Gene Review著者: Felicia B Axelrod, MD, Gabrielle Gold-von Simson, MD, MSc, Carole Oddoux, PhD
日本語訳者:芳賀信彦(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科)
Gene Review 最終更新日: 2008.8.5 日本語訳最終更新日:2010.2.14
原文 Hereditary Sensory and Autonomic Neuropathy IV
疾患の特徴
遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型(HSAN IV)の特徴は、痛覚と温度覚に影響を及ぼす先天的かつ重篤な感覚消失と発汗欠如である。痛覚の低下による二次的な結果として以下の症状が認められる:口腔の自傷(舌、口唇、頬粘膜をかむこと);指尖部をかむこと;反復する骨折と関節損傷。無汗の結果、高温環境下での体温調節が不良となり、発熱エピソードを繰り返す可能性がある。発達の進行は、健常者と同様に推移するか軽度の遅延が認められるに過ぎないが、重度の学習障害が発生する可能性がある。一般的に、多動および情緒不安定が認められる。
診断・検査
リン酸ヒスタミンの皮内注射後に軸索性紅斑は認められないが、このことはHSANの全ての型に共通する所見であり、HSAN IVに特異的なものではない。HSAN IVの診断基準を満たす全患者の遺伝子配列解析により、HSAN IVとの関連性が知られている唯一の遺伝子であるNTRK1(TRKA)の変異が同定されている。
臨床的マネジメント
症状の治療: 歯の平滑化または抜歯によって自傷を防止すること;認識されない傷害の初期徴候を毎日評価することによって整形外科領域の二次的な重篤障害または消耗性障害を防止すること;アセトアミノフェンおよび/またはイブプロフェンを投与して、あるいは水浴または冷却用ブランケットで覆うことによって直接体温を低下させることにより異常高熱を抑制すること; 瞼板縫合術、角膜パッチ移植、角膜形成術および/または強膜保護コンタクトレンズで神経栄養性角膜炎を防止すること。抗精神病薬および/または注意欠陥多動性障害(ADHD)治療薬を必要に応じ行動療法と併用すること。行動遅滞、発達遅滞、運動遅滞に対する介入;学齢期および思春期の小児には教育支援と社会支援の提供。
二次性合併症の予防: 周術期には、体温管理に注意すること。検診: 眼科、歯科、整形外科領域の検査を毎年受けること。
回避しなければならない薬剤/環境: 高温で乾燥した気候;運動量の多い活動およびスポーツ;術後期における不適切な鎮静。
本症のリスクを有する血縁者の検査:患者に高体温症が発生するのを防ぐため、家系に特異性な変異について分子遺伝学的検査を実施することにより、リスクを有する乳児の遺伝状況を解明すること。
遺伝カウンセリング
HSAN IVは常染色体劣性の遺伝形式をとる。 片親性ダイソミーが報告されている。保因者であることが判明している両親の子供の場合、25%の確率で本症を発症し、50%の確率で無症候性の保因者となる。子供が本症を発症せず、保因者にもならない確率は25%である。家族内で疾患の原因となる変異が同定された場合、本症のリスクを有する家族の保因者検査およびリスクの高い妊婦の出産前検査を実施することが可能である。
臨床診断
遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型[HSAN IV;先天性無痛無汗症(CIPA)としても知られている]は、以下の事項の確認により臨床的に診断される:
注: (1)ヒスタミン試験は迅速、比較的経済的、高感度である。(2)ヒスタミン試験のみを実施しても、各種のHSAN型を識別することはできない;ただし、他の臨床所見を考慮すれば、ヒスタミン試験は患者を分類するのに有用である。
重篤な学習障害と認知障害の発生頻度は高い[Indo 2002]が、全ての患者に認められるわけではない [Ohto et al 2004; Oddoux et al, 発表予定]。
検査
組織学的検査
分子遺伝学的検査
遺伝子 NTRK1 (TRKA)は、HSAN IVとの関連性が知られている唯一の遺伝子であり[Indo et al 1996]、正確に分類された全てのHSAN IV症例に共通している。
臨床的検査
本症の分子遺伝学的検査について、表 1に要約した。
表1. 遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型で使用される分子遺伝学的検査
遺伝子記号 | 検査法 | 検出される変異 | 検査法による変異検出頻度1 | 検査の利用性 |
---|---|---|---|---|
NTRK1 | 配列解析 | 配列変化2,3 | >99% | 臨床 |
検査結果の解釈 配列解析結果を解釈する際に考慮しなければならない問題については、ここをクリックして頂きたい。
検査手順
発端者の診断は、主に痛覚・温度覚の障害および無汗症の臨床所見によって下される。診断は分子遺伝学的検査によって確認される[Indo 2001, Indo 2002]。
リスクのある親族の保因者診断には、家系内の疾患を引き起こす変異を事前に同定することが必要である。
注:本症が稀であること、未知の臨床的意義を有する変異を検出する確率について考慮すると、保因者の配偶者がHSAN IVの家族歴をもたない場合、この配偶者の完全な遺伝子配列解析を実施することは推奨されない。
リスクを有する妊婦を対象とした出産前診断については、家系内の疾患を引き起こす変異を事前に同定することが必要である[Oddoux et al, 発表予定]。
遺伝学的に関連する疾患
個々の遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチー(HSANs)を分類するために使用されている臨床診断基準についての議論から、NTRK1の変異がHSAN Vとも関連している可能性が示唆されている [Houlden et al 2001]。
HSAN Vと診断された少年が、NTRK1変異のホモ接合体であったという所見から、HSAN IVとHSAN Vが対立遺伝子疾患である可能性が示唆される[Houlden et al 2001];しかしながら、他に同様の症例は報告されていない。HSAN Vに罹患していてもNTRK1の変異がない小児が報告されていることから、一部の患者では、他の単一の遺伝子あるいは他の複数の遺伝子が疾患を引き起こしている可能性が示唆される[Toscano et al 2002]。
NTRK1とTPM3、TPR、TFGのいずれかの間における遺伝子再配列の結果として発生する構成的なチロシンキナーゼ活性を引き起こす体細胞機能獲得型変異は、甲状腺乳頭癌において報告されている[Greco et al 2004, DeLellis 2006]。 NTRK1 の構成的活性化は、神経芽細胞腫におけるスプライス変異の発現パターンの変化の結果として検出され[Tacconelli et al 2004]、乳癌および前立腺癌では、神経成長因子による自己分泌刺激の誘導で検出される[Djakiew et al 1991, Dolle et al 2004]。
遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型(HSAN IV)に特徴的な痛覚と温度覚に影響を及ぼす重篤な感覚消失と発汗障害は、小児の定期予防接種として実施される注射等の疼痛刺激に対して適切に反応しないことで小児期から明らかである。発汗は、正常な体温維持に重要な役割を果たすため、高温環境条件下では、発汗しないことによって体温調節が障害され、発熱エピソードを繰り返しやすくなる [Loewenthal et al 2005]。新生児における異常高熱が、本症の最初の徴候となる可能性がある。
疼痛知覚が低下しない領域はなく、脳神経および内臓感覚にも影響が及ぶ[Yagev et al 1999, Shorer et al 2001]。自傷行為は一般的に認められる。軟部組織(舌、口唇、頬粘膜)の咬傷や瘢痕をはじめとする口腔内の自傷はとくに一般的である。乳児の口腔内の自傷で特徴的なのは舌潰瘍である。多くの乳児患者は、最初の切歯萌出時から指先を噛み始める。
X線写真で、反復する骨折、関節変形、関節脱臼、骨髄炎、虚血性壊死、先端骨溶解(acro-osteolysis)の所見が認められる[Schulman et al 2001]。骨折は治癒が遅延し、とくに体重を支える大関節は外傷を繰り返し、シャルコー関節(神経障害性関節症)に至る可能性が高い。骨髄炎も頻発する。
無汗症は、体幹と上肢では本疾患の100%に認められるが、他の身体領域では症状が多様である[Ismail et al 1998, Axelrod 2002]。
通常、皮膚は乾燥し、手掌は苔癬化している;爪は栄養障害を呈している;頭皮は乏毛状態を示す。
一般に、言語は明確である。出生後の数年間には、低緊張が高頻度で認められるが、成長と共に筋力と筋緊張が正常化する;腱反射は正常である[Axelrod 2002]。概念的思考と抽象的な論理における欠陥が明らかである。大多数の患者に重篤な学習障害が認められるため、一部の研究者は、HSAN IV型が認知障害によって特徴付けられると述べている[Indo 2002]。
多動と情緒不安定が一般的に認められる;患者の約50%に激しい怒りがみられる。
患者の大多数が、涙液の基礎分泌量の低下によって点状表層角膜症に至り、角膜潰瘍と角膜感染が発生しやすい状態となっている[Yagev et al 1999, Amano et al 2006]。
その他の自律神経性変化は軽度であるか、観察されない:
一部の患者において、副腎機能の低下およびブドウ糖負荷に対する初期インスリン反応の異常が観察されている[Toscano et al 2000, Schreiber et al 2005]。
各機能の予後は、発現の程度および二次的な臨床障害をコントロールする能力によって決定される。神経生理学検査
神経病理学検査により、腓腹神経および橈骨神経の皮枝を含む感覚神経内の無髄線維数と小径有髄線維数の減少を証明することが可能である[Swanson et al 1965, Goebel et al 1980, Itoh et al 1986]。
皮膚の検査
無汗症は、おそらく、胸腰部の交感神経性流出からの神経細胞供給の減少に起因するものと考えられる。
剖検により、後根神経節における小型ニューロンの欠損、後根における小線維の欠如、リッサウアー路の欠損、小線維の欠乏を伴う三叉神経脊髄路のサイズの縮小が証明される[Swanson 1963, Swanson et al 1965]。これらの所見は、一般に、痛覚と温度覚に関与すると考えられている一次求心性系統のほぼ完全な欠損を示している。
遺伝子型と臨床型の関連
遺伝子機能を阻害するような同一変異を2個有している患者の間でも、その発現型は多様で幅が認められる[Shatzky et al 2000]ことから、他の遺伝要因や環境要因との相互作用が表現型に寄与している可能性が示唆される。
変異は、タンパク質の細胞内ドメインまたは細胞外ドメインをコードする遺伝子部分に発生し、発現の多様性にさらなる影響を及ぼす可能性がある。複合ヘテロ接合体の患者(2つの異なる異常なNTRK1対立遺伝子が、対をなす染色体上に1つずつ存在する患者)では、通常とは異なる軽微な発現が確認される場合がある[Ohto et al 2004; Oddoux et al, 発表予定]。対立遺伝子の1つが、タンパク質のカルボキシ末端において、遺伝子をコードする部分におけるミスセンス変異である場合、軽微な表現型が観察される。このことから、タンパク質のカルボキシ末端と相互作用するシグナル伝達経路の一部に組織特異性が認められ、この対立遺伝子が、全てではないとしても一部の組織内で機能し、これによって、さらに軽微な発現に至る可能性が示唆される。頻度
HSAN IVの発生頻度はHSANの中で第2位であり、世界各国で報告されている。
HSAN IVは、日本人とイスラエル・ベドウィン系の人々を除き、大多数の民族において非常に稀な疾患である。日本人とイスラエル・ベドウィン系の人々では、比較的頻度の高い創始者変異が報告されている[Miura et al 2000, Shatzky et al 2000, Indo 2001]:
報告症例の半数は、近親婚の両親の間に生まれた子供であった[Axelrod 2002, Indo 2002]。
特異的保因者頻度に関するデータは報告されていない。本セクションでは障害の遺伝子検査に言及するが、その利用に関する最新情報については、GeneTests Laboratory Directoryを参照して頂きたい。―編集者注
遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチー(HSANs)。 HSAN IVは、HSANsとよばれる疾患群に属している[Hilz 2002]。5つのタイプのHSANが確認されている。HSAN IVは、広範な無汗症と関連する唯一のHSANである。
遺伝性感覚性ニューロパチーI型 (HSAN I)は、初期の著明な感覚消失と後期の明確な感覚現象(感覚異常、特徴的な「電撃」痛あるいは「うずくような」痛み)によって識別される遺伝性運動感覚性ニューロパチーの軸索型である。感覚の消失によって損傷を負っても痛みを感じない可能性があり、損傷が放置されると治癒が遅延し、遠位部の切断が必要な骨髄炎に至る場合がある。通常、HSAN Iは、進行性の感音性難聴と関連している。全ての進行症例において運動障害が認められ、重篤な障害となる可能性がある。20歳以降の患者では、遠位筋からはじまる萎縮および筋力低下が近位筋にまでおよび、後年には移動に車椅子が必要となる可能性がある。時に、手足の大量発汗が報告され、瞳孔異常の患者はほとんど存在しない;自律神経障害の内臓徴候は認められない。遺伝は常染色体優性である。明確な家族歴を有する人々の約90%および孤発症例(家系内で単一の症例)の約10%において、SPTLC1の変異が同定されている。
遺伝性感覚性ニューロパチーII型(HSAN II) (Morvan病;アクロジストロフィーニューロパチー)。症状は、乳児期または幼児期に発生する。患者には末端無汗症;潰瘍、爪周囲炎、ひょう疽、あるいはその他の手指や足趾の栄養性変化;その他の自律神経機能障害(緊張性瞳孔、口腔運動失調、消化器の運動障害による便秘、膀胱機能障害、間欠熱、知覚障害、低緊張、無呼吸)が認められる。認識されない損傷や神経障害性関節症(シャルコー関節)が発生する。腱反射の低下や消失を除き、全身の神経学的検査は正常である。遺伝は常染色体劣性である。
HSAN III型(家族性自律神経失調症; FD)は、小径有髄ニューロンと無髄ニューロンに影響を及ぼす発達障害であり、本障害の結果として感覚障害や自律神経機能障害に至る。症状は出生時から存在しており、哺乳力低下と低緊張が初期徴候である。感覚機能障害は痛覚と温度覚に影響を及ぼすが、HSAN IVほど重篤な影響を及ぼすわけではなく、手足には障害がない。自律神経障害の結果として、感情的な流涙の欠如、口腔運動失調、起立性低血圧と突発性高血圧を伴う心血管不安定性が発生する。患者は、悪心を伴う周期性嘔吐、嘔気、流涎過多、喀痰分泌過多、高血圧、頻脈、皮膚のまだら縞様の紅斑を呈する場合が多い。臨床診断基準として、流涙の欠損、深部腱反射の消失、舌の茸状乳頭の欠損が挙げられる。遺伝は常染色体劣性である。FDはIKBKAP (RefSeq NM_003640.3)の変異によって発生するが、最も一般的なのは、イントロン20 (c.2204+6T>C) における組織特異性ミススプライシング変異である[Anderson et al 2001, Slaugenhaupt et al 2001]。患者の99%以上がアシュケナージ系ユダヤ人であり、c.2204+6T>C 変異のホモ接合体である。HSAN IVは遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型またはCIPAであり、今回のGeneReviewのテーマである。
HSAN Vは痛覚の選択的消失によって特徴付けられる、触知刺激、振動刺激、熱刺激に対する反応は正常である。その他の神経学的検査は正常である。スウェーデンの大家系で血族婚の両親に生まれ、HSAN Vの重篤な症状を呈する小児3名は、NGFB の変異を有するホモ接合体であった[Einarsdottir et al 2004]。遺伝は常染色体劣性である。
最初の診断に続いて行なう評価
遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型(HSAN IV)と診断された患者における疾患の罹患範囲を確立するため、下記の評価を実施することが望ましい:
病状の治療
本疾患の治療は支持療法の持続であり、治療は次の方向で進められる:(1)重篤/重度の変形を引き起こす可能性のある自傷および整形外科領域の問題の発生を防止すること、(2)異常高熱を抑制すること。支援を提供し、乳児期および初期幼児期に発見された行動遅滞、発達遅滞、運動遅滞に対する治療を推進することが重要である。また、学齢期の小児や思春期の青少年には教育支援や社会支援を提供することも重要である。
異常高熱。体温の急激な上昇には、アセトアミノフェンおよび/またはイブプロフェンの使用が有効であり、水浴または冷却用ブランケットで覆うことによって直接体温を低下させることも可能である[Axelrod 2002]。
整形外科領域
歯 自分で抜歯した結果、あるいは損傷を回避するために予防的に抜歯した結果として、一部の歯が欠損している患者は多い。HSAN IV患者の場合、早期診断と特異的な歯科ケアが、指先をかむことや口腔顔面症状の防止に有効である[Bodner et al 2002]。乳歯の萌出直後に始まる指先をかむ行為に対処する場合、指の自己切断等の最悪の事態に至るのを防止するため、歯の先端部の平滑化あるいは抜歯さえも必要となる[Bodner et al 2002]。(訳注:日本では咬傷を予防する目的で保護プレートを装着し、抜歯を避ける治療法も行われている)
眼 神経栄養性角膜炎はベースラインの水分の減少と角膜感覚鈍麻が併発して引き起こされる頻度の高い合併症であり、瞬目反射および角膜の最適な湿潤が障害される結果となる。治療法として、瞼板縫合術、角膜パッチ移植、角膜形成術、強膜保護コンタクトレンズの装着が挙げられる[Yagev et al 1999]。
行動 とくに易刺激性、多動、衝動性、表出行動は、年齢と共に改善する。抗精神病薬および/または注意欠陥多動性障害(ADHD)治療薬による薬物療法と行動療法を併用することは有効であると思われる。二次病変の予防
周術期は、体温を慎重にモニタリングすることが必要である;患者に保温用ブランケットを用いてはならない。
筋弛緩薬の使用が問題となることはなく、悪性異常高熱とHSANが関連していないことを理解しておく必要がある[Tomioka et al 2002]。
経過観察
HSAN IV患者は、総合的ケア、および最適なケアに必要な多様なサブスペシャリティ間の情報交換を推進している医療機関で毎年経過観察を受けるべきである。臨床の専門家としては、眼科医、歯科医、整形外科医が必須である。
回避すべき薬剤/環境
リスクのある親族の検査
特定の家系に疾患を引き起こす変異が判明した場合、分子遺伝学的検査を用いてリスクを有する乳児を評価し、本症の患者のモニタリングを行い、高体温および予想される合併症(熱性けいれん等)を回避する。
遺伝カウンセリングの目的でリスクを有する血縁者の検査に関する問題を検討する場合、Genetic Counseling(遺伝カウンセリング)の項目を参照して頂きたい。
研究中の治療法
広範囲にわたる疾患及び病態に関する臨床試験の情報の入手を希望する場合には、ClinicalTrials.gov(臨床試験関連サイト)にアクセスして検索して頂きたい。 注:本症についての臨床試験は実施されていない可能性がある。その他
遺伝学の専門家が所属する遺伝クリニックでは、自然歴、治療、遺伝形式、他の家族に対する遺伝リスク、利用可能な消費者向け資料に関する情報を患者個人や家族に提供している。GeneTests Clinic Directory(GeneTests臨床ガイド)を参照して頂きたい。
本症を対象とする疾患特異的および/または包括的支援組織に関しては、Consumer Resources (消費者用資料)を参照して頂きたい。これらの組織は、個人や家族に対して情報、支援、他の患者との交流の機会を提供するために設立されている。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV型(HSAN IV)は常染色体劣性で遺伝する。
患者家族のリスク
発端者の両親
発端者の同胞
発端者の子
発端者の他の家族 発端者の両親の同胞については、それぞれが50%のリスクで保因者である可能性がある。
保因者診断
家系内で疾患を引き起こす変異が同定された場合、保因者検査を実施してリスクを有する親族を検出することが可能である。既知の保因者の配偶者を対象とする保因者検査については、日本人またはイスラエル・ベドウィン系の人々の場合に考慮しなければならない。しかしながら、他の民族において本症が稀であること、未知の臨床的意義を有する変異体を検出する確率について考慮すると、保因者の配偶者がHSAN IVの家族歴をもたない場合、この配偶者の完全な遺伝子配列解析を実施することは推奨されていない。
日本人あるいはイスラエル・ベドウィン系の人々を除き、この稀な遺伝性疾患についての集団スクリーニングを実施することは適切ではない。
遺伝カウンセリングに関連した問題
早期診断と治療の目的でリスクを有する親族の検査について検討する際には、「臨床的マネージメント」の項目のTesting of Relatives at Risk(リスクのある親族の検査)を参考にして頂きたい。
家族計画
出生前診断
リスクのある妊娠について出生前診断が技術的に可能である。 DNAは胎生16-18週に採取した羊水中細胞や10-12週*に採取した絨毛から調製する。成人発症型疾患の出生前診断の希望に対しては注意深い遺伝カウンセリングを必要とする。出生前診断を行う以前に、罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある。
訳注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない。
疾患を引き起こす変異が同定された家族の場合、着床前診断(PGD)を利用することが可能である。PGDを提供している検査機関については、を参照して頂きたい。