが報告されている[O’Mally et al 2004].

遺伝子型と表現型の相関関係

データは,特異的病原性変異と臨床的表現型の間には絶対的な遺伝子型表現型の相関関係はないことを示唆している[McDonald et al 2016].

浸透率 

HHTは,生涯にわたり徴候が増加し,年齢と関連して症状が増加する浸透率を示す.

表現促進現象

家族内の変異の差はかなり大きいが,表現促進現象を示唆するような全身の一般的進行はみられない.

命名

本症候群は1864年Suttonによって始めて記載された.しかし,米国のOsler,英国のParks Weber,フランスのRenduが主として本疾患を確立したので,以後,名祖としてOsler-Weber-Rendu syndrome(フランスの文献ではRendu-Osler-Weber)とよばれる. “herediatary hemorrhagic telangiectasia”という名称は,1912年オスラーの生徒の一人により提唱された.

ACVRL1と同定された遺伝子は,多くの出版物においてはALK1と呼ばれている.注釈: その他の遺伝子も以前はALK1と呼ばれていた.

有病率

多くの研究により,HHTは,少なくても調査された集団からは,従来考えているよりも頻度が多いと報告されている.北米におけるHHTの全頻度は1:10,000と推計されているが[Marchuk et al 1998],しかし,この数値は過小評価されている可能性がある[Guttmacher et al 2013].例えば,発端者が診断された場合,家系の中の親戚が鼻出血,脳塞栓症,消化管出血があるにも関わらずHHTではないと診断されることが稀ではない.

HHTは人種的,地域的に広く発症する.HHTは,創始者効果により,オランダのアンティル諸島において特にその頻度が高い.


遺伝学的に関連する(対立遺伝子性)疾患

ACVRL1. ACVRL1の病原性変異は肺動脈性肺高血圧症な原因としては稀である[Austin et al 2017].

ENG:  ENGの病原性変異に合併する表現型はこのGeneReviewで討論されている以外は知られていない.

GDF2.GDF2の病原性変異に合併する表現型はこのGeneReviewで討論されている以外は知られていない.

SMAD4: SMAD4の病原性変異はJPSとHHTの合併症候群の家系で報告されており[Gallione et al 2004],同様にJPSとHHTそれぞれ単独の家系においても報告されている[Howe et al 2004, Gallione et al 2006, Prigoda et al 2006, Gallione et al 2010].ENGACVRL1の病原性変異が同定されないHHTのDNA検査に紹介された30人中3人にSMAD4の病原性変異が見つかったとの報告がひとつある[Gallione et al 2006].他の研究では,HHTのDNA検査に紹介された194人中2%にSMAD4の病原性変異がみられた[Prigoda et al 2006].SMAD4の病原性変異がみられHHTだけの症状を発現する人の割合については不明であるが,SMAD4のすべての病原性変異は,個人や家族にJPSとHHT双方が発現するリスクを生じさせることが推測されている[Gallione et al 2010].これまでの報告では,SMAD4の病原性変異を持つ大多数において,JPSだけが表現性の差異,HHTの年齢と関連した浸透性,HHTの表現型には重要でない臨床的な評価に寄与しているとしている[O’Malley et al 2012].

鑑別診断

末梢血管拡張症と鼻出血は,健常者においても比較的普通にみられる.

反復性鼻出血はフォン・ウィルブラント病を含む種々の出血性疾患のひとつの徴候である.

末梢血管拡張症は多くの状況で出現する.

加えて,成人では年齢とともにひとつあるいは皮膚末梢血管拡張が発達する.これらは,しばしば,HHTとは関連しない老人でしばしばみられる多発性老人性血管腫を有する人で注目される.

肺動静脈奇形.肺動静脈奇形を合併する多くの患者はHHTを有する;しかし,頻度は不明であるがHHTに合併しない孤立性肺動静脈奇形の患者もいる.

脳動静脈奇形は,ほとんど単独の所見として生じるが,HHTの徴候のひとつである場合や,あるいはRASA1病原性遺伝子変異により生じる他の優性遺伝性血管形成不全症である毛細血管奇形—動静脈奇形(CM-AVM)である場合がある[Eerola et al 2003,Ravenchu et al 2013b].HHTの他の徴候がなく優性遺伝性脳動静脈奇形を有する家系が報告されている.しかし,多発性脳動静脈奇形の存在はHHTを強く疑わせる[Bharatha et al 2012].反復性鼻出血の家族歴がなく,特に口唇,顔面,手の末梢血管拡張症があることが,HHTと他の血管形成不全との一番の鑑別点である.


臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行なう評価

遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)患者の病変の広がりと必要性を確立するために,以下の評価を行うことが推奨される[Faughnan et al 2011, McDonald et al 2011a]:

注;無症状の患者において肝動静脈奇形のスクリーニングは以下の理由で通常行われない,なぜなら,

症状に対する治療

鼻出血

鼻出血が貧血の原因となる場合,あるいは鼻出血の回数が頻回,期間が長く日常生活が制限される場合に治療を考慮することは適切である.

加湿あるいは毎日の鼻潤滑剤が役立つことがある.

止血用具(ガーゼ,スポンジ,粉末製剤)が自分自身で鼻出血を十分にマネジメントできるように薬局で購入できる.

全身麻酔下での典型的なレーザー焼灼は,軽度から中等度の鼻出血に対しては最も効果的な治療法である.診療所での硬化術がスペインのコントロールのない研究[Morais et al 2012]と米国の後方視的な小研究[Boyeret al 2011]で安全で有用な代替治療法である可能性が報告されている.

上記の治療で効果がみられない重度の鼻出血に対して,ヤングの鼻腔閉鎖術が考慮される[Richer et al 2012].HHT患者における重度の鼻出血に対する外科治療は,定期的にHHT患者を治療している外科医により実施されるべきである.

経口薬治療.メタ解析によると,経口避妊療法に用いられる用量のエストロジェンープロジェステロン療法を含むホルモンあるいは抗ホルモン療法は,症状のあるHHTにおいて出血を軽減し,妊娠の可能性のある女性に対しては最初の治療選択として妥当であると結論している[Jameson & Cave 2004].抗エストロゲン薬,タモキシフェンは一つの研究[Yaniv et al 2009]で鼻出血を軽減すると報告されている.トラネキサム酸(Cyklokapron )などの抗線溶療法薬は,特定の患者に用いられ効果があるが,合併するリスクに関しては十分には確立されていない[Fernadez-L et al 2007].血管形成阻害薬であるサリドマイドは,小さな研究において患者7人中6人で鼻出血の程度および回数を軽減した[Lebrin et al 2010].また,経口プロプラノロールは治療の可能性があることが推測されている[Albiñana et al 2012].

局所薬治療.現在のエビデンスと経験では医療用のスプレーによる単純な加湿保湿とオイントメントが特別な内服よりもずっと役立つ.いくつかの薬用鼻スプレー(ベバシズマブ,エストリオール,トラネキサム酸)の鼻出血に対する有用性を検討するHHT多施設無作為クロスオーバー治験(NOSE Trial)は鼻出血に対して有意な効果が認められた.3つの局所療法がどれも1日2回の生食のスプレーよりも鼻出血の回数を減らすのに優れてはいなかった[Whitehead et al 2016].ベバシズマブの3つの用量による他の無作為比較プラセボ対象臨床試験がNOSE Trialと一緒に発表された.ここで再び,局所ベバシズマブは鼻出血に対して効果がなかった[Dupuis-Girod et al 2016].症例報告あるいは小さな研究において,これらあるいは他の局所投与物質(例えば0.5%チモロール点眼液)がHHT患者の鼻出血の期間あるいは頻度を減少させる可能性が報告されている[Sadick et al 2005, Flanagan et al 2012Guldmann et al 2012, Olitsky 2012, Reh et al 2013].

症例報告あるいは小さな研究[Bose et al 2009, Brinkerhoff et al 2011, Patrizia et al 2011, Dupuis-Girod et al 2012, Thompson et al 2014] において,抗血管新生薬ベバシズマブの静脈投与は重症で難治性鼻出血において効果がある可能性を示唆している.

消化管出血

積極的な鉄剤による治療の効果が不十分でヘモグロビンを正常範囲に維持できない場合以外は,治療は不必要である.

内視鏡,カプセル内視鏡,腸間膜動脈・腹腔動脈造影,核医学検査が出血部位と種類の特定に用いられる[Grève et al 2010].

内視鏡を用いたヒートプローブ,バイキャップ,あるいはレーザーによる治療が局所療法の中心である.

小腸の出血部位や大きな動静脈奇形は核医学検査により確定された後に外科的に切除される.

難治性鉄欠乏性貧血を伴い重度の消化管出血に対して,症例報告あるいは小さなコントロールのない研究において種々の薬物療法が有用であることが示された.経口エストローゲンープロゲステロンあるいはトラネキサム酸により治療は輸血量を減少させた[Proctor et al 2008].いくつかの症例報告では,抗血管新生薬ベバシズマブの静脈投与は消化管出血を劇的に減少させたとしている[Flieger et al 2006, Fodstad et al 2011].

貧血

鉄剤の補充あるいは赤血球輸血による貧血の治療は,必要に応じて適切に行なう.

鉄剤が飲めない,経口鉄剤に反応しない人では,鉄剤の経腸投与により効果がある.

肺動静脈奇形

肺動静脈奇形の治療は,呼吸困難,運動不耐容,低酸素血症に適応があるが,最も重要なことは呼吸機能や酸素飽和度が正常な無症状の患者における肺出血,脳膿瘍や卒中の予防である.流入動脈の直径が1.0mmを超えた肺動静脈奇形はすべて閉塞の検討を要する[Trerotola & Pyeritz 2010].コイル,閉塞器具(Amplatzer )あるいは両者を用いた経カテーテル塞栓術(Transcather embolotherapy: TCE)が治療選択である.時に,小さな病変は流入動脈の場所と大きさにより到達できない.大きなあるいは多発性の流入動脈を塞栓するために多くのコイルが必要になる.

再開通,新規の出現や未治療の動静脈奇形の増大がおきうるので,肺動静脈奇形の経カテーテル塞術後には,胸部CTそしてあるいはコントラスト心臓エコー法による長期経過観察が示唆されている[Cottin et al 2007],通常,経過観察CTは塞栓術後6-12ヵ月に,もし再開通や新しい肺動静脈奇形がみられなければそれ以後の経過観察CTは5年毎に行なわれる[Trerotola & Pyeritz 2010, Faughnan et al 2011].

肝動静脈奇形

肝動静脈奇形による心不全や肝不全の治療は現在のところ問題点が多い.肺動静脈奇形の治療では効果がある塞栓術は,肝動静脈奇形では致死的肝梗塞を惹起する.症状のある肝動静脈奇形は,内科治療を強力に行なうことで十分に管理できる[Buscarini et al 2011].

症状が内科的マネージメントにより軽快しない患者(通常は老年者)に対しては肝臓移植が標準的治療である[Buscarini et al 2006, Lerut et al 2006, Dupuis-Girod et al 2010, Lee et al 2010 Chavan et al 2013].

静脈投与されたベバリズマブは,肝動静脈奇形により二次性に重い症状のある患者において心拍出量と心不全の症状を低下させたが症例報告あるいはひとつの研究で報告されている[Mitchell et al 2008, Dupuis-Girod et al 2012].

肝臓生検は,HHT 患者においては避けなければいけない[Buscarini et al 2006].

脳動静脈奇形

直径が1.0cm以上の脳動静脈奇形は,神経血管外科手術,塞栓術,かつまたは定位固定放射線手術で治療される.

注:いかなる内臓動静脈奇形の治療を進める前に,患者および主治医は,その診断と治療プランが適切であることを確認するために, HHT Foundation Internationalを通して,近くにある包括的HHTクリニックと連絡を取ることが望まれる.

腸ポリープ

若年性ポリポージス (Juvenile polyposis: JP)と診断された患者はすべてHHTについてスクリーニングすべきであり,その家族はポリープのスクリーニングが行なわれなければならない.従って,内臓ポリープを有する特に若い年齢のHHT患者は,JPについて評価され管理されなければならない(若年性ポリポージス症候群の項参照).

一次徴候の予防

上述の内臓病変を参照.現在,予防は,関連する罹患および死亡を防ぐために末梢血管拡張症と動静脈奇形を焼却,閉塞,切除,収縮させることに焦点があてられている.

二次合併症の予防

もし,コントラスト心エコー法により肺シャントが陽性であれば,たとえ胸部CTにおいて肺動静脈奇形がみられなくても,米国心臓協会の手順(プロトコル)に従い,歯科クリーニングやその他の“不潔な”手術を受ける際には,右左シャントにより生じる膿瘍,特に脳膿瘍の危険を避けるために,予防的化学療法が生涯にわたり必要である[Dupuis-Girod et al 2007].同じ理由により,静脈ラインに気泡を入れないように,空気フィルターを付けるか,十分な注意を払うことが推奨される.

:これらの病変に合併するリスクは,亜急性心内膜炎(subacute endocarditis: SBE)に対するものではない.

監視

確実にHHTと診断されたすべての人,分子遺伝学的検査によりHHTの除外ができないが家族歴に基づいてHHTのリスクがあると判断されるすべての人の経過観察には,以下の手順(プロトコル)が推奨される[Faughnan et al 2011].

小児期

回避すべき薬物や環境

鼻出血が高度な患者では,鼻を強くかむこと,重いものを持つこと,排便時に力む,鼻を指でいじることを避けるように勧められる.HHTの患者の中にはアルコールの摂取で鼻出血が増加するのを経験している.

HHTの治療経験のある耳鼻咽喉科医の多くは,反復性鼻出血の治療として,多くの場合,電気的,化学的焼灼や経カテーテル塞栓術は施行しないように助言している.

アスピリンのような抗凝固薬やイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬は,正常の凝固を阻害するので,他の内科的状況によりどうしても必要とされる以外は,避けるべきである.ひとつの研究で,低用量特に抗血小板薬は罹患者の多くで出血が合併することはないとしている.この報告は,もし,その使用がとても強い適応であった場合には,抗血小板薬あるいは抗凝固薬は注意して用いることができることを支持している[Devlin et al 2013].

スキューバダイビングは,5年以内のコントラスト心臓エコー検査により右左シャントが陰性でない場合には避けるべきである.

肝生検はHHT患者では避けるべきである[Buscarini et al 2006].

リスクのある親族の検査

罹患者のリスクのある親族をできるだけ早期に予防的方法(一時徴候の予防を参照)で利益がある人かどうか評価し罹患と死亡を低下させることを進めるのは適切である.

もし家系の病原性変異が明らかな場合には,分子遺伝学検査で評価する.

もし家系の病原性変異が明らかでなく,結果的に分子遺伝学診断で否定できない場合には,リスクのある親族はHHTの診断が確実な人に推薦されるのと同じプロトコルでフォローされるべきである(監視を参照).

リスクのある親族の遺伝カウンセリング目的のための検査に関しては,遺伝子カウンセリングの項を参照のこと.

妊娠の管理

HHTと未治療の肺動静脈奇形を有する妊婦は,肺出血と空気塞栓による脳合併症に対して高リスクである.肺動静脈奇形の治療を受けた女性は,肺動静脈奇形のない女性と比較して妊娠中決して高リスクではない.

研究中の治療

サリドマイドおよびベバリズマブを含む異常血管吻合の発達を阻害するより新しい治療法については,多くの症例報告や小規模な非コントロール試験があるだけなので,コントロール試験が必要である[Flieger et al 2006, Mitchell et al 2008, Bose et al 2009, Davidson et al 2010, Lebrin et al 2010, Brinkerhoff et al 2011, Fodstad et al 2011, Patrizia et al 2011, Dupuis-Girod et al 2012].

世界規模の疾患と状況に関する臨床研究に関する情報にアクセスするためには,米国のClinicalTrials.govとヨーロッパのEU Clinical Traials Registerを参照すること.注:この疾患に対する臨床研究は行なわれていない可能性もある.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)は,常染色体優性の形式で遺伝する.

家族構成員のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

同胞のリスクは,発端者の両親の遺伝子状況に依存する.

発端者の子

HHT患者の子に,病原性変異が伝わる確率はそれぞれ50%である.

他の家族メンバー

他の家族メンバーのリスクは発端者の両親の状況による:もし,一方の親が罹患しているか病因となる4遺伝子のうち1つを持つ場合には,彼あるいは彼女の家族にはリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

リスクのある親戚の早期診断と治療の目的に関する情報に関しては,リスクのある親戚の管理と評価の項を参照.

明らかに新規突然変異をもつ家系に対する考慮

常染色体優性遺伝性疾患の発端者の両親のいずれも病因となる遺伝子を持たないか,この疾患の臨床症状がみられない場合,発端者は新規変異体を持つ可能性がある.しかし,父が異なるとか母が異なる(例;生殖補助),明らかにされていない養子縁組みなどの非医学的な事項に関しても調査されなければならない.

家族計画 

リスクのある無症状者に対する検査 

無症状でリスクのある人に対しては,分子遺伝学的検査の項に記載した技術を使って検査することが可能である.そのような検査は,発症年齢,重症度,症状の種類,無症状から進行する割合の予測には役立たない.HHTのリスクのある人に対して検査を行なう際には,まず,最初に罹患した家族において遺伝子診断を行い,分子診断を確定しておく必要がある.無症状のリスクのある家族の検査は,検査が陽性あるいは陰性の時の,受ける衝撃について討論する検査前の事前相談も含まれる.このような検査については,健康,人生,健康保険が使えなくなること,雇用,教育上の差別,社会および家族内交流の変化など,彼らが遭遇する可能性のあることすべてに関してカウンセリングされなければならない.説明と同意は,守秘下に行なわれ記録されなければならない.4つのHHT病原遺伝子のうち1つを持つ人に対しては長期の経過観察と評価の準備が必要である.家族の遺伝子変異が明らかになった際に罹患している親族を同定することは,リスクのある親族の生涯にわたる生命に関する医療費の大幅な削減につながり,例えば,家系の遺伝子変異が明らかになると50%のリスクでHHTを受け継ぐ患者において分子遺伝子検査を減らすことができるなどの多くの理由がある[Bernhardt et al 2012].

DNAバンキング 

DNAバンクはDNA(主に白血球から抽出した)の将来の使用のために保存である.検査法や,遺伝子,対立遺伝子変異体,遺伝子型表現型の関連そして疾患に対するは我々の理解は将来進歩するので,罹患者のDNAバンクについては配慮が必要である.
 

出生前診断と着床前遺伝子診断

ACVRL1, ENG, GDF2あるいはSMAD4病原性変異が罹患家系で同定されると,リスクの大きい妊娠時の出生前検査や着床前遺伝子診断がオプションとして可能になる.
 
出生前診断の使用に関して,視点の相違は医療専門家と家族の間には見解の相違が存在する.多くのセンターは出生前検査の決定については個人の選択と考えているが,こうした事項に関する討論は有用である.


資源

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここクリック。

Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia

Hereditary hemorrhagic telangiectasia


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A.
遺伝性出血性末梢血管拡張症:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座位 蛋白 特異的座位 HGMD Clin Var
ACVRL1

12q13​.13 Serine/threonine-protein kinase receptor R3 HHT Mutation Database (ACVRL1)
ACVRL1 database
ACVRL1 ACVRL1
ENG 9q34​.11 Endoglin  HHT Mutation Database  (ENG)
ENG database
ENG ENG
GDF2 10q11​.2 Growth/differentiation factor 2   GDF2 GDF2
SMAD4 18q21​.2 Mothers against decapentaplegic homolog 4 SMAD4 Database
SMAD4 database
SMAD4 SMAD4

データは以下の標準的な文献から得られた: HGNC, 染色体座位,座位名,重要な部位,OMMからの相補グループ,Uniprotからの蛋白.リンク先が提供されているデータベースからの記載(Locus specific, HGMD, Clin Var)は,ここをクリック.

表 B.
遺伝性出血性末梢血管拡張症のOMIM登録(すべてはOMIMを閲覧)

131195 ENDOGLIN; ENG
175050 JUVENILE POLYPOSIS/HEREDITARY HEMORRHAGIC TELANGIECTASIA SYNDROME; JPHT
187300 TELANGIECTASIA, HEREDITARY HEMORRHAGIC, TYPE 1; HHT1
600376 TELANGIECTASIA, HEREDITARY HEMORRHAGIC, TYPE 2; HHT2
600993 SMAD FAMILY MEMBER 4; SMAD4
601101 TELANGIECTASIA, HEREDITARY HEMORRHAGIC, TYPE 3; HHT3
601284 ACTIVIN A RECEPTOR, TYPE II-LIKE 1; ACVRL1
605120 GROWTH/DIFFERENTIATION FACTOR 2; GDF2
610655 TELANGIECTASIA, HEREDITARY HEMORRHAGIC, TYPE 4; HHT4
615506 TELANGIECTASIA, HEREDITARY HEMORRHAGIC, TYPE 5; HHT5

分子生物学病因

現在,HHTを惹起することが知られているすべての遺伝子欠損はトランスフォーミング増殖因子β(TGF-b)シグナル伝達中のタンパク質をコードする遺伝子内にある.

ACVRL1

遺伝子構造ACVRL1は10のエクソンを含有し,ゲノムDNAの長さは約14kbである.遺伝子とタンパク質に関する情報の詳細なサマリーについては,表Aの遺伝子を参照.

病原性遺伝子変異.現在のデータでは, ACVRL1の約1/3の変異体は機能的役割のない対立遺伝子である[Berg et al 1997, Pece et al 1997, Gallione et al 1998, Richards-Yutz et al 2010]. 共通の病原性遺伝子変異は同定されていない.病原性遺伝子変異の頻度はエクソン8,7そして3で最も高いが,これらの病原性変異とすべてのエクソン中の変異体のうち65%を説明するだけである.ミスセンス変異体は検出される病原性遺伝子変異の半分以上(53%)を説明し,スプライス部位変異体も報告されている[Abdalla & Letarte 2006, Richards-Yutz et al 2010]. (さらなる情報については表Aを参照.)

正常な遺伝子の産物.Serine/threonine-protein kinase receptor R3がTGFスーパーファミリーの細胞表面受容体Ⅰ型である.それは主として内皮細胞上に表現されている[Abdalla & Letarte 2006].

異常な遺伝子の産物.現在のデータは,最大のACVRL1の病原性多様体は結果的にタンパク質を発現していないことを示している.HHTはハプロ不全の結果であると推測されている[Abdalla & Letarte 2006].

ENG

遺伝子構造ACVRL1は14のエクソンを含有し,遺伝子DNAの長さは約40kbである.遺伝子とタンパク質に関する情報の詳細なサマリーについては,表Aの遺伝子を参照.

病原性遺伝子変異現在のデータでは, ENGの約2/3の変異体は機能的役割のない対立遺伝子である[Berg et al 1997, Pece et al 1997, Gallione et al 1998, Richards-Yutz et al 2010]. 共通の病原性遺伝子変異は同定されていない.エクソンあたりの変異体の総数は,変異体が殆どないエクソン1,9b,12そして13の例外と同様である.すべてのタイプの病原性遺伝子変異が報告されている[Abdalla & Letarte 2006]. (さらなる情報については表Aを参照.)

正常な遺伝子産物.エンドグリンはTGF-b複合受容体の構成物質である.それは主として内皮細胞上に表現されている

異常な遺伝子産物.現在のデータは,殆どのENGの病原性変異は結果的にタンパク質を発現していないことを示している.HHTはハプロ不全の結果であると推測されている[Abdalla & Letarte 2006].

GDF2

遺伝子構造.GDF2(BMP9として知られている)は2つのエクソンの小さな遺伝子で,1955bpの転写領域である(NM_016204.2).遺伝子とタンパク質に関する情報の詳細なサマリーについては,表Aの遺伝子を参照.

病原性遺伝子変異GDF2の病原性ミスセンス変異は,鼻出血を含むHHTの臨床像を持つ3人の患者で同定されている[Wooderchak-Donahue et al 2013].

正常な遺伝子産物GDF2は,成長/分化因子2(BMP9あるいはbone morphogenetic protein 9として知られている)429アミノ酸(NP_057288.1)をコードする. 単一のペプチドと前ペプチチドの翻訳分割した後,成熟ペプチドは110アミノ酸残基である.それは,骨形成タンパク質ファミリーとTGF-bスーパーファミリーのメンバーである.このファミリーメンバーは胎生期と成熟期における細胞の成長と分化のレギュレーターである.
 
異常な遺伝子産物.細胞培養実験は,これらの変異は成熟したタンパクと機能の消失という結果になることを示唆している.bmp-9欠損モデルから,BMP9血管新生に関与していることが示された[Wooderchak-Donahue et al 2013].

SMAD4

遺伝子構造SMAD4は11のエクソンを含有し,2680bp のcDNAを有する.遺伝子とタンパク質に関する情報の詳細なサマリーについては,表Aの遺伝子を参照.

病原性遺伝子変異.共通の病原性遺伝子変異はなく,すべての変異体については記述されている.約2/3以上の病原性変異は機能的役割のない対立遺伝子である(SMAD4変異データベース参照).JP-HHT患者におけるSMAD4の病原性変異がMH2ドメインにクラスターを作る傾向にあるが,その他の部位の病原性遺伝子変異も同様にこの合併症候群の原因となる.SMAD4の病原性遺伝子変異を持つ患者では,JPとHHTの双方が表現型となるリスクが考慮されなければならない[Gallione et al 2010, O’Malley et al 2011].

正常な遺伝子産物SMAD4は,TGF-b/BMP経路の細胞内シグナル分子として機能する552アミノ酸タンパクをコードする.

異常な遺伝子産物.殆どのSMAD4の病原性遺伝子変異は結果的にタンパク質を発現していないことを示している.HHTはハプロ不全の結果であると推測されている.


更新履歴:

  1. Gene Review著者:Jamie McDonald, MS, CGC, Reed E Pyeritz, MD, PhD, FACMG
    日本語訳者:塩谷隆信(秋田大学医学部保健学科) 
    Gene Review 最終更新日: 2009.5.19. 日本語訳最終更新日: 2010.03.28.
  2. GeneReviews著者: Jamie McDonald, MS, CGC, Reed E Pyeritz, MD, PhD, FACMG
    日本語訳者: 塩谷隆信(秋田大学医学部保健学科)
    GeneReviews最終更新日: 2014.7.24 日本語訳最終更新日: 2016.11.13
  3. GeneReviews著者: Jamie McDonald, MS, CGC and Reed E Pyeritz, MD, PhD, FACMG.
    日本語訳者:塩谷隆信(秋田大学名誉教授)
    GeneReviews最終更新日: 2017.2.7. 日本語訳最終更新日: 2021.7.26.(in present)

原文 Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia

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