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ピリドキシン依存性てんかん
(Pyridoxine-Dependent Seizures)
[Pyridoxine Dependency, Pyridoxine-Dependent Epilepsy, Vitamin B6-Dependent Seizures]

Gene Review著者:Sidney M Gospe, Jr, MD, PhD
日本語訳者: 山内あけみ(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
Gene Review 最終更新日: 2009.11.10. 日本語訳最終更新日: 2012.1.31.

原文 Pyridoxine-Dependent Seizures


要約

疾患の特徴 

ピリドキシン(pyridoxine)依存性てんかんの特徴は、抗けいれん剤で制御できないが,毎日のピリドキシン(VB6)の多量補給によって臨床的にも脳波的にも改善される難治性発作である。ピリドキシン依存性てんかんの症例では,いろいろな臨床的発作型が報告されている。遷延性発作、てんかん重積の頻発を含め、激しい症状が典型的であるが、部分発作、全身痙攣、脱力発作、ミオクロニー発作、点頭てんかんなどの独りでに治まる発作も繰り返し起こる。罹患者は臨床的症状を伴わない脳波的上の発作も示す。古典的な新生児発症例では、生後まもなくけいれん発作を経験し始める。非定型例には後期発症例(2才まで); 当初は抗痙攣剤に反応し、やがて治りにくくなるもの; 初期の内はピリドキシンが効果なく、数ヶ月後にピリドキシンで制御できるもの; そしてピリドキシンを中止後、長期間(5ヶ月半以内)無発作の期間が続く場合などを含む。通常、知能低下を伴う。

診断・検査 

ピリドキシン依存性てんかんの診断は臨床的見地から行う。診断は、通常の抗痙攣剤で抑制不可能なけいれんを経験した症例で、EEG 、酸素飽和度、生命兆候などを同時に観測しながら、ピリドキシン100mg を静注することで行われる。ピリドキシン依存性てんかんの症例では普通は数分間で臨床的なけいれんは治まる。もし、臨床的効果が得られないなら、静注を順次繰り返し総量 500mg まで増量する。脳波にも対応した変化が見られるが、数時間遅れるかも知れない。また、抗痙攣剤に反応なく、独りでに治まる痙攣を繰り返す小児には 経口ピリドキシン30mg/kg/day の開始をする。ピリドキシン依存性発作の小児例では、3日から5日で臨床的発作が消失する。尿、血漿、脳髄液の特異的マーカーであるアミノアジピン酸セミアルデヒドデヒド (α-AASA) の測定は研究室レベルで測定が出来るし、ピペコリン酸(非特異的マーカー)の測定は臨床検査室でも行える。唯一ピリドキシン依存性てんかんと関連があるとされるALDH7A1の分子遺伝子学的検査は臨床検査室で行うことができる。

臨床的マネジメント 

症状の治療 ピリドキシン依存性てんかんの治療は基本的にはピリドキシンの毎日の補填である; 従って全ての抗痙攣剤を中止でき、発作治療はピリドキシンの薬用量連日単独治療を継続する。痙攣症状と/または脳症が急性期に悪化するのを予防するために、数日間ピリドキシンを倍量投与することもある。有病者には特別支援教育を提供する。

二次合併症の予防: ピリドキシンの過剰投与は、可逆的感覚障害を起こしことがある。

追跡調査: 感覚器神経障害の臨床兆候出現の監視と知的機能の定期的評価。

リスクのある親族の検査 家系の病因遺伝子変異が判明した場合:疾病発端者のリスクのある新生児同胞では、早期の診断と治療により罹患状態と致死率を低下させるために分子遺伝子検査を行う。 

家系の病因遺伝子変異が不明な場合: 診断と治療ため、早期にピリドキシンを投与(脳波観察下で)する。

遺伝カウンセリング 

ピリドキシン依存性てんかんは常染色体劣性遺伝性である。妊娠した場合、罹患者の兄弟は、25%が罹患者、50%が無症状の保因者であり、25%は無病で非保因者である。リスクのある親族の保因者検査と、リスクの高い妊娠時の出生前検査は、いずれも、家系の病因遺伝子変異が分かっているなら、可能である。


診断

臨床診断

Goutie`res & Aicardi [1985] が勧告したように、ピリドキシン依存症は以下の状況における難治性発作と考えるべきであろう:

  • 妊娠中や周産期に異常のない本来正常な乳児に起こる原因不明の発作。
  • 長時間継続する焦点性あるいは一側性けいれんで、しばしば部分的に意識を保つもの。
  • 発作前の不機嫌、落ち着きなさ、啼泣、嘔吐の出現。
  • しばしば痙攣重積で死亡の激しい痙攣障害の兄弟例
  • 両親が血族結婚

臨床診断は以下のように行われる:

  • 緊急時で臨床的発作が起こっている場合、脳波、酸素飽和度、生命兆候を監視しつつ、ピリドキシン100mg を静脈注射する。ピリドキシン依存性けいれん症例では、発作は数分で次第に鎮静する。臨床的反応がない場合は、静注量が総量500mg に達するまで繰り返す。対応した変化が脳波で観察されるはずである。場合によっては、変化は数時間遅れる事もある[Gospe & Hecht 1998, Baxter 2001, Gospe 2002]。ピリドキシン依存性けいれん症例によってはこの試験後に、著しい神経学的および心肺性機能低下が見られるので、緊密な全身管理が不可欠である。
  • ピリドキシン 30 mg/kg/day の経口投与。ピリドキシン依存性けいれん患者では臨床発作は3から5日以内に消失する。 [Baxter 2001, Gospe 2002, Gospe 2006]。

上記の何れの場合も、ピリドキシン依存性けいれんの臨床診断は、抗痙攣剤の中止、さらにピリドキシン連日投与を中止する事で確定する。もし発作が再発し、ピリドキシン単独投与で再び発作が抑制されれば、ピリドキシン依存性てんかんの臨床診断か確定する。生化学マーカーの異常値やALDH7A1 遺伝子の変異が検出されれば、この臨床的な確定検査はしなくても良い(検査の項を参照)。

検 査

Pipecolic acidピペコリン酸)。 数人のピリドキシン依存性てんかん症例で、ピリドキシンの長期治療の前でも後でも、血漿と脳脊髄液でピペコリン酸濃度の上昇が検出されている[Plecko et al 2000, Plecko et al 2005]。しかしながら、ある症例では何年も治療した後、ピペコリン酸濃度は正常化していた。そのため、ピペコリン酸はこの疾患では非特異的診断マーカーと考えるべきである [Plecko et al 2005]。

Alpha-aminoadipic semialdehyde (α-AASA). 尿中α-AASA濃度の上昇はピリドキシン依存性てんかんの特異的マーカーである[Mills et al 2006, Struys & Jakobs 2007];   尿中α-AASA 濃度測定は極限られた臨床レベルで可能である。血漿中α-AASAの上昇も見られる; 血漿α-AAS の測定は研究目的で行なわれている[Sadilkova et al 2009]。

分子遺伝学的検査

遺伝子. ALDH7A1 はピリドキシン依存性てんかんに関連する唯一の遺伝子である[Mills et al 2006]。

臨床検査

配列分析 Mills et al [2006]Plecko et al [2007]は24家族29人の“古典的新生児ピリドキシン依存性てんかん”罹患者を研究し、全員がALDH7A のホモ接合か複合ヘテロ接合の変異であることを決定した。この2つの研究に非定的表現の患児は含まれていない。

Bennett et al [2009]はピリドキシン依存性の18家系を研究した:

  • 古典的な新生児発症発作の12例は以下の通りであった:
    • 11例はALDH7A1のホモ接合か複合ヘテロ接合変異であった。
    • 1例は一側に変異対立遺伝子を持ち、同時に血漿ピペコリン酸濃度の顕著な上昇を伴った。
  • 遅発性のピリドキシン依存性てんかんの6例は以下の通りであった:
    • 3例はALDH7A1のホモ接合か複合ヘテロ接合変異であった。
    • 3例ではALDH7A1 に変異を判定できなかった。

表1. ピリドキシン依存性てんかんの分子遺伝子検査のまとめ.

遺伝子
検査方法
検出される変異
検査法による変異検出率
検査実施
古典的な早期発症てんかん
遅発性てんかん

ALDH7A1

シークエンス解析

シークエンス変異

36/36 2

3/6 3

臨床graphic element

検査実施はGene Tests Laboratory Directoryでの実施可能度を参照した。Gene Reviiewsはその検査がUS CLIA-認可検査機関、または臨床検査機関によりGene Tests Laboratory Directoryに記載された検査である場合のみ、遺伝子検査が臨床的に可能であると記載する。Gene Testは検査所が提出した情報を確証したものではなく、検査所の資格や実施法を保証するものでもない。臨床家は、情報の正当性を知るには各研究所と直接連絡する必要がある。

注1. 当該遺伝子の変異を検出するために使われる検査方法の能力。

注2. 35/36の家族では2ヶ所の検出可能な変異があった;1家族では1カ所の検出可能な変異があり、血漿ピペコリン酸濃度上昇を伴っていた。[Mills et al 2006, Plecko et al 2007, Bennett et al 2009].

注3. Bennett et al [2009]

検査結果の解釈 遺伝子配列分析結果の問題点は関連サイトを参照。 

発端者の診断を確認/確定するためにピリドキシンの治療方法投与で発作が停止することで、ピリドキシン依存性が臨床的に診断されたならば、生化学的と遺伝子レベルでの確認が推奨される。

  • α-AASA の臨床的検査は容易に出来ないので、間接的なマーカーである血漿ピペコリン酸の測定が考えられる。その値の上昇はピリドキシン依存性てんかんの診断を強く支持するものである。
  • さらにALDH7A1 遺伝子の配列解析をすべきである。

リスクのある親族の保因者試験には、家族内病因遺伝子変異の同定が前もって必要である。

注意:この常染色体劣性疾患では保因者はヘテロ接合体であり、疾患に進展する危険性はない。

リスクのある新生児血縁者の発症前検査には、家族内病因遺伝子変異の同定が前もって必要である。

リスクのある妊娠のための出産前診断や着床前診断(PGD) は事前に家族内病院因遺伝子変異の同定が必要である。 

遺伝子的に関連する(対立因子)の障害

ピリドキシンに反応しないか、少ししか反応しない難治性てんかんで、葉酸に反応する(葉酸反応性てんかん)乳児が少数例、報告されている[Hyland et al 1995, Torres et al 1999, Nicolai et al 2006]。これらの小児にα-AASA値の上昇とALDH7A1 の変異が認められており、葉酸由来のテンカンはピリドキシン依存性てんかんの相同遺伝子上にあることが示唆されている[Gallagher et al 2009]。


臨床像

自然経過

ピリドキシン依存性てんかんの全例にいえる臨床像の特徴は、抗けいれん剤で制御出来ず、ピリドキシンの連日大量投与により臨床的、脳波的に改善される難治性のけいれんである。

古典的ピリドキシン依存性てんかん ピリドキシン依存性てんかん症例では多くのけいれん発作型が報告されている。遷延型発作や頻回のてんかん発作重責など、劇的な病状が典型的であるが、部分的発作、全身発作、脱力発作、ミオクロニー発作、点頭てんかん等、自然に止まる発作も繰り返し起こる。臨床症状を伴わない脳波上の発作を認めることがある。

古典的症状の新生児では、生後まもなくけいれんが発症する。あとから振り返って、多くの母親は、第2三半月期(訳注;妊娠14-17週)後期に始まる、恐らく胎児のけいれんと思われる、通常では見られない子宮内の動きについて報告する[Baxter 2001]。罹患新生児は臨床的痙攣に先だって、しばしば脳症病状期(不機嫌、不安定気分、哺乳低下)を示す。Apgar 指数低値と異常な臍帯血ガスも見られる。このため、これらの新生児はしばしば低酸素−虚血性脳症と診断される [Haenggeli et al 1991, Baxter 1999]。同様な脳症期間は、ピリドキシン依存性発作の年長児にも見られ、特にピリドキシン治療を受けている子が、成長したり、併発的感染症、特に胃腸炎のため、ビタミン必要量が増大し、けいれん発作を起こす前にその脳症症状が見られる。

知能障害、特に言語表現障害は、ピリドキシン依存性てんかんの症例に共通する。数例、正常知能の報告例もある[Haenggeli et al 1991, Ohtsuka et al 1999, Basura et al 2009]。けいれん発作の早期発症は認知機能の予後を悪化させ、診断と有効なピリドキシン治療開始までの長さが障害の重さと相関する[Baxter 2001, Kluger et al 2008, Basura et al 2009]。

罹患が疑われる胎児への出生前(母体)ピリドキシン補給治療は、神経発達を改善させる[Baxter & Aicardi 1999, Bok et al 2009]。しかし、これは常に成功するものではなく、胎児期と出生早期の治療をしたにも拘わらず、罹患児達が重度神経発達障害を持った1家族の報告がある[Rankin et al 2007]。

ピリドキシン依存性発作をもつ症例について精神科の専門的な臨床調査は殆どされていない。数少ない研究は、言語性能力が非言語性能力より障害が重いと指摘している。[Baxter et al 1996, Baynes et al 2003]。

非定型的ピリドキシン依存性てんかん。この表現型が多彩な疾患の遅延性発症や他の非定型的な病状も記載されている[Goutie`res & Aicardi 1985, Coker 1992, Grillo et al 2001, Basura et al 2009]。これらに以下のものが含まれる; 遅発発症けいれん(2才まで); 初期には抗けいれん剤に反応し、後に難治性になるけいれん; 初期にはピリドキシンに反応せず、数ヶ月後にピリドキシンで制御出来たけいれん; そしてピリドキシン停止後、長期間の無発作期間(5 1/2 ヶ月まで)が見られる症例。遅発発症例でALDH7A1 に変異が認められるものもいるが、他の症例では遺伝子配列変異、生化学マーカーの上昇、5q31 座位との連鎖が認められない[Bennett et al 2005, Kabakus et al 2008, Bennett et al 2009]。 (鑑別診断参照)  

脳波/神経画像。ピリドキシン依存性てんかん症例では多様な脳波異常 [Mikati et al 1991, Nabbout et al 1999] や画像の異常[Baxter et al 1996, Gospe & Hecht 1998] が記載されているが、どれもこの疾患に特異的ではない。

遺伝子型―表現型の相関性

早発性と遅発性てんかん両方のALDH7A1 の配列変異は記載されているが、遺伝子型と表現型の相関は分かっていない[Mills et al 2006, Plecko et al 2007, Rankin et al 2007, Salomons et al 2007, Bennett et al 2009, Striano et al 2009]。遺伝子型と表現型の関連性を知るには、遅発性や他の“非定型症例”のさらなる研究が必要である。

発生頻度

Hunt et al [1954]により最初に記載された様に、ピリドキシン依存性てんかんを原因とする難治性新生児てんかんはまれであると考えられる。ピリドキシン依存性てんかんの生化学的、遺伝学的な異常が発見される以前に、ほぼ100例の症例が報告されていた[Baxter 1999]。後に これらの症例の多くとと、それ以外の何例かの症例でALDH7A1 の遺伝子配列分析が報告された。

この疾患の疫学的研究はわずかしか報告されていない。

  • 英国北部での16歳以下のピリドキシン依存性てんかんの発生率は 1:100,000 と推定された[Baxter et al 1996]。
  • 英国とアイルランド共和国の国家的調査では発生率はほぼ 1:700,000 と記載された[Baxter 1999]。
  • オランダで行われた調査では出生時罹患率は 1:396,000 と推定している[Been et al 2005]。
  • ドイツではピリドキシン投与が新生児てんかんの標準治療プロトコールの一部であるが、出生児の本疾患と思われる症例の罹患率は 1:20,000 と報告されている[Ebinger et al 1999]。

鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

新生児、小児、3歳未満の幼児の難治性てんかんで基礎疾患(例えば症候性てんかん)が特定できない場合、ピリドキシン依存性てんかんを原因と考えるべきである。

特に、新生児で脳症とてんかんを示し、低酸素虚血性や他の代謝障害の確定的証拠のない症例では検索する必要がある[Baxter 1999, Gospe 2002]。

北米6家族の研究で1家族は 5q31座への関連が排除され、ピリドキシン依存性てんかんの遺伝的異質性を示唆している。この家族の子供たちはピリドキシン治療に反応した遅発発症点頭てんかんに罹患していた [Bennett et al 2005]。後に、この子たちとさらに他の2人のピリドキシン反応性遅発発症点頭てんかんの小児ではALDH7A1 の変異は見られなかった [Bennett et al 2009]。       

難治性てんかんの子供達の中にはピリドキシンの投与で、けいれんがわずかに改善するかもしれない。この場合、あるいは、抗けいれん剤を中止しピリドキシンを継続したらけいれんが再発した場合、生化学的や分子レベルで確認されない症例は、ピリドキシン依存性てんかんとは診断すべきでなく、むしろピリドキシン反応性てんかんと言うべきである [Baxter 1999, Basura et al 2009]。記録すべきことは、ピリドキシンに部分的にしか反応しなかった難治性てんかんの1例でALDH7A1 変異が証明されており、このことは、恐らく二次的なてんかんの原因が発症したことを示唆している[Bennett et al 2009]。

他の先天性ピリドキシン依存症状態が記載されているが(例えばピリドキシン依存性貧血、ピリドキシン依存性病型ホモシスチン尿症、キサンツレン酸尿症, シスタチオニン尿症)、これらの病状は遺伝医学的にピリドキシン依存性てんかんと関連がない。

Pyridoxal phosphate (PLP)に反応するが、ピリドキシンには反応しない、希な形の新生児てんかん性脳症が報告されている。罹患者は pyridoxine のリン酸化型とpyridoxamineを PLPに介入変換する酵素 であるpyridox(am)ine 5'- phosphate oxidase をコードするPNPO 遺伝子に変異がある [Mills et al 2005, Hoffmann et al 2007, Bagci et al 2008]。この病態の小児のけいれんはピリドキシンに反応しない; 従って、この障害はピリドキシン依存性てんかんと臨床的に区別される。ピリドキシンよりpyridoxal phosphateに臨床的に反応する難治性てんかんの小児症例の報告もある[Wang et al 2005]。これらの小児のてんかんの生化学的基礎はまだ確立していない[Baxter 2005, Gospe 2006]。

他の原因による新生児難治性てんかんに以下のものがある:

  • “フォリン酸反応性てんかん”、希であまり性状のわからないもの。罹患新生児は連日フォリン酸(抗葉酸拮抗因子)補給に反応する[Hyland et al 1995, Torres et al 1999, Nicolai et al 2006]。フォリン酸反応性てんかんはピリドキシン依存性てんかんと連鎖していることが明らかにされた [Gallagher et al 2009]。(遺伝子的に関連する障害を参照)
  • 滑脳症や脳の構造奇形の存在により鑑別できるその他の脳奇形(参照;福山型先天的筋ジストロフィ、DCX- 関連性障害、LIS1- 関連性●滑脳症/皮質下帯状異所性)
  • その他、検査室試験で特定出来るアンモニア、乳酸、アニオンギャップの上昇を伴う希な先天性代謝異常。
  • 脳内出血や感染症(脳膜炎、脳炎)のような重症な後天性神経障害。

臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

ピリドキシン依存性てんかんと診断された罹患者の病状の範囲を確立するために、発達評価をすることが適切である。

症状に対する治療

ピリドキシンの連日補給により、一旦てんかん発作がコントロールされたら(初期症状の予防、参照)全ての抗けいれん剤を中止でき、薬用量のピリドキシン単独連日投与すれば、けいれんのコントロールは続く。

特別支援教育を提供すべきである。

初期症状の予防

ピリドキシン依存性てんかん症例の有効な治療は、生涯、ピリドキシン補給を必要とするが、罹患者が少なく最適薬量の評価ができていない。

ピリドキシンの一日摂取勧告量(RDA)は乳児で 0.5mg、成人で2.0mg である。一般的に、ピリドキシン依存性てんかん症例では、ピリドキシン一日量50-100mg で劇的にけいれんがコントロールされる。症例によっては、もっと少量でけいれんをコントロールできるが、いくらか高濃度を必要とすることもある[Haenggeli et al 1991, Grillo et al 2001, Basura et al 2009]。

罹患者は、胃腸炎や発熱性呼吸器感染などの急性疾患の際に、けいれんと、または脳症の再燃を起こすことがある。このような時、現病の再燃を予防するには、急性症が修まるまで数日間、投与量を2倍にするのがよい。

より多い投与量が知能発育を促すとしている研究もある。;15-18mg/kg/day が最適で[Baxter 2001]、 500mg/day を越えるべきでない[Gospe 2002]と示唆されている。

その様な治療は生涯必要とされる; 罹患症例はピリドキシン欠乏というよりも代謝的に依存している。ピリドキシン補給遵守は重要である: ピリドキシン中止から数日で重積けいれんが発症するかもしれない。

2次合併症の予防 

ピリドキシン神経毒性により可逆的感覚神経障害(神経節症)が発症する可能性があるため、熱心すぎるピリドキシンの使用は避けるべきである。初めは、ピリドキシン“メガビタミン療法”を受けていた成人で報告されたのだが、ピリドキシン依存性てんかんの2例に感覚神経障害が報告された[McLachlan & Brown 1995, Rankin et al 2007]。その内1例は思春期青年で、続発性てんかんが発症し、1日量2gのピリドキシン投与を受けていた[McLachlan & Brown 1995]。

定期診察

罹患者は、関節位置感覚、アキレス腱反射、歩行、立った姿勢の定期的評価を含め、感覚神経症の臨床兆候を経過観察が必要である[Baxter 2001]。 

知能の定期的評価を提供される必要がある。 

リスクのある親族の検査

新生児には、検査が終了するまで、経験的ピリドキシン補給治療を施行するべきである。

もしその家系の病因遺伝子変異がわかっていない場合 、以下を推奨する: 

  • 発端者の年少同胞が脳症症状やてんかんを発症した場合は、診断のためにも、治療目的からも、ピリドキシンを早急に投与しなければならない(理想的には脳波の監視をしながら)。
  • ピペコリン酸は、ピリドキシン依存性てんかんの間接的な生体マーカーである。もし発端者に血漿ピペコリン酸の上昇が見られたら、年少同の同様なピペコリン酸上昇はピリドキシン依存性てんかんの診断を支持するかもしれない。

注意: 発端者の年長同胞でピリドキシン依存性のてんかんを経験していない者には上記の内容は当てはまらない。

リスクのある親族の検査に関する遺伝子カウンセリングに関しては、遺伝カウンセリングの項を参照。

研究途中の治療

さまざまな疾病と症状の臨床研究に関する情報を得るにはClinical Trials.govを、検索。注意:本疾患は臨床試験をしていないかもしれない。

その他 

遺伝クリニック 遺伝子専門家で構成され、自然経過、治療、遺伝形式、遺伝的危険性や、家系内の人の遺伝的リスクのほかに、受益者に必要な資源の情報を当事者や家族に提供する。遺伝検査外来案内を参照。

受益者活用資源を参照疾患に特化した、そして/または、その障害の包括的支援団体を含む。これらの組織は当事者と家族に、情報、支援、他の罹患者達との交流を提供する。

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ピリドキシン依存性てんかんは常染色体劣性遺伝である。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 罹患者達の親は疾患遺伝子のヘテロ接合体であり、1個の変異遺伝子を持つ。  
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である。

発端者の同胞・兄弟 

  • 概ね、罹患者の同胞は、罹患者であるリスクが25% 、症状のない保因者であるリスクは50%、無症状で保因者でもない可能性が25% ある。
  • ピリドキシン依存症は、発端者の年少同胞のてんかん発症の原因と考えられるべきである。この場合、同胞のけいれんにはピリドキシンが、最初に提供されるべきである。
  • リスクのある同胞が罹患していないことが分かった場合、その弟/妹が保因者である危険性は 2/3 である。
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である。

発端者の子

  • この疾患と診断された成人は経過観察されているが、その妊孕性は不明であり、ピリドキシン依存性てんかん症例の子については報告がない。
  • もし罹患者が子供を持ったら、その子は疾患遺伝子のヘテロ接合体(保因者)である。   
  • ヘテロ接合体(保因者)は無症状である。

発端者の他の家族構成員

発端者の両親の同胞が保因者であるリスクは50%である。 

保因者診断

もしその家系の病因遺伝子変異が同定出来ていれば、リスクのある家族構成員の保因者検査は可能である。

遺伝カウンセリングに関連した問題

リスクのある親族の早期診断と治療のための検査の情報は、リスクのある親族の検査の項を参照。

妊娠の管理 本疾患の子供を持つ夫婦の、再発危険率は25% であるので、経験的判断で次回の妊娠後半期に、母親をピリドキシン1日 50-100mg の補給で治療し、さらにけいれんと神経発達障害を防ぐため、新生児をピリドキシン補給で治療するのは正当である[Baxter & Aicardi 1999, Gospe 2002, Bok et al 2009]。 ALDH7A1 遺伝子の分子的検査は出生後に行うことができる; もし両方のアレルに疾患遺伝子変異あれば、ピリドキシン治療を続けなければならない; もし無ければ治療を中止できる。しかし、ある家系では、リスクのある同胞が出生前の治療を受けたが、良好な神経発育を得られず、重症表現であったとの報告されたことを強調すべきである [Rankin et al 2007]。

家族計画 

  • 遺伝のリスクの決定、保因性の明確化、出生前検査の可能性の議論をする、最適な時期は妊娠前である。 
  • 遺伝カウンセリング(生まれてくる子供の潜在的リスクの検討、妊娠の選択を含む)を、罹患者、保因者、または罹患した保因者の疑いのある若い成人に提供する事は適切である。

DNAバンキング

検査技術や、遺伝子、変異、疾患に対する我々の理解も将来改善すると考えられるので、将来の活用のために罹患者の(通常は白血球から抽出された)DNA バンク登録を考慮すべきである。現在の検査法の精度が100% でない場合、DNAバンク登録は特に適切である。DNA バンク登録を提供できる 研究機関リストはtestingを参照。

出生前診断

分子遺伝学的検査 リスクの高い妊娠では、通常ほぼ妊娠15-18 週の羊水穿刺か、ほぼ妊娠10-12 週の絨毛採取(CVS) で得られた胎児細胞から抽出したDNA の分析により、出生前診断が可能である。出生前検査が行われる前に、両対立遺伝子の病原変異が確定していなくてはならない。

注意: 在胎週数は、正常な最終月経の初日または、超音波検査による測定による月経週数で表される。

着床前遺伝子診断 (PGD) は、病因性変異が判別されている家系で可能かもしれない。PGD が提供出来る検査機関リストは、testingを参照。


分子遺伝学   

Molecular geneticsとOMIM の表の情報は、他のところに載っている GeneReview のものとは異なっている:表はより新しい情報を示している可能性がある。―ED (編集者)

表A. ピリドキシン依存性てんかん: 遺伝子とデータベース

遺伝子記号

染色体座

産生蛋白質

座の特性

HGMD

ALDH7A1

5q31

Alpha-aminoadipic semialdehyde dehydrogenase

BIOMDB: 遺伝子変異のデータベーステトラヒドロビオプテリン欠乏の原因Aldehyde Dehydrogenase Gene Superfamily Resource

ALDH7A1

データは以下の標準文献から編集した: 遺伝子座は HGNC; 染色体座、座名、 critical region, complementation group  はOMIM; タンパク質名はUniProt. データベースの記載 (座の特性, HGMD)はここをクリック

表B. ピリドキシン依存性てんかんのOMIN への登録 (OMIMをみよ)

107323

ALDEHYDE DEHYDROGENASE 7 FAMILY, MEMBER A1;  ALDH7A1

266100

EPILEPSY, PYRIDOXINE-DEPENDENTEPD

分子遺伝学的病因

長年、ピリドキシン依存性てんかんは、PLPを助酵素として利用する グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD) の異常に起因するという、仮説が建てられていた。GAD は興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノブチル酸(GABA) に転換する。これらの神経伝達物質は、てんかん発症過程の調節に重要な役割を担う。多くの臨床神経化学研究は、この仮説を間接的に支持していた。しかし、幾つかの研究室はGAD のアイソフォルムとの連鎖を証明出来なかった[Kure et al 1998, Battaglioli et al 2000, Cormier-Daire et al 2000]。

北アフリカの5家系(その中4家系は家族性)を用いた全ゲノム連鎖スキャンの結果、ピリドキシン依存性てんかんの責任遺伝子は染色体 5q31 にマップされたCormier- Daire et al 2000]。最近、特定されたALDH7A1 遺伝子はその染色体領域に位置する。ALDH7A1 の変異がピリドキシン依存性てんかんを起こすことが示された。ALDH7A1 は、タンパク、アルデヒド脱水素酵素族7の一つであるA1を(antiquitin-1)をコードしており、このA1はかつて不明であった生化学基質のアルデヒド脱水素酵素である [Lee et al 1994]。今ではantiquitin-1 が Δ1-piperideine-6-carboxylate (P6C)-α-AASA 脱水素酵素として機能していることが示されている。この酵素の活性異常は、α-AASA のcyclic Schiff 基質であるP6C を増加させる; この2 つの物質が相互に平衡を保っているのである。P6C はさらに、助酵素と共に凝縮してPLPの活性を抑制し、このことが恐らく神経伝達物質の異常な代謝を起こしている。[Mills et al 2006]。

正常な対立遺伝子。ALDH7A1 は1809 塩基を持ち 42 塩基対から352 塩基対の長さの 18 のエクソンから構成されている。コードされている区域は 1533 塩基対の長さである。その遺伝子は 510 のアミノ酸からなるタンパク質を1つコードしている[Mills et al 2006]。コードされたΔ1-piperideine-6-carboxylate (P6C)-α-AASA dehydro- genase蛋白の推定分子量は 55285 である[Lee et al 1994]。

病的な対立遺伝子変異。遺伝子変異は罹患者40 例以上で報告されている( Table A. 参照)。これらは多くのミスセンス変異、1塩基欠失、ノンセンス変異(おそらくノンセンス変異依存mRNA分解機構に導く)、そしてスプライス位置変異(エクソンスキッピングを起こすと予測される)を含む。特定の変異のホモ接合や、2種類の変異を持つ複合ヘテロ接合の症例が報告されている[Mills et al 2006, Plecko et al 2007, Rankin et al 2007, Salomons et al 2007, Bennett et al 2009, Gallagher et all 2009, Striano et al 2009]。幾つかの研究で、p.Glu399Gln (NM_001182.2:c.1195G>C)変異によるグルタミン399残基が 33% の頻度で変異しており、もっとも頻度が高いことが示された[Plecko et al 2007, Salomons et al 2007, Bennett et al 2009]。

正常な遺伝子生産物。Antiquitin-1 は Δ1-piperideine-6-carboxylate-α- aminoadipic semialdehyde dehydrogenase 活性を持ったアルデヒド脱水素酵素である。

変異遺伝子の生産物。2例のミスセンス変異、1例のノンセンス変異、1例の1塩基欠失は全てα-AASA 脱水酸化酵素活性を失う結果となる。一方では別のノンセンス変異はα-AASA dehydrogenase 酵素活性を正常の1.8% まで低下させる[Mills et al 2006]。

資料

参照 Consumer Resources (受益者資源) ;本疾患に関する病気毎の,または保護支援団体の受益者資源を参照.これらの組織は罹患者と家族に,情報,支援,他の罹患者との連絡のために創立されている. GeneTests機構は読者に有益な選別された機関や資料を提供している; GeneTests は他の組織からの情報には責任をもたない.−ED(編集者)

参考事項 

医用遺伝子検索: PubMed 診療質問ページに掲載されている臨床医のために計画された特定のPubMed 検索.


原文 Pyridoxine-Dependent Seizures

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