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赤緑色覚異常
(Red-Green Color Vision Defects)

[Red-Green Color Blindness]

Gene Review著者: Samir S Deeb, PhD, Arno G Motulsky, MD
日本語訳者: 根岸律葵(翻訳ボランティア),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
Gene Review 最終更新日: 2011.9.29. 日本語訳最終更新日: 2013.2.9

原文 Red-Green Color Vision Defects 本項目はGeneReviewsでは削除された(2020.11.28確認) 。参考として,Achromatopsia を示す。


要約

疾患の特徴 

遺伝性の赤緑色覚異常は大半男性に現れる。眼科的もしくは他の臨床的異常は伴わない。1型3色覚、2型3色覚といった色覚異常を有する人(すなわち三原色異常者)の大半は、色を問題なく区別することができる。軽度の赤緑色覚異常を有する人の一部は、検査されるまで異常に気付かないこともある。二色性の色覚異常を有する人(すなわち2色覚者)は、正常な赤緑色覚を有するに比べ、カモフラージュされたテクスチャーを判読する能力に長けている。北欧系人種では、男性の8%、女性の0.5%に赤緑色覚異常が認められる。アフリカ系(3~4%)、アジア系(3%)の男性において、その頻度はより低い。

診断・検査 

赤緑色覚異常の特定に広く用いられている検査表には、石原表やAO-HRR (American Optical HRR) 仮性同色表などがある。1型2色覚、2型2色覚、1型3色覚、2型3色覚の確定診断には、色の組み合わせができるアノマロスコープが必要となる。その変異が赤緑色覚異常と関連する2つの遺伝子は、赤錐体をコードするOPN1LW(opsin 1 long wave)と、緑錐体をコードするOPN1MW(opsin 1 middle wave)である。全赤緑色覚異常の約75%(第一色覚の100%と、第二色覚の約65%)は、これら2遺伝子の分子遺伝学的検査によって診断できる。このような検査は、研究でのみ利用可能である。

臨床的マネジメント 

形質発現の治療 
個々に適したフィルタを付けたカラーコンタクトレンズは、色の識別能を改善し得る。色覚異常を有する人を混乱させないような色の提示が、教育現場において用いることができるようになった。

二次合併症の予防 
高校生の年代における重度赤緑色覚異常の診断には、当該少年や両親との意思疎通が重要である。診断によって特定の職業選択に影響をおよぼし得るからである。

遺伝カウンセリング 

赤緑色覚異常はX連鎖劣性遺伝による。発端者の母親は変異の保因者であるため、妊娠ごとの変異の伝達可能性は50%である。男性が変異を受け継いだ場合は発症し、女性が受け継いだ場合は保因者となる。発症した男性は、娘すべてに変異を伝達し娘たちは保因者になるが、息子には変異は全く伝達されない。保因者検査や分子遺伝学的検査を用いた赤緑色覚異常を明らかにするための出生前診断を実施している研究室はなく、そのことはGene TestsTM Laboratory Directoryに記載されている。

訳注:

色覚の多様性を表現する用語の適切性については関連学会や当事者団体の間でも議論がなされている。以前は「色盲」という用語が用いられていたが,日本眼科学会は2007年に色覚関連用語から「色盲」という用語を撤廃し,「色覚異常(color vision defect = color anomaly, dyschromatopsia)」という用語を用いるようになった(http://jams.med.or.jp/dic/colorvision.html)。しかし,色覚“異常”という語感に抵抗感を持つ当事者も多く,また眼科学会の色覚の用語分類は数字を用いた方法であり,イメージが湧きにくいものになっている。一方,社会における色彩環境が多様な色覚を持つ一般市民に対して,より配慮されたものに改善していく事を趣意として設立されたNPO法人,CUDO(Color Universal Design Organization)は,一般色覚者と色弱者に分類し,色弱者をその特性ごとに分類する案を提示している(http://www.cudo.jp)。本項目はこうした現状を認識し、関連学会で用いられている用語との整合性にも配慮した上で、原文の”color vision defects”を「色覚異常」と表記し、他の用語も基本的に日本眼科学会の用語を踏襲した。また混乱を避ける目的で、日本眼科学会が改訂前に用いていた用語も「旧:」と表記して示した。


診断

臨床診断

正常三原色色覚 ヒトの網膜は2種の光受容体からなる

注 各光受容体細胞は、タンパク質の成分(オプシン)からなる1種類の光色素を含み、本色素には発色団11-cisレチナールが共有結合している。

正常な人間の色覚は三原色色覚で、光に最大の感受性を示す3種の錐体(図1)に基づく

説明: Figure 1A 図1A
正常三原色色覚者の3種の錐体の光色素における光吸収スペクトル。相対的な光の吸収は、波長に対しナノメートル(nm)単位で表される。青(B)、緑(G)、赤(R)の最大吸収波長は、曲線に示す通りである
図1B
正常色覚を有する観察者にみられる可視スペクトル

注 (1)赤と緑の光色素は、最大光吸収波長が約30nmほど異なる。(2)色の認識は網膜と脳での赤、緑の錐体における信号出力の比較に依存するので、赤と緑の錐体双方がスペクトルの赤‐緑領域における色の認識に必要である。(3)3種の錐体光受容体は、可視スペクトルで約100万色の認識を可能にする。(4)ヒトの網膜における赤と緑の錐体光受容体の数には、かなりの個人差がある。赤錐体、緑錐体の比率は、1赤:2緑から8赤:1緑の間で変動し、平均は4赤:1緑である。赤錐体と緑錐体の比率の違いは、検査室で評価する色覚に影響を及ぼすとは思われないが、自然の状態では若干の影響が確認しうる。

赤緑色覚異常 一般的な赤緑色覚異常は、その重症度、欠損、機能異常を有する錐体光受容体のタイプに基づいて4つのサブクラスに分類される(Sharpe et al [1999], Motulsky & Deeb [2001], Neitz & Neitz [2004]に示された)。種々の赤緑色覚異常の重症度は、重い順に、1型2色覚(protanomia, 旧:第1色盲または赤色盲)、2 型2色覚(deuteranopia, 旧:第2色盲または緑色盲)、1型3色覚(protanomaly, 旧:第1色弱または赤色弱)、2 型3色覚(deuteranomaly, 旧:第2色弱または緑色弱)である。

説明: Figure 2 図2 色覚異常男性における網膜錐体光受容体の吸収スペクトル
  1. 1型2色覚男性(青(B)、緑(G)の錐体のみ)の吸収スペクトル
  2. 2 型2色覚男性(青(B)、赤(R)の錐体のみ)の吸収スペクトル
  3. 1型3色覚男性(青、緑、緑様(G’)の錐体のみ)の吸収スペクトル
  4. 2 型3色覚男性(青、赤、赤様(R’)の錐体のみ)の吸収スペクトル
注:「Protan」は、1型2色覚と1型3色覚を指す。「Deutan」は2 型2色覚と2 型3色覚を指す。

2色覚を有する者(2色覚者)は、異常3色覚を有する者よりも異常の程度が強いことが多い。

1型2色覚、2型2色覚、3型2色覚を有する者が、色をどのように見ているかのシミュレーションをhttp://www.vischeck.comhttp://www. jfly.iam.u-tokyo.ac.jpで見ることができる。

検査

表現型色覚検査

石原表とAmerican Optical HRR (AO-HRR)仮性同色表 これらは赤緑色覚異常を見つけるのに広く用いられている臨床的色覚検査表である。さまざまな色点の集合が印刷されており、被験者が数字(石原)やシンボル(HRR)を読み取ったりトレースしたりするようになっている(図3)。赤緑色覚異常を有する者は、特定の数字またはシンボルを見逃すか、読み誤ってしまう。色覚表は、大半の眼科医と検眼師のもとで利用できる。色覚検査表は、特定の網膜疾患や後天性の色覚欠損の評価において、色覚を調べるために用いることもできる。

image2 図3
一般的な赤緑色覚異常に対する石原式色覚検査表。被験者スクリーニングに対し一般に用いられる石原(仮性同色)表のうち6枚を示す(www.toledo-bend.com/colorblind/Ishihara.aspからの画像)。正常色覚者は、左から右に、数25、6、8(上列)56、29、45(下列)を読むことができる。1型2色覚と2型2色覚を有する者は、25と56のみ読むことができる。異常3色覚者は6枚全ての数字を読むことができるが、石原表の他の数字や文字を認識し誤る。
注 いくつかのウェブサイトが、色覚異常に対するオンラインテストを提供している。しかしモニタ画面は色が変わりやすいため、オンライン色覚検査の正確さは制限される。

4~7歳の子供たちの色覚異常を検査するため、特定の石原表が選択され、特別な石原式検査は、数字の代わりに形、絵、経路を用いて質問も少なく構成されている。

ランタンテスト Farnsworth Lantan(FALANT)テストは、色に名前をつけるテストで、米連邦機関において使用されている(この検査は臨床では用いられない)。色のペア(赤、緑、白など)が示され、合格/不合格は、色の認識に失敗した数に基づいて決定される。2色覚者全てと異常3色覚者の75%は、この検査をうまく行えない。合格か不合格かの分布は二項的でなく連続的である。

アノマロスコープ より精巧な器具がアノマロスコープで、被験者に色の一致を要求する。被験者はスクリーンの半分で純粋な黄色の光を見ながら、もう半分で赤と緑の色を混合させた光を見る。黄色の光の明るさと、赤と緑の混合した光の明るさを、両方の半視野が色と明るさにおいて同一に見えるまで被験者自身が調節する。赤と緑の光の割合で一致していると認められた範囲が記録される。

1型2色覚、2型2色覚、1型3色覚、2型3色覚の厳密な鑑別には、アノマロスコープの使用が必要である。アノマロスコープ検査は、一般的に色覚表ほどは利用できず、臨床目的では通常必要でない。

分子遺伝学的検査

遺伝子 以下の2つの遺伝子の変異が赤緑色覚異常に関連している。

  1. 赤色素をコードするOPN1LW(opsin 1 long wave)
  2. 緑色素をコードするOPN1MV(opsin 1 middle wave)

これら2つの遺伝子は、head-to-tailクラスター(「アレイ」とも呼ばれる)を形成しており、1つの赤色素遺伝子に1つかそれ以上の緑色素遺伝子が連結している(図4)。しかし、2つの遺伝子だけが(すなわち、1つの赤色素遺伝子と隣接した緑色素遺伝子)網膜光受容体に発現し、色覚の表現型に関与する。クラスターの3番目以降にある色素遺伝子は、正常であれ異常であれ発現していない。

説明: Figure 4 図4 正常色覚を有する人に見られる赤と緑の色素遺伝子クラスター変異

X染色体上の遺伝子クラスターは、1つあるいはそれ以上の緑色素遺伝子5’位に、赤色素遺伝子が1つ結合している。緑色素遺伝子数は、北欧系人種では平均2つで、1~6つまで幅がある。図中の四角は赤、緑の色素遺伝子における6つのエクソンを示す。赤と緑の色素遺伝子は、それぞれ長さ約15kbと13kbであり、遺伝子間領域は長さ約25kbである。赤色素遺伝子と、隣接した緑色素遺伝子だけが光受容体に発現し、色覚表現型に影響する。よって、一番下のクラスターの三番目を占める緑‐赤複合型遺伝子が、2型色覚の原因となることはない。オプシン遺伝子上の180、277、285の位置にあるアミノ酸残基の違いが、赤、緑の受容体色素間のλmaxにおける30nmの違いを生じる理由となっている(図4)。

イントロンや遺伝子間領域など、赤、緑の色素遺伝子における繰り返しユニット間の塩基配列の高い相同性は、これら遺伝子で比較的頻繁な交叉が生じる原因となる。交叉は、遺伝子間領域(図5A)における不均等な組み換えによる遺伝子数の変化(欠失など)や遺伝子間での組み換えの結果、さまざまな赤‐緑色素複合遺伝子の形成を引き起こす(図5B)。これら複合遺伝子は、さまざまな最大光吸収波長(λmax)のキメラ色素をコードする。エクソン5の組み換えは赤色素を緑様色素へ、あるいは緑色素を赤様色素へと変化させる。こうしたキメラ色素は、色覚の表現型をかなり多様なものにしている。

説明: Figure 5 図5 遺伝子数の変化と赤‐緑複合遺伝子の形成

遺伝子間組み換えは、緑色素遺伝子数の変化に起因し、2型2色覚を有する者によく見られるような欠失も含む。図中の四角は赤、緑の色素遺伝子における6つのエクソンを示す。

遺伝子間の組み換えは、2型3色覚の男性に一般的に観察される5’緑‐赤3’複合型遺伝子や、1型3色覚の男性で一般的に相反の逆の5’赤‐緑3’複合型遺伝子形成につながる。

注 クラスター3番目の位置を示す正常な緑色素遺伝子は、網膜に表現されず色覚に影響しない。

研究段階における検査

赤緑色覚異常に関連する遺伝子クラスター発見のための変異スキャン 全赤緑色覚異常の約75%(1型色覚者の100%、2型色覚者の約65%)は、このような分子遺伝学的方法で診断し得る。このような検査は、研究目的でのみ使用可能である。

1型色覚 (protan color vision defects) プロモーター領域を伴うクラスター内の最初の遺伝子は、赤色素遺伝子に特異的で上流に位置するforwardプライマーと、エクソン5部位のreverseプライマーによって増幅される。Reverseプライマーは、赤、緑の遺伝子におけるエクソン5の配列に相補的なものが用いられる。

1型色覚の男性では、クラスター1番目の遺伝子がさまざまな切断-融合点を有する赤‐緑複合遺伝子で、その全てが緑色素遺伝子のエクソン5(図6、クラスター1~3参照)を含み、緑色素遺伝子のエクソン5に特異的なreverseプライマーによってのみ増幅される。エクソン5に特異的なreverseプライマーを用いることで、クラスターの最初の遺伝子が赤色素遺伝子(1型色覚の男性に存在する)か、赤‐緑複合遺伝子(2型色覚の男性に存在する)かを、簡単に確定し得る。これは1型色覚の男性、そして1型色覚の遺伝子を有する女性保因者(赤色素遺伝子と緑色素遺伝子のエクソン5の配列を有するreverseプライマーのいずれでも増幅される)を迅速に診断する方法である。

Figure 6 6 赤緑色覚異常に関連する典型的な遺伝子クラスター

一般的な赤緑色覚異常は、遺伝子の欠失(例えばB6)または赤/緑複合遺伝子の形成(例 A1、A2、A3、B4、B5)によって起こる。相同性の高い遺伝子間領域で起こる不均衡な組み換えは、欠失を起こす。赤と緑の色素遺伝子の間で起こる相同組み換えは、キメラ光色素をコードする複合遺伝子を形成する。図中の四角は、赤と緑の色素遺伝子における6つのエクソンを示す。

2型色覚 (deutan color vision defects)

一般に、イントロン4に融合点のある緑‐赤複合遺伝子は、エクソン4の緑に特異的なforwardプライマーと、エクソン5の赤に特異的なreverseプライマーを用いたPCR増幅により容易に検出できる。他のイントロンに融合するその他の緑‐赤複合遺伝子は、シークエンス解析やsingle-strand conformation polymorphism (SSCP) 分析など、より詳細な分析を要する。

注 (1)緑‐赤複合遺伝子が、クラスター2番目の位置を占めるかどうか確定するためには、クラスターの遺伝子数は3つ以下でなくてはならない(例えば、赤色遺伝子1つ、正常な緑色素遺伝子1つ、緑‐赤複合遺伝子1つ)。(2)2つ以上の緑遺伝子、緑様遺伝子の存在は比較的一般的である。

シークエンス分析 は、赤と緑の色素遺伝子における点突然変異を検出し、それは赤緑色覚異常の1~2%を引き起こす。

表1 赤緑色覚異常で用いられる分子遺伝学的検査の概要

検査方法 発見される突然変異> 赤緑色覚異常を有する者
の突然変異発見率1
検査の有効性
Protan2 Deutan3
変更スキャン 欠失,複合遺伝子 100% ~65% 研究のみ5
シークエンス解析> OPN1MWOPN1LW4のミスセンス変異 1~2%

検査の可用性は、GeneTests(TM) Laboratory Directoryの可用性に示されている。Gene Reviewsは、米国CLIAによって許可を受けた検査室もしくは非米国の臨床検査室のいずれかによって、GeneTests Laboratory Directoryに記載された検査であれば、臨床的に利用可能な分子遺伝学的検査とする。GeneTestsは、検査室が提出した情報を確認し、検査室の免許や性能のあらゆる側面を保証するものではない。臨床医は、情報を確認するために検査室と直接やり取りすべきである。

  1. 示された遺伝子に存在する変異を検出するために使用される検査方法の性能
  2. 「Protan」は、1型2色覚と1型3色覚を示す
  3. 「Deutan」は、2型2色覚と2型3色覚を示す
  4. OPN1LWOPN1MWはそれぞれ赤色素と緑色素をコードしている
  5. いかなる検査室も本遺伝子の臨床試験を提供していないことがGeneTests(TM) Laboratory Directoryに記されている調査検査室で同定された変異の臨床的確定を利用することが可能かもしれない。

説明: Image testing.jpghttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/GeneTests/lab/clinical_lab_service_id/68618?db=genetests)参照。

試験結果の解釈 配列解析結果の解釈における考慮すべき問題については、こちらをクリック(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK6851/)。

検査方針

発端者の診断を確認/確率する 診断は臨床所見に基づく(臨床診断の項を参照)。

遺伝学的に関連する疾患

青錐体1色覚(blue cone monochromacy) 本疾患は、約10万人に1人のまれなX連鎖劣性遺伝性疾患で、赤と緑の錐体は大部分が機能しておらず、視力は重度に低下している。青錐体1色覚は以下に起因する場合がある。

または

X連鎖錐体ジストロフィー OP1LWOP1MW双方のエクソン3で高度に保存されたアミノ酸のミスセンス変異(c. 529T>C, p.Trp177Arg)は、家族内の錐体ジストロフィーの原因となることが報告されている。


臨床像

自然経過

遺伝性の赤緑色覚異常は、幼児期早期に明らかになる。ひとたび出現すると、生涯にわたり継続する。罹患者は主として男性である。眼科的異常は伴わず、網膜基底部も正常である。関連する他の臨床的異常もない。さらなる情報が必要な場合は「推奨図書」の項を参照のこと。

1型3色覚、2型3色覚を有する者の大部分(すなわち異常3色覚者)は、色を正しく識別することに問題はない。軽度の色覚異常を有する男性は、検査されるまで異常に気付かないこともある。彼らは、色覚異常を有さない者よりも迷彩を判読するのに長けているといわれる。

2色性の色覚異常を有する者(すなわち2色覚者)は、正常な赤緑色覚を有する者よりも色でカモフラージュされたテクスチャーを判読するのに長けている。

赤緑色覚異常を有する者は、通常、赤と緑を識別する能力を要する産業、海、空、鉄道、軍関連の職に就くことを制限される。軽度の赤緑色覚異常を有する者は、単純で実際的な仕事においては色を識別し得るが、一部の職業、特に公共の安全に関連のある職に就くためには、FALANTランタンテストのような色覚検査によるより厳しい識別能検査が要求される。

訳注:日本では、警察・自衛隊・航空・船舶などに関する国家資格や採用において、一定水準以上の色覚を受験資格としているものがある。

ヘテロ接合体 赤緑色覚異常はX連鎖劣性遺伝で受け継がれるため、ホモ接合体の女性や不均衡X染色体不活性化を生じたヘテロ接合体の女性(浸透率の項を参照)だけが、X連鎖赤緑色覚異常を生じる。

遺伝子型と臨床型の関連

赤緑色覚異常における遺伝子型と表現型との関係は、診断の項で述べたとおりである。

正常な色覚を有するとされる女性と男性の間で、可視スペクトルの赤‐緑領域において色覚に微妙な違いのあることがカラーマッチングテストで観察されている。この違いは、赤色素のアミノ酸180番目での多型の存在に起因している。

正常な色覚を有する男性での赤い光へのより高い感受性は、180番目のアミノ酸にセリンが存在することに強く相関している。180番目がアラニンである色素は、セリンである色素より、最大吸収波長(λ max)が約5nm短い。

白人では、赤色素のアミノ酸180番目において、男性の62%がセリン、38%がアラニンを有する。したがってこの一般的な多型が、赤緑色覚異常と関係していない赤色素の微妙な個人差を説明し得る。

浸透率 

男性 で、X連鎖赤緑色覚異常を有する者は、適切な検査のもとで色覚異常を呈する。しかし、白人男性の5%を占める2型3色覚を含む異常3色覚者のうち15~30%は、スクリーニング表検査によって色覚異常を指摘されるまで認識していない。

女性保因者では、通常赤緑色覚異常を生じることはない。一本のX染色体上の赤や緑の色素遺伝子に変異を有する女性では、正常な赤や緑の色素遺伝子を有するX染色体の不均衡な不活性化が起こると、変異遺伝子のみが発現して赤緑色覚異常となりうる。不均衡なX染色体不活性化は、当該女性の一卵性双生児においてより多く確認できる。赤緑色覚異常に関連した遺伝子変異のヘテロ接合体である一卵性双生児は、片方が正常な赤緑遺伝子を有するX染色体を完全に不活性化するが、もう片方は赤緑色覚異常に関連する赤緑色覚遺伝子の組み換えを有するX染色体を不活性化させる。このように、一卵性双生児の一方は赤緑色覚異常を呈するが、もう一方は正常な色覚を有する場合もある。

ホモ接合体の女性、すなわち二つのX染色体双方が赤緑色覚異常と関連する特定の遺伝子再構成を生じている女性と、赤緑色覚異常を有する男性は、同様に罹患する。

頻度 

赤緑色覚異常は高頻度に確認される。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

色覚異常は、主に4つの病型に分類される。一般的な赤緑色覚異常、青錐体1色覚 (blue cone monochromacy)、3型2色覚(tritanopia, 旧:第3色盲)、1色覚(achromatopsia, 旧:全色盲)である(図7)。

説明: Figure 7 図7 色覚異常の分類円 

円は、正常あるいは色覚異常を有する男性の網膜に存在する、青(B)、緑(G)、赤(R)に感受性のある錐体を示す。G’、R’とラベリングされた錐体は、異常な緑様色素と赤様色素を含み、それぞれ5’赤‐緑3’、5’緑‐赤3’の複合遺伝子によってコードされている。-は錐体の欠失を示す。

青錐体1色覚 遺伝子レベルでの関連疾患の項を参照。

3型色覚は、第7染色体上のS(または青)網膜錐体色素をコードしている遺伝子のミスセンス変異によって起こる。X連鎖赤緑色覚異常とは異なり、3型色覚は男性、女性ともに同頻度で起こり、不完全な浸透率で常染色体優性遺伝により伝えられる。スペクトル(青‐黄)の短波長領域での色の識別が障害される。AO-HRR仮性同色表は、3型色覚を見つけることができるが、石原表はできない。

1色覚は、弱視、振子様眼振、光過敏症(光恐怖症)、偏心固視、色識別の減退もしくは完全な欠損によって特徴づけられる。1色覚者は、3種の錐体に司られている色覚軸のすべてにおいて色の識別が障害される。完全な1色覚における最高視力は20/200以下であり、不完全な1色覚では高くても20/80ほどである。視力は、通常長期にわたり安定している。CNGA3CNGB3GNAT2PDE6Cにおける変異が原因となる。遺伝形式は常染色体劣性遺伝である。

後天性色覚異常は、通常、種々の眼科疾患(例えば、黄斑ジストロフィー)や、他の眼科的所見、臨床的所見を伴う視神経や脳の疾患に関連して生じるもので、専門の眼科医や神経科医による診察が必要となる。こうした後天性障害は分類が難しく、しばしば視力減退や視野欠損の双方あるいはどちらかを伴う。頻度に性差はない。常に両眼で起こる遺伝性赤緑色覚異常とは対照的に、後天性色覚異常は単眼で起こり得る。遺伝性の赤緑色覚異常は男性の8%に生じるので、眼疾患の精査中にこれとは無関係な赤緑色覚異常が偶然に見つがるかもしれない。

クロロキンやジギタリスなどの薬剤は、時折後天性両眼性色覚異常を引き起こすことがあり、通常の遺伝性赤緑色覚異常と見分けがつきにくい。

ある種の環境化学物質が人間の色覚異常を引き起こす。例えば、色覚異常は、数年前の中毒であっても水銀蒸気への職業性暴露との関連がある。

また、自動車塗装作業者の有機溶媒混合物への曝露は、色覚障害と強く関連している。

スチレンへの職業性曝露は、色覚のコントラスト感度と関連があることが確認されたが、色覚障害とは関連がなかった。

臨床家への追記 本疾患に関する患者ごとの「同時コンサルト」については,SimulConsultを参照のこと。ここでは患者の所見に基づく鑑別診断用ソフトウエアを提供している(登録もしくは施設からのアクセスが必要)。


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

赤緑色覚異常と診断された患者の疾患の程度を確定するには、以下の評価が推奨される。

着色したカラーコンタクトレンズ(Chromagen(TM))(Cantor and Nissel)が利用可能である。当該コンタクトレンズは、罹患者が広範囲なスペクトルから好ましいフィルタを選択するようになっている。このフィルタが色の識別をわずかながら改善し得る。Chromagen(TM)コンタクトレンズはFDAの承認を受けていないが、FDAから色覚異常に対する利用を目的とした販売許可は得ている。

ウェブサイト、http:// jfly.iam.u-tokyo.ac.jpは、色覚異常を有する閲覧者を混乱させないような色の提示方法を解説している。

二次的合併症の予防

高校生の年代における重度色覚異常の診断は、両親や当該少年との意思疎通が重要である。診断によって特定の職業選択が影響を受け得るからである。

リスクを有する親族の検査

遺伝カウンセリングを目的とした、リスクを有する親族の検査についての問題は、遺伝カウンセリングの項を参照。

研究中の治療法

色覚異常を有する者に対する遺伝子治療の可能性

さまざまな疾患や状態の臨床試験に関する情報入手は、http://www.ClinicalTrials.govを検索のこと。注 本疾患の臨床試験はない可能性がある。

遺伝クリニックでは、遺伝学の専門家により疾患の自然経過,治療,遺伝形式,他の血縁者のリスク、利用可能な市中リソースなどについて情報を提供する。

GeneTests Clinic Directory(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/GeneTests/clinic?db=GeneTests)参照のこと。

Consumer Resources疾患あるいはより包括的な支援組織についての情報は、Consumer Resources)を参照のこと。これら組織は患者や家族に対して情報、支援、交流の場を提供する目的で設立された。

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

赤緑色覚異常はX連鎖劣性遺伝で伝えられる。

患者家族のリスク

この章は、本疾患に対する分子遺伝学的検査は研究目的において利用可能であり、そこで得られた結果を臨床目的で用いるべきではないという観点で書かれている。この理念は、カスタム変異分析を利用する家族には適用されない場合がある―ED。

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子

発端者の他の家族 

発端者の母方のおばは保因者の可能性があり、その子孫は、性別によるが、保因者か色覚異常者の可能性がある。

保因者の検出

分子遺伝学的検査による保因者診断は、臨床的には利用できない。

遺伝カウンセリングに関連した問題

DNAバンキング は、DNA(主に白血球から調整した)を将来の利用のために保存しておくものである。検査法や、遺伝子、変異、疾患に対する理解が将来的に進歩し得るため、罹患者のDNA保存は考慮に値する。DNAバンキングを提供する研究室のリストは、(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/GeneTests/lab/clinical_lab_service_id/2561?db=genetests)を参照。

出生前診断

リスクの高い妊婦に対する出生前診断を実施している研究室は存在せず、そのことはGeneTests(TM) Laboratory Directoryに記されている。


分子遺伝学

以下の情報とOMIM表は、GeneReviewの他の記載とは内容が異なっている場合がある。表は、より最近の情報を含んでいる可能性がある。-ED。

表A 赤緑色覚異常:遺伝子とデータベース

遺伝子
記号
染色体の遺伝子座 タンパク質 染色体座特異性 HGMD
OPN1MW Xq28 Green-sensitive opsin Retina International Mutations of the Photopigments - Red (RCP), Green (GCP), and Blue Cone Pigment (BCP)
OPN1MW homepage - Mendelian genes
OPN1MW
OPN1LW Xq28 Red-sensitive opsin Retina International Mutations of the Photopigments - Red (RCP), Green (GCP), and Blue Cone Pigment (BCP)
OPN1LW homepage - Mendelian genes
OPN1LW

データは、以下の標準的な参考資料から編集した。遺伝子記号はHGNCから、染色体の遺伝子座、遺伝子座名、臨床領域、相補群はOMIMから、タンパク質名はUniProtから引用した。データベースの説明はリンクが提供されているため、こちらをクリック(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1336/)。

表B 赤緑色覚異常に関するOMIM Entries

300821 OPSIN 1, MEDIUM-WAVE-SENSITIVE; OPN1MW
300822 OPSIN 1, LONG-WAVE-SENSITIVE; OPN1LW
300824 OPN1LW AND OPN1MW GENES, CONTROLLER OF
303800 COLORBLINDNESS, PARTIAL, DEUTAN SERIES; CBD
303900 COLORBLINDNESS, PARTIAL, PROTAN SERIES; CBP

分子遺伝学的発症機序

緑オプシン遺伝子内にp. Cys203Arg変異を有する男性2名の網膜錐体を調べるために、高解像度網膜イメージングが用いられた。健常者と比べ、外核層における錐体の密度低下や菲薄化が観察された。このことは、当該変異がオプシンの機能喪失と色覚異常に関連性があるとした以前の結果を追認するものである。

正常アレル

正常色覚を有する男性で認められた赤と緑の遺伝子クラスターは図4に示されている(Sharpe et al [1999], Motulsky & Deeb [2001], Neitz & Neitz [2004])。赤と緑の色素遺伝子は、それぞれ長さ約15kb、13kbであり、遺伝子間領域の長さは約25kbである。アミノ酸コドン180??の多型(遺伝子型と表現型の関連を参照)以外の多型は、正常な赤緑色覚における個人差との関連は示されてはいない。赤色素遺伝子の多型では頻度の低いアレルは、緑色素遺伝子に由来しており、逆もまた同様である。この事実は2つの遺伝子が高度に相同的であり頻繁に組み換えが起きていることを示す。

OPN1MWは6つのエクソン(基準配列 NM_00513.2)を有し、364のアミノ酸、緑感受性オプシンタンパク質(基準配列 NP_000504.1)をコードしている。OPN1LWは6つのエクソン(基準配列 NM_020061.4)を有し、364のアミノ酸、赤感受性オプシンタンパク質(基準配列 NP_064445.1)をコードしている。概要はGardner et al [2010]を参照。

病的アレル

アレルのタイプ DNAヌクレオチドの変化1 タンパク質アミノ酸の変化
(Alias 
1)
基準配列2
赤色素遺伝子における正常多型 c.538T>G
(540T>G)
p.Ser180Ala
[Winderickx et al 1992b]
NM_020061?.4
NP_064445?.1
緑色素遺伝子における正常多型 c.538T>G
(540T>G)
p.Ser180Ala
[Winderickx et al 1992b]
NM_000513?.2 
NP_000504?.1
g.153,448,055A>C
(-71A>C)
プロモーター内
[Ueyama et al 2003]
NG_011606?.1
緑色素遺伝子における病的多型 c.607T>C
(609T>C)
p.Cys203Arg NM_000513?.2 
NP_000504?.1
c.529T>C p.Trp177Arg

用語体系の解説は、クイックリファレンス(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1528/)を参照。GeneReviewsはHuman Genome VariationSociety(http://www.hgvs.org)の標準的な命名規則に従う。

  1. 現在の命名規則に準拠しない変異型
  2. Gardner et al [2010]参照

正常な遺伝子産物 頻度の高い多型であるp.Ser180Alaは、正常なオプシンタンパク質を呈するが、この多型でコードされる2種類のオプシンはλmax(~5 nm)がわずかに異なる。-71プロモーター多型(g.153,448,055>C)は、おそらく転写の下位段階においては正常なオプシンをコードしている。

異常な遺伝子産物 OPN1MWにおけるp.Cys203Argとp.Trp177Argの変異は、機能しないオプシンをコードするため、その結果、機能せず不安定な錐体光受容体をもたらす。


リソース

疾患特異性についはConsumer Rexourcesを、および/または、本疾患については傘下支援団体を参照のこと。これらの組織は、情報、支援、他の罹患者へ関わりを持つことについての情報を、個人や家族へ提供するために設立された。GeneTestsは、読者の利益のため、選択した組織やリソースについての情報を提供する。GeneTestsは他の組織によって提供された情報への責任は負わない。―ED

参考

Medical Genetic Searches 臨床家専用に提供されている特別なPubMed内のPubMed臨床クエリページ説明: Image PubMed.jpghttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/clinical)である。

推奨図書


更新履歴

  1. Gene Review著者: Samir S Deeb, PhD, Arno G Motulsky, MD.
    日本語訳者: 渡部かをり(信州大学医学部医学科),涌井敬子(信州大学医学部社会予防医学講座遺伝医学分野)
    Gene Review 最終更新日: 2005.9.19. 日本語訳最終更新日: 2006.1.31.
  2. Gene Review著者: Samir S Deeb, PhD, Arno G Motulsky, MD
    日本語訳者: 根岸律葵(翻訳ボランティア),櫻井晃洋(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    Gene Review 最終更新日: 2011.9.29. 日本語訳最終更新日: 2013.2.9 (in present)

原文 Red-Green Color Vision Defects 本項目はGeneReviewsでは削除された(2020.11.28確認) 。参考として,Achromatopsia を示す。

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