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遺伝性多発性骨軟骨腫
(
Hereditary Multiple Osteochondromas)
[Diaphyseal Aclasis, Multiple Cartilaginous Exostoses, Hereditary Multiple Exostoses. Includes: Hereditary Multiple Osteochondromatosis, Type I; Hereditary Multiple Osteochondromatosis, Type II]

Gene Review著者: Gregory A Schmale, MD, Wim Wuyts, PhD,
Howard A Chansky, MD, Wendy H Raskind, MD, PhD
日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋 (信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)    
Gene Review 最終更新日: 2008.9.5. 日本語訳最終更新日: 2011.4.26

原文 Hereditary Multiple Osteochondromas


要約

疾患の特徴 

遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO)はこれまで遺伝性多発性外骨腫(HME)と呼ばれていた疾患であり,多発性骨軟骨腫(長管骨の骨幹端から外側に成長する,軟骨で覆われた骨の良性腫瘍)の増殖を特徴とする.骨軟骨腫により骨の成長障害,骨変形,関節可動域制限,低身長,若年からの変形性関節症,末梢神経への圧迫症状を来す.診断年齢の中央値は3歳であり,ほとんどの患者が12歳までに診断される.骨軟骨肉腫への悪性化のリスクは年齢とともに増加するが,悪性化が起こるリスクは生涯を通して低い(1%以下).

診断・検査 

遺伝性多発性骨軟骨腫の診断は,臨床所見やX線所見により家系内に1人または複数の家族が多発性外骨腫を有することによってなされる.遺伝性多発性骨軟骨腫に関連することがわかっている2つの遺伝子はEXT1遺伝子とEXT2遺伝子であるが,3番目の座位が発見される可能性がある.EXT1遺伝子とEXT2遺伝子の全コード領域に対するシークエンス解析と欠失解析を組み合わせて行うことで,患者の70〜95%における変異を検出できる.

臨床的マネジメント 

症状の治療骨変形がない疼痛部に対して,再発防止のため軟骨帽とそれを覆う軟骨膜を含めて外科的切除を行う;前腕の骨変形に対しては外骨腫の切除,矯正骨切り術,尺骨延長術を行う;左右1インチ超の脚長差に対しては,長い方の下肢に対する骨端固定術(成長板の発育停止),もしくは罹患脚の脚延長術を行う;足首の変形にする早期治療により,その後の機能低下を予防したり,軽減したりできるかもしれない;肉腫へ変化した場合,治療は外科的切除である.

経過観察:成人期には外骨腫の大きさを定期的にチェックすることにより,悪性化の早期発見が可能となるが,定期的な経過観察の効用を裏付ける費用対効果分析は行われていない.

 

遺伝カウンセリング 

遺伝性多発性骨軟骨腫は常染色体優性遺伝性疾患である.浸透率は約96%である.遺伝性多発性骨軟骨腫患者の10%が新生突然変異による発症である.患者の子が疾患原因遺伝子変異を受け継ぐ確率は50%である.リスクの高い妊娠に対する出生前診断は,家系内の疾患原因遺伝子変異が同定されている場合に可能である.


診断

臨床診断

遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO)は,以下が認められる患者に対して臨床的に診断される:

  • 長管骨の骨端軟骨付近の成長板部位,もしくは肩甲骨などの扁平骨表面に生じた多発性骨軟骨腫(軟骨に覆われた骨の成長).骨軟骨腫の重要な放射線医学的また解剖学的所見は,発生源の骨から骨軟骨腫まで,骨皮質と髄骨が連続していることである.骨軟骨腫も,骨化し骨成熟時には閉鎖する成長板に相当する部分を有している.

用語に関する注:骨軟骨腫(osteochondroma)はこれまで外骨腫(exostosis)と呼ばれていた.しかし,骨軟骨腫という言葉により,これらの病変が骨の過剰成長だけでなく骨化する軟骨の変化であることが示されるため,外骨腫という用語は遺伝性多発性骨軟骨腫におけるこのような病変を表す際にはもはや用いられていない.用語の変更は世界保健機構(WHO)に採択された.

    注:患者の約70%に臨床的判断から骨軟骨腫と考えられる病変が膝部に認められる.これは触知できない骨軟骨腫を検出するために得られた膝のX線画像が,軽症患者の検出には感度の高い方法であることを示している.

  • 常染色体優性遺伝に合致する家族歴

分子遺伝学的検査

遺伝子 遺伝子 遺伝性多発性骨軟骨腫と関連性が認められている遺伝子は2つある:

  • EXT1遺伝子 遺伝性多発性骨軟骨腫の約56〜78%
  • EXT2遺伝子 遺伝性多発性骨軟骨腫の約21〜44%

注:これら2つの遺伝子変異ごとの疾患の割合に関しては幾つかの疑問が残っている.(1)まずEXT1遺伝子が同定されたため,EXT2遺伝子よりもEXT1遺伝子に対する分子遺伝学的検査について書かれた報告が多い.(2)EXT1遺伝子関連の遺伝性多発性骨軟骨腫の頻度は中国人では少ないと報告されたが(30%)[Xu et al 1999],変異が同定されたのは検査を実施した者の半数以下であったため,この結果の再検証が必要である.(3)ほとんどの研究では,EXT1遺伝子変異はEXT2遺伝子変異よりも高頻度に検出された[Dobson-Stone et al 2000, Francannet et al 2001, Wuyts et al 2002, Porter et al 2004, White et al 2004].EXT1遺伝子は,2件の臨床施設の罹患者151人で同定された変異の66〜78%を占めた[Wuyts 2005, 私信; Bale 2005, 私信].

その他の遺伝子座 ある研究グループが3番目の遺伝子となる第19染色体にマッピングされるEXT3遺伝子の存在を示唆している[Le Merrer et al 1994].この連鎖解析は実証されておらず,偽陽性の結果である可能性もある.

臨床検査

  • シークエンス解析 EXT1遺伝子とEXT2遺伝子の全コード領域に対するシークエンス解析により,罹患者の70〜85%に変異が検出される[Philippe et al 1997; Raskind et al 1998; Wuyts et al 1998; Porter et al 2004; White et al 2004; Jennes et al 2008; Bale 2005, 私信].
  • 全遺伝子領域の変異スキャニング EXT1遺伝子とEXT2遺伝子双方の全コード領域に対する解析に適した熱変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)を用いた実験手順が作成されており,これによりEXT1遺伝子およびEXT2遺伝子の変異検出頻度がシークエンス解析による検出頻度に匹敵するほどになった [Wuyts et al 2005, Signori et al 2007]
  • 欠失・重複解析 MLPA法などの手法と組み合わせてエクソン全体の欠失,複数エクソンの欠失,遺伝子全体の欠失を検出することにより,検出率は85〜95%にまで上昇する [White et al 2004, Signori et al 2007, Jennes et al 2008].

表1 遺伝性多発性骨軟骨腫の分子遺伝学的検査

遺伝子記号

当該遺伝子変異による遺伝性多発性骨軟骨腫の割合

検査方法

検出変異

検査方法ごとの変異検出頻度1

検査の実施

EXT1

56%-78%

シークエンス解析・変異スキャニング

シークエンス・バリアント

88〜93%

臨床

FISH解析2

大規模欠失

0〜8%

欠失・重複解析3

エクソン全体の欠失,複数エクソンの欠失,遺伝子全体の欠失

7〜10%

EXT2

21%-44%

シークエンス解析・変異スキャニング

シークエンス・バリアント

90〜100%

臨床

FISH解析2

大規模欠失

1%未満

欠失・重複解析 3

エクソン全体の欠失,複数エクソンの欠失,遺伝子全体の欠失

0〜8%

「検査の実施」はGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている検査実施状況である.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている.GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 変異検出率はEXT1遺伝子およびEXT2遺伝子双方に対するシークエンス解析およびMLPA法を組み合わせた方法から得られたものである [White et al 2004, Signori et al 2007, Jennes et al 2008].
  2. FISH解析は大規模欠失しか検出できないため,遺伝性多発性骨軟骨腫を発症させる1つのエクソンの欠失は検出できない.
  3. 欠失・重複解析とは,エクソン全体の欠失,複数エクソンの欠失,遺伝子全体の欠失を同定するために用いられるさまざまな検査方法を指す(MLPA法,定量PCR法,リアルタイムPCR法,「ヘテロ接合度」検査など).

注:(1)FISH解析はランガー・ギーディオン症候群(別名:毛髪鼻指節骨症候群2型)(TRPS2)(OMIM 150230)の診断によく用いられているが,遺伝性多発性骨軟骨腫の診断には推奨されない.ランガー・ギーディオン症候群は,EXT1遺伝子と毛髪鼻指節骨症候群1型を発症させるTRPS1遺伝子のほか,精神遅滞を引き起こすEXT1遺伝子に隣接するその他の遺伝子を含んだ隣接遺伝子欠失症候群である.(2)FISH解析は「ポトツキ・シェファー症候群」(別名deletion proximal 11p deletion syndrome)(P11pDS; OMIM 601224)として知られる隣接遺伝子欠失症候群の診断に用いられるが,遺伝性多発性骨軟骨腫の診断には推奨されない.P11pDSにはEXT2遺伝子とALX4遺伝子が含まれる.ALX4遺伝子は拡張型頭頂孔/頭蓋裂2型(enlarged parietal foramina/cranium bifidum type 2)との関連が認められている.

検査結果の解釈

シークエンス解析結果の解釈に際して考慮すべきその他の事柄に関しては,こちらを参照のこと.

検査手順

発端者の確定診断

  1. EXT2遺伝子変異よりもEXT1遺伝子変異の方が検出頻度が高いため,EXT1遺伝子のシークエンス解析をまず行う.
  2. シークエンス解析でEXT1遺伝子の変異が検出されない場合には,EXT2遺伝子に対するシークエンス解析を行う.
  3. シークエンス解析でEXT1遺伝子にもEXT2遺伝子にも変異が同定されない場合には,双方の遺伝子に対してMLPA法や定量PCR法により欠失解析を行う.

出生前診断や着床前診断(PGD)

発症リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)には,家系内の疾患原因変異の事前同定が必要である.

遺伝的に関連のある疾患

遺伝性多発性骨軟骨腫以外にEXT1遺伝子やEXT2遺伝子の変異に関連する表現型はない.
しかし,2つの隣接遺伝子欠失症候群で多発性骨軟骨腫が疾患特有の1つの疾患徴候として現れている:

  • ランガー・ギーディオン症候群はEXT1遺伝子の欠失と8q24.11-q24.13領域のTRPS1遺伝子の欠失を有する(「鑑別診断」の項も参照のこと).
  • ポトツキ・シェファー症候群(別名proximal 11p deletion syndrome (P11pDS))はEXT2遺伝子とALX4遺伝子の欠失を有する.(「鑑別診断」の項も参照のこと)

臨床像

自然経過

骨軟骨腫の数,罹患骨の数や部位,変形の程度はさまざまである.骨軟骨腫は成長して大きくなり,骨格の発達とともに徐々に骨化してゆき,骨成熟とともに成長をやめる.その後新しく骨軟骨腫が生じることはない.臨床所見を有する遺伝性多発性骨軟骨腫患者の割合は,出生時は約5%であるが,12歳には96%と増加する [Legeai-Mallet et al 1997].診断年齢の中央値は3歳である.成人期までに75%の罹患者に臨床的に明らかな骨変形が認められる.男性は女性よりも重症化する傾向にある.大多数の遺伝性多発性骨軟骨腫患者は活動的で健康的な生活を送っている.
1人の患者に発症する骨軟骨腫の数はさまざまであり,たとえ同一家系内でも幅広いばらつきが認められる.通常,骨は対称性に罹患する.罹患頻度の高い骨は,大腿骨(30%),橈骨および尺骨(13%),脛骨(20%),そして腓骨(13%)である.中手骨の短縮による手の変形も多い.骨のリモデリングの異常により,骨幹端の拡大を伴った短縮と彎曲を来す[Porter et al 2004].

ワシントン州の 46家系の研究によれば,患者の39%に前腕の変形が,10%に脚長差が,8%に膝の角ばった変形が,2%に足首の変形が見られた [Schmale et al 1994].前腕および足首の角ばった変形(彎曲)は臨床上最も重要な整形外科的問題となる.

大腿骨近位部の骨軟骨腫や外反股から股関節異形成が生じることがある.大腿骨頭のCE角(center-edge angle)が小さくなり被覆角が大きくなることから,早期に大腿痛や外転筋虚弱が生じ,後期には関節炎が生じる[Malagon 2001,Ofiram & Porat 2004].

遺伝性多発性骨軟骨腫患者の40%が「低身長(shortened stature)」であるといわれている.脚の長管骨の直線的成長が干渉されるため,通常予測されるような成人身長よりは低身長となるが,EXT2遺伝子変異を有する患者ではほとんどが,また,EXT1遺伝子変異を有する患者では多くが正常範囲におさまる身長である [Porter et al 2004].低身長(shortened stature)はEXT1遺伝子変異を有する患者でより多く認められる [Porter et al 2004].

注:ここでの「低身長」(shortened stature)とは,罹患していない両親や同胞から推測される身長よりは低くなることが多いが,それでも通常,正常範囲に収まる場合に用いる.

骨軟骨腫は典型的には長管骨の骨端軟骨付近や,扁平骨表面(骨盤,肩甲骨)から生じる.骨軟骨腫は無茎のこともあれば有茎のこともある.無茎性の骨軟骨腫は広い基部によって骨皮質に付着している.有茎性の骨軟骨腫は,接している骨の成長板からつながった骨皮質から生じた茎を持つ場合が多い.有茎型の方が,上に乗っている軟部組織(腱など)を刺激したり,末梢神経や血管を圧迫することが多い.腫瘍が発生した骨の骨髄・海綿状骨と骨軟骨腫とは連続している.

症状は腫瘍による圧迫効果によって二次的に起こることもある.末梢神経の圧迫・引き延ばしにより,通常疼痛が見られるが,時に感覚や運動の障害が見られることもある[Hattori et al 2006].頸部の骨軟骨腫による脊髄圧迫や脊髄症が報告されている[Aldea et al 2006, Giudicissi-Filho et al 2006, Pandya et al 2006].関節の骨に接する大きな骨軟骨腫によって,関節運動制限を来すこともある.骨軟骨腫の上にある筋肉や腱が刺激されて,疼痛や運動制限をきたすことがある.神経や血管が正常な解剖学位置からずれてしまうことがあり,このような場合には骨軟骨腫の摘出術の時に難渋することになる.まれに,大きい骨盤骨の骨軟骨腫によって,尿路や腸管の閉塞を来すことがある.胸部の骨軟骨腫によ横隔膜破裂に至った例が報告されている[Abdullah et al 2006].

遺伝性多発性骨軟骨腫のもっとも重篤な合併症は,骨軟骨腫の肉腫化である.骨盤,肩甲骨,肋骨,脊椎といった軸骨格は,骨軟骨腫の軟骨肉腫化がもっとも生じやすい部位である[Porter et al 2004].特に身体的に成熟した患者において,腫瘍が急速に増大し,疼痛が増したら,生命を脅かしかねない骨軟骨腫の肉腫化が疑われる:

  • 厚さ2〜3cmをこえる大きい軟骨帽(MRIまたはCTでもっともはっきり描出される)を認めたら,軟骨肉腫の可能性が高い[Shah et al 2007].
  • また,骨成熟後,繰り返し行ったテクネチウム骨シンチグラフィーにおいて取込みが増加していれば,悪性化の証拠となるであろう.
  • MRIのT2強調画像のガドリニウム取り込みから軟骨の代謝活性が高いことが示された場合にも悪性化が疑われる[De Beuckeleer et al 1996].
  • 遺伝性多発性骨軟骨腫の悪性化を調べるためには,FDG-PET画像が有効である.数値がこれを上回ると骨軟骨腫の軟骨肉腫化が起こりやすくなるカットオフ値としてSUVmax値2.0が言われているが,SUVmax値が1.3という数値の低い病変でもグレード1の軟骨肉腫が報告されている[Aoki et al 1999, Feldman et al 2005].

軟骨肉腫への悪性化の頻度や,それほど多くはないが肉腫への悪性化の頻度は0.5〜20%と報告されているが,多くの報告はより低い値を支持している[Legeai-Mallet et al 1997].しかし,特定の家系では,悪性化率が6%にも上ると報告されている[Porter et al 2004, Vujic et al 2004].

悪性化は小児期や思春期にも起こりうるが,年齢とともにリスクは高まる.一般集団における軟骨肉腫の頻度はおよそ10〜25万人中1人であるが,軟骨肉腫を有する者の5%が遺伝性多発性骨軟骨腫に罹患している.ワシントン州での遺伝性多発性骨軟骨腫の研究に基づく推定によると,遺伝性多発性骨軟骨腫では軟骨肉腫を発症するリスクが遺伝性多発性軟骨腫患者以外のリスクと比べて1,000〜2,500倍であることが示された.

注:かなり多くの公表文献が外科的文献から得られたものであるため,実際の発症リスクの推定は困難である.過去25年間の発端者の血縁者である罹患者(治療を受けていない血縁者)を含めた約20の研究では,肉腫化率はおよそ平均して2〜4%であった.しかし,生涯リスクを扱った長期的な研究はない.

遺伝子型と表現型の関連

EXT1遺伝子変異を有する患者はEXT2遺伝子変異を有する患者と比べて,疾患負荷が高いことを示す研究が幾つかある:

  • Francannetら[2001]の報告を参照のこと.
  • 78家系の172人を扱ったPorterら[2004]の研究は,低身長,骨格異常(前腕の短縮や彎曲,膝の変形),機能(肘,前腕,膝の関節可動域)において,EXT2遺伝子変異を有する患者よりもEXT1遺伝子変異を有する患者での疾患の重症度が高いことを示した.軟骨肉腫の発症リスクもEXT1遺伝子変異を有する患者の方が高かった[Porter et al 2004].
  • EXT1遺伝子変異を有する患者では,EXT2遺伝子変異を有する患者と比べて,外骨腫の数が多く,四肢における悪性化率が高く,肢節や身長が短く,骨盤や扁平骨病変が生じる頻度が高い[Alvarez et al 2006].

その他の研究では,EXT1遺伝子変異とEXT2遺伝子変異に関連した臨床型の違いは認められていない[Jennes et al 2008].

浸透率

浸透率は96%と推定されている.浸透率の低下を示す症例報告のほとんどは,女性患者についてのものである.しかし,このような症例のほとんどで包括的な骨格X線画像検査が行われていない.

病名

小児期に主に軟骨が成長し,骨成熟に達すると骨化するという観察所見を示すものとして,「多発性骨軟骨外骨腫」(multiple osteocartilaginous exostoses)が用いられてきた.米国では「外骨腫」と「遺伝性多発性外骨腫」という用語が,それぞれ成長と疾患とを示すものとして用いられてきたが,世界保健機構(WHO)は外骨腫に相当するものとして「骨軟骨腫」を,疾患名として「多発性骨軟骨腫」を採択した [Bovée & Hogendoorn 2002].「骨軟骨腫」と「多発性骨軟骨腫」という用語は病変の発生部位を軟骨であることを正確に表している用語であるため望ましい用語である.しかし,依然として遺伝性多発性外骨腫(HME)や多発性遺伝性外骨腫(MHE)はこの疾患を表すものとしてよく用いられており,遺伝子はエクソストシン1,エクソストシン2と名付けられている.

頻度

遺伝性多発性骨軟骨腫の頻度は,グアムの小規模集団における100人中1人という高い数値から,欧米集団におけるおよそ10万人中1人というものまでさまざまな報告がある[Krooth et al 1961, Hennekam 1991].ワシントン州における頻度は少なくとも5万人中1人と推定されている[Schmale et al 1994].


鑑別診断

骨軟骨腫の数,罹患骨の数や部位,変形の程度はさまざまである.骨軟骨腫は成長して大きくなり,骨格の発達とともに徐々に骨化してゆき,骨成熟とともに成長をやめる.その後新しく骨軟骨腫が生じることはない.臨床所見を有する遺伝性多発性骨軟骨腫患者の割合は,出生時は約5%であるが,12歳には96%と増加する [Legeai-Mallet et al 1997].診断年齢の中央値は3歳である.成人期までに75%の罹患者に臨床的に明らかな骨変形が認められる.男性は女性よりも重症化する傾向にある.大多数の遺伝性多発性骨軟骨腫患者は活動的で健康的な生活を送っている.

1人の患者に発症する骨軟骨腫の数はさまざまであり,たとえ同一家系内でも幅広いばらつきが認められる.通常,骨は対称性に罹患する.罹患頻度の高い骨は,大腿骨(30%),橈骨および尺骨(13%),脛骨(20%),そして腓骨(13%)である.中手骨の短縮による手の変形も多い.骨のリモデリングの異常により,骨幹端の拡大を伴った短縮と彎曲を来す[Porter et al 2004].

ワシントン州の 46家系の研究によれば,患者の39%に前腕の変形が,10%に脚長差が,8%に膝の角ばった変形が,2%に足首の変形が見られた [Schmale et al 1994].前腕および足首の角ばった変形(彎曲)は臨床上最も重要な整形外科的問題となる.

大腿骨近位部の骨軟骨腫や外反股から股関節異形成が生じることがある.大腿骨頭のCE角(center-edge angle)が小さくなり被覆角が大きくなることから,早期に大腿痛や外転筋虚弱が生じ,後期には関節炎が生じる[Malagon 2001, Ofiram & Porat 2004].

遺伝性多発性骨軟骨腫患者の40%が「低身長(shortened stature)」であるといわれている.脚の長管骨の直線的成長が干渉されるため,通常予測されるような成人身長よりは低身長となるが,EXT2遺伝子変異を有する患者ではほとんどが,また,EXT1遺伝子変異を有する患者では多くが正常範囲におさまる身長である [Porter et al 2004].低身長(shortened stature)はEXT1遺伝子変異を有する患者でより多く認められる [Porter et al 2004].

注:ここでの「低身長」(shortened stature)とは,罹患していない両親や同胞から推測される身長よりは低くなることが多いが,それでも通常,正常範囲に収まる場合に用いる.

骨軟骨腫は典型的には長管骨の骨端軟骨付近や,扁平骨表面(骨盤,肩甲骨)から生じる.骨軟骨腫は無茎のこともあれば有茎のこともある.無茎性の骨軟骨腫は広い基部によって骨皮質に付着している.有茎性の骨軟骨腫は,接している骨の成長板からつながった骨皮質から生じた茎を持つ場合が多い.有茎型の方が,上に乗っている軟部組織(腱など)を刺激したり,末梢神経や血管を圧迫することが多い.腫瘍が発生した骨の骨髄・海綿状骨と骨軟骨腫とは連続している.

症状は腫瘍による圧迫効果によって二次的に起こることもある.末梢神経の圧迫・引き延ばしにより,通常疼痛が見られるが,時に感覚や運動の障害が見られることもある[Hattori et al 2006].頸部の骨軟骨腫による脊髄圧迫や脊髄症が報告されている[Aldea et al 2006, Giudicissi-Filho et al 2006, Pandya et al 2006].関節の骨に接する大きな骨軟骨腫によって,関節運動制限を来すこともある.骨軟骨腫の上にある筋肉や腱が刺激されて,疼痛や運動制限をきたすことがある.神経や血管が正常な解剖学位置からずれてしまうことがあり,このような場合には骨軟骨腫の摘出術の時に難渋することになる.まれに,大きい骨盤骨の骨軟骨腫によって,尿路や腸管の閉塞を来すことがある.胸部の骨軟骨腫により横隔膜破裂に至った例が報告されている[Abdullah et al 2006].

遺伝性多発性骨軟骨腫のもっとも重篤な合併症は,骨軟骨腫の肉腫化である.骨盤,肩甲骨,肋骨,脊椎といった軸骨格は,骨軟骨腫の軟骨肉腫化がもっとも生じやすい部位である[Porter et al 2004].特に身体的に成熟した患者において,腫瘍が急速に増大し,疼痛が増したら,生命を脅かしかねない骨軟骨腫の肉腫化が疑われる:

  • 厚さ2〜3cmをこえる大きい軟骨帽(MRIまたはCTでもっともはっきり描出される)を認めたら,軟骨肉腫の可能性が高い[Shah et al 2007].
  • また,骨成熟後,繰り返し行ったテクネチウム骨シンチグラフィーにおいて取込みが増加していれば,悪性化の証拠となるであろう.
  • MRIのT2強調画像のガドリニウム取り込みから軟骨の代謝活性が高いことが示された場合にも悪性化が疑われる[De Beuckeleer et al 1996].
  • 遺伝性多発性骨軟骨腫の悪性化を調べるためには,FDG-PET画像が有効である.数値がこれを上回ると骨軟骨腫の軟骨肉腫化が起こりやすくなるカットオフ値としてSUVmax値2.0が言われているが,SUVmax値が1.3という数値の低い病変でもグレード1の軟骨肉腫が報告されている[Aoki et al 1999, Feldman et al 2005].

軟骨肉腫への悪性化の頻度や,それほど多くはないが肉腫への悪性化の頻度は0.5〜20%と報告されているが,多くの報告はより低い値を支持している[Legeai-Mallet et al 1997].しかし,特定の家系では,悪性化率が6%にも上ると報告されている[Porter et al 2004, Vujic et al 2004].

悪性化は小児期や思春期にも起こりうるが,年齢とともにリスクは高まる.一般集団における軟骨肉腫の頻度はおよそ10〜25万人中1人であるが,軟骨肉腫を有する者の5%が遺伝性多発性骨軟骨腫に罹患している.ワシントン州での遺伝性多発性骨軟骨腫の研究に基づく推定によると,遺伝性多発性骨軟骨腫では軟骨肉腫を発症するリスクが遺伝性多発性骨軟骨腫患者以外のリスクと比べて1,000〜2,500倍であることが示された.

注:かなり多くの公表文献が外科的文献から得られたものであるため,実際の発症リスクの推定は困難である.過去25年間の発端者の血縁者である罹患者(治療を受けていない血縁者)を含めた約20の研究では,肉腫化率はおよそ平均して2〜4%であった.しかし,生涯リスクを扱った長期的な研究はない.

遺伝子型と臨床型の関連

EXT1遺伝子変異を有する患者はEXT2遺伝子変異を有する患者と比べて,疾患負荷が高いことを示す研究が幾つかある:

  • Francannetら[2001]の報告を参照のこと.
  • 78家系の172人を扱ったPorterら[2004]の研究は,低身長,骨格異常(前腕の短縮や彎曲,膝の変形),機能(肘,前腕,膝の関節可動域)において,EXT2遺伝子変異を有する患者よりもEXT1遺伝子変異を有する患者での疾患の重症度が高いことを示した.軟骨肉腫の発症リスクもEXT1遺伝子変異を有する患者の方が高かった[Porter et al 2004].
  • EXT1遺伝子変異を有する患者では,EXT2遺伝子変異を有する患者と比べて,外骨腫の数が多く,四肢における悪性化率が高く,肢節や身長が短く,骨盤や扁平骨病変が生じる頻度が高い[Alvarez et al 2006].
その他の研究では,EXT1遺伝子変異とEXT2遺伝子変異に関連した臨床型の違いは認められていない[Jennes et al 2008].

 

浸透率 

浸透率は96%と推定されている.浸透率の低下を示す症例報告のほとんどは,女性患者についてのものである.しかし,このような症例のほとんどで包括的な骨格X線画像検査が行われていない.

病名

小児期に主に軟骨が成長し,骨成熟に達すると骨化するという観察所見を示すものとして,「多発性骨軟骨外骨腫」(multiple osteocartilaginous exostoses)が用いられてきた.米国では「外骨腫」と「遺伝性多発性外骨腫」という用語が,それぞれ成長と疾患とを示すものとして用いられてきたが,世界保健機構(WHO)は外骨腫に相当するものとして「骨軟骨腫」を,疾患名として「多発性骨軟骨腫」を採択した [Bove´e & Hogendoorn 2002].「骨軟骨腫」と「多発性骨軟骨腫」という用語は病変の発生部位を軟骨であることを正確に表している用語であるため望ましい用語である.しかし,依然として遺伝性多発性外骨腫(HME)や多発性遺伝性外骨腫(MHE)はこの疾患を表すものとしてよく用いられており,遺伝子はエクソストシン1,エクソストシン2と名付けられている.

頻度

遺伝性多発性骨軟骨腫の頻度は,グアムの小規模集団における100人中1人という高い数値から,欧米集団におけるおよそ10万人中1人というものまでさまざまな報告がある[Krooth et al 1961, Hennekam 1991].ワシントン州における頻度は少なくとも5万人中1人と推定されている[Schmale et al 1994].


鑑別診断

当該疾患に関する遺伝子検査の利用可能性についての最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと――編集者注

単発性骨軟骨腫 骨格検査から頻度の高い骨腫瘍である単発性骨軟骨腫は,人口の1〜2%に認められることが示されている.単発性骨軟骨腫では,多発性骨軟骨腫と同様の成長パターンがみられる.単発性骨軟骨腫と混同される病態には,傍皮質性骨肉腫,軟部組織骨肉腫,異所性骨化が含まれる.単純X線画像検査やCT検査がこれらの病変を骨軟骨腫と鑑別する際に役立つことが多い.典型的にこれらの病変で腫瘍は発生した骨の海綿状骨と骨皮質骨とに連続していない.この連続性が遺伝性多発性骨軟骨腫の特徴である.

多発性骨軟骨腫が発症する3つの遺伝的条件:

  • 中軟骨腫症 は常染色体優性疾患である.遺伝性多発性骨軟骨腫とは対照的に,中軟骨腫症の特徴は骨軟骨腫と骨内の内軟骨腫である.中軟骨腫症の骨軟骨腫は,遺伝性多発性骨軟骨腫の場合とは異なり,主に手の指に起こり,その先端が隣接する関節方向を向き,長管骨の短縮や彎曲,関節変形,亜脱臼を呈さない.
  • ランガー・ギーディオン症候群(OMIM 150230) は EXT1 遺伝子を含む隣接遺伝子症候群である.患者は精神発達遅滞,特徴的な頭蓋顔面および指の変形を呈する.骨格奇形は 毛髪鼻指節骨症候群1型(TRSP1)の原因遺伝子であるTRPS1 遺伝子のハプロ不全の結果生じる.
  • 11p11欠失症候群(従来DEFECT11もしくはポトツキ・シェファー症候群として知られた症候群)(OMIM 601224)[Wu et al 2000] は, EXT2 遺伝子と ALX4 遺伝子を含む隣接遺伝子欠失症候群である(OMIM 168500).ALX4 遺伝子の欠失により,頭頂孔および頭蓋骨骨化異常をきたす(「拡張型頭頂孔/頭蓋裂」(enlarged parietal foramina/cranium bifidum )を参照のこと).まだ同定されていない遺伝子群が時に見られる頭蓋顔面の異常,合指症,精神遅滞の原因となっている[Mavrogiannis et al 2001, Romeike & Wuyts 2007].

臨床的マネジメント

初回診断後における評価

遺伝性多発性骨軟骨腫と診断された患者の疾患の程度を確立するためには,以下の手順が推奨される:

  • 骨軟骨腫の症状に関する詳細な病歴聴取
  • 骨軟骨腫の部位,機能制限,変形部位(低身長,前腕の彎曲や短縮,膝や足首の角ばった変形)を記載するための身体診察

症状に対する治療

骨軟骨腫は臨床的な問題が生じない限り治療の必要はない.

角ばった変形,脚長差,皮膚,腱,神経が刺激されることによる疼痛は外科的手術を要することが多い.遺伝性多発性骨軟骨腫患者のほとんどが,少なくとも1回は外科的手術を受けており,複数回受けている者も多い[Porter et al 2004]:

  • 骨変形を伴わない疼痛部位には,簡単な外科的切除を行う.骨軟骨腫の切除により,成長障害の速度を緩めたり審美的な改善がもたらされる場合もあるが,再発防止のため軟骨帽とそれを覆う軟骨膜を含めて外科的切除を行うこと.
  • 前腕の骨変形に対する手術には骨軟骨腫の切除,矯正骨切り術,尺骨延長術があり,これらにより回内,回外,前腕の骨配列が改善される可能性がある[Matsubara et al 2006, Shin et al 2006, Ishikawa et al 2007, Watts et al 2007].しかし,前腕の骨変形に対する治療を行っていない 遺伝性多発性骨軟骨腫の成人患者では,機能障害はほとんど報告されていない.
  • 2.5cm以上の脚長差に対して,長い方の下肢に対する骨端固定術(成長板の発育停止)が行われることが多い.
  • 脛骨と距骨の傾斜(tibio talar tilt)に対して早期に外科的治療を行うことで,後の足首の機能低下の予防や軽減につながる可能性があるが,長期的なフォローアップ研究が必要とされている[Noonan et al 2002].
  • 肉腫へ変化した場合,治療は外科的切除である.続発性軟骨肉腫に対する補助放射線治療や補助化学療法の実施に関しては議論が分かれているが,続発性骨肉腫の場合には実施される場合が多い.

経過観察

成人の骨軟骨腫のサイズに対するモニタリングは,とりわけ罹患部が骨盤や肩甲骨である場合,悪性化の早期同定に役立つ場合があるが,定期的な経過観察の実施を支持する費用対効果分析はない.

放射線治療,CT検査,MRI検査,ポジトロン断層撮影,放射性核種テクネチウム99を用いた画像診断により,中央部に位置する骨軟骨腫を評価可能であるが,放射線照射のリスクや不必要な侵襲的治療につながる偽陽性結果の可能性と斟酌してもなお検査によって得られるものがあるのかという点に関しては,まだ不明である.加えて,最適なスクリーニングの実施間隔は確立していない.

発症リスクのある血縁者の検査

年少時に臨床診断が確立すること,また疾患の発症原因や予防方法,外科的手法以外の介入術が知られていないことから,症状の発現前の検査は認められていない.
遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

研究中の治療法

種々の疾患に対する臨床試験についてはClinicalTrials.govを参照のこと. 注:頭蓋疾患に対する臨床試験は行われていない.

その他

遺伝クリニック は,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する.Gene Test Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報 本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立された.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO)は常染色体優性疾患である.

血縁者の発症リスク

発端者の両親

  • 遺伝性多発性骨軟骨腫の患者の約90%では,両親のうち1人が罹患者であり,約10%が新生突然変異を有する.
  • 孤発性の遺伝性多発性骨軟骨腫患者(家系内で唯一の発症者)の両親に対して勧められる評価は,身体的検査,X線検査,発端者における変異が同定されている場合には分子遺伝学的検査がある.

注:約90%の遺伝性多発性骨軟骨腫患者の両親の1人が罹患しているが,血縁者における疾患の見落としや浸透度の低下により,家族歴が見かけ上,陰性であることがある.

発端者の同胞 

  • 同胞のリスクは発端者の両親の遺伝学的状況に基づく.
  • 遺伝性多発性骨軟骨腫のほとんどの発端者の両親の1人が改変された遺伝子を有しているため,通常,発端者の同胞の遺伝子変異を受けつぐ確率は50%である.
  • 変異を受け継いだ同胞が症状を呈する確率は95%である.両親が臨床的に罹患していない場合,もしくはいずれの両親のDNAにも疾患原因遺伝子変異が検出されない場合,発端者の同胞の発症リスクは低いと思われる.生殖細胞モザイク症例は報告されていないが,その可能性は残っている.

発端者の子

発端者の子が変異アレルを受け継ぐ確率は50%である.

その他の発端者の家族 

その他の発端者の血縁者の発症リスクは発端者の両親の遺伝学的状況に基づく.発端者の両親の1人が罹患している場合,もしくは疾患原因遺伝子変異を有する場合,その血縁者には発症リスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題

見かけ上新生突然変異を持つ家系への配慮

常染色体優性疾患の発端者の両親のどちらも疾患原因の生殖細胞系変異が認められず,疾患の臨床症状がない場合,発端者が新生突然変異を有している可能性がある.しかし,父親や母親が異なる場合(生殖補助医療など)や,公開されていない養子縁組といった医学的でない原因も検討する必要がある.

家族計画 

  • 遺伝リスクの決定や出生前診断の利用について話し合う最適な時期は妊娠前である.
  • 罹患している若年成人やリスクのある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖手段)を提供することは妥当である.

DNAバンクは,将来の使用のために,通常は白血球から調整したDNAを貯蔵しておくことである.検査手法や,遺伝子,変異,疾患への理解は将来改善する可能性があり,患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.ことに現在行っている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患に関してはDNAの保存は考慮すべきかもしれない.このサービスを行っている機関についてはDNA bankingの項を参照のこと.

出生前診断

発症リスクの高い妊娠に対する出生前診断は,通常胎生週数15〜18週頃に実施される羊水検査や胎生週数10〜12週頃に実施される絨毛生検(CVS)により採取された胎児細胞のDNA分析により技術的には可能である.出生前診断の実施以前に,家系内患者の疾患原因アレルが同定されていることが条件である.

注:胎生週期とは最終月経の第1日から換算するか,超音波による計測によって算出される.

何らかの治療法があり,知能障害をもたらすことも寿命を短縮させることもない(遺伝性多発性骨軟骨腫のような)疾患に対する出生前診断の希望は多くない.出生前診断を行うことに対しては,専門医のあいだでも家族によっても考え方が異なるだろう.特に,検査が妊娠中絶を考慮したうえで行われる場合にはなおのことである.たいていの医療機関では出生前診断を受けるかどうかの決定は両親の選択に委ねると考えるであろうが,この問題に関しては慎重な議論が必要である.

着床前診断(PGD) 胚細胞を用いた着床前診断(PGD)は,EXT1遺伝子やEXT2遺伝子に疾患原因遺伝子変異が同定されている場合,遺伝性多発性骨軟骨腫の子を持つリスクが50%の夫婦に実施することができる.妊娠は補助生殖技術を通じて可能となり,不妊治療専門医や内分泌学専門医との協力が必要となる.PGDを提供している施設に関しては,こちらをご覧ください.


更新履歴

  1. 遺伝性多発性外骨腫 (Hereditary Multiple Exostoses )
    GeneReview 著者: Gregory A Schmale , MD; Howard A Chansky , MD; Wendy H Raskind , MD, PhD.
    日本語訳者:古庄知己(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    GeneReview 最終更新日: 2003.7.2.日本語訳最終更新日: 2003.8.21.
  2. 遺伝性多発性骨軟骨腫 (Hereditary Multiple Osteochondromas)
    Gene Review著者: Gregory A Schmale, MD, Wim Wuyts, PhD, Howard A Chansky, MD, Wendy H Raskind, MD, PhD
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋 (信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)    
    Gene Review 最終更新日: 2008.9.5. 日本語訳最終更新日: 2011.4.26 (in present)

原文 Hereditary Multiple Osteochondromas

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