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リ・フラウメニ症候群
(Li-Fraumeni Syndrome)
[SBLA Syndrome (Sarcoma, Breast, Leukemia, and Adrenal Gland)
]

Gene Reviews著者:Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH
日本語訳者: 中川奈保子(鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科),小杉眞司(京都大学大学院医学研究科)              

Gene Reviews 最終更新日: 2013.4.11 日本語訳最終更新日: 2013.11.11.(minor revision ;2017.2.21)

原文 Li-Fraumeni Syndrome


要約

疾患の特徴 

リ・フラウメニ症候群は軟部組織肉腫,骨肉腫,閉経前乳がん,脳腫瘍,副腎皮質がん(ACC),白血病の発症に関連する遺伝性がん症候群である.また,その他の様々な腫瘍が発生することがある.LFS関連がんは小児期あるいは若年成人期に発生することが多く,その生存者は多数の原発がんを生じるリスクを有する.年齢別のがんリスクが計算されている.

診断・検査 

LFSと診断されるのは,確立された臨床診断基準を満たすか,がんの家族歴にかかわらずTP53の生殖細胞系列変異がある患者である.臨床診断された患者の少なくとも70%は,原因遺伝子であるTP53に生殖細胞系列変異が確認される.これは,LFSとの関わりが確認されている唯一の遺伝子である

臨床的マネジメント 

病変の治療:LFS患者の悪性腫瘍には,がんの日常的なマネジメントを行う.ただし乳がんの場合は,二次がんのリスク低減と放射線治療の回避を目的として,乳腺腫瘍摘出術よりも乳房切除術が推奨される.放射線により誘発される二次がんのリスクが上昇することが懸念されるため,通常は放射線治療にはより慎重となるが,専門家の大半は,リスクとベネフィットを注意深く検討した上で,将来的な影響を懸念するよりも治療効果を優先することを推奨している.

原発病変の予防生殖細胞系列にTP53変異を有する女性に対しては,乳がんのリスクを低減するための予防的乳房切除術も選択肢の一つである.大腸がんの一次予防と同様に,近年推奨されている大腸内視鏡もサーベイランスとして検討すると良い.

二次性合併症の予防放射線により誘発される二次性悪性腫瘍のリスクを低減するため,可能であれば,放射線治療を回避する.

サーベイランス生殖細胞系列にTP53変異を有する小児または成人に対するがんサーベイランスの最適な方法および効果に関する決定的な前向きデータはない.現時点では以下が推奨される. (1) 小児および成人に対して,年1回の全身の身体検査. (2) 小児,成人ともに,長引く症状や病気があれば直ちに医師の診察を受ける. (3) 女性には乳がん検診.20〜25歳から年1回の乳房MRI検査,年2回の乳房の触診を含む.マンモグラムの使用は放射線被曝および感度の限界から意見がわかれている.実施する場合は,年1回のマンモグラムと乳房MRIを,6ヵ月間隔で交互に行うと良い. (4) 成人は大腸内視鏡を用いた2〜3年ごとの大腸がんの定期検診を25歳までに開始.(5)家族歴に基づく特定臓器のサーベイランスを検討.生殖細胞系列にTP53変異がある成人と小児に対する全身MRI検査を用いた強化サーベイランスのプロトコルは,臨床試験で評価中である.

避けるべき薬物や環境TP53の生殖細胞系列変異を有する場合,(1) 日光への曝露,喫煙,職業被曝,過度な飲酒などの既知の発がん物質を避ける.(2) 診断や治療における放射線被曝を最低限にする.

リスクのある近親者の評価家族性のTP53変異を有するリスクがある全ての近親者に対して,遺伝カウンセリングや検査が提供されるべきである.

遺伝カウンセリング 

LFSは常染色体優性遺伝の形式をとる.生殖細胞系列に新生突然変異のTP53変異を有する患者の割合は7〜20%と推定される.患者の子は50%の確率で原因となる変異遺伝子を受け継ぐ.すでに変異が同定されている家系では,リスクのある家族に対する遺伝学的検査およびリスクの高い妊娠に対する出生前診断が可能である.


診断

臨床診断

古典的LFSは以下の基準を全て満たすものと定義される.

  • 発端者が45歳未満で肉腫と診断された
  • 一度近親者が45歳未満でがんと診断された
  • 一度もしくは二度近親者が45歳未満でがん,あるいは年齢を問わず肉腫と診断された [Li et al 1988]

以下に合致する患者も,LFSを疑う.

TP53検査基準であるChompret基準を満たす患者.Chompret基準を満たす患者の少なくとも20%は検出可能なTP53変異を有する[Chompret et al 2001].最新の症例シリーズでは,生殖細胞系列のTP53変異陽性患者の92〜95%が以下の改訂版Chompret基準を満たしていたことが示された[Gonzalez et al 2009b, Tinat et al 2009, Ruijs et al 2010].

  • 発端者が
    • 46歳未満でLFS腫瘍(軟部組織肉腫,骨肉腫,脳腫瘍,閉経前乳がん,副腎皮質がん,白血病,細気管支肺胞上皮がん,など)と診断され,かつ
    • 一度もしくは二度近親者が,LFS腫瘍(発端者が乳がんの場合は乳がん以外)を56歳未満で発症しているか多発性腫瘍がある,または
  • 発端者に多発性腫瘍(多発性乳腺腫瘍を除く)があり,その内の二つがLFS腫瘍であり,かつ最初の発症が46歳未満である,または
  • 家族歴にかかわらず,発端者が副腎皮質がんあるいは脈絡叢腫瘍と診断された

・若年で乳がんを発症したが,BRCA1/2変異が同定できない女性.30歳未満で乳がんと診断され,病因となるBRCA変異が見つからない女性の約4〜8%はTP53変異を持つ可能性が高いと推定される[Gonzalez et al 2009b, Mouchawar et al 2010, McCuaig et al 2012].30〜39歳で乳がんと診断された女性も,TP53変異を持つリスクがわずかに上昇する可能性がある[Lee et al 2012].

  • 以下のいずれかを満たす場合も,若年発症の乳がん女性がTP53変異を有する可能性はさらに上昇する
    • がん,特にLFS関連腫瘍の家族歴がある[Tinat et al 2009, McCuaig et al 2012]
    • エストロゲン,プロゲステロン,Her2/neuマーカーの全てまたはいずれかが陽性の乳がんの既往歴[Masciari et al 2012, Melhem-Bertrandt et al 2012]
    • 別のLFS関連腫瘍の既往歴がある[Tinat et al 2009]

・家族歴にかかわらず,副腎皮質がん(ACC)の既往歴がある患者.他に家族歴がなかったとしても,ACC罹患児の50〜80%はTP53変異を有する可能性がある[Varley et al 1999, Libe&Bertherat 2005].

  • TP53変異は成人発症のACC患者にも認められる可能性がある[Gonzalez et al 2009b].ある症例シリーズでは,成人発症のACC患者の5.8%に病因となるTP53変異が見つかった[Raymond et al 2013].しかし,40歳を超えてACCと診断された患者では,TP53変異の可能性が低い[Waldmann et al 2012].
  • 別の研究では,ACC患者のTP53の体細胞変異と生殖細胞系列変異の相関が評価されている.研究者らはACC腫瘍の40%でp53の異常な発現を同定した.さらに,p53の異常な発現があったコホートで,被験者の25%は生殖細胞系列にTP53変異を認めた[Waldmann et al 2012].

・家族歴にかかわらず,脈絡叢がん(CPC)の既往歴がある患者.この稀なタイプの脳腫瘍がある小児は,他に家族歴がなかったとしても,TP53変異をもつ可能性が高いと思われる.

  • ある症例シリーズでは,CPCの既往歴または家族歴がある9人の患者全員が,生殖細胞系列にTP53変異を有していた[Gonzalez et al 2009b]
  • 別の小規模な症例シリーズでは,CPC罹患児の36.4%で,TP53変異が陽性であった[Gozali et al 2012]

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 TP53はLFSを引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である[Malkin 2011].

LFSの特徴を示す家系の約80%が同定可能なTP53変異を有している.TP53変異陽性ではないがLFSの明らかな臨床的特徴を共有している家系は,異なる遺伝性がん症候群の可能性が高い(鑑別診断の項参照).

臨床検査

表1 LFSで用いられる分子遺伝学的検査の概要

遺伝子記号

検査法

検出される変異

変異検出頻度1, 2

検査可能機関

TP53

シークエンス解析

配列変化3

〜95% 4, 5

臨床

選択したエクソンのシークエンス解析6

選択したエクソンに限定した配列変化3

不明

欠失/重複解析7

コード領域,エクソン1,プロモーターが関わる欠失

〜1%8

  1. 当該遺伝子に存在する変異を検出するために使用される検査法の性能
  2. 変異陽性家系%の約80%における検出頻度
  3. シークエンス解析で検出される変異には,一塩基置換,遺伝子内の小さな挿入/欠失などが含まれるが,通常はエクソンや遺伝子全体の欠失や重複は検出されない
  4. TP53の全コード領域(エクソン2〜11)のシークエンス解析では,TP53変異の約95%が検出され,そのほとんどはミスセンス変異である.LFS患者の約80%が検出可能なTP53変異を持つと推定される[Malkin 2011]
  5. LFSの新生突然変異の頻度は7〜20%である
  6. 選択されるエクソンは検査施設ごとに異なる
  7. ゲノムDNAのコード領域および隣接するイントロンのシークエンス解析では容易に検出できない欠失/重複を同定する検査には,次のものがある:定量PCR,long-range PCR,多重連鎖反応依存性プローブ増幅(MLPA),当該遺伝子/染色体セグメントを含む染色体マイクロアレイ(CMA)
  8. 古典的LFSはTP53コード領域あるいはプロモーター,非コード領域のエクソン1に関係する欠失により引き起こされることもある.LFS家系におけるTP53ゲノム再配列の複数の報告で,このタイプの変異がLFS症例の約1%を占める可能性が示唆されている[Bougeard et al 2003, Gonzalez et al 2009b]

検査結果の解釈

  • シークエンス解析結果の解釈において考慮する課題は,ここをクリック
  • 重複,逆位,大欠失,非コード領域の変異をシークエンス解析で検出できる可能性は低い[Bougeard et al 2003]
  • 新規のミスセンス変異の臨床的意義を決定するのに,機能解析が有用と考えられる[Yamada et al 2009]が,特定の研究所でしか行われていない

特定のアレル多型に関する情報は,Molecular Geneticsの項参照(Table A.Li-Fraumeni Syndrome: Genes and Database).(訳注:和訳に含まれていない.原文参照)

検査方法

発端者の診断を確定する LFSの診断はTP53の生殖細胞系列変異の有無により確定する.

  • 家系内で特定の変異が同定されない場合,シークエンス解析と欠失/重複解析の両方を含む包括的なTP53遺伝学的検査を実施すべきである

発症前遺伝学的検査 リスクのある無症状の家族に対する発症前遺伝学的検査では,家系内で疾患の原因となるTP53の生殖細胞系列変異をあらかじめ同定しておく必要がある.

出生前診断および着床前遺伝子診断(PGD) リスクのある妊娠に対する出生前診断および着床前遺伝子診断では,家系内で疾患の原因となるTP53の生殖細胞系列変異をあらかじめ同定しておく必要がある.

遺伝子レベルでの関連疾患

後天的なTP53遺伝子変異はさまざまな腫瘍で認められるが,生殖細胞系列変異に関与する遺伝性の臨床病態は他には知られていない.体細胞のTP53遺伝子変異はヒトの腫瘍で最も高頻度に見られる遺伝子変異で,約50%の腫瘍で認められており,最も広く研究されている[Meulmeester & Jochemsen 2008, Tomkova et al 2008].

最近,生殖細胞系列における染色体17p13.1を含むヘテロ欠失を原因とする,表現型が異なる隣接遺伝子欠失症候群が報告され,ここでは,TP53といくつかの隣接遺伝子が失われている.患者は共通の表現型を示し,発達遅滞,筋緊張低下,手足の奇形を特徴とする[Shlien et al 2010].17p13.1を含むこれらの隣接遺伝子欠失を有する患者のがんリスクが,TP53変異の患者と同様かあるいは低いのか,現時点では明らかになっていない.


臨床像

自然経過

中心的ながん. リ・フラウメニ症候群(LFS)では,小児期および成人期に,多種多様な悪性腫瘍が高いリスクで発症する [Nichols et al 2001, Olivier et al 2003, Lindor et al 2008].

LFSに最も関連する腫瘍は,軟部組織肉腫,骨肉腫,閉経前乳がん,脳腫瘍,副腎皮質がんである.以下に記載するこれらの中心的ながんはLFS関連腫瘍全体の約70%を占める[Olivier et al 2003, Gonzalez et al 2009b, Ruijs et al 2010].

  • 肉腫. LFS患者は,軟部組織肉腫および骨の肉腫の発症リスクが高い.国際がん研究機関(IARC)のTP53データベースから,LFS患者で報告されるがんの25%を肉腫が占めることがわかった.IARCのTP53データベースでは,5歳未満の横紋筋肉腫と,年齢にかかわりなく骨肉腫が,最も多く発生していた肉腫であった.その他の種類としては,平滑筋肉腫,脂肪肉腫,組織球肉腫などがある.他に16の組織型が知られている[Ognjanovic et al 2012].LFS関連肉腫は小児期と成人期のいずれでも発症することがあり,ほとんどのLFS関連肉腫は50歳未満に発症する.IARCのTP53データベースで報告されていない肉腫と,LFSの特徴である可能性が高くない肉腫には,消化管間質腫瘍,デスモイド腫瘍/線維腫症,ユーイング肉腫,血管肉腫などがある[Ognjanovic et al 2012].
  • 乳がん. LFSの女性患者は閉経前乳がんを発症するリスクが非常に高い.LFSの女性患者が乳がんと診断される年令の中央値は33歳前後である[Olivier et al 2003].LFS関連乳がん女性に関するある症例シリーズでは,乳がんの32%が30歳未満で発症し,50歳以降に発症したものはなかった[Birch et al 1994].最近のデータでは,LFS関連乳がんは,ホルモン受容体とHer2/neuの両方またはいずれか一方で免疫染色とFISH(HER2/neu用)がほとんど陽性になることが示唆された[Wilson et al 2010, Masciari et al 2012, Melhem-Bertrandt et al 2012].ある症例シリーズでは,LFS関連乳がんの84%でエストロゲンとプロゲステロンの両方またはいずれか一方のホルモンマーカーが陽性,浸潤性乳がんの63%と非浸潤性乳がんの73%でHer2/neuが陽性であった[Masciari et al 2012].別の研究では,LFS関連がんの67%がHer2/neu陽性であったが,対照群は25%であった[Melhem-Bertrandt et al 2012].

乳房の悪性葉状腫瘍もLFSに関連することがある[Birch et al 2001].

これまでに,LFS家系の男性乳がんは報告されていない.

  • 脳腫瘍. LFS患者は,多くの種類の脳腫瘍を発症するリスクが高い(星状細胞腫,膠芽細胞腫,髄芽細胞腫,脈絡叢がん(CPC)など)LFSに関連する脳腫瘍は小児期と成人期のいずれでも発症し,発症年齢の中央値は16歳である[Olivier et al 2003].

脈絡叢がんの小児で生殖細胞系列にTP53変異が認められる可能性は高く,他にLFSの家族歴がない場合でも同様である[Krutilkova et al 2005, Tabori et al 2010].

悪性トリトン腫瘍と呼ばれる頻度の低い末梢神経鞘腫瘍も,生殖細胞系列にTP53変異を認める小児で1例報告されている[Chao et al 2007].悪性トリトン腫瘍は神経鞘腫細胞と横紋筋芽細胞を含んでいる.

  • 副腎皮質がん(ACC). LFS患者はACCの発症リスクが高い.小児ACC患者は50〜80%の確率で生殖細胞系列にTP53変異をもつ可能性が高く,他に家族歴がない場合でも同様である[Libe´ & Bertherat 2005, Gonzalez et al 2009b].成人発症のACC患者も,特に50歳未満で診断された場合は,生殖細胞系列にTP53変異をもつリスクが高い可能性がある[Gonzalez et al 2009b].ある症例シリーズでは,18歳以降に診断されたACC患者の5.8%が,生殖細胞系列でTP53変異陽性であった.

過度の若年性がん. LFS患者は,一般より若い年齢でがんを発症するリスクが高い.LFS関連の悪性腫瘍の50%が30歳までに発症すると推定される[Lustbader et al 1992]. TP53変異を有する患者の症例シリーズでは,診断時年齢の中央値は25歳であった[Gonzalez et al 2009b].

LFS家系である可能性を評価する場合,診断時年齢が重要となる[Nichols et al 2001].例えばある症例シリーズでは,TP53変異をもち,大腸がんを発症した患者6名のうち,4名は21歳未満で発症していた[Wong et al 2006].したがって,LFSの可能性がある家系を評価する場合は,がんの診断時年齢が著しく低いことが悪性腫瘍の種類と同じくらい重要となる.

過度の多発性原発がん. LFS患者は多発性に原発がんを生じるリスクも高い[Gonzalez et al 2009b].LFS家系の200名の患者に対して行った後ろ向き研究では,15%が二つ目のがんを発症し,4%が三つ目,2%が四つ目のがんを発症していた.この集団では,小児がんを発症して助かった患者は,さらなる悪性腫瘍を発症するリスクが最も高かった[Hisada et al 1998].LFS患者が二つ目のがんを発症するリスクは57%,三つ目のがんを発症するリスクは38%と推測されている.腫瘍の治療とその後発生した悪性腫瘍とは,全て明確に関連しているわけではない.

新しいがん. 肉腫,乳がん,脳腫瘍,ACCがLFSの中心的ながんであることは一致した意見であるが,LFSの悪性腫瘍の約30%を占める中心的ながん以外のがんに関しては,一致した意見は多くない.

下記の悪性腫瘍は,LFSの基準を満たしているか,生殖細胞系列のTP53変異検査で陽性であるかのいずれか一方,あるいは両方である,複数の家系で過度に発症していた[Chompret et al 2000, Nichols et al 2001, Olivier et al 2003, Varley 2003, Wong et al 2006, Gonzalez et al 2009b].

  • 消化管がん ― 大腸,食道,膵臓,胃がんは全てLFS家系で報告されている.ある症例シリーズでは,TP53変異がある患者では,大腸がんの発生率は2.8%,診断時年齢の中央値は33歳であったと報告されている[Wong et al 2006].別の症例シリーズでは,LFS家系の22.6%に消化管がん患者が少なくとも一人いて,診断時年齢の中央値は43歳と報告されている[Masciari et al 2011].
  • 泌尿生殖器がん ― LFS家系で腎細胞がんが報告されている.子宮内膜がん,卵巣がん,前立腺がん,生殖器胚細胞がんは全てLFS家系で報告されている.
  • 白血病,リンパ腫 ― 白血病(特に急性)は,当初LFSの基本的特徴であると考えられていたが,最近の研究で,白血病はLFSの主たる特徴ではないと結論づけられた.ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫も,LFS家系で報告されている.
  • 肺がん ― 特に喫煙しているLFS患者で,肺がんのリスクが高くなることが報告されている[Hwang et al 2003].気管支肺胞がんと呼ばれる稀な肺がんはLFSの関連がんである[Tinat et al 2009].
  • 神経芽細胞腫と他の小児がん ― 生殖細胞系列にTP53変異がある小児は,神経芽細胞腫およびその他の小児期初期のがんを発症するリスクが高くなる可能性がある.
  • 皮膚がん ― LFS家系で,メラノーマとメラノーマ以外の皮膚がんのリスクが高くなることが報告されている.
  • 甲状腺がん ― LFS家系で,甲状腺髄様がんが報告されている.

がん発症リスク. LFSは高い生涯リスクを有するがん症候群である.がん発症リスクは30歳までに50%,60歳までに90%と推定される[Lustbader et al 1992].

年齢別のがんリスクも評価されている.LFSの5家系の研究では年齢別のがん発症リスクは0〜16歳で42%(標準誤差:0.14),17〜45歳で38%(0.14),45歳以降で63%(0.27)であった.がん発症の生涯リスクは85%と計算された.別の症例シリーズでは,LFS家系でのがんの56%は30歳までに発症し,100%が50歳までに診断されていた.[Varley et al 1997].

LFS患者のがんリスクは性別により有意に異なる.LFSの女性患者は,がんの生涯リスクがほぼ100%だが,男性患者は約73%である[Chompret et al 2000].がんリスクにおける性差は主に,LFSの女性患者で乳がんの発生率が高いためである[Chompret et al 2000, Gonzalez et al 2009b].しかし,ある症例シリーズでは,LFSの女性患者では小児期を含むあらゆる年齢で過度に高いがんリスクが認められた[Hwang et al 2003, Wu et al 2006].

Ruijsのチームは,生殖細胞系列にTP53変異があるLFSの24家系における観察例と予測例の比較に基いて,以下のとおり腫瘍別のがんリスクを報告した[Ruijs et al 2010]:

表2:生殖細胞系列にTP53変異を有するLFS家系における腫瘍別がんリスク

腫瘍の種類

相対リスク(95% CI)

107 (49-203)

結合組織

61 (33-102)

35 (19-60)

膵臓

7.3 (2-19)

乳房

6.4 (4.3-9.3)

大腸

2.8 (1-6)

肝臓

1.8 (2.1-64)

Ruijs et al [2010]に基いて作成:p.425参照Based on Ruijs 0, 11]bciari et al 2012, Melhem-Bertrandt et al 2012]

副腎皮質がんの相対リスクは,一般集団での発生率が不明であるため,この症例シリーズでは計算できなかった.LFSは稀な疾患で腫瘍の種類も幅広いため,LFSにおける腫瘍ごとのリスクを推定することは困難である.

遺伝子型と表現型の関連

生殖細胞にTP53変異をもつLFS家系の遺伝子型と表現型の関係について以下の事例が報告されている.

  • ミスセンス変異は,がんの若年発症と関連があると思われる.ある症例シリーズによると,TP53のミスセンス変異では,ヘテロ接合体において腫瘍が発生する平均年齢がナンセンス変異や他の変異型より8年早い(20.9歳と28.9歳).著者らは,TP53遺伝子の不活化だけでなく,ミスセンス変異も別の発がん作用を与えている可能性を示唆した[Bougeard et al 2003, Palmero et al 2008].
  • TP53遺伝子全体または一部が含まれる欠失がもたらす表現型は,古典的なLFSに合致していると思われる[Bougeard et al 2003, Shlien et al 2010].これは,TP53遺伝子よりもさらに延長した範囲の欠失を有する場合とは異なっている.この場合,認知,発達,神経,その他の異常を示すが,腫瘍形成のリスクは低いことがある[Shlien et al 2010].
  • TP53変異がDNAの副溝と接するDNA結合ループにあれば,脳腫瘍のリスクが高くなると思われる[Olivier et al 2003].
  • TP53変異がタンパク-DNA接触面と反対側のループに位置する場合,副腎皮質がん(ACC)のリスクが高くなると思われる[Olivier et al 2003].
  • ブラジルの研究によると,TP53変異NP_000537.3:p.Arg337Hisは,小児のACCのリスクと関連する.この変異は,脈絡叢がん,骨肉腫,乳がんの患者でも同定されている[Assumpcao et al 2011, Custodio et al 2011, Seidinger et al 2011, Gomes et al 2012].p.Arg337Hisは浸透率が低いアレルと考えられるエビデンスが示されている[Achatz et al 2007, Ribeiro et al 2007, Palmero et al 2008].しかし,p.Arg337His変異を有する家系におけるがんの範囲は,他のTP53変異が関わるがんの種類と似始めていることに気をつける必要がある.
  • TP53変異があり,ある遺伝的修飾因子(例えば,特異的なMDM2 SNP309アレル,テロメアの短縮)もある場合,TP53変異はあるがこのような遺伝的修飾因子をもたない場合よりも若年でがんを発症するようである[Bougeard et al 2003, Wu et al 2011].このことは,医師から患者に対してまだ広く情報提供されていない.

TP53変異をもたないLFS家系よりも,TP53変異をもつ家系での悪性腫瘍がより若年で,より高頻度に発生しているというエビデンスが複数示されている[Olivier et al 2003, Wu et al 2006, Gonzalez et al 2009b].

浸透率 

LFSは浸透率の高いがん症候群である.LFSにおけるがんリスクは30歳までに50%,60歳までに90%と推定される[Lustbader et al 1992].しかし,LFS患者の生涯リスクは女性よりも男性が有意に低いと考えられる[Wu et al 2006](臨床像の項を参照).患者は通常,著しく若年でがんと診断された場合にTP53検査を提供されるため,上記の数字はまだ少々偏りがあると考えられる.

表現促進現象 

LFS家系では,世代を経るごとに表現促進現象を認めることが,強く考えられる.

これまでに,二つの遺伝的修飾因子が同定されている.

  • MDM2 MDM2遺伝子はTP53遺伝子の直接的な負の調節因子である.MDM2プロモーター領域(rs2279744)のNM_002392.2:c.14+309G>T変異体(著者らはSNP309と命名)は,著しく若年における腫瘍の発生と関連している.腫瘍発生速度の増加は,生殖細胞系列にTP53変異がある家系および散発性腫瘍の患者で確認されている[Bond et al 2004, Bougeard et al 2006, Ruijs et al 2007].ある最近の研究では,MDM2 SNP309変異体は,LFS家系において緩徐にがんリスクを増加させるのみであることがわかった[Wu et al 2011].
  • テロメアの長さ. 短縮したテロメアはLFS家系における腫瘍発生速度の増加と関連している[Tabori et al 2007, Trkova et al 2007].ある症例シリーズでは,TP53変異があり,小児期に悪性腫瘍を発症した患者のテロメアは,両親や非罹患の同胞よりも有意に短かった[Bougeard et al 2003].

別の研究では,LFS家系において,世代あるいは出生コホートが影響している可能性が確認されたが,この種のコホート影響はLFS家系で認められる促進現象の速さを適切に説明できなかった[Brown et al 2005].

頻度 

かつて,LFSは珍しい遺伝性がん症候群と考えられていたが,最近のデータでは,生殖細胞系列のTP53変異の頻度は1/5,000〜1/20,000ほどの高さである可能性が示唆されている[Lalloo et al 2003, Gonzalez et al 2009b].より多くの家系でTP53の遺伝子検査が実施されれば,LFSの真の頻度が明らかになるだろう.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

表3 リ・フラウメニ症候群:OMIM Phenotypic Series

表現型

表現型 MIM番号

遺伝子/座位

遺伝子/座位 MIM番号

リ・フラウメニ症候群

151623

TP53, P53, LFS1

191170

リ・フラウメニ症候群

609265

CHEK2, RAD53, CHK2, CDS1, LFS2

604373

リ・フラウメニ症候群

151623

CDKN2A, MTS1, P16, MLM, CMM2

600160

リ・フラウメニ症候群3

609266

LFS3

609266

リ・フラウメニ様症候群

151623

TP53, P53, LFS1

191170

リ・フラウメニ症候群

151623

TP53, P53, LFS1

191170

OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man)より引用

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群. 閉経前乳がんを主に発症する家系では,TP53変異よりもBRCA1またはBRCA2変異をもつ傾向が高い[Walsh et al 2006].生殖細胞系列のTP53変異が関与する割合は乳がん全体の1%に満たないと考えられている[Sidransky et al 1992].ある症例シリーズでは,36歳未満で乳がんと診断され,自身または家系に他に顕著な罹患歴を持たない女性患者の4%にTP53変異が認められた[Tinat et al 2009].

遺伝性乳がん卵巣がん症候群の特徴的疾患には,乳房,卵巣,膵臓,前立腺のがんおよびメラノーマが含まれる.BRCA1またはBRCA2の一方のアレルに変異があっても,小児がんの増加はない.アレルの両方にBRCA2変異が遺伝した場合,D1タイプのファンコニ貧血を引き起こす.

BRCA1またはBRCA変異を同定できない患者が以下を満たす場合,TP53検査を提供すべきである.

  • LFSの特徴的疾患の少なくとも複数が含まれた罹患歴が,患者自身および家系に認められる[Walsh et al 2006]
  • 患者自身が30歳未満で乳がんと診断されたことがある[Gonzalez et al 2009b]

ミスマッチ修復遺伝子欠損症候群(Constitutional mismatch repair deficiency syndrome). 白血病,脳腫瘍,若年性消化管がんの小児は,ミスマッチ修復遺伝子欠損(CMMR-D)症候群の可能性が考えられる.CMMR-D症候群は,両方のアレルに変異したミスマッチ修復(MMR)遺伝子が伝わったことによる[Tan et al 2008].MMR遺伝子には,MLH1MSH2MSH6PMS1PMS2がある.片側だけ変異したアレルは,遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(HNPCC)(リンチ症候群とも呼ばれる)の原因となる.リンチ症候群の患者で,パートナーにもMMR遺伝子変異がある場合,児がCMMR-D症候群となる確率は25%である.

カフェオレ斑があり,白血病または脳腫瘍に罹患し,かつ大腸がんの家族歴がある小児には,MMR遺伝子検査を提供すべきである[Tan et al 2008].

LFSおよびCMMR-D症候群の特徴的疾患を認める家系では,両方について遺伝子検査を提供することが適切と考えられる.

TP53経路遺伝子の生殖細胞系列変異. TP53経路の複数の遺伝子(CHEK2,CDKN2Aなど)はLFSの候補遺伝子として解析されている.現時点で,TP53はLFSに関連する唯一の遺伝子である[Malkin 2011].CHEK2変異がある女性は,乳がんのリスクが高いと思われる.CDKN2A変異を持つ男性および女性は,メラノーマと膵臓がんのリスクが高いと思われる.

臨床医への注: 本疾患患者に対する個別の「simultaneous consult」については,SimulConsult(R)を参照.SimulConsult(R)は患者の所見を基に鑑別診断を提供する双方向型診断決定補助ソフトである(登録または施設からのアクセスが必要).


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

LFSと診断された患者のがんの評価は患者の罹患歴と,家系内のがんのパターンにある程度の基づいて行われるべきである.検査には全身の身体検査,神経学的検査,血球数,画像診断,内視鏡検査や生体組織検査などが含まれる.分子学的または臨床的な基準に基いてLFSと診断されるか疑われる患者は臨床遺伝専門医に相談し,診断の確認と医療的マネジメントについて推奨を受けるべきである.

病変の治療

乳がんを発症したLFS患者には,二次乳がんのリスク低減と放射線治療回避のため,両側の乳房切除術を(乳腺腫瘍摘出術よりも)推奨する.しかし,専門家の大半は,リスクとベネフィットを注意深く検討した上で,将来の影響を懸念するよりも治療効果を優先することを推奨している.LFS関連腫瘍は,放射線治療を行わないこと以外は通常のプロトコルに従って治療を行う.

原発病変の予防

生殖細胞系列にTP53変異を有する女性に対しては,乳がんリスクを低減するための予防的乳房切除術も検討する[Thull & Vogel 2004].大腸がんの一次予防と同様に,最近推奨されている大腸内視鏡検査もサーベイランスとして検討すると良い.日光,喫煙,その他にも発がん性が知られていたり疑われたりしている物質への曝露の回避に関するカウンセリングが推奨される.

二次性合併症の予防

TP53変異がある場合,放射線による二次性悪性腫瘍のリスクを抑えるため,可能な限り放射線治療を回避するよう警告されている[Evans et al 2006].しかし,生存確率を上げるために放射線治療が医療的に必要と考えられる場合,主治医と患者の判断により放射線治療を実施してもよい.放射線の発がん性に関する懸念は,古いデータに基づいたものである.現在の技術(発がん性が低いと考えられる)に関わるリスク調査に関心が持たれている.

現在の化学療法レジメンの発がん性物質影響に対する感受性に関するデータは,かなり限定されたものである.稀なケースでは,生殖細胞系列にTP53変異がある患者は,放射線治療または化学療法をおこなった後に,骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病を発症した[Hisada et al 2001, Kuribayashi et al 2005, Talwalkar et al 2010].

サーベイランス

現時点では,どのモニタリングのレジメンもTP53変異がある小児や成人に対する有効性が証明されていないことを,医師と家族は理解しておく必要がある.
以下が推奨される:

  • 小児および成人は,全身の身体検査を年1回実施すべきである.これには詳細な皮膚の検査と神経学的な検査を含む.医師は,若年性で稀ながんのリスクが高いことと,がん克服後の二次性悪性腫瘍のリスクが高いことを認識すべきである[NCCN 2012].
  • 患者は,特に頭痛,骨痛,腹部の不快感などの長引く症状や病気に細心の注意を払い,問題があれば直ちに医師の診察を受けるべきである[Lindor et al 2008, NCCN 2012].
  • 女性は乳がんのモニタリングを行う.年1回のMRIと年2回の触診を20〜25歳で開始する.マンモグラムの使用は放射線への曝露および感度の限界から意見がわかれている.実施する場合は,年1回のマンモグラムと乳房MRIを,6ヵ月間隔で交互に行うと良い.[Lindor et al 2008, NCCN 2012].

以下が推奨される:

  • 成人は2〜3年ごとの大腸がん定期スクリーニングを25歳までに開始することを検討すべきである[NCCN 2012].
  • 家族歴に基づく特定臓器の検査を検討すべきである[NCCN 2012].

LFS成人において実施された,FDG-PET(F18-fluorodeoxyglucose position emission tomography)/CT画像検査のパイロット試験で,15人中3人に腫瘍が検出された.しかし,PET/CT検査に関連した放射線被曝の有害影響の可能性に関して重大な懸念が持ち上がった[Masciari et al 2008].このことから,関心はTP53変異がある成人に対する全身MRIの利用に移ってきている.

複数のグループが集中スクリーニングを始めている.これには,全身の迅速MRI,脳MRI,腹部超音波検査,副腎皮質機能のバイオマーカー検査を含む.予備データは,このようなサーベイランス・プロトコルで腫瘍を発症前に検出することにより,LFS患者の生存率を上昇させる可能性を示唆している[Villani et al 2011].しかし,このプロトコルの有効性を示すためには,LFSの成人と小児においてさらなる前向き研究が必要である.

サーベイランスの臨床的ベネフィットはわかっていないが,LFS患者に対してがんサーベイランスに対する考え方の調査が行われた.ほとんどの患者は,早期に腫瘍を発見するためのサーベイランスの価値を信じており,定期サーベイランス・プログラムに参加することで精神的なベネフィット(特に,管理されて安全という感覚)があると答えている[Lammens et al 2010b].

避けるべき薬物や環境

TP53変異があるとイオン化放射線への感受性が高くなるというエビデンスがある[Hisada et al 1998, Varley 2003, Wang et al 2003, Cohen et al 2005].このため,生殖細胞系列にTP53変異がある場合は可能な限り診断または治療による放射線被曝を回避するか,最小限にとどめるべきである[Varley 2003, Evans et al 2006].生殖細胞系列にTP53変異を有する患者に,放射線によって生じた二次がんが報告されている[Hisada et al 1998, Limacher et al 2001, Cohen et al 2005].このリスクをさらに正式に評価するための詳細な研究が進行中である.

LFS患者は上記以外にも,日光への曝露,喫煙,職業被曝,過度な飲酒などの既知の発がん物質への曝露を回避するか最小限にとどめることも推奨される.なぜなら,発がん性物質への曝露と生殖細胞系列のTP53変異の影響は累積する可能性があるためである.例えば,生殖細胞系列にTP53変異を有する場合,非喫煙者に比べて喫煙者は肺がんを発症するリスクが有意に高くなることがわかっている[Hwang et al 2003].

リスクのある近親者の検査

家系内でTP53変異が同定されたら,リスクのある近親者を検査することにより,同じ変異があり,検診の強化が必要で,がんが見つかれば早期に治療を行う必要がある家族を同定することができる.しかし,検診の強化や早期治療がLFS患者に有効か否かは現時点では明らかではないことを,家族に伝えておく必要がある.

リスクのある近親者の検査については遺伝カウンセリングの項を参照.

妊娠中のマネジメント

妊娠中のLFS患者は,がんの可能性がある症状はすべて主治医に伝えるべきである.必要であれば,妊娠中も乳房の触診や画像検査を継続することができる.

生殖細胞系列にTP53変異を有すると確認された胎児に対するスクリーニングに関しては,特別な推奨は行われていない.誕生後に,がんの徴候がないか評価を行う.

研究中の治療法

様々な疾患の臨床試験に関する情報は,ClinicalTrials.govを検索のこと. 注:本疾患の臨床試験は行われていないと考えられる.

その他

2010年に設立されたLi-Fraumeni Exploration (LiFE) Research Consortiumは,家系にLFSを持つ家族と患者に対応している医師,科学者,遺伝カウンセラー,心理学者の共同研究グループである[Mai et al 2012].


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

LFSは常染色体優性遺伝の形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 殆どのTP53遺伝子は一方の親から遺伝している.
  • どちらかの親あるいはその家系に明らかながんの病歴がある場合,その親の検査を最初に実施する.病歴がなければ,両親の検査を同時に実施する.
  • 新生突然変異の頻度は十分に実証されていないが,7〜20%と推定される[Chompret et al 2000, Gonzalez et al 2009a].
  • 家族歴がないLFS患者の両親の検査が推奨される.発端者である子に認められたTP53遺伝子の変異について分子遺伝学的検査を行い,親の一方に変異が見つかった場合は適切なサーベイランスを行う.

    注:家族の病気を認識していなかったり,変異を持つ親が発症前に死亡していたり,発症が遅かったりする場合も,家族歴が認識されないことがある.

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞のリスクは発端者の両親の遺伝学的な状況次第である.
  • もし一方の親が発端者と同じTP53変異を有しているならば,患者の同胞は50%の可能性でLFSの変異およびLFS関連がんの危険性がある.
  • いずれの親も発端者と同じTP53遺伝子変異をもたない場合,発端者の変異は新生突然変異によるものと考えられ,したがって同胞のリスクは低いと思われる.しかし生殖細胞モザイクの可能性は残されるので同胞のリスクは一般人口集団のリスクよりはわずかに高い可能性がある.二つのLFS関連悪性腫瘍を発症した小児で,新生突然変異の体細胞モザイクが1例報告されている[Prochazkova et al 2009].
  • LFSの臨床診断基準を満たしている家系であるが,発端者にTP53変異が同定されない場合,同胞のLFSのリスクは50%と推定される.

発端者の子 

一方の親が生殖細胞系列にTP53遺伝子変異を持つ場合,その子はそれぞれ50%の確率で変異遺伝子とLFSに関連したがんを受け継ぐ.

他の家族 

 他の近親者のリスクは発端者の親の遺伝学的な状況次第である.もし親の一方が罹患していたり病因となる遺伝子変異を有していたりする場合は,その親の近親者にもリスクがある.

TP53変異を有するリスクは以下の通りである:

  • 第二度近親者(祖父母,叔父,叔母,甥,姪,孫)は25%のリスク(上述)
  • 第三度近親者(いとこ,曾祖父母,大叔父,大叔母)は12.5%

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断・治療を目的としたリスクのある近親者の検査に関する情報は,マネジメントの,リスクのある近親者の検査の項を参照.

明らかに新生突然変異と思われる変異を認める家系常染色体優性遺伝性疾患患者の両親に遺伝子変異を認めない場合,子の変異は新生突然変異と考えられる.別の説明としては,表現度が様々なこと(TP53変異を有する男性はがんを発症しない可能性がある)や生殖細胞モザイクがある.しかし親が異なる場合(例,生殖補助医療を利用した出産)や開示されていない養子縁組など,非医学的な理由も考慮すべきである.

遺伝性がんのリスク評価とカウンセリング

LFS家系では医学的,心理的,あるいは家族内でのさまざまな問題を生じうる[Chompret 2002, Varley 2003, Peterson et al 2008, Lammens et al 2010a].

TP53変異を調べる検査を受けたのは40〜50%と報告されており,これは多くのリスクのある人たちが検査を受けない選択をしたことを示している[Patenaude et al 1996, Lammens et al 2010a].遺伝子検査を受ける者は検査の前後で遺伝カウンセリングを受け,検査の正確さや限界,結果が本人や家族に及ぼす医学的・心理的影響,費用を含めた検査の計画,検査を受けることにより考え得るリスクとベネフィットなどについて話し合っておくべきである.

遺伝カウンセリングの来談の動機およびLFSに関する来談者の理解度を把握することも重要である.

がんのリスクに関する理解は個々で大きく異なり,検査を受けるかどうかの決定と検査結果が与える衝撃の強さに影響する.リスクの理解度は,個人の過去のがんの経験や喪失,検査へのためらい,近親者のがん患者数の影響を受けることもある[Peterson et al 2008].

遺伝学的検査の利用の有無に関わらず,がんリスク評価によりリスクのある個人を同定することの医学的,心理社会的,倫理的な影響の包括的記載については,Elements of Cancer Genetics Risk Assessment and Counseling (part of PDQ(R), National Cancer Institute) を参照のこと.

年齢によるがん発症リスク評価の補正. 家族にLFS患者がいる家系内では,小児期,青年期,成人期における特定の悪性腫瘍の罹患率は異なる[Olivier et al 2003].各年齢群で頻度の高いがんは以下のとおりである.

  • 0〜10歳 軟部組織肉腫,脳腫瘍,副腎皮質がん(ACC)
  • 11〜20歳 骨肉腫
  • 21歳以上 乳がん,脳腫瘍

リスクはあるが50代や60代でもがんを発症しない場合,家系に伝わるTP53変異をもつリスクは低くなる.しかし,小児がんを発症しなかった男性が50代に多発性の原発がんを発症することもある[Wu et al 2006].

無症状成人の検査 一般に,リスクのある無症状成人に対しては,家系内ですでに同定された,病因となるTP53遺伝子変異についてのみ検査が提供されるべきである.

18歳未満の無症状者の分子遺伝学的検査 小児や未成年者に対して,家系に伝わるTP53変異検査を実施することは可能であるが,考えうる検査のリスクとベネフィット,検査の限界について事前に注意深く検討する必要がある.18歳未満に対するTP53遺伝子検査は未成年者へのインフォームドコンセントの問題,確立したサーベイランスや予防法がないこと,烙印を押されたり差別されたりする可能性などが当然心配される.18歳未満に対する遺伝子検査は,検査前と検査後の両方で情報提供と支援を行うプログラムを実施することが最も良い.ある症例シリーズでは,18歳未満の4名の患者がTP53遺伝子変異の発症前検査と検査前後のカウンセリングを受けたが,検査後12年間に著者から否定的な結果は報告されなかった[Evans et al 2010].LFS小児のスクリーニング・プロトコルのデータが出れば,未成年者に対するTP53変異検査に関する推奨が変更となる可能性がある.スクリーニング・プロトコルに関する情報はマネジメントの項を参照.

成人発症の疾患に対する未成年者の遺伝学的検査に関するNational Society of Genetic Counselorsの意見書と,American Society of Human Genetics and American College of Medical Geneticsの留意事項:小児と未成年者における遺伝学的検査の倫理的,法的,心理社会的課題を参照.

がん家族歴の聞き取り LFSが疑われる家系におけるがん病歴の聞き取りには,一度,二度,三度近親者のすべての小児期および成人期発症の悪性腫瘍の情報を含む.これには診断されたがんの種類や部位,発症年齢も含まれる.がん診断については書面に残された記録を集めることも重要である.ある研究では,LFS家系における乳がん以外の診断で,正確に数がカウントされたのは55%に過ぎないことがわかった[Schneider et al 2004].

近親者の情報についてはさまざまな理由で不正確,不完全なものになる可能性がある.たとえば,がんは避けるべき話題かもしれないし,親の死によって近親者と疎遠になってしまった可能性も考えられる.さらに,身近な近親者にがんに関連した病気や死亡数が多い場合,LFSの可能性がある家族からがん病歴を聞き取ることは,心理的な負担を強いることがある.

家族計画 

  • 遺伝的なリスクを確認し,出生前診断の利用が可能かどうか話し合う時期としては,妊娠前が最適である
  • 病気やリスクがある若年成人には,遺伝カウンセリング(考えられる子のリスクや妊娠・出産に関する選択肢など)を提供することが望ましい.

DNAバンキング DNAバンクは通常は白血球から抽出したDNAを将来使用するために保存しておくものである.将来的に,検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に関する理解が進歩する可能性があるため,患者DNAのバンキングを検討すべきである.

出生前診断

LFS家系の妊婦は,出生前診断が可能である[Avigad et al 2004].診断を行うためには家系内の遺伝子変異が判明している必要がある.

50%の確率でLFSが伝わる可能性のある妊娠においては,胎児細胞のDNA解析によりLFSの出生前診断が可能である.DNAは胎生10〜12週頃*に採取した絨毛や15〜18週頃に採取した羊水中の細胞から抽出する.

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.

着床前診断(PGD) PGDは,TP53変異または大きな欠失が同定された患者が利用することができる.LFS患者のPGDの成功例が報告されている [Rechitsky et al 2002, Simpson et al 2005].

訳注)一般に,本症に対して出生前診断の適応があるとは考えられていない.


分子遺伝学

分子遺伝学およびOMIMの表の情報はGeneReviewの他の情報と異なることがある。表にはより最近の情報が含まれていることがある。−ED.

Table A.

リ・フラウメニ症候群: 遺伝子およびデータベース

遺伝子 染色体遺伝子座 タンパク質 遺伝子座特異的データベース HGMD
TP53 17p13?.1 細胞性腫瘍抗原p53 TP53 @ LOVD
p53 突然変異およびがん
生殖細胞のp53突然変異のデータベース
IARC TP53突然変異のデータベース
TP53

 データは以下の標準的参照資料をもとに作成した。遺伝子はHGNC、染色体遺伝子座、遺伝子座の名称、遺伝子変異に密接に関連した領域、相補群はOMIM、タンパク質はUniProtを参照した。リンクが提供されたデータベース(Locus Specific, HGMD)の記述についてはこちらを参照のこと。

 Table B.

リ・フラウメニ症候群のOMIMでの記載 (全ての情報はOMIMを参照のこと)

151623 リ・フラウメニ症候群 1; LFS1
191170 腫瘍タンパク質 p53; TP53

 分子遺伝学的病因

TP53 は「ゲノムの守護者」と呼ばれ、そのタンパク質は細胞増殖の調節やホメオスタシスの維持の両方で主要な役割を果たす。

この重要な腫瘍抑制遺伝子が欠失すると、遺伝的異常を有する細胞がDNA修復やアポトーシスのために警告を出す可能性が低下する。これらのDNA損傷細胞は更に増殖を進め、異常細胞のコロニー形成、ひいては悪性腫瘍の形成に至ることもある。

細胞性腫瘍抗原であるp53タンパク質は、細胞がDNA修復のために細胞周期を停止するか、あるいはプログラム細胞死(アポトーシス)に向かうかを決定する際に重要な役割を果たす。細胞性腫瘍抗原であるp53タンパク質は、DNAの損傷の後にチェックポイント制御として作動し、損傷したDNAが修復されるまで細胞周期の進行を遅らせるか、あるいはプログラム細胞死に向かわせる手助けする。

損傷したDNAを認識すると、正常な細胞のp53タンパク質は、 (1)下流の遺伝子(例えばCDKN1A、MDM2、GADD45A、Bax、IGFBP1、サイクリンG1、サイクリンG2)を転写的に活性化してDNAを修復する、あるいは (2)損傷を確認してアポトーシスを開始させる「センサー」分子の信号を直接発信する。細胞周期を停止させる能力は主要な制御機能であり、p53が媒介するRB経路の適切な活性化と共に生じる。細胞性腫瘍抗原であるp53タンパク質はDNA修復プロセスにも直接影響を及ぼしている可能性がある[Varleyら、1997].

研究者たちは、TP53の病原性変異を有することがわかっている家族を対象に、がんになる危険性に遺伝的修飾因子が及ぼす効果について研究を重ねている。このような遺伝的修飾因子には、短縮されたテロメア長やMDM2の特異的対立遺伝子が含まれる。このような遺伝的修飾因子の研究は、LFSを保有する家族ががんにかかる危険性を詳細に検討する助けとなり、最終的には散発性がん発症の重要な危険因子となる可能性がある[Lindorら、2008].。

遺伝子の構造

TP53は11個のエキソンを有するゲノム長20キロベース(kb)の腫瘍抑制遺伝子である。
エキソン1はノンコーディングDNAで2個の転写開始部位を含む。選択的スプライシング部位はイントロン2の内部およびエキソン9と10の間に存在する。転写開始部位はイントロン4内に存在する。TP53 の上流に存在するプロモーターとイントロン1内に存在する内部プロモーターの、2個のプロモーターが同定されている[Bourdon 2007] (OMIM)。遺伝子とタンパク質の情報の詳細な概要は表Aを参照のこと。

病原性アレル多型

文献には300近くの生殖細胞系列TP53病原性変異が記載されている[Lindorら、2008]。表Aを参照のこと。

報告されたTP53病原性変異の大部分はミスセンス変異型である。TP53病原性変異の大半は、遺伝子のコアDNA結合領域をコード化するエキソン5-8の範囲内に報告されている。欠失やスプライシング部位の変異型も報告されており、特に古典的なLFSの基準に適合する家族においてはコード領域と非コード領域の両方を調査する必要性が強調されている[Bougeardら、2003Olivierら、2003].。詳細な情報は表Aを参照のこと。

正常な遺伝子産物

p53タンパク質は重要な転写因子である。p53タンパク質は細胞ストレスに応答して活性化され、標的遺伝子を調節して以下のプロセスを誘導する。

  • 細胞周期停止
  • アポトーシス
  • 細胞老化(Senescence)
  • DNA修復
  • 代謝の変化

ストレスのない細胞では主にMDM2リガーゼが存在するため、p53タンパク質は不活化されたままである(OMIM).。

p53タンパク質は、種間でほとんど変異の見られない高度に保護された5つのドメインを有する。ドメイン1はトランス活性化の特性を担う一方、残りのドメイン(II-V)はコアDNA結合ドメインを構成する[Varleyら、1997].

異常な遺伝子産物

活性化されたp53タンパク質を欠く細胞は、DNA損傷時に適した一連の事象を活性化できない。代わりに、これらのDNA損傷細胞の生存と増殖が許され、多くの悪性腫瘍の発生に繋がる。p53タンパク質の突然変異型は、DNA二本鎖の切断修復の機能障害のため遺伝子の増幅を惹起する経路に関連している可能性がある[Sugawaraら、2011]。TP53病原性ミスセンス変異型はp53タンパク質の欠失を引き起こすだけでなく、別の発がん作用を有する可能性がある[Bougeardら、2003]。

更に、野生型p53機能を失うため、TP53の突然変異型は細胞への酸化ストレスを高める原因となる可能性もある[Yoshidaら、2012]。NP_000537.3:p.Arg337His病原性変異 [NM_000546.5:c.1010G>A]も生理的pHレベルの高い状態での異常な酸化に寄与することが示されている[Macedoら、2012]。


更新履歴

  1. Gene Review著者: Katherine A Schneider, MPH, Frederick Li, MD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
    Gene Review 最終更新日: 2004.10.12.  日本語訳最終更新日: 2005.12.18
  2. Gene Review著者: Katherine A Schneider, MPH, Judy Garber, MD, MPH
    日本語訳者: 中川奈保子,小杉眞司(京都大学大学院医学研究科)    
    Gene Review 最終更新日: 2010.2.9. 日本語訳最終更新日: 2011.3.9.
  3. Gene Review著者: : Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH
    日本語訳者: 中川奈保子(鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科),小杉眞司(京都大学大学院医学研究科) 
    Gene Review 最終更新日: 2013.4.11 日本語訳最終更新日: 2013.11.11.(in present)
  4. [minor revision]
    Gene Review著者: : Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH
    日本語訳者: 櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療室)
    Gene Review 最終更新日: 2013.4.11日本語訳最終更新日: 217.2.21【項目】分子遺伝学の項目 翻訳を追加 (in present)

原文 Li-Fraumeni Syndrome

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