ROR2関連Robinow症候群
(ROR2-Related Robinow Syndrome)

[Synonyms:Fetal Face Syndrome]

Gene Reviews著者: Carlos A Bacino, MD.
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)

GeneReviews最終更新日: 2019.9.12  日本語訳最終更新日: 2023.4.2.

原文: ROR2-Related Robinow Syndrome


要約


疾患の特徴

ROR2関連Robinow症候群は、独特の頭蓋顔面症候、骨格異常、その他の奇形を特徴とする疾患である。頭蓋顔面症候としては、大頭症、横幅の広い目立つ額、耳介低位、眼間開離、目立つ眼、中顔面低形成、低い鼻梁と横に広がった鼻孔を伴う短く上向きの鼻、切歯や上顎歯肉の露出した大きな三角形の口、歯肉肥厚、歯の配列不整、舌小帯短縮症、小下顎症などがある。骨格異常としては、低身長、中間肢節短縮症あるいは遠位中間肢節短縮症、胸椎癒合を伴う半椎、短指趾などがある。他に多くみられる症候としては、男性における時に停留精巣を伴う小陰茎、女性における陰核の矮小化と大陰唇低形成、尿路異常、爪の低形成あるいはジストロフィーなどがある。本疾患は、出生時に認知されることもあれば、幼児期になって発見されることもある。

診断・検査

発端者におけるROR2関連Robinow症候群の診断は、これを示唆する特徴的所見を有することに加え、分子遺伝学的検査にてROR2の両アレル性病的バリアントが同定されることをもって確定する。

臨床的マネジメント 

症状に対する治療
四肢や脊椎の異常ならびに顔面の異常に関してはこれらを改善するための手術、必要であれば矯正歯科治療、陰茎前位陰嚢を有する男性については必要に応じた手術、小陰茎の治療のため必要であればホルモン療法を行う。

遺伝カウンセリング

ROR2関連Robinow症候群は、常染色体潜性の遺伝形式をとる。同胞は、受胎の段階で、Robinow症候群罹患者である可能性が25%、通常は無症状のヘテロ接合者(保因者)である可能性が50%、罹患者でも保因者でもない可能性が25%である。家系内に存在するROR2の病的バリアントが同定されている場合には、リスクを有する血縁者に対する保因者の検査、高リスクの妊娠に備えた出生前診断、着床前遺伝学的検査などが可能となる。


診断

本疾患を示唆する所見

以下のような臨床所見や家族歴を有する例については、ROR2関連Robinow症候群を疑う必要がある。

臨床所見

頭蓋顔面所見(幼児期にみられる所見[Tufanら2005,Brunetti-Pierriら2008])

骨格

生殖器

家族歴

常染色体潜性遺伝に一致した家族歴を示す。ROR2関連Robinow症候群は、現在までに、血族結婚家系での報告や、創始者効果を呈する非血族結婚集団において報告されている(レビューについてはAglanら[2015]を参照)。

診断の確定

発端者におけるROR2関連Robinow症候群の診断は、これを示唆する特徴的所見を有することに加え、分子遺伝学的検査でROR2の両アレル性病的バリアントが同定されることをもって確定する(表1参照)。
分子遺伝学的検査のアプローチとしては、遺伝子標的型検査(単一遺伝子検査,マルチ遺伝子パネル)と網羅的ゲノム検査(エクソームシーケンシング,エクソームアレイ)を組み合わせるやり方が考えられる。
遺伝子標的型検査の場合は、臨床医の側で関与が疑われる遺伝子の目星をつけておく必要があるが、ゲノム検査の場合、その必要はない。ROR2関連Robinow症候群の表現型はすでに詳しく知られているため、「本疾患を示唆する所見」に記載した独特の所見を有する例については遺伝子標的型検査(「方法1」参照)で診断がつくものと思われるが、ROR2関連Robinow症候群を頭に入れるところにまで至らない例については、ゲノム検査(「方法2」参照)で診断がなされることになろう。

方法1

表現型の示す所見や家族歴からROR2関連Robinow症候群が示唆される場合であれば、用いる分子遺伝学的検査は単一遺伝子検査もしくはマルチ遺伝子パネルということになろう。

ROR2の配列解析を行うことで、遺伝子内の小欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントといったものが検出されるが、エクソン単位あるいは遺伝子全体の欠失/重複については、通常、検出されない。順番としては、最初に配列解析を行う。そこで病的バリアントが全くあるいは1つしか検出されないようであれば、続いて遺伝子内の欠失あるいは重複を調べるための遺伝子標的型欠失/重複解析を行う。

現況の表現型と直接関係のない遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、疾患の遺伝的原因の特定に最もつながりやすいのは、ROR2その他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含むマルチ遺伝子パネルであるように思われる。

注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、今のGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。本疾患に関しては、欠失/重複解析を含むマルチ遺伝子パネルの使用が推奨される(表1参照)。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。
遺伝学的検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

方法2

ROR2関連Robinow症候群の診断までは頭に入れることができないといった例については、網羅的ゲノム検査(この場合、臨床医の側で疑わしい遺伝子の目星をつけておく必要はない)で診断がなされることになろう。エクソームシーケンシングが広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを使用することも可能である。
エクソームシーケンシングで診断がつかないような場合は、もし臨床の場で利用可能なようであればエクソームアレイも検討対象になりうる。
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。
ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

表1:ROR2関連Robinow症候群で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 方法 その手法で病的バリアント2が検出される例の割合
ROR2 配列解析3 95%超
遺伝子標的型欠失/重複解析4 不明5
  1. 染色体上の座位ならびにタンパク質に関しては、表A「遺伝子とデータベース」を参照。
  2. この遺伝子で検出されているアレルバリアントの情報については、「分子遺伝学」の項を参照のこと。
  3. 配列解析を行うことで、benign、likely benign、意義不明、likely pathogenic、pathogenicといったバリアントが検出される。バリアントの種類としては、遺伝子内の小欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントなどがあるが、通常、エクソン単位あるいは遺伝子全体の欠失/重複については検出されない。
  4. 配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。

  5. 遺伝子標的型欠失/重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出される。具体的手法としては、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、あるいは単一エクソンの欠失/重複の検出を目的に設計された遺伝子標的型マイクロアレイなど、さまざまなものがある。
  6. 本疾患に関して言うと、エクソン単位あるいは遺伝子全体の欠失や重複の頻度は不明である。ただ、エクソンの欠失については、実際に報告例がある[Brunetti-Pierriら2008]。

臨床的特徴

臨床像

ROR2関連Robinow症候群は、独特の頭蓋顔面症候、骨格異常、その他の奇形を特徴とする疾患である。

頭蓋顔面
出生時や幼児期の顔貌は特徴的である(「本疾患を示唆する所見」の項を参照)。幼児期の顔は、妊娠8週の胎児の顔に似るが、これは年齢とともに目立たなくなっていく。思春期に鼻の成長が加速することで、顔の外観は正常に近づくものの、横幅の広い額、幅広の鼻根、眼間開離は成人期まで残存する。
正中唇裂と口蓋裂の報告がみられるものの、これは多くみられる所見ではない。一部の罹患者で、下口唇を含むかなり稀なタイプの裂の報告がみられる。
歯については、広い臼後部歯槽頂縁、歯槽頂縁の変形、咬合異常、歯列不整、無歯症などの問題も、Robinow症候群では多くみられる。
歯肉組織の過形成が歯の萌出や矯正歯科治療の障害になる場合がある[Grotheら2008,Beiraghiら2011]。

骨格
小児期にはほぼ全例、低身長がみられ、成人期にまでそれが続く。ただ、最終的な低身長の程度は軽度にとどまることもある[Tufanら2005]。
中間肢節短縮あるいは遠位中間肢節短縮の影響は、下肢よりも前腕に強く現れ、しばしば橈尺関節脱臼を伴う。
指節骨や手根骨に癒合がみられることがある。皮膚性の不全合指や欠指(すなわち、裂手)がみられる場合もあるが、手の機能に重度の障害が及ぶことはない。
脊柱後側彎は重度の場合がある。脊椎肋骨異骨症でみられるような胸の変形や肋骨の癒合がしばしばみられる。中には肋骨の一部が欠損するような例もみられる。肺の基本的機能に異常はみられないものの、胸壁や胸椎が変形することで咳嗽機能が弱くなり、呼吸器感染症に罹りやすくなる[Sleesman&Tobias2003]。

腎尿路生殖器
性器には出生の段階で異常がみられ、時に、(主として男性に)性別判定の問題が生じるようなこともある。男性は、陰茎は小さいものの、陰嚢や精巣は正常である。停留精巣の報告がみられる。女性は、陰核が小さい。大陰唇が低形成のこともある。
Wilcoxら[1997]は、Robinow症候群では陰茎脚部が後下方にずれて、通常の恥骨前内側面からではなく坐骨結節内方部から伸びているために、陰茎が後下方位で陰嚢内に埋まったような形になっていると結論づけている。つまり、陰茎そのものは正常なサイズながら、下方位で陰嚢内に位置するために短小に見えるということである。
内分泌関係の検査データは、おおむね正常である。ただ、Solimanら[1998]は、男児については、血清テストステロン濃度の基礎値が低いこと、ならびに、ヒト絨毛性ゴナドトロピン刺激に対するテストステロン上昇反応が鈍いことを報告している。思春期はふつう正常である。
性器奇形に伴って腎奇形がみられることがある。水腎症が最も多くみられるが、嚢胞性異形成腎の報告もみられる。

その他

遺伝型-表現型相関

遺伝型-表現型相関として知られているものはない。

疾患名について

Robinow症候群について過去に用いられた他の名称としては、次のようなものがある。

発生頻度

ROR2関連Robinow症候群は稀な疾患である。現在、文献で100を超える例が報告されている。血族結婚の家系、例えば、トルコやオマーン起源の家系に多くみられる。


遺伝学的に関連のある疾患(同一アレル疾患)

短指症B1型(BachydactylytypeB1;BDB1)

短指症B1型は、ROR2のトランケーション型病的バリアントのヘテロ接合に起因して生じる疾患で、異常ではあるが安定な機能獲得型のROR2が細胞膜上で発現する。「分子遺伝学」の「異常遺伝子産物」の項を参照されたい[Oldridgeら2000,Schwabeら2000]。

BDB1においては、第4指趾と第5指趾に、中節骨の短縮や末節骨の欠如といった形で影響が現れる。
罹患者の顔貌については、眼間開離、眼瞼裂斜下、短い人中、目立つ鼻といった軽度の異常症候がみられる場合がある。
遺伝形式は常染色体顕性遺伝である。


鑑別診断

NXN関連Robinow症候群(OMIM618529)
NXN関連Robinow症候群は、常染色体潜性型のRobinow症候群で、互いに血縁関係のない2家系の3人に両アレル性のNXNの病的バリアントが報告されている。3人とも、Robinow症候群の古典的臨床症候、すなわち、特徴的頭蓋顔面症候、中間肢節短縮、短指趾といったものを有していた[Whiteら2018]。そのうちの1人は血族結婚の両親から生まれた例で、NXNのナンセンスバリアントのホモ接合であった。もう一方の家系の2人のほうは、NXNの病的バリアントの複合ヘテロ接合であった。
注:NXNタンパク質は、Robinow症候群の発生に密接に係わるWNT5Aシグナル伝達経路における結合パートナータンパク質である。ROR2はWNT5Aと結合し、FZD2と相互作用を行う。この相互作用の結果はdisheveledタンパク質(DVL1,DVL3)へと送られ、NXNによってさらなる安定化を受ける。この複合体は、細胞骨格の再構成や細胞極性に関与するJNKシグナル伝達を活性化する。

WNT5Aの両アレル性病的バリアント
著者は、ROR2関連Robinow症候群類似の所見を示すWNT5Aの両アレル性病的バリアントを有する1例を経験している[著者の未公表データ]。

常染色体顕性Robinow症候群
常染色体顕性Robinow症候群は、Robinowら[1969]によって報告されたもので、ROR2関連Robinow症候群に似た症候を示す。ただ、こちらのほうはROR2関連Robinow症候群より歯の異常が顕著にみられる一方、骨格異常のほうはより軽度である。

常染色体顕性Robinow症候群のほうが常染色体潜性Robinow症候群より出現頻度が低い。
発端者における常染色体顕性Robinow症候群の診断は、この疾患を示唆する特徴的な所見を有すること、ないし、分子遺伝学的検査でDVL1DVL3WNT5Aのいずれかのヘテロ接合性病的バリアントが同定されることをもって確定する。WNT5Aは、チロシンキナーゼ受容体であるROR2のコレセプターであることがわかっている。このことは、WNT5A関連Robinow症候群とROR2関連Robinow症候群との間に臨床的表現型の重なりがみられる背景を説明するものである。

Jarcho-Levin症候群,脊椎肋骨異骨症(「脊椎肋骨異骨症,常染色体潜性」のGeneReviewを参照)
Jarcho-Levin症候群と脊椎肋骨異骨症は、放射線学的に診断がなされる疾患で、両者ともROR2関連Robinow症候群類似の脊椎・肋骨異常を呈する。体幹の短縮と呼吸不全を示す。

I-cell病(ムコリピドーシスⅡ型)
I-cell病は一種のリソソーム蓄積症で、発育不全、粗野な顔、歯肉肥厚、骨格異常、発達遅滞、筋緊張低下を示す。

Aarskog症候群(OMIM100050)
眼間開離、上向きの鼻孔、厚い上口唇等のROR2関連Robinow症候群類似の顔面症候を呈する。脊椎異常はみられない。Aarskog症候群でみられる襟巻状陰嚢や靱帯弛緩は、ROR2関連Robinow症候群ではみられない。

肩骨異形成症(OMIM258315と164745)
肩骨異形成症は、短肢や橈骨脱臼の点ではROR2関連Robinow症候群に似るが、性器奇形はみられない[Vendittiら2002]。


臨床的マネジメント

初期診断の後に続いて行う評価

ROR2関連Robinow症候群と診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、診断に至る過程ですでに実施済でなければ、本項にまとめた評価を行うことが推奨される。

症候に対する治療

以下については、修復術が必要なることがある。

陰茎脚部の付着異常について、これを剥離してしまうと、正常サイズの陰茎が陰嚢内に埋もれてしまって小さく見える結果になるため、これは行えない。
Wilcoxら[1997]は、陰嚢のほうを下方へ移動させることで、審美性の改善を図っている。
重度の小陰茎を呈する3人の男児に対し、ヒト絨毛性ゴナドトロピン注入療法とテストステロン療法を行うことで、陰茎の長さと精巣の体積に改善がみられている[Solimanら1998]。ホルモン療法を行うにあたっては、小児内分泌医によるモニタリングが必要である。
多くの場合、矯正歯科治療が必要となる。

定期的追跡評価

以下のような形で行うことが望ましい。

リスクを有する血縁者の評価

リスクを有する血縁者に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。

研究段階の治療

さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「ClinicalTrials.gov」、ならびにヨーロッパの「EUClinicalTrialsRegister」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ROR2関連Robinow症候群は、常染色体潜性の遺伝形式をとる。

家族構成員のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子

他の家族構成員

発端者の両親の同胞は、ROR2の病的バリアントを1つ有する保因者であることに関し、50%のリスクを有する。

保因者の検出

家系内に存在する複数の病的バリアントが同定済の場合は、リスクを有する血族に対して保因者の検査を行うことが可能である。
注:保因者とは、この常染色体潜性遺伝疾患に関し、ヘテロ接合の人を言う。保因者は、短指症B1型の所見を示す場合がある。

遺伝カウンセリングに関連した問題

家族計画

分子遺伝学的検査

家系内に存在するROR2の病的バリアントが同定されている場合は、高リスクの妊娠に備えた出生前検査や着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
出生前診断の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。

胎児超音波検査

高リスクの妊娠において、高解像度超音波検査で骨格や心臓の異常が検出される場合がある[Percinら2001]。さらに、リアルタイム超音波検査では、罹患胎児に、nuchaltransparencyの拡大、上腕骨や大腿骨の長さの減少、前腕の短縮、前額部の突出、軽度の眼間開離、胸郭の周長の減少、胸椎レベルにおける半椎といったものも検出される場合がある[Percinら2001,Guvenら2006]。

 


関連情報

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分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

AROR2関連Robinow症候群:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体上の座位 タンパク質 Locus-Specificデータベース HGMD ClinVar
OR2 9q22​.31 タンパク質チロシンキナーゼ膜貫通受容体ROR2 ROR2 @ LOVD ROR2 ROR2

データは、以下の標準資料から作成したものである。
遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。
リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。

表B:ROR2関連Robinow症候群関連のOMIMエントリー内容の閲覧はOMIMへ)

268310 ROBINOW SYNDROME, AUTOSOMAL RECESSIVE 1; RRS1
602337 RECEPTOR TYROSINE KINASE-LIKE ORPHAN RECEPTOR 2; ROR2

分子レベルの病原性

ROR2は、RORファミリーの受容体型チロシンキナーゼのメンバーの1つをコードしている。このタンパク質は、多種多様な細胞内シグナル伝達カスケード内、ならびに胚発生を制御する複数のプロセスを含む細胞機能・組織機能内で働いている(Strickerら[2017]によるレビューがある)。

遺伝子構造
ROR2は、9つのエクソンから成り、4,099bpの転写物をコードする(NM_004560.3)。遺伝子やタンパク質に関する情報の詳細は、表Aの「遺伝子」の項目を参照のこと。

病的バリアント
ROR2関連Robinow症候群は、両アレル性の病的ミスセンス・ナンセンス・フレームシフトバリアントによって引き起こされる。バリアントは遺伝子全体に分布し、ROR2タンパク質の細胞外ドメインに影響を及ぼすものもあれば、細胞内ドメインに影響を及ぼすものもある[Afzalら2000,vanBokhovenら2000,Afzal&Jeffery2003]。これについては、Strickerら[2017]によるレビューがある
Robinow症候群については、エクソン6と7が関係するホモ接合性の欠失も報告されている[Brunetti-Pierriら2008]。

正常遺伝子産物
943のアミノ酸から成るROR2タンパク質は、タンパク質チロシンキナーゼ膜貫通受容体の1つである(NP_004551.2)[Masiakowski&Carroll1992]。このタンパク質には、タンパク質間の相互作用を担うドメインを含む細胞外領域と、関連するシグナル伝達経路の調節に働く触媒としてのキナーゼ活性を担う細胞内領域がある。相互作用を行うタンパク質や、ROR2受容体内の結合領域に関し、現在までに分かっている情報については、Strickerら[2017]によるレビューがある。
ROR2は正常な骨成長に不可欠である。マウスのRor2は、胚発生初期において、発生中の顔面、増殖中の軟骨細胞、生殖結節、心臓、肺、腎、胸腺で発現している[Matsudaら2001]。

異常遺伝子産物
ROR2関連Robinow症候群を引き起こす両アレル性の病的バリアントは、ROR2の機能喪失という形で現れる。システイン含量が変化することで、タンパク質のフォールディングに影響が及ぶと予測される。触媒ドメインに生じたミスセンスバリアントは、酵素機能が失わせることになると予測される。一部の病的バリアントについては、ナンセンス変異依存mRNA分解機構や、タンパク質の異常輸送・分解といった形での分子的結末に至るのではないかと考えられている[Afzal&Jeffery2003]。チロシンキナーゼドメイン内でタンパク質のトランケーションを生じさせる病的バリアントについては、リン酸化に影響が及ぶと同時に、キナーゼ活性が失われることになると予測されている[Afzalら2000]。
Schwarzerら[2009]は、罹患者ならびにマウスモデルを用いた研究を行っており、その中で、ROR2関連Robinow症候群と短指症B1型という2つの表現型は、ROR2の残存/分解の相対割合、ならびに原形質膜にまで到達する変異タンパク質の量の違いによって決まるということを強く示唆するデータを明らかにしている(「遺伝子の上で関連のある疾患」の「短指症B1型」の項を参照)。


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Carlos A Bacino, MD.
    日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    GeneReviews最終更新日: 2019.9.12  日本語訳最終更新日: 2023.4.2.[in present]

原文: ROR2-Related Robinow Syndrome

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