GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト
grjbar

多発性内分泌腫瘍症1型
(Multiple Endocrine Neoplasia Type 1)

[同義語: MEN1, MEN1Syndrome, multiple Endocrine Adenomatosis, Wermer Syndrome]

Gene Reviews著者: Francesca Giusti, MD, PhD., Francesca Marini, PhD., Maria Luisa Brandi, MD, PhD
日本語訳者: 櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司)

Gene Reviews 最終更新日: 2017.12.14. 日本語訳最終更新日: 2018.10.1

原文: Multiple Endocrine Neoplasia Type 1(MEN1)


要約

臨床的特徴 

多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)では20種以上の内分泌腫瘍および非内分泌腫瘍がさまざまな組み合わせで生じる.
内分泌腫瘍は,腫瘍によるホルモンの過剰産生または腫瘍そのものの増殖のいずれかにより明らかになる.

  • 副甲状腺腫瘍は主たるMEN1関連内分泌障害で,患者の90%は20〜25歳で発症し,50歳までに高カルシウム血症を呈する.高カルシウム血症は,全身倦怠,抑うつ,意識混濁,食思不振,便秘,悪心,嘔吐,利尿,脱水,高カルシウム尿症,腎結石,骨吸収の増加/骨折リスク,高血圧,ならびにQT間隔短縮をきたす.
  • 下垂体腫瘍ではプロラクチノーマがもっとも高頻度で生じ,女性では希少月経/無月経や乳汁分泌,男性では性機能低下をきたす.
  • 膵/消化管(GEP)の高分化型内分泌腫瘍は,ガストリノーマではゾリンジャー・エリソン症候群,インスリノーマでは低血糖,グルカゴノーマでは高血糖,食思不振,舌炎,貧血,下痢,静脈血栓,皮疹,血管作動性腸管ペプチド(VIP)産生腫瘍では水様下痢,低カリウム血症,無酸症を発現する.
  • カルチノイド腫瘍はホルモンを産生せず,50歳以降に大きな腫瘍を形成する.
  • 副腎皮質腫瘍では原発性副腎皮質ホルモン過剰や高アルドステロン症を伴うことがある.

非内分泌腫瘍には,顔面血管線維腫,コラゲノーマ,脂肪腫,髄膜腫,上衣腫,平滑筋腫などがある.

診断・検査 

MEN1の臨床診断基準は,副甲状腺,脳下垂体,膵消化管腫瘍のうち2つに内分泌腫瘍が認められることである.生化学検査では,原発性副甲状腺機能亢進症による血中副甲状腺ホルモンおよびカルシウム濃度の上昇,プロラクチノーマによる血清プロラクチン濃度の上昇,GEP管腫瘍による血清ガストリン,インスリン,VIP濃度の上昇が認められる.プロラクチノーマはMRIで,神経内分泌腫瘍(NET)はソマトスタチン受容体シンチグラフィで,膵内分泌腫瘍は超音波内視鏡で検出される.MEN1は病的バリアントがMEN1の原因になることが分かっている唯一の原因遺伝子で,分子遺伝学的検査では,ヘテロ接合MEN1病的バリアントが家族性MEN1の発端者のおよそ80%〜90%で,散発例(家系の中での一人だけがMEN1を発症)のおよそ65%で検出される.

臨床的マネジメント 

症状に対する治療
副甲状腺機能亢進症に対する治療として,副甲状腺亜全摘術後の副甲状腺組織の凍結保存や副甲状腺全摘術後の副甲状腺組織の自家移植が行われる.手術が禁忌の患者あるいは手術が不成功の原発性副甲状腺機能亢進症の治療にはカルシウム受容体刺激薬が主に用いられる.また,高カルシウム血症や骨吸収を制御する目的で,術前に骨吸収阻害剤が用いられる.プロラクチノーマはドパミン作動薬(カベルゴリンが第一選択薬である)で治療する.先端巨大症の原因となる成長ホルモン産生腫瘍は経蝶形骨洞手術を行う.成長ホルモン産生腫瘍の治療には,他にソマトスタチン誘導体,オクトレオチド,ランレオチドが用いられる.クッシング症候群を伴う副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生下垂体腫瘍は外科的に切除する.非機能性下垂体腫瘍は経蝶形骨洞手術で治療する.ガストリノーマによる胃酸分泌過多はプロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬で軽減できる.インスリノーマやほとんどの膵腫瘍は手術が適応である.長時間作用性ソマトスタチン誘導体でカルチノイド症候群にともなうホルモン産生過剰は制御可能である.径が3 cmを超える副腎皮質腫瘍の外科的切除により悪性化を防ぐことができる.

一次病変の予防
男性,特に喫煙者では胸腺切除が胸腺カルチノイドの予防となる.

二次病変の予防
PTHおよび/または血清カルシウムを測定して亜全摘または副甲状腺全摘術後の副甲状腺機能低下を確認する.手術中の血圧の急激な上昇を回避するために,術前に尿中カテコールアミンを測定して褐色細胞腫を診断/治療する.

定期検査
8歳から血清カルシウム濃度,20歳からガストリン,5歳からプロラクチンを測定する.腹部CTまたはMRIは20歳,頭部MRI検査は5歳から実施する.空腹時血清PTH濃度および年1回の胸部CTを検討する.

リスクのある血縁者の評価
病変の早期発見が治療に影響するため,家系内の生殖細胞系列MEN1病的バリアントが既に同定されている血縁者に対しては分子遺伝学的検査を提供する.

遺伝カウンセリング 

MEN1は常染色体優性遺伝疾患である.約10%の患者はde novo病的バリアントが原因となる.罹患者の子はそれぞれ50%の確率で病的バリアントを受け継ぐ.家系内のMEN1病的バリアントが明らかにされていれば,出生前診断は技術的には可能である


診断

MEN1の診断基準は,3つの内分泌腫瘍(副甲状腺腫瘍,脳下垂体腫瘍,高分化型膵消化管内分泌腫瘍)のうち2つが認められることで,ポリペプチドホルモンの産生過剰あるいは腫瘍そのものの増殖で明らかになる.

家族性MEN1は,患者が以下のいずれかを呈する場合と定義されている.

  • 少なくとも1人の一度近親者に1つまたは複数の上記内分泌腫瘍が認められる.
  • 単一の病変に加え,MEN1生殖細胞系列病的バリアントが同定されている.

注:医師は,MEN1では20を超える内分泌や非内分泌腫瘍のさまざまな組み合わせが報告されていることから,単純な定義によってすべての発端者や家族を網羅することはできないことに留意すべきである.
訳注:わが国では上記とは異なる診断基準が用いられている)

本疾患を疑う所見

内分泌腫瘍があればMEN1を疑うべきであるが,ホルモン産生内分泌腫瘍の症状発現以前に非内分泌腫瘍が認められることがある(臨床像の項を参照).

副甲状腺腫瘍では,副甲状腺ホルモンの産生過剰の結果として高カルシウム血症[原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)]を呈する.MEN1における原発性副甲状腺機能亢進症の根本原因は,単一の腺腫ではなく一般的に副甲状腺の肥大を伴う多腺性疾患であるため,副甲状腺疾患の診断には,通常画像検査は必要とされない.

下垂体腫瘍

  • プロラクチノーマ(プロラクチン産生性下垂体腺腫)は,女性では希少月経/無月経,乳汁漏出,男性では性機能不全や(よりまれに)女性化乳房をきたす.
  • 成長ホルモン産生性下垂体腺腫は,先端巨大症の自他覚症状を伴う腫瘍である.
  • 成長ホルモン/プロラクチン産生(GH/PRL産生)下垂体腺腫では,先端巨大症の自他覚症状と,女性では希少月経/無月経,乳汁漏出,男性では性機能不全や(よりまれに)女性化乳房を発現する.
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生性下垂体腺腫は甲状腺機能亢進症の自他覚症状を伴う.
  • ACTH産生性下垂体腺腫は多くの場合クッシング症候群を伴う.
  • 非機能性脳下垂体腫瘍は,視神経交叉の圧迫による視覚障害など,下垂体腫瘍腫大により隣接する組織が圧迫されて生じる症状および/または下垂体機能低下症として発現する.

注:あらゆる種類の下垂体腫瘍に対する画像検査はMRIである.

高分化型膵消化管内分泌腫瘍(胃,十二指腸,膵臓,腸管の腫瘍を含む)[Klopperら2004]は,次のような臨床症状を示す(もっとも頻度の高いものからまれなものの順):

  • ガストリン産生性十二指腸粘膜下腫瘍(ガストリン産生腫瘍)によるゾリンジャー=エリソン症候群(ZES)(消化性潰瘍,慢性下痢を伴う場合も伴わない場合もある)
  • インスリン産生性膵腫瘍(インスリノーマ)による低血糖
  • グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)による高血糖,食思不振,舌炎,貧血,下痢,静脈血栓,皮疹(壊死性遊走性紅斑)
  • VIP産生性腫瘍(VIPoma)による水様下痢,低カリウム血症,無酸症(WDHA症候群)

注:(1)MEN1の腫瘍では,生化学検査および画像検査で診断が困難な非機能性膵内分泌腫瘍がもっとも頻繁に認められる[Jensen 1999].(2)腸クロム親和性細胞様細胞2型(ECL)細胞カルチノイドは高分化型膵消化管内分泌腫瘍に含まれる.これらはMEN1でよく認められ,通常,ゾリンジャ―・エリソン症候群に対する消化器内視鏡検査の際に偶然発見される[Bordiら1998,Gibrilら2000].(3)超音波内視鏡(EUS)検査は,無症候性MEN1患者の小さな(≤10 mm)膵内分泌腫瘍の検出にもっとも感度の高い画像検査法である[Gaugerら2003,Langerら2004,Kannら2006,Tonelliら2006].膵ガストリノーマは通常CT,MRI,および/またはEUSで評価される[Imamuraら2011].

MEN1に合併する非内分泌腫瘍には顔面血管線維腫,コラゲノーマ,脂肪腫,髄膜腫,上衣腫,平滑筋肉腫がある.

皮膚病変はホルモン産生性腫瘍が出現する以前のMEN1患者の診断に有用なことがある.

診断の確定

MEN1の診断は,発端者において以下のひとつもしくは両方を認める時に確定する.

  • 3つの腫瘍(副甲状腺,下垂体,高分化型膵消化管内分泌腫瘍)のうち2つの存在
  • 分子遺伝学的検査でヘテロ接合性MEN1の病的バリアントの確認(表1参照).

分子検査アプローチには,単一遺伝子検査,多遺伝子パネルの使用,より網羅的な遺伝学的検査が含まれる.

  • 単一遺伝子検査.まずMEN1のシーケンス解析を行い,病的バリアントが同定されなければ欠失/重複解析を行う.
  • 多遺伝子パネル MEN1と他の関連遺伝子(鑑別診断の項参照)を含む多遺伝子パネルも用いられる.

注:(1)パネルに含まれる遺伝子と各遺伝子に適用される診断感度はパネルによって異なっり,時間とともに変化する.(2)パネルによってはこのGeneReviewで論じている疾患と関連しない遺伝子も含む.したがって臨床医はどのパネルが費用的にも効率よく,病態を説明できない遺伝子の病的バリアントや意義不明のバリアントが検出されるリスクを減らし,疾患の原因遺伝子を同定する可能性が高いか判断する必要がある.(3)一部の検査施設では,施設独自にデザインされたパネルおよび/または臨床医が指定する遺伝子を含む,臨床像に焦点をあてたエクソーム解析を提供している.(4)パネル解析で用いられる解析法にはシーケンス解析,欠失/重複解析,および/または他のシーケンシングに基づかない検査法が含まれる.
多遺伝子パネルについてはここをクリック.遺伝学的検査をオーダーする臨床医のためのより詳細な情報はここで得られる.

  • より網羅的な遺伝学的検査 実施可能な場合には,エクソーム解析やゲノム解析も考慮される.これらの解析では当初想定されていなかった診断(すなわち類似の臨床像を呈する異なる遺伝子の変異)が示唆される場合がある.

網羅的遺伝子解析についてはここをクリック.遺伝学的検査をオーダーする臨床医のためのより詳細な情報はここで得られる.

表1.
MEN1
で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 検査法 本検査法で検出される生殖細胞系列病的バリアント 2陽性となる発端者の割合
MEN1 シーケンス解析 3 家族性:80%-90% 4,5
散発性:65%6,7,8
遺伝子標的欠失/重複解析 9 1%-4%10

家族性 = MEN1の診断基準に合致する発端者と少なくともこれらの腫瘍の1つを有する一度近親の血縁者
散発性 = 家系の中でひとりだけがMEN1を発症

  1. 表A遺伝子および染色体遺伝子座タンパク質のデータベース参照.
  2. 当該遺伝子で検出されたアレルの変異体の詳細については分子遺伝子参照.
  3. シーケンス解析では良性,おそらく良性,意義不明,おそらく病的,病的,のバリアントが検出される.病的バリアントには遺伝子内の小欠失や挿入,ミスセンスバリアント,ナンセンスバリアント,スプライス部位バリアントを含む.典型例ではエクソンや遺伝子全体の欠失や重複は検出されない.シーケンス解析の解釈の問題にいついてはここをクリック.
  4. Brandiら[2001], Lemos &Thakker [2008],Mariniら[2015]
  5. 患者が主要病変(副甲状腺,膵,下垂体)を有している場合,特に副甲状腺と膵島腫瘍を有する家系の患者の場合にはMEN1病的バリアントを検出する可能性が高い [Ellardら 2005, Kleinら 2005].
  6. Guo & Sawicki [2001]
  7. 散発例において,患者が膵病変または2つの主要病変を有している場合にMEN1病的バリアントを検出する可能性が高い [Odouら 2006].
  8. 単一のMEN1関連腫瘍を有し,MEN1の家族歴のない患者で生殖細胞系MEN1病的バリアントが同定されることはまれである[Ellardら2005].
  9. コードシーケンスの解析やゲノムDNAの隣接イントロン領域のシーケンスの解析では検出できないエクソンあるいは全遺伝子欠失/重複を同定する検査.次のようなさまざまな方法が使用可能である.定量的PCR,ロングレンジPCR,マルチプレックスライゲーション依存的プローブ増幅(MLPA),遺伝子/染色体セグメントを含む染色体マイクロアレイ(CMA).
  10. Kishiら[1998],Bergmanら[2000],Cavacoら[2002],Ellardら[2005],Kleinら[2005],Fukuuchiら[2006],Thamら[2007]

臨床的特徴

臨床像

MEN1に伴って発症する内分泌腫瘍を表2に示す.

表2
.
MEN1における内分泌腫瘍の種類

腫瘍の種類

腫瘍のサブタイプ ホルモン産生 MEN1での有病率
副甲状腺 NA1 あり 原発性副甲状腺機能亢進症,50歳までに100%1
下垂体前葉 プロラクチノーマ あり 下垂体前葉腫瘍,~30%-40%2 もっとも頻度の高い下垂体腫瘍サブタイプ.下垂体腫瘍の60%を占める3
GH産生性 あり 下垂体腫瘍の25% 3
GH/PRL産生 あり 5% 3
TSH産生性 あり まれ 4
ACTH産生性 あり <5% 3
非機能性 なし   <5% 3
高分化型内分泌腫瘍 ガストリノーマ あり 高分化型内分泌腫瘍の40%5
インスリノーマ あり 10% 3
グルカゴノーマ あり <1%3
VIPoma あり <1%3
非機能性,PPoma なし 膵消化管神経内分泌腫瘍の20-55%3
カルチノイド 気管支肺 なし 2%3
胸腺 なし 2%3
なし 10%3
副腎皮質 コルチゾル産生性 まれ 40%3
アルドステロン産生性 まれ
褐色細胞腫 まれ <1%3

NA = 該当せず

  1. 90%の症例で初発病変となる.
  2. 10%の家族例,25%の散発例で初発病変となる.
  3. Thakkerら[2012]
  4. Socinら[2003]
  5. ゾリンジャー=エリソン症候群を呈する.

MEN1の内分泌腫瘍はさまざまな組み合わせで発症する.臨床的な傾向が唯一はっきりしているのはBurinバリアントとよばれている臨床型で,ニューファウンドランドの4家系とモーリシャスの1家系で報告されている.このタイプでは,ガストリノーマよりもプロラクチノーマの発症率が高い[Haoら2004].

MEN1に伴って生じる腫瘍は同部位に生じる非遺伝性腫瘍と臨床像が異なることが多いことに注意する必要がある(他のMEN1の所見がみられない単一の腫瘍)(「鑑別診断」の項参照).

原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)

原発性PHPTはしばしば軽症であり,MEN1のリスクがあるものの無症状である人に対する家族スクリーニングなどで,生化学的所見から診断される.PHPTはもっとも頻度の高いMEN1関連内分泌病変であり,90%の患者では初発病変となる.通常20〜25歳で発症する.すべてのMEN1患者は50歳までに高カルシウム血症を呈する [Thakkerら2010].PHPTは長期にわたって無症状であることが多いが,特に女性では早ければ35歳で骨量の低下を呈する[Burgessら1999].

台湾におけるMEN1に伴うPHPTの調査研究では,これまでの報告よりもより軽度であった[Leeら2006].

高カルシウム血症の頻度の高い臨床的兆候:

  • 中枢神経系:全身倦怠,うつ,注意力低下,意識混濁(まれに昏迷や昏睡)を含む精神状態の変化
  • 消化管:食思不振,便秘,嘔気,嘔吐
  • 腎:利尿,濃縮力低下,脱水,高カルシウム尿症,腎結石リスクの上昇
  • 骨:骨吸収亢進と骨折リスクの上昇
  • 心血管:高血圧の発症もしくは増悪,心電図上QT間隔短縮

高カルシウム血症はガストリノーマからのガストリン分泌を増加させるため,ゾリンジャ―・エリソン症候群を出現および/または悪化させる[Marx2001].

病理

典型例では単一腺の腺腫ではなく,すべての腺が腫大する多腺性副甲状腺疾患を呈する.腺腫は単クローン由来の散発性病変と考えられる[Marx 2001].

がん発症リスク MEN1では副甲状腺癌はまれである.これまでにMEN1病的バリアントを有する副甲状腺癌の報告は3例に過ぎない[Shihら2009,del Pozoら2011,Thakkerら2012].

下垂体腫瘍

散発例の25%,家族例の10%では下垂体腫瘍が初発病変となる.Vergesら(2002)は17%の症例で下垂体腫瘍が初発病変であり,下垂体腫瘍は男性より女性に高頻度に発生する(50%対31%)と報告している.MEN1患者の下垂体腫瘍の発症頻度は15〜55%と差がある[Thakkerら2012].プロラクチノーマがもっとも頻度の高い下垂体腫瘍である.
2種類以上のホルモンを産生する下垂体腫瘍はこれまで考えられていた以上に高い頻度で発生する.卵胞刺激ホルモン,黄体ホルモンあるいはACTH産生を伴う成長ホルモン/プロラクチン共産生腫瘍が報告されている [Trouillasら2008].
MEN1における高い浸透率にもかかわらず,下垂体腫瘍は通常単発であり,例えばゴナドトロピン産生マクロ腺腫とACTH産生ミクロ腺腫を発症した患者が報告されてはいるが[Al Brahimら2007],ひとりの患者に同時に複数の下垂体腫瘍が見られることはまれである.

臨床症状は産生される下垂体ホルモンによって異なる:

  • PRL産生腫瘍の女性患者に無月経および乳汁漏出が生じる.
  • PRL産生腫瘍の男性患者で性欲低下や陰萎をきたす.
  • ACTH産生腫瘍では副腎皮質機能亢進が生じる.11〜13歳のMEN1小児患者にクッシング症候群が初発病変として報告されている[Matsuzakiら2004,Rixら2004].
  • GH産生腫瘍の小児および成人患者に巨人症および先端巨大症がそれぞれ生じる[Stratakisら2000].
  • 男性では,FSH産生腫瘍に伴う性欲低下および勃起不全が報告されている[Sztal-Mazerら2008].
    神経圧迫,頭痛,下垂体機能低下症などの臨床的に有意な症状も下垂体腫瘍の占拠性症状としておこりうる[Carttyら1998].

病理 

MEN1の下垂体腫瘍の65% [Brandiら2001]〜85%[Vergèsら2002]がマクロアデノーマである.Trouillasら(2008)はMEN1と非MEN1の腫瘍で以下の違いを以下のように報告している.

  • 病理学的にMEN1による腫瘍はより大きくより浸潤性である.
  • 多発腫瘍はMEN1でより高頻度であり,特にプロラクチン―ACTH産生腫瘍が多い.

がん発症リスク

Vergesら(2002)は下垂体マクロアデノーマの32%が浸潤性であると報告しているが,MEN1関連下垂体腫瘍の悪性化はまれである.しかし,Benitoら(2005)はMEN1女性に発症した転移性ゴナドトロピン産生性下垂体癌を,Gordonら(2007)は頸髄腫瘍を呈した転移性プロラクチノーマの症例を報告している.

高分化型膵消化管内分泌腫瘍

ガストリノーマ.MEN1患者のおよそ40%はガストリノーマを発症し,ZESを呈する.臨床所見としては上腹部痛,下痢,食道逆流,消化性潰瘍がある.適切に診断や治療が行われないと,先行症状がないまま高ガストリン血症による消化管穿孔を起こすこともある.頻度は高くないが胸焼けや体重減少を伴うこともある.ZES関連する高ガストリン血症は多発性十二指腸潰瘍を引き起こす.多くの場合,食後2時間以上経過してから,あるいは夜間に心窩部痛が出現し,食事によって軽快する.痛みは右上腹部や胸部,背部に現れることもある.嘔吐は胃流出部の狭窄や閉塞による可能性があり,吐血や下血は消化管出血の結果として起こる.
ZESは通常40歳以前に発現する[Gibrilら2004].ZESを呈するMEN1患者の25%にはMEN1の家族歴がない[Gibrilら2004].

  • 病理 一般的には,小さい膵内分泌腫瘍はMEN1の特徴的所見である[Anlaufら2006].典型的に,十二指腸粘膜に小さな(径1 cm未満)ガストリノーマが多発する.特に80%以上のMEN1に伴うガストリノーマは十二指腸の球部もしくは下行部に発生する[Hoffmanら2005].MEN1の十二指腸ガストリノーマはガストリン産生細胞のびまん性の過形成性変化を伴い,多発性の微小腫瘍がみられる[Anlaufら2005].

    約50%の十二指腸微小ガストリノーマはMEN1遺伝子座のヘテロ接合性を消失(LOH)しており,原発腫瘍と考えられる[Anlaufら2007].多巣性十二指腸腫瘍は,おそらくMEN1病的バリアントをもつ患者における独立の単クローン性の発生によるものと考えられる[Anlaufら2007].このような前駆病変は散発性,非MEN1ガストリノーマでは報告されていない[Anlaufら2007].
  • がん発症リスク MEN1のガストリノーマは多くは多発性であり,悪性である.約半数は診断前に転移している[Brandiら2001,Anlaufら2005,Fendrichら2007].肝転移の場合の生命予後は不良である.対照的に,所属リンパ節転移は予後に悪影響を及ぼさない.

    膵ガストリノーマはMEN1ではまれであるが[Anlaufら2006],十二指腸ガストリノーマに比べて腫瘍が大きく,肝転移の危険性も高く,結果としてより悪性度が高い.平均33歳で膵内分泌腫瘍の手術を受けた8例の無症状の患者では転移が見られなかったが[Tonelliら2005],平均51歳で手術を受け,すでに症状を呈していた12例のうち4例には遠隔転移がみられ,うち2名は死亡した.

インスリノーマ.MEN1に伴うインスリノーマの発症年齢は非遺伝性のインスリノーマに比べて約10年早い[Marxら1999].

  • 病理 一般に多発性膵島腫瘍を伴って,単発性に生じる [Brandiら2001].高インスリン血症の原因となる腫瘍の大きさは通常1〜4 cmである.
  • がん発症リスク ほとんどのインスリノーマは良性である.グルカゴノーマの頸部転移がみられた症例は膵十二指腸切除術によって回復し,その後無症状で経過している[Butteら2008].

グルカゴノーマ

  • 病理 グルカゴノーマは他のMEN1関連腫瘍に伴って生じうるが,非常にまれである.MEN1関連グルカゴノーマは,診断されたすべてのグルカゴノーマのおよそ3%に過ぎないと推定されている[Castroら2011].腫瘍は>3 cmであることが多く,内臓転移も多くみられる.
  • がん発症リスク MEN1関連グルカゴノーマのおよそ80%は悪性で,肝臓へも広がることが多い[Castroら2011].

VIPoma

  • 病理 MEN1患者の17%が疾患のいずれかの段階でVIPomasを発現すると推定されている.MEN1関連VIPomasはすべての診断されたVIPomasの5%である[Yeung & Tung 2014].腫瘍サイズは3 cmを超えることが多い.
  • がん発症リスク VIPomasは悪性で,通常診断時には転移している.転移は肝臓でもっとも多くみられる.

非機能性膵消化管腫瘍 はMEN1患者で頻繁に認められる.超音波内視鏡による前向き調査では,MEN1患者における非産生性膵腫瘍の発現頻度は54.9%で,その頻度はこれまで考えられていたよりも高かった[Thomas-Marquesら2006].さらに,フランス内分泌腫瘍研究グループ(French Endocrine Tumor Study Group)によると,これらの腫瘍の50歳での浸透率は34%で,MEN1の膵十二指腸腫瘍の中でもっとも頻度が高い.非機能性腫瘍を発症したMEN1患者の生命予後は膵十二指腸腫瘍を発症していない患者に比べて短い[Triponezら2006].

カルチノイド腫瘍

胸腺,気管支,2型胃クロム親和性細胞様カルチノイド腫瘍はMEN1患者の約3%に発生する.CT検査は無症状の気管支腫瘍の検出に有用であり,一方CTとMRIは最初の評価において胸腺カルチノイド腫瘍の検出に同程度に有用である[Thakkerら2012].胸部X線撮影やソマトスタチン受容体シンチグラフィは,初発もしくは再発胸腺カルチノイド腫瘍の検出においてはCTやMRIに比べて感度が低いので,これらは最初の画像診断検査には用いられない[Gibrilら2003, Scarsbrookら2007,Goudetら2009].

カルチノイド腫瘍は,MEN1関連腫瘍の中で唯一発症に性差が認められる.胸腺カルチノイドは男性により多く,その割合は20対1であり,気管支カルチノイドは主に女性に発症する(男女比1:4)[Thakkerら2012].興味深いことに,日本人MEN1患者では胸腺カルチノイドの性差はさほど顕著ではない(男女比2:1)[Sakuraiら2012].さらに,喫煙者は非喫煙者よりもカルチノイド腫瘍を発症する.

カルチノイド腫瘍の臨床経過はゆっくりであることが多いが,進行が早く治療に抵抗性を示すものもある[Schmitterら2003].胸腺,気管支,胃カルチノイドがACTHやカルシトニン,GHRHを過剰分泌することはまれである.同様に,セロトニンやヒスタミンを過剰分泌することもほとんどなくカルチノイド症候群の原因とはならない.胸腺カルチノイドの成長ホルモン産生による先端巨大症の例[Boixら2002]やACTH産生によるクッシング症候群の例[Takagiら2006,Yanoら2006]が報告されているが,他の報告ではホルモン分泌は認めていない[Gibrilら2003].
Gibrilら(2003)による後ろ向き研究では,胸腺カルチノイドはMEN1の中では比較的遅い時期に現れる病変であり,胸腺カルチノイドが初発病変である患者はいなかった.MEN1の胸腺カルチノイドは通常大きな浸潤性腫瘍に進行した時点で発見される.頻度は高くないが,胸部画像で発見されたり副甲状腺手術の際に行う胸腺摘出術で発見されたりすることもある.

胃カルチノイドの平均診断時年齢は50歳である.胃カルチノイドは,MEN1患者の最大70%で内視鏡検査の際に偶然発見される[Bermaら2008].

病理

カルチノイドは多発傾向があり,同時に発生することも異時性に発生することもある.

がん発症リスク

胸腺カルチノイドは悪性化傾向がある[Gibrilら2003].Ferollaら(2005)は,胸腺カルチノイドは,特に男性喫煙者において高度に致死性であるとしており,これはGoudetら(2009)による761例のフランス人MEN1患者中の21例の胸腺カルチノイド症例の報告でも裏付けられている.

カルチノイド腫瘍の脊髄転移がMEN1患者の1例で報告されており[Tanabeら2008],胸腺腫と胸腺カルチノイドを合併した女性患者の例の報告もある[Millerら2008].

気管支カルチノイドの多くは多発性であり,同時に発生することも異時性に発生することもある.胸腺カルチノイドとは異なり,多くの気管支カルチノイドは臨床的には穏やかな経過をたどるが,腫瘤による局所症状を生じたり,転移や手術後再発が見られたりすることもある[Sachitanandanら2005].

したがって,胸腺腫瘍の存在はMEN1における死亡リスク増大に有意に関与している(ハザード比=4.29)のとは対照的に,気管支カルチノイドは生命予後には影響しない[Goudetら2010].胸腺腫瘍の診断からの平均生存期間はおよそ9.5年であり,70%の患者では直接の死因は腫瘍である[Goudetら2009].

副腎皮質腫瘍

副腎皮質腫瘍は片側性のことも両側性のこともあり,用いられる画像検査法の違いによりさまざまな頻度が報告されている(20〜73%).副腎皮質腫瘍はCTによりスクリーニングの過程で見つかることが最も多い.
これらの腫瘍の大部分は皮質腺腫,過形成,多発腺腫,結節性過形成,嚢胞,もしくは癌である[Hondaら2004].Langerら(2002)による67例の調査では,非機能性良性腫瘍が10例,両側例が8例,クッシング症候群を呈したものが3例,褐色細胞腫が1例に認められた.4例が副腎皮質癌を発症し,うち3例は機能性であった.

病理

無症状の副腎腫大は多クローン性で過形成性であり,通常腫瘍化しない.Langerら(2002)の報告では,診断時の平均腫瘍径は3 cm(1.2〜15.0 cm)で,大部分が3 cm以下であった.

がん発症リスク 

715例のMEN1患者の調査で,Gatta-Cherifiら(2012)は副腎皮質癌の発症率を1%と推定している.しかし,1cm以上の副腎腫瘍がみられる患者のうち,約13%が副腎皮質がんを発症していた.このリスクは腫瘍径が4cm以上の患者ではより高いかもしれない.

MEN1に伴う非内分泌腫瘍

以下の皮膚病変が含まれる[Darlingら1997,Thakkerら2012].

  • 血管と結合組織で構成される良性腫瘍である顔面血管線維腫は罹患者の約85%に認められる[Thakkerら2012].これらは消退しないざ瘡様丘疹からなり,口唇縁に沿って広がる.
  • 結合組織腫瘍は約70%の患者に認められ,しばしば体幹,頸部,上肢に対称性に出現する多発性の皮膚色調ときに低色素性の皮膚結節として発症する[Thakkerら2012].これらは典型例では無症状,類円形,弾性硬,径数ミリから数センチの大きさとなる.VIP産生腫瘍を含む膵の多発腫瘍の切除後に多数の結合組織腫瘍が急速に増大したMEN1の症例が報告されている[Xia & Darling 2007].
  • 脂肪腫は良性の脂肪組織腫瘍で脂肪の存在するどこにでも発生し,罹患者の約30%に認められる[Thakkerら2012].皮下腫瘍のこともあれば,まれに内蔵に発生することもある.
  • 他の皮膚所見としては,38%にカフェオレ斑,6%にconfetti様低色素斑紙吹雪様色素脱失斑,6%に多発性歯肉丘疹が認められる[Darlingら1997].

中枢神経系腫瘍はMEN1ではまれである.

  • 髄膜腫は74例中8%の発症が報告されている[Asgharianら2004].多くは無症状で60%は増殖傾向を示さない.
  • 上衣腫は1%の患者に生じる.

平滑筋肉腫は平滑筋由来の良性腫瘍である[McKeebyら2001,Ikotaら2004].散発性子宮平滑筋肉腫は妊娠可能年齢女性の20−30%に認められる.MEN1女性における頻度あるいは一般頻度との比較のデータはない.またMEN1患者における食道や肺の多発平滑筋肉腫に関するデータもない.

甲状腺腫瘍 腺腫,コロイド腫瘍,癌がMEN1患者の25%以上に発生すると報告されている.一般集団においても甲状腺病変の頻度が高いことを考慮すると,MEN1患者における甲状腺腫瘍はおそらく偶発的で,有意なものではない[Thakkerら2012].

MEN1の罹患率と死亡率

MEN1に伴う臨床像の理解,MEN1関連腫瘍の早期診断,MEN1の代謝性合併症の治療により,ZESおよび/または合併するPHPTは死因ではなくなった.それにもかかわらず,MEN1患者が早期死亡にいたる危険性は依然として顕著である[Geerdinkら2003].現在,MEN1の死亡の約30%は悪性腫瘍が原因である.

MEN1病的バリアントをヘテロ接合で有する258例を対象としたMachensら(2007)の多施設研究では,「特異的な腫瘍検出(技術の進歩)の結果として,20世紀後半に生まれたMEN1キャリア患者は20世紀前半に生まれた患者に比べて明らかに早期に診断されていた」ことがわかった.注:Machensら(2007)が使用する「キャリア」とは,MEN1病的バリアントをヘテロ接合で有する患者を意味する.

生活の質(QOL).29例のスウェーデン人MEN1患者を対象とした定性的研究では,参加者は日常生活における身体的,心理的,社会的制約やこうした制約が彼らのQOLに与える影響を報告している.参加者の大多数は状況に適応できており,身体的な症状や治療を受けているにもかかわらず自身を健康であると評価していた.参加者は臨床的な経過観察プログラムのもとで良好なケアを受けていた[Stromsvikら2007,Mariniら2017].

遺伝型-表現型の関係

MEN1における遺伝型-表現型の直接的な関係は特定されていない[Kouvarakiら2002,Turnerら2002,Wautotら2002,Lemos & Thakker 2008].

MeninのJunD結合ドメインに影響を与えるMEN1変異があると死亡リスクが2倍高いという報告がある[Thevenonら2013](分子遺伝学の項参照).Thevenonらの別の報告(2015)では,遺伝的関連が小さくなるとともに下垂体腫瘍,副腎腫瘍,胸腺腫瘍の家系内遺伝率が低下するという小程度の関連を示している.しかしながら,両報告とも直接的な遺伝型‐表現型関連については否定的で,MEN1の臨床像に影響する他の遺伝的あるいはエピジェネティックな因子の関与を示唆している.

MEN1遺伝子の短縮型変異を有する場合に他の型の変異よりも胸腺カルチノイドの頻度が高い傾向がある(統計的有意差はない)という報告があるが[Limら2006],Lipら(2012)の総説では単一の病的バリアントと特定の表現型との関連は認めていない.

浸透率

すべての臨床病変を含む年齢累積浸透率は,20歳で50%以上,40歳では95%以上である[Bassettら1998,Marxら1998,Thakkerら2012].

有病率

MEN1の頻度は1万人から10万人にひとりの間である.創始者効果の結果としての地域的集積が報告されている[Carroll 2013].


遺伝的に関連のある(アレルの)疾患

生殖細胞系列MEN1病的バリアント家族性孤発性副甲状腺機能亢進症(FIHP)は,副甲状腺腺腫または過形成を主徴とし,他の関連する内分泌障害はみられない.FIHP家系の20% [Miedlichら2001,Villablancaら2002]〜57% [Pannettら2003]にヘテロ接合性MEN1生殖細胞系列病的バリアントが報告されている.

MEN1のヘテロ接合性病的バリアントに起因するFIHPの家系では,病的バリアントの38%がミスセンスである一方,MEN1ではミスセンス変異体は20%を占めるのみである[Lemos & Thakker 2008].MEN1のナンセンス変異体はFIHP家系の5%で認められ,MEN1家系では23%に認められる.

イントロン領域にMEN1病的バリアントを認め,副甲状腺機能亢進症-顎腫瘍症候群の臨床的エビデンスがないFIHPの1家系では,発端者の母親(遺伝的背景は不明だが,発端者と同様の病的バリアントを保有していた可能性が高い)は副甲状腺癌で死亡した[Carrascoら2004].そのため,MEN1(副甲状腺がんのリスクが高くなるとは思われない)とは異なり,FIHPは副甲状腺癌リスク増加と関連している可能性がある(「鑑別診断」の項も参照).

家族性下垂体腫瘍.家族性下垂体腫瘍の発端者でMEN1病的バリアント陽性例は1%に満たない[Vierimaaら2006].

MEN1の他の所見を伴わずに発生する散発性腫瘍(副甲状腺腺腫,ガストリノーマ,インスリノーマ,気管支カルチノイドなど)では,しばしば生殖細胞系列に存在しないMEN1の体細胞病的バリアントが認められる.この状況では,これらの腫瘍が次世代に遺伝することはない[Carling 2005].「分子遺伝子」,「がんおよび良性腫瘍」の項を参照.


鑑別診断

表3.
MEN1の鑑別診断:他の疾患

疾患 遺伝子 遺伝様式 臨床像
MEN1と重複 MEN1との相違
MEN21 RET AD

MEN2では1

  • 20−30%にPHPT
  • 高Ca尿症と腎結石(一部の例)

MEN2では1

  • 甲状腺髄様癌と褐色細胞腫
  • PHPTは通常MEN1に伴うものより軽度
  • MEN2AとPHPTを伴う多くの例では,PHPTは無症状
MEN4 (OMIM
610755)
CDKN1B AD すべての病変 鑑別できる臨床的な特徴なし
下垂体腫瘍易罹患性 (OMIM 605555) AIP   下垂体腫瘍
  • MEN1より若年発症
  • MEN1に伴う単発性の下垂体腫瘍で,典型例ではプロラクチノーマまたはマクロアデノーマ
散発性PHPT2 NA NA PHPT
  • 発症ピークは50歳代3(MEN1では30年早く20−25歳)4
  • 高Ca血症の臨床症状で発見される(MEN1では罹患者もリスクのある血縁者もMEN1病変検索時には無症状)
FIHP5 MEN16 AD 副甲状腺腺腫または過形成 MEN1の他の病変を伴わない
CASR7 AD, AR
CDC738 AD
  1. MEN2AはMEN2の臨床的亜型である.
  2. 散発性PHPTは通常単一腺の腺腫で遺伝しない.
  3. Bilezikian & Silverberg [2000]
  4. Uchino ら [2000], Marx [2001]
  5. FIHPは家系内の2名以上で副甲状腺腺腫または過形成を認めるが他の関連内分泌病変を認めない.
  6. MEN1病的バリアントはFIHP家系の20%-57%に報告されている[Miedlichら2001, Villablancaら2002, Pannettら2003].
  7. FIHP家系の14%から18%にCASRの病的バリアントが同定される [Simondsら2002,Warnerら2004]. CASR 病的バリアントは家族性低Ca尿症性高Ca血症 (OMIM 601198) 患者や新生児重症副甲状腺機能亢進症(OMIM239200)患者でも同定されている.
  8. CDC73 の病的バリアントは副甲状腺機能亢進症‐顎腫瘍症候群の原因となる.Warnerら(2004)はFIHP22例においてCDC73変異を1例も認めなかった.

表4
MEN1の鑑別診断:臨床的特徴

臨床病変 コメント
下垂体腫瘍
  • もし単発性下垂体腫瘍が(1)他のMEN1関連病変を伴わない時はMEN1の可能性は低い1,(2)散発例はMEN1による下垂体腫瘍より薬物治療によく反応する2
  • もし複数の下垂体を認める場合は,表3の「下垂体腫瘍易罹患性」を参照.
ゾリンジャ―・エリソン症候群(ZES)
  • 散発性ガストリノーマは(1)膵原発が多い3;(2)MEN1のガストリノーマより発症年齢が10年遅い4
  • 2つのサイクリン依存性キナーゼインヒビター遺伝子(RPRD1AとCDKN1B)の病的バリアントが2例のZES患者で報告されている5.
  • ガストリノーマはMEN4や結節性硬化症,神経線維腫症1型にも合併する.
非機能性神経内分泌腫瘍
  • MEN1患者の20−55%に発症する.
  • フォンヒッペル・リンドウ病(10−17%)や神経線維腫症1型にも合併する.
インスリノーマ
  • 発症年齢のピークは散発性インスリノーマでは約10年遅い4
  • 神経線維腫症1型にも合併する.
カルチノイド腫瘍
  • MEN1に伴わない場合,多くは中腸もしくは後腸に発生し,argentaffin陽性で,セロトニンを分泌する.MEN1に合併する場合よりも経過はより軽症である4.
  • 胃カルチノイドと副甲状腺機能亢進症の合併は遺伝的に易罹患の別個の疾患を構成しており,MEN1の非典型例あるいは不全例とみなしてはならない6
顔面血管線維腫
  • 結節性硬化症でも認める.
  • 結節性硬化症では3−4歳で発症する(MEN1では40歳前)
平滑筋肉腫 アルポート症候群でも認める.
  1. Agarwalら[2009b]
  2. Beckersら[2003]
  3. Nortonら[2001], Tonelliら[2005]
  4. Thakkerら[2012]
  5. Agarwalら[2009a]
  6. Christopoulosら[2009], Thomasら[2010]

臨床的マネジメント

初回の診断後の評価

MEN1患者の疾患の範囲とニーズを把握するために,下記の頻度の高いMEN1関連腫瘍(「臨床記述」に記載)の評価が推奨される.

  • 多腺性副甲状腺病変
  • プロラクチノーマ
  • ガストリノーマおよび他の膵消化管神経内分泌腫瘍
  • 臨床遺伝医や遺伝カウンセラーへの紹介

症状に対する治療

MEN1の診療ガイドラインが公開されている[Thakkerら2012].

PHPT

副甲状腺摘出がMEN1患者の治療選択肢であるが,亜全摘手術(3.5腺)を行うか全摘手術を行うか,また,手術を行う時期(早期対後期)については議論が分かれている.

  • 亜全摘手術(3.5腺以下の切除)では,MEN1患者の40〜60%で高Ca血症が持続,あるいは術後10〜12年以内に再発する.また10〜30%で長期にわたるビタミンD投与あるいは活性型代謝物のカルシトリオール投与を要する低Ca血症となる[Thakkerら2012].
  • 前腕筋層内自家移植を伴う全摘手術では,新鮮および凍結保存した副甲状腺の両方を用いることがある.手技は凍結保存した細胞の状態によって異なる.細胞の状態は凍結保存から自家移植までの時間が長くなるにつれて低下する.
    • 迅速測定によるPTHの術中モニタリングを実施することで,機能が亢進した副甲状腺組織を問題なく摘出したことを確認し,前腕筋層内自家移植の決定に有用となる.
    • 自家移植を実施した患者の50%で高Ca血症の再発が認められ,移殖片の摘出は必ずしも成功しない.

MEN1における原発性副甲状腺機能亢進症の最初の治療として亜全摘が推奨される.病変が広範囲に広がる症例に対しては,自家移植を伴う全摘も最初の手術あるいは再手術時に検討される[Thakkerら2012].

高Ca尿症を伴う高Ca血症の場合には,高Caレベルによる臨床的影響を予防もしくは軽減するために副甲状腺摘出術を延期することがある.

無症状の高Ca血症では,症状発現や合併症の定期的評価を行うことで副甲状腺手術を遅らせることができる.

ZESを伴うMEN1患者の場合には,副甲状腺機能亢進症と高Ca血症を是正し,結果として胃酸分泌を減らして消化性潰瘍のリスクを下げるために,副甲状腺摘出術は必須である.
手術前に骨吸収抑制剤を投与することで高Ca血症を改善し,PTH依存性骨吸収が制御され,将来的な骨粗鬆症リスクを軽減する.

副甲状腺手術の適応とならない患者や過去の治療が失敗した患者,あるいは術後再発やさらなる外科治療を拒否する患者に対しては,カルシウム受容体作動薬(シナカルセト)が正常のCa代謝を回復し,副甲状腺細胞増殖を制御する.シナカルセトは耐用性が高く安全で,MEN1患者の治療薬として有用である [Moyesら2010,Giustiら2016].

下垂体腫瘍

PRL-産生腫瘍(プロラクチノーマ)

  • カベルゴリン,ブロモクリプチン,ペルゴリン,キナゴリンなどのドパミン作動薬がプロラクチン産生腫瘍の治療に用いられる.
  • カベルゴリンは,副作用頻度の低さと治療効果の高さから現時点での第一選択と考えられる[Tichomirowaら2009,Thakkerら2012].
  • 経蝶骨洞手術と放射線治療は薬剤抵抗性腫瘍や周辺組織を圧迫し,薬物治療で制御できない神経視覚症状を呈するマクロアデノーマのために準備される.

成長ホルモン産生腫瘍

  • 経蝶骨洞手術は先端巨大症をきたす成長ホルモン産生腫瘍の第一選択治療法であり,50〜70%の症例に有効である.
  • ソマトスタチン誘導体が成長ホルモン産生腫瘍の内科治療の選択肢である.オクトレオタイドとランレオタイドは50%以上の症例でGHとIGF1の血清中濃度を正常化する[Beckersら2003].
  • ドパミン作動薬が成長ホルモン産生腫瘍の治療で奏功することは少ないが,GH-PRL産生腫瘍では有効なことがあり,ソマトスタチン誘導体抵抗性症例の10〜20%でも有効である[Colao1ら997,Marzulloら1999,Fredaら2002].

ACTH産生腫瘍

  • クッシング症候群を伴う多くのACTH産生腫瘍では,治療は腺腫の摘出である.Beckersら(2003)の一連の報告では,マイクロアデノーマがみられた92%とマクロアデノーマがみられた67%で,手術による治癒が術後直後に得られている.
  • 手術によって治癒が得られなかったクッシング症候群を伴うACTH分泌下垂体腫瘍では,ACTH分泌を抑制するために放射線療法が必要になることもある.

非機能性下垂体腫瘍

  • 非機能性下垂体腫瘍では,治療選択肢は経蝶骨洞手術である.しかし,まれではあるが腫瘍が非常に大きく細胞外へ進展している場合には,開頭術が唯一の方法となる[Beckersら2002].
  • 5〜15%の例では,強力なドパミン作動薬やソマトスタチン誘導体による内科的知用により手術前に腫瘍を縮小させることができる[Colaoら1998].
  • 散発例とMEN1関連下垂体腫瘍症例とを比較できる論文データは十分ではない.この件に関する意見はさまざまであるが,Beckersら(2003)はMEN1関連下垂体腫瘍のほうが散発例に比べてより広範な治療が必要になる場合が多いと報告している.

高分化型膵消化管腫瘍

ガストリノーマ

  • 膵消化管ホルモンの過剰分泌によるMEN1の症状を制御し,予防し,それによって生命にかかわる臨床症状を制御できる薬剤としては,胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーがある[Jensen 1999].
  • MEN1に伴うガストリノーマは通常小さく,神経内分泌組織全体に散在することから手術によって満足のおける結果が得られることはまれであり,外科治療に関しては議論がある.ガストリノーマの外科的切除は半年間に腫瘍径が倍増するか,2cmを超えるような非機能性腫瘍が併存しているときに検討される[Thakkerら2012,Falconiら2016].ガストリノーマに対して手術と薬物治療の有効性を比較した臨床試験は行われていない.
  • MEN1に伴うガストリノーマは,十二指腸の膨大部か下行部に発生することがもっとも多く,水平部や上行部,あるいは小腸ループに発生することは少ない.そのため,これらの部位については手術前の画像検査,術中の綿密な評価,あるいは外科標本に対する病理学的評価が重要である[Tonelliら2005].
  • 原発性リンパ節ガストリノーマを発症したMEN1例が1例報告されており,世界の文献からの同様な症例を検討することで,リンパ節に生じるガストリノーマの一部は転移ではないことが明らかとなった.リンパ節ガストリノーマの切除後に長期にわたってガストリノーマの症状がみられないことが唯一の信頼できる診断根拠である.したがって,Zhouら(2006)はMEN1患者のガストリノーマに対しては可能であればすべて外科的切除を行うべきだとしている.Anlaufら(2008)は原発性リンパ節ガストリノーマもしくは潜在性十二指腸微小ガストリノーマのMEN症候群の1症例を報告し,原発腫瘍の体系的な検索の必要性を強調した.

膵腫瘍.MEN1に伴う無症候性の膵腫瘍に対する手術適応には議論がある.

  • MEN1におけるインスリノーマや他の大部分の膵腫瘍は手術の適応である.Tonelliら(2005)によると,MEN1インスリノーマの最良の手術法は,触診や術中超音波によって径0.5 cm以上の腫瘍を同定し,これらを核出(摘出)するか,もし大きい腫瘍が多発している場合には膵部分切除を行うというものである.
  • ガストリノーマに対する至適治療には議論がある.
    • 膵内にみられる非転移性ガストリンでは,手術により治癒可能であり,経験豊富な内分泌外科医によって実施されるべきである.MEN1患者では小さな十二指腸粘膜ガストリノーマが多発し,経験豊富な外科施設では,腫瘍の部分切除と併せてリンパ節切除,十二指腸切除を行い,まれながら患者の要望に合わせて膵十二指腸切除を同時に行うこともある.これは,このようなアプローチにより治癒率が向上するからである.しかしながら,これらの腫瘍は通常多発性であるため,手術はしばしば無効である.
    • MEN1のガストリノーマでは,Whipple法による膵頭十二指腸切除により,最大の治癒率が得られる可能性が高いが,経験豊富な術者による手術でないと,術中死や長期罹患が認められることがある.
  • 切除不能腫瘤はソマトスタチン誘導体,殺細胞性化学療法,チロシンキナーゼ阻害薬(スニチニブ),mTOR阻害薬(エベロリムス)によって治療される.これらの治療法はいずれも散発性膵NET患者の無再発生存期間を延長することが示されている.膵消化管神経内分泌腫瘍を有するMEN1患者に特化した臨床試験は行われていない.
  • 非機能性膵NETに対する治療には議論がある.一部の施設では1cm以上の病変には外科的切除を考慮する一方,他の施設では2cm以上と考えている.
  • 一部の患者では,潜在性の転移病変(画像検査で検出されない腫瘍)が最初の段階で認められる.

カルチノイド腫瘍

長期作用型ソマトスタチン誘導体がカルチノイド症候群にともなう症状を軽減するが[Tomassettiら2000],悪性化リスクは変化しない[Schnirerら2003].したがって,カルチノイドに対する治療は可能であれば外科切除である.
MEN1に伴う胸腺カルチノイドは,切除後1年以上経過観察できた症例では全例で再発していた [Gibrilら2003].
切除不能例や転移例では,放射線治療や化学療法(シスプラチン,エトポシド)が行われる[Obergら2008].

副腎皮質腫瘍

MEN1関連非機能性副腎皮質腫瘍の管理についてのコンセンサスガイドラインはない.径4 cm以下の副腎皮質癌も知られてはいるものの,腫瘍が4 cmを超えると悪性化の危険が高まる[Thakkerら2012].4 cmを超える腫瘍や1〜4 cmでも非典型的もしくは悪性を疑う画像所見を認める時,6ヶ月の間に明らかに腫瘍増大を認める時は,手術が推奨される[Langerら2002,Schaeferら2008,Gatta-Cherifiら2012].

一次病変の予防

MEN1において悪性腫瘍発生のリスクが高い臓器は,十二指腸,膵,肺(気管カルチノイド)であり,(予防的)切除には向いていない.

MEN1で唯一行える予防的手術は,胸腺カルチノイド予防のための胸腺切除である[Brandiら2001].原発性副甲状腺機能亢進症の頸部手術に際しては,男性,特に喫煙者の場合や胸腺カルチノイドの血縁者がいる場合には,予防的胸腺摘出を考慮すべきである[Ferollaら2005].

二次病変の予防

術後副甲状腺機能低下症.副甲状腺亜全摘術もしくは全摘術の翌日に測定する副甲状腺ホルモン(PTH)濃度は残存副甲状腺の機能を評価するよい指標となる[Debruyneら1999,Mozzonら2004].血清カルシウム濃度の反復測定も有用であり,血清PTH濃度の測定よりも安価である[Debruyneら1999].

副甲状腺の自家移植後は血清PTH濃度の測定は術後2か月以降に行い,その後は年1回行う.血清PTH濃度の測定は,移植した腕と反対の腕の両方で同時に行うべきである.この方法によって医師は移植組織の機能と再発の可能性の両方をモニターすることができる.
術中高血圧クリーゼ.MEN1で褐色細胞腫を生じることはまれであるが,褐色細胞腫を診断し治療するために,術前の尿中カテコラミン測定は適切である.これは,褐色細胞腫は手術中に急激な血圧上昇をきたし,危険で時に致死的となる可能性があるためである.

定期検査

MEN1病的バリアントを有するが無症状の人,あるいはMEN1関連腫瘍のリスクがある人(MEN1が明らかで両親も罹患しているが分子遺伝学的検査を受けていない)に対しては,生化学検査と画像検査による定期検査が勧められる.検査は小児期早期に開始し,これを生涯継続する.悪性化の可能性がある神経内分泌腫瘍の早期発見,早期治療は臨床経過や生命予後を改善する.こうした検査は臨床症状が現れるよりも10年早く腫瘍を見つけることが可能で,早期治療を可能にする[Bassettら1998].

最小限の定期検査プログラム 1

すでにMEN1を有する人,あるいはMEN1病的バリアントが明らかとなっている人2,3

  • 生化学的検査
    • 年1回,項目ごとの開始年齢は以下のとおり.
      • 血清プロラクチン濃度,IGF-1,空腹時血糖,インスリン:5歳から2
      • 空腹時アルブミン補正血清カルシウム及び/または血清イオン化カルシウム濃度,他の膵NETに対するクロモグラニン-A,膵ポリペプチド,グルカゴン,血管作動性腸管ペプチド:8歳から2
      • 空腹時血清血清ガストリン:20歳から2
    • 考慮すべき項目:空腹時血清インタクトPTH
  • 画像検査
    • 項目別に以下の開始年齢から3〜5年ごと:検査の間隔は腫瘍発生を示唆する生化学的所見および/またはMEN1関連腫瘍の自他覚症状の有無による.
      • 頭部MRI:5歳から2
      • 腹部CTまたはMRI:20歳から 2
    • 考慮すべき項目:毎年の胸部CT,ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(SRS)オクトロイドスキャン

注:

  1. Brandiら[2001], Thakkerら [2012]
  2. International Guidelines for diagnosis and Therapy of MEN Type 1 and Type 2 [Brandiら2001]およびClinical Practice Guidelines for MEN Type 1 [Thakkerら2012]による.
  3. 臨床的疑いや個別の所見に基づいて調整できる.

遺伝学的状況が不明でMEN1のリスクが50%の人

生化学的検査.年1回.項目ごとの開始年齢は以下のとおり.

  • 血清プロラクチン:5歳から
  • 空腹時アルブミン補正血清カルシウム及び/または血清イオン化カルシウム:10歳から
  • 空腹時血清インタクトPTH:10歳から
  • 空腹時血清ガストリン:20歳から

リスクのある親族に対する検査

罹患している血縁者に生殖細胞系列にMEN1病的バリアントが同定されている家系では,リスクのある家族に対する分子遺伝学的検査が行える[Lamimoreら2004].

MEN1病的バリアントに対する分子遺伝学的検査の実施が不可能な場合,また有用な情報が得られない場合には,50%のリスクがある人(MEN1罹患者の一度近親者)は定期的な検査を行うべきである(「定期検査」の項を参照).

リスクのある血縁者の検査に関する問題と遺伝カウンセリングの目的については「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

妊娠管理

MEN1はまれな疾患であるため,妊娠中の罹患者の健康管理についての特別なガイドラインはない.

母体の副甲状腺機能亢進症は,その原因にかかわらず,妊娠中の子癇のリスクを高める[Hiltinら2009].原発性副甲状腺機能亢進症の母から生まれた子の役50%は新生児低Ca血症を呈する[Kortら1999].その他の新生児合併症としては,子宮内発育不全,早期産,永続的副甲状腺機能低下症がある[Diaz-Sotoら2013].

妊娠7年前に副甲状腺全摘術を受け,妊娠中もカルシウム製剤とビタミンDの補充と舞対のモニタリングで管理されていた,分子遺伝学的に確定したMEN1を有する29歳女性の報告がある.彼女は下垂体ミクロアデノーマと膵島腫瘍も有していた.妊娠は合併症なく経過し,満期で健康な児を分娩した.児には特に合併症を認めなかった[Daglarら2016].

研究中の治療法

下垂体腺腫.下垂体PRL産生腫瘍を発症するMEN1の動物モデルで,抗VEGF-Aモノクローナル抗体であるG6-31単剤の研究が行われた.腫瘍増大はMRIで評価し,細胞切片における血管密度が評価された.治療群では腫瘍増殖抑制による有意な腫瘍の倍加時間の延長と血清プロラクチン濃度の低下が認められたが,対照群では認められなかった.さらに,治療によって膵島腫瘍の血管密度の有意な減少が認められた.これらの所見は,VEGF-A阻害がMEN1関連腫瘍を含む内分泌系良性腫瘍の非外科的治療となり得ることを示唆している[Korsisaaariら2008].

高分化型膵消化管腫瘍.

  • MEN1ではない患者を対象とした2つの臨床試験(PROMID研究,CLARINET研究)では,ソマトスタチン誘導体が無増悪生存期間を有意に延長する結果が得られた[Caplinら2014,Rinkeら2009].
  • あるオクトレオチドLARの臨床研究では,MEN1患者でも同等の効果が得られた.著者らはNETを有するMEN1患者に対して,悪性化と身体状況の悪化のリスクを低減するために,早期のソマトスタチン誘導体治療を提唱している[Ramundoら2014].
  • 欧州神経内分泌腫瘍学会(ENETS)は,膵NETを有するMEN1患者を対象に,無治療群に対するソマトスタチン誘導体の効果を明らかにするためのランダム化前向き試験を計画している.この研究は2016年6月に開始され,2022年6月に終了予定である[Selberherr A, Niederle B, およびENENS研究拠点参加者].
  • ENETSはまた,MEN1の非機能性膵NETに対するソマトスタチン誘導体と無治療の多施設共同比較試験(SANO)を主導している.

ペプチド受容体核医学治療(PRRTは放射性同位元素(イットリウム-90,ルテチウム-177)でラベルしたソマトスタチン誘導体を,ソマトスタチン受容体の特異性を利用して選択的に膵消化管NETに作用させるものである.
奏効率は15−35%と報告されているが,腫瘍のタイプと用いられる核種によって異なる[Kwekkeboomら2011,Nikolasら2011,Ezziddinら2014].MEN1に伴うNETに特化した研究はない.

分子標的治療

  • エベロリムスは経口mTOR経路阻害薬で,進行性の低分化もしくは中等度分化膵NETに対して用いられる.mTORは細胞生存,増殖および運動を制御する.最近行われた,410例を対象とした国際多施設共同二重盲検第III相試験では,mTOR経路阻害薬による無増悪生存期間の中央値の延長が示された.この研究では治療を受けた患者のMEN1に関する遺伝学的背景には言及していない[Yao2ら2011].
  • スニチニブはVEGF受容体を標的としている.進行性膵NETはVEGF受容体を高レベルで発現しているおり,治療に用いられる.171例を対象とした多施設共同二重盲検第III相試験では,スニチニブによる無増悪生存期間の中央値の延長が示された.この研究ではMEN1患者が2名だけ参加していたが,両者ともプラセボを投与されていた[Raymondら2011].

さまざまな疾患や症状に対する臨床試験の情報については,ClinicalTrials.govを参照のこと.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

MEN1は常染色体優性形式で遺伝する.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • MEN1と診断された人の約90%には罹患した親がいる.
  • 患者の約10%はde novoMEN1病的バリアントによる.
  • 明らかにde novo病的バリアント保有患者の両親の評価に遺伝学的検査を含むことが推奨される.
  • もし発端者に認められた病的バリアントが両親のいずれにも認められない場合,この理由としては,発端者に生じたde novo変異もしくは親の生殖細胞モザイクが考えられる.理論的にはありうることだが,まだ生殖細胞モザイクの例は報告されていない.
  • MEN1と診断された患者の約90%には罹患した親がいるが,家族歴は陰性であることがある.これは家族が本疾患を認識していない,罹患した親が発症前に早期に死亡した,親の発症が子よりも遅いなどの理由による.したがって,発端者の両親に対wする分子遺伝学的検査を行わない限り,家族歴が陰性であることは確定できない.

発端者の同胞

発端者の同胞のリスクは発端者の両親の遺伝的状況によって異なる.

  • 発端者の親が罹患しているか,病的バリアントを保有している場合,同胞のリスクは50%である.
    • 発端者に認められた病的バリアントがいずれの親のDNAでもみられない場合には,親の生殖細胞モザイクとde novo病的バリアントが考えられる.これまでに生殖細胞モザイクが証明された例はないが,可能性としては否定できない.
    • もし発端者の両親がMEN1遺伝学的検査を受けておらず,臨床的にも罹患していない場合,発端者の同胞のリスクは明らかに低い.臨床的に発症していない両親の子であっても,両親の浸透率が低かったり理論的なモザイクの可能性があるため,それでもMEN1のリスクが上昇している.

発端者の子 

MEN1に罹患した人の子はそれぞれ50%の確率でMEN1病的バリアントを受け継ぐ.

他の家族

他の家族のリスクは発端者の両親の遺伝学的状況によって異なる.もし(片)親が罹患している,および/または病的バリアントを有している場合は,その家族にもリスクがある.

遺伝カウンセリングに関連した問題.

早期診断および治療目的でリスクのある血縁者を評価する際の情報については,「管理」,「リスクのある血縁者の評価」の項を参照.

リスクのある無症状の家族の検査

MEN1病的バリアントが同定された患者のすべての一度近親者に対して,分子遺伝学的検査を行うことが強く推奨される.リスクがある無症状の血縁者に対する検査はできるだけ速やかに行うべきであり,これにより,病的バリアント陽性の場合,適切な臨床的サーベイランスを受けることが可能になる(臨床的マネジメントの項参照).遺伝学的検査の前に,家系内のすべてのリスクのある血縁者に対して教育と遺伝カウンセリングを提供するのが適切である.

遺伝学的がんリスク評価とカウンセリング

遺伝学的検査の有無にかかわらず,がんリスク評価の過程でリスクのある個人を特定することに伴う医学的,心理社会的,および倫理的問題については,“Cancer Genetics Risk Assessment and Counseling-for health professionals”を参照のこと.

明らかなde novo病的バリアントを保有する家族に対する配慮

常染色体優性遺伝性疾患の発端者の両親が原因遺伝子に病的バリアントを有していない場合には,患者はde novo変異によって発症した可能性が高い.しかし,考え得る非医学的説明として,父もしくは母がお異なる場合(生殖補助医療など)や明かされていない養子縁組などが挙げられる.

家族計画

  • 遺伝リスクの判定および出生前検査についての検討は妊娠前に行われるのが望ましい.同様に,リスクのある無症状の家族の遺伝学的状況を確認するための検査を行うかどうかは妊娠前に判断することが最適である.
  • 罹患しているまたはリスクのある若年成人や遺伝カウンセリング(子供への潜在的リスクや生殖医療の選択肢の検討を含む)の実施が適切である.

DNAバンクは将来使用する可能性に備えてDNAを保管することである.検査方法および我々の遺伝子,アレル変異体,および疾患に対する理解が今後進歩する可能性が高いため,罹患者DNAのバンクへの寄託を考慮すべきである.

出生前検査および着床前遺伝学的診断

MEN1病的バリアントが罹患者の家族に同定されれば,リスクがある妊娠についての出生前検査およびMEN1についての着床前遺伝子診断が可能である.

出生前検査の実施について,特に早期診断ではなく妊娠中絶目的で検査を考慮する場合,医療専門家の間でも,また家族内でも意見が異なることがある.ほとんどの医療施設は出生前検査実施の決断は両親の選択にゆだねるとしているが,この問題については注意深い検討が求められる.


関連情報

GeneReviewsのスタッフは,この疾患患者およびその家族の便益のために,以下の疾患特異的および/またはアンブレラサポート組織および/またはレジストリを選択した.GeneReviewは他の組織から提供された情報についてその責を負わない.選択条件関する情報についてはここをクリック.

  • Association for Multiple Endocrine Neoplasia Disorders (AMEND)
    The Warehouse
    No 1 Draper Street
    Tunbridge Wells Kent TN4 0PG
    英国
    電話:+ 44 (0)1892 516076
    Eメール:info@amend.org.uk
    www.amend.org.uk
  • Associazione Italiana Neoplasie Endocrine Multiple (AIMEN 1 & 2)
    Corso Francia, 220/a
    イタリア
    電話:39 800 177 526
    ファックス: 39 0331 983343
    Eメール:info@aimen.it
    www.aimen.it
  • Medline Plus
    多発性内分泌腫瘍(MEN)1型
  • My46 Trait Profile
    多発性内分泌腫瘍1型
  • National Endocrine and Metabolic Diseases Information Service
    国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)のサービス
    6 Information Way
    Bethesda MD 20892–3569
    電話:888-828-0904 (toll-free); 866-569-1162 (toll-free TTY)
    ファックス:703-738-4929
    Eメール:endoandmeta@info.niddk.nih.gov
    多発性内分泌腫瘍1型
  • National Library of Medicine Genetics Home Reference
    多発性内分泌腫瘍
  • NCBI Genes and Disease
    多発性内分泌腫瘍
  • AMEND研究レジストリ
    The Warehouse
    Draper Street
    Tunbridge Wells Kent TN4 0PG
    英国
    電話:+44 1892 516076
    Eメール:jo.grey@amend.org.uk
    GENレジストリ
  • 訳注:日本では当事者会として「むくろじの会」が活動している.
    http://men-net.org/mukuroji/index.html

分子遺伝学

分子遺伝子学の項,およびOMIMの表に記載されている情報は GeneReviewの他の記載と異なることがある.表にはより最近の情報が含まれていることがある.—ED

表A.多発性内分泌腫瘍1型:遺伝子およびデータベース

遺伝子 染色体遺伝子座 タンパク 遺伝子座特異的
データベース
HGMD ClinVar
MEN1 11q13.1 Menin MEN1 database MEN1 MEN1

データは以下の参照標準から収集した:遺伝子:HGNCから,染色体遺伝子座:OMIMから,タンパク質:UniProtから.データベースの記述について(遺伝子座特異的,HGMD,ClinVar)のリンクはここをクリック.

表B.多発性内分泌腫瘍1型に関するOMIMエントリ(全文はOMIM参照)

131100 多発性内分泌腫瘍1型;MEN1
613733 MEN1遺伝子; MEN1

分子遺伝学的病因

遺伝したもしくはde novoに発生した機能喪失型MEN1病的バリアントに後天的な体細胞バリアントが加わることにより,クローン増殖をきたすことから,MEN1がKnudsonの2ヒット理論に沿う腫瘍抑制遺伝子であることが確認される.

遺伝子の構造MEN1は10エクソンから成り,エクソン1およびエクソン2と10の一部はメニンタンパク質に翻訳されない.MEN1は長さが2.8 kbのmRNA転写産物をコードする.まれに,コード領域ではない5'非翻訳領域に多型性を呈するmRNA転写産物が報告されている[Owensら2008].遺伝子およびタンパク質の詳細については,表A「遺伝子」参照.

病的バリアント1000種類以上の生殖細胞系列バリアントが報告されており,そのうち200以上は病的バリアントである [Lemos&Thakker 2008,Concolinoら2016].病的バリアントは以下が含まれる.

  • 〜41% フレームシフト
  • 〜6% インフレーム欠失/挿入
  • 〜20% ミスセンス
  • 〜23% ナンセンス
  • 〜9% イントロン

正常遺伝子産物610のアミノ酸からなるメニンは,カルボキシル末端付近に3つの核移行シグナル(NLS)を有する.メニンは他のヒトタンパク質との相同性を示さない.

メニンは主に核に存在する[Agarwalら2004,Laら2007].メニンのC末端部は,遺伝子発現の制御に不可欠でNLSと重複するシーケンスにコードされる[Laら007].核移行が障害される病的バリアントについての記載がある[Tataら2016].

メニンはあらゆる組織に発現し,おそらくDNA複製や修復,転写機構において組織特異的な機能を担っている.メニンは,主に以下の3つの機序による細胞増殖抑制を通して腫瘍化を抑制すると考えられている.

  • 転写因子(JunD,NF-kB,PPARgammma,VDRなど)と直接相互作用し,転写を誘導もしくは抑制する
  • さまざまなヒストン修飾酵素(MLL,HDACs,EZH2)と相互作用する
  • 遺伝子プロモーターと直接相互作用し,転写因子そのものとして作用する

欠失変異体に関する研究では,どちらのタンパク質にも相互作用領域が認められていることから,メニンはJunDが介在する転写活性を抑制する.対照との比較において,メニンはJunDによる転写を抑制し,MEN1病的バリアントをヘテロで有する患者から得たリンパ球はセントロメアの早期分離とアルキル化剤への高感受性を示す.したがって,メニンはDNA損傷後の細胞分裂に対する抑制的調整因子として機能している.

メニンは直接サイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)遺伝子であるCDKN1B(p27をコードする)やCDKN2C(p18をコードする),さらにおそらく他のCDKIの発現を直接制御している[Karnikら2005,Milneら2005].この仮説と一致して,膵島におけるH3 K4メチル化およびp18とp27の発現がメニン依存性であることが示されている[Karnikら2005].p18とp27を同時にノックアウトしたマウスでは[Scacheriら2006],MEN1やMEN2に類似しかついずれかをノックアウトした場合に比べてずっと早い腫瘍発生がみられる.ゲノム上で何百か所ものメニン結合部位がプロモーター領域や遺伝子の3’端付近,または遺伝子内で同定されており,メニンが他の遺伝子に対しても転写を制御している可能性が示唆されている[Agarwalら2007].

マイクロRNAのmiR-24-1とMEN1 mRNAとの相互作用が報告されている[Luzi&Brandi 2011].Luziら(2012)は,MEN1の野生型アレルが保持されている状態下で,MEN1副甲状腺腺腫組織に発現するメニンとmiR-24-1との間に負の相関を認めた.さらに,ChIP解析ではメニンタンパクとmiR-24-1プロモーターとの直接の関係が示された.いくつかの研究が,Knudsonの2ヒット仮説を裏付けるmiR-24-1とメニンタンパクとの間の「ネガティブフィードバックループ」の証拠を示しており,MEN1の組織特異的腫瘍発生の説明を可能にしている[Luziら2012a, Vijayaraghavanら2014].

さらに,Ouyangら(2015)は,ラットの腸上皮細胞でMen1 mRNAはマイクロRNA-29b(miR-29b)に標的とされ負に調節されていることを報告し,miR-29bがMen1 mRNAのメニンタンパクへの翻訳を抑制し,小腸上皮細胞においてアポトーシスを減少させ腸上皮の恒常性に影響を及ぼすことを示した.

メニンの生理学的作用は他の領域でも示されている.

  • 骨成長
    • 骨芽細胞の早期分化(Smad1とSmad5タンパクの相互作用を通して)[Sowaら2003]
    • 骨芽細胞の後期分化の阻害(TGFβ-Smad3経路を通してBMP2-Smad1/5-Runxカスケードを負に調節する)[Sowaら2004]
    • ヒト脂肪組織由来幹細胞から骨芽細胞系への分化においてSMAD1タンパクとマイクロRNA26aの発現の両者の発現を直接制御[Luziら2012b]
  • 造血 リンパ前駆細胞の制御[Naitoら2005,Chenら2006,Casliniら2007,Maillardら2009].
    興味深いことに,野生型メニン(MEN1疾患由来変異ではない)は物理的にp53と相互作用することや,インスリノーマ細胞における異所性メニン発現によりガンマ線照射誘発性アポトーシス,p21発現,増殖阻害を促すことが示されている[Bazziら2008].しかしながら,多くのメニンの相互作用経路が報告されてはいるものの,メニン依存性腫瘍化に関わっているのは少数の基本的な分子経路のみと思われる.

異常遺伝子産物 生殖細胞系列あるいは体細胞における,ナンセンスおよびほとんどのフレームシフトMEN1病的バリアントは,NLSを欠くことで核移行が障害され,これによりメニンの機能の喪失につながると予測される.

スプライス部位の病的バリアントは異常に処理されたmRNAを形成し,多くの場合早期終止コドンを伴うフレームシフトを誘発する.

ミスセンス変異体バリアントは,メニンと相互作用するタンパク質のパートナーに変化をもたらすことがあり,そのため,メニンの腫瘍抑制作用が妨げられることがある[Luzi & Brandi 2011].他のミスセンス変異体によりではタンパクの安定性が損なわれたり,タンパク分解が増強されたりすることがある.

腫瘍抑制機序の知見も結合パートナーの同定の知見も,正常組織や腫瘍組織のメニン作用の最終的な経路の確立には至っていない[Agarwalら2004].

がんおよび良性腫瘍

Arnoldら(2002)は,体細胞変異および/または散発性副甲状腺腫の15%〜20%に認められる両方のMEN1アレルの欠失に関わるあるクローン変化を同定した.これらの病的バリアントは,MEN1がコードする領域全体に散在しており,ホットスポットはみられない.さらに,散発性内分泌腫瘍の5%〜50%では,MEN1が認められる遺伝子座11q13のヘテロ接合性の喪失(LOH)が示されている[Friedmanら1992,Heppnerら1997].


更新履歴

  1. GeneReviews著者: Alberto Falchetti, MD, Francesca Marini, PhD, Maria Luisa Brandi, MD, PhD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学遺伝子診療部)
    GeneReviews更新日: 2005.8.31  日本語版最終更新日: 2006.5.5
  2. GeneReviews著者: Alberto Falchetti, MD, Francesca Marini, PhD, Maria Luisa Brandi, MD, PhD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学遺伝子診療部)
    GeneReviews更新日: 2010.3.2.  日本語版最終更新日: 2010.3.25
  3. Gene Review著者:Francesca Giusti MD, Francesca Marini, PhD, Maria Luisa Brandi, MD, PhD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)  
    Gene Review 最終更新日: 2012.9.6  日本語訳最終更新日: 2013.2.2
  4. Gene Reviews著者: Francesca Giusti, MD, PhD., Francesca Marini, PhD., Maria Luisa Brandi, MD, PhD
    日本語訳者: 櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    AMED「医療現場でのゲノム情報の適切な開示のための体制整備に関する研究」班(研究開発代表者:小杉眞司) Gene Reviews 最終更新日: 2017.12.14. 日本語訳最終更新日: 2018.10.1 in present)

原文: Multiple Endocrine Neoplasia Type 1(MEN1)

印刷用

grjbar
GRJ top > 遺伝子疾患情報リスト