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若年性ポリポーシス症候群
(
Juvenile Polyposis Syndrome)
[Synonym: Juvenile Polyposis Coli. Includes: BMPR1A-Related Juvenile Polyposis,SMAD4-Related Juvenile Polyposis ]

Gene Review著者:  Joy Larsen Haidle, MS, CGC and James R Howe, MD.
日本語訳者: 岩泉守哉(浜松医科大学医学部 内科学第一講座/附属病院遺伝子診療部)    
Gene Review 最終更新日: 2011.9.29  日本語訳最終更新日:2014.3.3.

原文 Juvenile Polyposis Syndrome


要約

疾患の特徴 

若年性ポリポーシス症候群(JPS)は胃、小腸、結腸、直腸を主とする消化管に罹患する過誤腫性ポリープとして特徴づけられる。ここでの“若年性”はポリープ発症年齢を表現しているのではなく、むしろポリープの形態を表現した用語である。JPSの患者の多くは20歳までにポリープを発症しているが、生涯で4個から5個のみのポリープ数の人もいれば100個以上認められる人もいる。もし、ポリープに対して治療されなかった場合、ポリープからの出血や貧血の原因となり得る。ほとんどの若年性ポリープは良性であるが悪性化することもある。JPS家系での消化器癌発症リスクは9%〜50%である。中でも大腸がんの発症リスクが最も高いが、胃や上部消化管、膵臓がん発症例も報告されている。JPSと遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia; HHT)の合併症候群(JPS/HHTといわれる)はSMAD4変異例の15%〜22%で認められる。

診断・検査 

臨床的にJPSは、以下に示す3項目のうち少なくとも1項目が当てはなる場合に診断される。

  • 大腸に5つより多くの若年性ポリープが認められる。
  • 全消化管を通して多数の若年性ポリープが認められる。
  • 個数を問わずに若年性ポリープが認められ、かつ、若年性ポリープの家族歴が認められる。

若年性ポリープの組織型は腺腫とは全く異なり、過誤腫である。JPSと関連のある遺伝子としてBMPR1ASMAD4が知られている。JPS患者の約20%でBMPR1A変異が、約20%でSMAD4変異が検出される。BMPR1ASMAD4いずれも臨床レベルで分子遺伝学的検査の実施が可能である。

臨床的マネジメント 

症状出現時の治療:消化管出血、消化管閉塞、および大腸がんの発症リスク軽減目的のルーチン大腸内視鏡検査と内視鏡的ポリープ切除術が行われる。ポリープの数が多い場合、全ての、あるいは一部の大腸および胃の切除が必要な場合がある。HHTの症状出現時には対応した治療も行われる。

主症状出現予防:がん発症予防に対してはがんスクリーニングによってリスクが低下する。

定期的検査:リスク例に対して:直腸出血や貧血、腹痛、便秘、下痢のモニタリングし、血算、大腸内視鏡検査、上部消化管内視鏡検査での部クリーニングを15歳から、あるいは症状出現時から開始する。Combined JPS/HHT症候群患者、あるいはSMAD4変異例を認める家族では、幼児期のHHT潜在的合併症のサーベイランス目的の分子遺伝学的検査を15歳より早い時期に行うのが適当である。
                                                               
リスクのある近親者に対する検査家族内で本疾患に特徴的な変異が判明している場合、10歳代や20歳代のリスクのある家族には、早期からのサーベイランスや治療介入の必要な者の同定のために分子遺伝学検査を行うのが適当である。

遺伝カウンセリング 

JPSは常染色体優性遺伝の遺伝形式とる。JPS患者の内75%では親もJPSに罹患している。JPS発端者の内25%では家族内でポリープの既往がなく、その場合は新生突然変異が起こったと考えられる。罹患者の子どもがJPSに関連した遺伝子変異を親から受け継ぐ確率は50%でである。リスクのあるものが妊娠した場合、出生前診断は家系内での疾患感受性遺伝子変異が同定されている場合に限って可能である。
JPSのような、典型的には治療可能で知能に影響を与えない疾患群に対しての出生前診断は一般的ではない。


診断

臨床診断

若年性ポリポーシス症候群(JPS)は、以下の項目のうち少なくとも1項目が当てはまる場合に診断される。

  • 大腸に5つより多くの若年性ポリープが認められる。
  • 全消化管を通して多数の若年性ポリープが認められる。
  • 個数を問わずに若年性ポリープが認められ、かつ、若年性ポリープの家族歴が認められる。

    注)ここでの“若年性”という用語はポリープ発症年齢を表現しているのではなく、ポリープの形態を表現した用語である(検査、組織学の項参照)。

検査

病理組織
若年性ポリープは、周囲と同一の正常組織成分が過剰増殖する過誤腫の形態をとる。若年性ポリープは密な間質組織を伴う正常上皮組織の所見を呈し、炎症細胞浸潤を伴い、ポリープ頭は表面平滑で粘液に充満されのう胞状に拡張した腺管が粘膜固有層に広がる。筋線維や腺腫に通常認められる細胞増殖の形態は若年性ポリープでは認められない。

注:JPS/HHT症候群に伴うポリープの形態に関しては典型的な若年性ポリープに比べ、形態様式が多岐にわたるとの報告がある。(臨床像の項参照)

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 JPSに関連する遺伝子として知られているのはBMPR1ASMAD4の2遺伝子である(表1参照)。

他の遺伝子座に関するエビデンス.

ENGこれまでのところ、早期発症JPSの2症例にENG変異が認められている。変異が関連するといわれているHHTの臨床症状はこの早期発症JPS症例では認められなかったが、報告例はHHTの症状が一般的に出現する年齢に達していなかったことが判明した。その後の検討で、SMAD4にもBMPR1Aにも変異を認めないJPS症例において疾患感受性を示すENG欠失変異は同定されなかった。したがって、このデータはENG変異がJPSの疾患感受性に関わると結論づけるには十分でなく、preliminaryな段階である(Sweet et al 2005, Howe et al 2007)。

その他.PTEN変異がJPSの原因遺伝子ではないかとの報告もあるが、これらの症例はJPSに加え、PTEN過誤腫症候群(PHTS)の表現型であるCowden症候群あるいはBannayan-Riley-Ruvalcada症候群に関わる遺伝子の変化を伴っていると考えられている(Eng and Ji 1998)。

Table1. 若年性ポリポーシス症候群で実施されている分子遺伝学的検査

遺伝子記号

JPSにおける当該遺伝子の変異の割合

検査法

検出される変異

それぞれの検査法における当該遺伝子における変異の頻度

実施レベル

BMPR1A

20%2,3

シーケンス解析

塩基配列変化4

13/655
3/276
22/1027

臨床

欠失/重複解析8

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失

3/655
3/276
2/1027

SMAD4

20%3

シーケンス解析

塩基配列変化4

17/655
6/276
20/1027

臨床

欠失/重複解析8

エクソン欠失あるいは全ゲノム欠失

6/655
1/276
2/1027

  1. 存在する遺伝子変異の同定精度
  2. Sayed et al (2002)
  3. Howe et al (2004)
  4. シーケンス解析で同定された変異例は小さな欠失/挿入、ミスセンス変異、ナンセンス変異およびスプライス変異を含んでおり、一般的には全遺伝子欠失/重複は同定されない。
  5. Aretz et al (2007)
  6. Van Hattem et al (2008)
  7. Calva-Cerqueira et al (2009)
  8. 欠失/重複の同定はgenomic DNAのコード領域やイントロンのフランキング領域のシーケンス解析では同定不可能であり、以下の方法が用いられる(方法は複数存在する);定量的PCR、long-range PCR、multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA)、gene/chromosome segment を含むchromosomal microarray (CMA)。

検査結果の解釈. シーケンス解析の結果解釈についてはこちら。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK6851/

臨床検査

発端者の診断確定.

  • 臨床診断基準に適用するためにポリープの形態に対する病理学的確定診断が必須である。
  • JPSの診断基準を満たす症例では、BMPR1AおよびSMAD4の分子遺伝学的検査が行われる。

注:もし、BMPR1AおよびSMAD4に変異が認められなかった場合、JPSよりもPTEN過誤腫症候群の可能性も考慮してPTENの分子遺伝学的検査を行うのがよい(遺伝学的に関連する疾患の項も参照すること)。

予測的検査.無症候性でリスクのある成人の家族に対する予測的検査には、家系内での疾患原因遺伝子の前もった同定が必要である。

出生前診断と着床前診断(PGD)リスクのある妊娠に対する出生前診断と着床前診断には、家系内での疾患原因遺伝子の前もった同定が必要である。

遺伝学的に関連する疾患

BMPR1A. BMPR1A生殖細胞変異が原因である疾患として、JPS以外には遺伝性混合ポリポーシス症候群(HMPT)の数家系での報告がある以外は知られていない(鑑別診断のHMPSの項参照)。

  • 10q22-q23微小欠失:
    • 過誤腫性ポリポーシスと10q22-q23欠失の関連が概説されている(Dahdaleh et al 2011)。
    • PTENBMPR1Aを含む10q22-q23微小欠失について報告されている。
      • 重症早期発症 JPS(以前までjuvenile polyposis of infancyといわれていた)の4例報告(Delnatte et al 2006)
      • 重症早期発症 JPS を認めない、6歳時に診断された中等度の多発結腸ポリープの1例報告(Salviati et al 2006)
      • 典型的な若年性ポリープを呈する2例のうち、1例で甲状腺癌を併発し、Cowden症候群が疑われる症例(Van Hattem et al 2008)(PTEN過誤腫症候群の項参照)
      • 20歳時にBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(BRRS)が示唆された1例報告(Calva-Cerqueira et al 2009)(PTEN過誤腫症候群の項参照)
      • 詳細な臨床情報は記載されていないが、3歳時に診断された症例(Aretz et al 2007)
  • Cowden 症候群/Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群/Bannayan-Riley-Ruvalcaba様形質と診断されるもInternational Cowden Consortiumの診断基準を満たさないBMPR1A変異例はおそらくJPSに再分類されなければならない(Zhou et al 2001, Zbuk and Eng 2007)。

SMAD4. JPSおよびJPS/HHT症候群以外にSMAD4の生殖細胞変異を原因とする疾患は報告されていない。


臨床像

自然経過

JPSは胃、小腸、結腸、直腸を中心とする消化管に過誤腫性ポリープが発生することが特徴である。“generalized juvenile polyposis”とは上部および下部消化管にポリープを認めるもので、“Juvenile polyposis coli”とはポリープが結腸のみに存在するものをいう。

ポリープは平坦なものから茎を持つものまであり、肉眼的形態的においても大きさにおいても様々である。JPS症例に認めるポリープの数も生涯にわたり4-5個しか認めない例から同一家系内の症例でも100個以上認める例までさまざまである。

出血はポリープ全体あるいは一部の上皮が便の通過とともに脱落することで生じる。もし、ポリープを治療せずに放置したままにしておくと、出血や貧血の原因になり得る。

幼少期から成人になるまでの期間に若年性ポリープは発育する。ほとんどのJPS症例では20歳までに何個かのポリープを認める。

幼少期の若年性ポリープは最初の数年で発育し、低たんぱく血症、蛋白漏出性胃腸症、下痢、貧血、全身性浮腫、成長障害を伴う。

JPS関連発癌リスク. ほとんどの若年性ポリープは良性であるが悪性化することがある。JPS家系における胃腸管の癌に進展する推定生涯リスクは9-50%と報告されている(Howe et al 1998b)。癌化するほとんどの症例は大腸癌であるが胃癌その他の上部消化管癌および膵臓癌の報告もある。

  • 大腸癌の発生頻度は35歳までに17-22%であり、60歳までに68%に達する。中央値は42歳である。
  • JPS症例でかつ胃ポリープを認める症例における胃癌の発生頻度は21%である。

報告によると、SMAD4の生殖細胞変異を認める1つの大家系において、結腸癌のリスクはほぼ40%であり、上部消化管癌のリスクは20%であった(Howe et al 1998b)。しかしこれら癌の発生頻度は若年時の高リスク群のスクリーニングや発癌前のポリープ切除実施により、この先徐々に変化する可能性がある。

複合JPS/HHT合併症候群
1980年代に初めて報告されたJPS/HTTの複合症候群(Cox et al 1980, Conte et al 1982)は、現在SMAD4生殖細胞変異が関与していると考えられている(Gallione et al 2004)。SMAD4変異を持つ症例のうち、15-22%で複合JPS/HHT症候群を認めるとの最近の報告があるが、開業医ではJPS症例に対してHHTの徴候をルーチン検索しないことから過小評価されている可能性がある。

JPS/HTT複合症候群の症例では様々なJPSの所見(消化管出血、胃、大腸ポリープ)やHHTの所見(粘膜表皮毛細血管拡張、肺動静脈奇形、肝動静脈奇形、脳動静脈奇形、胃腸管動静脈奇形や毛細血管拡張、鼻出血、頭蓋内出血)の所見を認める。HHTの所見は幼少期に出現する。SMAD4変異を持つ症例におけるHHTの合併頻度は今のところはっきりしないが、肺動静脈奇形が高頻度に出現することは注目すべきことである。逆に鼻出血や毛細血管拡張の所見は常に認める所見ではない。

遺伝子型と臨床型の関連

同一のJPS家系内で同一の遺伝子変異を認めるにもかかわらず、認めるポリープの数が数個の症例から100個以上の症例まで存在するように、JPSの家系での遺伝子型と臨床型の関連は一般的には弱い。ポリープは発育する年齢は同一家系内であっても10歳代から40歳代以降までさまざまである。
時として以下のように一般化されている

  • SMAD4変異を認めるJPS症例はBMPR1A変異を認める症例あるいはすでにJPSとの関連があると知られている遺伝子の変異が認められない症例に比べ、上部消化管ポリープの家族歴を伴う傾向にある。
  • SMAD4あるいはBMPR1A変異を伴うJPS症例は、これらの遺伝子変異を認めない症例に比べ、下部消化管ポリープを10個より多く認め、消化管悪性腫瘍の家族歴を高頻度に伴う(Burger et al 2002, Friedl et al 2002, Sayed et al 2002)。
  • 複合性JPS/HHT症候群はSMAD4遺伝子のExon 8-11にコードされるMH2 domainと関連すると報告されている(Gallione et al 2004, Gallione et al 2006, Pyatt et al 2006)が、他のExonの変異も認められる(Gallione et al 2010)。

浸透率 

ポリープを認める症例における、JPS関連遺伝子の生殖細胞変異を伴う頻度を検討した報告はこれまでに存在しない。90%以上と期待されているが、中年までポリープを認めない家系もある。

促進現象 

JPSにおける促進現象(世代を経るとともに若年発症かつ重症例となる現象)を認める家系もあるが、若年時における精密な定期的検査の浸透と発見率の上昇のためとも考えられる。

命名法

JPSに対して過去に使用された呼称は以下のとおりである。

  • Familial juvenile polyposis (この呼称は孤発性と家族性を区別するために使用された。孤発例とは、家系内で発症者がひとりの場合をさす。)
  • Generalized juvenile polyposis (上部消化管と下部消化管ともに病変を認める場合をさす。)
  • Juvenile polyposis of infancy(若年発症の重症例をさす)

頻度 

JPSの発症率は16, 000-100, 000人に1人と推定される。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

JPS症例頻度は全消化管ポリポーシス症例の10%を占める。

若年性ポリープは遺伝的素因あるいは偶然の結果生じる。一般人口の1-2%でJPSの診断基準を満たさない孤発性若年性ポリープを認める。

いくつかのポリープを複数個認める症候群では、以下のようにJPSと関連のない特徴を持つ疾患がある。

  • PTEN過誤腫症候群 (PHTS)PTHSの2大病型として、Cowden症候群とBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群があり、これらの疾患は若年性ポリープと関連がある。Cowden症候群は甲状腺、乳腺および子宮内膜の良悪性腫瘍が高リスクな多発性過誤腫症候群である。罹患症例は通常大頭症、trichilemmomas、乳頭状亀頭が通常20歳代後半に出現する。Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群は大頭症、腸管ポリポーシス、脂肪腫および陰茎鬼頭の色素沈着が認められる。PTENはPHTSとの関連性があるとこれまでに報告されている唯一の遺伝子である。Cowden症候群の診断基準にあてはまるおよそ80%の症例、あるいはBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群の診断基準に当てはまる60%の症例においてPTEN遺伝子変異が認められる。遺伝形式は常染色体優性である。
  • 母斑性基底細胞癌症候群 (NBCCS)は20歳代に認められる多発性下顎角化嚢胞あるいは通常30歳代以降に認められる基底細胞癌を特徴とする。症例の約60%で大頭症、前頭隆起、粗野な顔貌、顔面稗粒腫を伴う。過誤腫性胃ポリープが発生することもある。PTCH 遺伝子がNSCCSに関連するとこれまでに報告されている唯一の遺伝子である。遺伝形式は常染色体優性である。
  • Peutz-Jeghers症候群 (PJS) は消化管ポリポーシスと粘膜表皮色素沈着を特徴とする。Peutz-Jeghers型過誤腫性ポリープは小腸(空腸、回腸、十二指腸)に後発するが、罹患症例では胃、大腸にも発生する。STK11遺伝子がPJSに関連するとこれまでに報告されている唯一の遺伝子である。遺伝形式は常染色体優性である。
  • 遺伝性混合ポリポーシス症候群(HMPS)(OMIM 601228)は過誤腫成分と腺腫成分の混合した、癌化しやすい傾向にある異型性若年性ポリープを特徴とする。HMPSの疾患感受性支配領域は15q13-q14である(Jaeger et al 2003)。最近の報告で、HMPSの1 家系のなかで3世代にわたり染色体10q23領域の連鎖が認められ、罹患した症例はBMPR1A遺伝子において11bpの欠失を伴っていた。3症例とも現病歴およびポリープの発生歴はHMPSに典型的であるといわれている経過であり、若年性ポリープ、過形成ポリープあるいは両者の混合型ポリープを伴っていた(Cao et al 2006)(遺伝学的に関連する疾患の項参照)。Cheahらは中華系シンガポール人HMPSの8家系のうち、4家系においてBMPR1A生殖細胞変異を同定し(Cheah et al 2009)、O’Riordanらは2010年にアイルランドのHMPS家系で複数の世代にわたるBMPR1Aのナンセンス変異を同定した。

ポリープを認める症候群で、以下に挙げる疾患のようにJPSを併発しないものもある。

  • 家族性大腸腺腫症 (FAP)は数百から数千もの腺腫性大腸ポリープを認めることが特徴的で、大腸癌に罹患しやすい傾向のある症候群であり、平均16歳(7-36歳)で初発する。FAPにおける腺腫性ポリープとJPSにおける若年性ポリープは組織学的には別個のものである。大腸外病変としては胃底腺および十二指腸ポリープ、骨腫、歯牙異常、先天性網膜色素上皮肥厚(CHRPE)、軟部組織腫瘍、デスモイド腫瘍およびこれらに関連する悪性腫瘍がある。APCがFAPに関連するとこれまでに報告されている唯一の遺伝子である。遺伝形式は常染色体優性である。
  • 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC, Lynch症候群)認められたポリープの数や局在から、本疾患はJPSと鑑別すべき疾患であるが、ポリープの病理診断で両者を鑑別可能である。HNPCCは大腸癌をはじめ、子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、上部尿路、脳、皮膚の悪性腫瘍を特徴とする。HNPCCは以下の5つの遺伝子変異が癌連する;MSH2, MLH1, PMS1, PMS2, MSH6。遺伝形式は常染色体優性である。
  • 遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)HHTに関連するといわれているENG遺伝子およびALK1遺伝子変異を持たないHHT症例ではSMAD4遺伝子変異を検索すべきであり、さらにSMAD4遺伝子変異と伴う場合は胃および大腸ポリポーシスの検索をすべきである(Gallione et al 2006)。若年のHHT症例で鼻出血や毛細血管からの出血で説明できない消化管出血を認めた場合、ポリポーシスの評価もすべきである。

臨床医へ:疾患に関連した異常所見に関する“Simultaneous consult”として、鑑別診断を提供するソフトウェアツールである、SimulConsult®を参考のこと。


臨床的マネジメント

最初の診断に続いて行なう評価

JPSと診断された症例の疾患の程度を明らかにするために、以下に述べる点についての測定が推奨される(Howe et al 1998a)。

  • 腹痛、直腸出血、便秘、下痢あるいは便の大きさ、形状や色の変化に関する病歴
  • 15歳頃、あるいは初発症状出現時(15歳よりも早期であっても)の血算、下部消化管内視鏡検査、上部消化管内視鏡検査

専門家の提案では、HTTの合併の有無を確認するためにSMAD4遺伝子の変異をJPS全症例に測定すべきである(Gallione et al 2004)。

症候に対する治療

JPS最も有効なマネジメントは定期的な下部消化管内視鏡検査および内視鏡的ポリープ切除術である。早期の内視鏡的ポリープ切除術は癌、出血、腸閉塞のリスクを減らすことで罹患率が軽減すると考えられる。
症例によって多数のポリープを認める場合は、結腸あるいは胃の全摘出または部分摘出が症状軽減および発癌リスク軽減に必要と考えられる。いずれの術式がより良いかは議論の分かれるところで、結腸亜全的術に回腸直腸吻合術を加える術式を好む専門家もいれば、全大腸切除術にileoanal pouchを加える術式を好む専門家もいる。結腸/直腸ポリープの数と直腸摘出術の必要性は関連がないと考えられている(Oncel et al 2005)。

JPS/HHTHHTの治療に準ずる(HHTの項参照)。

一次病変に対する予防

病気に対する意識、教育、定期健診の向上が患者家系全体のJPSの同定や発癌予防/リスク軽減に役立つ。

二次病変の予防

病変出現時、ポリープ切除術や外科的治療が貧血の改善に役立つ。

経過観察

腸管の外科的手術が施行されたJPS症例において、術式の種類に関わらず内視鏡検査による経過観察が必要である。なぜならば直腸やpouchに高頻度にポリープが発生するからである(Oncel et al 2005)。

分子遺伝学的検査でSMAD4あるいはBMPR1A遺伝子変異を認めた症例、臨床的にJPSと診断された症例、あるいは分子遺伝学的検査を実施していないか結果を知らされていないJPS症例のなかでJPSの家族歴を持つ症例については以下の通りとする(Howe et al 1998a)。

  • 直腸出血や貧血の有無、腹痛、便秘、下痢、便の大きさ、形状およい色調の変化のモニタリング。これらの徴候はさらなるスクリーニングを行う理由になる。
  • 血算、下部消化管内視鏡検査、および上部消化管内視鏡検査でのスクリーニングは15歳で、あるいは症状の出現時にはたとえ15歳未満であろうとも実施すべきである。
  • スクリーニングで陰性であった場合、3年は繰り返しスクリーニングをすべきである。
  • 単発あるいは少数のポリープが検出された場合、切除されるべきである。その後のスクリーニングは、ポリープが追加検出されないようになるまでは年1回、その後は3年に1回が適当と思われる。
  • 多発性にポリープが検出された場合、大部分の結腸あるいは胃の切除が必要である。その後のスクリーニングは、ポリープが追加検出されないようになるまでは年1回、その後は3年に1回が適当と思われる。

混合性JPS/HHT症候群やSMAD4変異が認められている家系では、15歳以前に分子遺伝学的検査を実施するのが適当である。その理由はHHTの潜在的合併症は小児期の早期から始まるからである(Gallione et al 2004)。混合性JPS/HHT症候群におけるHHTの合併頻度や分布が判明するまでは混合性JPS/HHT症候群やSMAD4変異例ではHHTにおけるサーベイランスに基づくのが適当である。

家系内で特定の遺伝子変異を持たないJPS症例に対しては、以下の通りとする(Howe et al 1998a)。

  • 血算および下部消化管内視鏡検査は15歳になったら基本的定期検査として行われるべきである。
  • 陰性であった場合、45歳までは10年毎に定期検査を行い、その後はAmerican Cancer Society推奨の標準的大腸癌スクリーニングがなされるのがよい。
  • ポリープが認められた場合、切除されるべきである。
  • ポリープが認められた場合、定期検査は年1回繰り返すべきである。
  • 認められたポリープが若年性ポリープであった場合、分子遺伝学的検査や異なる遺伝子に対する検査を繰り返し実施するのがよい。

リスクのある血縁者の検査

家系内に特異的な遺伝子変異が判明した際は、早期の定期検査や介入的治療の利益がある症例を同定するために、10‐20年間はリスクのある家族に対し分子遺伝学的検査を実施するのが適当である。

注意:HHT関連の所見に対する定期検査はポリープに対する定期検査よりも早い時期に開始されることから、リスク家系内の15歳未満の家族に対するSMAD4遺伝子の分子遺伝学的検査の実施は正当な理由となり得る。

遺伝カウンセリング目的の、高リスクの近親者に対する検査に関しては、遺伝カウンセリングの項を参照のこと。

現在研究中の治療

ClinicalTrial.govでの、広範囲にわたる臨床試験に関する情報から検索のこと。
注意:この疾患のための臨床試験の情報は存在しないかもしれない。

その他

若年性ポリープに対する化学予防策は知られていない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

JPSは常染色体優性の遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • JPS症例の約75%で両親もJPSに罹患している。
  • JPS発端者の約25%でポリープの家族歴がなく、de novo遺伝子変異の結果であろうと考えられている。
  • 発端者に遺伝子変異が同定された場合、両親に対し分子遺伝学的検査を含むde novo遺伝子変異の測定が推奨される。もし、発端者に遺伝子変異が同定されなかった場合、両親の家系でもリスクの有無の確定のための検査がなされるべきである(リスクのある親族の検査の項参照)。

注:JPSと診断された症例の75%で親が罹患しているといっても、家系内で検出すべき異常が同定できなかったり、症状出現前に親が早くに死亡したりしたために家族歴が見かけ上なしとされている場合があると思われる。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞に対するリスクは発端者の両親の遺伝子変異の有無による。
  • 発端者の両親が罹患しているか疾患原因となる遺伝子変異を認める場合、同胞のリスクは50%である。
  • 分子遺伝学的検査や定期検査が実施済で両親が罹患していないと思われる場合、生殖細胞モザイクはJPS罹患者には伴わないため、同胞へのリスクは無いに等しい。

発端者の子罹患症例の子は50%の確率で遺伝子変異やJPSの発症リスクが見込まれる。

発端者の他の家族.発端者の他の家族のリスクは発端者の両親の状況次第である。片方の親が罹患している場合、その身内もリスクがあり、分子遺伝学的検査や定期検査を実施する価値がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

遺伝カウンセリングに関連した問題

癌リスク評価と遺伝カウンセリング.分子遺伝学的検査を実施した場合あるいはしなかった場合の、疾患リスク患者に対する発癌リスクの同定に関する医学的、心理的、倫理的な問題についての包括的な記載癌の遺伝リスク評価とカウンセリング(Elements of Cancer Genetics Risk Assessment and Counseling;NCIのPDQ®の一節)を参照のこと。

新生突然変異(de novo変異)と思われる家系への配慮.発端者の両親の中で、誰も常染色体優性遺伝形式の疾患関連遺伝子変異や臨床的異常を認めない場合は、発端者の疾患関連遺伝子はde novo変異である可能性がある。しかしながら、代理父、代理母(例:生殖支援技術)あるいは公表されていない養子縁組などといった、医学的には説明できない事項も調査の考慮の対象となりうる。
 
家族計画.

  • 遺伝リスクの決定や出生前検査の試行についての話し合いは妊娠前に行うのが適正である。
  • リスクの若年の者に対し、遺伝カウンセリング(子孫に対するリスクや出産方法に関する話し合いを含む)を行うのが適当である。

 
18歳未満の無症候性リスク例に対する検査.家系内で遺伝子変異が確認された場合、早期スクリーニングの利益を受ける家族が誰なのかを同定するために分子遺伝学的検査が利用され得る。JPSに対する個々のリスクに対する定期検査は15歳から行うことが推奨されているため、症状出現前であってもこの時期、あるいはこの時期よりも早期に遺伝学的検査を行うのが望ましい。もし、両親が検査結果に対処する能力が十分でないのではないかと心配する場合は、分子遺伝学的情報の開示を延ばすことも可能である(定期検査の結果は延ばすべきではない)。もし、15歳以前にJPSの症状が出現した場合は症状出現時に定期検査を開始すべきであり、その際の分子遺伝学的検査の結果の開示は理にかなっている。子供がこれらの情報を若い年齢期に知ることに関して、リスクと利益を十分考慮に入れるべきであり、また、子供とこれらの情報について議論する方法、あるいは子供たちの抱く疑問を解決する方法について十分考慮すべきである。SMAD4遺伝子変異やHHTに関連した症状を認める家族に関しては、HHTの合併症に対するマネジメントが始まる小児期の早期から分子遺伝学的検査を受けることが望ましい。

出生前診断

SMAD4BMPR1A遺伝子変異のリスクのある妊娠に対し、妊娠15−18週に採取した羊水中細胞や妊娠10−12週に採取した絨毛から調製したDNAを解析することで出生前診断が可能である。罹患家族の疾患感受性アリルは出生前診断が行われる前に同定されなければならない。

注:胎生週数は超音波による胎児の計測や最終月経第1日から算定される。

JPSのように、知能に影響を与えることはなく、治療可能な疾患に対する出生前診断の依頼は一般的ではない。医学的専門性と家族が出生前診断をどのような目的で利用するか、(とりわけ出生前検査を早期診断目的というより妊娠の中断を目的に考慮している場合)との間では出生前診断に対する視点が異なる。ほとんどのJPS患者は慎重な定期検査とポリープの除去で比較的通常の生活を送ることができるため、出生前診断はリスクの程度によって重要視される。ほとんどの保因者は出生前診断を行うか否かの決断は両親によってなされるが、このことに関しては議論の余地がある。

家族で疾患感受性遺伝子の変異が認められた場合、着床前診断(PGDは可能である。


リソース

GeneReviewsスタッフは以下に示す疾患疾患特異的な統率支援団体および罹患者およびその家族に利益があると思われる団体を選択した。GeneReviewsは他団体からの情報に関しては一切責任を負わない。

  • Intestinal Multiple Polyposis and Colorectal Cancer Foundation (IMPACC)

    PO Box 11
    Conyngham PA 18219
    Phone: 570-788-3712
    Fax: 717-788-1818
    Email: impacc@epix.net

  • National Cancer Institute (NCI)

    6116 Executive Boulevard
    Suite 300
    Bethesda MD 20892-8322
    Phone: 800-422-6237 (toll-free)
    Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
    Genetics of Colorectal Cancer (PDQ)

  • American Cancer Society (ACS)

    1599 Clifton Road Northeast
    Atlanta GA 30329-4251
    Phone: 800-227-2345 (toll-free 24/7); 866-228-4327 (toll-free 24/7 TTY)
    www.cancer.org


更新履歴

  1. Gene Review著者:Joy Larsen Haidle, MS, CGC, James R Howe, MD
    日本語訳者:岩泉守哉(ミシガン大学内科学講座 消化器内科部門 研究員)
    Gene Review 最終更新日: 2008.9.9. 日本語訳最終更新日:2010.08.27.
  2. Gene Review著者:  Joy Larsen Haidle, MS, CGC and James R Howe, MD.
    日本語訳者: 岩泉守哉(浜松医科大学医学部 内科学第一講座/附属病院遺伝子診療部)    
    Gene Review 最終更新日: 2011.9.29  日本語訳最終更新日:2014.3.3.( in present)

原文 Juvenile Polyposis Syndrome

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