Gene Review著者: Norbert Brüggemann, MD and Christine Klein, MD.
日本語訳者: 宮﨑 幸子(札幌医科大学大学院医学研究科修士課程遺伝カウンセリングコース),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
Gene Review 最終更新日: 2013.4.4. 本語訳最終更新日: 2015.10.30.
原文 Parkin Type of Early-Onset Parkinson Disease
要約
疾患の特徴
パーキン型早発性パーキンソン病は筋固縮,寡動,安静時振戦を特徴とする.下肢ジストニアが主徴候であることが多い.発症年齢は通常30歳代前半から半ばであり,たいてい20歳から40歳である.病状はゆっくりと進行し, 50年以上に及ぶ罹病も報告されている.臨床徴候は様々であるが,反射亢進は共通にみられる.レボドパ治療によって,しばしばジスキネジアが起こる.
診断・検査
パーキン型早発性パーキンソン病の診断は, 40歳未満の早発性パーキンソン症候群患者に対して、特に常染色体劣性遺伝が疑われる場合に考慮される.パーキン蛋白をコードするPARK2遺伝子は変異がパーキン型若年性パーキンソン病を引き起こすと考えられている唯一の遺伝子である.
分子遺伝学的検査は臨床的に可能である.発病型変異がPARK2遺伝子の両アレルで同定された場合にのみ,(すなわち同じ病原性アレルをホモ接合で持つ場合もしくは2つの別の病原性アレルをヘテロ接合で持つ場合),パーキン型若年性パーキンソン病と診断される.変異検出率は家族歴や発症年齢によって様々である.
臨床的マネジメント
[病状に対する治療] レボドパと他のドパミン作動薬による治療が行われる.レボドパ治療が困難になった場合,深部脳刺激(DBS)が行われる.
[二次病変の予防] 十分な臨床効果を得られるレボドパ量を超えた過量投与をしないこと.
[定期検診] 治療評価とともに神経学的フォローアップを半年から1年毎に行うこと.
[回避すべき薬剤と環境] 抗精神病薬はパーキンソン症状を憎悪させる可能性がある.
遺伝カウンセリング
パーキン型早発性パーキンソン病は常染色体劣性遺伝で受け継がれる.受精段階で,発端者の同胞が発症する可能性は25%,保因者となる可能性は50%,発症もせず保因者ともならない可能性は25%である.発症していない同胞が保因者である可能性は2/3である.保因者診断とリスクのある妊娠に対する出生前診断は,家系内に2つの病原性アレルが同定されている場合可能である.
臨床診断
パーキン型早発性パーキンソン病は特発性パーキンソン病[Lücking他 2000]と臨床的に区別がつかないことが多い.両疾患において,筋固縮,寡動,安静時振戦がさまざまな程度で合併する.
以下の所見は,パーキン型早発性パーキンソン病を疑わせる.
検査
パーキン型若年性パーキンソン病患者と特発性パーキンソン病患者を区別する臨床的検査はない.
分子遺伝学的検査
遺伝子PARK2遺伝子は変異がパーキン型若年性パーキンソン病を引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である.
臨床検査
注:
変異検出率は母集団により異なるが,家族歴の存在と発症年齢にもっとも影響を受ける[Abbas他 1999,Lücking 他 2000,Periquet他 2001,Hedrich他 2002,West他 2002,Lohmann他 2003,Periquet他 2003,Poorkaj他 2004,Wiley他 2004,Wu他 2005,Marder他 2010, Kilarski他 2012].発症年齢20歳未満の家族例における変異検出率は80%~90%と高率であるのに対し,発症年齢40歳前後で家族歴を持たない患者における変異検出率は10%以下である.
それ以外では,変異陽性者のうち若年に発症したのは18%から26%に過ぎないのに対し、70%は20歳から40歳の間に、12%は41歳あるいはそれ以上に発症している(表2)[Priquet他 2003,Kasten他2010].すべての研究発表の50%以上が研究対象を若年発症した患者に限定してきたことは注意を要する [Grünewald他 in press].
表1 パーキン型若年性パーキンソン病に対して用いられる分子遺伝学的検査
遺伝子記号 | 検査方法 | 検出変異 | 変異検出頻度1 | |
---|---|---|---|---|
家族歴 | ||||
あり | なし | |||
PARK2 | シーケンス解析・ 変異スキャニング解析2 |
シーケンス多型3 | 80%~90%以下4 | 表2参照 |
欠失・重複解析5 | ヘテロ接合欠失・重複・三重重複6 |
表2 家族歴を持たない早発性パーキンソン症候群患者における発症年齢別PARK2変異検出率
発症年齢 | PARK2遺伝子変異保持者数 | 合計1 | 変異検出頻度 | 95%信頼区間 |
---|---|---|---|---|
20歳未満 | 10 | 15 | 67% | 38-88 |
20~24歳 | 4 | 15 | 27% | 8-55 |
25~29歳 | 9 | 38 | 24% | 11-40 |
30~34歳 | 4 | 53 | 8% | 2-18 |
35~39歳 | 4 | 71 | 6% | 2-14 |
40~45歳 | 5 | 51 | 9% | 3-21 |
合計 | 382 | 2462 | 15% | 11-20 |
Periquet他(2003)より承諾を得て改変.
検査結果の解釈
〇PARK2ヘテロ接合型単一変異をもつ者は、PARK2遺伝子のホモ接合体あるいはヘテロ接合体複合変異をもつ者(30.9±11.2歳 n=232)よりも,発症は9年ほど遅い(39.9±13.3歳 n=232)[Grünewald 他 in press].
特定の変異アレルに関する情報は"分子遺伝学"の章を参照のこと(表A.遺伝子およびデータベースと病原性アレル参照).
検査手順
発端者の診断の確認・確定にはPARK2の両アレルに病原性変異が同定される必要がある(すなわち,同じ病原性アレルをホモ接合で持つ場合もしくは2つの異なった病原性アレルをヘテロ接合で持つ場合である).
単一遺伝子検査.パーキン型早発性パーキンソン病が疑われる発端者の分子遺伝学的診断の方法のひとつはPARK2の分子医学的検査である.
マルチ遺伝子パネル.パーキン型早発性パーキンソン病が疑われる発端者の分子遺伝学的診断の別の方法として,マルチ遺伝子パネルが用いられる.マルチ遺伝子パネルで用いられる遺伝子や方法は,研究室により,また時代によっても異なる.パネルは必ずしも関心を持つ特定の原因遺伝子を含んでいるとは限らない.鑑別診断を参照.
注:PARK2,PINK1,DJ-1変異テストは劣性遺伝様式を持つ家族、または保因者が早期に発症した(35歳以下[Harbo他 2009]または40歳以下[Klein & Schlossmacher 2006])の散発的に対して推奨される。
リスクのある親族に対する保因者診断を実施するためには,家系内での病原性変異が同定されていることが必要である.
リスクのある無症状成人家族の発症前診断をするには、家族の病原性変異が同定されていることが必要である.
出生前診断と着床前診断(PGD). リスクのある妊娠に対して行うためには,家系内での発病型変異が同定されていることが必要である.
遺伝学的に関連する疾患
PARK2ヘテロ接合変異がパーキンソン病を有する多数の患者で同定されたため,ヘテロ接合変異がパーキンソン病の発症に関与するかもしれないという疑問が提起された.[Klein他 2000,West他 2002,Oliveira他 2003, Klein他 2007 ].症例対照研究では,パーキンソン病の人々の0から7.9%,神経学的異常のない対照被験者の0から3.7%の頻度で変異が認められた[Grünewald & Klein 2012].包括的な症例対照研究では,エクソンの再構成をヘテロ接合で認める頻度は,罹患者と健常者間で同じであった。とりわけしかしながら,公的エキソームデータベースにおいては,健常と推測される集団におけるPARK2変異頻度は0.17%に過ぎない.
マルチモーダルイメージング,電気生理学的研究は,PARK2ヘテロ接合変異を有する無症状の固体における潜在的な黒質線条体障害を証明し,ヘテロ接合変異がパーキンソン病に対する遺伝的感受性因子であるという仮定を支持した[Van der Vegt他 2009].また,疑似優性遺伝(すなわち親のひとりもまた影響を受けている)が,常染色体劣性遺伝のPARK2変異を有するいくつかの家族で報告されている[Maruyama他 2000,Bonifati他,Lücking他 2001,Kobayashi他 2003].しかしながら現在利用可能なデータ(前向き評価を欠いている)に基づいて,ヘテロ接合のPARK2変異の病的意義を断定することはできない.
PARK2 変異は癌 [Veeriah 他 2010]、ハンセン病 [Mira 他 2004][Glessner 他 2009] 自閉症と関連している。しかし発癌における PARK2 変異の関与はあいまいで、人口集団研究 [Alcalay 他 2012]では関連は再現されなかった。
臨床的記述
特発性パーキンソン病とは異なり、男女は同様に影響をうける.同じ変異を持つ者でも発症年齢には大きなばらつきがある[Chien他 2006]. 発症は通常40歳前であるが,60歳または70歳まで発症しない例もある[Klein他 2000,Lohmann他 2003].
臨床症状は異なるが,寡動と振戦は最もよく見られる徴候である.ジストニアは患者の42%に見られる.患者のほぼ半分に反射亢進が見られる.中枢運動神経伝導時間の延長は,臨床的に観察される反射亢進に合致する皮質脊髄路の関与を示すものである[De Rosa他 2006,Schneider他 2008,Perretti他2011].
概して低用量レボドパへの反応は良好かつ持続的である.レボドパ誘発性ジスキネジアの出現の可能性は他の病因によるパーキンソン症候群の症例より高い.
パーキン型早発性パーキンソン病は特定の行動,神経心理学的あるいは精神症状に関連づけられていない[Caccappolo他2011,Silvastaba他 2011].認知障害は稀であり,認知症はごく稀である[Benbunan他 2004,Grünewald他, プレスにて].
特発性パーキンソン病とは対照的に,パーキンソン病とヘテロPARK2変異を持つ個体が典型的な嗅覚減退を示すのに対し,嗅覚はヘテロ接合変異患者においては損なわれない[Alcalay他 2011].
病気は徐々に進行し,50年以上の罹病期間が報告されている.
神経画像所見
頭部CTおよびMRIスキャンは通常異常を認めない.
PET/SPECTの研究では,早期発症パーキンソン病のパーキンタイプを持つ症例において,線条体18F-DOPA取込みの低下およびシナプス前ドーパミントランスポーターの低下が明らかにされた[Van der Vegt 他 2009].被殻は特発性パーキンソン病の所見と一致しており,大きく影響を受ける.特発性のフォームと異なるものの,しかしながら線条体ドーパミン神経支配の損失は左右対称であり,進行はかなりゆるやかである.11CアドレナリンPETでのシナプス後のD2受容体密度は,治療していない症例では増大し,ドーパミン作動薬の治療をしている症例では減少することが示されている.
ヘテロ接合変異を持つ無症候性の個体は,ドーパミン神経支配のわずかな潜在性障害を示す.PETの縦断解析は,病変の進行が潜行性であり,他の危険因子が存在しない場合,ヘテロ接合体変異を持つ無症候性の個体の一部だけが,臨床的に明らかなパーキンソン症候群になるかもしれないことを示した[Pavese 他 2009].
ボクセルベース・モルフォメトリーは,(2つの変異アレルをもつ)患者において,被殻の灰白質の容積の減少と右淡蒼球のわずかな増加を明らかにしたのに対し,単一ヘテロ接合体変異を持つ無症候性の個体では,被殻と淡蒼球の灰白質の容積のいずれもが増加していることを示した.
機能的MRIでは,単一ヘテロ接合体変異を持つ無症候性の個体において,反復的な指の動きを実行する際,脳の運動関連領域の増加活性化を示した[van Nuenen 他 2009].神経細胞の活性形成における同様の機能は表情認識タスクでも示されている.
神経病理学
これまでに,ホモ接合体と複合ヘテロ接合PARK2変異9名の詳細な死後の病理研究論文が発表されている[Poulopoulos他 2012].最も重要で共通する特徴は,脳幹の色素核における神経細胞の損失である.特発性パーキンソン病とは異なり,青斑核よりも黒質緻密部でより強い神経細胞消失がみられた(パーキンソン概要を参照).αシヌクレインを含む典型的なレビー小体が2例にのみ認められているのに対し,1例では脚橋核の好塩基性のレビー小体型のような病理像を認めている.タウタンパクを含む神経線維のもつれが,2例に見られた.結論としては死後の調査結果は広範囲で,LRRK関連のパーキンソン病の状態を思わせる.
遺伝型-表現型の関連
PARK2のエクソン再構成は,点変異あるいは小さな挿入・欠失より大きな病原性を持ち,発症年齢がより早くなる[Pankratz 他 2009,Grünewald 他 プレスにて].PARK2のミスセンス変異もしくは欠失変異と,発症年齢,臨床症状,病状の進行度との相関は認められなかった[Lücking 他 2000,Grünewald 他 プレスにて].知られている機能的領域でのミスセンス変異は,蛋白質の他の領域でのミスセンス変異ほど早く発症しない.
浸透率
PARK2病原性変異をホモで有する個体において浸透率はほぼ100%である.
病名
パーキン型早発性パーキンソン病の家系は1970年代に日本で「常染色体劣性若年性パーキンソン症候群(autosomal recessive juvenile parkinsonism)」として報告された(AR-JP).
頻度
人口ベースの頻度はほとんど知られていない.しかしながらヨーロッパではパーキン型早発性パーキンソン病は,常染色体劣性パーキンソン症候群の50%,家族歴のない発症年齢45歳未満のパーキンソン症候群の18%を占めている[Lücking 他 2000].パーキン型早発性パーキンソン病症例の割合は発症年齢が高くなるにつれて急激に減少する.30歳以降では,孤発性患者(家系内で唯一のパーキンソン症候群の個体)の数%にPARK2変異がみられた.しかしながら,明確な常染色体劣性遺伝形式を示す家系における,加齢に伴う減少は顕著ではない[Periquet 他 2003].
パーキン型早発性パーキンソン病の頻度は,人種を問わずほぼ一様である.パーキン型早発性パーキンソン病の症例は,多くの異なる地域で報告されている[Hattori他 1998a,Hattori他 1998b,Leroy 他1998,Lücking 他 1998,Abbas 他 1999,Nisipeanu 他 1999,Klein 他 2000,Maruyama 他 2000,Monoz 他 2000,Biswas 他 2006,Vinish 他 2010,GuerreroCamacho 他 2012,Semenova 他 2012].
パーキンソン病マルチ遺伝子パネルはこのセクションで取り上げる疾患の関連遺伝子番号検査を含んでいる.
臨床的に,パーキン型早発性パーキンソン病と特発性パーキンソン病は鑑別困難である(「パーキンソン病概説」参照).パーキンソン病患者の80%以上は家族歴を持たない.いくつかの単一遺伝子が家族歴を持つ症例の一部の原因となっている.
PINK1変異は早発性パーキンソン病の中でPARK2に次いでよく見られる病因である. PARK2とPINK1 変異に関連した症例は,個々の症例レベルでは臨床的に区別がつかない[Ibanez 他 2006](PINK1型若年性発症パーキンソン病を参照).
鑑別診断における他の疾患は,DJ1型早発性パーキンソン病であり,パーキン型早発性パーキンソン病と全体的に類似した表現型の早発性疾患として現れる[Bonifati 他 2003].
若年性パーキンソン病,特に著しいジストニアを伴う症例では,ドーパ反応性ジストニアを考慮に入れるべきである. 例えば, GTPシクロヒドロラーゼ1欠損ドーパ反応性ジストニアはGCH1変異によって引き起こされる.
臨床的マネジメント
最初の診断に続いての評価
パーキン型早発性パーキンソン病と診断された患者の疾患の程度を確定するために,以下の評価が行われるのが望ましい.
病変に対する治療
現在,パーキン型早発性パーキンソン病の治療法は特発性パーキンソン病の治療法と異なるところはない.具体的なガイドラインはない.
二次病変の予防
副作用を減少もしくは遅延させるために,レボドパ投与量は良好な臨床効果を得られる量を超えるべきではない.
経過観察
半年から1年に1度,神経学的フォローアップを行い必要に応じて治療を調整する.
回避すべき薬物や環境
神経遮断薬治療はパーキンソン症状を憎悪させる.
親族のリスク評価
遺伝カウンセリング目的のリスクのある親族に対する検査に関する問題に関しては,遺伝カウンセリングの項を参照.
妊娠管理
パーキンソン病の女性の妊娠はまれである.パーキンソン型早発性パーキンソン病女性の妊娠成功の唯一の症例が報告されている[Serikawa 他 2011].27歳の女性が自然妊娠した二重絨毛膜二羊膜性の男児双子の出産に成功した。妊娠後期の間、母体の運動機能障害の憎悪が認められている.彼女は気管形成期の間のみレポドパ/カルビドパによる治療を受けた.児はふたりとも健康に生まれ,出生後2年を経過して,精神運動障害の所見を認めていない.
パーキンソン症状の悪化はドーパミン補充療法の減少で一部は説明できる.可能であるならば,ドーパミン作動薬は萌芽期の段階にわたって少なくとも催奇形性の潜在的なリスクを最小限に抑えるためのレポドパ/脱炭酸酵素阻害剤に限定されるべきである.
研究中の治療法
疾患および状態の広い領域に対する臨床試験の情報についてはClinicalTrial.govを参照.注:この疾患に対する臨床試験治験は行われていない可能性がある.
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
パーキン型若年性パーキンソン病は常染色体劣性形式で受け継がれる.患者家族のリスク
発端者の両親
発端者の同胞
発端者の子
発端者の他の家族 発端者の両親の親族が保因者であるリスクは,50%である.
保因者診断
分子遺伝学的検査を用いた保因者診断は,発端者の変異が同定されている場合,可能である.
遺伝カウンセリングに関連した問題
家族計画
DNAバンキング は,DNA(通常は白血球から抽出)を将来の使用のために保存しておくものである.なぜならば検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が将来進歩するであろうと予想されるため,影響を受けた個体のDNAをバンキングに入れること検討すべきである.
出生前診断
病原性変異が家族で確認されたならば、羊水穿刺(通常15-18週の妊娠で実行される),または絨毛膜絨毛サンプリング(通常 10-12週の妊娠で実行される)によって得られる胎児の細胞から抽出されるDNAの分析によって、危険が高い妊娠のための出生前診断は可能である.
注:妊娠期間は最終月経の開始日,あるいは超音波検査による測定のどちらかで月経週計算で示される.
着床前診断(PGD)は,影響を受けた家系内での疾患を引き起こす変異が明らかになっている場合の選択肢である.
GeneReviewスタッフは、特定疾患、サポート傘下組織、およびこの患者とその家族のための登録所を選択している.GeneReviewは、ほかの組織によって提供された情報の責任を負わない.選択基準についてはここをクリック.
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分子遺伝学とOMIMの表の情報は、GeneReviewの他の部分と異なる場合がある:表には最新の情報を含まれている―エド
表A.
早発性パーキンソン病:遺伝子およびデータベース
遺伝子座 | 遺伝子記号 | 染色体の軌跡 | タンパク名 | 特定の軌跡 | HGMD |
PARK2 | PARK2 | 6q26 | E3 ユビキチン‐プロテインリガーゼ | PD変異のデータベース(PARK2) パーキンソン病の変異データベース(PARK2) |
PARK2 |
データは、次の標準的な診断からまとめられている:HGNCから遺伝子シンボル;OMIMから染色体遺伝子座、遺伝子座名,クリティカル領域,相補群; UniProt.Forからタンパク質名.データベース(軌跡特定,HGMD)リンクの説明について,ここをクリック.
表B
パーキン型早発性パーキンソン病(すべてOMIMより)のOMIMエントリ
600116 | パーキンソン病2、常染色体優性劣性若年性;PARK2 |
602544 | パーキン;PARK2 |
常アレル変異
PARK2は約1.35Mbにまたがる二番目に大きいヒトの遺伝子である。大きなイントロン領域で区切られた12のコーディングエクソンで構成されている。エクソンとイントロンの多くの多型が検出されている.それらの4つはアミノ酸変異(表3)を引き起こす。特定の正常アレル変異の頻度は地域によって異なる[Abbas他 1999, Lincoln他 2003,Lücking他 2003].
病理学的アレル変異
PARK2の180以上の病原性変異の半分はエクソン2から4にまたがる位置にあると記載されている[Corti 他 2011; Grünewald 他, プレスにて]。突然変異のいくつかは再発性である[Hattori 他1998a, Hattori 他 1998b, Leroy 他 1998, Lücking 他 1998, Abbas 他 1999, Nisipeanu 他 1999, Klein 他 2000, Maruyama 他 2000, Munoz 他 2000, Hedrich 他 2002, Periquet 他 2003, Rawal 他 2003, Grünewald & Klein 2012].異なるタイプのPARK2変異がさまざまな頻度で見つかっている.変異はホモ接合体,複合ヘテロ接合体,およびヘテロ接合の状態で同定されている.
表3.
GeneReviewで説明したPARK2の通常アレル変異
DNA塩基配列変化 | 蛋白質のアミノ酸変化 | 参照シーケンス |
c.500G>A | p.Ser167Asn | NM_004562.1 NP 004553.1 |
c.1096C>T | p.Arg366Trp | |
c.1138G>C | p.Val380Leu | |
c.1182G>A | p.Asp394Asn |
変異の分類について:記載された変異の表は著者らにより提供.GeneReviewsスタッフは独立亜種の分類を確認していない.
命名法について:GeneReviewsは,ヒトゲノム変異社会の標準的な命名規則に従う(www.hgvs.org).専門用語解説のクイックリファレンス参照.
正常遺伝子産物
正常な遺伝子産物,パーキンは,N末端のユビキチン様ドメインを含む465アミノ酸タンパクである.そしてRING(実に興味深い新しい遺伝子)ドメインからなる3つのリングフィンガーモチーフ(RING0,1,2)により構成されている.RING1と2は非認識ドメイン構造で区別される.(RING間(IBR).パーキンは通常の条件下では主に細胞質に局在している.他のリングフィンガータンパクと同様に,E3ユビキチンリガーゼ活性をしめし[Imai 他 2000, Shimura 他 2000, Zhang 他 2000]、またプロテアソーム分解のためにそれらをターゲットとするタンパク質のユビキチン結合に仲介する.パーキンはさらに非分解性のユビキチン結合を仲介することが出来、それは黒質線条体のドーパミン作用ニューロンの生存のために必要と思われる[Moore 2006].その基質の20以上は、まだ同定されていない.E3リガーゼとしてのその役割に加えて,パーキンはミトコンドリア機能と完全性の維持と多様なストレス刺激からの保護に関与し,それゆえ神経保護物質として機能する.ミトコンドリア代謝におけるその役割の中で,パーキンは常染色体劣性,早発性パーキンソン症候群と関連があるもう一つのタンパクであるPINK1と相互作用する[Valente 他 2004].PINK1はパーキンのミトコンドリアへの移動を促進する.これによりパーキンがミトコンドリアタンパク質をユビキチン化することを可能にし,選択的に障害のあるミトコンドリアを識別し,マイトファジーによって分解を誘発する [Narendra 他 2012, Rakovic 他 2013].
異常遺伝子産物
タンパクの早期終止または不活性化(ミスセンス変異)によってPARK2変異のほとんどがE3ユビキチンリガーゼ活性の機能を損失させると考えられる.PARK2 変異により,ミトコンドリアの融合と分裂に関与するマイトフュージンのユビキチン化が障害される[Rakovic et al 2011].変異はまた、その基質の蓄積を結果として生じるかもしれない.なぜなら、それらは、もはや分解のためのプロテアソームシステムに適切にターゲットされないからである。しかし、この仮説は、適切な実験モデルで確認されていない。例として、PARK2 の不活性化を有する複数系統のマウスの中脳では,変性は認められない。さらに、インビトロの研究において、変異の影響はそれらの性質およびそれらの局在によって変わることを示した(例えば、表現の低下、異常凝集,基質および/またはE2ユビキチン転移酵素との相互作用の低下).ミトコンドリアの安定性への関与に基づき,PARK2変異はミトコンドリア複合体Iの活性低下、ミトコンドリア形態の破壊と酸化ストレスからのミトコンドリアのゲノムの保護が障害される.
参照
公開されているガイドライン/コンセンサスステートメント
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