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ルビンスタイン・テイビ症候群
(Rubinstein-Taybi Syndrome)

[Synonym: Broad Thumbs-Hallux Syndrome]

Gene Review著者: Cathy A Stevens, MD
日本語訳者: 吉村祐実(翻訳ボランティア),小崎里華(国立成育医療研究センター病院遺伝診療科) 
Gene Review 最終更新日: 2009.8.20. 日本語訳最終更新日: 2013.1.1.

原文 Rubinstein-Taybi syndrome


要約

疾患の特徴 

ルビンスタイン・テイビ症候群 (以下RSTS)は特徴ある顔貌,幅広くしばしば偏位した母指趾,低身長,中等度〜重度の精神遅滞を特徴とする症候群である.顔貌上の特徴として,眼瞼裂斜下,鼻翼より下方に伸びた鼻柱(鼻中隔下端),高口蓋,grimacing smile(顔をしかめて笑う),距錐咬頭がある.胎児期における成長は正常であるが,生後数ヶ月で、身長,体重および頭囲のパーセンタイルは急速に低下する.小児期または青年期に肥満になる可能性がある. IQスコアは25〜79で,平均36〜51である.その他,コロボーマ,白内障,先天性心疾患,腎奇形,停留睾丸の合併がみられる.

診断・検査 

RSTSの診断は臨床所見を基本とする.ルーチンの細胞遺伝学的検査で,時折,染色体異常が見られる.RSTSに関連する遺伝子は,現在CREBBP 遺伝子およびEP300遺伝子のみが知られている.FISHによるCREBBP遺伝子解析が臨床ベースで利用可能であり,10%弱の症例で見られる微小欠失を検出する.シークエンシング解析も臨床ベースで利用可能であり,30-50%のCREBBP変異を検出する.EP300遺伝子変異はRSTS症例の約3%で特定される.この検査も臨床ベースで利用可能である.

臨床的マネジメント 

症状の治療:早期教育プログラム,特殊教育,発達障害児に対応した職能訓練および行動異常の専門家,心理士,サポートグループ,その他機関を家族に紹介; 眼科的異常,難聴,心疾患,停留睾丸,睡眠時無呼吸に対する標準治療;著しく偏位した親指や重複母趾に対する外科的治療

胃食道逆流症および便秘に対する積極的治療

経過観察特に生後1年間は成長および食餌のモニタリング,年1度の視力・聴力の検査,定期的な心臓,歯,腎疾患のモニタリング

遺伝カウンセリング 

RSTSは常染色体優性遺伝形式である.RSTS は典型的に,家族内の新生突然変異として発症する.ほとんどの患者が単一症例である(simplex cases)(家族で一人だけ罹患).ほとんどの症例で,RSTS患者の両親は罹患していない.両親が臨床的に罹患していなければ,同胞の経験的再発リスクは0.1%である.RSTS患者から子どもが生まれることは稀であるが,理論的罹患率は50%である.

病因となるCREBBP/EP300変異または欠失が家族内で判明している場合, リスクの高い妊娠に対する出生前診断は可能である


診断

臨床診断

RSTSの診断は臨床所見を基本とする.

顔貌上の特徴(図1参照) 図1. RSTSの顔貌上の特徴.アーチ状の眉,眼瞼裂斜下,鼻翼より下方に伸びた鼻柱(鼻中隔下端),高口蓋, Grimacing smileも見られる.

fig1

  • 眼瞼裂斜下
  • 外鼻孔より下方にのびた鼻柱を伴うかぎ鼻
  • 高口蓋
  • Grimacing smile
  • 歯の舌側の永久歯列の上顎切歯には,しばしば距錐咬頭が起きる

図2 A. 幅広の指節骨,B幅広く偏位した親指

fig2

図3. 幅広く,部分的に重なる親指

fig3
  • 母指趾は幅広く,しばしば偏位している.
  • 末節骨も幅広く見えることがある.
  • 基節骨も異常な形態をしていることがある.手足のレントゲン写真は,異常であるが必ずしもRSTSに特異的ではない.
  • 男児ではほとんど全例に停留睾丸を認める.
  • 尿路奇形がしばしば見られる.
  • さまざまなタイプの先天性心疾患がRSTS患者の約1/3に見られる.

成長

  • 胎児期における成長は正常であるが,生後数カ月で身長,体重および頭囲のパーセンタイルが急速に低下する.成人期では低身長が典型的となる.
  • 小児期または青年期に肥満になる可能性があり,成人期では低身長が典型的となる.

知的障害 平均IQスコアは35〜50の範囲である.しかし,発達評価は、相当に様々である。IQスコア70台の患者も少数報告されている.

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子

現在,ルビンスタイン・テイビ症候群(RSTS)と関連があることが知られているのはCREBBP遺伝子 および EP300 遺伝子のみである.

分子遺伝学的検査:臨床的検査法

臨床的検査法

CREBBP遺伝子

  • シークエンス解析  全エキソンおよびイントロン/エキソン接合領域のシークエンス解析.変異検出率はRSTS症例の30%〜50%であるが,研究室によって異なる
  • FISH. CREBBP遺伝子の全長150 kbにわたる5種類のコスミドプローブ (RT100, RT102, RT191, RT203, RT166)が商品化されている. 発表されているすべてのRSTS微小欠失の項目によって,RSTSにおける微小欠失の頻度が約10%であると示された (1-5種類のコスミドを使用した場合の検出率は38/391 [10%未満];5種類すべてのプローブを使用した場合の検出率は8/89 [9%未満]).すべての超顕微鏡的な欠失を検出するために5種類のコスミドを同時に使用するのが理想である.
  • 欠失/重複解析 FISH法およびゲノムDNAシークエンス解析で検出できない遺伝子の微小欠失/重複を検出できる方法.微小欠失はCREBBP遺伝子の研究で明らかにされている. Stef et al [2007] らは典型的なRSTSの症状を有する患者83例中17例(20.5%)の欠失をアレイCGHおよびマルチプレックス定量PCR法(quantitative multiplex fluorescent-PCR)を用いて検出した.

EP300遺伝子

  • シークエンス解析  RSTS患者の約3%にEP300 遺伝子の変異が同定されている.
  • 欠失/重複解析 ゲノムDNAのFISH法およびシークエンス解析で検出できない微小欠失や重複を検出するために使用される方法
表1. ルビンスタイン・テイビ症候群で使用される分子遺伝学的検査の要約

Gene Symbol

CREBBP/EP300遺伝子変異がRSTSに関与する確率

検査法

検出できる変異

変異検出率1

検査の実施可能性

CREBBP

>60%

シークエンス解析

シークエンス・バリアント2

30%-50%

臨床
Image testing.jpg

FISH

 

~10% 3

欠失/重複解析4

エキソン,多エキソンおよび全遺伝子欠失

10%-20% 5

EP300

3%

シークエンス解析

シークエンス・バリアント

3% 5

臨床
Image testing.jpg

欠失/重複解析4

エキソン,多エキソンおよび全遺伝子欠失

検査の実施に関してはGeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能としている. GeneTestsは研究機関から提出された情報の検証や,研究機関の承認状態もしくは実施結果の保証は行わない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.

  1. 当該遺伝子に存在する変異の検出方法の精度  
  2. シークエンス変異で検出される変異の例には,小規模な遺伝子内欠失・挿入やミスセンス変異,ナンセンス変異,スプライス部位変異が含まれる.
  3. Petrij et al [2000a], Petrij et al [2004], Schorry et al [2008]
  4. シークエンス解析では容易に検出できないゲノムDNAイントロン内のコード領域の欠失・重複を同定するには,遺伝子やその染色体領域内の定量PCR法, long-range PCR,MLPA法,マイクロアレイなど,様々な方法が有用である。マイクロアレイを参照.
  5. 53例中10例の患者では,FISH法で検出されなかった欠失/重複が認められた.

検査結果の解釈  略

発端者における診断の確認

  • RSTSの診断は臨床所見を基本とする
  • 診断に疑問がある場合,特徴が非典型的または非常に重篤な場合,FISHまたは欠失/重複解析を考える必要がある
  • CREBBP遺伝子のシークエンス解析は高価であるが,疑問の残る診断であれば利用可能である.
  • CREBBP遺伝子変異が同定されない場合,シークエンス解析および/または欠失/重複解析を考慮に入れても良い.

発症リスクのある妊娠に対する出生前診断や着床前診断(PGD)には,家系内での疾患原因変異の事前同定が必要である.

注意:GeneTests Laboratory Directoryには掲載施設で実施可能な臨床検査を載せることがGeneReviewsの方針である.ここで掲載されている検査は必ずしも著者や編集者や審査者が推奨をするものではない.

遺伝子レベルでの関連疾患

ルビンスタイン・テイビ症候群は,CREBBP遺伝子およびEP300遺伝子の生殖細胞突然変異に関することで知られている唯一の疾患である.

しかし,CREBBP遺伝子およびEP300遺伝子は,様々な腫瘍抑制伝達経路(tumor-suppressor pathways)に関与しており,これらの遺伝子の体細胞変異は多くの悪性腫瘍に発現する.EP300に関与する体細胞転座t(8;16)(p11;p11.3)は急性骨髄性白血病および治療関連の血液疾患に関連する.ヘテロ接合のCrebbp欠損マウスの一部では白血病を発症することがある.

CREBBP遺伝子の微小重複が3例報告されている. その表現型は,中等度の知的障害,正常から高身長,特徴的な顔貌面長,幅広い眉,鼻および立耳などを特徴とする.手足にわずかな奇形が認められるが,RSTSとは似ていない.


臨床像

自然経過

ルビンスタイン・テイビ症候群(RSTS)は,特徴的な顔貌および手足の所見から,生下時または幼少時に診断されることが多い.幼少時の問題は,呼吸困難,摂食障害,体重増加不良,反復する感染症

,重症の便秘である.中等度の知的障害も典型的である.

特徴的な顔貌と手足の所見により生後間もなく気づかれることが多い.乳児早期には呼吸困難,摂食障害(哺乳困難),体重増加不良,反復性感染,便秘などが問題となる.

  • 眼:斜視,屈折異常,眼瞼下垂,鼻涙管閉塞,白内障,コロボーマ,眼振,緑内障,角膜異常が見られる.ERG上,網膜機能不全が高頻度に見られたとの報告がある.
  • 心臓:約1/3にさまざまな先天性心疾患を合併する.
  • 尿生殖器系:腎奇形の頻度は高い.男児のほとんど全例で停留睾丸を有する.
  • 骨格系:膝蓋骨脱臼,関節弛緩,脊柱彎曲,レッグ・ペルテス病,大腿骨すべり症,頸椎の異常が見られる.
  • 睡眠時無呼吸:閉塞性無呼吸はしばしば考慮すべき問題となる.これは,狭い口蓋,小顎,筋緊張低下,肥満,喉頭壁の易虚脱性等によって生じる.
  • 皮膚:ほんのわずかな外傷でもケロイドを生じることがある.石灰化上皮腫が報告されている.
  • 歯:歯の叢生、不正咬合,複数の齲歯,乏歯、過剰歯,魔歯,第2生歯の距錘咬頭(永久歯の上顎切歯)が見られる.
  • 腫瘍:髄膜腫,石灰化上皮腫,横紋筋肉腫,褐色細胞腫,神経芽細胞腫,髄芽腫,乏突起神経膠腫,平滑筋肉腫(leiomyosarcomaの間違い?),セミノーマ,歯牙腫,分離腫および白血病などの腫瘍を合併したとの報告がある.
  • 成長:胎児期における成長は正常であるが,幼年期に身長,体重および頭囲15パーセンタイルを下回る.女性患者が青年期に過体重になるのに対し,男性患者は小児期にしばしば過体重となる.平均身長は成人男性患者では153.1cm,成人女性患者では146.7cmである.
  • 思春期:思春期および性的発達は正常である.
  • 知能:RSTSの小児は典型的に発達の遅れを認める。ある研究では、独歩獲得 平均30カ月,始語獲得 平均25カ月,トイレトレーニングは平均62カ月であった.言語発達の遅れは90%の児で見られ、一部ではほとんど言葉を用いない者もいる.ある研究では,平均IQは51,他の研究では36であった.IQスコアは25〜79の範囲である.動作性IQは言語性IQより高くなることが多い.

RSTSではスキルの退行はあまり見られない.

行動:集中できる時間が短い,物音や群衆に対する忍耐力が低い,衝動性や不機嫌さがしばしば観察される.Schorryらは,患者93例を対象とした研究で,高頻度の自閉行動に注目した.他の異常行動は,注意力不足,自傷行為,攻撃行動である.また,StevensらもRSTS患者の自閉症的行動に注目した.

遺伝子型と臨床型の関連

SchorryらはRSTS患者93例のうち,52例に意義のあるCREBBP変異を同定した.変異の有無にかかわらず,先天奇形,腫瘍,特異顔貌および知的障害のレベルに有意な差は認められなかった.変異のない集団では成長障害は強い傾向があったが,統計的に有意ではなかった.しかし,てんかん発作はCREBBP変異を有する患者でより頻度が高かった.大きな欠失のある患者は,より重度の認識機能障害および自閉症的行動となる傾向があったが,統計学的に有意ではない。.

CREBBPを含む16p欠失の有無に関わらず,表現型に差異はないと一部の研究者は報告しているが,

Hennekamらは,16p欠失を有する患者に小頭症,母指趾の部分重複,母指趾の偏位を呈する頻度が高いことを見出した.精神機能の明確な差はなかった.

Hou [2005]らは,疾患重症度がCREBBP遺伝子を含む欠失の大きさと相関すると示唆した.Bartsch et al [2006] らは,CREBBP遺伝子ならびに隣接するDNASE1およびTRAP1遺伝子を含む大きな欠失のあった重度RSTSの患者3名 (成長障害,生命を脅かす感染症および幼児期の死亡) について報告した.しかし,GervasiniらおよびStefらは,重度の表現型を持たない,類似した範囲の欠失を有する患者について発表した. 

Gervasini et al [2007] and Schorry et al [2008]によってモザイク微小欠失(Mosaic microdeletion)が報告されている.微小欠失を有する患者は微小欠失が認められない患者より重度の表現型を示す傾向がある. EP300 変異を有する患者は少数報告されている。.EP300 変異を有する患者の特徴は,特に骨格の所見では軽度である.一部の患者の手足は正常である.精神発達も正常のボーダーラインから知的障害領域であり、より軽症である。

頻度 

出生時有病率は1/100,000 − 1/125,000 であることがオランダの調査により報告されている.RSTSと報告されている例の大多数は白色人種であるが,黒人やアジア人例もある.非白色人種において頻度が低いのか,他の要因によるものなのかは確かめられていない.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

特徴的顔貌および手足の異常からRSTSの診断は容易であることが多いが,鑑別すべき疾患には以下のものが含まれる.

FGFR関連の頭蓋骨癒合症(Pfeiffer症候群およびApert症候群),Saethre-Chotzen症候群,Greig頭蓋多合指症候群において,幅広く、偏位した母指趾が見られる.これらの疾患とは、頭蓋骨癒合症の有無および顔貌の特徴の違いによって鑑別すべきである。.

FGFR関連の頭蓋骨癒合症の一部と考えられる疾患には, Pfeiffer症候群, Apert症候群,クルーゾン症候群,Beare-Stevenson症候群,FGFR2関連の*孤立性冠状縫合癒合,Jackson-Weiss syndrome,黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群および Muenke syndrome(FGFR3関連の*isolated冠状縫合癒合)の8つがある.

訳者注:*「isolated」には適当な日本語訳がないため,isoltaed craniosynostosisをsyndromic craniosynostosisに相対する疾患としてnon-syndromic craniosynostosisと同義と見なして,「isolated」を「非症候群性」と訳した)

Muenke症候群およびFGFR2関連の非症候群性冠状縫合早期癒合症を除く前述の6疾患は,両側冠状縫合早期癒合症,クローバー葉頭蓋,特徴的顔貌,手足の様々な所見を特徴とする.Muenke症候群およびFGFR2関連の非症候群性冠状縫合早期癒合症は,片側冠状縫合早期癒合症または両側冠状縫合早期癒合症のみを特徴とする.Muenke症候群(FGFR3関連冠状縫合早期癒合症)の診断は病因となるFGFR3遺伝子の変異を特定することによる.FGFR2関連の非症候群性冠状縫合早期癒合症の診断は病因となるFGFR2遺伝子の変異を特定することによる.その他6つのFGFR関連の頭蓋骨縫合早期癒合症は臨床所見によって診断される.しかし,診断が疑わしい症例においてFGFR1,FGFR2,FGFR3遺伝子の分子遺伝学的検査によって診断を確定される.FGFR関連の頭蓋骨縫合早期癒合症は常染色体優性遺伝である。

古典的なSaethre-Chotzen症候群では冠状縫合早期癒合(片側または両側),顔面の非対称(特に一側の冠状縫合早期癒合の例),眼瞼下垂,耳の外表的特徴(突出した脚のある小さな耳介)を特徴とする.手指の2〜3本の合指症はさまざまに認められる.軽度から中等度の発達遅滞や知的障害が報告されているが,知能が正常である例が多い.Saethre-Chotzen症候群では頻度は低いが低身長,頭頂孔,椎骨の癒合,橈骨尺骨の癒合,口蓋裂,上顎低形成,両眼隔離,外反母趾,親指末節骨の重複,先天性心奇形を認める.Saethre-Chotzen症候群の診断は基本的には臨床所見からなされる.時折,患者に7p21領域の染色体転座や7番環状染色体を認める。

TWIST遺伝子はSaethre-Chotzen症候群に関連する唯一の遺伝子である. TWIST変異は欠失/重複解析およびシークエンス解析(エキソン1)を併用することで,患者の46-80%に検出される.常染色体優性遺伝である.

典型的なGreig頭蓋多合指症候群 (GCPS)は,軸前性多指症または軸前性と軸後性の混在した多指症,両眼隔離および巨大頭蓋を特徴とする.軽症のGCPS患者では、軽微の所見を認める程度である。

軽度GCPSの患者では,軸前性多指症4型と交差する多指症(軸前性多趾と軸後性多指+3−4合指・1−3合趾)を認める。

重度 GCPSの患者では痙攣,水頭症および知的障害が生じることがある.GCPSの診断は臨床所見および家族歴に基づく.標準的なG分染細胞遺伝学的検査により、7p13領域の転座および欠失を検出できる。.FISH 解析によって,推定5%-10%の広範な欠失を有する患者を同定できる.将来,アレイCGHはFISH解析の代替となるだろう.GLI3はGCPSとの関連が知られる唯一の遺伝子である.; 典型的な患者の75%以上において, GLI3変異(すなわち,GLI3を含む細胞遺伝学的異常 またはGLI3遺伝子変異)を特定できる.

短指症D型では幅広い親指が単独所見として見られる.片側性または両側性の親指末節骨の短縮が存在する.常染色体優性遺伝形式である.

Floating-Harbor症候群の顔貌の特徴は,一部のRSTS患者に似ている.Floating-Harbor症候群は,低身長,逆三角形の顔、隆鼻、薄い口唇,短頸,発達障害を特徴とする.手足の所見によってRSTSと区別する.

Cotsiriloslら [1987]によってRSTS類似の顔貌と四肢異常を有する正常な知能の母と2児例が報告されている. Keipert症候群は幅広い母指趾を特徴とするが,難聴および特徴的な顔貌によって区別される.Kargi ら [2001]によって,軽度の翼状片も有するRSTS患者に類似した手足の所見を有する患者について報告されている.


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

ルビンスタイン・テイビ症候群(RSTS)と診断された患者の疾患の程度を確立するために,以下の評価を提案する.[Wiley et al 2003]:

  • RSTS児専用の標準成長曲線に基づく成長の評価.
  • 運動能力(粗大,微細),言語能力,認知能,職業適性能力など多面的な発達評価.
  • 眼科的検査
  • ABRによる聴力評価 (評価の詳細はDeafness and Hereditary Hearing Loss Overviewを参照)
  • 歯科口腔外科学的評価
  • 心エコー検査,循環器専門医による心疾患(構造異常)の評価.
  • 必要に応じ胃食道逆流の評価
  • 便秘の評価
  • 腎エコー検査.
  • 男性の場合,停留精巣の有無の評価
  • 骨格系(母指趾,関節,脊椎)の評価
  • いびき,特別な就寝姿勢,夜間覚醒,日中傾眠などの症状があれば,閉塞性睡眠時無呼吸の評価

病変に対する治療

次の項目が適切である.

  • 早期教育プログラム,特殊教育,発達障害児に対応した職能訓練.
  • 屈折異常,斜視,緑内障,白内障などの合併症があれば眼科的治療.
  • 聴覚障害があればその治療.
  • 先天性心疾患があればその治療.
  • 胃食道逆流および便秘に対する積極的治療.
  • 停留睾丸があればその治療
  • 顕著に偏位した母指・重複拇趾に対する外科的治療.
  • 睡眠時無呼吸があればその治療.
  • 行動異常の専門家,心理士への紹介,必要に応じては薬物療法を視野に入れた行動管理.
  • サポ−トグル−プ,その他機関の紹介.

二次病変の予防

RSTS患者は,喉頭壁が易虚脱性のため、挿管が難しい.小児の複雑な気管障害の管理に慣れた麻酔科医が,必要に応じて全身麻酔を管理すべきである.これらの問題のため,RSTS患者は類似した術式を受ける患者より,早期挿管および晩期の抜管が必要となる.

経過観察

  • 成長の慎重な評価,特に生後1年間.
  • 眼科的異常に関する年に1度のフォローアップ.
  • 1年に1度は聴力検査,中耳炎を反復していれば頻度を上げる.
  • 心,腎奇形のフォローアップ.
  • 定期的な歯科口腔外科的フォローアップ.

回避すべき薬物や環境

ヴィガバトリンやティガバイン(脳内GABAレベルを上昇させる抗痙攣剤)はASでは禁忌であり,痙攣の治療として用いるべきではない.

カルバマゼピンは禁忌薬ではないが,他の抗痙攣剤と比べて用いられることは少ない.

リスクのある親族への検査

リスクのある親族への検査に関する事柄等は「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと.

研究中の治療法

種々の疾患に対する臨床試験についてはClinicalTrials.govを参照のこと.

注意:本症の臨床試験は行われていない.

その他

遺伝クリニックは,患者や家族に自然経過,治療,遺伝形式,患者家族の遺伝的発症リスクに関する情報を提供とするとともに,患者サイドに立った情報も提供する.GeneTests Clinic Directoryを参照のこと.

患者情報 本疾患の支援グループや複数疾患にまたがった支援グループについては「患者情報」を参照のこと.これらの機関は患者やその家族に情報,支援,他の患者との交流の場を提供するために設立された.


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

ルビンスタイン・テイビ症候群(RSTS)は常染色体優性遺伝形式である.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • RSTSは通常,新生突然変異である.ほとんどの症例において発端者の両親は罹患していない.
  • 発端者の両親の評価では,RSTSに関連する身体所見の臨床的な診察が推奨される.発端者の両親は、症状がなければ,検査の適応とならない.

発端者の同胞 

  • 同胞の罹患リスクは発端者の両親の遺伝的状態による.
  • 発端者の両親が臨床的に罹患していなければ,同胞の経験的再発リスクは約0.1%である.
  • 両親に罹患児に同定されたCREBBP遺伝子の変異が見られない場合,罹患児のCREBBP遺伝子変異は新生突然変異と推測され,同胞への罹患リスクは性腺モザイクによって生じる可能性もある。
  • 性腺モザイクによる発症は報告されていないが,ありうることである.

発端者の子

RSTS患者から子どもが生まれることは稀であるが,理論的罹患率は50%である.

発端者の他の家族

発端者家族の罹患リスクは一般人の罹患リスクより増加することはない.ほとんどのRSTS患児の親は罹患していないからである.

遺伝カウンセリングに関連した問題

明らかに新生突然変異による家族

発端者の両親が罹患していない場合は,父親が異なる場合や明らかにされていない養子縁組など,医学的要因以外の原因も考えられる.

家族計画 

  • 遺伝リスクの算定や出生前診断の利用については、妊娠前に話し合うことが最適である。
  • 罹患している若年成人やリスクのある若年成人に対して遺伝カウンセリング(子への潜在的リスクや生殖手段)の提供は適切である。

DNAバンキング

DNAバンクは主に白血球から抽出したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,遺伝子変異や疾患に対する知識が進展する可能性があり、罹患者のDNAの保存は考慮に値する.

出生前診断

出生前診断は分子遺伝学的検査の項で述べた方法を用いて,技術的には可能である.DNAは胎生16−18週に採取した羊水中細胞や10−12週*に採取した絨毛から調製する.出生前診断を行う以前に,罹患している家族において病因となる遺伝子変異が同定されている必要がある.

注:胎生週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される.


更新履歴

  1. GeneReview 著者: Malanie G Pepin, MS; Peter H Byers, MD
    日本語訳者:古庄知己(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)
    GeneReview 最終更新日: 2000.4.15. 日本語訳最終更新日: 2003.8.20.
  2. Gene Review著者:Cathy A Stevens, MD
    日本語訳者:古庄知己(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)、吉江幸司(信州大学医学部医学科)
    Gene Review 最終更新日2004.9.13 日本語訳最終更新日2005.1.13
  3. Gene Review著者: Cathy A Stevens, MD
    日本語訳者: 吉村祐実(翻訳ボランティア),小崎里華(国立成育医療研究センター病院遺伝診療科) 
    Gene Review 最終更新日: 2009.8.20. 日本語訳最終更新日: 2013.1.1. ( in present)

原文 Rubinstein-Taybi syndrome

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