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パーキン型若年性パーキンソン病
(Parkin Type of Juvenile Parkinson Disease)

[PARK2-Related Juvenile Parkinsonism]

Gene Review著者: Alexis Brice, MD, Alexandra D-r, MD, PhD, Christoph L-king, MD.
日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)

Gene Review 最終更新日: 2007.10.1. 日本語訳最終更新日: 2008.3.24.

原文 http://www.genereviews.org/profiles/jpd


要約

疾患の特徴 

パーキン型若年性パーキンソン病は筋固縮,寡動,安静時振戦を特徴とする.下肢ジストニアが主徴候であることが多い.発症年齢は通常20歳から40歳である.病状の進行は緩徐であり罹患期間は50年以上に及ぶと報告されている.臨床徴候は様々であるが,反射亢進は高率にみられる.異常行動や精神症状もよくみられ,これらはパーキンソン症状より先に現れる場合もある.レボドパ治療によって,しばしばジスキネジアが起こる.

診断・検査 

パーキン型若年性パーキンソン病の診断は,発症年齢40歳未満の早発性パーキンソン症候群患者に対して,特に常染色体劣性遺伝が疑われる場合に考慮される.パーキン蛋白をコードするPARK2遺伝子はパーキン型若年性パーキンソン病に関連すると考えられている唯一の遺伝子である.分子遺伝学的検査は臨床的に可能である.発病型変異がPARK2遺伝子の両アレルで同定された場合にのみ,(すなわち同じ発病型アレルをホモ接合で持つ場合もしくは2つの別の発病型アレルをヘテロ接合で持つ場合),パーキン型若年性パーキンソン病と診断される.変異検出率は家族歴や発症年齢によって様々である.

臨床的マネジメント 

[病状に対する治療] レボドパと他のドパミン作動薬による治療が行われる.レボドパ治療が困難になった場合,深部脳刺激が行われる.レボドパ誘発性のジスキネジアや運動異常症はドパミン作動薬の服用とレボドパ投与量の減量により抑制することができる.
[二次病変の予防] 十分な臨床効果を得られるレボドパ量を超えた過量投与をしないこと.
[定期検診] 治療評価とともに神経学的フォローアップを半年から1年に1度行うこと.

[回避すべき薬剤と環境] 抗精神病薬はパーキンソン症状を憎悪させる可能性がある.

遺伝カウンセリング 

パーキン型若年性パーキンソン病は常染色体劣性遺伝で受け継がれる.受精段階で,発端者の同胞が発症する確率は25%,保因者となる確率は50%,発症もせず保因者ともならない確率は25%である.リスクのある妊娠に対する保因者診断と出生前診断は,家系内に2つの発病型アレルが同定されていることが条件である.


定義

臨床診断

パーキン型若年性パーキンソン病は特発性パーキンソン病と臨床的に区別がつかないことが多い.両疾患において,筋固縮,寡動,安静時振戦がさまざまな程度で合併する.

以下の所見は,パーキン型若年性パーキンソン病を疑わせる.

    • 早発性(40歳未満)もしくは若年性(20歳未満)の発症.大多数の患者の発症年齢は40歳未満である.
    • 下肢ジストニア.発症時によく見られる徴候であるが病状の進行とともに現れる場合もある.
    • レボドパ経口薬への反応がきわめて良好で維持されること.しばしばレボドパ誘発性の運動異常症とジスキネジア(異常な不随意運動)を伴う.
    • 緩徐な病状の進行.
    • 神経病理学的検査におけるレビー小体の不在.
    • 常染色体劣性遺伝形式に合致する家族歴.

    検査

    パーキン型若年性パーキンソン病患者と特発性パーキンソン病患者を区別する臨床的検査はない.

    分子遺伝学的検査

    遺伝子 パーキン型若年性パーキンソン病はPARK2遺伝子変異により発症する.

    分子遺伝学的検査:臨床検査

    • シークエンス解析 パーキン蛋白をコードしている12のエクソンのシークエンス解析により,これまでに明らかにされているミスセンス変異やナンセンス変異,あるいは小規模なエクソン再構成(1〜2塩基の欠失や挿入)が同定される.ミスセンス変異はヨーロッパ系患者における変異の約50%を占める.
    • 欠失・重複 様々な方法によりヘテロ接合の欠失・重複,時には三倍体が検出される.

    注:変異検出率は母集団により異なるが,家族歴の存在と発症年齢にもっとも影響を受ける.発症年齢20歳未満の家族性症例における変異検出率は80%〜90%と高率であるのに対し,発症年齢40歳前後で家族歴を持たない患者における変異検出率は10%以下である.

    表1にパーキン型若年性パーキンソン病の分子遺伝学検査をまとめた.

    表1 パーキン型若年性パーキンソン病に対して用いられる分子遺伝学的検査

    検査方法

    検出変異

    変異検出率(注1)

    家族歴

    あり

    なし

    シークエンス解析

    PARK2塩基置換

    80%〜90%以下

    表2参照

    欠失・重複解析

    PARK2ヘテロ接合欠失・重複

    (注1)家族歴と検査法により確定された変異を持つ患者の割合.

    検査結果の解釈

    検出されうる変異

    • 既に報告されている病原性変異
    • 病原性と推測されるが過去の報告がない変異
    • 臨床的意義が不明なシークエンス変化
    • 病的意義がないと考えられるが過去に報告がないシークエンス変化
    • 既に報告されている病原性のないシークエンス変化

    変異が検出されない場合に考えられる可能性

    • 患者は解析した遺伝子に変異を有していない
    • 患者は変異を有しているがシークエンス解析で検出できない
    • 患者は解析した範囲以外の領域に変異を有している

    表2 家族歴を持たない早発性パーキンソン症候群患者における発症年齢別PARK2変異検出率

    発症年齢

    PARK2遺伝子変異保持者数

    合計
    (注1)

    変異検出率

    95%信頼区間

    20歳未満

    10

    15

    67%

    38−88

    20〜24歳

    4

    15

    27%

    8−55

    25〜29歳

    9

    38

    24%

    11−40

    30〜34歳

    4

    53

    8%

    2−18

    35〜39歳

    4

    71

    6%

    2−14

    40〜45歳

    5

    51

    9%

    3−21

    合計

    38(注2)

    246(注2)

    15%

    11−20

    Periquet他(2003)より承諾を得て改変.

    注1:L・king他(2000)からの100症例を含む.
    注2:PARK2遺伝子保持者の2名,合計の3名は,発症年齢不明であるが検査当時に全員45歳以下であった.

    • パーキン型若年性パーキンソン病の診断は発病型変異がPARK2の両アレルに同定されている場合(すなわち,発病型アレルをホモ接合で持つ場合,もしくは2つの異なる発病型アレルをヘテロ接合で持つ場合)にのみ確定される.
    • 一方のアレルのみに発病型変異を持つ場合はパーキン型若年性パーキンソン病の可能性を示すにすぎない(したがって診断は確定しない).実際には患者がヘテロ接合体で他の原因によりパーキンソン症状を呈している可能性もある.早発性パーキンソン病患者におけるヘテロ接合型変異保持者の割合は非常に高率であり,パーキン型若年性パーキンソン病症例の70%に達するという報告もある.ヘテロ接合型変異を解釈するに当たっては遺伝形式,浸透,保因者頻度に対するさらなる理解が必要である.
    • 片方もしくは両方のアレルにPARK2変異が見られない場合でも,パーキン型若年性パーキンソン病の診断を完全には除外できない.

    検査手順

    発端者の診断確定には,PARK2の両アレルに発病型変異が同定される必要がある(すなわち,同じ発病型アレルをホモ接合で持つ場合もしくは2つの異なった発病型アレルをヘテロ接合で持つ場合である).

    リスクのある親類に対する保因者診断を実施するためには,家系内での発病型変異が同定されていることが必要である.

    リスクのある妊娠に対する出生前診断を実施するためには,家系内での発病型変異が同定されていることが必要である.

    遺伝学的に関連する疾患

    PARK2変異がヘテロで有した結果,常染色体優性パーキンソン病を発病した例,もしくはパーキンソン病のリスク因子となった例が少数ながら報告されている.しかしこの仮説は証明されていない.また,常染色体劣性PARK2変異を持つ家系には擬似優性遺伝(両親の1人も患者である場合)と関連のある家系もある.

     


    臨床像

    自然経過

    発症の性差は見られない.同じ変異を持つ者でも発症年齢には大きなばらつきがある.発症は通常40歳未満であるが50歳代や60歳代での報告もある.

    寡動と振戦は最もよく見られる徴候である.ジストニアは患者の42%に見られる.検査時の臨床徴候も様々であるが44%に反射亢進が見られる.

    概して,他の病因によるパーキンソン症候群患者よりもパーキン型若年性パーキンソン病患者はレボドパへの反応が良好で,レボドパ誘発性ジスキネジアが頻発する.

    異常行動や精神症状はしばしばみられ,これらはパーキンソン症状の発現前から起こることもある.認知症はめったに認められない.

    末梢神経症,自律神経障害,小脳失調といった非定型所見が孤発例もしくは少数の患者で報告されている.皮質脊髄路障害を伴う症例も報告されている.

    神経病理学
    黒質や青斑では神経細胞消失が見られる.神経原線維変化が観察されることもある.細胞質内レビー小体封入体の不在により,パーキン型若年性パーキンソン病は病理学的に古典的なパーキンソン病と区別される(「パーキンソン病概説」参照).レビー小体を伴う症例が1例だけ報告されている.レビー小体とは異なるαシヌクレイン封入体が認められた別の症例報告もある.

    遺伝子型と臨床型の関連

    PARK2のミスセンス変異もしくは欠失変異と,発症年齢,臨床症状,病状の進行度との相関は認められていない.しかし,パーキン蛋白の機能的領域におけるミスセンス変異は,パーキン蛋白の他の領域のミスセンス変異よりも,発症年齢を若年化する.

    浸透率 

    PARK2発病型変異をホモで有する患者において浸透率は100%である.

    病名

    大多数のパーキン型若年性パーキンソン病家系は1970年代に日本で「常染色体劣性若年性パーキンソン症候群(autosomal recessive juvenile parkinsonism)」として報告された.発症時の下肢ジストニア,活発な反射反応,姿勢の不安定性,睡眠後の症状の改善,緩徐な症状の進行といった臨床徴候が強調されていたが,臨床像は従来考えられていたよりもずっと多彩である.

    頻度 

    パーキン型若年性パーキンソン病の頻度は不明であるが,ヨーロッパでは常染色体劣性パーキンソン症候群の約50%,家族歴のない発症年齢45歳未満のパーキンソン症候群患者の18%を占める.パーキン型若年性パーキンソン病症例の割合は発症年齢が高くなるにつれて急激に下落する.30歳以降では,家系内で唯一のパーキンソン症候群患者である孤発性患者の数%がPARK2変異を持つに過ぎない.しかし,常染色体劣性遺伝家系では,発症年齢が高くなってもそれほど急激な低下は見られず,45歳以降に急落する.

    パーキン型若年性パーキンソン病の頻度に人種差はみられない.多くの地域からパーキン型若年性パーキンソン病患者が報告されている.

    鑑別診断

    臨床的に,パーキン型若年性パーキンソン病と特発性パーキンソン病は鑑別困難である(「パーキンソン病概説」参照).パーキンソン病患者の80%以上は家族歴を持たない.家族歴を持つ症例のなかには単一遺伝子による発病型であるものもある.

    早期発症型パーキンソン病の患者が全員PARK2変異を持っているわけではない.早期発症型パーキンソン病に関連する9つの遺伝子座が同定されている.5つは常染色体優性型であり,4つが常染色体劣性型である.これ以外の3つの常染色体劣性型はPINK1(PARK6)変異,DJ-1(PARK7)変異,ATP13A2(PARK9)変異により起こる.PINK1変異は早発性パーキンソン病の中でPARK2変異に次いでよく見られる病因である.PARK2変異症例とPINK1変異症例は,ひとりひとりの患者においては区別できない.

    若年発症患者,とくに著しいジストニアを伴う患者では,ドーパ反応性ジストニアが考慮されるべきである.パーキン型若年性パーキンソン病の診断にもよく用いられているレボドパ誘発性ジストニアは,パーキン型若年性パーキンソン病に見られる割合よりは低いが,GTP cyclohydrolase T(GCH1)遺伝子変異を持つドーパ反応性ジストニア患者においても認められる.

     


    臨床的マネジメント

    最初の診断時における評価

    パーキン型若年性パーキンソン病と診断された患者の病状進行を評価するために,以下の評価が行われるのが望ましい.

    • UPDRS評価スケールを用いた重症度と非定型徴候の評価
    • 治療への反応性および随伴している可能性がある合併症の評価
    • 認知機能障害と行動障害の検査

    病変に対する治療

    現在,パーキン型若年性パーキンソン病の治療法は特発性パーキンソン病の治療法と異なるところはない.

    パーキン型若年性パーキンソン病患者は軽度のパーキンソン病症状を呈し,レボドパや他のドパミン作動薬への反応性は良好である.

    • 反応性は通常顕著で,罹患期間が長期に及んでもレボドパ低投与量が維持される.
    • 治療初期のレボドパ誘発性のジスキネジア(異常不随意運動)と運動異常症は大きな問題である.運動異常症はブロモクリプチンなどのドパミン作動薬と低用量レボドパを併用することで抑制される可能性がある.

    二次病変の予防

    副作用を減少もしくは遅延させるために,レボドパ投与量は良好な臨床効果を得られる量を超えるべきではない.

    経過観察

    半年から1年に1度,神経学的フォローアップを行い必要に応じて治療を調整することが望ましい.

    回避すべき薬物や環境

    抗精神病薬治療はパーキンソン症状を憎悪させる.レボドパ両方に困難が生じた多数のパーキン型若年性パーキンソン病患者は深部脳刺激(通常,視床下核に対して行われる)を受けている。深部脳刺激の長所及び副作用は,他の原因による早発性パーキンソン病患者におけるものと同様である.

    リスクのある親族の検査

    予防的治療・手段がないため,発症前の遺伝学的診断は医学的に正当化されない.

    リスクのある家族に対する検査に関する問題に関しては「遺伝カウンセリング」の項を参照.

    研究中の治療法

    種々の疾患に対する臨床試験治験についてはClinicalTrial.govを参照のこと.注:この疾患に対する臨床試験治験は行われていない可能性がある.

    その他

    Genetics Clinicsは患者や家族に対して自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供するとともに,患者サイドに立った情報も提供している.「Gene Test Clinic Directory」参照.

    支援グループは,患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供する.「関連情報」には疾患別の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループが掲載されている.

    遺伝カウンセリング

    「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

    遺伝形式

    パーキン型若年性パーキンソン病は常染色体劣性形式で受け継がれる.

    患者家族のリスク
     
    発端者の両親

    • 患者の両親は必然的にヘテロ接合体である.
    • ヘテロ接合体の発症リスクは不明であるが,一方のアレルのみにPARK2変異を持つパーキンソン症候群患者が数例報告されている.
    • 患者の両親の一方が発症している(すなわち,発症型アレルを2つ持つ)稀な症例もある.常染色体劣性疾患でこのような現象が起こることを「擬似優性遺伝pseudodominant inheritance」という.

    発端者の同胞

    • 受精段階で,患者の同胞が発症する確率は25%,保因者となる確率は50%,発症せず保因者ともならない確率は25%である.
    • リスクのある同胞が発病しないと分かった場合,この同胞が保因者である確率は2/3である.
    • ヘテロ接合体の発症リスクは不明であるが,一方のアレルのみにPARK2変異を持つパーキンソン症候群患者が数例報告されている.

    発端者の子 

    • パーキン型若年性パーキンソン病の子は必然的にヘテロ接合体である.
    • 患者の子の発病リスクはヘテロ接合の頻度によるが一般集団では不明である.しかし,現在知られている限りではヘテロ接合の割合は確実に1%未満であり,その患者の子の持つリスクは0.25%以下となる.他の常染色体劣性疾患に関しては,発端者とパートナーが近親関係にある場合に発病リスクは高くなる.

    発端者の他の家族 発端者の両親の子が保因者となるリスクは,それぞれ50%である.

    保因者診断

    分子遺伝学的検査を用いた保因者診断は,発端者の変異が同定されている場合にのみ,臨床的に可能である.

    遺伝カウンセリングに関連した問題

    家族計画 遺伝的リスクの評価や遺伝カウンセリングは妊娠前に行われるのが望ましい.

    DNAバンキング DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,DNAの保存は考慮に値する.ことに現在用いられている分子遺伝学的検査の感度が100%ではないような疾患では特に重要である.

    出生前診断

    出生前診断は分子遺伝学的検査の項で述べた方法を用いて,技術的には可能である.DNAは胎生16−18週に採取した羊水中細胞や10−12週に採取した絨毛から調製する.出生前診断を行う以前に,罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある.

    注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

    着床前診断は,家系内での変異が明らかになっている場合には可能かもしれない.

    訳注:日本では本症に対する出生前診断,着床前診断の適応があるとは考えられておらず,これらは行われていない.

     


     

    関連情報

    原文 http://www.genereviews.org/profiles/jpd

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