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高カリウム性周期性四肢麻痺1型
(
Hyperkalemic Periodic Paralysis Type 1)

Gene Review著者: Karin Jurkat-Rott, MD, PhD, Frank Lehmann-Horn, MD, PhD
日本語訳者: 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 筋チャネル病および関連疾患の診断・治療指針作成および新規治療法開発に向けた基盤整備のための研究班    
Gene Review 最終更新日: 2009.8.11. 日本語訳最終更新日:2011.1.10.

原文 Hyperkalemic Periodic Paralysis Type 1


要約

疾患の特徴 

高カリウム性周期性四肢麻痺1型(HyperPP1)は以下の特徴を有する。すなわち、四肢(眼、咽頭、体幹筋にも及ぶことがある)の弛緩性麻痺発作があること、麻痺発作中に高カリウム血症(血清カリウム濃度>5 mmol/L)あるいは血清カリウム値の少なくとも1.5 mmol/L以上の上昇を認めることあるいはカリウムの経口摂取による誘発・増悪を認めること、発作間欠期には血清カリウム値が正常で筋力も正常であること、20歳以前の発症であること、パラミオトニー(寒冷や運動で惹起される筋のこわばり)を認めないことである。弛緩性の麻痺は通常10歳以下から生じる。当初発作頻度は低いが、次第に発作頻度・強度は50歳ごろまでひどくなるが、50歳を超えると発作頻度は明らかに少なくなる。カリウムを多く含む食物、運動後の安静は麻痺を惹起しやすい。寒い環境、精神的ストレスや妊娠は、発作を引き起こしたり増悪させたりする。自然に生じる発作は、朝食前に良く生じ、15分から1時間ほど持続した後消失する。麻痺発作中に不整脈や呼吸不全は通常生じない。麻痺間欠期にHyperPP1は軽いミオトニー(筋のこわばり)を通常有するが、随意運動を妨げるほどではない。多くの年配の罹患者では慢性進行性のミオパチーをきたす。

診断・検査 

診断は臨床所見に基づく。診断が不確実な時には、3つの誘発試験のうちのどれかを施行することができる。HyperPP1は骨格筋電位依存性NaチャネルをコードするSCN4A遺伝子の点変異により生じる。9つの高頻度変異を対象とした標的変異解析で罹患者の約55%に変異を見出すことができる。シークエンス解析も臨床上利用可能である。

臨床的マネジメント 

臨床症状に対する治療:筋力低下のはじまりに軽い運動や炭水化物の摂取、サルブタモールの吸入、グルコンサンカルシウムの経静脈投与などで、発作を予防ないし中断することができることがある。
一次症状の予防:麻痺発作は炭水化物を豊富に含む食事を頻回に取ること、サイアザイド系利尿薬やアセタゾラミドを継続的に服用することや、カリウムを多く含む食物や空腹、重労働、寒冷への暴露を避けることで予防することが可能である。

二次的症状の予防外科手術の時に脱分極性のあるスキサメトニウム、コリンエステラーゼ阻害薬、カリウムを避ける。これらはミオトニーを増悪させ、咬筋のスパスム・呼吸筋や他の骨格筋の強直をきたし気管内挿管や機械的人工換気を阻害する可能性がある。

経過観察予防的治療中は、利尿剤による著明な低カリウム血症を避けるため、年2回程度カリウム濃度を測定。神経学的評価や下肢近位MRIを3年ごと。

回避すべき薬物/環境カリウムの多い薬物や食物。空腹、肉体労働、寒冷への暴露

リスクのある血縁者の検査:無症状の血縁者に対し、罹患者で同定された疾患原因変異を検査することは、外科手術前に予防的方策を始めることのためには適切である。

遺伝カウンセリング 

HyperPP1は常染色体優性形式で遺伝する。ほとんどのHyperPP1は罹患した親を持つ。新生突然変異の症例の割合は不明である。罹患者の子供が変異を受け継ぐ可能性は50%である。遺伝するリスクのある妊娠に対し、出生前診断は家系における原因変異が判明していれば可能ではある。しかしながら、知能に影響がなく何らかの治療が存在するHyperPP1のような疾患に対する出生前診断の要望はあまりない。


診断

臨床診断

診断基準 HyperPP1の診断は以下のような所見にもとづく。

  • 少なくとも2回の四肢(眼、咽頭、体幹筋にも及ぶことがある)の弛緩性麻痺発作の病歴
  • 麻痺発作中の高カリウム血症(血清カリウム濃度>5 mmol/L)あるいは血清カリウム値の少なくとも1.5 mmol/L以上の上昇。また/あるいはカリウムの経口摂取による誘発あるいは増悪
  • 発作間欠期の血清カリウム値が正常で筋力も正常
  • 20歳以前の発症である
  • パラミオトニー(寒冷や運動で惹起される筋のこわばり)がない
  • 発作間欠期に不整脈がない
  • 正常の精神運動発達
  • 典型的には、少なくとも1名の罹患した一親等親族
  • 他の遺伝性高カリウム血症(鑑別診断参照)および後天性高カリウム血症(薬物、腎・副腎機能障害)

筋電図(EMG) 筋電図におけるミオトニーの徴候の存在により、診断は強く支持される。しかし、高頻度変異を持つ罹患者の約50%で電気的ミオトニーを観察することができない。

  • 麻痺発作中には、筋電図は運動単位の減少を示し、電気的沈黙(刺入時、随意活動電位の消失)も示す
  • 発作間欠期には、臨床的にミオトニー現象が認められなくても、筋電図でミオトニー活動(振幅・周波数が変動する活動電位の高頻度発射)が認められることがある
  • 特に永続的な筋力低下を示す患者では、筋原性のパターンが見られることがある。

検査

血清カリウム濃度

  • 麻痺発作中に、血清カリウム値は1.5-3 mmol/L上昇し、通常血清カリウム値は5 mmol/Lを十分に超える。

    注意:発作の終わりには、腎からの排泄および筋への再取り込みのため、一過性の低カリウム血症を呈すことがあり、低カリウム性周期性四肢麻痺と誤診される可能性がある。

  • 心毒性を呈するほどの血清カリウム値の上昇は非常にまれであるが、心電図変化(T波の増高)を生じることはある。

血清クレアチンキナーゼ(CK)濃度. 発作の間欠期に、血清CK値は上昇する(時に正常の5倍から10倍)。血清ナトリウムおよびカリウム濃度は正常である。

誘発試験 診断が不確実な時、すなわち発作時の血清カリウム値の測定がなく、分子遺伝学的検査も陰性の場合には、診断を確実にするために誘発試験が用いられる。全身的な誘発試験は重度の発作を引き起こす危険性を有しているため、経験のある医師のもとで麻酔科医待機の上で、心電図や血清カリウム値を注意深くモニターし施行すべきである。

  • 古典的な誘発試験は2-10gのカリウムを臨床的管理下で投与し、20分ごとに血清カリウム濃度・筋力を測定する。通常発作は1時間以内に引き起こされ、約30-60分持続し、血清カリウム濃度の上昇を伴っており自然に生じる筋力低下の発作と類似する。もともと血清カリウム濃度の高い患者や、十分な腎機能・副腎機能を有さない患者には禁忌である。
  • 別の誘発試験としては、自転車エルゴメーターを用いて、脈拍を120-160回/分程度に上昇する程度の30分間の運動の後、ベッド上で絶対安静とする。罹患者の血清カリウム濃度は、運動中に上昇し、運動後に低下、さらに終了後20分後に二度目の上昇が見られる。
  • 局所的誘発試験は、複合筋活動電位(CMAP)の測定による。2-5分の運動後に通常以上のCMAP上昇が見られた後、通常以上のCMAP振幅の緩徐な減衰が見られる。減衰は運動後の最初の20分間が最も早い。減衰が一番重要な指標である。著者らの経験では、その結果はhyperPPに特異的ではなく、変異の種類にも特異的ではない。

筋生検 特異的所見がないこと、結果が治療方法・予後に影響を与えないことから、hyperPP1が疑われる患者に対する筋生検は一般的には推奨されない。脱力発作が出現し始めた年代には、電子顕微鏡レベルでも形態学的異常は認められない。発作の強さとは関係なく病気の進行の過程で、T管系の成分や筋小胞体の、増加・拡張・変性が生じ、空胞が形成され、いわゆる空胞性ミオパチー(vacuolar myopathy)に至る。

分子遺伝学的検査

遺伝子 HyperPP1は骨格筋電位依存性NaチャネルをコードするSCN4A遺伝子の点変異により生じる。

臨床的検査 

標的変異解析. 9の高頻度の変異(表1)に対する分子遺伝学的検査で、臨床診断基準を満たしたhyperPP1の約60%に変異が同定される。

シークエンス解析. SCN4Aのシークエンス解析は、9の高頻度変異が陰性であった罹患者において変異を同定するために行われる。

表1  hyperPP1に用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子記号

検査方法

同定される変異1

変異検出率

検査の実施可能性

SCN4A

標的変異解析2

p.Leu689Ile

<1%

臨床レベル
graphic element

p.Ile693Thr

~15%

p.Thr704Met

~59%

p.Ala1156Thr

<1%

p.Met1360Val

<1%

p.Met1370Val

<1%

p.Ile1495Phe

<1%

p.Met1592Val

<25%

p.[Phe1490Leu; Met1493Ile]

<1%

シークエンス解析

 

80%

  1. 検査機関により同定される変異にはばらつきがある。
  2. 標的変異解析とはSCN4Aの高頻度の変異の特異的な解析をさす

検査結果の解釈 シークエンス解析の結果の解釈に関してはこちら参照のこと

検査手順

発端者の診断確定には、以下の検査が適応となる

  • 発作の間欠期および可能であれば麻痺発作中の血清カリウム濃度
  • QT延長症候群および心室性不整脈を除外するための心電図記録
  • 筋電図記録(ミオトニー活動は低カリウム性周期性四肢麻痺HOKPPよりもhyperPPを支持する)
  • 血清CK濃度(通常軽度上昇)
  • SCN4Aの分子遺伝学的検査。もしSCN4A陰性であればKCNJ2CACNA1Sの解析。いっぽうKCNE3のシークエンス解析は必要ではない。
  • 臨床症状が非典型的であったり、SCN4A変異を認めない症例では、誘発試験、ホルター心電図、筋生検

予後 p.Thr704Met変異を有する患者の多くは永続的な筋力低下に至る。

発症前診断 遺伝するリスクのある妊娠に対する発症前診断には、家系における原因変異の事前の同定が必要である。

遺伝学的に関連する(同一原因遺伝子による)疾患

いくつかのタイプのミオトニーや周期性四肢麻痺はSCN4A遺伝子変異により生じる。

カリウム惹起性ミオトニー  カリウム惹起性ミオトニーの患者では、激しい運動やカリウムの経口摂取の後、強いこわばりを示す。軽症(myotonia fluctuans)から非常に強い(myotonia permanens)までスペクトラムに幅がある。

  • Myotonia fluctuans 最も軽いタイプである。罹患者は筋のこわばりに気づいていなかったり、日によって変動するこわばりを経験している。数分の安静の後の、1回の筋の収縮により、数時間動けなくなるほどの強いこわばりが誘発されことがある(delayed myotonia)。痛みを時に伴う、この運動誘発性の筋痙攣は高カリウム血症や脱分極性の薬剤により生じることがある。こわばりは運動を続けることでおさまる(warm-up現象)
  • Acetazolamide-responsive myotonia 別名atypical myotonia congenitaとしても知られている。運動により筋肉痛が誘発され、アセタゾラミドが症状を緩和する。
  • Myotonia permanens 非常に症状の強い型であり、筋電図で持続的なミオトニー活動が認められる。持続的な電気的ミオトニーは著明な全身(顔も含む)の筋肥大を呈し、Schwartz-Jampel症候群と以前混同されたことがある。特定のSCN4A遺伝子変異により生じる。

先天性パラミオトニー 主要な症状は寒冷により引き起こされ、持続活動で増悪する筋のこわばりである(paradoxical myotonia)。特徴的なものに、続けて何回か力強く目を閉じると、開けられなくなるというものがある。パラミオトニーは通常カリウムで惹起されることはない。多くの患者では、激しい運動や寒冷によるこわばりから、弛緩性の筋力低下や麻痺にさえ至ることがある。

  • p.Arg1448Ser, p.Arg1448Cys, p.Arg1448Hisおよびp.Arg1448Pro置換の家系では、安静やカリウム摂取後により引き起こされ、1時間弱続く全身性の高カリウム性周期性四肢麻痺発作を伴う。いっぽう、寒冷により引き起こされた筋力低下はたとえ筋肉を温めても通常数時間続く。
  • p.Met1370Val変異を伴う日本人の一家系において、1名がパラミオトニーを呈し、その他は高カリウム性周期性四肢麻痺を呈した。
  • p.Thr704Metやp.Met1592Valといった典型的なhyperPPを引き起こす変異において、パラミオトニー徴候が報告されている。

低カリウム性周期性四肢麻痺2型 低カリウム性周期性四肢麻痺(HOKPP)は血清カリウム値の低下(低カリウム血症)を伴う、弛緩性の筋力低下の発作を特徴とする。血清カリウム濃度の変化はhyperPP1に見られるのと逆であり、誘発試験に対する反応も逆である。例えば、カリウムの経口投与は高炭水化物食で誘発された発作を抑制する。本症ではミオトニーは認められない。発作はhyperPP1に比べて持続時間が長い。ミオパチーや永続的な筋力低下も生じる。SCN4Aのコドン672のアミノ酸が置換する変異(p.Arg672Ser, p.Arg672Gly, p.Arg672Cys, p.Arg672His)およびp.Arg669HisがHOKPP2を引き起こす。

正カリウム性周期性四肢麻痺(命名参照)脱力発作時、血清カリウムが正常で、hyperPPやHOKPP両者に共通点のある周期性四肢麻痺のタイプが報告されている。カリウム感受性はhyperPPに類似するが、他のすべての症状はHOKPPに似ている。このタイプは、正カリウム性周期性四肢麻痺と名付けられており、SCN4Aのコドン675のアミノ酸置換変異により生じる。コドン675はナトリウムチャネルの2番目のドメインの電位センサーにあるアルギニンをコードしており、HOKPPの原因となるコドンArg669やArg672のすぐ隣に位置する。現時点では、正カリウム性周期性四肢麻痺という用語が今後使用されていくのかどうか不明である。著者らのコホートのほとんどの患者では麻痺発作の折には低カリウムであった。

先天性筋無力症候群 本症は易疲労性の全身筋力低下と生後からの繰り返す呼吸および球麻痺発作を特徴とする。先天性筋無力症候群はSCN4Aの変異により生じる。

臨床像

自然経過

高カリウム性周期性四肢麻痺(hyperPP1)における弛緩性の麻痺は通常10歳以下から生じる。年齢とともに発作頻度・強度はひどくなる。カリウムを多く含む食物の摂取、運動後の安静は麻痺を惹起しやすい。また、寒い環境、精神的ストレス、糖質コルチコイドや妊娠は、発作を引き起こしたり増悪させたりする。

自然に起きる発作は、通常朝食前に始まり、15分から1時間ほど持続しその後消失する。一部の患者では、おそらく高カリウム血症によって引き起こされた異常感覚が、筋力低下の前ぶれとなる。脱力発作中、腱反射は減弱ないし消失する。

激しい運動をした後に持続的に軽い運動を続けることにより、運動を続けた筋でのみ麻痺の出現を遅らせたり防いだりすることができるが、安静にしていた筋では筋力低下が生じる。

発作中に不整脈や呼吸不全は通常起きない。

発作間欠期にHyperPP1の約50%の患者は軽いミオトニー(筋のこわばり)を通常有するが、随意運動を妨げるほどではない。ミオトニーは顔面・舌・母指球・手指筋で簡単に認められる。もし、ミオトニーが存在すれば、他のタイプの家族性周期性四肢麻痺よりもむしろhyperPP1の診断を支持する。

当初発作頻度は低いが、次第に発作頻度・強度は約50歳までひどくなるが、50歳を超えると発作頻度は明らかに少なくなる。しかし多くの年配の罹患者では気づかれないまま慢性進行性にミオパチーをきたす。ミオパチーは主に下肢帯(骨盤肢帯)や下肢近位・遠位筋を侵す。

遺伝子型と臨床型の関連

同じ家系(すなわち同じ変異を有する患者の間)の中にも臨床像にばらつきがあり、変異の違いが、ある定まった症状を引き起こすというよりも、ある臨床型を呈する傾向を示すというように解釈すべきである(表2参照)。

もっとも明らかな傾向として、発作間欠期にミオトニーを示さない患者は、ミオトニーを有する患者に比べ進行性のミオパチーや永続的な筋力低下に至りやすいということがある。この傾向はp.Thr704Met変異を有しミオトニーを示さない患者で明らかであり、約半数が永続性のミオパチーに至る。さらに、「正カリウム性周期性四肢麻痺」(もはや使用されない用語。命名参照)の患者の一部においても同じように、この変異を有している。

表2 HyperPP1における遺伝子型と臨床型の関連

SCN4A 変異

特別な症状

初報

p.Leu689Ile

筋痙攣による痛み

Bendahhou et al [2002]

p.Ile693Thr

寒冷で誘発される筋力低下

Plassart et al [1996]

p.Thr704Met

永続的な筋力低下、ミオパチー

Pta´cek et al [1991]

p.Ala1156Thr

低い浸透率

McClatchey et al [1992]

p.Met1360Val

低い浸透率

Wagner et al [1997]

p.Met1370Val

一例でパラミオトニー、残りはhyperPP

Okuda et al [2001]

p.Ile1495Phe

筋痙攣痛、筋萎縮

Bendahhou et al [1999]

p.Met1592Val

筋電図でミオトニーを呈し、典型的な症状

Rojas et al [1991]

p.Phe1490Leu+ p.Met1493Ile

悪性高熱感受性1

Bendahhou et al [2000]

  1. 麻酔関連症状は、他のナトリウムチャネルの機能獲得変異を有する患者でみられたのと同様に、過大になったミオトニーによる可能性がある。

浸透率 

通常、浸透率は高い(>90%)。臨床的徴候を有さず、筋電図でのみミオトニーが示される患者が稀な変異に伴うものの中に一部存在する。

促進現象

促進現象は本症では認められない

命名

高カリウム性周期性四肢麻痺は1950年代にはじめて報告された。”adynamia episodoca”あるいはGamstorp病として知られていた。カリウムが脱力発作を惹起することや、自然発症の発作時に血清カリウム濃度上昇を伴うことから、高カリウム性周期性四肢麻痺(hyperPP)という用語が推奨される。

正カリウム性周期性四肢麻痺という用語は用いるべきではないと示唆されている。この用語は二つの報告に対し使わされたものが最初である。多くの点で正カリウム性周期性四肢麻痺はhyperPPに類似している。真に異なっているのは、非常に強い発作の際でも正カリウム性の四肢麻痺発作であること、ブドウ糖投与の効果がないことである。最初の報告にあった家族を含む正カリウム性周期性四肢麻痺の家系で、カリウム感受性やSCN4A遺伝子変異が証明されたことから、疾患単位として正カリウム性周期性四肢麻痺の存在が疑問とされた。麻痺発作中あるいは発作後のカリウム濃度が正常であることのみから正カリウム性周期性四肢麻痺としばしば診断されていることや、臨床的あるいは遺伝的に別箇の実体であることが明確に証明されていないことから、この用語は廃すべきであろう。

カリウム感受性の周期性四肢麻痺で、SCN4Aのコドン675のアミノ酸置換変異により生じる、正カリウム性でhyperPPやHOKPP両者に共通点のある周期性四肢麻痺が、正カリウム性周期性四肢麻痺として報告された(遺伝学的に関連する疾患 参照)。現在のところこの用語が学界で用いられていくのかどうか不明である。

頻度 

hyperPP1の頻度はおおよそ1:200,000である。


鑑別診断

遺伝学的に関連する疾患でのべたallelic disorderに加え、高カリウム性周期性四肢麻痺1型(hyperPP1)の診断の際に考慮すべき、周期性四肢麻痺あるいは高カリウム血症を伴う遺伝性疾患について以下に述べる。成人での発症は、Andersen-Tawil症候群や二次性後天性高カリウム性周期性四肢麻痺を示唆する。

SCN4A遺伝子変異により生じるhyperPP1はhyperPPの60-70%をしめる。hyperPPの原因となる他の遺伝子は知られていない。

  • 少なくとも一つのlocus Xp27.3がマップされている。原因遺伝子は同定されていない。カリウムレベルは正常に近いが、罹患者の中でも変動がある。強い脱力のエピソードは、典型的には発熱性疾患で惹起され、体幹・四肢筋に加え顔面や外眼筋も侵される。数週から数カ月の経過で改善する。家系内の若い罹患者は、発作間欠期には正常で、発作時には全身の筋力低下、眼瞼下垂を示し、筋力は変動する。一部の例では、易疲労性が認められ、後に慢性的な筋力低下が起きることがある。
  • hyperPPおよび低カリウム性周期性四肢麻痺(HOPKPP)の両者が別の遺伝子(KCNE3)の変異、あるKチャネルのベータサブユニット(MiRP2)のp.Arg83His置換、により生じると報告された。その後の研究によりp.Arg83Hisは正常人口の1%以上に認められる正常多型であることが判明し、KCNE3は周期性四肢麻痺の原因ではない。

Andersen-Tawil症候群 (カリウム感受性 心調律異常型の周期性四肢麻痺)Andersen-Tawil症候群は周期性弛緩性筋力低下(すなわち周期性四肢麻痺)、心室性不整脈とQT延長に加え、耳介低位、眼間離開、小顎、小指斜指、合指症、低身長、側弯といった奇形、の3徴を特徴とする。10歳以下あるいは10歳代に罹患者は心症状(動悸や失神)か、長時間の安静や運動後の安静によって自然に生じる筋力低下を示す。カリウムチャネルであるKCNJ2遺伝子の変異が原因である。遺伝は常染色体性優性である。

分子遺伝学的検査、心電図、発作間欠期に記録されたホルター心電図が、hyperPP1とAndersen-Tawil症候群とを区別するのに非常に重要である。

入眠時REM睡眠を伴う高カリウム性周期性四肢麻痺 特発性hyperPPに加え、入眠時REM睡眠を伴い日中過眠を示す一例が報告された。症状は血清カリウム濃度を低下させる利尿剤により改善した。遺伝的解析は行われていない。

高カリウム血症を主徴とする遺伝性疾患

  • 副腎不全は高カリウム血症、低ナトリウム血症、低血糖を特徴とする。新生児期における副腎不全は先天性副腎過形成(21-ヒドロキシラーゼ欠損が最も多い原因である)やX連鎖性先天性副腎形成不全を含む先天性副腎形成不全によることがある。副腎皮質機能低下症(アジソン病)は家系内集積を認める自己免疫性疾患であることもあり、他の内分泌異常、特に副甲状腺機能低下症を合併することもある。アジソン病はX連鎖性の副腎白質ジストロフィーでも生じる。
  • 劣性遺伝性新生児低アルドステロン症は、高カリウム血症性疾患であり、生後1年以内に致死的にもなりうる、稀なタイプの塩類喪失を引き起こす。軽度の低ナトリウム血症と高カリウム血症を伴い、繰り返す脱水症と著明な発育障害が典型的症状である。血漿レニン/血清アルドステロン比や血清18-hydroxycorticosterone/アルドステロン比の上昇が検査所見上みられる。
  • 偽性低アルドステロン症1型は、鉱質コルチコイド抵抗性の新生児期塩類喪失を特徴とする。成人まで症状が続く常染色体性劣性遺伝型式のものは、アミロライド感受性上皮ナトリウムチャネルENaCを形成する3つの相同のサブユニットのうちの一つの機能喪失性変異による。このチャネルは、特に尿細管の遠位部において、起電性ナトリウム再吸収の律速段階にある。常染色体性優性あるいは弧発性症例は症状が軽く、年齢ともに軽快する。ある家系で鉱質コルチコイド受容体のtruncationが見出されている。
  • 偽性低アルドステロン症2型は、Gordon高カリウム血症―高血圧症候群としても知られているが、高血圧、腎からの塩類の再吸収増加、カリウムとプロトンの排出障害を特徴とする。排出障害の結果高カリウム血症となるが、サイアザイド系利尿剤により改善することがある。塩類、カリウム、pH調節に重要な腎の遠位ネフロンに存在するWNKファミリーに属するセリン・スレオニンキナーゼのメンバーに変異が同定されている。
後天性持続性の高カリウム血症による二次性周期性四肢麻痺 このタイプの周期性四肢麻痺は血清カリウム濃度が7mmol/Lを超えるとどのような人にも生じる。筋力低下は手袋靴下型の異常感覚を伴うことがある。高カリウム血症は不整脈(通常頻脈)や典型的心電図異常(すなわちT波増高、P波の消失)を示すことがある。運動後の安静がhyperPP1と同様に筋力低下を引き起こす。診断は、発作中の非常に高い血清カリウム濃度、発作間欠期にも持続する高カリウム血症や原因疾患により示唆される。血清カリウム濃度はhyperPP1に見られるものよりはるかに高い。よくある原因は、スピロノラクトン、ACE阻害薬、トリメトプリム、非ステロイド性抗炎症薬、へパリンなどの薬物の慢性使用によるものである。発作性ミオグロブリン血症を呈するミオパチー(たとえばMcArdle病、carnitine palmitoyltransferase II transferase欠損症)は腎障害をきたしその結果カリウムの蓄積に至る可能性がある。後天性持続性高カリウム血症の治療は、食事中のカリウム摂取の制限と高カリウムを引き起こしている原疾患の治療である。

臨床的マネジメント

最初の診断後における評価

高カリウム性周期性四肢麻痺(hyperPP1)と診断された患者において、疾患の程度を確定するため、以下の基本的な評価が推奨される。

  • 神経学的評価
  • 筋の水分蓄積や脂肪変性を同定するための下肢近位の1H MRI(STIR法)。浮腫は利尿薬の継続的投与で改善されるべきである。治療開始後4週で、筋力測定とMRIで評価する。

臨床症状に対する治療

hyperPP1の治療は対症療法であり根治的ではない。

筋力低下のはじまりに軽い運動を継続することや炭水化物(たとえば体重1 kgあたり2 gのブドウ糖)を摂取することで、予防あるいは中断することがしばしばできることがある。発作は通常より長くベッドにいる祝日や週末に生じやすい。罹患者は早く起床し、十分な朝食をとることが勧められる。

一部の患者において、糖質コルチコイドの経静脈投与あるいは0.1 mgサルブタモールの2回の吸入で発作を中断あるいは軽減することができる。

一部の患者において、グルコン酸カルシウム(0.5-2 g経静脈投与)が発作を止めることができる。

一次症状の予防

hyperPP1の患者の予防治療は、炭水化物の豊富な食事を頻回に摂ること、カリウムを多く含む薬物や食物(たとえば果物、フルーツジュース)、空腹、重労働、寒冷暴露を避けることである。

高カリウム性麻痺発作を防ぐために、サイアザイド系利尿薬やアセタゾラミドの継続的使用が勧められる。利尿薬は1日2回から週2回程度で、控え目な処方量で用いる。アセタゾラミドによる副作用の可能性を考えると、サイアザイド系利尿薬が好まれる。処方量はできるだけ少量にすべきである(たとえば25 mgのヒドロクロロチアジドを毎日あるいは隔日)。重症の例では50 mgあるいは75 mgのヒドロクロロチアジドを毎日早朝に服用すべきである。これらの患者では、血清カリウム濃度が3.3 mmol/L以下にならないよう、血清ナトリウム濃度が135 mmol/L以下にならないようモニターすべきである。

二次的症状の予防

正常体温を保つ、血清カリウム濃度を低く維持する、低血糖を避けるなどの手術前の予防策が発作予防に有用である。

注:発作に伴う全身性の筋スパスムは体温の上昇に至ることから、hyperPP1の罹患者は悪性高熱になりやすいと考えられてきた。悪性高熱が疑われる麻酔関連副作用は、おそらく非常に強いミオトニー反応によるものであろう。

経過観察

予防的治療中は、利尿剤による著明な低カリウム血症を避けるため、年2回程度カリウム濃度を測定。値は3.0から3.5 mMの間であるべきである。

神経学的評価や下肢近位筋MRIは3年ごとが適当である。

回避すべき薬物/環境

脱分極性の麻酔薬、スキサメトニウム、コリンエステラーゼ阻害薬、カリウムはミオトニーを増悪させる。咬筋のスパスムや呼吸筋その他の骨格筋の強直をきたし気管内挿管や機械的人工換気を阻害する可能性がある。麻酔覚醒後、hyperPP1罹患者は数時間麻痺している可能性がある。これらの薬剤は絶対に禁忌である。

リスクのある血縁者の検査

無症状の血縁者について同定された疾患原因変異を検査することは、外科手術前に予防的方策を始めることのためには適切である。

リスクのある血縁者の検査に関する遺伝カウンセリングについては遺伝カウンセリングを参照。

研究中の治療法

疾患と症状に対する臨床研究についての情報にアクセスするためには、ClinicalTrials.govを検索されたい。

注:本症に対する臨床試験はないかもしれない。

その他

hyperPP1にともなう麻痺発作に対しメキシレチン(本症と原因遺伝子を同じとする類縁疾患には適応薬である)が影響するかどうかは不明である。

ミオパチーへの進行に対する治療薬の効果についてのデーターはない。

hyperPP1の治療に陽イオン交換体は効果がない。

Genetics Clinicsは遺伝専門家から構成されており,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供するとともに,患者サイドに立った情報も提供する.GeneTests Clinic Directoryを参照のこと.

本疾患に対する疾患特異的あるいは包括支援組織についてはConsumer Resourcesを参照のこと.これらの組織は患者とその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立されている.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

高カリウム性周期性四肢麻痺1型(hyperPP1)は常染色体性優性遺伝形式をとる

患者家族のリスク

発端者の両親

  • ほとんどのhyperPP1の罹患者は、その病気を受け継ぐことになった罹患した親を持つ
  • hyperPP1の発端者は新生突然変異により罹患している可能性がある。新生突然変異の症例の割合は不明である。
  • 明らかに新生突然変異に伴う発端者の親については、発端者の原因変異が同定されていれば、分子遺伝学的検査も含めた評価が推奨される

    注:hyperPP1と診断された多くの患者は罹患した親を持つが、家系内のメンバーが疾患に気付いていなかったり、浸透率が低いことのために、家族歴がないように見えることがある。

発端者の同胞

  • 発端者の同胞のリスクは両親の遺伝的状況による。
  • もし、親が疾患原因変異を有していれば、発端者の同胞のリスクは50%である。
  • 疾患原因変異がどちらの親にも見つからなかった場合、発端者の同胞のリスクは新生突然変異を生じる確率あるいは親における胚細胞系列のモザイクの確率に相当する。これらの可能性は低いが、発端者の同胞もリスクがあるとみなし、発端者に見出された変異を検査することは妥当である。

発端者の子 

hyperPP1の患者の子供たちにはそれぞれ50%の確率で変異が遺伝する。

他の血縁者

他の血縁者のリスクは発端者の家族の両親の状況による。もしどちらかの親が罹患しているあるいはSCN4Aの疾患原因変異を有していれば、その親の血縁者もまたリスクがある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断と治療を目的としたリスクのある血縁者の検査に関する情報は臨床的マネジメント リスクのある血縁者の検査を参照されたい。

明らかに新生突然変異と考えられる家系 常染色体優性遺伝と仮定し、発端者のどちらの親にも疾患原因変異が存在しないか、本症であるという臨床的徴候がない場合、発端者は新生突然変異を有すると考えられる。しかしながら、代替父親、代替母親(たとえば生殖補助医療)、非公開の養子などの非医学的説明の可能性まで調べることもできよう。

家族計画 

  • 遺伝的リスクの評価や出生前診断の利用に関する話し合いは妊娠前に行われるのが望ましい.
  • ASの子どもを持つリスクのある若い成人への遺伝カウンセリングの実施(子への発症リスクや生殖手段なども含む)を勧めることが望ましい.

DNAバンキング  はDNA(通常白血球から抽出)を将来の使用のために保存しておくものである。今後、検査手法や遺伝子、変異、あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩すると予想されるので、罹患者DNAの保存は考慮に値する。DNAバンキングを行っている研究所のリストを参照せよ。

出生前診断

リスクのある妊娠について出生前診断が技術的に可能である。 DNAは胎生16−18週に採取した羊水中細胞や10−12週*に採取した絨毛から調製する。成人発症型疾患の出生前診断の希望に対しては注意深い遺伝カウンセリングを必要とする。出生前診断を行う以前に、罹患している家族において病因となるSCN4Aの遺伝子変異が同定されている必要がある。

* 胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。

知能に影響がなく何らかの治療が存在するHyperPP1のような疾患に対する出生前診断の要望はあまりない。特に診断が早期診断でなく妊娠中絶を目的として考慮されている場合には、医療従事者の中や家族の間に出生前診断の利用については意見の相違が存在する可能性がある。多くのセンターは出生前診断の決定は両親の選択と考えているが、議論することが妥当である。

訳注:日本では本症に対する出生前診断は行われていない。

着床前診断 は罹患している家族において原因となる遺伝子変異が同定されている場合は行うこともできる。着床前診断を行う研究所を参照せよ。

訳注:日本では本症に対する着床前診断は行われていない。


原文 Hyperkalemic Periodic Paralysis Type 1

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