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パーキンソン病概説
(Parkinson Disease Overview)

Gene Review著者: Janice Farlow, BS, BA, Nathan D Pankratz, PhD, Joanne Wojcieszek, MD,
         Tatiana Foroud, PhD.
日本語訳者: 鷹巣祐子( 札幌医科大学大学院修士課程遺伝カウンセリングコース),
      櫻井晃洋( 札幌医科大学医学部遺伝医学)

Gene Review 最終更新日:20 14. 2.27. 日本語訳最終更新日: 2015.11.21

原文 Parkinson Disease Overview


要約

疾患の特徴 

パーキンソン症候群は,振戦,筋固縮,動作緩慢(寡動)を特徴とする全ての臨床状態を指す.パーキンソン病はパーキンソン症候群の中でもっともよくみられる中心的疾患である.うつ症状や幻視といった精神症状が伴うことが多いが,全ての患者に現れるわけではない.患者の少なくとも20%は最終的に認知症となる.最も一般的な散発型のパーキンソン病は60歳前後に発症するが,若年発症もしくは年少発症のものもみられる.

診断・検査 

パーキンソン病の診断はもっぱら振戦,筋固縮,寡動といった臨床所見にのみ基づいてなされる.レボドパへの良好な反応と四肢の症状の左右非対称的発現は,一般にパーキンソン病の診断を裏付ける.パーキンソン病における特徴的な病理学的所見は,黒質におけるドパミン作動性神経細胞の喪失であり,残存している黒質神経細胞では細胞質内封入体(レビー小体)が見られる.いくつかのパーキンソン病のサブタイプで遺伝学的原因が同定されている.これらの原因遺伝子を調べる分子遺伝学的検査は単独もしくは多遺伝子パネルとして臨床的に利用可能である .注:これまでのところ ,利用可能な遺伝子検査はパーキンソン病の症状を持つ患者の診断には有益であるが ,パーキンソン病の家族歴のない無症候性の患者に対するリスク予測には有効ではない .

臨床的マネジメント 

治療法パーキンソン病治療の中心は,一旦脳に入るとドパミンに変換され,レボドバの形でドパミンの代わりをする薬剤を投与するドパミン補充療法である.ドパミン作動薬とともに用いられるその他の有効な薬剤は ,ドパミンアゴニスト ,COMT(Catechol-O-methyltransferase)阻害薬 ,MAO-B (monoamine oxidase-B)阻害薬 ,抗コリン薬, アマンタジンである.
進行していたり,日常生活に支障をきたす 症状には, 視床下核や淡蒼球 への深部脳刺激のような脳神経外科的治療が行われる, 作業療法や,理学療法,言語療法も多くの場合有用である.

遺伝カウンセリング 

メンデル遺伝(単一遺伝子)形式のパーキンソン病は ,常染色体優性遺伝 ,常染色体劣性遺伝 ,稀にX連鎖遺伝により受け継がれる .メンデル遺伝形式のパーキンソン病に対する遺伝カウンセリングはその遺伝形式次第である .
一方,大抵のパーキンソン病は非メンデル遺伝形式で ,環境要因と複数の感受性遺伝子が関与して発症すると考えられる.非メンデル遺伝形式の患者と患者家族への遺伝カウンセリングは家族ごとの事情を考慮して行われなければならない.非メンデル遺伝形式のパーキンソン病患者の第1度近親者の発病リスクは,研究によっても国によっても様々である.メンデル遺伝を呈さないパーキンソン病を発症している家系では,患者の第1度近親者のパーキンソン病発症リスクはパーキンソン病の家族歴がない人の2.7〜3.5倍である.従ってパーキンソン病発症の累計リスクは3%から7%の間にある.


定義

臨床症状

パーキンソン病の特徴は振戦,筋固縮,動作緩慢(寡動) ,姿勢不安定感である.発症は古典的には片側に起こり ,四肢ジストニアだけでなく ,姿勢や行動振戦のような運動障害を含む .
運動障害以外の症状には ,不眠 ,抑うつ ,不安 ,REM睡眠行動障害 ,倦怠感 ,便秘 ,自律神経障害や臭覚障害がある .進行するとうつ症状や幻視といった精神症状を来し ,罹患者の25%は最終的に認知症となる.

パーキンソン病は殆どが非メンデル遺伝疾患で ,主に60歳前後に発症する孤発性であり(すなわち 家系内に罹患者は1人) ,進行は緩やかである .ただしより早期に発症する場合もある.
一般に発症年齢20歳以下は若年性パーキンソン病,発症年齢50歳以下は早発性パーキンソン病,発症年齢50歳以上は遅発性パーキンソン病とされる.

パーキンソン病の確定診断

パーキンソン病の診断は振戦,筋固縮,寡動の臨床所見に基づく.レボドパへの良好な反応と四肢の症状の左右非対称的発現は一般にパーキンソン病の診断を裏付けるものである.

放射性リガンドを用いたF-DOPA PETや放射性標識リガンドを用いたSPECTのような機能的画像診断技術は,ドパミン作動性機能障害の存在を示すのには有効だが ,MSAやPSPのような非定型 的パーキンソン 症候群とパーキンソン病を区別することはできない.
これらの画像診断法は症状のある患者をパーキンソン 症候群と確定したり , 正常所見を示す病態(心因性パーキンソニズムやドーパ反応性ジストニア) を除外するのに有効である .

パーキンソン病の基本的な病理学的特徴は黒質におけるドパミン作動性神経細胞の喪失であり,残存している黒質神経細胞では細胞質内封入体(レビー小体)が見られる.しかしながら ,一部の遺伝性パーキンソン病の神経病理像は, 非メンデル遺伝 性のパーキンソン病 で知られる古典的な 所見とは明確に異なっている.従来パーキンソン病の病理学的診断にはレビー小体の確認が必須であったが,遺伝性のパーキンソン病 (PARK2変異によるPARK-PARKIN )が発見されてからは,レビー小体なしでも黒質病変が起こる可能性があることが認められるようになった.神経病理学的所見と遺伝子変異の相関に関する研究は始まったばかりであり,パーキンソン病の診断と発症原因における新しい知見を生み出すことが期待されている.

非遺伝性パーキンソン病の診断は顕著な臨床徴候と剖検でのレビー小体確認によってのみ確定されるため,診断におけるある程度の不確実性は避けられない.これまでの臨床病理学的研究から導かれた上記の診断基準を慎重に適用することにより,正診率を95%以上に引き上げることが可能である.安静時振戦,ドパミン製剤への反応,左右非対称 な発症,他疾患を示唆する非定型徴候の不在は,全て診断の確実性を高めるために用いられる基準である.しかし診断基準の特異度を最大に高めることによって,診断基準の感度は著しく下がり,本来パーキンソン病と診断されるべき症例の実に3分の1が除外されてしまう.これらの診断基準は遺伝学的研究には理想的であるが,臨床診断を下す際には有効でないだろう.

鑑別診断

パーキンソン病に類似した神経疾患には以下がある.

  • レビー小体認知症
  • パーキンソン 型多系統萎縮症(旧名「線条体黒質変性症」)
  • 進行性核上性麻痺(PSP)
  • 大脳皮質基底核変性症(CBD)
  • 本態性振戦
  • 薬物誘発性パーキンソン症候群
  • 脳炎後パーキンソン症候群
  • アルツハイマー病(「アルツハイマー病概説」参照)

 

常染色体優性神経疾患の中にはパーキンソン症候群が特徴的所見であるものもある.

  • 脊髄小脳失調症(SCA). SCA3型(Machado−Joseph病)とSCA2型
  • ハンチントン病
  • ドーパ反応性ジストニア
  • 家族性プリオン病
  • 家族性前頭側頭型痴呆パ−キンソニズム(FTDP-17)

 

パーキンソン症候群を伴う他の遺伝的疾患は以下の通りである.

  • ウィルソン病
  • X連鎖ジストニアパーキンソニズム症候群(Lubag症候群)

生化学検査や画像診断は,脳梗塞,腫瘍,ウィルソン病などの除外診断を行う場合にのみ有効である.

頻度

パーキンソン病はアルツハイマー病に次いでよく見られる神経変性疾患である(「アルツハイマー病概説」参照).パーキンソン病は55歳以上の1%以上に,75歳以上の3%以上に発症する.

年齢,性別調整後の有病率は13.4人/10万人であり,男性では19人/10万人,女性で9.9人/10万人と,男性により多く見られる.

パーキンソン病はアジア人やアフリカ系アメリカ人よりスペイン系アメリカ人や非スペイン系白人に頻度が高い.


病因

環境要因

1990年代の後半まで,パーキンソン病は環境要因のみで引き起こされると考えられていた.その後,疫学的な研究によって,特にMPTPのような化学物質や深刻な頭部外傷を含む様々な異なる環境的要因とパーキンソニズムとの関連性が示された.これらの研究によって関連付けられた環境要因のみでは病気を引き起こすのに十分で はないことが明らかとなった.すなわち,明らかにパーキンソン病を引き起こすであろう環境要因にさらされた患者であっても,パーキンソニズムの臨床症状は進行しない例も見受けられるのである.

遺伝学的要因

研究によって,(1)単一遺伝子変異に起因するメンデル遺伝型のパーキンソン病と,(2)メンデル遺伝の形式を欠く家系においてパーキンソン病を発症しやすくさせる要因が明らかとなった.

単一遺伝子の変異は常染色体優性遺伝 ,常染色体劣性遺伝 ,かなり稀ではあるが X連鎖遺伝形式のメンデル遺伝を引き起こす . 複数の遺伝子の病原性多型の発見(表1)は 異なる生物学的プロセスの 破綻がパーキンソン病( 多彩な臨床的 ,神経病理学的表現型を 示す)の原因となる事を示唆している .これまで に,シナプス伝達 ,ミトコンドリアの質のコントロール ,リソソームを媒介としたオートファジーの ,3つの異なるが相互に 関連した細胞のプロセスが関連していることがわかっている.

表1は分子生物学的機序が確認されたパーキンソン病を示している. 一部の遺伝子やそれらの病理学的,臨床 的意義は以下の段落に記載する.注)「リスクファクター/感受性」はパーキンソン病を診断する 目的で は使用しないので ,表1には含んでいない.

表1 パーキンソン病:分子遺伝学

遺伝形式

遺伝子座

遺伝子名

この遺伝子の変異によるパーキンソン病の割合

Marrasらに提案された命名法

産生蛋白

常染色体優性

PARK1

SNCA 1

まれ

PARK-SNCA

αシヌクレイン

PARK8

LRRK2 2,3

1%〜2%

PARK-LRRK2

ロイシンリッチリピートセリン/スレオニンプロティンキナーゼ2

PARK17

VPS35 4,5,6,7,8

まれ

PARK-VPS35

VPS35

常染色体劣性

PARK2

PARK2 10

1% 9

PARK-PARKIN

パーキン

PARK6

PARK1 12

まれ11

PARK-PINK1

セリン/スレオニンプロティンキナーゼPINK1

PARK7

PINK7 13

まれ

PARK-DJ1

プロティンDJ1

PARK9

ATP13A2 14

まれ

PARK-ATP13A2

Probable cation-transporting ATPase 13A2

PARK15

FBX07 15,16

まれ

PARK-FBX07

FBX07

SLC6A3

SLC6A3 17

まれ

ナトリウム依存性ドパミントランスポーター

X連鎖

PARK12

TAF1 18,19

まれ

DYT/TAF1

転写開始因子 TFIID サブユニット1

Parkinson disease:Phenotypic Series to view genes associated with this phenotype(OMIM.)参照

  1. Polymeropoulos et al [1997]
  2. Funayama et al [2002], Paisán-Ruíz et al [2004], Zimprich et al [2004]
  3. いくつかの変異をコードする非同義のLRRK2は患者や制御に影響を与えるとされるが,稀なアレルの変異体の臨床的意義を解釈する上で注意が必要である.
  4. Vilariño-Güell et al [2011]
  5. Zimprich et al [2011]
  6. Lesage et al [2012]
  7. Sheerin et al [2012]
  8. Sharma et al [2012]
  9. PARK2の変異はパーキンソン病の患者の1%程だが,若年発症のパーキンソン病では50%にのぼる
  10. Kitada et al [1998]
  11. PARK6 の変異はパーキンソン病の中でもまれな原因であるが,若年発症のパーキンソン病患者の1〜7%にのぼる.
  12. Valente et al [2001], Valente et al [2004]
  13. van Duijn et al [2001]
  14. Ramirez et al [2006]
  15. Di Fonzo et al [2009]
  16. Paisán-Ruiz et al [2010]
  17. Kurian et al [2009]
  18. Lee et al [1991]
  19. Graeber & Muller [1992]

常染色体優性遺伝性パーキンソン病

いくつかの遺伝子におけるヘテロ接合の病原性変異は, 常染色体優性遺伝形式のパーキンソン病の原因となる.これらは一般的に常染色体劣性遺伝形式のパーキンソン病よりも 発症が遅い.

PARK1(PARK-SNCA)  SNCAはパーキンソン病の患者において最初に変異が発見された 遺伝子であり ,パーキンソン病の病因 や恐らく他の神経変性性疾患において中心的役割を果たすと考えられているαシヌクレインをコードしている.タンパクはパーキンソン病の中心的病理学的所見であるレビー小体に認められる.
SNCAにおける病 原性変異は , 一塩基多型から二重,三重の遺伝子重複に及ぶ.一般的に,病 原性変異 のヘテロ接合体である患者では,レボドバへの反応と レビー小体の存在を含む非メンデル遺伝形式のパーキンソン病と同様の臨床的病理学的所見がみられる.しかしながら,SNCA病原性変異を有する患者のほうが発症が早い(46歳).

PARK8(PARK-LRRK2)  LRRK2において,12ほどの異なる病原性変異が報告されている.最も頻度が高いp.GLY2019Ser変異は常染色体優性遺伝型のパーキンソン病患者の5−7%に認められるが,散発例では1−2%に過ぎない.注目されるのは ,GLY2019Ser変異の頻度 が特定の 祖先に由来する集団において高い事である .例えば,ア シュケナージ系ユダヤ人のパーキンソン病患者間におけるこの変異の頻度は15%〜20%,北アフリカ系では30〜40%と推定される.
LRRK2遺伝子の病原性変異をヘテロ接合で持つ人の発症年齢は 非常に幅がある. 典型的には ,おおよそ58歳位で発症し ,非メンデル遺伝形式と似たような臨床所見を 示す.
LRRK2の変異は不完全浸透 である.すなわち ,病 原性変異をヘテロ接合 で持つ人々のうちのいくらかは臨床的所見がみられない .

PARK17(PARK-VPS35)  2011年,遅発性パーキンソニズムの家系において,VPS35遺伝子に620番目のアスパラギン酸がアスパラギンにおきかわる病理学的変異が見つかった.その研究結果はすぐに追試され,後にVPS35の病理学的変異として追加,同定された.

常染色体劣性遺伝性パーキンソン病

いくつかの遺伝子(例えば,PARK2[早発性パーキンソン病タイプに関係する],PINK1[若年性パーキンソン病タイプに関係する],もしくはPARK7)における両アレルの病 原性変異は常染色体劣性遺伝性のパーキンソン病をもたらす.これらの疾患は,早期発症で病気の進行は遅く,概してパーキンソン病の非 運動症状は軽度であるといった 類似の臨床症状 を示す.
PINK1やPARK2におけるヘテロ接合の病 原性変異は常染色体優性遺伝形式 の発症原因となるといういくつかの根拠もあるが,ほとんどの場合において病気を引き起こすアレル が1つだけでは充分とは言えない.

X連鎖遺伝性パーキンソン病

これまでにX連鎖遺伝性パーキンソン病を引き起こすものとして知られているのはTAF1遺伝子の変異だけである.この遺伝子の変異は稀で,Panayan(フィリピン人)起源の人々の間でのみしか見つかっていない.

多因子および原因不明

単一遺伝子(メンデル遺伝)のパーキンソン病は全患者の5%未満であり,それは更なる未知の遺伝子座における多型 が疾病リスクの1つとなる事を示唆している.全ゲノム関連 解析(GWAS)のような試みは,パーキンソン病の感受性因子となりうるようないくつかのゲノム領域や特定の遺伝子 を同定した.しかしながら,感受性遺伝子座の病理的または臨床上の意義や遺伝子 相互または遺伝子と環境 との相互作用についても 検討しなければならない点が多い.


評価手順

ひとたびパーキンソン病の診断 が確立 した際には ,以下の 評価は特定の単一遺伝子(家族性)形式かどうかの決定に用いることができ,予後や遺伝カウンセリングの一助となるだろう.

家族歴

特に運動障害の有無に気を付けながら,3世代の家族歴を聞き取るべきである.発症年齢は患者ごとに記入する.神経画像診断所見や剖検結果といった家系内患者の医療記録も入手すべきである.

臨床評価

パーキンソン病に合致する症状を持つことを気にしている患者の第1度近親者は,神経専門医,できれば運動障害専門を専門とする医師の診察を受けるべきである.

分子遺伝学的検査

単一遺伝子検査 メンデル遺伝(家族性)形式が疑われるパーキンソン病の発端者の分子遺伝学診断としての一つの戦略は表1で挙げられた1つないしそれ以上の遺伝子を逐次的に検査することである.

マルチ遺伝子パネル 家族性のパーキンソン病が疑われる発端者の分子遺伝学診断としてのもう一つの戦略は マルチ遺伝子パネルを使用する方法である.注) マルチ遺伝子パネルに使われる遺伝子や手法は検査施設や時期によって異なる.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

パーキンソン病は一般に原因が多様であるため,患者や患者家族への遺伝カウンセリングは家族ごとの事情を考慮して行われなければならない.

上記の「病因」の項で挙げられた遺伝子のいくつかは,発病型変異が常染色体優性,劣性遺伝形式もしくはX連鎖遺伝形式で受け継がれる.

パーキンソン病の発症は,頭部外傷や農薬使用などの環境的危険因子と複数の感受性遺伝子の影響による発症がほとんどであると考えられる.

患者家族のリスク - 常染色体優性パーキンソン病
 
発端者の両親

  • 常染色体優性遺伝パーキンソン病と診断された患者の殆どは罹患した親がいるが ,家系内における疾患に気づいてなかったり ,発症前に親が早期死亡していたり ,罹患している親は遅発性発症であったりして浸透率が減少することにより ,家族歴がないように見える場合もある .
  • パーキンソン病の発端者は ,新生の病原性突然変異の可能性があるが ,現在のところ 新生突然変異の比率は不明である.

発端者の 同胞

  • 発端者の 同胞のリスクは ,発端者の両親の遺伝的状況による .
  • もし 発端者の親が 罹患しているか ,もしくは病原性変異を持っていたら, 同胞が変異を受け継ぐリスクは50%である .

発端者の子孫

常染色体優性パーキンソン病患者の子が変異を受け継ぐ確率は50%である.

患者家族のリスク - 常染色体劣性パーキンソン病
 
発端者の両親

  • 患者の親は必然的にヘテロ接合であり,変異アレルを1つ持つ.
  • 病因の項で記載されているように ,ヘテロ接合体 が臨床所見を示す 可能性を示唆している一方で ,単一の病原性変異の存在は, 疾患を引き起こすのには不十分であるかもしれない.

発端者の 同胞

  • 受胎時に ,常染色体劣性遺伝のパーキンソン病の患者の 同胞が罹患 するリスクは25% ,
  • 無症候性の保因者となる確率は50% ,罹患者でもなく保因者でもない確率は25%である.
  • 病因の項で記載されているように ,ヘテロ接合体 が臨床所見を示す 可能性を示唆している一方で ,単一の病原性変異の存在は ,疾患を引き起こすのには不十分であるかもしれない.

発端者の子孫

常染色体劣性遺伝の患者の子孫(他の親が病原性変異を持っていないことを条件とする)は,必然的にヘテロ接合体(保因者)である.

患者家族のリスク – 多因子および原因不明

典型的な遅発性パーキンソン病の患者とその家族に対する再発リスクのカウンセリングは ,経験的であり ,比較的非特異的 なものとなる .パーキンソン病はかなり 高頻度な疾患である.疾患を発症する生涯リスクは概ね1%から2%である .

発端者の両親 ,同胞,子孫

  • パーキンソン病の患者の第1度近親者(両親 , 同胞 ,子孫)のリスクは調査ごと ,国ごとに異なる .アメリカにおける最大の調査では ,患者の第1度近親者は ,パーキンソン病の家族歴のない患者より2.7倍から3.5倍パーキンソン病に罹患しやすい .それゆえ ,パーキンソン病に罹患する生涯積算リスクは3%から7%である .
  • 若年発症の罹患者や罹患した患者数の増加は第1度近親者のリスクを増加させるが ,もしその家系が特徴的な常染色体優性遺伝もしくは常染色体劣性遺伝でないならば ,その増加量は明らかではない .

遺伝カウンセリングに関連した問題

PDNAバンキングは将来の使用のためのDNA(通常は白血球から抽出されたもの) を保管 するものである.将来 ,検査手法や遺伝子 ,アレル変異や疾患における理解が進歩するかもしれないので,,罹患者のDNAを貯蔵しておくことは考慮されるべきである.

出生前診断

病原性変異が家系内患者に同定されている場合 ,単一遺伝子変異によって引き起こされる家族性パーキンソン病のいくつかのタイプに対して高リスクの妊婦に対する出生前診断は .この病気や原因遺伝子に対する検査もしくは個別の出生前診断かを提供する臨床検査から利用可能になるかもしれない .
成人期発症性疾患に対する出生前診断への希望は一般的ではない .出生前診断を行う事に対しては ,専門医の間でも家族によっても考え方が異なるだろう .特に, 検査が妊娠中絶を考慮した上で行われる場合には尚のことである .大抵の医療機関では出生前診断を受けるかどうかの決定は両親の選択にゆだねると考えるであろうが ,この問題に関しては慎重な議論が必要である.

着床前診断(PGD) は,病原性変異が同定された家系に対して選択可能である.


臨床的マネジメント

パーキンソン病治療の中心は,レボドパの補充療法で,これは一旦脳に入るとドパミンに変換され る.その他,ドパミン作動薬 ,COMT阻害薬やMAO-B阻害薬 ,抗コリン剤やアマンタジンも効果的である.

進行していたり,日常生活に支障をきたすような症状に対しては,視床下核 や淡蒼球へ の深部脳刺激のような脳神経外科的 治療が行われることもある.

また,作業用法,理学療法,言語療法が有効であることもある.

血縁者に対するリスク評価

遺伝カウンセリングを必要とする遺伝的リスクを持つ 血縁者の検査に関しては,「遺伝カウンセリングに関連した問題」の項を参照のこと.

研究中の治療法

病気や状態の広範囲にわたる臨床研究における情報へのアクセスに関しては,ClinicalTrials.govを調べること.
注:この疾患に対する臨床試験が存在しないこともある.


関連情報

  • American Parkinson Disease Association Inc. link
  • The Michael J. Fox Foundation for Parkinson's Research link
  • National Library of Medicine Genetics Home Reference link
  • National Parkinson Foundation link
  • Parkinson's Disease Foundation, Inc link
  • WE MOVE (Worldwide Education and Awareness for Movement Disorders) link
  • 全国パーキンソン病友の会link 
  • 難病情報センター link

更新履歴

  1. Gene Review著者: Nathan D Pankratz, PhD, Joanne Wojcieszek, MD, Tatiana Foroud, PhD.
    日本語訳者: 窪田美穂(ボランティア翻訳者),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
    Gene Review 最終更新日: 2007.10.2. 日本語訳最終更新日: 2008.3.24.
  2. Gene Review著者: Janice Farlow, BS, BA, Nathan D Pankratz, PhD, Joanne Wojcieszek, MD, Tatiana Foroud, PhD.
    日本語訳者: 鷹巣祐子( 札幌医科大学大学院修士課程遺伝カウンセリングコース),櫻井晃洋( 札幌医科大学医学部遺伝医学)
    Gene Review 最終更新日:20 14. 2.27. 日本語訳最終更新日: 2015.11.21 (in prenset)

原文 Parkinson Disease Overview

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