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OTOF-関連難聴
(OTOF-Related Deafness)

[Synonyms: DFNB9, DFNB9 Nonsyndromic Hearing Loss]

Gene Review著者: Charles A Williams, MD, Aditi I Dagli, MD, Daniel J Driscoll, PhD, MD
日本語訳者: 岩佐陽一郎(信州大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)    
Gene Review 最終更新日: 2011.6.14. 日本語訳最終更新日: 2011.9.10.

原文 OTOF-Related Deafness


要約

疾患の特徴 

OTOF関連難聴(DFNB9 非症候群性難聴)は2つの表現型により特徴づけられる。:言語獲得期前の非症候群性のものと、より少ないものとして体温感受性の非症候群性auditory neuropathy(TS-NSAN)。この難聴は、両側で高度〜重度難聴の先天性難聴である。最初の1、2年はOTOF関連難聴はABRに反応なく、OAEの反応するためauditory neoropathyの病態を呈する。しかし、経過中にOAEが消失し、内耳性難聴を呈する。auditory neuropathyの患者にとって、auditory neuropathyか内耳性難聴の違いが人工内耳が有用であるかについて重要である。TS-NSANは発熱がないときには正常〜軽度難聴を呈するが、発熱時には高度〜重度難聴を呈する。 .

診断・検査 

OTOF関連難聴の診断は臨床所見により疑われる。初期であればABRの結果も含め。診断はotofelinをコードするOTOF遺伝子の遺伝学的分析により確認される。OTOFはこの状態と関連する唯一の遺伝子である。

臨床的マネジメント 

兆候の処理:両側の先天性難聴の患者では可能な限り早く補聴器を使用し、人工内耳を考慮、教育プログラムを各個人に計画する。兆候の予防:TS-NSANの患者では発熱やその他体温が上昇するような活動や環境を避けるようにする。

定期検査非症候群性両側難聴患者は遺伝難聴に精通した医師による半年もしくは一年に一回の診察をうけ、難聴が進行性かを確認するため最初は3〜6ヶ月に一回聴力検査を繰り返す。

近親者のリスクの検査難聴者が生まれたならば可能な限りはやく同胞の検査をする;もし家系内に難聴の遺伝子変異があることがわかっていれば、同胞に遺伝子検査を早期に行い、適正な早期のサポートや管理を患児や家族に提供できるようにする。

遺伝カウンセリング 

OTOF関連難聴は常染色体劣性遺伝形式をとる。同胞は25%の確率でOTOF関連難聴となり、50%の確率でキャリアとなり25%の確率でキャリアとはならない。ヘテロであれば症状は起こさない。もし家族内に難聴遺伝子変異があることがわかっていれば、リスクがある近親者に対する保因者検査、リスクの増大した妊婦に対する出生前診断が可能である。


診断

臨床診断

OTOF関連難聴(DFNB9)は先天性両側高度〜重度難聴を特徴とする。

最初の1、2年は最初の1、2年はOTOF関連難聴はABRに反応なく、OAEの反応するためauditory neoropathyの病態を呈する。しかし、経過中にOAEが消失し、内耳性難聴を呈する。

分子遺伝学的検査

OTOF関連難聴はotoferlinをコードするOTOF遺伝子の変異によりおこる。

臨床検査

  • OTOF遺伝子のシークエンス。
  • マルチジーンパネル。OTOF遺伝子のみに対する検査は多くの施設で行われているが、多くの遺伝性難聴遺伝子を一度に検査する新たな方法が進歩している。これらのパネルは方法や含まれる遺伝子により変わる;原因の可能性となる遺伝子を検知する能力も各個人に対して変わる。

検査戦略

発端者の診断を確実にする。現病歴、臨床所見により先天性両側高度〜重度難聴とされた小児には下記の検査戦略は遺伝学的検査に依存する。

  • 順次個々の遺伝子の遺伝学的検査をする
    • 最初にやるべきはGJB2(DFNB1);もしGJB2遺伝子変異が一つ検知されたら、GJB6のdeletionの検索を行う。
    • もしDFNB1の領域(GJB2の変異、GJB6のdeletion)に2つの変異がなければ、CTかMRIを行い前庭水管拡大とMondini奇形を探す
    • もしどちらかの奇形があればSLC26A4の検査を行う(Pendred症候群/DFNB4)
    • もしいずれの奇形もなければOTOF遺伝子の検査を考慮する。
  • 一度に難聴関連遺伝子を調べるマルチジーンパネルの使用

    電気生理学的な検査をOTOF関連難聴患者に行うと最初の1、2年はauditory neuropathyを呈するため、原因となりうる環境要因(高ビリルビン血症、低酸素症など)がない先天性auditory neuropathyの患者にはOTOFの検査が考慮される。しかし、経過中にOAEは消失し内耳性難聴を呈していくため、auditory neuropathyの検査結果が得られなくともOTOF関連難聴を除外してはいけない。

  • リスクのある同胞に対する保因者検査について

    保因者はこの常染色体劣性のヘテロの状態であり、状況の悪化のリスクとはならない

  • 遺伝的に関連した障害

非症候群性難聴のみがOTOFに関連した唯一の表現型である。


臨床像

自然経過

OTOF関連難聴には2つの表現型がある。言語習得期前の非症候群性難聴と、より少ないものとしては体温感受性の非症候群性auditory neuropathy(TS-NSAN)である。

OTOF関連難聴は言語習得期前の難聴を特徴とする。典型的にはCTかMRIにて内耳奇形を伴わない高度〜重度難聴である。高度難聴は71-90dB、重度難聴は90dB以上で定義される。

TS-NSANは典型的には熱がないときには正常〜軽度難聴である。ひとたび発熱すればTS-NSANの患者は高度〜重度の著明な難聴を呈し、解熱すればもとに戻る。語音弁別能は平熱時は正常か軽度の障害であるが、発熱時には著明に悪化する。

遺伝子型−表現型関連

遺伝子型−表現型はTS-NSANの報告をはじめとして限られたものしかない。

  • ミスセンス変異のc.1544T>C(p.lle515Thr)がTS-NSAN患者にヘテロで発見された。
  • ナンセンス変異のc.5410_5412delGAG(p.Glu1804del)はTS-NSAN家族の内3名でホモで発見された。
  • TS-NSANの精密検査にてc.2975_2976delAG(p.Gln994ValfsX7)とc.4819C>T(p.1607Trp)を持つ患者が発見された。

命名法

非症候群性難聴のおのおのの遺伝子座がDFNと命名される。

遺伝様式により遺伝子座が命名される

  • DFNA:常染色体優性遺伝
  • DFNB:常染色体劣性遺伝
  • DFN:X連鎖

つづく数字は遺伝子地図や発見された順番を反映している。

有病率

高度〜重度の先天性、常染色体劣性遺伝形式をとる非症候群性感音難聴患者の全世界での有病率は未だ明らかになっていない。

  • スペインでは常染色体劣性遺伝形式をとる先天性の高度〜重度難聴の5-8%がOTOF変異によるものと言われている。
  • パキスタンでは常染色体劣性遺伝形式をとる先天性/言語習得期前の高度〜重度難聴のうちおよそ2.3%に変異アレルがあるとしている。

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

先天性(もしくは言語習得期前)の難聴児はおよそ1000人に1人である。その30%は他の異常を伴う症候群性の難聴と診断される。先進国ではおおよそ残り(つまり70%を占める非症候群性難聴患者)の半分がGJB2の変異を持つ。

OTOFを含む、28の遺伝子が先天性の常染色体劣性遺伝形式をとる非症候群性難聴と関連がある。先天性の難聴患者のうち、OTOF変異の有病率がどの程度かは明きらかにはなっていない。;最初の1、2年間のみの孤発のauditory neuropathyにはOTOFは主な原因と思われる。しかし、経過中にOAEは消失し、内耳性難聴の検査結果を呈していくことは重要である。

その他の非症候群性auditory neuropathy

  • DFNB59  pejvakin蛋白をコードするPJVK遺伝子の変異により常染色体劣性auditory neuropathyとなる。
  • AUNA1座位(13q14-q21) 常染色体優性遺伝形式をとるauditory neuropathy

臨床的マネジメント

初期の診断評価

OTOF関連難聴と診断された患者の合併症の程度を確立させるため、次の検査が推奨される

  • 聴力の評価(ABRや純音聴力検査)
  • 奇形の有無の確認のための側頭骨CT

症状の処置

詳細はHereditary Deafness and Hearing Loss Overviewを参照

先天性、非症候群性の両側難聴患者の聴力のハビリテーション

  • 補聴器は可能な限り早くフィッティングする
  • 人工内耳(CI)も考慮すべき。CIはOTOF関連難聴の2児に対し良好な結果を残した報告あり

    注釈:最初の1、2年はOTOF関連難聴はABRに反応なく、OAEの反応するためauditory neoropathyの病態を呈する。しかし、経過中にOAEが消失し、内耳性難聴を呈する。auditory neoropathyと内耳性難聴を区別することは、deafness-dystonia-optic neuropathy(DDON)などのauditory neoropathyの人にとっては限界価値となるので、重要である。

各個人に応じた学習プログラムを組むことが適正である

最初の兆候の予防

TS-NSAN患者には:

  • 発熱を避ける
  • 体温上昇する活動や外界の状況を避ける
  • 体温上昇するようなエピソードがあればなるべく早くもとの体温に戻すようにする。
  • 患者と介助者に、難聴が発熱や感染の最初の兆候かもしれないことを気づかせる。潜在的な危険性や騒音環境を避ける、等の適切な注意が励行されるべきである。

調

非症候群性の先天性両側難聴患者に対し:

  • 遺伝性難聴に精通した医師による診察を年に1、2度は受ける
  • 難聴の進行があるかを確認するため3〜6ヶ月おきに聴力検査を繰り返す

避けるべき薬剤や環境

TS-NSAN患者には:

可能な時は、体温上昇する運動を避けるか調節する。この患者集団に対し、効果的な長期の予防策はいままで報告なし。継続的な調査やフォローアップが推奨される。

リスクのある肉親に対する検査

リスクのある肉親に対しては難聴やauditory neuropathy(幼児期にはある)の有無の確認の検査をすべき。

もし家族に特異的な変異がわかっているなら、分子遺伝学的検査が生後できるだけ早い時期に行われるべき。それにより適切な早期の支援や管理を本人と家族に提供することができる。

調査の下の治療

ClinicalTrials.govを検索し、さまざまな疾患の臨床試験の情報にアクセスせよ。

この疾患については臨床試験はおこなわれていない。

その他

遺伝専門家による遺伝クリニックは患者や家族に自然経過や治療、遺伝形式、他の家族の遺伝的なリスクを提供することができる。GeneTest Clinic Directoryを見よ。

Consumer Resourcesでこの疾患の、または包括的支援組織を見よ。これらの組織は患者や家族によって設立され、情報や支援、他の患者との情報交換を行っている。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

OTOF関連難聴は常染色体劣性遺伝形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • OTOF関連難聴患者の両親はヘテロであり、それ故に一つの変異アレルを持つ。
  • ヘテロの状態では症状は起こらない

発端者の同胞 

  • 25%は難聴、50%は保因者、25%は保因者とはならない
  • きこえていることがわかれば、保因者である確率は3分の2である。
  • 保因者は症状はおこらない。
  • 発端者の子孫はOTOFの保因者となる。

発端者の子

AS患者の生殖は今のところ1例のみ報告がある.子に対する再発率は遺伝カウンセリングの中で決定される.

他の家族

発端者の両親の同胞は保因者の確率は50%である。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画 

  • 遺伝的なリスクの確定、保因者かどうか、出生前の検査ができるかの考察のための適切な時間は、妊娠前である。
  • 本人、保因者、保因者となるリスクのある者への遺伝カウンセリング(子孫への潜在的なリスク、生殖に関するオプションの検討を含めて)を提供することが適切である。

次の点は注目すべきことである

  • 難聴患者とのコミュニケーションはスキルのある通訳が必要である。
  • 難聴患者たちは難聴をハンデ、障害、医学的に治療やケアを必要とする状態とは考えていない。実際、正常聴力よりも難聴児を授かることを好む。
  • 多くの難聴患者は予防法や生殖、家族プランよりもむしろ医学的、教育的、社会的サービスを含めた、自分自身の難聴の原因についての情報を得ることに興味がある。すべての遺伝カウンセリングにおいて、カウンセラーにとって重要なのは患者や家族の疑問、関心、不安を確認し、認め、尊重することである。
  • いくつかの用語の使用が好まれる:可能性もしくは確率vsリスク;難聴と聞くのが難しいvs聴覚障害。罹患している、異常、疾患の原因、などは避けるべき。

DNAバンキング DNAバンクとは将来の利用のためのDNA(典型的には白血球から抽出される)の貯蔵である。検査の方法論と我々の遺伝子や変異、疾患についての理解が将来進歩するであろうから、難聴患者のDNAの貯蔵が考慮されるべきである。DNAバンクを行っている実験室のリストを見よ。

出生前診断

妊婦に対する出生前診断は15-18週で行われる羊水穿刺もしくは10-12週で行われる絨毛採取の際に得られる胎児の細胞からのDNA検査によって可能である。出生前診断の前に難聴の原因となる変異アレルは同定すべき。

OTOF関連難聴のように、知的能力や寿命に影響しないものに対する出生前検査の必要性は一般的ではない。特に、もし出生前検査を早期診断よりもむしろ中絶するかを目的とみなすならば、医療専門家や家族の中で、出生前診断をすることで将来の見通しに関する違いが出てくる。出生前検査に関する決定は両親の選択によるけれども、これらの事柄に関して協議することが適切である。

難聴を起こす遺伝子変異が同定されている家族なら、着床前遺伝診断(PGD)が可能であろう。PGDを行っている施設についてはこちら。


分子遺伝学

Molecular GeneticsとOMINの表にある情報はGeneReviewにあるものとおそらく違うことがある。これは表は新しい情報を含んでいるためである。

病気の発生における分子遺伝学

Otoferlinはdysferlin(DYSFによってコードされている)、myoferlin(MYOFによってコードされている)、そして4つ目のメンバーとされているFER1L4(FER1L4によってコードされている)を含む膜アンカー蛋白の小集団に属している。Ferlin遺伝子は、精子の正常な成熟に必要な線虫のfer-1という遺伝子に構造が似ているためそう呼ばれる。

OTOFは例外として、他の遺伝子ファミリーと難聴は関係ない。DYSFは3つの遠位のミオパチーと関連する:Miyoshi myopathy (MM), limb-girdle muscular dystrophy type 2B (LGMD2B), and distal myopathy with anterior tibial onset (DMAT)

Mypferlin(FER1L3によってコード)は正常な筋芽細胞の融合に必要とされる。FER1L4の機能はしられていない。

マウスではotoferlinは内耳、前庭、脳に発現している。マウスの脳、内耳はexon6と47を含む特殊なアイソフォームがある。後者のエクソンを含むことはC末端の蛋白配列において重要な意味を持つ。短いアイソフォームがないマウスの例を除いて、組織特異性のアイソフォームの発現はマウスとヒトのあいだで調和性がある。内耳ではotoferlinは内有毛細胞のリボンシナプスにおいてシナプス小胞のエクソサイトーシスの働きを担っていると考えられている。

正常アレル変異OTOFは48のコーディングエクソンがあり、100kbを超えるゲノムDNAにより構成されている。短いアイソフォームは3つのC2ドメインしかない。たくさんの多型が報告されている。

病的な変異アレル24個の変異が報告されている。ほとんどは不活化させる変異で、重度〜高度難聴と関連する。スペインでは言語習得期前の非症候群性の重度〜高度難聴を呈するうちの3−5%に存在する、c.2485C>T(p.Gln829X)変異があるが、それを除いては特定の民族に特異的な変異は報告はない。

正常遺伝子産物.スプライシングされた転写産物はさまざまな長短のアイソフォームを形成する。最初の19エクソンは長いアイソフォームにのみあり、C2ドメインと呼ばれる6つのカルシウム結合の構造を持つ。小胞と細胞膜の融合に必要であり、コイルドコイルドメインと膜貫通ドメインがある。長いアイソフォームは1997個のアミノ酸を持ち、6つのC2ドメインを持ち、コイルドコイルドメインと膜貫通ドメインがあり、シナプス小胞蛋白であるsynaptotagaminと相同性を有する。Rouxらはotoferlinは内有毛細胞において早い速度での小胞融合に必要なのではないかと仮定している。

異常遺伝子産物.24個の既知変異のうち17個が不活化の変異であり、ひどく異常な蛋白を作成する、もしくはナンセンスにより全く蛋白が作成されないかかである。OTOF関連難聴患者の多くは2つの不活化する変異があり、otoferlinが全く作られないことによる重度難聴を呈する。2つのミスセンス変異もしくは不活化の変異とミスセンス変異があることによるコンパウンドへテロの患者においては、ミスセンス変異は機能の不備を起こす。機能不備がシナプス小胞の融合のタイミングを変え、一時のコーディングがなくなる(auditory dyssynchrony)のか、内有毛細胞でのシナプス小胞に間違った輸送の積み重ねがおこるのかは不明である。表現型−遺伝子型の関連があるのか今後も研究が必要とされてはいるけれども、機能の違いが表現型と関連している可能性はある。


原文 OTOF-Related Deafness

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