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脊髄小脳失調症6型
(Spinocerebellar Ataxia Type 6)

[同義語:  SCA 6]

Gene Reviews著者: Christopher M Gomez, MD, PhD
日本語訳者: 藤田裕子、升野光雄、山内泰子、黒木良和(川崎医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 遺伝カウンセリングコース)

Gene Reviews 最終更新日: 2013.7.18 日本語訳最終更新日: 2018.11.14

原文: Spinocerebellar Ataxia Type 6


要約

疾患の特徴 

脊髄小脳失調症6型(SCA6)は、成人発症、緩徐進行性の小脳性運動失調、構音障害、および眼振によって特徴づけられる。発症の平均年齢は43歳から52歳である。初期症状は歩行の不安定、つまずき、および平衡異常(約90%)、並びに構音障害(約10%)である。最終的には全員が失調性歩行、上肢の協調運動障害、企図時振戦および構音障害を呈する。嚥下障害と窒息はよくみられる。視力障害は、複視、移動対象の固視の困難、水平性注視誘発眼振、および垂直性眼振に起因することがある。反射亢進と伸展性足底反応は最大40~50%までに生じる。ジストニアおよび眼瞼痙攣を含む、大脳基底核の徴候は、最大25%までに生じる。精神状態は一般的に保持される。

診断・検査 

CACNA1Aは、その変異がSCA6を引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である。SCA6の診断は、CACNA1Aにおける異常なトリヌクレオチドリピート伸長を検出する分子遺伝学的検査に基づく。罹患者は20回から33回のCAGリピートを持つ。分子遺伝学的検査は、罹患者の99%以上において伸長があることを明らかにする。

臨床的マネジメント 

症状の治療
運動失調発作を除去するためのアセタゾラミド;眩暈および、または動揺視を軽減するための前庭の抑制剤;複視の屈折矯正または手術管理のための眼科への受診;REM睡眠障害のためのクロノピン;安全と利便性のための住宅改修;転倒予防のための杖、歩行器;代償と強さを最大限とするための理学療法;構音障害のための言語療法とコミュニケーション機器;重りのついた食事用具と着衣用フック;誤嚥の誘因に最もなりにくい、安全な動作と食物の固さを識別するためのビデオ食道造影;嚥下障害が問題になった時の摂食評価;肥満が歩行と移動の困難さを悪化させるため、体重コントロール;睡眠時無呼吸のためのCPAP。

サーベイランス:
神経内科医による、一年ごとまたは半年ごとの評価:運転能力は定期的に専門家に評価されるべきである。

避けるべき薬剤/状況:
協調運動障害を増加させる、鎮静の睡眠薬(エタノールやある一定の薬物)。

その他:
振戦をコントロールする薬剤は、通常、小脳性振戦の軽減に効果がない。

遺伝カウンセリング 

脊髄小脳失調症6型(SCA6)は、常染色体優性の遺伝形式をとる。罹患者の子は、CACNA1Aの病的バリアントを受け継ぐ50%の確率がある。家族構成員の中で診断が確定した場合、リスクの増加した妊娠の出生前検査は可能であるが、(通常は)成人発症疾患の出生前診断の要望は一般的ではない。


診断

臨床診断

成人発症で,緩徐で進行性の小脳性運動失調、構音障害および眼振を持つ人において脊髄小脳失調症6型(SCA6)が疑われる。SCA6の表現型の発現は特異的ではないので、SCA6の診断は分子遺伝学的検査に基づく。

分子遺伝学的検査

遺伝子CACNA1Aは、その変異がSCA6を引き起こすことが知られている唯一の遺伝子である。

アレルサイズSCA6を持つ罹患者において、CACNA1A のエクソン47内の、多型のCAGリピートは不安定であり伸長している。下記はCACNA1A のアレルサイズである。

  • 正常アレル。CAGリピートが18回以下 [Shizuka et al 1998]
    • 意義が不確かなアレル。19回のCAGリピート。下記に典拠を挙げられるように,19回のCAGリピートを持つアレルの、臨床的意義は不明確である。
    • 19回のCAGリピートを持つアレルの、病的として知られる範囲への、減数分裂での伸長 [Mariotti et al 2001, Shimazaki et al 2001]。この場合では、そのアレルは「中間アレル」または「易変正常アレル」と考えられている(すなわち、疾患の原因とはならないが、異常な範囲への伸長を生じやすくする)。
         
    • 症状のない高齢者 [Ishikawa et al 1997, Mariotti et al 2001]
    • SCA6の非定型的な特徴を持つ人[Katayama et al 2000]
    • 19回のCAGリピートアレルのホモ接合性の、運動失調がある人[Mariotti et al 2001]
  • 完全浸透アレル。20回から33回のCAGリピート [Jodice et al 1997, Yabe et al 1998]。CAGリピートが20回もしくはそれより多い伸長を持つ無症状の人は、生涯のうちいつかは発症すると予想される。最も一般的な病的アレルは22回のCAGリピートを持つ。

臨床検査

  • 病的バリアントに対する標的解析。CACNA1A のCAGトリヌクレオチドリピートのサイズを決定する解析は、罹患者の99%以上において伸長を検出し、ほぼ100%特異的である。

表1.SCA6において用いられる分子遺伝学的検査の概要

遺伝子1 検査方法 検出される病的バリアント2 検査方法による
バリアント検出頻度3
CACNA1A

病的バリアントに対する標的解析 CAGリピートの伸長 99%
  1. 染色体座位とタンパク質は、表A. 遺伝子とデータベースを参照。
  2. アレルバリアントの情報については、分子遺伝学を参照。
  3. 示された遺伝子に存在するバリアントを検出するために使用される検査方法の能力。

検査手順

発端者の診断確定には、CACNA1A の分子遺伝学的検査が、CAGリピート伸長を検出するために実施されるべきである。その検査は単一遺伝子の検査として、もしくは遺伝性運動失調疾患の多様性を評価する複数遺伝子パネル検査の一部として実施されるかもしれない。

リスクのある無症状の成人家族構成員の発症前診断は、家系内で診断が事前に確定されていることが必要である。遺伝カウンセリングに関連した問題を参照。

リスクのある妊娠に対する出生前診断および着床前遺伝学的診断(PGD)は、家系内で診断が事前に確定されていることが必要である。


臨床的特徴

臨床症状

脊髄小脳失調症6型(SCA6)は、成人発症、緩徐進行性の小脳性運動失調、構音障害、および眼振によって特徴づけられる。発症年齢の範囲は19歳から71歳である。発症の平均年齢は43歳から52歳の間である。発症年齢と臨床像は同じ家系内でさえも異なる;同じサイズの完全浸透のアレルを持つ同胞は、発症年齢が12年間程度異なり,または少なくとも初期は挿間的な(時折起こる)経過を示すかもしれない [Gomez et al 1997, Jodice et al 1997]。

初期症状はおよそ90%の人で、歩行の不安定性、つまずき、および平衡異常である;残りは構音障害を呈する。
症状は緩徐に進行し、最終的には全員が失調性歩行、上肢の協調運動障害、企図時振戦および構音障害を呈する。嚥下障害と窒息はよくみられる。

複視は、ほぼ50%の人に生じる。他の人の視覚障害の経験は、水平性注視誘発眼振(70%‐100%)と垂直性眼振(65%‐83%)ばかりでなく、移動対象の固視の困難に関連しており、それらは別の種類のSCAでは10%より少ない人で観察される [Yabe et al 2003]。周期性交代性眼振と反跳眼振を含む、他の眼球運動の異常もまた記述されている [Hashimoto et al 2003]。

反射亢進と伸展性足底反応はSCA6を持つ人の最大40%‐50%に起こる。

ジストニアおよび眼瞼痙攣のような大脳基底核徴候は、最大25%の人に顕著である。

精神状態は一般的に保持される。一連の公式な神経心理学的検査は、有意な認知障害を明らかにしなかった [Globas et al 2003]。

SCA6の罹患者は、感覚の愁訴、むずむず脚、こわばり、片頭痛、原発性の視覚障害、または筋萎縮はない。

寿命は短縮されない。

妊娠

疾患の重症度は妊娠中に増加する。胎児の生存可能性への影響は報告されていない。

神経病理学

SCA6を持つ人の神経病理学の研究は、選択的なプルキンエ細胞の変性、もしくはプルキンエ細胞と顆粒細胞の複合した変性のどちらかを示している [Gomez et al 1997, Sasaki et al 1998]。

遺伝型と表現型の相関

ヘテロ接合性の人

SCA6の発症年齢は、伸長したCAGリピートの長さと逆相関があるけれども、疾患に関係する最も一般的なアレルである22回のCAGリピートを持つ人で、同様に発症の幅広い範囲が知られている [Gomez et al 1997, Schöls et al 1998]。CAGリピートを30回もしくは33回持つ,少数の人の発症は、CAGリピートが22回および23回の人より遅い [Matsuyama et al 1997, Yabe et al 1998]。最近の後向き研究では、2つのアレルサイズの総計と発症年齢との、さらに緊密な相関が示されている [Takahashi et al 2004]。

ホモ接合性の人。

CACNA1A 内の異常な伸長のホモ接合性が、数名で報告されている [Geschwind et al 1997, Ikeuchi et al 1997, Matsuyama et al 1997]。3名では、ヘテロ接合性の人より発症が早く、症状がやや重症であった [Geschwind et al 1997, Ikeuchi et al 1997];1つの研究では発症年齢が、2つの疾患アレルの総計と相関していた [Takahashi et al 2004]。

浸透率

浸透率はほぼ100 %であるが、症状は60歳代まで現れない可能性がある。

表現促進

CACNA1A の伸長は、通常、親から子への伝達の中では観察されない;従ってSCA6では表現促進は見られない。発症年齢、重症度、特異的な症状および病気の進行は多様で、家族歴またはCAGリピートサイズによって予測できない。

命名法

かつては小脳皮質変性のホルムズ型として,および後には常染色体優性の小脳性運動失調V型(純粋な小脳性運動失調)として知られた遺伝性運動失調の型は、SCA6を含んでいたかもしれない。

有病率

SCA6の有病率は、地理的地域によって異なって現れ、おそらく創始者効果が関係している。常染色体優性遺伝の脊髄小脳失調症を持つすべての家系からの推定では、SCA6の割合はスペインとフランスでは1%‐2%、中国では3%、米国では12%、ドイツでは13%、そして日本では31%である。

常染色体優性の運動失調の全体の有病率は、10万人あたり1人と推定されている。SCA6の有病率は10万人あたり0.02〜0.31人と計算される [Geschwind et al 1997, Ikeuchi et al 1997, Matsumura et al 1997, Matsuyama et al 1997, Riess et al 1997, Stevanin et al 1997, Schöls et al 1998, Pujana et al 1999, Jiang et al 2005]。現在までの最も正確な評価では、Craigら [2004]がゲノムDNAの無選択な検体の大規模な収集物を使用し、イギリスでのCACNA1A の病的な伸長の有病率は、10万人に5人と推定した。

家族歴が知られていない運動失調の罹患者の中で、CACNA1A の伸長の頻度は、1つの研究 [Schöls et al 1998]では5%と、もう1つ [Geschwind et al 1997]では43%と割りだされた;しかしながら親の早期の死は、全症例の完全な確認の妨げとなったかもしれない(運動失調の概観を参照)。

遺伝学的に関連する疾患

いくつかの他の疾患はCACNA1Aの病的バリアントによって引き起こされる。

優性遺伝の運動失調は、CACNA1Aのp.Gly293Arg または p.Arg1664Glnを含む病的なミスセンスバリアントによって引き起こされるかもしれない。これらの疾患はSCA6に類似しているが、より重症な臨床的な表現を持つかもしれない [Yue et al 1997, Tonelli et al 2006]。

発作性運動失調症2 (EA2)は、タンパクの短縮、異常なスプライシングまたは病的なミスセンスバリアントとなるCACNA1A の変異によって引き起こされる。それは典型的には幼少期から青年早期に始まり、運動失調発作、めまい、および数時間から数日間続く吐き気に特徴づけられる。発作は、構音障害、複視、耳鳴、ジストニア、片麻痺、および頭痛を伴うことがある。発作の間欠期は初期には正常であるが、眼振と運動失調を含む発作間欠期所見に進展するかもしれない。挿間的な運動失調の数年後に、SCA6と区別できない発作間欠期の運動失調の状態が発症するかもしれない [Baloh et al 1997]。遺伝は常染色体優性の形式をとる。

家族性片麻痺性片頭痛 (FHM)は、80~90%の浸透率 [Montagna 2000]と推定される常染色体優性疾患である。2つの臨床型は以下である。

  • 純粋なFHM(罹患家系の80%にみられる)は、すべての家族構成員で発作間欠期の検査は正常である。
  • 恒久的な小脳症状を持つFHM(罹患家系の20%にみられる)は、幾人かの家族構成員で発作間欠期の眼振および、または運動失調を示す。

恒久的な小脳症状を持つ家系も含んで、FHMを持つ家系のおおよそ50%は、CACNA1Aに病的なミスセンスバリアントを持つ [Battistini et al 1999, Ducros et al 1999, Friend et al 1999]。FHMは、片麻痺を前兆とすることによって特徴づけられ、少なくとも1つの他の前兆症状(例えば半盲、片側の感覚欠損、失語症)が常に付随する。その前兆の後に続いて中等度から重度の頭痛がみられる。表現型は昏睡と痙攣を含み [Ducros et al 2001]、軽度の頭部外傷もしくは血管造影が誘因となりうる。遅延性脳浮腫は、軽度の頭部外傷を受けた小児および青年期の人で主にみられ、意識清明な期間を持ち、その後に制御できない脳浮腫を発症する [McCrory & Berkovic 1998]。外傷に誘発された遅延性脳浮腫はCACNA1Aのミスセンスバリアントp.Ser218Leuに関連する [Kors et al 2001]。

それらのよく記述された表現型にもかかわらず、SCA6、EA2、およびFHMは臨床的な重なりを示す。

  • SCA6の罹患者は、挿間的な運動失調が生じうる。1つの研究では、CACNA1A内の21回もしくはより多いCAGリピートを持つ罹患者の最大33%が、EA2の診断の根拠とするに十分に顕著な挿間的な特徴を持っていた [Geschwind et al 1997]。
  • CAGリピートの伸長を持つ1家系で、幾人かの家族構成員は挿間的な運動失調を持ち,他の人は進行性の運動失調を呈した;すべての罹患した家族構成員で、異常なアレルは23回のCAGリピートを持っていた [Jodice et al 1997]。
  • EA2を持つ1家系で,罹患した家族構成員は片麻痺も呈し、また1人の罹患した家族構成員は運動失調発作の間、片頭痛を呈した [Jen 1999]。
  • CACNA1 のミスセンスバリアントを持つ1家系では、SCA6とFHM両方の表現型が観察された [Alonso et al 2003]。
  • CACNA1 の病的バリアントを持ついくつかの家系では、SCA6とEA2の両方の表現型を呈した [Jodice et al 1997, Cricchi et al 2007]。

鑑別診断

脊髄小脳失調症6型(SCA6)の罹患者は、遺伝性と後天性の運動失調の、より大きな鑑別診断の一部である、説明できない運動失調を呈するかもしれない(運動失調の概観を参照)。


臨床的マネジメント

初診時の評価

脊髄小脳失調症(SCA6)と診断された罹患者の疾患の範囲と適切なマネジメントを確立するために、もしまだ完了していなければ、下記の評価が推奨される。

  • 病歴、神経学的病歴、家族歴および社会歴
  • 進行の評価のため毎年利用する評価尺度の使用を含んだ、神経学的検査
  • 小脳もしくは他の構造の萎縮の範囲を測定するための、脳MRI
  • 誤嚥のリスクのための嚥下評価と相談
  • 転倒評価、歩行の補助が必要かどうかの決定、および運動に関する助言のための理学療法の評価
  • 臨床遺伝学者および、もしくは遺伝カウンセラーへの受診

 
症状の治療

マネジメントは支持的である。

  • 特にもしカロリー摂取量が減少した場合、ビタミンの補給剤は推奨される。
  • アセタゾラミドは運動失調の発作を取り除くかもしれないが、全体的な進行を延期または減速しない。
  • 前庭の抑制薬はめまい、およびまたは動揺視を軽減するかもしれない。
  • 眼科受診が、複視の屈折矯正または手術管理のために望ましい。
  • 運動も理学療法も協調運動障害の進行または筋力低下を止めることはできないけれども、罹患者は活動性を維持すべきである。理学療法は、代償と強さの最大化を目標とされるべきである。
  • 杖と歩行器は転倒予防に役立つ。つかみ棒、補高便座、電動式の椅子に対応する傾斜といった便利な設備を持つ自宅への改修は、必要かもしれない。
  • 言語障害は時々生じ、他の設定の場合のように管理される。言語療法および、メモ帳やコンピュータを使った機器のようなコミュニケーション道具は、構音障害を持つ人々のためになるかもしれない。
  • 重りのついた食事用具と着衣用フックは、自立の感覚の維持を助ける。
  • 肥満が歩行と移動の困難さを悪化させるため、体重コントロールは重要である。
  • 嚥下障害が問題になる前に、ビデオ食道造影像は、誤嚥の誘因に最もなりにくい、安全な動作と食物の固さを識別できる。
  • クロノピンは、鎮静効果が朝の平衡異常を増加させる場合を除いて、REM睡眠障害(RBD)のために使用される。
  • 持続気道陽圧は、睡眠時無呼吸のために役立つかもしれない。

サーベイランス

罹患者は一年ごとまたは半年ごとに神経内科医のフォローを受けるべきである(理学療法医と理学療法士および,または作業療法士が必要とした場合の受診を伴う)。運転能力は定期的に専門家に評価されるべきである。

避けるべき薬剤/状況

エタノールやある一定の薬物のような、鎮静/催眠の性状を持つ薬剤は、協調運動障害の顕著な増加を生じるかもしれない。

リスクのある血縁者の評価

遺伝カウンセリングの目的でリスクのある血縁者の検査に関連する問題については遺伝カウンセリングを参照。

妊娠の管理

この疾患は、妊孕性のある期間にはまれにしか現れないが、症候性の妊婦にとって、平衡異常を支持する手段は強化されるべきである。

研究中の治療

Gazulla & Tintore [2007]は、将来の可能性のある治療薬としてガバペンチンとプレガバリンを示唆している。
種々の疾患に対する臨床試験に関する情報へのアクセスには、ClinicalTrials.govで検索。
 
その他

振戦をコントロールする薬剤は、通常小脳性振戦の軽減に効果がない。
患者とその家族は、自然歴、治療、遺伝形式、他の家族構成員に対する遺伝的なリスク、および消費者向けの資源について情報提供されるべきである。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

脊髄小脳失調症6型(SCA6)は、常染色体優性の遺伝形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

  • 浸透率は100%のため、SCA6と診断された罹患者のほとんどは、罹患した親を持つ。
  • SCA6の発端者は、新規の病的バリアントの結果である疾患を持つかもしれない。新規の病的バリアントによって生じる症例の割合は、知られていない。
  • SCA6の家族歴が知られていない、SCA6の罹患者の両親の評価についての勧告は、臨床評価と分子遺伝学的検査を含む。

    (注):家族構成員の疾患が認知されていないか、症状の発現前の親の早世、もしくは罹患した親の疾患の遅い発症によって、家族歴がないように見えるかもしれない。

発端者の同胞

  • 罹患者の同胞のリスクは、発端者の両親の遺伝的な状態に依存する。
  • もし、親が伸長したCACNA1A アレルもしくは他の病的バリアントを持つ場合、めいめいの同胞の、病的なCACNA1A アレルを引き継ぎ疾患が発症するリスクは50%である。
  • もし発端者の生物学上の両親のどちらもが、DNAから検出可能な病的なCACNA1A アレルを持っていない場合は、発端者が新規の病的バリアントを持つこと、および発端者の同胞のリスクは性腺モザイクの可能性に依存することが推定される。性腺モザイクの例は報告されていないが、可能性は残る状態のままである。

発端者の子

  • 罹患者の子は、変異したCACNA1A アレルを引き継ぎ、疾患を発症する50%の可能性を持つ。

リピートサイズの変化。

次世代のSCA6のアレルにおいて、リピートサイズの変化は起こりうるが、他のリピートが伸長する疾患のアレルに比べて非常にまれである。

発端者の他の血縁者

他の家族構成員のリスクは、発端者の両親の遺伝的な状態に依存する:もし親が疾患を引き起こすCACNA1A アレルを持っていれば、その家族構成員はリスクを有する。

遺伝カウンセリングに関連した問題.

リスクを有する無症候性の成人の検査。

SCA6のリスクを有する成人の検査は、分子遺伝学的検査に記述される技術を使用することにより可能である。それらの検査は,無症候性の人の発症年齢、重症度、症状のタイプ、または進行の速さの予測において有益ではない。SCA6のリスクを有する人が検査をする時は、1人の罹患した家族構成員が最初にSCA6の診断を確定するために検査を受けているべきである。疾患の明確な症状や兆候がない場合の、病的バリアントの検査は、予測的な検査である。リスクを有する無症候性の成人の家族構成員は、生殖や財政的問題およびキャリア計画に関して、個人的な意思決定のために検査を求めるかもしれない。他の人たちは単純に「知る必要」を含んだ、異なる動機を持つかもしれない。無症候性のリスクを有する成人の家族構成員の検査は通常、検査を希望した動機やSCA6の知識、陽性と陰性の検査結果の考えられる影響と神経学的な状況を評価される、検査前の面談を要件とする。検査を求める人々は、彼らが直面するかもしれない、健康や生活および就業不能保険の保障範囲、雇用と教育の差別、および社会と家族の相互作用の変化といった、考えられうる問題について助言を受けるべきである。別の考えるべき問題は、他の家族構成員のリスクを有する状態の暗示である。インフォームドコンセントを得て、記録は機密保持されるべきである。遺伝学的検査結果の陽性者は、長期のフォローアップと評価の準備を必要とする。

リスクを有する無症候性の人の小児期の検査。

成人期発症の疾患のリスクを有する18歳より年少の人は、症状がない状態において検査を受けるべきでないとの、コンセンサスが成立する。18歳以前の無症候性の人の検査に反対する主な議論は、その検査が、彼らのこの情報を知るか知らないかの選択を排除し、家族内および他の社会環境の中で烙印を押す行為の可能性を高めて、教育とキャリアへの深刻な影響を持ちうることである。

症状を示す18歳より年少の人は、通常、明確な診断が確立することにより利益を受ける。

米国遺伝カウンセラー学会の成人発症疾患の未成年者の遺伝学的検査に対する基本方針表明、および米国小児科学会と米国臨床遺伝学会の方針表明:小児の遺伝学的検査とスクリーニングにおける倫理と方針の問題も参照。

見かけ上、新規の病的バリアントを持つ家系での検討事項。

常染色体優性遺伝疾患を持つ発端者の両親のどちらもが、病的バリアントもしくは疾患の根拠を持たない時、発端者は新規の病的バリアントの可能性がある。しかしながら、父親や母親が異なる場合(例えば、生殖補助医療を伴う)、もしくは非公表の養子縁組を含む、医学的ではない説明も探索されうる。

家族計画

  • 遺伝的リスクの決定、および出生前検査の有用性についての話し合いにおける最適な時期は妊娠前である。
  • 罹患もしくはリスクを有する若年成人に対しては、(次世代に対する潜在的なリスク、および生殖の選択肢の議論を含む)遺伝カウンセリングを提供することが適切である。

DNAバンキングとは、将来の使用のために、通常は白血球から抽出したDNAを保存しておくことである。検査手法や、遺伝子、アレルバリアント、疾患への理解は将来向上する可能性があり、罹患者のDNAを保存しておくことは考慮されるべきである。

出生前検査および着床前遺伝学的診断

罹患した家族構成員で病的バリアントが同定されれば、リスクの高い妊娠に対する出生前検査とSCA6の着床前遺伝学的診断が可能である。特に妊娠中絶もしくは早期の診断の目的で検査が検討されている場合、医療専門家や家族内で出生前検査の使用に関して、視点の違いが存在するかもしれない。ほとんどの施設は出生前検査に関する決定を両親の選択と考えている一方、これらの問題についての議論は適切である。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここクリック。

  • NCBI Genes and Disease

Spinocerebellar ataxia

  • Spinocerebellar Ataxia: Making an Informed Choice about Genetic Testing

Booklet providing information about Spinocerebellar Ataxia
depts.washington.edu/neurolog/images/neurogenetics/ataxia.pdf

  • Ataxia UK

Lincoln House   
1-3 Brixton Road
London SW9 6DE
United Kingdom
Phone: 0845 644 0606 (helpline); 020 7582 1444 (office); +44 (0) 20 7582 1444 (from abroad)
Email: helpline@ataxia.org.uk; office@ataxia.org.uk
www.ataxia.org.uk

  • euro-ATAXIA (European Federation of Hereditary Ataxias)

Ataxia UK
Lincoln House, Kennington Park, 1-3 Brixton Road
London SW9 6DE
United Kingdom
Phone: +44 (0) 207 582 1444
Email: smillman@ataxia.org.uk
www.euroataxia.org

  • National Ataxia Foundation

2600 Fernbrook Lane
Suite 119
Minneapolis MN 55447
Phone: 763-553-0020
Email: naf@ataxia.org
www.ataxia.org

  • Spanish Ataxia Federation (FEDAES)

Spain
Phone: 34 983 278 029; 34 985 097 152; 34 634 597 503
Email: sede.valladolid@fedaes.org; sede.gijon@fedaes.org; sede.bilbao@fedaes.org
www.fedaes.org

  • CoRDS Registry

Sanford Research
2301 East 60th Street North
Sioux Falls SD 57104
Phone: 605-312-6423
Email: sanfordresearch@sanfordhealth.org
www.sanfordresearch.org/CoRDS/CoRDSRegistryForm/


分子遺伝学

下記の記述は最新の情報が含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なる場合がある

表A. 脊髄小脳失調症6型 : 遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体座位 タンパク質 座位特異性データベース

HGMD

ClinVar

CACNA1A

19p13?.13

Voltage-dependent P/Q-type calcium channel subunit alpha-1A
(電位依存性P/Q型カルシウムチャネルサブユニット アルファ-1A)

Familial Hemiplegic Migraine (FHM) Variation Database (CACNA1A)
Calcium channel, voltage-dependent, P/Q type, alpha 1A subunit (CACNA1A) @ LOVD

CACNA1A

CACNA1A

データは、以下の標準的な参考文献を編集したものである:HGNCによる遺伝子;OMIMによる染色体座位; UniProtによるタンパク質。リンクを提供したデータベース(Locus Specific, HGMD)の記述については、ここをクリック。

表B. OMIM に登録されている脊髄小脳失調症6型(OMIMですべてを参照のこと)

183086 SPINOCEREBELLAR ATAXIA 6; SCA6
601011

CALCIUM CHANNEL, VOLTAGE-DEPENDENT, P/Q TYPE, ALPHA-1A
SUBUNIT; CACNA1A

 遺伝子の構造

CACNA1A遺伝子は、47のエクソンで構成される。遺伝子およびタンパク質の情報の詳細な概要については、表Aの遺伝子を参照すること。

正常バリアント。

遺伝子の3´末端の、多型のCAGリピートは、これまで専ら非翻訳領域と見なされていた遺伝子の一部の内で生じる。この常染色体優性遺伝の運動失調に関連するCAGリピートの伸長の同定は、読み枠にグルタミン残基に翻訳されるCAGリピートを含む、α1A mRNAの新しい長いスプライス型の認識に伴ったものであった。このCAGリピートの範囲は4回から18回までである。

病的バリアント

疾患に関連したCAGリピートの21回から33回までにわたるアレルが報告されている。最もよくあるアレルはCAGリピートが22回である。20回のCAGリピートアレルを持つ1人において、挿間的な運動失調が見られた [Jodice et al 1997]。

正常な遺伝子産物。

CACNA1Aは2つの別個のタンパク質をコードする。1つは、電位依存性P/Q型カルシウムチャネルの孔形成サブユニットとしての機能を果たすα1Aサブユニット( Greenberg [1997]に論評されている)であり、もう1つは核へ移行し、神経細胞に発現するいくつかの遺伝子の発現を高める作用の転写因子、α1ACTである [Du et al 2013]。α1A(いくつかのスプライス型)とα1ACTの両方とも、SCA6では伸長している多型のCAGリピートを有する。

電位依存性カルシウムチャネルはβとγ−σの補助的サブユニットによって作られている。α1Aサブユニットは、長さが約2,400のアミノ酸の、膜糖タンパク質であり、その一次構造は、各々が6つの膜貫通ドメインと孔形成のPループからなる、4つの相同ドメインがあると予測する。P/Q型カルシウムチャネルは、主に神経細胞に備わり、また小脳皮質の顆粒細胞やプルキンエ細胞で高レベルに発現する、高電位活性化型のカルシウムチャネルである。それらの主な役割はシナプス伝達であると考えられる。α1(2.1) <以前にはα1A>サブユニットは、CaV2.1 (P-Q 型) 電位依存性カルシウムチャネルの主要な孔形成サブユニットである。CACNA1Aは、いくつかの選択的スプライスされた約7−8kbのmRNAを生じさせる [Ophoff et al 1996]。予測されるポリペプチドは195kdから270kdにおよび、内部とカルボキシ末端で配列が異なる。遺伝子の3´末端の多型CAGリピートの発見は、α1A mRNAの新しい長いスプライス型の同定に関連した [Zhuchenko et al 1997]。長いスプライス型では、エクソン46の末端の付加的ヌクレオチドの組み入れが、終始コドンをなくし、翻訳フレーム内で多型のCAGリピートを含んだ、3´配列の付加された237のヌクレオチドを据える。CAGリピートはグルタミン残基鎖をコードし、野生型アレルは4から18のグルタミンの長さの範囲に及ぶ。CACNA1Aの遺伝子産物の異なるスプライス型の機能は実証されていないままであるが、相違はリン酸化受容部位で測定されている。

α1ACTは、α1AサブユニットmRNAの長いスプライス型の3´部位に、別個のタンパク質としてコードされる。α1ACTポリペプチドは、細胞の内部リボソーム侵入部位(IRES)の調節下で、別個のタンパク質として、α1A mRNAから翻訳される。α1ACTは、核へ移行され結合し、プルキンエ細胞で発現したいくつかの遺伝子上の保存されたAT‐リッチモチーフを経由した発現を高める、転写タンパク質である。α1Aサブユニットなしで発現したα1ACTは、培養神経細胞の中で神経突起の伸長を早め、α1Aノックアウトマウスで発現する時にプルキンエ細胞の樹状突起と神経支配を正常化する。α1ACTポリペプチドは、多型のポリグルタミン鎖を有する [Du et al 2013]。

異常な遺伝子産物。

SCA6におけるCACNA1A内の伸長したCAGリピートは、P/Q型カルシウムチャネルのα1Aサブユニットの長いスプライス型のカルボキシ末端 [Zhuchenko et al 1997]と、α1ACTタンパク質の両方に存在する伸長したポリグルタミン鎖をコードする。P/Qチャネル機能上の、伸長したポリグルタミン鎖の一貫した効果はないが、ポリグルタミンの伸長は遺伝子結合を変化させ、転写因子機能を損ない、α1ACTを発現する細胞に有毒である。

アレル疾患である、CACNA1Aの病的バリアント(第1ドメインのP ループのp.Gly293Arg、I-II ループのp.Ala454Thr および p.Arg1664Glnを含む)に関連した常染色体優性の小脳性運動失調は、CAGリピートの伸長に関連したSCA6と非常によく似た表現型を持つ [Yue et al 1997, Tonelli et al 2006, Cricchi et al 2007]。これらの病的バリアントは、C末端の伸長したポリグルタミン鎖の核移行を介して作用しないので、この疾患はおそらく、異常なアレルによって生じる、乱されたカルシウムチャネル機能を介して生じる。 


更新履歴

  1. Gene Reviews著者: Christopher M Gomez, MD, PhD
    日本語訳者:
    藤田裕子、升野光雄、山内泰子、黒木良和(川崎医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 遺伝カウンセリングコース
    Gene Reviews 最終更新日: 2013.7.18 日本語訳最終更新日: 2018.11.14in present)

原文: Spinocerebellar Ataxia Type 6

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