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脊髄小脳変性症2型
(Spinocerebellar Ataxia Type 2)

[Synonym: SCA2]

Gene Review著者: Stefan-M Pulst, MD
日本語訳者: 吉村祐実 (翻訳ボランティア),櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療室)

Gene Review 最終更新日: 2015.11.12 日本語訳最終更新日: 2016.7.17.

原文 Spinocerebellar Ataxia Type 2


要約

疾患の特徴 

脊髄小脳変性症2型(SCA2)は進行性の小脳失調を特徴とし,眼振,緩徐衝動性眼球運動(slow saccadic eye movements),そして一部の患者では眼筋麻痺やパーキンソニズムを起こす.錐体路徴候もみられ,深部腱反射は病初期には亢進し,後期には消失する.典型例では30歳代に発症年齢し,10−15年の経過で死亡する.

診断・検査 

SCA2の診断はATXN2におけるCAG反復配列の異常伸長を検出する分子遺伝学的検査に依る。患者でのCAGリピート数は33回以上である.遺伝子検査の正診率は,ほぼ100%で臨床応用されている.

臨床的マネジメント 

症状の治療: SCA2患者のマネジメントは支持療法が中心となる.患者の活動能力を維持しなければならない.つえや歩行器は転倒予防になる.手すりをつける,トイレの便座を高くする,車椅子移動がしやすいように段差をなくし傾斜をつける,などが必要であろう.言語療法や,筆記用具,コンピューター作動性のコミュニケーション機器は,構音障害のある患者には有効であろう.少しだけ重くした食器やドレッシングエイドは有用で,自立感が維持できる.嚥下困難が問題となってくれば,ビデオ食道撮影により,最も誤嚥を起こしにくい食物の固さを決定できる.

二次病変の予防 ビタミン剤の摂取は推奨される。体重のコントロールは歩行障害や移動障害を軽減するのに役立つ。

経過観察: 運動障害や失調について経験豊富な医師による毎年の定期診察.

回避すべき薬物や環境 :小脳の機能に影響することが知られているアルコールや薬剤は避けなければならない。

遺伝カウンセリング 

SCA2は常染色体優性遺伝である.患者の子は50%の確率で遺伝子変異を受け継ぐ.特に,父親から受け継がれた場合にCAGリピートが著しく増加する可能性がある.家族が罹患していると分子遺伝学的検査で確認された場合,リスクの高い妊娠に対する出生前検査が可能である.


臨床診断

示唆的所見 脊髄小脳変性症2型 (SCA2)を疑うべき所見は,

  • 緩徐に進行する運動失調および構音障害
  • 眼振および緩徐衝動性眼球運動
  • 常染色体優性遺伝に一致する家族歴

診断の確定 SCA2の診断は,発端者におけるヘテロ接合性の変異の検出によって確定される (表1参照)。SCA2の臨床的特徴のみでは, 診断を確定できない。したがって,診断は分子遺伝学的検査による。
分子検査の方法として,CAGリピート検査,マルチジーンパネルの使用, ゲノム検査が挙げられる。

  • CAGリピート検査.  ATXN2 遺伝子内のCAGリピート のタイピング(リピート数の測定)は最初に実施する。
  • マルチジーンパネル . ATXN2遺伝子内のCAGリピート解析および他の関連のある遺伝子の解析(鑑別診断を参照)も考慮してよい。

    注:検査対象の遺伝子およびマルチジーンパネルの感受性は研究室および時間の経過とともに変化する。

  • もし単一の遺伝子の検査(および/またはマルチジーンパネルの使用)ではSCA2の特徴を有する患者の診断を確認でき ない場合はゲノム検査を考慮できる。そのような検査には,全エクソーム解析(WES),全ゲノムシーケンス(WGS)およびミトコンドリアシーケンス(whole mitochondrial sequencing (WMitoSeq) が含 まれる。

ゲノム検査の結果の解釈について考慮すべき点についてはこちらを参照。

アレルサイズ

  • 正常アレル:CAGリピート数が31回以下
  • 臨床的意義が不明な中等度のアレル. CAGリピート数が32回のアレルは稀である。臨床所見と家族歴の相関が有用であるかもしれない。
  • 病的アレル:CAGリピート数が33回以上またはCAAリピートによる中断されているもの(Pulstら1996,Charles ら 2007).
    • CAGリピート数が32回と33回のアレルは「遅発型(50歳以降の発症)」と判定される.
    • 最も頻度の高い発病型アレルは,リピート数が37回から39回である.CAGリピート数が極端に長いもの(200回を超える)も報告されている(Babovic-Vuksanovicら1998).「表現促進現象」の項参照.

    注:CAGリピートの伸長がCAAリピートによって中断していたとしても,リピート長による病原性は変わらない.なぜなら,CAAはCAGと同じく,グルタミンをコードしているからである(Costanzi-Porriniら2000).しかし,CAAによる中断により,減数分裂時の不安定さが緩和される(Choudhryら2001).逆に,CAAによる中断がなければ,一部の伸長したアレルでは不安定さが増強され,子供がさらに伸長したリピートを受け継ぎ,疾患を発症するリスクが増加する.

表1 SCA2の遺伝子検査

遺伝子1l

検査方法

検出可能な病的バリアントを有する
病的バリアントの割合

ATXN2

病的バリアントに
対する標的解析2

~100%

  1. 表A,遺伝子および遺伝子座・タンパクのデータベース を参照。
  2. CAG リピートの異常伸長を検出. PCR増幅法 は 100回程度までの比較的小さい伸長を検出する。反復数が100回を超える CAGリピートの高度伸長 の検出には,サザンブロット法が必要である。この検査は症状のある乳児や小児が 適応となるであろう [Mao et al 2002]。

注意:明らかな家族歴のない患者と比較し,運動失調の家族歴が陽性の患者の検査では, 検査陽性率が高くなる。

  • Riessら(1997)の調査では,失調を呈する842人の患者のうち,ATXN2異常伸長(41,49リピート)を認めたのは2人にすぎなかった.
  • Cancelら(1997)の調査では,90人の家族歴のないOPCA患者のうちATXN2異常伸長(37,39リピート)を認め

臨床像

自然経過

  • 脊髄小脳変性症2型(SCA2)は緩徐に進行する運動失調と構音障害に,眼振や緩徐衝動性眼球運動(slow saccadic eye movements),一部の患者では眼筋麻痺のような眼症状を伴う疾患である.深部腱反射は病初期の数年は亢進するが,後に消失する.発症年齢の平均は典型例では30歳代で,10−15年で死亡する.20歳以前に発症する場合は,疾患はもっと急速に進行する.
  • キューバからの最初の報告 では,初発症状は歩行失調で,しばしば脚の痙攣(cramp)を伴った(Orozcoら1990).50%以上の患者は,運動時振戦や姿勢時振戦,筋緊張低下,腱反射減少,異常眼球運動を呈し,いずれ核上性の眼球運動麻痺に進行する緩徐眼球運動を伴う.眼球運動の異常は詳細に報告されている(Valazquez-Perezら2004,Engelら2004).
  • Geschwindら(1997b)は,ATXN2遺伝子の異常 が証明された患者では ほ ぼ全員に小脳失調と緩徐衝動性眼球運動がみられ,比較的高頻度にジストニアや舞踏病(38%)や認知症(37%)がみられることを示した.ある家系では,患者ではこれらの原発性小脳症状の軽度のものがみられたが,ある家系では早発型であり認知症や舞踏病を合併した.
  • Cancelら(1997)も,人種の異なる32家系の111人の患者で同様の所見を報告した.緩徐眼球運動は56%に,線維束攣縮は25%に,そしてジストニアは9%にみられた.著者らはこれらの症状と,罹病期間や伸長したCAGリピートの長さとが相関することを示した.
  • L-dopa反応性のパーキンソニズムという表現型を呈したSCA2が報告されている(Furtadoら2002,Payamiら2003,Infanteら2004,Luら2004,Charles ら2007).

神経病理

キューバのオルギン州の7人の患者の病理解剖が報告された(Orozco ら 1989).小脳のプルキンエ細胞の数が非常に減少していた.鍍銀標本では,プルキンエ細胞の樹状突起は突起の形成が悪く,軸索は顆粒層を通過するところでトルペード様変性をしてい た.平行 する線維は乏しく,顆粒細胞数が減少し,一方,ゴルジ細胞や籠細胞は,歯状核や他の小脳核と同様に,よく維持されてい た.脳幹では下オリーブ核と橋小脳核のニューロンの消失が顕著であった.7人中6人では黒質の消失が顕著であった.解析できた5人の脊髄では,後柱の顕著な脱髄と,脊髄小脳路の軽度の脱髄がみられた.運動ニューロンとクラーク柱のニューロンで,その径と数が減少していた.腰髄と仙髄で,前根と後根が部分的に脱髄していた.視床と,橋の被蓋網様核の変性が報告されている(Rub ら 2003, Rub ら 2004, Rub ら 2005).
さらに,Orozcoら(1989)は,特に前頭側頭葉に顕著な重度の脳回転萎縮 を報告している.大脳皮質は薄いが,神経細胞の菲薄化はない.大脳白質は萎縮しており,グリア変性している.黒質-ルイ体-淡蒼球経路の変性は主に黒質がおかされる.ある1例では,第3脳神経の領域の斑状の消失が示されている.Adamsら(1997)は, 同様の所見を1例報告している.

  • 白質に病変がある1例の報告がある(Armstrongら2005).
  • 神経生検ではミエリン線維の中等度で広範な消失がみられる(Fillaら1995).

遺伝子型と臨床型の関連

発端者 一般に,発症年齢とCAGリピートの長さとの間には明らかな逆相関がある.しかし,リピート長によって個人の疾患の重症度 や発症年齢 は予測できない.

  • CAGリピート数が40回より小さい患者では,発症年齢の幅が最も大きい.リピート数が33回や34回の一部の患者は60歳を過ぎてから発症している.リピート数が37回なら,初発は20歳から60歳とする報告もある(Pulst ら1996).
  • リピート長の長い場合は,発症年齢の幅は小さい.リピート数が45回を超えると,ほとんど全員が20歳より前に発症している(Imbertら 1996, Pulstら1996, Sanpeiら1996,Cancelら1997,Geschwindら1997b,Riessら1997, Morettiら2004).

CAGリピート数はジストニア,ミオクローヌス,およびミオキニア を有する患者の方が有意に多く,一方ではCAGのリピート長および罹病期間は筋萎縮,線維束性収縮,腱反射の低下,下肢の振動覚および緩徐な衝動性眼球運動に影響する。
伸長したATXN2アレルのホモ接合性は発症年齢に影響しないと考えられる[Sanpei et al 1996].

リスクのある家族.発症年齢,重症度,症状のタイプおよび疾患の進行は様々であり,家族歴や分子遺伝学的(DNA)検査によって予測することはできない。

浸透率 確定診断,アレルサイズおよび遺伝型表現型の相関を参照

促進現象 世代を経るにつれ,表現型の重症度が増加し,発症年齢が早くなる現象を表現促進現象と呼び,SCA2でみられる.ATXN2遺伝子のCAGリピートが 子に受け継がれるのに従って伸長するという性質で,次の世代での発症年齢の早期化を説明できる.

完全型変異アレルや不完全型のアレルが父親を通して伝達されていることは,減数分裂での不安定性を示している可能性が高く,結果として表現促進現象につながる.リピート数が43回で,22歳に発症した男性の子 が,乳児期に無呼吸,筋緊張低下,嚥下困難で,CAGリピート数が202回のアレルを受け継いでいた,という報告がある(Babovic-Vuksanovicら,1998). Maoら(2002)はサザンブロット法を用いて,広範な伸張を有する患者4例を特定した.
病名 以前に,SCA2や他の遺伝性の失調症に対して使われていた用語に,Marie失調症,OPCA,不全型Friedreich失調症がある.これらの用語はもう使用しない.

頻度 Geschwindら(1997b)は,UCLAの失調症クリニックにかかっている異なる人種の患者で,SCA2は常染色体優性遺伝の小脳失調症(ADCA)の13%を占め,SCA1が6%,SCA3が23%であることを示した.ドイツの複数の失調症クリニックからのさらに大きな統計では,SCA2はADCA家系の14%を占め た(Riessら1997).Cancelら(1997)の人種や出身が様々な184名からなる患者集団での統計でも同様の数字(15%)であった.ベイラー失調症クリニックでは,SCA2は小脳失調症(ADCA)の中で最も頻度が高い(18%)(Lorenzettiら1997).SCA2は韓国で最も頻度の高いADCAである(Leeら2003)(Ataxia overviewの項を参照).

SCA2は大学医療センターの失調症クリニックを受診する患者によくみられる(Moseleyら1998).常染色体優性遺伝による症例は15%,散発例(家族内で1人だけが罹患)は2%であった.

遺伝子レベルでの関連疾患 失調に加え,L-ドーパ反応性パーキンソニズム(失調は伴う場合も伴わない場合もある)を呈する個人および家系が報告されている.


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

SCA2か他の遺伝性の失調症かを鑑別することは難しく,不可能なことが多い(Hereditary ataxia overview の項を参照).鑑別診断は,パーキンソン病や後天性の小脳失調症をも含めるべきである.

ドイツ人を祖先にもつ常染色体優性遺伝の小脳失調症(ADCA)の64家系で,6家系がSCA2であったが,Schölsら(1997)は,SCA2を他のSCAと鑑別するのに十分な特徴はひとつもなかったと言っている.しかし,緩徐衝動性眼球運動,姿勢振戦と動作時振戦,ミオクローヌス,腱反射低下が,SCA1やSCA3の患者よりもSCA2の患者に高頻度に見られた.
SCA2の患者の眼球運動を定量的に記録し,他のADCA患者と比較した2つの研究がある.

  • Burkら(1996)は,リンケージ解析で診断したSCA2の複数の患者を,SCA1やSCA3の患者と比較した.SCA2の患者は衝動性運動の速度(138°/秒)が,SCA1(244°-/秒)やSCA3(347°/秒)の患者と比較して有意に緩徐であった.8人のSCA2の患者全員が衝動性眼球運動の速度が,コントロール群の平均値の2SDよりも低かった.
  • Buttnerら(1998)は,遺伝子検査で診断したSCA1,SCA2,SCA3,SCA6の患者の衝動性眼球運動を比較した.SCA2の患者では,衝動性眼球運動の速度のピークが80から295°/秒(正常では400°/秒を超える)であった.衝動性眼球運動はSCA1の患者でも緩徐であったが,SCA3やSCA6の患者では正常であった.

SCA2は成人発症の孤発性進行性失調症,多系統萎縮症(MSA; Shy-Drager症候群),L-ドーパ反応性パーキンソニズム,非定型のFriedreich失調症とも鑑別せねばならない(Abeleら2002).

2. SCA2の患者が示す表現型の頻度 SCA1, SCA3およびSCA6の患者との比較

表現型

SCA2

SCA1

SCA3

SCA6

小脳機能異常

100%

100%

100%

100%

衝動性眼球運動速度の低下

71%-92%

50%

10%

0%-6%

ミオクローヌス

0%-40%

0%

4%

0%

ジストニアや舞踏病

0%-38%

20%

8%

0%-25%

錐体路症状

29%-31%

70%

70%

33%-44%

末梢神経障害

44%-94%

100%

80%

16%-44%

知能低下

31%-37%

20%

5%

0%

頻度はGeschwindら[1997a], [1997b]およびSchölsら [1997a], [1997b]のものを編集した。


臨床的マネジメント

最初の診断時における評価

脊髄小脳変性症2型(SCA2)患者の疾患の程度を確立するために,以下の評価が推奨される。

  • 神経学的 評価
  • 眼科学的検査
  • ベースライン時の認知機能の評価
  • 神経画像診断
  • 遺伝学の専門家および/または遺伝カウンセラーの診察

病変に対する治療

患の進行を遅らせたり止めたりする治療法が見つかっていないので,対症療法となる. 運動や理学療法によって,筋肉の協調運動障害や弱力化の進行を阻止することはできないが,患者は活動能力を維持する必要がある. つえや歩行器は転倒予防になる. 手すりをつける,トイレの便座を高くする,車椅子で移動がしやすいように段差をなくし傾斜をつけるといった住居の利便性を図った改良が必要であろう. 言語療法や,筆記用具,コンピューター作動性のコミュニケーション機器は,構音障害のある患者には有効であろう.

少しだけ重くした食器やドレッシングエイドは有用で,自立感が維持できる. 嚥下困難が問題となってくれば,ビデオ食道撮影により,最も誤嚥をおこしにくい食物の固さを決定できる. 視床を刺激することで,ひどい振戦が改善した,という報告が1例ある(Pirkerら2003).また,視床下核を刺激することで改善したという報告が1例ある(Freundら,2007).

二次病変の予防

症状の改善に有効な食事要因は知られていないが,特にカロリー摂取が低下している症例ではビタミン剤の摂取は推奨される。体重のコントロールは歩行障害や移動障害を軽減するのに役立つ。

経過観察

運動障害や失調について経験豊富な医師による毎年の定期診察.

回避すべき薬物や環境

小脳の機能に影響することが知られているアルコールや薬剤は避けるべきである。

リスクのある親族への検査

遺伝カウンセリングとして扱われるリスクのある親族への検査に関する問題は,「遺伝カウンセリング」の項を参照のこと。

研究中の治療法

種々の疾患に対する臨床試験については,ClinicalTrial.govを参照のこと。

注意:本症の臨床試験が行われていない可能性がある。

その他

小脳性の振戦に対して,振戦のコントロール薬は効果がない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

脊髄小脳変性症2型(SCA2) は常染色体優性遺伝性疾患である。.

患者家族のリスク

発端者の両親

  • SCA2と診断された患者のほとんどは, 両親のどちらかが罹患している。
  • 発端者は,罹患していない片親から受け継いだ低浸透性アレルの伸長により罹患した可能性がある。
  • 明らかな異常を認めない発端者の両親に対して, ATXN2遺伝子の分子遺伝学的検査や 身体診察を行うことが勧められる。

    SCAと診断された患者のほとんどは,どちらかの片親が罹患しているが,一見家族歴がないように見えることがあり,これは親族の病気が把握できていない場合や,発病するはずの片親が発病前に死亡しているか,もしくは発病が遅い場合などが理由である。

発端者の同胞 

  • 発端者の同胞に対する罹患リスクは両親の遺伝学的状況による。
  • 片親が伸長したATXN2アレルを有する場合,同胞の発症リスクは50%である.しかし,発症年齢,重症度,症状のタイプ,疾患の進行速度は多様であり,家族歴や遺伝した伸長の大きさで予測できない。
  • 両親のいずれも伸長したATXN2アレルを有していない場合,同胞の発症リスクは低いと考えられる.
  • 両親のいずれも,白血球から抽出されたDNAに検出可能な伸長したATXN2アレルを有していない場合,発端者の同胞に対する発症リスクは低いが,性腺モザイクで説明が付く可能性があるため,一般集団よりはリスクが高い(可能性は残されているが,性腺モザイクの例は報告されていない)。

発端者の子

  • SCA2患者の子 が変異を受け継ぐ確率は50%である.
  • 子 に伸長したATXN2遺伝子が受け継がれた時,さらにリピートが伸長するかもしれない.これは表現促進現象の原因となる.(子孫の発症年齢の早期化や,さらなる症状の重症化)
  • 大きな伸長のほとんどは,リピートが父親の生殖細胞を通して受け継がれた時に見られる(Riessら1997,Geschwindら1997b).しかし,発症年齢,重症度,特有の症状,病気の進行は様々であり,家族歴やリピートの 長さ では予測できない.

発端者の他の家族

家族内の他のメンバーのリスクは発端者の両親の遺伝 型に依存する.もし,片親が伸長したATXN2アレルを有していたら,その血縁者はリスクを有する.

遺伝カウンセリングに関連した問題

リスクのある 個人. 発症年齢,重症度,症状のタイプおよび疾患の進行速度は多様であり,家族歴や遺伝 学的検査の結果でこれらを予測することはできない。

リスクのある無症状の家族に対する検査 無症状でSCA2のリスクのある成人に対する遺伝 学的検査は,家系内の罹患者におけるATXN2遺伝子のCAGリピートの伸長が確認されていれば可能である. この検査は,適切な遺伝カウンセリングのもとに実施されるべきである.この検査は未発症者の発症年齢,病気の重症度,症状のタイプ,症状の進行の速度などを予測することには有用でない. 非特異的あるいはあいまいな症状を伴うリスクのある家族に対する検査は診断的検査ではなく,予測的検査である.

18歳未満の無症状者に対する検査  治療法がない成人発症疾患のリスクのある18才未満の無症状の人に対する検査は適切ではないと考えられる .それは子どもの自己決定の機会を奪うとともに,説得力のある便益がないからである . さらに,こうした情報が家族関係に不健全な悪影響を及ぼす可能性や,将来の差別や烙印付けの危険性, こうした情報がもたらす不安などの懸念が指摘されている.

SCA2であると確定診断された家族の場合,症状が現れたら年齢に関係なく検査を受けるのが適切である。
詳細は,「成人発症の希少疾患および」米国遺伝カウンセラー学会(NSGC)の見解」および米国小児学会米国遺伝医療・ゲノム医療学会(American College of Medical Genetics and Genomics)の指針:ethical and policy issues in genetic testing and screening of children(小児の遺伝子検査・スクリーニングにおける倫理と施策)を参照。

家族計画 

  • 遺伝リスクの決定や出生前診断の利用について話し合う最適な時期は妊娠前である。
  • リスクのある若年成人に,子孫へのリスクの可能性および生殖の選択肢など遺伝学的カウンセリングを行うことが望ましい.

DNAバンキング 

DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである.検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するかもしれないので,DNAの保存は考慮に値する.

出生前診断

罹患した家族にATXN2変異が同定 された場合,個別の出生前診断を行っている施設での,リスクの高い妊娠に対する 分子遺伝学的検査を用いた出生前診断が可能な場合がある。

注:出生前診断では,高度に伸張したATXN2遺伝子のアレルが検出される可能性があることを考慮に入れておかなければならない(Babovic-Vuksanovicら,1998)

出生前診断については,専門医の間でも家族によっても考え方が異なるだろう.特に,検査が早期診断というよりむしろ妊娠中絶を考慮したうえで行われる場合にはなおのことである.たいていの医療機関では出生前診断を受けるかどうかの決定は両親の選択に委ねると考えるであろうが,この問題に関しては慎重な議論が必要である.

着床前診断 

 着床前診断は,ATXN2におけるCAG3塩基の異常伸長が明らかになっている家系では実施可能である.


更新履歴

  1. Gene Review著者: Name.Stefan-M Pulst, MD
    日本語訳者:倉橋浩樹、大江瑞恵(藤田保健衛生大学・総合医科学研究所・分子遺伝学研究部門)
    Gene Review 最終更新日: 2006.1.25. 日本語訳最終更新日: 2006.7.3
  2. Gene Review著者: Stefan-M Pulst, MD
    日本語訳者: 吉村祐実 (ボランティア翻訳者)、櫻井晃洋 (信州大学医学部附属病院遺伝子診療部) 
    Gene Review 最終更新日: 2010.10.5 日本語訳最終更新日: 2012.10.6.
  3. Gene Review著者: Stefan-M Pulst, MD
    日本語訳者: 吉村祐実 (翻訳ボランティア),櫻井晃洋(札幌医科大学附属病院遺伝子診療室)
    Gene Review 最終更新日: 2015.11.12 日本語訳最終更新日: 2016.7.17.(in present)

原文 Spinocerebellar Ataxia Type 2

印刷用

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