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リ・フラウメニ症候群
(Li-Fraumeni Syndrome
)

Gene Reviews著者: Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH.
日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)

Gene Reviews 最終更新日:2019.11.21 日本語訳最終更新日: 2020. 3.6.

原文: Li-Fraumeni Syndrome


要約

疾患の特徴 

リ・フラウメニ症候群(LFS)は,小児期から成人にかけて多様な悪性腫瘍を発症する高いリスクのある,がんの易罹患性症候群である. LFS患者の生涯がん罹患リスクは, 男性で70%以上,女性では90%以上である.LFS腫瘍としては,次の5種類のがんが大半を占める:副腎皮質がん,乳がん,中枢神経系腫瘍,骨肉腫,軟部肉腫.LFSはその他にも,白血病,リンパ腫,消化器系のがん,頭頚部・腎臓・咽頭・肺・皮膚(メラノーマなど)・卵巣・膵臓・前立腺・精巣・甲状腺がんなど,様々ながん種のリスクを増大させる.LFS患者は,小児期および若年成人期においてもがん発症リスクが高く,生存できても様々な部位を原発とするがんの発症リスクが増大する.

診断・検査 

LFSの診断は,次の3つの古典的な臨床基準にすべて当てはまる,かつ/または,TP53遺伝子に生殖細胞系列のヘテロ接合性病的バリアントが見つかることで確定する.

古典的臨床基準:

  • 45歳未満で肉腫と診断された
  • 第1度近親者が45歳未満で何らかのがんと診断された
  • 第1度または第2度近親者が45歳未満に何らかのがんと診断された,あるいは年齢を問わず肉腫と診断された

診断・検査

症状の治療:
乳がん以外は,それぞれのがんに対する一般的な治療が推奨される. 乳がんについては,二次的な原発乳がんのリスクを減らし,放射線治療を回避するために,乳房温存腫瘍摘出術よりは両側乳房切除術が推奨される.放射線治療により二次的な原発腫瘍発症リスクが増加する懸念があるため,一般的には治療に関連する放射線の使用については,より慎重になる向きがあるが,多くの専門家は,リスクとベネフィットを注意深く分析した上で,将来的な影響を懸念よりも,治療の有効性を優先することを推奨している.

主な症状の予防:
TP53
遺伝子に生殖細胞系列の病的バリアントがある女性に対しては,乳がんのリスクを下げるために,予防的両側乳房切除術が選択肢としてあげられる.大腸がんの一次予防同様,サーベイランスとして,大腸内視鏡検査が考慮される.日光照射,喫煙および,その他発がん性があるとされるものを避けることが奨励される.
サーベイランス:生後〜18歳までは,3〜4ヶ月ごとに包括的な身体検査と腹部および骨盤の超音波検査,診断がついてからは,1年ごとに神経学的検査と脳MRIを含む全身MRIを行う.18歳以上では,6ヶ月ごとに全身の身体検査を行い,1年ごとに腹部および骨盤の超音波検査と皮膚科での検査を行う.女性では,20〜25歳の間に6〜12か月ごとの乳房の臨床的な検査を,20〜30歳の間には1年ごとの乳房MRI検査を開始し,30〜75歳の間は1年ごとの乳房MRIとマンモグラフィを受ける必要がある.25歳からは,2〜5年ごとの上部内視鏡検査および大腸内視鏡検査が推奨される.

避けるべき化学物質/環境:
診断および治療用の放射線への暴露を最小限にし,日光照射や喫煙,職業的暴露,過剰飲酒など,発がん性が知られているものを避ける.

リスクのある血縁者に対する評価:
家系内のTP53の病的バリアントを保有するリスクのある全ての血縁者に対して,遺伝カウンセリングと遺伝学的検査を提示することが望ましい.

遺伝カウンセリング 

LFSは常染色体優性形式で遺伝する. LFSと診断された患者の大部分は,親からTP53の病的バリアントを受け継いでいる.生殖細胞系列のTP53病的バリアントがde novoで生じている割合は7-20%と推定されている.LFSの診断が確定した(LFSの古典的基準を満たした,かつ/または,TP53遺伝子に生殖細胞系列のヘテロ接合性病的バリアントを保有する)患者の子がLFSの原因となる病的バリアントを受け継ぐ可能性は50%で,同時にLFS関連がんのリスクを抱えることとなる.家系内で生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定されていれば,リスクのある家系員の発症前診断や出生前診断,着床前診断が可能である.

訳注:日本では, 本症に対する出生前診断や着床前診断は行われていない. いずれにしても次世代への遺伝に関しては細心の遺伝カウンセリングが必要である.


診断

リ・フラウメニ症候群(LFS)の臨床診断基準が示されている[Mai et al 2012].

疑わしい症状

Chrompret基準に適合する患者,あるいは若年発症の低二倍体急性リンパ性白血病(ALL),腫瘍細胞の体細胞検査で疑わしい所見のあった患者では, LFSを疑うべきである[Bougeard et al 2015Valdez et al 2017]:

  • 2015年版 Chrompret基準(合致する者の30%程度が,生殖細胞系列のTP53病的バリアントを有する)[Mai et al 2012]:
    • 46歳未満でLFS腫瘍スペクトラム(閉経前乳がん,軟部肉腫,骨肉腫,中枢神経(CNS)腫瘍,副腎皮質がんなど)に属する腫瘍と診断され,かつ,少なくとも1人の第1度または第2度近親者に56歳未満でLFS腫瘍(発端者が乳がんの場合は,乳がんを除く)と診断,または多発腫瘍と診断された人がいる.または
    • 発端者が多発腫瘍(多発乳がんを除く)を発症し,そのうち2つがLFS腫瘍スペクトラムに属するもので,最初の発症が46歳未満である.または
    • 家族歴に関わらず,副腎皮質がん,脈絡叢腫瘍,胎児型退形成横紋筋肉腫と診断された.または
    • 31歳未満で乳がんと診断された女性.
  • 21歳未満で低二倍体急性リンパ性白血病(ALLと診断された(50%程度が,生殖細胞系列のTP53病的バリアントを有する) [Holmfeldt et al 2013]

注釈:これまで,成人発症の低二倍体ALL患者で,生殖細胞系列のTP53病的バリアントが見つかった報告はない.

  • 腫瘍組織の体細胞検査で以下のうち1つに当てはまる:
    • TP53病的バリアントのアレル頻度が50%程度かそれ以上
    • p53の免疫染色が陰性または弱陽性

注釈:メンデリアンモデルに基づいた予測ツールであるLFSPROも,生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定される可能性の推定に使える[Peng et al 2017].

確定診断

LFSの診断は,古典的なLFS基準3つにすべて該当する,かつ/または,分子遺伝学的検査でTP53遺伝子に生殖細胞系列の病的バリアントが同定されることにより確定する(Table 1 参照).
古典的LFS基準 (合致する者の60-80%程度が,生殖細胞系列のTP53病的バリアントを有する)[Mai et al 2012]:

  • 発端者が45歳未満で肉腫と診断された
  • 第1度近親者が45歳未満で何らかのがんと診断された
  • 第1度または第2度近親者が45歳未満に何らかのがんと診断された,あるいは年齢を問わず  肉腫と診断された

注釈:白血球中にTP53病的バリアントの低頻度(<20%)モザイクが同定される場合は,加齢や細胞毒性のある治療,潜在的な血液学的悪性腫瘍や前がん病変,あるいは腫瘍細胞の偏在などが関連する,未確定の潜在能をもつクローン性造血clonal hematopoiesis of indeterminate potential(CHIP)による,後天的に生じた病的バリアントであることが示唆される[Weitzel et al 2018].CHIPによるTP53病的バリアントと生殖細胞系列のそれを区別する,標準化された方法はないが,以下のように評価することもできる [Weitzel et al 2018]:

  • TP53病的バリアントを同定するために,皮膚線維芽細胞を培養して分析する
  • TP53病的バリアントが受け継がれているかどうか,子ども全員の分子遺伝学的検査を行う
  • 家系員のがんがTP53病的バリアントに由来しているかどうか,がんに罹患している家系員の分子遺伝学的検査を行う

分子遺伝学的検査は, 単一遺伝子検査,またはマルチジーンパネルがある.

  • 単一遺伝子検査.TP53の配列解析では,遺伝子内の小規模な欠失/挿入やミスセンス,ナンセンス,スプライス部位バリアントを同定できる;一般的には,エクソンや全遺伝子の欠失/挿入は検出できない.まず初めに配列解析を行う.病的バリアントが見つからなければ,遺伝子内の欠失や重複を検出するために,標的遺伝子欠失/重複解析を行う.
  • TP53および関係のありそうなその他の遺伝子を含むマルチジーンパネルは,最も妥当な費用で遺伝的要因を同定しうる可能性が高いが,基礎となる表現型を説明できない遺伝子に病的バリアントや意義不明なバリアントが見つからないとも限らない.注釈:(1)パネルに含まれる遺伝子の種類や各遺伝子に用いられる検査の診断感度は, 検査機関によって異なり,経時的に変化する可能性がある. (2)マルチジーンパネルには, 一般的に,このGeneReviewで扱っている病態に関連のない遺伝性腫瘍関連遺伝子が含まれている. (3)研究室によっては,臨床医が指定した遺伝子を含む,カスタム設計された研究室独自のパネルや, 表現型に焦点を当てたエクソーム解析パネルといった選択肢が存在することもある. (4)こうした検査で用いられる手法には, 配列解析, 欠失/重複解析, 他の配列に基づかない検査がある. この疾患に対しては,マルチジーンパネルは欠失/重複解析が含まれるものが推奨される.(Table 1 参照)

マルチジーンパネル検査に関する概論はここをクリック. 遺伝学的検査を発注する臨床医向けのより詳細な情報についてはコチラを参照のこと.

Table 1. 
リ・フラウメニ症候群に用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 方法 この方法により検出可能な病的バリアント2を有する割合
TP53 配列解析3 91% 4
標的遺伝子欠失/重複解析5 1% 6
不明 NA NA
  1. 染色体座位とタンパク質については,Table A. 遺伝子とデータベース参照
  2. この遺伝子上で検出されるアレルのバリアント情報については,分子遺伝学の項参照
  3. 配列解析で検出されるバリアントは,良性, おそらく良性, 意義不明, おそらく病的, 病的がある. 病的バリアントには小規模な遺伝子内欠失/挿入やミスセンス, ナンセンス, スプライス部位バリアントが含まれる. 通常, エクソンや全遺伝子の欠失/重複は検出されない. 配列解析結果に対する解釈について考慮すべき問題については,ここをクリック.
  4. TP53の全コーディング領域(エクソン2-11)の配列解析では,TP53病的バリアントの95%が検出され,その多くはミスセンスバリアントである.LFS患者の91%が,配列解析で検出されるTP53病的/おそらく病的バリアントを有すると推定される[Guha & Malkin 2017].
  5. 標的遺伝子の欠失/重複解析では, 遺伝子内の欠失や重複が検出される. 検査方法は, 定量的PCR, ロングレンジPCR, MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法, 単一エクソンの欠失や重複の検出を目的とする標的遺伝子マイクロアレイなどである.
  6. LFSは,TP53のコーディング領域またはプロモーターや非コーディングエクソンの欠失によっても起こりうる[Guha & Malkin 2017].
  7. 今のところ,TP53が唯一のLFS関連遺伝子として知られている.しかしながら,生殖細胞系列の病的バリアントはLFS患者の92%でしか同定されていない [Guha & Malkin 2017].

 


臨床的特徴

臨床像

リ・フラウメニ症候群は,小児期発症および成人発症の幅広いスペクトラムな悪性腫瘍のリスクが高い.生涯のがん発症リスクは,LFSの男性で70%以上,女性で90%以上である [Mai et al 2016Guha & Malkin 2017]. LFS腫瘍の主なものは次の5つのがんである:副腎皮質がん,乳がん,中枢神経系腫瘍,骨肉腫,軟部肉腫 [Guha & Malkin 2017].

  • 副腎皮質がん(ACCはLFS患者の6-13%で発症し,多くは5歳未満で診断される.ACCはLFSの成人でも発症し,多くは40歳未満である [Mai et al 2016].南ブラジル人のTP53創始者バリアントであるp.Arg337Hisは,特に小児期におけるACCの高リスクと関連する.p.Arg337Hisの病的バリアントを有する一連の患者では,小児がんの55%で,成人発症がんの23%でACCがみられる[Ferreira et al 2019].p.Arg337Hisの病的バリアントを有する患者では,小児ACCの浸透率は,30〜40人に1人である [Achatz & Zambetti 2016].
  • 乳がん.女性の乳がんは,LFSがんの27-31%を占め,LFS女性の最も多いがんとなっている [Id Said et al 2016].ある報告では,女性の70歳までの乳がん累積発症率は54%であった [Mai et al 2016].LFS関連乳がんは若年で発症し(年齢中央値:33歳),LFS女性の乳がんのほぼすべてが,閉経前に発症する[Bougeard et al 2015].LFS関連乳がんは,乳管がんで,エストロゲンおよびプロゲステロン受容体陽性,HER2の増幅がみられるものが多い[Bougeard et al 2015Mai et al 2016Packwood et al 2019].乳房悪性葉状腫瘍もLFSに関連している [Villani et al 2016].2報のLFSの報告では,男性乳がんの事例は確認されていない [Bougeard et al 2015Mai et al 2016].
  • 中枢神経系(CNS)腫瘍はLFSがんの9-14%と算定されている [Bougeard et al 2015].ある報告では,70歳までの脳腫瘍の累積発症率は,女性で6%,男性で19%である [Mai et al 2016].脳腫瘍の発症年齢は,小児期発症と成人発症の二相性で,一般的には40歳未満で発症する(年齢中央値:16歳)  [Valdez et al 2017].膠芽腫と星状細胞腫がLFS患者でみられるCNS腫瘍で最も多いが,上衣腫,脈絡叢がん,テント上原始神経外胚葉性腫瘍など,その他のたくさんの種類のCNS腫瘍も報告されている[Bougeard et al 2015Valdez et al 2017].LFS患者における髄芽腫では,ソニックヘッジホッグ亜型(SHH髄芽腫)が多く見られ,染色体破砕(chromothripsis:悪性腫瘍細胞内で発生する大規模な染色体再編成)が示される [Zhukova et al 2013].
  • 骨肉腫はLFSがんの3-16%と算定されており,一般的には30歳よりも前に発症するが(年齢中央値:14歳) ,遅いものでは55歳で診断された報告がある [Bougeard et al 2015Mirabello et al 2015].ある報告では,70歳までの骨腫瘍の累積発症率は,女性で5%,男性で11%である [Mai et al 2016].
  • 軟部肉腫.横紋筋肉腫とその他の軟部肉腫は小児のLFSがんで最も多く,LFS患者で発症する全てのがんの17-27%と算定されている[Bougeard et al 2015].ある報告では,軟部肉腫の累積発症率は女性で15%,男性で22%だった [Mai et al 2016].横紋筋肉腫は,多くの場合5歳未満で発症し [Ognjanovic et al 2012] ,びまん性未分化型非肺胞腫瘍がよくみられる[Hettmer et al 2014].

その他のがん.LFSと関連して,以下のような様々ながんのリスクが増加する.

  • 白血病およびリンパ腫. 初発および2次的な白血病,とりわけ急性リンパ性白血病(ALL)や,急性骨髄性白血病(AML),骨髄異形成症候群(MDS)は,LFSがんのおよそ2-4%に相当する.ある報告では,白血病は2〜35歳の間に発症する(年齢中央値:12歳) [Bougeard et al 2015] .ALLでは,32〜39染色体の低二倍体の状態がよくみられる[Holmfeldt et al 2013Qian et al 2018Swaminathan et al 2019].ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫は,LFS患者で報告されるがんの約2%を占める [Bougeard et al 2015].LFSにおいて,白血病やリンパ腫を発症する推定生涯リスクは確立されていないが,LFS患者で報告される最も主要な5つのがんのいずれかを発症するリスクよりは低いと考えらえる.
  • 消化器がん. 大腸がんはがんと診断されたLFS患者の約3%に相当する [Guha & Malkin 2017].最近の報告では,LFS患者の8.6%が大腸がんまたは高度異形成ポリープと診断されており,3.2%は25歳未満で,4.3%は35歳未満で発症している [Rengifo-Cam et al 2018].胃がんのような,その他の消化器がんも報告されている [Bougeard et al 2015Mai et al 2016].40歳未満のアジア人で,胃がんの発症率が高いことが報告されている [Ariffin et al 2015].LFSにおいて,消化器がんを発症する推定生涯リスクは確立されていないが,LFS患者で報告される最も主要な5つのがんのいずれかを発症するリスクよりは低いと考えらえる.
  • その他のがん. TP53病的バリアントが同定された家系員または臨床的にLFSと診断された人で,その他のがんとして報告されているものには,頭頚部・腎臓・咽頭・肺・皮膚(メラノーマなど)・卵巣・膵臓・前立腺・精巣・甲状腺がんなどがある [Mai et al 2016Valdez et al 2017].
  • 女性パートナーの妊娠性絨毛がん. 父方からヘテロ接合のTP53病的バリアントを受け継いだ胎児を妊娠した母親は,絨毛がんあるいは他の妊娠性絨毛性疾患のリスクがある(つまり,胎盤組織から発生したがんが母体の他の器官へと広がりうる) [Cotter et al 2018].

がんの早期発症.ある報告では,LFS男性の初発がん発症の平均は17歳であり,女性では乳がんを含めると28歳,乳がんを除くと13歳だった [Bougeard et al 2015]. また別の報告では,LFS関連腫瘍の発症は,女性では30-31歳,男性では46歳までで50%程度と推定されている[Mai et al 2016].

複数の原発がんの好発. LFS患者の40-49%が二次がんを発症するリスクを有する(発症中央値:初発がんの診断から10年後).LFS関連がんに対する放射線治療および化学療法は二次がんのリスクを増加させうる[Bougeard et al 2015Churpek et al 2016Mai et al 2016Schon & Tischkowitz 2018].

予後. 全身MRI,乳房画像,脳画像,血液検査や,その他成人における上部および下部内視鏡検査などの標的臓器への介入を含むサーベイランスを選択したあるいは辞退したLFS患者89人の報告では,5年間の全生存率は,サーベイランスをした群で88.8%,しなかった群で59.6%だった [Villani et al 2016].

マルチジーンパネル検査の利用により,生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定される患者の数は実質的に増加している.マルチジーンパネル検査で生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定された患者では,単一遺伝子検査で同バリアントが同定された者と比較して,がんと診断される年齢が高く,がんの家族歴がそれほど顕著ではなく,古典的LFSやChompret基準を満たす可能性が低い [Rana et al 2018].このように, LFSの表現型スペクトラムは,これまで認識されていたよりも,より幅広いものである可能性がある.

遺伝子型と表現型の関連

LFSの遺伝型と表現型の関連については,議論が続いている.

最近の研究では,p53の機能喪失を招く生殖細胞系列のTP53病的バリアントを有する患者は,p53の一部不足を起こす病的バリアントを有する患者より,より深刻な表現型を呈すると報告している.機能喪失型のバリアントを有する患者では,初発がんの発症が早く,35歳までの乳がんや肉腫の発症率が高く,古典的LFSおよび/または Chompret基準を満た

す可能性が高い [Rana et al 2019]. これらの調査結果とは対照的な別の報告では,優性阻害効果のある病的バリアント(変化したp53タンパクが野生型のp53タンパクの機能を阻害する)を有するLFS患者では,それ以外のTP53病的バリアントを有する者よりも,臨床的により深刻な表現型を呈する,というものもある[Bougeard et al 2015].実験的な研究でも,優性阻害効果のある病的バリアントは,その他の病的バリアントと比べ,p53のDNA結合部のより深刻な変化を起こしうることが報告されている[Zerdoumi et al 2017].

南ブラジルに多いTP53 の創始者バリアントであるp.Arg337His は,小児期の高いACC発症リスクと関連しており,ある報告では55%に上る[Ferreira et al 2019].このバリアントは,他のLFS関連がんと同様,乳がんリスクの増加とも関連しているが,他のTP53病的バリアントと比べ,発症年齢は高く,生涯リスクは低い(50-60%) [Ferreira et al 2019].母親からのp.Arg337Hisバリアントの遺伝は72%にみられ,優先的選択が示唆される.p.Arg337Hisのホモ接合が1人みつかっているが,臨床的表現型はヘテロ接合と異なる部分は認められなかった [Ferreira et al 2019].

浸透率

LFSは一般的には,高い浸透率を示すと考えらえれており,男性の生涯リスクは70%以上,女性では90%以上とされている [Mai et al 2016Guha & Malkin 2017]. 別の研究では,70歳までのがんのリスクが80%,0〜15歳のがん発症が22%,16〜50歳で51%,51〜80歳で27%と報告されている[Amadou et al 2018].

しかしながら,近年生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定された患者では,がんの家族歴や既往歴が顕著ではなく,古典的LFSあるいはChompret基準を満たさない者も多く,LFSの浸透率は過大評価されている可能性がある[Rana et al 2018].

p.Arg337HisのTP53病的バリアントを有する患者では,他のTP53病的バリアントよりもがんの生涯リスクは低いようである[Ferreira et al 2019].

遺伝的修飾因子

LFS関連がんリスクの遺伝的修飾因子には次のものが挙げられる:

  • TP53 p.Arg72多型.TP53 p.Arg72多型はMDM2に対する親和性を増加させ,より多くのp53の分解をもたらし,初発がんの発症を早める[Guha & Malkin 2017].
  • MDM2 c.14+309T>Gバリアント.MDM2 のプロモーター領域 (rs2279744)にある NM_002392.2 : c.14+309G>T バリアント (SNP309T>Gとも呼ばれる) は,MDM2の発現を増加させることで,より多くのp53の分解をもたらし,初発がんの発症を早める [Guha & Malkin 2017Amadou et al 2018].
  • microRNA R-605バリアント. P53-MDM2ループを調整するmiR-605にバリアントが存在すると,腫瘍の発症年齢中央値を10年早める[Guha & Malkin 2017Amadou et al 2018].
  • イントロン3中の16塩基対の重複多型(PIN3).PIN3多型があると保護的に作用し,この多型を有していない者に比べ,初発がんの年齢が高い [Guha & Malkin 2017Amadou et al 2018].
  • テロメア長の短縮.LFS家系において,テロメア長が次世代にかけて短縮すると,腫瘍の発症を早める(表現促進現象) [Guha & Malkin 2017].テロメアの短縮と早期のがん発症との関連は,研究が続けられる.

病名

LFSは,昔の文献ではSBLA(sarcoma, breast, leukemia, and adrenal gland)症候群とも呼ばれていた.

頻度 

一般集団における生殖細胞系列のTP53病的バリアントの頻度は確定していない.あるグループでは,1:3,555〜1:5,476とみなしている[de Andrade et al 2019].

TP53 病的バリアントp.Arg337Hisは,南ブラジルの創始者バリアントで,頻度は0.3%(1:375)である [Achatz & Zambetti 2016Valdez et al 2017].


遺伝学的に関連する疾患

リ・フラウメニ症候群(LFS)の他の所見のない単発腫瘍として発症する散発性腫瘍では,生殖細胞系列には存在しないTP53体細胞バリアントを含んでいることが多い.散発性の TP53病的バリアントは全腫瘍の約50%にみられ,ヒトのがんの中で最も頻繁に変化する遺伝子とされている.より詳細な情報は,Cancer and Benign Tumorsへ.

GeneReviewで扱ったもの以外の表現型については,生殖細胞系列のTP53病的バリアントとの関連はわかっていない.


鑑別診断

Table2.
リ・フラウメニ症候群の鑑別診断に関連する他の遺伝子

遺伝子 疾患名 MOI 主要ながん がん発症年齢 備考
BRCA1
BRCA2
BRCA1/BRCA2関連遺伝性乳がん卵巣がん AD
卵巣
膵臓
前立腺
メラノーマ
一般的には成人発症
  • 閉経前乳がん,特にER/PR/HER2-negative腫瘍
  • 卵巣がん,膵臓がん,男性乳がん,前立腺がんの既往歴または家族歴
  • Ashkenazi Jewish
  • 副腎皮質がん,CNS腫瘍,骨肉腫,軟部肉腫の家族歴なし
CHEK2 CHEK2がん易罹患性(OMIM 609265) AD
大腸
前立腺
一般的には成人発症 CHEK2病的バリアントは,より多くの,主として乳がん,大腸がん,前立腺がん,その他の成人発症がんの既往歴や家族歴を呈する.
MLH1
MSH2
MSH6
PMS2
先天性ミスマッチ修復不全(Lynch症候群のバリアント) AR 大腸
小腸
血液
幼少期 幼少期に発症した消化器がんやポリープ,脳の悪性腫瘍,血液がん,および/またはカフェオレ斑では,CMMRDを考慮すべきである.

AD:常染色体優性; AR:常染色体劣性; CMMRD:先天性ミスマッチ修復不全;
CNS:中枢神経系; ER:エストロゲン受容体; MOI:遺伝形式; PR;プロゲステロン受容体

TP53病的バリアントの体細胞モザイク.加齢や細胞毒性のある治療,潜在的な血液学的悪性腫瘍や前がん病変,あるいは腫瘍細胞の偏在などに関連して,未確定の潜在能をもつクローン性造血clonal hematopoiesis of indeterminate potential(CHIP)によるTP53病的バリアントの低頻度(<20%)モザイクが白血球中に同定されることがある [Weitzel et al 2018].診療歴には,タバコの煙への暴露や細胞毒性のある治療,腫瘍細胞の偏在の可能性,アレル断片の評価も含まれるべきである[Weitzel et al 2018].CHIPによる患者では,LFS関連腫瘍のスクリーニングは推奨されていないため,リ・フラウメニ症候群(LFS)と区別化することは重要である [Weitzel et al 2018].


臨床的マネジメント

最初の診断後の評価

リ・フラウメニ症候群と診断された患者において,疾患の程度と必要な治療を確かめるために,(診断時の評価として実施していなければ)この項にまとめた評価が推奨されている.
生涯を通じてがんのリスクが高く,LFS関連腫瘍は多様であることから,LFS患者のがんの評価は継続的かつ包括的である必要がある.がんのモニターには身体検査や血球数,画像診断,内視鏡検査および/または生検などが含まれる(Surveillance参照).臨床的または分子的基準に基づいてLFSを有するあるいは疑われる者に対しては,診断および医学的マネジメントの推奨事項を確認するために,腫瘍遺伝学的な協議が求められる.

病変に対する治療

LFS患者では,放射線治療は二次がんのリスクを減らすために,できる限り避ける.しかしながら,治療効果は,後から発生する悪性腫瘍のリスクよりも優先して考えられるべきである(例えば,放射線治療は,治療の最良の機会を提供するために必要な場合がある).
乳がんを発症したLFS女性では,2つ目の原発乳がんの発症および放射線治療を避けるために,(乳腺腫瘤摘出術よりも)両側乳房切除術を考慮することが推奨される[Schon & Tischkowitz 2018].

可能な限り放射線治療を避けること以外は,LFS腫瘍は通常,標準的なプロトコルに従って治療される.

主な症状に対する予防

LFS女性では,乳がんのリスク低減のための両側乳房切除術という選択肢がある[Schon & Tischkowitz 2018].

成人のLFSでは,大腸がんの発症予防のサーベイランスとして,大腸内視鏡スクリーニング検査を実施すべきである [MacFarland et al 2019] .

日光照射,喫煙,その他発がん性が示唆されている事象を避けることが推奨される.

サーベイランス

主に"Toronto protocol"に基づいて,LFSの成人及び小児に対してのサーベイランスガイドラインが発表されている [Villani et al 2016Kratz et al 2017NCCN 2019].

Table3.
リ・フラウメニ症候群患者に推奨されるサーベイランス

系/関連 評価 頻度
全がん種 高いがんの疑いを念頭においた包括的な身体診察1
  • 生後〜18歳:3〜4ヶ月ごと
  • 18歳以上:6ヶ月ごと
全身MRI2,3 すべての年齢において,毎年
ACC 腹部および骨盤部の超音波検査 生後〜18歳:3〜4ヶ月ごと(全身MRIとは別タイミングで)
血清総テストステロン,デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S),アンドロステンジオンの測定 超音波検査が不十分な場合4
乳がん 臨床的乳病検査 20-25歳以下,6〜12ヶ月ごと
造影または単純乳房MRI 20-30歳,毎年
マンモグラフィ+造影または単純乳房MRI 30-75歳,毎年
CNS腫瘍 神経学的評価 すべての年齢において,毎年
脳MRI5 毎年
消化器がん 上部内視鏡検査および大腸内視鏡検査 25歳以上,2-5年ごと6
白血病/リンパ腫 推奨なし7 N/A
メラノーマ 皮膚科的評価 18歳以上,毎年
肉腫 全身MRI すべての年齢において,毎年
腹部および骨盤部の超音波検査 18歳以上,毎年
  1. 包括的な身体検査として,血圧,全神経学的評価,および,急激な体重増加や減少,クッシング様外観,あるいは小児の男性化兆候などの成長評価を行うべきである.
  2. MRIはできれば臨床試験として実施する[NCCN 2019].ベースラインの全身(WB)-MRIを実施したメタアナリシスでは,スクリーニングを実施した患者の7%にがんが見つかった.WB-MRIは,高い偽陽性率(悪性腫瘍を除外するためにさらなる評価が必要)と小さい子供では鎮静の必要があることがリスクとして挙げられる.
  3. WB-MRIスクリーニングプログラムに参加したLFS患者は,この検査によって,有意に不安が減少したことを報告している.一部のLFS患者ではサーベイランスプログラムに参加することで,疾患をコントロールできている感覚と希望が高まったとする一方で,複数回の通院と過剰なサーベイランスおよび偽陽性に対する心配によって負担が増加したと報告している [McBride et al 2017].
  4. Kratz et al [2017]
  5. 初回の脳MRIは造影で行うべきであるが,次回からは,前回のMRIが問題なく,新規の異常が認められない場合は,造影なしで実施してもよい[Kratz et al 2017].
  6. 大腸内視鏡検査は25歳あるいは,家系内で大腸がんを発症した最も早い年齢から5歳早く開始する.
  7. 完全な血球数、赤血球沈降速度、乳酸脱水素酵素などの定期的な血液検査は,通常LFS患者に推奨されるものではないが,先行するがん治療によってMDSや白血病のリスクが高い状態では考慮してもよい[Kratz et al 2017].

避けるべき化学物質および環境

TP53病的バリアントが電離放射線の感受性を増大させるといういくつかのエビデンスがある[Churpek et al 2016Schuler et al 2017Kasper et al 2018]. すなわち,生殖細胞系列のTP53病的バリアントがある患者はできる限り,診断用および治療用放射線を避けるか暴露を最小限にするべきである.放射線関連腫瘍および白血病がLFS患者で報告されている [Churpek et al 2016Schuler et al 2017].しかしながら,投与量,年齢,その他の因子といった面で,放射線によってどの程度のリスクがもたらされるのかという情報は限られている [Valdez et al 2017].

LFS患者では,発がん性物質への暴露と生殖細胞系列のTP53病的バリアントの影響は累積する可能性があるため,日光照射や喫煙,職業的暴露,過剰飲酒などの発がん性が知られているあるいは示唆されている事象への暴露を避ける,あるいは最小限にすることが推奨されている.

細胞毒性のある化学療法の薬剤は,LFS患者の治療関連白血病やその他のがんのリスクを増加させうる [Churpek et al 2016Kasper et al 2018].

リスクのある血縁者の評価

家系内に生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定された場合,リスクのある血縁者に対する分子遺伝学的検査は,同様にLFSの体質を有していれば,がんの症状や兆候に留意したがんのモニタリングと,がんや前がん病変を見つけた場合の早期の介入を必要とする家系員を同定できる.LFS関連がんのリスクは,幼児および小児期を含む,全年齢において高まるため,発症前検査は出生時(臍帯血分析による)または生後時間を置かずに実施されることが望ましい.

家系内に生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定されていないが,古典的LFS基準を満たす場合,リスクのある全ての血縁者に対して,LFS関連がんのリスクが高い可能性があり,サーベイランスやリスク低減の選択肢があることを考慮したカウンセリングを実施するべきである.

遺伝カウンセリングの目的である,リスクのある血縁者を検査することに関する論点は,  Genetic Counseling を参照のこと.

妊娠中の管理

LFS女性.妊娠中のLFS女性では,いかなるがんの可能性のある兆候や症状も,主治医に知らせるべきである.妊娠中のLFS女性で,もし兆候があれば,乳房の臨床検査や/または乳房画像診断を続ける.

ヘテロ接合の胎児.生殖細胞系列のTP53病的バリアントが同定された胎児のスクリーニングについては,特別な推奨項目は存在しない.出生後,彼または彼女のがんのスクリーニングを開始する(Surveillance参照).

LFS男性の生殖パートナー. 父方からヘテロ接合のTP53病的バリアントを受け継いだ胎児を妊娠した母親は,絨毛がんあるいは他の妊娠性絨毛性疾患のリスクがある(つまり,胎盤組織から発生したがんが母体の他の器官へと広がりうる) [Cotter et al 2018].

現在研究中の治療

LFS患者のがんのリスクを減少しうる薬剤を見つけるための努力がなされている.国立がん研究所では,ミトコンドリアの代謝が阻害された時に,がんの発症率が低下した有望な前臨床モデルに基づいた,メトホルミンの臨床試験を開始する予定である [Wang et al 2017].

早期がんを検出するためのcell-free DNAを利用した様々な試験も,LFSコホートにおいて実施されている.
広範な疾患や症状の臨床研究に関する情報は, アメリカでは ClinicalTrials.gov を, ヨーロッパでは EU Clinical Trials Register を参照のこと.

その他

2010年に結成されたThe Li-Fraumeni Exploration (LiFE) 研究コンソーシアムは,LFS患者家族と共に活動する,臨床医と科学者,遺伝カウンセラー,心理学者の共同グループである.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

リ・フラウメニ症候群(LFS)は常染色体優性遺伝形式をとる.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • LFSと診断された患者の大多数は, 親からTP53病的バリアントを受け継いでいる.
  • LFSと診断された一部の患者は,de novoで新規バリアントが発生している.病的バリアントのうち新規バリアントの頻度は7-20%と推定されている.最近の報告では,新規バリアントの割合は14%で,1/5はモザイクだった[Renaux-Petel et al 2018].
  • 発端者でTP53病的バリアントが同定され,両親のどちらもLFSと診断が確定されていない場合,両親に対する分子遺伝学的検査が推奨される. もし片方の親が,明らかながんの既往歴や/または家族歴があれば,そちらを先に検査するべきである.もしくは,両親同時に検査をしてもよい.どちらかの親でTP53病的バリアントが同定されれば,彼/彼女は適切なサーベイランスを受けるべきである(Surveillance参照).
    • 発端者で見つかった病的バリアントが両親の白血球DNAに検出されなかった場合, 発端者の病的バリアントが新規バリアントである可能性が考えられる.他に考えらえることとして,どちらかの親の性腺モザイクがある [Khincha et al 2019].
    • 家系員が疾患を認識していないことや,家系が小規模であること,表現度の差異,発症前の親の早期死亡,あるいはバリアントを保有している親の発症が遅れいているなどにより,LFSと診断された患者に家族歴がないことがありうる.そのため,発端者の両親に対する適切な分子遺伝学的検査を実施しない限り,家族歴が明らかに陰性であることの確認はできない.
    • 古典的LFS基準を満たす発端者でTP53病的バリアントが同定されず,どちらかの親でLFSの確定診断がついていない場合,LFS関連がんのリスクが高い可能性があり,サーベイランスやリスク低減の選択肢があることを考慮したカウンセリングを,両親ともに実施するべきである.

発端者の同胞

発端者の同胞のリスクは,両親の状態に依存する:

  • 発端者の一方の親がヘテロ接合のTP53病的バリアントを有していれば,同胞は50%の確率で同じバリアントを受け継ぎ,LFS関連がんのリスクがある.
  • 発端者で見つかったヘテロ接合のTP53病的バリアントがどちらの親にも見つからなかった(つまり,両親の白血球DNAに検出されなかった)場合,  病的バリアントは発端者でde novoに発生したバリアントである可能性が高く,同胞の再発リスクは低い.しかしながら,親の性腺モザイクの可能性もあるため,同胞の再発リスクは,一般集団におけるそれよりは少し高い[Khincha et al 2019].
  • 古典的LFS基準を満たす家系であって,TP53病的バリアントが発端者で同定されなかった場合,片方の親をLFSの原因となる病的バリアントのヘテロ接合を有する発端者としてみなすと,結果的にいずれの同胞もLFSを有する可能性は50%となる.同胞に対して,LFS関連がんのリスクが高い可能性があり,サーベイランスやリスク低減の選択肢があることを考慮したカウンセリングを実施するべきである.

発端者の子

LFSと確定診断された(つまり,古典的LFS基準を満たす,および/または,ヘテロ接合の生殖細胞系列のTP53病的バリアントを有する)患者の子は,それぞれ50%の確率でLFSの原因となる病的バリアントを受け継ぎ,LFS関連がんのリスクがある.

発端者の他の家族

  • 他の家族におけるリスクは,発端者との発端者の両親の状態に依存する:どちらかの親がLFSの確定診断を受けている,あるいは,LFSの原因となる病的バリアントのヘテロ接合を有するリスクがある場合,彼または彼女の家系員はリスクが高まる.
  •  家族歴あるいは分子遺伝学的検査は,リスクのある血縁者が母方にいるのか, 父方にいるのかを決定するのに有用である.

遺伝カウンセリングに関連した問題

無症状のリスクのある者の検査. 若年のリスクのある家系員の分子遺伝学的検査を考慮することは,医療管理上の方針として適切である(マネジメントの Evaluation of Relatives at Risk参照,).

分子遺伝学的検査は,臨床的に診断された血縁者がこの検査を受け,TP53病的バリアントがあることが判明すれば,リスクのある家系員の遺伝的状態を明確にするために確実に有用である.

臨床的に診断された血縁者が検査できない場合,リスクのある血縁者の遺伝的状態を決定するために分子遺伝学的検査を行うことは問題があり,検査結果の解釈には注意を要する.リスクのある家系員の検査結果が,TP53病的バリアントがあることを示せば,他のリスクのある家系員の遺伝的状態を評価するのにも同様の遺伝学的検査を行えることになる.一方で,家系員で罹患していることが分かっている人より先に,リスクのある(未罹患の)家系員が遺伝学的検査を行うと,この家系員で病的バリアントが見つからなくても,他の家系員にTP53病的バリアントがある可能性を除外できない.
LFS患者では,がんのスクリーニングは幼少期から開始するため,分子遺伝学的検査はリスクのある子どもや若年者に提案される.

両親は,子どもがもし病的バリアントを受け継いでいなければ,不要な処置を避けられるため,自分の子どもの遺伝的状態をがんのモニタリング開始よりも先に知りたがることが多い.遺伝学的検査に先んじて,子どもとその両親に教育をする特別な配慮が求められ,年長の子どもや思春期の青年では,検査を受けるかどうかの意思を本人に確認するべきである.両親と子どもに結果を伝える方法についても,予め計画をたてておく.LFSであることが分かった後,子ども達が臨床的に明らかな心理的問題を抱えるというエビデンスはないが,これらの家系に対して,継続的な遺伝カウンセリングと心理的支援が利用できるようにする必要がある [Druker et al 2017McBride et al 2017Valdez et al 2017].

がんの病歴の収集.  LFSが疑われる家系のがんの病歴を収集するには,第1度.第2度,第3度近親者の全ての小児および成人発症悪性腫瘍に関する情報を入手する必要がある.この情報には,発症年齢や診断されたがんの部位やタイプについても含まれる.

血縁者の詳細は,様々な理由により不正確だったり不完全だったりする.例えば,がんの話題は家族の中で避けられがちだったり,片方の親が亡くなると,そちらの家系の血縁者とは疎遠になったりする.また,LFSの可能性のある家系でがんの病歴を収集しようとすると,近親者の間でがん関連疾患やがん死が多いため,感情的になることがよくある.

遺伝的ながんのリスク評価と遺伝カウンセリング.
分子遺伝学的検査に関わらず, がんのリスクアセスメントを通しての, リスクのある血縁者の同定に関する医学的, 心理学的および倫理的効果の包括的な説明については,  Cancer Genetics Risk Assessment and Counseling - for health professionals (PDQ®の一部, National Cancer Institute)を参照のこと.

明らかに新規の病的バリアントと思われる家系における検討. 
発端者のいずれの親も発端者で同定された病的バリアントまたは臨床的な疾患の証拠を認めない場合, 病的バリアントは新規バリアントである可能性が高い [Renaux-Petel et al 2018]. しかしながら精子提供や代理母(生殖補助医療など), 非公開の養子縁組などの非医学的解釈も考えられる.

家族計画

  • 遺伝学的リスクの決定や出生前検査の可能性についての話し合いは妊娠前に行うのが適切である.
  • 罹患しているあるいはリスクのある若年成人に対し, 遺伝カウンセリング(子どもの潜在的リスクや生殖に関する選択肢を含む議論)を行うのが適切である.

DNAバンキングは, 将来的に使用するためにDNA(通常は白血球から抽出されたもの)を保管しておくことである. 遺伝子やアレルバリアント, 疾患についての検査手法や理解が将来向上する可能性があるため, その時のために罹患者のDNAを保管することは考慮すべきである.

出生前診断および着床前の遺伝学的診断

罹患した家系員にTP53病的バリアントが同定されていれば,出生前診断および着床前の遺伝学的診断は可能である. 出産適齢期のLFS患者では,生殖医療における選択肢について認識させる必要がある[Druker et al 2017].

医療の専門家の間や家族内においても,特にそれが早期診断ではなく妊娠中絶を目的とした場合には,出生前診断に対する考え方の相違が存在しうる. ほとんどの施設では出生前診断を行うか否かの決断は両親に委ねているが, この問題に関しては議論することが適切である.
訳注:日本ではリ・フラウメニ症候群における出生前診断および着床前診断は行われていない)


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。

  • Li-Fraumeni Syndrome Association

P.O. Box 6458
Holliston MA 01746
Phone: 855-239-LFSA (5372)
www.lfsassociation.org

  • Living LFS

www.livinglfs.org

  • My46 Trait Profile

Li-Fraumeni syndrome

  • National Cancer Institute (NCI)

6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
Genetics of Breast and Gynecologic Cancers (PDQ®): Li-Fraumeni Syndrome

  • National Library of Medicine Genetics Home Reference

Li-Fraumeni syndrome

  • American Cancer Society (ACS)

250 Williams Street Northwest
Atlanta GA 30303
Phone: 800-227-2345 (toll-free 24/7); 866-228-4327 (toll-free 24/7 TTY)
www.cancer.org

  • CancerCare

275 Seventh Avenue
22nd Floor
New York NY 10001
Phone: 800-813-4673 (toll-free); 212-712-8400 (administrative)
Fax: 212-712-8495
Email: info@cancercare.org
www.cancercare.org

  • National Cancer Institute (NCI)

6116 Executive Boulevard
Suite 300
Bethesda MD 20892-8322
Phone: 800-422-6237 (toll-free)
Email: cancergovstaff@mail.nih.gov
www.cancer.gov

  • National Coalition for Cancer Survivorship (NCCS)

A consumer organization that advocates on behalf of all people with cancer
8455 Colesville Road
Suite 930
Silver Spring MD 20910
Phone: 877-622-7937 (toll-free); 301-650-9127
Fax: 301-565-9670
Email: info@canceradvocacy.org
www.canceradvocacy.org

  • Prospective Registry of MultiPlex Testing (PROMPT)

PROMPT is an online research registry for patients and families who have undergone multiplex genetic testing and were found to have a genetic variation which may be linked to an increased risk of having cancer.
PROMPT


分子遺伝学

分子遺伝学およびOMIMの表の情報はGeneReviewの他の情報と異なることがある. 表にはより最近の情報が含まれていることがある. -ED

Table A.
リ・フラウメニ症候群:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座位 タンパク質 座位特異的データベース HGMD ClinVar
TP53 17p13?.1 細胞腫瘍抗原 p53 p53 Mutations and Cancer
Database of Germline p53 Mutations
IARC TP53 Mutation Database
TP53 @ LOVD
TP53 TP53

データは以下の標準的参照資料をもとに作成した. 遺伝子は HGNC, 染色体座位は OMIM, タンパク質は  UniProtを参照した. リンクが提供されたデータベース(Locus Specific, HGMD , ClinVar )の詳細についてはここをクリック.

Table B.
リ・フラウメニ症候群に関するOMIMの情報(View All in OMIM)

151623

LI-FRAUMENI SYNDROME; LFS

191170

TUMOR PROTEIN p53; TP53

分子遺伝病因

TP53は,ゲノムの守護神と呼ばれ,DNAの複製および修復や,ゲノムのエピジェネティックな鋳型,細胞周期停止,アポトーシス,オートファジー,細胞老化,分化,抗酸化反応,細胞のエネルギー代謝など,多くの重要な機能を持つp53をコードする [Schuler et al 2017Zerdoumi et al 2017].

通常の(ストレスのない)細胞では,MDM2タンパクによる負の調節フィードバック機構が働き,p53タンパクの量は少なく維持されている.MDM2がp53に結合し,分解の標識をつける.しかし,電離放射線や他の発がん物質のような遺伝毒性のあるストレッサーにさらされると,p53とDMD2はリン酸化を受け,結合が弱まる.結合が弱まったMSM2-p53の相互作用は,p53の分解を減少させ,細胞内のp53集積を導く.正常なp53がなくなり,そして/あるいは異常なp53が集積すると,細胞周期停止やDNA修復,アポトーシス,細胞老化など,重要な細胞プロセスを調節する多くの下流の遺伝子発現に有害な影響を及ぼし,最終的にゲノム不安定性を導き,悪性形質転換をもたらす[Valdez et al 2017Zerdoumi et al 2017].

疾患を起こすメカニズム. 生殖細胞系列のTP53病的バリアントは,p53DNA結合およびDNA損傷に対する転写応答の構造的欠陥を引き起こす. Zerdoumi et al [2017]によると,“生殖細胞系列のTP53変異は,DNA損傷が起こった細胞の悪性形質転換を促進する遺伝的寛容の状況を示している”.

P53特異的な実験室の技術的考慮事項. TP53 のミスセンスバリアントは腫瘍内で同定される最も多いバリアントで,このことが生殖細胞系列の解釈を難しくしている.最近,TP53飽和突然変異誘発スクリーニングsaturation mutagenesis screensを用いたヒトがん細胞株の機能喪失スクリーニングを利用し,DNAをCOSMICデータベースと統合した取り組みがなされている.このような取組みの1つで,酵母の転写活性の割合を推定する統計モデルの開発と,検査用のデータベースの作成が報告されている.(mutantp53.broadinstitute.org);しかしながら,p.Arg337Hisのようなバリアント(スコアが野生型の範囲内)が,このシステムの課題を浮き上がらせている.

Table4.
注目すべきTP53病的バリアント

参照配列 DNA
塩基変化
タンパク質変化 備考 [参照]
NM_000546?.5
NP_000537?.3
c.1010G>A p.Arg337His 副腎皮質がんの高リスク; その他のLFSがんの浸透率は低い; 南ブラジルの創始者バリアント [Ferreira et al 2019].

  表に記されたバリアントは著者達から提供された.GeneReviewsのスタッフは,バリアントの分類を独自に検証していない.GeneReviewsは、Human Genome Variation Societyの標準的な命名規則に従っている(varnomen?.hgvs.org).命名法の説明についてはQuick Reference参照.

がんと良性腫瘍

TP53は,ヒトのがんにおいて,最も頻繁に変化する遺伝子である.乳がんにおける ERBB2 (HER2として知られる)の増幅と肺がんのEGFR 病的バリアントにおいて,体細胞のTP53病的バリアントは予後不良をもたらすと考えられる.悪性度の高いがんでは,TP53病的バリアントは至る所に存在しているため,予後予測的価値はない可能性がある[Hainaut & Pfeifer 2016].


更新履歴

  1. Gene Review著者: Katherine A Schneider, MPH, Frederick Li, MD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
    Gene Review 最終更新日: 2004.10.12.  日本語訳最終更新日: 2005.12.18
  2. Gene Review著者: Katherine A Schneider, MPH, Judy Garber, MD, MPH
    日本語訳者: 中川奈保子,小杉眞司(京都大学大学院医学研究科)    
    Gene Review 最終更新日: 2010.2.9. 日本語訳最終更新日: 2011.3.9.
  3. Gene Review著者: : Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH
    日本語訳者: 中川奈保子(鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科),小杉眞司(京都大学大学院医学研究科) 
    Gene Review 最終更新日: 2013.4.11 日本語訳最終更新日: 2013.11.11.(in present)
  4. [minor revision]
    Gene Review著者: : Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH
    日本語訳者: 櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療室)
    Gene Review 最終更新日: 2013.4.11日本語訳最終更新日: 217.2.21【項目】分子遺伝学の項目 翻訳を追加 
  5. Gene Reviews著者: Katherine Schneider, MPH, Kristin Zelley, MS, Kim E Nichols, MD, and Judy Garber, MD, MPH.
    日本語訳者: 箕浦祐子(札幌医科大学大学院医学研究科遺伝医学)櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療科)
    Gene Reviews 最終更新日:2019.11.21 日本語訳最終更新日: 2020. 3.6. in present)

原文: Li-Fraumeni Syndrome

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