オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC欠損症)
(Ornithine Transcarbamylase Deficiency)

[Synonyms:Ornithine Carbamoyltransferase Deficiency, OTC Deficiency]

Gene Reviews著者: Uta Lichter-Konecki, MD, PhD, Ljubica Caldovic, PhD, Hiroki Morizono, PhD, Kara Simpson, MS, CGC, Nicholas Ah Mew, MD, and Erin MacLeod, PhD, RD, LD.
日本語訳者: 瀬戸俊之,堀田純子,山下朋代,酒井恵利,馬場遥香,小野智愛(大阪公立大学大学院医学研究科臨床遺伝学・発達小児医学)

GeneReviews最終更新日: 2022.5.26.  日本語訳最終更新日: 2022.10.16.

原文 Ornithine Transcarbamylase Deficiency


要約

疾患の特徴 

オルニチントランスカルバモイルリン酸欠損症(OTC欠損症)は重症新生児疾患として発症しうるが(まれに女児もあり)、新生児期を過ぎても男性女性ともに起こりうる(遅発型、もしくは部分欠損症として知られている)。

たとえ軽症型であっても、いかなる年齢においても人生の様々なライフステージにおけるストレス要因によって、生命の危機にいたるような高アンモニア血症をきたしうる。OTC欠損症患者にとって、典型的な神経精神科的合併症は、発達遅延、学習障害、知的能力障害、注意欠如・多動症、実行機能障害が含まれる。

診断・検査 

男性発端者におけるOTC欠損症の診断は、臨床症状と検査所見に合致することに加えて、以下に示すものの少なくとも一つを満たすことによってなされる。

女性発端者におけるOTC欠損症の診断は、通常、臨床症状と検査所見に合致することに加えて、以下に示すものの少なくとも一つを満たすことによってなされる。

臨床的マネジメント 

症状に対する治療
治療は代謝性疾患専門の小児内科医もしくは生化学に長けた遺伝専門医、そして先天代謝異常症専門栄養士によって最良の治療が提供される。高アンモニア性の昏睡の治療は、OTC欠損症の治療経験のある専門治療センターで先天代謝異常症によってコーディネートされたチームによってもたらされるべきである。急性期の治療の軸となるのは、200μmol/L以下を目標に血漿中アンモニア値を速やかに下げることである(必要であれば透析治療も考慮する):代替経路を介した過剰窒素の排泄を促すアンモニアスカベンジャー薬の使用;異化作用の逆転:神経障害リスクの軽減。長期治療の目標は高アンモニア血症のエピソードを回避し、成長発達を促すことである。新生児期発症の重症例の場合には、さらなる高アンモニア血症クリーゼによる神経発達遅滞回避のために、通常は肝移植が考慮される。発達遅滞、知的障害を含むOTC欠損症の合併症に対しては、肝疾患徴候のモニタリングによる標準的な合併症ケアの方法に従って、治療が行われる

二次的な合併症の予防
クリプトスポリジウムが給水に存在する可能性がある地域では精製水のみを飲用する。

サーベイランス
治療の開始時は2週間毎の血漿アンモニア値とアミノ酸の定期検査を行い、徐々に間隔を開けていく。ビタミンとミネラル欠乏に関しては、年1回、もしくは代謝専門の栄養士の指示に従って行う。症状による肝機能障害の評価は3か月に1度、異常がみられたときはそれ以上の頻度で行う。発達マイルストーンに異常がみられるときは心理発達検査を行う。

避けるべき薬品・環境:
バルプロ酸、ハロペリドール、空腹、ステロイド剤の全身投与、精神的・身体的ストレス

血縁者のリスク評価:
OTC欠損症に関する病的バリアントが明らかになっている家系内においては、出生前診断がなされていないat riskの新生児は、男女何れにおいても適切な治療とサーベイランスを始めるためにできる限り速やかに遺伝子検査が施行されることが望ましい。もしも、家系内で病的バリアントが同定されていなければ、生化学解析(血漿中アミノ酸解析やアンモニア値)、アロプリノール負荷試験後(年長者)と(あるいは、男児の場合は)肝組織におけるOTC酵素活性測定の施行が考慮される.このような予防的な各種検査は新生児期に開始、本疾患の除外診断がなされるまで継続されないといけません。

妊娠管理:
ヘテロ接合性保因者女性は妊娠中から特に産後に異化亢進をきたすリスクがある。発症者の場合には妊娠中のニーズに適応される妊娠前のプロトコルに従って妊娠管理(治療)が行われる必要がある。無症状者の場合は、分娩後から産褥期にかけて相応の異化亢進を避けるための対応が求められる。

遺伝カウンセリング 

OTC欠損症はX連鎖性形式で遺伝する。もし母親が発端者であればOTC遺伝子の病的変異を有している発端者ならば、いずれの妊娠においても胎児に遺伝する確率は50%である。

病的バリアントを受け継いだ男児はOTC欠損症を発症する。病的バリアントをヘテロ接合性に有する女性の場合は疾患に関連した症状で発症するかも知れないし、そうでないかもしれない。OTC欠損症の男性は、娘に対しては必ず病的バリアントを継承するが、息子には継承しない。家系内でOTC欠損症の病的バリアントが確定していれば、血縁者のat risk女性に対するヘテロ接合性病的バリアント検出の遺伝子検査によって、(原理的に)妊娠時の出生前診断や着床前診断を可能にしうる。


診断

オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症の診断基準は、希少疾患臨床研究ネットワークの尿素サイクル異常症コンソーシアムが実施した尿素サイクル異常症の縦断研究(NCT00237315)により定められている[Tuchman et al 2008]。

OTC欠損症の患児は、新生児スクリーニングの結果が出る前に重症化する可能性があるが、米国の8つの州および準州におけるユニバーサル・スクリーニングで診断されることが多く、さらに3つの州でも報告がある [Vasquez-Loarte et al 2020]。新生児スクリーニングパネルに含まれる疾患については、保健省のウェブサイトから米国の州・準州別に検索できる。

シナリオ1:新生児マススクリーニング(newborn screening: NBS)の結果に異常がある場合

現在、米国におけるOTC欠損症のNBSは、主に乾燥沪紙血を用いたシトルリン定量分析に基づいている。シトルリン単独で測定する場合と検査精度を向上するために他の生化学マーカーの比を用いる場合がある[Merritt et al 2018]。Messinaらは、尿素サイクル異常症と健常者を区別するために、グルタミンとグルタミン酸の比を使用することを推奨している[Messina et al 2021]。

スクリーニング検査で基準値外のシトルリン値は陽性とみなされ、フォローアップ検査として血漿アンモニア、血漿アミノ酸プロファイル、尿有機酸プロファイル、尿オロト酸の定量を含む生化学検査が必要とされる。

それらのフォローアップ生化学検査からOTC欠損症の可能性を示唆する所見が得られた場合、さらに確定診断のための検査が必要となる(“診断の確定”の項を参照)。

OTC欠損症のスクリーニングにおいて、現行のNBSで用いられている方法は感度および特異度に幅があり、NBSの結果を受け取った反応としての医学的対応の度合いも様々である。しかし、如何なる場合でも、NBSで異常が認められ、かつ予期せぬ神経症状や食欲不振を認めた場合は、迅速に医療対応を行い血漿中アンモニアを測定する必要がある。アンモニアが上昇した患者はタンパク質摂取制限、代替経路薬、シトルリン/アルギニンおよび/または腎臓補充療法を必要とする場合がある。

シナリオ2:非典型的な症状を呈する発症者、または新生児期に発症している未治療の患者

通常、OTC欠損症の症状を呈する者は遅発型OTC欠損症に伴う非典型的な症状か、もしくは、下記のいずれかの理由で未治療である新生児期発症OTC欠損症患者のどちらかであるだろう。

診断をサポートする(しかし非特異的な)臨床所見やあらかじめ確認しておくべき検査所見としては、以下が挙げられる。

臨床所見

正期産で生まれた男児

小児、思春期、成人(男性または女性)

事前確認しておくべき検査所見等

血漿アンモニア濃度の上昇:
急性脳症を発症しているときはアンモニア値は通常200μmol/ L以上であり、しばしば500-1,000μmol/Lを超える。

注:症状を引き起こしうる血漿アンモニア濃度は個人差があるが、一般的には100μmol/L以上である。第2期昏睡では血漿濃度は200~400μmol/L、第3~4期昏睡では500μmol/L以上といわれている[Posner et al 2019]。これらはおおよその値であり、アンモニア濃度上昇値についてはかなりの幅をもって観察されるだろう。

血漿アミノ酸解析の異常:
グルタミン濃度が高く(通常800μmol/L以上)、シトルリン濃度が(極端に)低い場合(血漿アンモニア濃度に関わらず、例えば一桁台)、N-アセチルグルタミン酸合成酵素(NAGS)欠損症、カルバモイルリン酸合成酵素I(CPSI)欠損症、OTC欠損症という尿素サイクル異常症が示唆される。

尿中有機酸(UOA)分析におけるオロト酸上昇:
随時尿検体におけるオロト酸濃度の上昇(定量値では20μmol/mmol creatinine以上 [Tuchman et al 2008])。

臨床状態に関連する血液ガス所見

予期せぬ血中尿素窒素(BUN)低値
BUNの低値、あるいは脱水などBUNが上昇すべき状態でもBUNが正常もしくは低い場合、尿素産生の減少をもたらす尿素サイクル異常症が基礎疾患としての存在が示唆される。

注:これらの代謝物の変化はOTC欠損症に特異的ではないため、OTC欠損症の診断確定または除外するには追加検査が必要である("診断の確定"を参照)。

診断の確定

男性発端者
OTC欠損症の診断は、示唆的な臨床所見及び検査所見を伴い、以下のうち少なくとも1つを満たす男性発端者において確定される。

注:(1)ACMg/AMP臨床変異解釈ガイドラインによると、"pathogenic variants" と"likely pathogenic variants"という用語は臨床的には同義で、両方とも診断的意義が考慮され、最終診断に利用されうる[Richards et al 2015]。この章における"pathogenic variants"(病原性バリアント)という用語への言及については、あらゆる"likely pathogenic variants"も含むという理解になります。(2)ヘミ接合性に意義不明のOTCバリアント(variant of uncertain significance :VUS)が同定された場合は、この疾患の診断は確定されず、否定もできない。

女性発端者
OTC欠損症の診断は通常、示唆的な臨床所見および検査所見を呈し、以下のうち少なくとも1つを満たす女性発端者において確定される。

注:(1)女性の場合、偽陰性となる可能性があるため、診断確定のための肝生検は推奨されない。(肝臓におけるOTC酵素活性についての項参照)。(2)ACMg/AMP臨床変異解釈ガイドラインによると、"pathogenic variants" と"likely pathogenic variants"という用語は臨床的には同義で、両方とも診断的意義が考慮され、最終診断に利用されうる[Richards et al 2015]。この章における"pathogenic variants"(病原性バリアント)という用語への言及については、あらゆる"likely pathogenic variants"も含むという理解になります。(3)ヘテロ接合性にOTCに意義不明のバリアント(VUS)が同定された場合、この疾患の診断の確定も否定もできない。

分子遺伝学的検査のアプローチ

シナリオ1:新生児マススクリーニング(NBS)結果の異常。

NBSの結果及び他の臨床検査所見からOTC欠損症の診断が示唆される場合、分子遺伝学的検査法には単一遺伝子検査またはマルチ遺伝子パネルの使用が可能である。

マルチ遺伝子パネルの説明は、ここをクリック。遺伝子検査をオーダーする臨床医のためのより詳細な情報は、こちら

シナリオ2:非典型的な症状ですでに発症している遅発性OTC欠損症、または未治療の新生児期発症のOTC欠損症の患者
(このようなことが起こる原因として、NBSが未実施、NBSの結果が報告される前の発症、またはNBSの結果が偽陰性)。OTC欠損症が鑑別診断として考慮されなかった場合は、網羅的ゲノム検査(この解析ではどのような遺伝子が影響を及ぼしているかの決定に主治医は関与しない)が選択肢となる。エクソーム解析が最も一般的に用いられるが、ゲノム解析も可能である。

網羅的ゲノム検査の導入については、ここをクリック。ゲノム検査をオーダーする臨床医のためにより詳細な情報がこちら

表1オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症に用いる分子遺伝学的検

遺伝子1 方法 本法によって発端者に病原性バリアントが検出される割合2,3
OTC シーケンス解析4 ~80% 5, 6, 7
  遺伝子を標的とした欠失/重複解析8 5~10%5, 6
不明9 NA  
  1. 染色体遺伝子座およびびタンパク質については、表Aの遺伝子およびデータベースを参照のこと。
  2. この遺伝子に検出される対立遺伝子バリアントについては、Molecular Genetics for informationを参照のこと。
  3. この計算には含まれていないが、近接した遺伝子欠失を有する個体がさらに多数報告されている(遺伝子関連性疾患の項参照)
  4. シークエンス解析ではbenign、likely benign、of uncertain significance、likely pathogenicあるいはpathogenicという評価のバリアントが検出される。バリアントには、小さな遺伝子内欠失/挿入及びミスセンス変異、ナンセンス変異、及びスプライス変異が含まれる可能性がある。通常はエクソンまたは遺伝子全体の欠失/重複は検出されない。シークエンス解析の結果解釈における留意事項については、こちらをクリックしてください。
  5. 生化学的検査によりOTC欠損症(すなわち、尿中オロト酸増加、アロプリノール負荷試験陽性、肝生検でのOTC酵素活性低下、またはこれらの所見の組み合わせ)であることが確認されている患者[Caldovic et al 2015]。
  6. Caldovic et al[2015]のデータおよびOTC配列バリアントの公的に入手可能なデータベース(ClinVar, LOVD)に由来する。
  7. 生化学的にOTC欠損症であることが確認されている患者で、疾患原因となるバリアントがOTCの調節領域[Jang et al 2018]や深部イントロン領域[Kumar et al 2021]が報告されている。
  8. 遺伝子標的欠失/重複解析は遺伝子内欠失または重複を検出する。用いられる方法には、定量的PCR、long-range PCR、multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA)、および単一エクソンの欠失または重複を検出するためにデザインされた遺伝子標的マイクロアレイなどがある。遺伝子を標的とした欠失/重複検査では、単一のエクソンから全遺伝子におよぶ欠失を検出する。しかし、これらの方法では、大規模な欠失および/または隣接遺伝子の欠失の切断点は検出されない可能性がある(例えばDeardorff et al[2018]、Di Stefano et al[2015]、Gallant et al[2015]に記載されているもの)。
  9. 配列解析後に欠失/重複解析を行ったところ、生化学的にOTC欠損症(Tuchman et al 2008, Shchelochkov et al[2009], Caldovic et al[2015])と確認された患者の80~90%に分子欠損が検出された[Tuchman et al 2008, Shchelochkov et al 2009, Caldovic et al 2015]。OTC欠損症の表現型に関連するその他の遺伝子座は同定されていない。しかしその後、遺伝子検査が陰性の患者において、深部イントロン領域または調節領域に位置する病原性変異が同定されるようになった[Jang et al 2018, Kumar et al 2021]。

アロプリノール負荷試験

OTCの部分的欠損が疑われる男性および女性で、分子遺伝学的検査が正常であり、正常条件下での尿中オロト酸濃度が正常または境界域の場合、アロプリノール負荷試験を実施すべきである。アロプリノール投与後に20 μmol/mmol ・Crを超えるオロト酸排泄の著明な異常増加があれば診断的である[Tuchman et al 2008, Haeberle et al 2012]。アロプリノールを単回投与し、その直後から6時間ごとの4回、計24時間にわたり蓄尿を採取する。6時間毎のオロト酸濃度を解析する。
 
肝臓におけるOTC酵素活性

以前、OTC欠乏は診断のゴールドスタンダードであった[Tuchman et al 1989]。肝臓中のOTC酵素活性の解析は肝生検を必要とするため、現在はOTC欠損症が強く疑われる男性や、OTC病原性バリアントが認められない場合、またはアロプリノール投与では確定でない場合にのみ用いられている。

臨床的特徴

臨床症状

オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損は、男児で重症新生児として発症し、新生児後の発症(遅発性の発症と知られ、部分欠損としても知られる)は男女で見られる。女児の新生児期発症は稀である。
古い文献では、新生児期発症は全OTC欠損症の約60%を占めていた。その最初の8年間に、NICHDを支援する希少疾患臨床研究ネットワーク(RDCRN)の尿素サイクル異常コンソーシアム(UCDC)の縦断的研究では、新生児期発症のOTC欠損症患者の組み入れ割合は、新生児期以降に発症したOTC欠損症患者よりもかなり低かった。症候性OTC欠損症患者260名のうち、47例(18%)が新生児期に発症し(男性42例、女性5例)、213例(82%)が遅発性に発症していた(女性154例、男性59例)[Batshaw et al 2014]。この不一致は、比較的古い文献(診断されていない軽度の症状を有する場合は過小評価されている)および自然史研究結果(研究登録前に死亡した非常に重度の新生児期発症OTC欠損症患者が過小評価されている)の両方における確認バイアスの結果かもしれない。

新生児期発症OTC欠損症

重度のOTC欠損症を有する男性は出生時に無症状であるが、生後1週間以内(2~3日目が最多)に高アンモニア血症を発症し、吸啜不良、哺乳量減少、および筋緊張低下を伴い、その後嗜眠から傾眠および昏睡に進行する。過換気や無症候性/脳波上の発作を起こすことがある。OTC欠損症の新生児は、医療機関を受診するまでに、典型的には体温低下(低体温)、重度の脳症、および呼吸性アルカローシスを伴う破滅的な状態となる。
臨床所見および検査結果から尿素サイクル異常症の診断が裏付けられた場合、レスキュー療法を直ちに開始する(管理、症状の治療の項参照)。
高アンモニア血症性昏睡における新生児の予後は、アンモニア濃度上昇の持続期間に依存し、アンモニア濃度の値やけいれん発作の有無に依存しない[Msall et l 1984]。
新生児高アンモニア血症性昏睡からの救命に成功した後、重度の新生児期発症OTC欠損症の乳児は、低たんぱくおよび経口アンモニアスカベンジャーによる治療にもかかわらず、容易に再び高アンモニア血症になりうる。重度のOTC欠損症の新生児では、最大限のアンモニアスカベンジャーを実施しても、耐容量はたんぱく1.5 g/kg/日(成長に必要な最低量)のみであり、成長は3%Tileに沿うと考えられる。
新生児期のレスキュー治療後、重度の新生児発症の男児には、急速な成長によりたんぱく耐性が非常に高く、数か月間は代謝的に安定していても、高アンモニア血症のエピソードが頻繁に生じることがある。
一般的に生命を脅かす高アンモニア血症の発症を予防し、再発性の高アンモニア血症の脳への影響を回避し、生活の質を改善するために肝移植が必要である。
全体的な予後は、最初の高アンモニア血症クリーゼおよび持続する高アンモニア血症クリーゼ中の脳損傷の重症度および代謝バランスの維持および疾患の合併症に対処する長期治療の成功に依存する。

遅発性(部分的)OTC欠損症

部分的OTC欠損症のヘミ接合男性およびヘテロ接合女性は、乳児期から小児期後期、青年期、または成人期まで存在しうる[Ahrens et al 1996, Ausems et al 1997, McCullough et al 2000]。しばしば、乳児期に母乳から人工乳または完全人工乳(母乳に含まれるたんぱくは米国で製造された乳児用人工乳より少ない)に切り替えた際に、最初に症状が現れる。乳児は、一過性の嘔吐、嗜眠、易刺激性、発育不全、発達遅滞を示すことがある。これらはたんぱく質の回避を示し、それは食事摂取の詳細な評価によって実証できる。たんぱく質を多く含む食品の摂取が強いられると、症状が現れることがある。
新生児期以降に発症する小児、青年、成人が脳症になると、常軌を逸した行動、好戦的態度、せん妄(例えば、周囲の家族を認識できない、不明瞭な会話)を伴って、第2期の昏睡に至ることがある[Posner et al 2019]。これらの行動異常が緊急の医学的評価や精神医学的評価につながる場合は、医師の診察をうけることがある。
ストレス因子は、部分的OTC欠損症の患者で、どの年齢でも症状を来しうる。一般に、疾患が軽度であるほど発症が遅く、症状を誘発するために必要なストレス因子が強い。
非常に軽症の成人では外傷の手術後[Chiong et al 2007, Hu et al 2007]、高たんぱく食摂取中(例えばアトキンス食[Ben-Ari et al 2010])、産褥期(妊娠管理の項参照)、がん治療中の長期絶食後[Marcus et l 2008]、高用量全身コルチコステロイド治療中[Lipskind et al 2011]、発熱性疾患後[Panlaqui et al 2008]などに現れる。OTC欠損症患者において、バルプロ酸の投与により高アンモニア血症を発症することがあり[Arn et al 1990, Honeycutt et al 1992, Leao 1995, Oechsner et al 1998, Thaur et al 2006]、ハロペリドールの投与により高アンモニア血症クリーゼを来すことがある[Rubenstein et al 1990]。

ヘテロ接合女性

ヘテロ接合女性の表現型は無症候性から重度まで幅があり、再発性の高アンモニア血症および神経学的障害を伴うが、X染色体不活性化が良好か不良かによって異なる。ヘテロ接合女性の肝臓におけるOTC酵素活性量は、肝臓におけるX染色体不活性化のパターンに依存する[Yorifuji et al 1998]。したがって、ヘテロ接合女性では、肝細胞X染色体の不活性化に歪みが生じ、病原性OTCバリアントをもつX染色体よりも多くの肝細胞で活性化されている場合に、OTC欠損症の症状が現れる可能性がある[McCullough etal 2000, Yamaguchi et al 2006]。
以前は、ヘテロ接合女性の約15%で生涯の間に症状を発現すると考えられていた[Batshaw et al 1986]。ヘテロ接合女性の多くは軽度の症状を示し、たんぱく摂取が自己制限されており、症候性と診断されることはない。診断は、重度の罹患児を出産した場合や、母親の分子遺伝学的検査が行われた場合にのみ明らかになる。したがって、症候性女性の割合は、以前考えられていたよりも高い可能性がある。男性が新生児期以降に発症する場合、ヘテロ接合女性の家族における症状のリスクは、男性が新生児期に発症する重度疾患を有する家族よりもはるかに低い[McCullough et al 2000]。
最近の研究では、一部のヘテロ接合女性は症状に乏しい可能性が示唆されている。高アンモニア血症を発症したり、精神状態が変化したりすることはないかもしれないが、実際には実行機能や運動能力の障害など、認知能力に差がある可能性がある[Sprouse et al 2014, Anderson et al 2020]。

新生児期発症および遅発性発症の合併症

神経心理学的合併症典型的な神経心理学的合併症には以下のものがある。発達遅滞、学習障害、知的障害、注意欠如・多動症(ADHD)、実行機能、作業記憶、視運動統合および視知覚の障害[Waisbren et al 2015, Buerger et al 2019]、および感情・行動的問題[Waisbren et al 2015]。認知領域のスコアは独立しておらず、実際ある研究では、これらの知能スコアと密接に相関することが示されている[Waisbren et al 2016, Buerger et al 2019]。知能スコアはアンモニアのピーク値および高アンモニア血症エピソードの回数とも相関しており、これらは疾患の重症度の指標でもある[Buerger et al 2019, Posset et al 2019]。新生児期発症患者は、遅発性発症患者と比較してアンモニアのピーク値が高く、知能検査のスコアは低い[Buerger et al 2019]。

高アンモニア血症の生化学的根拠がなく、無症候性であると考えられたヘテロ接合女性でさえ、神経心理学的検査で正常IQを示した場合でも、さらなる精密検査で軽度の認知障害と実行機能および微細運動課題の障害を有することが示されている。これらの障害は、これらの個人が認知障害を受けている場合にのみ明らかになる可能性がある[Sprouse et al 2014, Anderson et al 2020]。

神経学的検所見高アンモニア血症性昏睡では、脳波(EEG)は徐波を伴う低電位を示し、バースト間隔の持続時間がアンモニア濃度の高さと相関するburst-suppression patternを含むことがある。けいれん発作は高アンモニア血症性昏睡でよく見られ、脳波検査でのみ検出されることがある。予後不良を示すものではない。しかし、尿素サイクル異常症の患者は、高アンモニア血症のエピソードとは無関係にけいれん発作を起こしやすい[Zecavati et al 2008, Wiwattanadittakul et al 2018]。

神経画像検査では、島周辺領域に高信号域を認める。重症例では、限局性拡散の進行が、島周囲領域から第一前頭葉、続いて頭頂葉、側頭葉、最終的に後頭葉へと明らかになることがある。極端な例として、制限された拡散は視床でも観察された[Bireley et al 2012]。遷延性昏睡後に生存した新生児には、脳室拡大、びまん性脳萎縮[Yamanouchi et al 2002, Takanashi et al 2003]、低吸収域の白質欠損、ならびに両側レンズ核および島領域およびローランド周囲領域の深部溝の損傷が見られることがある。
OTC欠損症およびCPS1欠損症では、代謝性脳卒中(尾状核および被殻を侵し、錐体外路症状に至る)が報告されているが[Keegan et al 2003, Takanashi et al 2003]、尿素サイクル異常症に典型的なものではない。

神経病理学的検査では、長期の昏睡後に死亡した小児において、脳室拡大を伴い皮質萎縮、顕著な皮質ニューロン消失、ならびに灰白質境界領域、基底核および視床の海綿状変化が認められた[Dolman et al 1988]。
神経学的転帰は、新生児期発症の乳児でも、昏睡の発症直後に治療を受ければ良好である。

消化管合併症

少数の高齢患者において、肝細胞癌が報告されていることから(例えば、66歳の症候性ヘテロ接合女性[Wilson et al 2012])、OTC欠損症は肝がんのリスク上昇に関連する可能性があることが示唆される。しかし、そのような結論を支持するデータは不十分である。

遺伝子型と表現型との関連性

一般には以下に述べるような遺伝子型と表現型との関連は存在する。注意すべき医学的問題(例えば新生児敗血症、あるいはその他の新生児期特有の代謝(異化)下)があれば、一般的に軽度の症状と関連するOTC遺伝子の病的バリアントを持っていても重度かつ早期発症を引き起こし、見かけ上、バリアントが重度の新生児発症疾患と関連しているように見えることがある。同様の例として、軽度で遅発性発症に関連するバリアントを有していれば(より軽度の症状に関連するのバリアントをヘテロ接合で有し、X染色体の不活性化の偏りがある女性を含む)は、強い環境ストレスにさらされると、人生のどの時期でも生命を脅かす重度の高アンモニア血症を経験する可能性がある。

一般的に:

浸透率

OTC欠損症の発症はヘミ接合体の男性では完全浸透である。
以下は、誤って不完全な浸透性の証拠と解釈されるかもしれないが、実際にはX染色体の不活性化と環境因子によって説明されるものである。

病率

OTC欠損症は最も一般的な尿素サイクル異常と考えられている(「尿素サイクル異常の概要」を参照)。
初期の推定では、OTC欠損症の有病率は生児14,000人に1人であった [Brusilow & Maestri 1996]。しかし、イタリア、フィンランド、オーストラリアのニューサウスウェールズにおけるOTC欠損症の発生率の他の調査では、それぞれ1:70,000、1:62,000、1:77,000生児という低い有病率であることが明らかになっている[Dionasi-Vici et al 2002, Keskinen et al 2008, Balasubramaniam et al 2010]。OTC部分欠損症の男女は年齢に関係なく症状が現れるため、有病率の数値は早期発症および最も重篤な症状に偏ってる。


遺伝学的な関連疾患

このGeneReviewで取り上げている以外の表現型は、生殖細胞系列の遺伝子内OTC病的バリアントと関連していることは知られていない。

OTCを含む遺伝子欠失

OTCを含む染色体領域は疾患遺伝子が多い領域である。したがって、OTCを含む大きな欠失を持つ個体は、X連鎖性慢性肉芽腫性疾患とOTC欠損症という命にかかわる2つの疾患と、さらに重大な疾患を持つ可能性がある。例えば:網膜色素変性症、McLeod神経赤血球症症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、眼窩心電症候群(OMIM 300166)[Deardorff et al 2008, Di Stefano et al 2015, Gallant et al 2015]など。欠失や再配列のブレイクポイントは個々人で異なる


鑑別診断

高アンモニア血症の新生児男児

呼吸性アルカローシスは UCD の典型的な所見であり、その存在は、高アンモニア血症やケトアシドーシスを呈する有機酸血症と UCD を明確に区別するものである。しかし、何日も昏睡状態にあった子供が末期になると、呼吸性アルカローシスではなくアシドーシスを呈することがある。

高アンモニア血症の小児、思春期、成人(男女問わず)


臨床的マネジメント

臨床的な管理方法は、尿素サイクル障害カンファレンスグループ [2001]およびHaeberle et al [2012]の出版物に記載されている。
診断評価で OTC 欠損が疑われる場合(例えば、高アンモニア血症、グルタミン高値、シトルリン低値~正常値、オロチン酸 尿症による)、直ちに代謝治療を開始する必要があります。
治療計画の策定と評価、患児とその家族の訓練と教育、および食事療法の副作用(栄養不良、成長障害など)の回避には、専門の代謝センターからの監督と専門知識を持つ複数のサブスペシャリストを含む集学的アプローチが必要である。

初期診断後の評価

OTC欠乏症と診断された患者の疾患の程度と必要性を確立するために、表2にまとめた評価(診断に至った評価の一部として行われていない場合)を行うことが推奨される。

表2オルニチン・トランスカルバミラーゼ(OTC)欠乏症の初診時に推奨される評価項目

評価 コメント
コンサルト
代謝疾患専門医、生化学・遺伝学者、代謝疾患専門管理栄養士へのコンサルテーション¹
  • 遺伝性代謝疾患の管理経験のある専門施設に転院する(強く推奨)。
  • 介護者に詳細な教育(疾患自然史、維持および緊急治療、予後、急性脳症クリーゼのリスク)を行うために、遺伝性代謝疾患の専門施設に短期入院することを検討する。
研究室での検査
  • 血漿アンモニア濃度
  • 血漿中アミノ酸分析
  • 栄養状態を反映する検査値(例:ビタミンD値、フェリチン、ビタミンB12など)
  • 肝機能検査(肝酵素、ビリルビン、アルブミン)
  • PT/PTT、フィブリノゲン
  • 腎機能検査(BUN、クレアチニン)
発達評価 年齢によっては、発達障害、神経心理学、心理学的評価などを受ける。
神経内科 発作がある場合、発作の管理のため。
コンサルト
心理士、ソーシャルワーカー
診断に対する理解を深め、親や患者の対処能力やリソースを評価するため。
遺伝学の専門家による遺伝カウンセリング² OTC欠乏症の性質、MOI、影響について被災者とその家族に知らせ、医療と個人の意思決定を促進するため。

MOI=遺伝形式

  1. 小児がOTC欠乏症と新たに診断された場合、近隣の病院と地域の小児科医にも知らせる必要がある。
  2. 臨床遺伝の医師、認定遺伝カウンセラー、遺伝看護師

症状に対する治療法

治療は、代謝性疾患専門医/生化学・遺伝学者と代謝疾患専門の栄養士が行うのがベストである。急性期には、以下のような治療が中心となる。

表3オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠乏症の急性期入院治療について

症状 治療法 配慮事項・その他
高アンモニア血症 血漿アンモニアを急速に低下させる。アンモニア濃度が上昇している状態は脳への毒性が強いため、≦200μmol/Lとする(診断が確定していなくても)。 アンモニア値を低下させるための最速の方法:腎代替療法
  • 小児では高アンモニア血症に対してCKRT(特にCVVHD)が推奨される。
    アンモニア濃度が1,000μmol/Lを超える場合の初期治療には、血流速30~50mL/minの高用量CKRTが推奨される。
    急速な悪化と脳浮腫の徴候により迅速なアンモニアクリアランスが必要な場合は、間欠的HDを推奨する。
    血中アンモニア濃度が200μmol/L未満の場合、安定化のために通常のCKRTが血液透析または高用量CKRTに続くことができる [Raina et al 2020]。
  • 年長の患者は、間欠的なHDまたは高用量CKRTを受けることができる&安定化のためのCKRTに切り替えることもできる。
注:腹膜透析はアンモニアのクリアランスがかなり低いので、血液透析が広く普及している場合には推奨されない。
アンモニアスカベンジャーによる治療(Ammonia scavenger therapy)
  • 過剰な窒素を排泄するための代替経路を利用する治療法である(表4参照)。
  • 窒素スカベンジャーによる治療は急性期にはフェニル酢酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムの混合物の点滴として、長期維持療法にはフェニル酪酸または安息香酸ナトリウムの経口製剤として利用可能である。
  • シトルリンは、170 mg/kg/day または 3.8 g/m2/day (経口) を補充する。
 
代謝の上昇
Increased catabolism
異化作用の反転(Reversal of catabolism
  • 異化作用の回復を確実にするために、供給される総エネルギーは推定必要量の100%~120%である必要がある。
  • ブドウ糖と脂肪からカロリーを摂取する。タンパク質摂取を中止してから24時間以内にタンパク質摂取を再開する(天然タンパク質と必須アミノ酸ミックスの形で)。
  • 必要に応じて、グルコース注入速度を速め、インスリンを持続的に注入し、高い設定値の正常血糖(140-180mg/dL)を維持する。危機的状況にある新生児の目標:100kcal/kg/日以上のカロリーを、主にグルコースと脂肪から供給する。
  • 血液透析または血液濾過を行っている患者は、これらの処置によって栄養素が除去されるため、異化を克服するために十分な栄養が必要である。
  • 必須アミノ酸の欠乏→タンパク質の分解および制御不能な窒素の放出が起こるため、24時間後にタンパク質の摂取を再開する。
  • 毎日~2週間に1回、血漿中のアミノ酸を定量的に分析することが栄養療法の指針となる。目標:必須アミノ酸レベルを正常範囲に維持する。
神経障害のリスク
  • 挿管され、鎮静状態にある人は、急性高アンモニア血症によく見られる発作の臨床症状を示さないことがある。そのため、脳波のモニタリングは、発作の検出とその後の治療を可能にするために強く推奨される。
    注:フェノバルビタールは透析により除去され、バルプロ酸は尿素サイクル障害に禁忌である。
  • 尿素サイクル障害などによる高アンモニア血症性昏睡において、(アンモニア値↓以外の)他の介入で神経保護効果が証明されたものはない。
 

CKRT=持続的腎代替療法、CVVHD=高用量持続静脈性血液透析、EEG=脳波/電位差、HD=血液透析、IV=静脈内投与

表4アンモニア捕捉剤の静脈内投与(OTC欠乏症、カルバミルリン酸合成酵素I(CPSI)欠乏症)プロトコル

体重 輸液の成分¹ ローディング²および維持量³ ,⁴
フェニル酢酸ナトリウム・安息香酸ナトリウム アルギニン塩酸塩注射液 10% フェニル酢酸ナトリウム 安息香酸ナトリウム アルギニン塩酸塩⁶
<25kg 原液:2.5mL/kg(各250mgを含む)
1:10に希釈⁴
100 mg/mLで2.0 mL/kg 250 mg/kg 250 mg/kg 200 mg/kg
≧25kg 原液のまま 55mL/m2(各5,500mgを含む)
1:10 4に希釈⁴
100mg/mLで40mL/m²2 5,500 mg/m2 5,500 mg/m2 4,000 mg/m2

Batshaw et al [2001]

  1. 薬剤に含まれるナトリウム量が多いので注意すること。原液1mLあたり30.5mgのナトリウムを含むので注意すること。
  2. 90~120分かけてローディング投与する。
  3. 維持量は24時間かけて投与
  4. 高アンモニア血症の症状があり、過去12時間以内にアンモニア捕捉剤を全量投与していない場合は、まずボーラスを直接静脈内投与し、その後維持輸液を行うこと。
  5. フェニル酢酸ナトリウム/安息香酸ナトリウムは、投与前に必ず滅菌10%ブドウ糖で希釈すること。一般的な希釈倍率は1:10で、最終濃度は10mg/mLとなる。
  6. アルギニン輸液は150mg/kg/hを超えないこと。

長期的な治療

長期的な治療(タンパク質摂取制限、窒素捕捉剤の使用、肝移植など)は、成長と発達を促進し、高アンモニア血症エピソードを予防することを目的としている。

表5オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠乏症の症状に対する長期的な治療法について

イベント/懸念事項 治療 配慮事項/その他
高アンモニア血症のリスク タンパク質の制限
  • タンパク質の摂取は、RDAのタンパク質摂取量に制限されるか、または疾患の重症度に応じて成長を可能にし異化を防ぐために必要な量に制限される(表6を参照)。
  • 部分的なOTC欠乏症であっても、大幅なタンパク質制限を行った場合、正常な必須アミノ酸レベルを維持するために必須アミノ酸メディカルフードを使用する必要がある。
  • 食事では、推奨される必要量を満たすために、ビタミン、ミネラル、微量元素を、カロリーの高いタンパク質不使用の処方で、またはサプリメントの形で摂取する必要がある。
  • タンパク質の摂取量が少なすぎると、タンパク質の異化作用により、タンパク質の摂取量が多い場合と同様に、慢性的な高アンモニア血症を引き起こす可能性がある。
  • 胃瘻からの栄養補給は、以下のような患者における栄養不良の回避に役立つ:タンパク質摂取を自己制限している人、尿素サイクル障害の治療に使用する必須アミノ酸製剤の味に抵抗がある人、および/または成長のために十分なカロリーを消費できない人。
  • 必須アミノ酸の欠乏を検出するには、血漿アミノ酸濃度の慎重なモニタリングが必要である。
  • 高いグルタミン濃度は、代謝制御不良の証拠および高アンモニア血症の前兆であると解釈される。
  窒素スカベンジャー
  • 窒素廃棄の代替経路を提供し、より多くのタンパク質摂取を可能にする [Batshaw et al 2001, Berry & Steiner 2001]。
  • 長期的なアンモニアスカベンジャー治療は、450-600mg/kg/日フェニル酪酸ナトリウム&170mg/kg/日L-シトルリン<25キロの子供で構成されるかもしれません;&9.9-13.0g/m2/日フェニル酪酸ナトリウム&3.8g/m2/日L - 25キロ以上の人の体重で-です。治療は、適切な低タンパク食を伴う必要がある。
  • 注: (1) シトルリンは、このように尿素サイクルに addl 窒素分子を引っ張って経路にアスパラギン酸を組み込むのアルギニン上の利点を提供しています。(2) フェニル酪酸ナトリウムの代わりに安息香酸ナトリウムを使用する場合、推奨用量は25kg未満の子供で≤250mg/kg/日(最大:12g/日) [Haeberle et al 2012]。
  • フェニル酪酸グリセロール(フェニル酪酸ナトリウムと同じメカニズムで、かなり嗜好性が高い)は、別の治療選択肢である。投与量:5-12.3g/m²/日。
  • 安息香酸ナトリウムはフェニルブチレートの半分しか窒素を除去しませんが、副作用が少ないとされ、ヨーロッパ諸国やオーストラリアでは、安息香酸ナトリウムの経口投与が選択されている(フェニルブチレートに対して)。
  • フェニルブチレートは月経障害と体臭を引き起こし、分岐鎖アミノ酸を枯渇させるようである。安息香酸ナトリウムはカリウムの腎損失による低カリウム血症を引き起こす[Scaglia et al 2004, Haeberle et al 2012]。
生命を脅かす高アンモニアクリーゼのリスク 肝移植を行う。一次発症予防を参照。  
DD/ID1 発達遅滞/知的障害の管理問題を参照。  
発作性疾患 経験豊富な神経科医の指示に従い、ASMを用いた治療を行う。注:バルプロ酸は高アンモニア血症クリーゼを引き起こす可能性があるため、尿素サイクル障害の発作の治療には禁忌とされている。 両親や養育者への教育2

ASM=抗てんかん薬、DD=発達遅延、ID=知的障害、RDA=一日あたりの必要摂取量

  1. 初期の高アンモニア性昏睡、中等度から重度の高アンモニア性貧血を伴う頻回の高アンモニア性エピソード、および慢性高アンモニア性貧血による脳障害は、学習障害や知的障害につながることがある。
  2. 一般的な発作の発現に関する両親/介護者の教育が適切である。てんかんと診断された子どもへの非医学的介入と対処法に関する情報は、Epilepsy & My Child Toolkitを参照。

表6 オルニチン・トランスカルバミラーゼ(OTC)欠乏症の人に対する推奨タンパク質摂取量について

年齢 総タンパク
(g/kg/day) ¹
必須アミノ酸からのタンパク質2
酸医療食品(g/kg/日) 2
天然タンパク質(g/kg/日)
0-1 1.2-2.2 0.6-1.1 0.6-1.1
1-7 1.0-1.2 0.6-0.7 0.4-0.5
7-19 0.7-1.4 0.4-0.7 0.3-0.7
>19 0.5-1.0 0.3-0.5 0.2-0.5
  1. 無症状または軽度の患者では、タンパク質のRDAを満たすか上回る食事で生化学的マーカー(血漿アンモニア、グルタミン、必須アミノ酸)が正常であれば、必須アミノ酸医療食品による補充は必要ない場合がある。
  2. 必須アミノ酸の補給が必要な場合は、総タンパク質の30~50%を補充する必要がある。

発達遅滞/知的障害のマネジメントに関する課題

下記の情報は、米国における/知的障害者に対する典型的な管理推奨事項であり、標準的な推奨事項は国によって異なる場合がある。

0-3歳:
作業療法、理学療法、言語療法、摂食療法、乳児精神保健サービス、特別教育、感覚障害の専門家へアクセスするためには早期介入プログラムへの紹介が推奨される。米国では早期介入は連邦政府が資金を提供するプログラムで、すべての州で利用でき、個々の治療のニーズに合わせた在宅サービスを提供している。

3-5歳:
米国では、地元の公立学校区を通じた発達段階の就学前教育が推奨されている。入園前に、必要なサービスやセラピーを決定するための評価が行われ、必要と判断されれば運動、言語、社会、認知の遅れに基づいた個別教育計画(IEP)が作成される。早期介入プログラムは通常、この移行を支援する。医学的に不安定で通園できない子供には、在宅サービスが提供される。

全年齢:
適切な地域、州、教育機関(米国)の関与を確保し、親が生活の質を最大限に高めるための支援を行うために、発達専門の小児科医に相談することが推奨される。

考慮すべき課題

運動障害

粗大運動障害

微細運動障害
食事、身だしなみ、着替え、字を書くなどの適応機能に関わる微細運動の困難さには、作業療法が推奨される。

口腔運動機能障害
毎回の診察で評価し、哺乳時の窒息や嘔吐、体重増加不良、頻回の呼吸器疾患、他に説明がつかない哺乳拒否がある場合には臨床的な摂食評価やX線嚥下検査を行う必要がある。
経口摂取が可能な場合は、協調性や感覚に関連した摂食の問題を改善するために、摂食治療(通常、作業療法士または言語療法士による)が推奨される。
安全性を考慮して食事にとろみをつけたり冷やすなどの工夫をしたり、摂食機能障害が重度の場合は、NGチューブや胃瘻が必要になることがある。

コミュニケーションの課題
表出性言語障害がある場合は、代替コミュニケーション手段(例えば、拡張代替コミュニケーション[AAC])のための評価を検討する。AACの評価は、その分野の専門家である言語聴覚士が行うことができる。この評価では、認知能力と感覚障害を考慮して、最も適切なコミュニケーション方法を決定する。
AAC機器には、絵カード交換コミュニケーションのようなローテクなものから、音声生成装置のようなハイテクなものまで、さまざまなものがある。
AAC装置は言語発達を妨げるものではなく、むしろ最適な言語と言葉の発達をサポートするものである。

社会的/行動的な問題

子どもは、応用行動分析(ABA)のような自閉症スペクトラムの治療に用いられる介入を受ける資格があり、メリットがある。ABA療法は、個々の子どもの行動的、社会的、適応的な長所と短所に的を絞って行われ、通常、認定行動分析医と1対1で行われる。
発達小児科医との相談は、適切な行動マネジメント法を保護者に指導したり、必要に応じて注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬などの処方を受けるのに役立つ場合がある。
深刻な攻撃的行動や破壊的行動についての懸念は、小児精神科医が対応することが出来る。

一次発症の予防

高アンモニア血症の医学的・食事療法による予防
出生前に診断された新生児期発症のOTC欠乏症では、生後数時間以内(アンモニア濃度が上昇する前)に維持量のアンモニアスカベンジャーを予防的に静脈内投与することにより、高アンモニア血症によるクリーゼや意識障害を予防することができる。
それ以降は、高アンモニア血症を予防するために、低タンパク食による食事タンパク質の制限と、必須アミノ酸の補充とバランスのとれた窒素スカベンジャーの経口投与が中心となる(「症状の治療」の項を参照)。

肝移植

どんなに軽症に見えても、ストレスによって高アンモニア血症が引き起こされ、生命を脅かされることは何歳になってもあり得る。このような事態への恐怖と、食事療法による日常生活の制限により、多くの家族は、たとえそれまで食事療法と薬物療法で対処可能であったとしても、肝移植を検討することになる。
重症の新生児期発症の尿素サイクル障害では、今でも肝移植がさらなる高アンモニア血症クリーゼと神経発達の悪化を防ぐ最も有効な手段である [Gerstein et al 2020]。

表7  オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症患者に推奨されるサーベイランスについて

症状 評価項目 頻度
高アンモニア血症 血漿中アンモニア値 ・重症の場合は、治療開始時に少なくとも2週間ごと(個々の状態によってはそれ以上の頻度)。
・可能な限り、1ヶ月毎、2ヶ月毎、3ヶ月毎、6ヶ月毎と徐々に間隔を延長する。
必須アミノ酸の欠乏
(蛋白質制限による)
血漿アミノ酸分析 ・治療開始時は少なくとも2週間ごと(患者の安定状態によってより頻回に)。
・徐々に1カ月毎、2カ月毎、3カ月毎、6カ月毎と可能な範囲で間隔を延長する。
ビタミン・ミネラル
の欠乏
ビタミン・ミネラル
に関する検査
(例:フェリチン、
25-OH VitDなど)
年1回
または栄養士による食事評価で指示された頻度で行う。
肝酵素の著明な増加
凝固異常
AST/ALT
PT/PTT/INR
3-6ヶ月ごと
過去に既往がある場合はさらに高頻度で。
DD/ID 心理発達検査 重要な発達のマイルストーンに合わせて
(例:乳児期は6-9か月、18か月、小児期は4歳8歳、思春期〜青年期は15歳と18歳)

DD/ID=発達遅滞/知的障害

避けるべき薬剤/状況

以下のものは避けること。

注意:救命処置として全身性副腎皮質ホルモンの投与が必要な場合(例:重度の喘息発作やアナフィラキシー反応時)には、代謝の専門家に相談し、同時に異化を防ぐための予防的処置(例:摂取カロリーの増加)を行う必要がある。

リスクある血縁者の評価

早期診断・早期治療のために
リスクある胎児の出生前検査:
出生後に代謝危機が起こる前に適切な治療/サーベイランスを迅速に実施できるように、リスクのある男女両方の胎児について、羊水穿刺または絨毛検査による分子遺伝学的出生前検査を行うことができる(「一次発症の予防」の予防的治療の記載を参照)。

新生児の同胞:
新生児の同胞の評価には、以下のようなものがあります。

新生児期以降も診断がはっきりしない場合や家系内の OTC遺伝子の病的変異が同定できない場合は、肝臓の酵素活性測定(男児のみ)を考慮することがある。

一般に、新生児期発症の小児では、このような検査を迅速に行うことができず、代謝クリーゼを防ぐことができない。したがって、診断が確定するまでは、出生時に予防的処置をとる必要がある。(一次発症の予防的処置を参照)

ドナーとして肝臓提供のために

肝臓を提供する可能性のある家族は、分子遺伝学的検査を受けて遺伝的状態を明らかにし、OTC遺伝子の病的変異を持たない人をさらに評価する必要がある。
注:ヘテロ接合体の母親をドナーにすることが議論されているが、この方法はいくつかの理由で問題がある(一次発症の予防、肝移植の項参照)。

遺伝カウンセリングを目的としたat risk血縁者の検査に関する問題については、遺伝カウンセリングを参照のこと。

妊娠の管理

ヘテロ接合体の女性は、妊娠中および特に産後に異化が生じるリスクがある[Torkzaban et al 2019]。
症状のあるヘテロ接合体女性は、妊娠前のプロトコルにしたがって、妊娠中も治療する必要がある。妊娠中の蛋白需要の増加に注意する必要があり、完全なアミノ酸補給とと必須アミノ酸の補充を調整する必要がある場合がある。

産前産後および産後直後には、異化を防ぐために、例えば、適切な電解質を含む10%ブドウ糖溶液を維持量の1.5倍で投与し、この期間のカロリー必要量を満たすために必要に応じて脂質内服を追加するなどの予防的処置を行う。

ヘテロ接合体であることが判明している無症状の女性では、産前産後に異化を防ぐための予防措置をとるべきである。さらに、ヘテロ接合体の女性が産前産後に初めて症状を呈した場合には、アンモニアの測定とブドウ糖の投与を検討する必要がある。

検討されている治療法

OTC欠損症の治療法として、現在進行中の臨床試験NCT02991144およびNCT04442347では、アデノ随伴ウイルス(AAV)または脂質ナノ粒子mRNAを用いた遺伝子導入が行われている。AAV8ベースのOTC輸送が少数のコホートで試され、顕著な改善を示す人もいれば、ほとんど変化を示さない人もいるようである。遺伝子導入の安定性をよりよく理解するために、長期追跡臨床試験(NCT03636438)が実施されている。いくつかのグループがAAVを用いた臨床試験(NCT05092685)を計画しているが、本稿執筆時点ではまだ募集は開始されていない。
血中アンモニア濃度を低下させる他の方法としては、微生物叢を調節する試み(NCT03933410)があるが、Synb1020(大腸菌Nissle株を操作したもの)を導入した別の試験では、アンモニア濃度は、継続を保証するほど十分に低下しなかった(NCT03447730)。微生物叢の調節は有望と思われるが、腸内細菌が複雑であるため、克服しなければならない課題もある。

前臨床試験において、ゲノム編集は非常に有望であり、spf-ashマウスを用いたin vivo実験において特定のOTC変異を修正できたデータがあるほか、変異を含むOTC遺伝子座にプロモーターとOTC cDNAを含む発現カセットを導入する「ユニバーサル」ベクターの開発にも成功している。[Yang et al 2016, Wang et al 2020]。後者のアプローチでは、複数のガイドRNAを開発する必要がなく、修正すべきOTC遺伝子の病的変異ごとに規制当局の承認を得る必要もほぼない。CRISPr/Cas9に限らず、他の遺伝子編集アプローチと同様に、遺伝子変換の効率、オフターゲット編集の懸念、プロトスペーサーモチーフの利用可能性、二本鎖DNA切断に反応するアポトーシスの可能性は、すべて対処しなければならない課題である。OTC欠損症患者のの肝細胞でOTC遺伝子の修正を行い、それをマウスモデルに移植したex-vivoのアプローチでは、60%近い補正と、ディープシークエンスによるオフターゲット編集が見られなかった[Zabulica et al 2021].

OTC欠損症の動物モデルは、最近までいくつかのマウス系統に限られていたが、ゲノム編集が容易になったことで、動物モデルの制御とテーラーメイド化がより進むと考えられる。特に注目すべきは、最近開発されたOTC欠損ブタである[Enosawa et al 2021]。細胞移植やその他の外科的・内科的介入などの治療法は、この大きな動物モデルでより容易に検討できるようになるであろう。
最新の情報は、米国のClinicalTrials.govおよび欧州のEU Clinical Trials Registerを参照のこと。(ClinicalTrials.govにはヨーロッパの研究も掲載されている。)


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

OTC欠損症は、X連鎖形式に則って遺伝する。

家族構成員のリスク

男性発端者の両親

女性発端者の両親

男性発端者の同胞 

同胞の罹患リスクは、母親の遺伝的状態によって異なる。

女性発端者の同胞 

同胞の罹患リスクは、両親の遺伝的状態によって異なる。

男性発端者の子

女性発端者の子ども

病的変異を有する女性の子どもには、それぞれ50%の確率で変異が引き継がれる。

他の家族

他の家系員のリスクは、発端者の両親の状態によって異なる。
両親のどちらかが病的変異を有する場合、その家系員はリスクを有する可能性がある
注:遺伝学的検査は、de novo病的変異が生じた家系員を特定することができるかもしれない。

ヘテロ接合体の検出

OTC欠損症の原因となる病的変異が家系内で同定されている場合、女性のヘテロ接合体を特定するための分子遺伝学的検査が可能である。
注:OTC 遺伝子の病的変異のヘテロ接合体である女性の表現型は、無症状から繰り返す高アンモニア血症や神経学的症状を伴う重大な症状まで様々である(臨床的説明、ヘテロ接合体女性参照)。

家系内の病的変異が同定できない場合は、アロプリノール負荷試験が女性の遺伝的状態を明らかにするのに役立つ(「診断の確立」を参照)

遺伝カウンセリングに関連する事項

早期診断や治療のためのAt risk血縁者の評価については、At risk血縁者の評価の項目を参照。

家族計画

DNAバンク。遺伝子検査やバリアント、発症メカニズムや疾患そのものの理解の向上につながりうるので、原因そのものがわからず確定診断に至っていない患者であってもDNAバンクでの検体保存は検討されるべきである。

出生前診断と着床前診断

いったん発端者である罹患者に病的バリアントが同定された場合、出生前診断と着床前診断は可能となる。なぜなら罹患男児の新生児期はヘテロ接合性女児と比較してより深刻な症状を呈するため、胎児期に性別が判明していることが罹患新生児のケアにおいて家族や新生児科医に有用情報となることが知られているからである。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

TEMPLE (Tools Enabling Metabolic Parents LEarning)
英国先天代謝異常症グループ
(親のための教育ツール)
United Kingdom
Ornithine transcarbamylase deficiency

(尿素サイクル異常症団体)
Phone: 626-578-0833
Email: info@nucdf.org
www.nucdf.org

MEDLINEプラス OTC欠損症 
www.newbornscreening.hrsa.gov/your-state

希少疾患のための国際組織
RareCareSM
Phone: 800-999-6673
Patient Assistance Programs

新生児マススクリーニング
Health Resources & Services Administration
www.newbornscreening.hrsa.gov/your-state

(Intoxication Type Metabolic Diseases (E-IMD)ヨーロッパレジストリーとネットワーク)
www.ucdregistry.org

尿素サイクル異常症患者国際レジストリー
Phone: 626-578-0833
Fax: 626-578-0823
Email: coordinator@ucdparegistry.org
www.ucdregistry.org

(尿素サイクル異常症コンソーシアム)
Children's National Medical Center
Phone: 202-306-6489
Email: jseminar@childrensnational.org
www1.rarediseasesnetwork.org/cms/ucdc


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A. OTC欠損症:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体局在場所 生成タンパク Locus-Specific Databases HGMD Clinvar
OTC Xp11​.4 Ornithine transcarbamylase, mitochondrial Ornithine CarbamoylTransferase (OTC) @ LOVD OTC OTC

データは以下に基づいて編集されたものである;HGNCより遺伝子、OMIMより染色体局在場所、UniProtより生成タンパク。リンクのあるデータベースでの記述内容の詳細については、こちらを参照してほしい。

表B. OTC欠損症に関してOMIMに登録されているもの (OMIM全項目参照)

300461 オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ;OTC
311250 高アンモニア欠損症によるオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症

分子学的な病原論

OTCはオルニチンからシトルリンへの合成、小腸や肝臓でのカルバミル燐酸に関与している[Brusilow & Horwich 2001, Yamaguchi et al 2006]。唯一知られているヒト体内でのOTCタンパクの働きは、尿素サイクルにおける中間生成物もしくはアルギニン合成物の前駆物質のどちらかとして、シトルリンを生成することである[Brusilow & Horwich 2001]。

OTC酵素の機能の減少や欠如は、次のような病的バリアントの種類によって生じる。

発症のメカニズム. OTC欠損症は、上記に記載したメカニズムによって機能が喪失(loss-of-function)されて発症する。

注意すべき既知のOTC遺伝子におけるバリアント。当該バリアントについては、表8(PDF)を参照。


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Uta Lichter-Konecki, MD, PhD, Ljubica Caldovic, PhD, Hiroki Morizono, PhD, Kara Simpson, MS, CGC, Nicholas Ah Mew, MD, and Erin MacLeod, PhD, RD, LD.
    日本語訳者: 瀬戸俊之,堀田純子,山下朋代,酒井恵利,馬場遥香,小野智愛(大阪公立大学大学院医学研究科臨床遺伝学・発達小児医学)
    GeneReviews最終更新日: 2022.5.26.  日本語訳最終更新日: 2022.10.16. [in present]

原文 Ornithine Transcarbamylase Deficiency

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